ファーリー物語

491 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 14:50:45 ID:T5id7Rop

工業地帯は道路に面するのを3~4マスだけにしてあとはそこからのびていくようにすればいい
ハイテクからはハイテクしか連鎖していかんからファーリー完全閉め出し出来るぞ

さすがに地区でかくしすぎるとバス停やらがパンクするから分散しれ

525 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 18:23:54 ID:T5id7Rop

この新興の都市ニューシティの市長に特に乞われて
私ファーリーがこの町にやってきたのはもう何十年前だったか
私はこの若い都市の活力に、そして市長の情熱に社運を賭けようと決心した
苦難の連続だった
整地もされず波打った大地を必死に整地しながら
段々畑のように化学薬品タンクを立てたこともあった
水道管が破裂し、発電所がパンクして停電、生産ラインが止まった事もあった
それでもシムも市長も明日を信じて皆笑顔で頑張った

527 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 18:28:22 ID:T5id7Rop

時は流れニューシティは変貌を遂げた
バラック小屋が立ち並んでいた駅前は摩天楼と見違えるような高層ビルが立ち並び
郊外には大学やハイテク工場が、中心部には公園や病院が完備され
この都市は周囲からの入居者希望が殺到する自然と技術が融合した理想的な都市に成長していた
この頃からだっただろうか、私の工場に異変が起きたのは

市が新しく誘致している工業団地に当然私は工場を建設した
私は黎明期から市の経済を支え続けた地元経済界の重鎮であり
市の商工会議所の議長にまでなっていたため、たやすい事だった
しかし、いざ工場の落成式に出向くとそこは何も無い更地だった
それだけではない、私が手回ししておいた関連企業のグランムストン工業やスチール石油の工場までが
まるで煙のように消えていたのだ
私は現場の作業員を問い詰めたが
彼は悲しげに首を振るばかりだった

528 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 18:31:31 ID:T5id7Rop

私は市長になにが起こったのかを詳しく調査するように依頼した
当然市長も快諾してくれると期待したが、その回答は
「市長に捜査権は無い。警察署長に話してくれ」
という意外なものだった
私は胸に何か不快な黒いものが去来するのを感じたが、その時はそれが何であるかは分からなかった

私はもう一度自分の工場があるはずだった団地を訪れた
しかしそこには目を疑う光景が待っていた
更地になった後、なんの建設予定もないはずの団地には
人間工学で有名なストラットン社やバース圧縮サービス といったいわば
後年ニューシティに進出してきた余所者の会社達が名を連ねていた

私は市の財務担当に連絡を取ろうとしたが
所在が不明と言う冷たい対応が帰ってきた
そこで商工会議所の決議を利用して彼ら新参の工場に対して圧力をかけようとした
しかし、会議の当日またも信じられない光景を私は目にすることになる
商工会議の私の子飼いのメンバーの席にはストラットン社の役員が座っていた
彼は「これから我々も微力ながら市の発展に尽力したい」と笑った

529 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 18:34:19 ID:T5id7Rop

私は途方にくれた
何かが狂って行っている事は分かっていたが有効な打開策が見出せないでいた
私はかつて必死に化学薬品タンクを建設した丘の上にある本社に戻ろうとした
しかしその丘にはなんの建物も無かった
ただ丘だけが何かの冗談のように聳え立っていた

―こんな馬鹿な話があるか!
私は市役所に怒鳴り込んだ
しかし応対した職員は、官僚特有の無表情な顔に事務的な口調で
口の端に僅かに笑みを浮かべながら
「市の環境基準が改正されたのですよ。
あなたの工場はその基準を満たしていなかったので
強制執行で工場を撤去させていただきました」
とだけ言った

531 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 18:37:21 ID:T5id7Rop

私は我を忘れ、アポも取らずに官邸を訪れて市長に問い正した
若き日の面影を微かに残す市長は、面倒くさそうに顔を振って
「時代は変わったのです」
と言い放った
なおも詰め寄ろうとすると
市長は、コンベンションセンターで講演があるから、と言い残しその場を立ち去った
私は守衛につまみ出されてしまった
帰る場所もないというのに

そして、その直後…

公害産業に対する税率が20%に引き上げられたという記事が出た

533 名無しさんの野望 sage 2009/05/24(日) 18:51:50 ID:T5id7Rop

のちの産業独立戦争の幕開けである

ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm6106282
を見てたら思い出した

556 名無しさんの野望 sage 2009/05/25(月) 00:33:31 ID:7oaD6ydy

>>531
・・・そうか・・・これが時代・・・。

明日、このシティを発つ長距離列車のチケットをポケットに入れた私は、もう闘う気も失せていた。
市長は悪くない。彼の背後には何万という市民達がいて、彼は”彼ら”の幸せをも守らねばならない立場
にあるのだ。シティは変わる。住民も変わる。そう、かつて彼は私にもあの幸せな時代をくれたではな
いか。あの、希望に満ち満ちた時代。世の中は豊かになっていく一方であると信じて疑わなかった時代。
今は、あの頃が、あの何もなかった荒野に打ち立てた薬品タンクを見上げて肩を組みながら笑いあった
あの頃がもう、二度とは訪れぬ幻想と成り果てた事を受け入れなければならない。

私の出番は終わったのだ・・・。

560 名無しさんの野望 sage 2009/05/25(月) 00:48:00 ID:7oaD6ydy

私は、財布の残金を確認してみた。
「・・・”シティ”と別れをしのぶ位の金はあるか・・・」
今や摩天楼と化した駅前の繁華街($$$商業)。客の呼び込みも一段と賑やかな通り。
「旦那!どうです?!イイ子いますよ!!」
私の身なりを見て判断したのだろう、高級店の客引きが群がってくる。一応、私も社長ではあった。
「はは・・・。今夜はいいんだ。連れを待たせている・・・。」
常套な嘘で彼らから逃れながら、その若い客引きたちを見てつい、「・・・お前達がまだこの世にも
いない頃から俺は・・・!俺達がこの街を・・・・・・」と何度思ったことか。
・・・失礼、私も老いたに違いない。こんな愚痴が口をつくようでは・・・。

564 名無しさんの野望 sage 2009/05/25(月) 01:05:45 ID:7oaD6ydy

ハイカラな駅前の繁華街を少し行き過ぎたところに、まだそこにあるのが奇跡としか思えない古びた
居酒屋($商業)が見えてきた。若い頃はよく仕事の後、従業員ややはり若かった市長と共に来
たものだ。もちろん、市長が一民間企業と酒なんかを飲んでいたら問題だからバレないように色々と
苦労したものだ。尚、誓って言うが、私はやましいことはしていない。まぁ、ほんのちょっぴりは
オイシイこともあったかも知れないが、それは、何もない荒野に街一つ打ち立てた者の権利と思いたい。
店のオヤジは知っていたかも知れない。が、彼は何も言わなかった。
いや、一度だけこう言っていたことがあった。
「旦那方はこの村をさ立派な街に、こさえるでしょ?大変なことです、ハイ。あっしには、そんな難し
いこちゃぁできねぇども、だけんど、ここで旦那達に一杯おごる事くらいならできます。
ねぇ、旦那方。めぇ一杯働きんさった後の酒は、ほんにウマイもんですがな。
どちらの旦那も、めぇ一杯働きなすったら、たまにはココでウマーい酒でも飲んでってくんなさい。
それでこそ、仕事もはかどるっちゅうもんですがな・・・。」

566 名無しさんの野望 sage 2009/05/25(月) 01:18:54 ID:7oaD6ydy

・・・かつての思い出を脳裏に思い起こしながら、私はその店の扉を開けた。
最近では、ここも少し寂れてきているのは私にも分かる。つまりは”今風”ではないこの店は、私の会社
同様、時代からの退場を迫られているのかも知れない。
「お先に失礼・・・と言ったところかな・・・。」
今の境遇ではどうしてもネガティブな思考になってしまうことを、どうかお許し願いたい。
いつも陣取るお決まりの指定席(という程おおげさでもないのだが)に目をやると、その日はすでに誰か
が座っているようだった。
「おい、オヤジ?」
私はオヤジに一瞬、抗議の目をやってしまった。あの席は私の席と(私が勝手にだが)決めていたのだ。
だが、オヤジは少しだけ、こっちに視線をよこしながら”よく見てみろ”と言わんばかりの表情をした。
後はまた、黙々と料理を仕込む作業に戻る。訝る私をもう見ようとはしない。まったく無愛想なのは昔
からだ・・・。
私は、もう一度”指定席”を見てみた。
いまだに着慣れなさそうなYシャツの腕をめくり上げ、ネクタイはだらしなく緩め降ろし、すでに山盛りの
灰皿にまだ吸殻を押し込もうとしている男が、似合わない赤ワインの入ったグラスをもう一度、空にするか
どうか迷っている風だった。
それは、市長だった・・・。

653 名無しさんの野望 sage 2009/05/26(火) 02:05:08 ID:ZEIJbnRU

「・・・あ・・・」
一瞬、私は言葉に詰まり彼―市長―のファーストネームすらも口に上せることを忘れていた。
「・・・や!・・・来たな・・・」
市長の方ははどうやら準備万端、虎視眈々。どうやら、というよりも確実に私を待っていたようだ。
先ほどのオフィスでのやり取りの件もあった。今、私が彼に持ち合わせるものは、大気汚染よりも
有毒な毒気のはずだった。なのに、このだらしなく酔いつぶれ(かけた)市長ときたら、毒気もな
く「や!来たな・・・」と親しげに片手を挙げてくるのだ。私がこの店に入る直前まで今のこの環
境を寂しく嘆き、そして市長に裏切られた心境でいたのは、お察しの通りである。
だが、市長のこの顔を見た時の私の心境は、早くも動揺していた。例えるのなら、大切な友人と喧
嘩した翌日に和解のサインを投げかけてくる相手にさりげなく、そう極めてさりげなくにではある
が、その提案を受け入れるものに変化していた。異性との駆け引きとはまた異なる、不思議な緊迫
感と安堵感・・・といったところであろうか。
要するに私は毒気を抜かれたのである。
(ヤレヤレ・・・あんたは大した大気清浄機だよ・・・。)
もちろん、そんな表面化の感情はおくびにも出さず(私にも意地がある)、私は敢えて無愛想に彼
の隣に座り込んだ。
「何だよ、こんなところにまで・・・」
と言いながら、やや乱暴に酒を注文する。なじみのアルバイト店員が少し驚いているのが分かる。
・・・すまん、今は機嫌が悪い所をこいつに見せたいだけなんだ・・・。
後で店員には謝ろうと思いつつ、私はなおも”機嫌が悪い振り”を続けてやろうとした。
今晩ぐらいは愚痴の一つくらいもいいだろう。私はもう”シティ”を出て行くのだから・・・。
しかし、”清浄機”の反応は意外なものであった・・・。、

721 名無しさんの野望 sage 2009/05/26(火) 23:01:48 ID:vYGQ40w8

やがて酒がテーブルに届く。運んできたのがさっきの店員ではないのは幸いだった。
・・・と、唐突に市長が問いかけてきた。
「で、どの駅だ?」
「・・・?何だって?」
「だから、お前、この街を出て行くんだろう?どの駅からだ?」
「ああ、そのことか・・・。”シティ中央”駅だ。明日の深夜に夜行で発つ。」
「夜行ね。あの蒸気機関車型の動力機が有名な奴だな?」
「そう・・・。”旅人にとってはそれが一番落ち着く”とか何とか、どこかの有名な女優が言って・・・」
「知ってるよ。”シティ中央”駅が停車駅に選ばれた時に、鉄道会社から説明があった。」
「・・・そうかい・・・。」
訊いておいてその態度はないだろう。一瞬思い、またしばらく黙り込む。
本当はそろそろ、昔話や今後の身の振り方でも話しておきたい。
だが、私はまだ機嫌の悪い振りをやめてはいない。
早くいいキッカケが来ないものか、あるいはこうなれば酒量に任せるしかないか・・・。
市長の方は私の演技に気が付いているのかいないのか、外見からは分からない。分かるのは、もう充分に
緩めているネクタイをまた緩めようとしていることくらいか。これが酒を飲んだ時の彼の癖であることは、
もう充分に知っている私だった。
再び唐突な切り出しで会話が始まる。
「ファーリー。俺は次の選挙には立候補しないつもりだ・・・。」

743 名無しさんの野望 sage 2009/05/27(水) 01:49:34 ID:Q3pg8BVz

>>721
・・・何だって?」
「立候補しないんだよ。この街はもう充分に大きい。俺やお前がいなくても勝手に回り始めるさ。」
「お・・・おい、本気か?この街を棄てるのか?」
私は別に感情にまかせて上のように言ったのではない(機嫌の悪い振りももちろん、この時点でやめている)。
私にとって、彼が市長を辞めるということは、彼が”街を棄てる”ことに他ならないことであった。
つまりあり得べからざること・・・。これではこちらが市長の身の振り方を聞かなければならないではないか。
「しないって、じゃ、この先どうするんだ?まさか隠居ってことはないだろうな?」
待ってたかのような――いや、待っていたのだろう。大抵の質問にはポケットからハンカチでも取り出す
ように簡単に応じてしまうのが、この男だった。そして今も衰えはないようだ。
「まだ縁側で緑茶飲みながら白髪を数える気にはなれないな・・・。この街の対岸に小さな村があるだろう?」
「ああ。何だっけ、確か最近発電所ができたとか何とか新聞で読んだ、な・・・。あ!!まさかお前?!」
「そうさ、先代の村長の後任が誰もいないんだと。ここの任期が切れたら引越しだな。」そう言って市長
(今はまだそう呼んでおこう)は、またネクタイを緩めようとする。
さすがだよ、市長・・・私は思った。
ただ昔を懐かしみ、今の状況に悲観して街を出て行こうとする私に対し、この男はもう一度あの興奮できる
時代を創り出そうとしている・・・。
「で、だ。お前、来ないか?俺と一緒に”対岸”に。」
「・・・対岸に・・・。もう一度・・・。」
「そうだ。ストラットンもバースもいない。いいか?お前はこの街を追い出されたんじゃない。次の街へ行く
んだ。開発すべき土地は何百エーカーも残っているし業界の需要は高い。忙しいぞ、これからも!」
・・・数十年前のあの日、若き市長は我が社の狭いオフィス(当時)で熱心に工場進出を訴えた。そして、
今度はこの小さな居酒屋の片隅で訴える・・・。私にとっては充分に上出来な”誘致”の打診であった。

781 名無しさんの野望 sage 2009/05/27(水) 23:49:15 ID:vZ4zwSZY

>>743
尚も酒を片手に、そして時々ネクタイを緩める癖もきっちり忘れず(最初に一度大きく緩めて後はそれほど
大きく緩めないのだ。むしろネクタイに手を掛ける動作にも近いが、それでも酒も終盤になると、もはや大き
な輪っかが首から垂れ下がっているような状態になる)、彼は早くも”次の街”の青写真を述べている。
実に楽しそうである。
この男にとって街造りこそはまったくの天職であるに違いなかった。
「・・・でどうだ?とりあえず、最初の工場はこの台地の上なんかがいいんじゃないか?ここなら、お前の
大事な大事な”タンク様”も立てやすいぞ。」
時々、私をからかう様なあるいは煽る様な言葉を混ぜ込みながら、机の上のナプキンに長年愛用の万年筆(私
が商工会議所議長になった時に記念に市からもらったのだが、すぐに彼に譲ってしまった。私はボールペンで
充分だからだ)で地図らしきものを描いている。色々書き込まれたナプキンには、アンダーラインや丸印で
強調された文字列が縦横に並び、居酒屋の狭い机は時ならぬプレゼンテーションの叩き台へと変貌していた。
それを眺めているとこちらまで楽しくなってくるのだから不思議だ。昼間の官邸での出来事が嘘に思えてくる。
私は決意した。
「市長・・・。」
「・・・それでこの辺りには幹線道路用の用地を確保しておいてだ、ここだ、この辺り・・・。いずれは・・・」
「市長・・・。」
私はもう一度呼びかけた。
「・・・ん、何だ?何か不満があるのか?」
「ないよ、不満なんて・・・。市長、ありがとう・・・。」
「いいよ、礼なんか。お前にはまたタンクをたくさん並べてもらうんだからな。何だったらまた手伝うぞ。
もちろん”お忍び”でだが、なに、まだまだ現場でも働ける。あの眺めは壮観だったよなぁ!」
数十年前の荒野での一場面が再び脳裏をよぎる。一瞬、挫けそうになったが私は言った。
「違うんだよ、市長。私は・・・俺は”対岸”へは行かないよ。」

833 名無しさんの野望 sage 2009/05/28(木) 23:12:11 ID:ICmyHate

>>781
陽光が柔らかく差し込む、どこかノンビリ構えた午後の空間。
時計の秒針が刻む音までが耳に届く静かな部屋で、執務に勤しんでいる時だった。
・・・だだだだだっ・・・騒がしい騒音が階段を登り上がってくる。騒音はすぐに、ドアの前までや
ってきてノックもそこそこに(叩き破るという方が近い)部屋の中に踊りこんできた。
うるさいが、不快ではないその騒音は目の前で熱い湯気をたて、次には汽笛でも鳴らしそうな勢いである。
「顧問!顧問!ほらっ!見て下さいよ、これ!!応募が・・・こんなにたくさん応募が!!」
若い男が両手から取りこぼしそうな程に抱えるそれは、新しく造成された工業団地への応募やら誘致応諾の
書類の山だった。
「ほぉ、こりゃまたすごい・・・。村長、こりゃ大成功だな。」
「はい!これも顧問のアドバイスのお陰です!」
若い村長はこの大反響に滑稽な程喜んでいる。もちろん私も同じ気持ちだが、私まで舞い上がる訳にもいかない。
「で、次はどうする、村長?」
「うーん、僕としては全部の企業に来てもらってもいいくらいなんだが・・・」
「分かるよ、その気持ちは・・・。だが、この村にはまだ、彼ら全てを受け入れられる程のインフラもないし、
中には”ジュニア”の理想とはかけ離れた業者もおるやも知れんぞ。まずは目を磨き、そして選ぶことだ。」
「・・・顧問・・・。職場には親子関係を持ち込むなと、あれ程言ったのはあなたじゃないか・・・。」
「ん?おっ、あぁ、すまん、すまん・・。つい、な。許せ・・・。」
そう、私は今、若き村長となった我が息子に乞われ、顧問として行政にアドバイスを与える立場に就いていた。
尚、息子がどういう経緯で行政者としての立場を希望し、手に入れたのかはまた別の話しである。
とにかく、息子はもう大人であったし、彼の選択に私はまったく口を挟まなかった。悠々自適の老後でも楽しむ
かと考えていた時、突然、新米村長であった息子から顧問として招聘されたのである。過去の私の経験を活かす、
これが最良の道かもしれないと感じた私は即諾し、現在、この村役場での執務となったわけである。
それは”市長”とあの居酒屋で別れてから5年が過ぎた頃のことであった・・・。

927 名無しさんの野望 sage 2009/05/29(金) 23:54:34 ID:i4aM9kQc

>>833
その後の”市長”は居酒屋での宣言通りに行動し、シティの対岸の村で開発三昧と聞いている。
・・・失礼、彼の村は昨年、町制に移行したことを失念していた。現在、彼は”町長”というわけである。
その手腕はまったく衰えを見せておらず、政令指定都市への移行を目指すかつての古巣”シティ”から合併提案
を持ちかけられた時にも、笑い飛ばしながら一蹴したそうである。尚、漏れ聞くところによると、その時の市長
のネクタイは緩んでいたという・・・。

「ところで顧問、今日もこの後2時からだけど、大丈夫?」
「大丈夫だ。このところしばらく続いたが、ようやくメドが立ってきたな。」
「うまく行けば今日で終わるかもよ。ま、頼むよパパ、じゃない、顧問。それじゃ作業着取って来る。」
「あ!おい、村長。分かっているだろうな。くどいようだがこの仕事はマスコミには・・・」
「”秘密”だろ?大丈夫だって。顧問こそ、ボロ出さないでよ。」
「生意気言うんじゃない。何度も経験済みだ。ジュニアがまだこーんなに小さかった頃からな!
 まぁ、立場は逆だったんだが・・・。」
「・・・なぁ顧問・・・。せめて”ジュニア”はやめてくれないか・・・。」
「はっはっは・・・。早く作業着を取って来い!車をまわしておくからな。」

・・・一つの工事がその日、ようやく完工を迎えた。
そこらここらで、作業員達が歓喜の声をあげている。今日、また一つ新しい工場に稼動の灯が宿ったのだ。
「ありがとう!ありがとう!これでやっと、安定操業に入ることが出来る!本当にありがとう!」
創業者と思しき、これも若い人物が周囲から隠れるように、村長にそっと握手を求めている風景が目に付いた。
「おめでとう!私も嬉しい限りです!後は任せましたよ!」
「任せて下さい、村長!私はこれからもっともっと会社を大きくしますよ!そして良い製品をどんどん作る!!
今に世界中に俺達の製品を輸出してやりますよ!!」
「いいですね!私もきっとこの街を発展させてみせます!私はこの村を大きく・・・もっと大きくするんだ!!」
「ところで村長・・・。私はあなた達の協力を皆に公表できないことが本当に悔しいんです。」
「ははっ!気にしないで下さい!ウチの村、まだ小さいんで役場も暇なんですよ、ね、顧問・・・・・・」

936 名無しさんの野望 sage 2009/05/30(土) 00:14:24 ID:JHeHJuE/

>>927
・・・若き開拓者達が、どうやらこの地にも誕生したようである。
肩を組むように語り合う二人の若者。どうしてだろう、まだまだ未熟なはずの彼らがとても頼もしく見えた。
今度こそ、もう、私は必要なくなるだろう。しかし、今はそれが嬉しくて仕方がなかった。
市長・・・。
お前はきっと、あのエネルギーに満ちた時代をもう一度、創り出すだろう。
それがいい。それがお前だ。
でも、俺の方もまんざらじゃなかった。
見てみなよ、あそこの二人。
まるで、あの頃の俺達そのままじゃないか・・・。

・・・さて、ボチボチ帰ろう。さすがに泥と油にまみれたこのシャツは早く着替えなければならない。
そんなことをボンヤリ考えながら帰り支度をしていた時・・・。
「・・・違う!俺が言っているのはそんな無駄な道路じゃない!いいか、税金は誰が払う?民間の身にもなれ!」
「俺には自治体の首長としての責務があるんだ!まずは地域全体の発展を考え、それに応じたマクロな手を打つ。
お前こそ、もう少し大局的な観点に立ったらどうだ!!」
「何だと?!大体貴様が拝み倒すから来てやったんだぞ!偉そうにホザく前にインフラ整備しろ!」
「ふざけるな!なら、下らない脱税論議などしていないで、汗水たらして働いたらどうなんだ!!」
「ぬかしたな!」
「何だ?やる気か??」
・・・おいおい、ジュニア達・・・。そんな所まで俺達に似なくてもいいんだが・・・。

「はいはい、お二方、そこまでにして・・・。良いですかな?お二方とも私をお忘れではありませんか?
こういう時のために私がいるのですよ。まずは議論を止めて、場所を移してゆっくりと話しましょう。
少し遠いですが、”シティ”に馴染みの店があります。小さいけどナカナカ美味い物を出しますよ・・・。」
二人に割り込みながら、携帯電話を取り出す。
「ああ、オヤジ。俺だよ。・・・そうだ、席を押さえてくれないか?・・・そう、いつもの”指定席”がいい。」
―――どうやら、いま少し、隠居は先延ばしになりそうである。
   それにしても・・・・・・。この2人にはまず、どんな話しから聞かせるのが良いのかな・・・。

完

ファーリー先生の次回作にご期待ください!

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最終更新:2009年05月30日 01:59
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