2008/11/06 水俣のダイオキシン土砂:市、セメントに再利用 高温焼成で無害化 /熊本【毎日】


 水俣市を流れる百間排水路などに堆積(たいせき)したダイオキシン汚染土砂の処分問題で、市は5日、しゅんせつ後の土砂をセメント原料としてリサイクルすると発表した。埋め立て処分を決めている県と対応が分かれることになった。宮本勝彬市長は「コストを抑えられ、リサイクルすることで環境モデル都市を目指す市の姿勢にも合う。安全性も確保できる」と独自処理の理由を説明した。来年2月に工事を始め、4月末までに完了させる予定。【西貴晴】

 市の計画では、中心部を流れる排水路のうち栄橋~百間雨水ポンプ場間1200メートルにたまった土砂約300立方メートルをしゅんせつし、現地に設けた仮施設で脱水などの中間処理をしてセメント業者に渡す。セメント化の工程で1450度の高温で焼成するためダイオキシンは分解され、無害化されるという。

 処分はポンプ場より上流を市、下流を県が担当する。県の処理量は約1万1000立方メートル。当初、市は県と共同で埋め立てする考えだったが、県が提示した市の負担額は想定より割高で、当初見込みの約8000万円から約1000万円増えることが判明した。

 対応策を検討した結果、(1)処理量が比較的少なく、業者がセメント化を実現しやすい(2)海水が流入する下流側と比べて塩分濃度が低く、土砂の塩抜き作業が省ける--ことから独自処理を選択した。処理費用は県との共同事業の負担金を下回る見込みという。セメント業者選定に向けた入札や、原因企業チッソとの費用負担割合の協議などに入る。

 汚染土砂問題は00年6月、県の調査で環境基準を超えるダイオキシン類が排水路などから検出されて発覚し、チッソ水俣工場の硫酸カリ製造施設が原因と分かった。県は同市梅戸のチッソ所有地を買い上げて土砂を埋め立て処分する計画で、9月に処分場造成工事に入っている。

 県は市の処理法について「塩分濃度など市と県は条件が異なる。県の工法でも安全性は保たれる」として埋め立て処分を進める方針。

毎日新聞 2008年11月6日 地方版


2008/11/06 セメントに/水俣ダイオキシン処分問題【朝日】


2008年11月06日

  水俣市のチッソ水俣工場周辺の江添川と水俣港で高濃度のダイオキシン類が検出された問題で、市は江添川にたまった土砂約300立方メートルについて、埋め立て処分するとの当初計画を変更し、セメント原料としてリサイクルすると5日、発表した。当初計画より費用が抑えられるという。

  当初計画では江添川の上流部約1・2キロの土砂約300立方メートルを市で、下流部分と水俣港の土砂約1万立方メートルを県で処分し、ともに同市梅戸地区に埋め立てる予定だった。

  しかし市担当分について、脱水処理など中間処理費用が予想以上に膨らみ、総費用が当初試算より約1千万円多い約9千万円になることが7月に判明。市は土砂を焼却炉に入れて千度以上の高温でダイオキシン類を分解し、セメント原料にする方法の採用を決めた。今年度中に工事に着手する予定で、総費用は8千万円以下に抑えられる見通しという。

  市は今春、水俣署新築建設工事現場の地中から見つかった約900トンのカーバイド残さ処分でも同様の方法を採用している。

  県が事業主体になる汚染土砂の埋め立て処分は当初計画通り、今年度中に着工される予定。宮本勝彬市長は「リサイクルを選んだのは安全性ではなくコストの問題から。県の担当分は大量なので、同じ方法は採用できないだろう。県の埋め立て処分は引き続き支持したい」と話した。


2008/02/26 ダイオキシン汚染土砂 固化処分へ【読売】

県と水俣市、今夏にも着工
 水俣市のダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、事業主体の県と市が、今夏にも処分場建設に着工する方針であることが分かった。地元の3団体が無害化処理を求めているが、県側は汚染土砂をコンクリートで固めた上で埋め立てる固化工法を採用する考えだ。

 汚染土砂は、チッソ水俣工場の排水が原因で県管理分の水俣港と百間排水路、市管理分の百間雨水幹線に約1万1300立方メートルが堆積(たいせき)。計画では面積約2900平方メートル、容量約9400立方メートルの最終処分場を造る。総事業費は約10億円。

 「水俣に産廃はいらない!みんなの会」など3団体は、「水俣病の教訓を生かし無害化処理すべき」などと主張。県と市は3団体と面談するなどして早期着工へ理解を求めていた。県は「固化方式は無害化に匹敵するとの説明を尽くしてきた。これ以上、汚染土砂を放置できない」としている。

2008/2/25 水俣市の汚染土砂 県、夏にも除去着手【熊日】


 水俣市の水俣港や百間排水路などに、国の環境基準を超えるダイオキシン類を含む土砂が堆積(たいせき)している問題で、県は今夏にも汚染土砂の除去などの工事に着手することを決め、二十五日の県議会環境対策特別委員会に報告した。

 県は、しゅんせつした汚染土砂を埋め立てる処分場建設から着工する考え。今後、排出源のチッソが所有する処分場予定地(同市梅戸町)を買収し、完成後二〇〇九(平成二十一)年度に汚染土砂の除去作業に入る。

 県の処理計画をめぐっては、同市の住民三団体が熱処理などによる無害化や処分先の変更を求めており、工事着工の方針を固めた県への反発が強まりそうだ。

 ダイオキシン類を含む汚染土砂は二〇〇〇年六月、百間排水路の川底から検出。県は公害防止事業で、汚染土砂約一万千三百立方メートルをしゅんせつし、処分場に埋め立てる計画。総事業費は九億三千六百万円で、チッソが三分の二を負担する。

 県は当初、昨年三月までに処分場を着工する予定だったが、住民の反対を受けて土砂の処理工法を再検討。しゅんせつ土砂をセメントで固めて埋め立てる「変更計画」をまとめたが、昨年八月以降、三度開かれた住民説明会で三団体の納得は得られなかった。

 特別委で県港湾課は「専門家による検討結果であり、水俣市も(現在の)工法を支持している。汚染の拡散を防ぐため、これ以上処理を遅らせるわけにはいかない」と説明した。

 一方、県計画に反対している「水俣に産廃はいらない!みんなの会」の坂本龍虹会長は「県は住民と対話を続けている途中ではなかったのか。断固抗議する」としている。(並松昭光、渡辺哲也)


2008/02/07 汚染土処分、合意遠く・・・ダイオキシン検出から6年【読売】


ダイオキシン汚染土砂の最終処分場予定地周辺(水俣市梅戸町) 水俣市のチッソ水俣工場の排水が原因で水俣港などに堆積(たいせき)するダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、事業主体の県と市は8日、市総合もやい直しセンター「もやい館」で市内全域を対象とした説明会を開く。ダイオキシン問題を巡っては処分場予定地付近の地元説明会を3度開いているが、全市民向けの開催は初めて。県側は「コンクリート固化方式での早期着工に理解を求めたい」としているが、「無害化処理」や「チッソの工場内での処理」などを求める反対派の反発は必至だ。2002年春のダイオキシン検出から約6年がたつが、着工のメドはついていない。現状をまとめた。(白石一弘)

 ■無害化

 「ダイオキシンは毒性が強く心配。水俣病の教訓を生かし、安全に処分すべき。無害化処理に計画を変えてほしい」

 06年10月。処分場予定地付近の住民らを対象とした説明会で、「水俣に産廃はいらない!みんなの会」の坂本龍虹会長らが猛反発し、県側が目指していた同年度内の着工は頓挫した。

 県側はその後、住民側の意向も踏まえ、汚染土砂をセメントで固めた上で埋め立てる方式を採用。07年6月、市も了承した。通常の脱水処理よりダイオキシンが溶け出す可能性が大幅に減るという。しかし、あくまで無害化処理を求める反対派は納得せず、話し合いは宙に浮いたままだ。

 地元説明会は07年7月、同9月にも開かれた。県側は「無害化は理想だが数十億円の費用が必要で、財政的に困難。固化方式は無害化に匹敵する次善の策」と早期着工に理解を求めたが、住民側との合意には至らなかった。

 ■環境基準

 事態を複雑にしているのはダイオキシンの環境基準に対する位置付けだ。問題の汚染土砂は水の底(底質)にあり、底質の基準は150ピコグラム。水俣市の汚染土砂は360ピコグラムでこの基準を超えている。陸上での基準は1000ピコグラムで、1000ピコグラム以下の場合、国の技術指針によると覆土処理だけで足りる。

 県側は「同程度の土砂が陸上で発見されても処理の対象にはならない」とする一方、「水俣は水俣病を経験した特別な地域。住民感情にも配慮し、二重、三重の対策を施して処分する」と強調。「セメント固化に加え、海岸沿いの処分場を当初の計画より離れた所に移動する対策を講じている」と理解を求める。

 こうした県側の説明が住民側をさらに刺激。「処分の必要性もないものに多額の税金を使うのか」という批判を招き、混乱に拍車をかけている。

 ■チッソへの反発

 汚染土砂は、県管理分の水俣港と百間排水路、市管理分の百間雨水幹線に堆積する約1万1300立方メートル。計画では面積約2900平方メートル、容量約9400立方メートルの最終処分場を造る。総事業費は約10億円。国の公害防止対策事業により、県管理分(約1万1000立方メートル、約9億3600万円)の3分の2をチッソ、残りを国と県が折半する。市管理分については事業費、負担割合とも決まっていない。

 住民側が納得できない点にチッソの姿勢もある。チッソは説明会に1度も参加せず、謝罪もしていないからだ。住民側は「チッソの工場内での処分」も求めるが、チッソは「計画は公害防止対策事業に基づき事業者の県と市が決めること」という態度。その消極的な姿勢に住民側のいらだちは募るばかりだ。

 宮本勝彬市長は「目の前にある危険なものを1日も早く、安全に処理する必要がある」と話す。その点では住民側も一致する。説明会は午後7時から。問い合わせは市下水道課(0966・61・1626)へ。

(2008年2月7日 読売新聞)


2008/01/13 ダイオキシン問題 県が採水調査 水俣、処分場予定地付近=熊本【読売】

 水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、事業主体の県は9日、処分場予定地付近の海岸で採水調査を行った。「明神の環境を守る会」(大矢理巳子代表世話人)の要望に応じたもので、県は1か月後をメドに分析結果を報告する。
 調査は、県環境保全課の職員らが同会メンバーの立ち会いで実施。岩盤から染み出している可能性がある液体を採水した。
 ダイオキシン問題を巡っては、同市梅戸町のチッソヘリポートに処分場を建設し、脱水処理した汚染土砂をコンクリート固化した上で埋め立てる計画が進んでいる。事業主体の県と市は「地形や地質から適地」として、早期着工に理解を求めている。
 これらに対し、同会は昨年9月、汚染源のチッソ工場の敷地内で処分するよう要望。さらに「海岸には黒い液体が染み出し、有害物質が含まれている可能性がある」と指摘していた。県は同11月、「岩の割れ目の黒い鉱物が結晶化したことが原因で有害物質ではない」と答えたが、同会が調査を求めていた。

 写真=処分場予定地付近の海岸で採水する県職員と住民ら

2007/11/30 水俣のダイオキシン土砂:汚染土砂の処分問題 市、県計画への同調示す /熊本

◇住民団体に説明

 水俣市の百間排水路などにたい積したダイオキシン汚染土砂の処分問題で、市は28日、処分の予定地や方法などについて県の計画に同調する考えを示した。住民団体「明神の環境を守る会」(大矢理巳子世話人代表)の質問に答えた。

 処分の主な事業主体となる県は、しゅんせつ後の土砂をセメントで固め、原因企業のチッソ所有地(同市梅戸)を買い上げて埋め立てる方針を示している。宮本勝彬市長は「一刻も早く安全な状態に持っていかないといけない。今の場所、方法でお願いしたい」と述べ、県に同調する考えを説明した。

 守る会はチッソ水俣工場構内での埋め立てを提案している。市役所を訪れた大矢代表らは「構内が無理というなら、チッソは住民感情を考えてまず謝罪すべきで、謝罪するよう市がチッソに働きかけてはどうか」と提案、市は検討する考えを表明した。【西貴晴】


2007/11/28 ダイオキシン処分問題 水俣市が初の単独説明会 着工へ理解求める=熊本【読売】


 ◆反対団体に 
 水俣市のチッソ水俣工場の排水が原因で水俣港などに堆積(たいせき)している高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、市は26日、事業主体の県と市の処分計画に反対する市民団体への説明会を市役所で開いた。市は「一日も早く処分したい」と述べ、早期着工へ理解を求めた。
 市単独の説明会は初めて。「水俣に産廃はいらない!みんなの会」「ダイオキシン類の安全な処理を求める住民の会」を対象に個別に開いた。
 計画では、処分場は同市梅戸町のチッソヘリポートに建設。脱水処理した汚染土砂をコンクリートで固めた上で埋め立てる。反対派は水俣病問題を引き合いに、無害化処理や原因企業としてチッソの工場敷地での処理などを求めている。
 こうした要望に対し、市側は「今の計画で二次被害が出るとは思えない。(数十億円もかかる)無害化は理想だが財政的に困難。市としてこれ以上、県を説得することはできない」などと答えた。「明神の環境を守る会」にも28日、説明の場を設ける。

2007/11/21 ダイオキシン処分場 県、住民団体に改めて理解求める=熊本


 水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、事業主体の県は20日、処分場予定地の変更を要望していた地元住民団体に対し、「地形や地質から適地」と回答し、従来通り、早期着工に理解を求めた。
 県担当職員が、「明神の環境を守る会」の事務局を訪れ、口頭と文書で「工場敷地内は地下水位が高く総合的に予定地の安全性が高いと判断した」などとする回答を伝えた。同会は「安全性の保証がない」として改めて変更を求めた。
 計画では同市梅戸町のチッソヘリポートに処分場を建設し、脱水処理した汚染土砂をコンクリート固化した上で埋め立てる。

2007/10/23 ダイオキシン処分場 水俣市、説明会開催へ 反対団体に着工理解求める=熊本【読売】


 水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、市は22日、事業主体の県と市が進める計画に反対している団体向けに市独自の説明会を近く開くことを明らかにした。
 「水俣に産廃はいらない!みんなの会」「ダイオキシン類の安全な処理を求める住民の会」「明神の環境を守る会」の3団体が対象。早ければ今月中にも開く方針で、それぞれ反対理由に違いがあるため、説明会は個別に行い、早期着工への理解を求める。
 計画では、処分場は同市梅戸町のチッソヘリポートに建設。脱水処理した汚染土砂をコンクリートで固めた上で埋め立てる。反対派は無害化処理や原因企業チッソの工場敷地への予定地変更などを求めている。
 これらに対し市は、「場所も処分法も安全。目の前にある危険なものは一日も早く処分しなければならない」としている。



2007/09/24 水俣のダイオキシン土砂:住民団体が現地見学会 /熊本【毎日】


 水俣市のダイオキシン汚染土砂除去問題で、土砂の埋め立て場所変更を求める地元住民らで作る「明神の環境を守る会」(大矢理巳子世話人代表、約70人)が23日、現地見学会を開いた。

 汚染土砂は、原因企業のチッソ水俣本部から水俣湾に注ぐ百間排水路などにたい積している。県は汚染土砂約1万1300立方メートルをしゅんせつ・脱水したうえ、湾に近い同市梅戸のチッソ社有地を買収して埋め立てる計画だ。

 水俣病の語り部でもある大矢代表が呼びかけて今月設立した守る会は「周辺には住宅もあり、十分な安全性が示されていない」として場所の変更を求めている。

 見学会には会員ら約20人が参加し、予定地周辺の地層などを確認した。大矢代表は「汚染物質が予定地外にしみ出した場合、海から被害が拡大する可能性がある。現地を見て危険性が理解してもらえたと思う」と話していた。【西貴晴】

2007/09/19 汚染土砂処分場の予定地変更など要望 市民団体、水俣市長に=熊本【読売】


 水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、処分場予定地付近の住民でつくる「明神の環境を守る会」(大矢理巳子代表世話人)の8人が、宮本勝彬市長に予定地変更などを求める要望書を提出した。
 処分場は同市明神町に隣接する梅戸町のチッソヘリポートに建設する予定で、事業主体の県と市が脱水処理した汚染土砂をコンクリートで固め埋め立てる計画。
 要望書では、原因企業のチッソ水俣製造所の工場敷地への予定地変更や、住民説明会などで敷地での処理は困難とした調査内容の公表、チッソの謝罪など5項目を求めている。
 これらに対し、宮本市長は早期処理を図るとして現計画への理解を求めた。
 同会は予定地周辺の約70人で構成し、今月4日に結成した。要望書はチッソにも提出した

2007/09/12 ダイオキシン処分 水俣市長「固化」を推進 無害化派の反対必至=熊本【読売】


 ◆県案支持 
 チッソ水俣工場の排水が原因で水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題に関し、県と共に事業主体となっている同市の宮本勝彬市長は11日、「県の工法は安全性が高い」と述べ、脱水処理した土砂をコンクリートで固化した上で埋める処理方式を推進する考えを示した。予定地の地元住民らは無害化処理を求めており、反発を招きそうだ。
 市議会一般質問で、岩阪雅文議員(自民)の質問に答えた。岩阪議員は「(計画への)市の主体性が感じられない。市として県案を推進するのか」と質問。宮本市長は県案を評価する姿勢を示し、「県の工法や場所について住民の理解が得られるよう努力したい」などと述べた。
 宮本市長は、8月にチッソの後藤舜吉会長に会ってチッソ構内で処分を行うよう申し入れ、「液晶事業拡張などの計画があり、構内処分は厳しい」との回答があったことを明らかにしたうえで、計画通り同市梅戸町にあるチッソヘリポート用地が処分場になるとの見通しを示した。

2007/09/08 ダイオキシン処分場説明会 話し合い、依然平行線 チッソに住民猛反発=熊本【読売】


 ◆チッソの不参加に住民猛反発 
 チッソ水俣工場の排水が原因で水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題で、公害防止法に基づき事業主体となる県と市は5日夜、処分場予定地付近の住民を対象とした3度目の説明会を開いた。
 県側は「通常の埋め立てではなく、コンクリートで固化した上で埋め立てるので安全性に問題はない」と従来の見解を繰り返して早期着工への理解を求めたが、住民側は「無害化すべき」「チッソ構内で処分すべき」などと主張し、話し合いは平行線のままだった。
 説明会は昨年10月と7月に続き、3度目。この日は、住民側の質問に県側が答える形で進行。無害化について県側は「コンクリート固化が無害化に匹敵する」などと繰り返した。チッソ構内での処分に関しては「土地の提供を強制することはできない」「予定地が地質的に適地」などとした。
 住民側が強く求めていたチッソの原因企業としての謝罪と説明会への参加はこの日も実現せず、住民側は猛反発。県側は「チッソに要望を伝えたい」と述べるにとどまった。午後7時に始まった説明会は同11時過ぎに終了。県側は近く、再び説明会を開く方針。

2007/09/07 水俣のダイオキシン土砂:汚染土処分方法巡り平行線 県が3回目、住民説明会 /熊本【毎日】


 水俣市のダイオキシン汚染土砂除去問題で、県は5日、同市で処分方法を巡る住民説明会を開いた。しゅんせつ土砂について、県はセメント固化によるダイオキシン溶出防止策を示したが、住民側からは無害化処理を求める声が相次ぎ、主張は平行線をたどった。

 説明会は昨年10月と今年7月に続いて3回目。住民約40人が参加し、午後7時から4時間余りに及んだ。

 県は無害化処理について「行政として採用できる効率的な技術レベルに達していない」などと説明した。これに対し住民側は他県で無害化を試みた例があることを指摘し、比較検討結果を示すよう求めた。また、住民からは原因企業のチッソによる説明がないことへの不満が相次ぎ、県は「説明会出席の要望をチッソに伝える」と答えた。

 汚染土砂はチッソ水俣本部から水俣湾に続く百間排水路や河口にかけてたい積している。県は約1万1300立方メートルをしゅんせつ。同市梅戸のチッソ社有地を買収して埋め立てる計画を示している。【西貴晴】

2007/09/06 ダイオキシン処理 住民側、納得せず【熊日】

 水俣港百間船だまりなどにたい積する高濃度ダイオキシン類を含む汚染土砂処理に関する三度目の住民説明会が五日夜、水俣市で開かれた。事業主体の県は、チッソ所有地への埋め立て処分にあらためて理解を求めたが、住民側は納得しなかった。県は引き続き説明会を開き、理解を求める方針。

 汚染土砂は、船だまりなどの海や河川の底にたい積している国の環境基準(一グラム当たり百五十ピコグラム)を超えた一万千立方メートル。県と市の公害防止対策事業でしゅんせつしてセメント固化し、原因企業のチッソ所有地(同市梅戸)に埋め立てる計画で、事業費は約九億三千六百万円。チッソが三分の二を負担する。

 説明会では、無害化処理を求める住民側から、処理方法の検討や処分地選定の経緯に関する議事録やボーリング調査などの資料提出を求める意見が相次ぎ、県は回答を次回に持ち越した。

 一部住民が新たに提案していた港湾用地二カ所への処分地変更について県は「海に近く、現在の予定地に比べて地盤強度も劣る。安全性の面からも適切ではない」と説明した。

 また、吉海安丈・市産業建設部長は市の立場について「現在の工法、場所でやむを得ないと考えている。引き続き理解を得る努力をしたい」と答えた。(渡辺哲也


2007/08/26 [会う聞く話す]水俣市長 宮本勝彬さん=熊本【読売】


 ◆産廃処分場に断固反対「何もないところに危険持ち込む」 水道水水源地、生活に悪影響 
 水俣市南部の山林で民間業者「IWD東亜熊本」が進めている産業廃棄物最終処分場建設計画に対し、市は建設阻止の旗振り役を務めている。運動の中心になっているのは昨年2月の市長選で現職に大差をつけて初当選した宮本勝彬市長(63)だ。計画に反対する理由や計画をストップさせる手段などについて聞いた。また、同市で問題となっている国の環境基準を超えたダイオキシン汚染土砂の処分問題について今後の方針も尋ねた。
 ――計画に反対する理由を聞かせてください。
 「水俣は人類史上に残る水俣病という悲惨な公害が起こり、生命の受難を経験した。それらを礎として、新たな夢のあるまちをつくるのが市長の私に課せられた責務。計画は水俣の息の根を止める暴挙と言ってよく、あまりにも厳しい仕打ちと思う。産廃処分場の必要性は理解するが、適地とは言えない。市民の生命、財産、健康を害する恐れがあることも事実であり、受け入れられない」
 ――IWD側は県環境影響評価条例に基づく環境影響評価準備書を作成し、2度にわたる住民説明会を開催するなど着々と計画を進めています。建設を阻止する具体的な方策は。
 「計画がいかに危険性をはらんでいるかを科学的な根拠の下で証明する。そのために専門家にもお願いしている。環境への影響が少ないと主張する準備書の矛盾点も指摘する。それらの積み重ねで会社に勇気ある撤退を促したい」
 ――とは言うものの、許認可権を持つ県は、法律の要件を満たせば設置を認めるとの立場です。
 「県が認めないよう計画の危険性をいろいろな角度から科学的に証明していく」
 ――市は「産廃阻止!水俣市民会議」をつくっていますが、民間の計画に対し、行政の中立、公平性という観点で問題はないですか。市の考え方を「地域エゴ」という指摘もあります。
 「処分場は周辺への影響が少ない所につくるべきだ。計画場所は市民だけでなく津奈木町、対岸の天草市御所浦町への水道水の水源となる水俣川の上流域であり、生活への影響を考えれば適地とは言えず、反対するのが当然。また、水俣病が起こった歴史を考えれば、地域エゴという指摘は理解できない」
 ――ただ、チッソ水俣工場が汚染源のダイオキシン問題に関しては、市は県と共に最終処分場をつくる計画を進めています。
 「ダイオキシン汚染土砂は、今、目の前にある危険なものを処分する話。IWD側の計画は、何もない所に危ないものを持ち込むものであり、根本的に次元が違う。水俣港や百間(ひゃっけん)排水路などに堆積(たいせき)する汚染土砂は1日も早く、安全に処理しなければならない」
 ――一部の市民は無害化処理を求めています。
 「無害化は今の技術では困難と聞いている。現在、セメント固化による処分を住民に説明しているところであり、早期解決につながればと思っている」
 ――最後に聞きます。「水俣病の教訓」とは何でしょうか。そのための市の役割は。
 「行政、事業者、市民……。それぞれの立場での教訓があるが、共通しているのは人間の生命が何より優先されなくてはならないということ。水俣病によって多くの人が社会的、精神的に苦しみ、我々は二度と環境を汚染してはならないことを学んだ。このことは人類の未来への大きな教訓だと思う。水俣の役割は、環境に特に配慮したまちづくりを進めること。そのことが水俣病で亡くなった人たちに報いることになると確信している」

 〈記者の感想〉
 ◆今後問われる真価 
 「賛否は中立」。産廃最終処分場建設計画に関し、市長選直前までそう言い続けた現職の前市長に対し、当時は市教育長だった宮本さんが「断固反対」を掲げて立候補を表明したのは2005年11月。現職の強力な後援会組織に草の根の戦いを挑み、産廃阻止の訴えが大きなうねりとなって圧勝した。その後は公約通り、産廃阻止を市の最重要課題に位置づけ、専門家による独自の環境影響調査などを実施している。
 IWD東亜熊本の本社は市内にあるが、背後には東京の親会社が存在する。その親会社の社長らとも会い、計画の白紙撤回を直談判するなどの行動力に強い決意を感じる。法廷闘争も辞さないとする姿に市民の期待も大きい。
 環境影響評価準備書に対して市が集めた意見書には国内外から3万3432通が寄せられた。市の人口は約2万9000人で、関心の高さをうかがわせた。
 ただ、会社側は「水俣病の教訓」を生かし、世界に誇れる安全な処分場を建設するとの方針を示す。市長の真価が問われるのは、計画が本格的に進むこれからだ。(白石一弘)

 ◇みやもと・かつあき 熊本市出身。東洋大文学部卒業後、中学の国語教師として水俣第二中に赴任。市内6中学校で教べんを執り、3小中学校では校長も務めた。人生の半分以上を水俣で過ごし、「水俣は心のふるさと」と話す。根っからの野球好きで、高校時代は野球部主将。教師時代は熱血監督としてチームを指導した。教育長職を辞し、昨年2月の市長選で初当選。就任直後に市役所に産業廃棄物対策室を設置したほか、官民一体の「産廃阻止!水俣市民会議」もつくり、会長に就いた。同会議は現在55団体が加入し、市民一丸となって反対運動を進めている。市政運営に際しては「小さくても輝く街、ほっと安心できるぬくもりのある街」を目指す。同市長野町に妻と2人暮らし。

 写真=産廃最終処分場建設計画に対し「法廷闘争も視野に入れている」と話す宮本市長


2007/07/20 ダイオキシン処分場 水俣市と県が「早期着工、理解を」=熊本【読売】


 チッソ水俣工場の排水が原因で水俣市の水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分問題に関し、事業主体の県と市は19日、処分場予定地付近の住民や市漁協などへの説明会を開き、早期着工に理解を求めた。
 県と市は昨年10月、水底の土砂から環境基準値(1グラム当たり150ピコ・グラム、ピコは1兆分の1)を超えるダイオキシンが検出されたとして、水俣湾沿いのチッソ社有地に処分場を造る計画を発表。その後、地元住民らによる無害化処理などの要望を受け、脱水処理した汚染土砂をセメントで固める固形化方式の導入を決めた。
 この日の説明会で県側は、「無害化は技術的に確立していないが、二重三重の安全対策を講じており、健康不安に問題はない」と答えた。

2007/07/12 チッソ構内を処分地に 水俣のダイオキシン問題 市民団体が申し入れ【西日本】


 チッソ水俣製造所(水俣市)の百間排水路などで見つかったダイオキシン類の処分問題で、同市の市民団体が11日、ダイオキシン類の最終処分場として、原因企業である同製造所構内の土地を提供するようチッソ水俣本部へ申し入れた。

 ダイオキシン類の処分については、県が公害防止対策事業として、同市梅戸に、中間処理した汚染土をセメント固化し、埋め立てる計画を策定したが、予定地周辺の住民などが反発。

 今回申し入れたのは、梅戸地区周辺の住民でつくる「ダイオキシン類の安全な処理を求める住民の会」(緒方利光会長)と「水俣に産廃はいらないみんなの会」(坂本龍虹会長)。両会は「処分場は、民家が近い現計画地ではなくチッソ構内にすべきだ」と訴えた。

 チッソ側は「事業主体は県で、チッソは回答する立場にない」とし、県港湾課は19日に地元説明会を実施する予定。

2007/07/05 ダイオキシン汚泥除去「県の説明は不十分」【熊日】


 水俣市の水俣港百間船だまりなどに高濃度ダイオキシン類を含む汚染土砂がたい積している問題で、水俣市議会公害環境対策特別委員会(野中重男委員長)は三日、しゅんせつした土砂をセメント固化して埋め立てる県の除去方針について、住民から意見を聴いた。

 出席者からは「方針決定する際、何の説明もなかった」などの意見が相次ぎ、特別委は県に対し説明を求める要望書を提出することを決めた。

 県は当初、国の環境基準(一グラム当たり百五十ピコグラム)を超える汚染土砂一万千立方メートルをしゅんせつし、そのまま排出源のチッソ所有地(同市梅戸)に埋め立てる計画だったが、住民が反発。今年六月、新たにセメント固化処理する変更計画を市に伝えていた。

 特別委には、地元三地区の住民の会、水俣市漁業協同組合、市民団体の代表が出席。「無害化処理を要望していたのに、何の回答もなくセメント案が浮上したのは理解できない」「なぜチッソの工場内に埋め立てられないのか」などの意見が出た。(渡辺哲也)

2007/06/19 水俣ダイオキシン汚染土砂 県が固形化方式採用=熊本【読売】


 チッソ水俣工場の排水が原因で水俣港などに堆積(たいせき)する高濃度ダイオキシン汚染土砂の最終処分について、事業主体の県がセメント固形化による埋め立て方式を採用し、水俣市も了承した。無害化処理を求めている反対派は反発し、再検討を申し入れる方針。
 固形化方式は18日、市議会の特別委員会で市が明らかにした。脱水処理に比べ、ダイオキシンが溶出する可能性が大幅に減るという。市は「無害化には通常の2~3倍の費用が必要。現時点で最善の策と判断した」とし、県と歩調を合わせる姿勢を示した。
 汚染土砂の範囲は▽県管理分の水俣港と百間排水路▽市管理分の百間雨水幹線――の計約1万1300立方メートル。同市梅戸地区のチッソ所有地に最終処分場を造り、脱水処理して埋め立てる計画だったが、住民らが強く反発。「水俣に産廃はいらない!みんなの会」などが県側に無害化処理などを申し入れていた。
 県と市の方針を受け、みんなの会の坂本龍虹会長は「あくまで無害化を求める。(民間業者による)山の産廃計画に反対しているのと同様、市は強気で対応してほしい」と話している。一方、市漁協は無害化よりも早期の埋め立て処分の必要性を訴える要望書を提出、地元の混乱が続いている。  



最終更新:2008年11月09日 17:32