プロポスレ@Wiki

修羅場? 1

最終更新:

orz1414

- view
管理者のみ編集可
■修羅場? 1


「○○ですが…」
「入りなさい」
「……失礼します」
 一礼してから、襖を開ける。
 部屋の中に居たのは幽々子さんと、俯いて座っている妖夢さん。
 …妖夢さんの顔が見えないけど、何かあったのだろうか?
 気になったものの、幽々子さんに促されたのでしぶしぶ座布団の上に座る。
「貴方を呼んだのは他でもありません。どうしても…言いたい事があるの」
 俺のほうを真っ直ぐに見つめてくる幽々子さん。その眼は、恐ろしいほどに真剣だった。
 だから俺も、居住まいを正して言葉を待つ。

「私、西行寺幽々子は…貴方の事を……お慕いしています」

 ……………え?
 理解する暇も与えず、幽々子さんは三つ指を突いて深々と頭を下げる。
「ゆ、ゆ、ゆゆゆこさん?」
 脳内がありえない状況にパニックを起こしている。そろそろフリーズしそうだった。
「いきなりな話で申し訳ありません…けれど、こんな事があるとは私も信じていませんでした。
 まさか…この私が、一目惚れをしてしまうなんて…」
 顔を上げない幽々子さん。それは赤らんだ顔を見せたくないからか。
「最初に顔を見たときから、胸の高鳴りが止まりませんでした。
 貴方が忙しく動くその姿を、眼で追い続けるようになりました。
 貴方の事を思うと…眠れぬ事も多々ありました…」
 ただ静かに、言葉が紡がれる。俺は唯、黙って聞いていることしか出来なかった。
「幽々子さん……」
 何か、答えなければ。そう思って、口を開こうとした時だった。
「…今この時、この思いを告げようと決めたのには…理由があります」
 その言葉に紡ごうとした言葉を止める。一体、何が原因なんだろうか…?
 ………一瞬の思考の内に、一つ仮定が出た。だが、まさか…
「……妖夢」
 幽々子さんは、傍らに座っていた妖夢さんを促す。
 妖夢さんはややあって、ゆっくりと顔を上げた。その顔は…

 涙で、ぐしゃぐしゃになっていた。

「わたっ、私…わたしも、貴方の事が、好きです…好きなんです!」

 今度こそ完全に、俺の脳内がフリーズした。最早理解の範疇を超えてしまっている。
「これが…今日の二人の不調の理由…そして、今日のこの時の理由です」
 …だから、なんだろうか?
 二人がお互いに余所余所しくしていたのも、どこか辛そうにしていたのも。
 全ては…俺が原因だったのか?
 脳内に嵐が吹き荒れる。上手く感情が制御できない。
「……ごめんなさい。少しだけ…少しだけ時間を下さい」
 それだけ言って、部屋を後にするだけで精一杯だった。

「…待っています」

 そういったのは、果たしてどっちだったか。
 俺は…どちらを選ぶのがいいんだろうか……?

1スレ目 >>325-326

───────────────────────────────────────────────────────────

決断せよ!(ゴゴゴゴゴゴゴ)

Aゆゆことつきあう
Bようむとつきあう
Cさんにんでアバンチュール

「さ、三人で・・・アバンチュール」
バキィ!(ゆゆこ ごきげんななめ)
ズバァ!(ようむ ごきげんななめ)
「ぐらぶろっ!」


ごめんなさい。ごめんなさい。

1スレ目 >>330(一部修正)

───────────────────────────────────────────────────────────

[b]ようむエンド を えらぶぜ !

 さくさくと庭の土を踏みしめ、歩く。
 何となくだけど…この場所に彼女がいるような気がした。
 だから、この胸に定めた思いを伝えるために、彼女を探す。
「…あっ」
 程なくして、彼女…妖夢さんを見つけた。庭石に腰掛け、ぼんやりとしていたようだ。
「こんばんわ」
 俺は片手を挙げて挨拶する。けれど、妖夢さんの表情は硬い。
 …まぁ、先ほどのやり取りを考えれば理解できなくもない。
「………来る所、間違っていませんか?」
「いいや。ここで合ってるよ」
「間違ってます。…貴方が行くべき場所は、逢うべき人は…」
「妖夢」
 初めて、さんをつけないで彼女を呼んだ。
 妖夢はびくりと震えて、言葉を切る。
「俺は、君のことが好きだ。君を…愛している」
「…やめて、ください…」
「君と一緒に庭仕事をするのが好きだった。君と料理をするのも楽しかった」
「やめて…やめてっ!!」
 いやいやをするように頭を振りながら、妖夢は叫んだ。
「なんで…なんで幽々子様じゃなくて、私なんですか!?幽々子様を選ばないんですか!?
 幽々子は本気で貴方を好きだといったのに…それを否定するんですか?」
 答えない。そんな事、わからないほど俺は鈍くない。けれど、同じようにもう一つ、分かっている。
「…君だって、本当の心で俺のことを、好きだって言ってくれた」
「!」
「俺は君の心に答えたかった。だから…ここへ来たんだ」
 悩まなかった訳が無い。人生でこれ以上ないほどに、苦しんだ。
 それでも…俺は決めた。愛するのは、この子しか…妖夢しかいないと。

「わたし、私は…」
 よろよろと力なく妖夢は立ち上がり、俺のほうへと歩み寄り、手を伸ばす。
 …まるで、届かぬものを求めるように。
「従者失格…です。主人の求めるものを…唯一度恋焦がれた方を……奪って…」
 そして俺の胸にくず折れるように倒れこむ。きゅっと握られる、俺の服。
 じんわりの湿った感触。どうやら…泣いているらしい。
「ごめんなさい…ごめんなさい……!でも…でもっ……わたし…わたしもっ……好き…大好き…っ!!」
 泣きじゃくりながら、それでも…胸の内に秘めていた想いを、妖夢は吐き出し続ける。
 俺は…愛しい彼女の頭を撫でながら、その全てを受け止め続けた。
「はぁ。別に気にしなくていいのに…妖夢ってば、頭硬いわねぇ」
 私は誰にでもなく呟いて、寄りかかっていた石灯籠から身を離す。
 …後ろでは、泣きじゃくる声が聞こえる。昔よく聞いた、妖夢の泣き声。
「…幸せになりなさい、妖夢」
 私がそれを許してあげる。他ではない、貴女なら。
 とてとてと何事も無かったようにその場を離れ、再び自室へと戻る。
 …告白したあの時の空気は、一切この場には残っていない。
「あーあ、それにしても…振られちゃったわね」
 つとめて何時もののほほんとした口調で呟いてみた。けれど、それはどこか空々しかった。
「…振られて…しまったのね」
 胸のうちから、溢れ出る感情。抑えなければと必死になればなるほど、零れてゆく。
 …まるで、湧き水のように吹き出てくる哀しみ。
「……ぐすっ、うあぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁっ…」
 初めてだった。胸が焦がれるのだと、本当に思っていた。
 …答えてくれたのなら、この身を炭にしてしまってもいいとまで…思った。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!!」
 涙が溢れた。もう抑えられない。ただただ声を上げ、泣き続ける。

 もういい。泣いてしまおう。泣いて、泣いて…そして明日には笑おう。二人に笑ってあげよう。
 それが二人に送る、最高のお祝いになると信じて。
 だから、今はこの余分な涙を、全て出してしまおう。
 きっと明日には、いつもの私になれる。

 翌日の幽々子の眼は、あの月の兎に匹敵するほど赤かった。
 心配する二人に向かって、けれど…幽々子は笑顔で言ったのだ。
「幸せになってね…二人とも」
 と。

1スレ目 >>335-336

備考:幽々子エンド、ハーレムエンドはまだ無し?
じゃあそのうち俺が・・・いややっぱなんでもない

───────────────────────────────────────────────────────────

俺は今、とても逃げたいと言う衝動に駆られている。
現在居るここは、紅魔館の一番偉いお嬢様が居られる部屋。
俺は言うなれば清掃員みたいな事をして働いている。
そして、目の前には――

「○○は私のものでしょう?」
「違う!○○は私のものよ!」
「…お嬢様、妹様…そろそろ…放してもらえませんか?」
俺の腕を人外の力で握り締める吸血鬼の姉妹が居た。
と言うか俺、普通の人間であって中身もどこかの鬼さんみたく鍛えてないので
力を込められると…折れそうでというか切れそうで、この世から消えそうなんですが…
「ダメよ」
「ダメ!」
そうして放してくれる様子なんて微塵もありませんでした。
誰か、助けて…。
「…母上様、俺はもう死にそうです」
大岡裁きならば、もうちょっと気を使ってくれそうなんだけど…
今の状態じゃ、二人とも俺を自分の所有物だと思っているようだから
無理だ。むしろ放してくれたら奇跡だ。

今、切実に欲しい助けは咲夜さんか…図書館のパチュリーさんのどっちかが欲しいものだ。
門番の人は助けようとしても、きっと片手であっさりと終わってしまう気がする。
「なんで、こんな事になっちゃったんだろう…」
俺は事の起こりについて再びリプレイを開始した。



「ふぅ…これで心もピカピカだな」
紅魔館の一室で俺は顔が映るくらい磨いた壺を見ながら密かに笑っていた。
やはり掃除をするというものはいいものだし、掃除は俺の密かな趣味だ。
ここの清掃員になったことでその趣味はバレたが。
そもそも趣味を職業にしたからなぁ…。
とりあえず高そうな壺やタンス、その他の家具なんかもピカピカに
掃除をする。
「あら、○○。もう掃除は終わったの?」
ここの主であるレミリアお嬢様が俺に向かって声をかける。
俺みたいな掃除しか能がない奴を雇ってくれた、ありがたいお嬢様だ。
お嬢様がいなければ、俺はこの知らない土地で名も分からない妖怪に
殺されていたのかもしれない。
「あ、はい。一通りは終わりました」
「ふぅん」
と傍にあった机に指を走らせる。
そしてその指をゆっくりと見て一言。
「いつもどおりね」
淡々とした言葉。それは俺にとっての最高の誉め言葉だ。
「ありがとうございます」
「この調子で、館中を頼むわね」
この広い館を掃除するのも、今ではすっかりと俺の楽しみだ。
俺は、礼をして部屋から出て行こうとした。

だが――

「○○~」
可愛らしい声と共にぎゅー、っと妹様ことフランドール様が俺に抱きついてきた。
いや、可愛らしいのはいいんだが…その力ってのは尋常じゃなくて…
「一緒に遊ぼっ♪」
「待ちなさい、○○はこれから館の清掃をするのよ」
「あら、お姉様」
明らかに今気付いたように、わざとらしい視線を向ける妹様。
その態度に、にこりとしながらもさり気なく殺気を漂わせるお嬢様。
…こうして修羅場は誕生した。



「痛だだだだ!?」
「放しなさい」
「い・や」
俺がリプレイをしている最中に更に力が強くなったのか、俺の腕はすでに限界寸前だった。
やっぱり、リプレイをしていると無防備になるのはやめた方がいいのか…。
いや、そんな事を考えている間にも俺の腕はデンジャーゾーンに到達している。
「…お嬢…様、妹…様、放して…プリーズ」
「いい度胸ね。こうなったら『弾幕ごっこ』しかないかしら?」
「ふーん、お姉様が勝てるの?」
感覚は既にないし、二人とも聞いてない。
視線が火花を散らせながら、飛んでいき俺の腕は解放された。
解放されたと同時に、二人は瞬時に扉の外を突き破って出て行った。
「厄介な事してくれるわね」
「あ、咲夜さん」
二人が出て行った扉から、この紅魔館を仕切っている影のボス
十六夜咲夜さんが呆れ気味に入ってきた。
「全く…どうしてこうなるって予想がつかないのかしら?」
「急に妹様に来られたから仕方ないっすよ」
「だから、さっさと掃除を終わらせなさいって言ったんでしょう?」
「………面目ないです」
やっぱり、これの原因って俺にあるのか?
いや俺以外の理由がないです。なかったです。俺の完全不注意です…。
「さぁ早く止めに行かないと、あなたを清掃班から門番に左遷するわよ」
…それだけは勘弁だ。掃除が出来ないのと門番になるの、どっちも嫌だ。
噂では門番になったらコッペパンしかもらえないとか…。
「…行って来ます」
「ちなみに止められなかったら、給金カットね」
元々給金なんてありはしないですよ咲夜さん。
それに止められなかったって事は、すなわちそれは死なんですけど…
俺はそんなツッコミを心でしながら、破壊音が聞こえる大広間に向かっていった。



大広間に着くと既にそこは二人が死合っていた。
フランドール様は炎を纏った大きな剣を振り回し、レミリア様は真紅に染まったの巨大な槍を
投げたりしていた。
「…神様、ここは地獄ですか?」
生半可な地獄よりも、ここが地獄の最前線のような気がした。
既にメイド達は避難していたため、広い空間で思いっきり二人が戦う。
壁や天井が穴だらけなのは、きっとその所為だろう。
「掃除が、また大変になるじゃないか…」
そう考えて、俺の中で『何か』が切れた。
「…コラァ!二人とも!そこになおりやがれっ!」
気がつくと俺は大声で館の主に叫び、弾幕の中間地点に突撃していた。

無論、その弾幕を彼女達が止めることは出来ず。
俺はいくつもの弾を全身で受け止めた。
当たり前だが痛いし死にそうだし、出来たら医者に連れて行ってもらいたい。
しかしそんな事よりも、言わなければならない事があった。
だからまだ、倒れるわけにはいかない。
「ちょっと○○、そこを退きなさい!」
「退いてよ!○○!」
「二人とも…これだけ破壊尽くしておいて…どう修復するおつもりですか?」
俺が怒っていることは二人がケンカをしている事じゃない。
そのケンカで、俺の仕事を増やす事を怒っているのだ。
確かに俺は無類の『掃除好き』だ。
だが俺は別に一人で掃除しているわけじゃない。俺の他にもいる清掃班の
連中の仕事を増やしてしまう事を…俺は怒っている。
「…とにかく、もう…ケンカは…止めて…」
意識が朦朧としてきた。流石に妹様の弾幕なんてまともに浴びたら
死んでしまうだろう。俺自身、立って生きていること自体が不思議でしょうがない。
「…下さい…ね」
それだけ言うと、俺は完全に意識を失った。

「○○っ!ねぇってば!」
「しっかりしなさい、○○!ここで本当に死ぬ気なの!?」
お嬢様たちの声が聞こえる。消えているはずの意識の中、
俺は奇妙な感覚を受け続けていた。
大きな川の流れに流されそうな感覚といえばいいのか、
確かにそんな感じだ。お嬢様たちの声は上の方から聞こえてくる。
「○○!死んじゃやだ!起きて!」
妹様の声だ。妹様にはしょっちゅう振り回されてたなぁ…。
この流れに身を任せたら、この声も聞けなくなるのかな。
「…○○、しっかりしなさい。起きて…起きなさい…!」
お嬢様の声。はじめは俺の掃除を誉めてくれたお嬢様の声。
本当に嬉しくて、掃除にも一生懸命になれた。
…まだ、俺は死んじゃダメだ。

「○○、一緒に遊ぼ?」
「…起きなさい。命令よ」
紅魔館の大広間はその名の通り、現在床が紅に塗られていた。
その中心に一人の青年が横たわっている。
「…お嬢様。まだ彼は死んでいませんよ」
一部始終を見ていたのか、咲夜が後から入ってきた。
「…?」
「どういうことかしら?」
「彼は言っていました。この紅魔館を綺麗にするのだ、と」
だから彼はまだ死ぬことはない。
幸いにも傷の数は多いが、急所だけは辛うじて外れている。
それだけでも奇跡的だ。
「運びましょう。まずはそれからです」
と咲夜は指を鳴らして、数人のメイドを引き連れる。
「…目を覚ますのは先でしょうが、お見舞いくらいは来てください」
そう言い残して、彼と共に咲夜は去って行った。
後に残ったものは彼の残した血液と、二人の吸血鬼姉妹だった。




「うぅ…?」
長い夢を見ていた気がする。
とてつもなく長い夢を…。
「○○っ」
「起きたのね…」
俺が起きた早々、目の前に居たのは二人の吸血鬼。
そう、俺の主人だ。
「…おはようございます、お嬢様、妹様」
無理に身体を起き上がらせて、二人を見る。
「あなたが寝ていたら、掃除も捗らないでしょう?…今は身体を直す事を
優先として、しばらく寝ていなさい」
「…ゴメンね。○○」
「いくわよ」
「…うん」
それだけ言ってお嬢様と妹様は去って行く。
出て行ってから、お嬢様と妹様が残したらしい手紙が目に付いた。
それは封筒に入っており、丸っこい文字が妙に長く書かれていた。

『私はあなたが倒れてから、ずっと心配していた。
あなたを失いそう、と言う恐怖をはじめて感じた。
恐かった。私はあなたを失うのがどうしようもなく恐かった。
…私はあなたが、大事だから…』

お嬢様の丸いながらもハッキリとした文字。
大事の前の部分に塗りつぶした跡がある。きっと
こっちを先に書いて、気に入らなかったか何かだろう。

『私は○○とまた遊びたい。
遊びたい。だから死んじゃやだ。いつか死んじゃうんだろうけど
それでも遊びたい。たくさんたくさん…居たい。
…お姉様と同じように私もあなたが大事だから』

同じように丸い文字が書かれた紙。
そして同じように大事の前の部分に、黒く塗りつぶした跡。
やはり、妹様もお嬢様と同じような事を書いたのだろう。

「…さぁて、早く治るといいな」
彼女達の心のもやは晴れたか知らないけど、俺は妙に晴れ晴れとした空を見て
再びこの紅い屋敷を、掃除をしたくなった。






End



蛇足――

彼が意識を取り戻す前。
「あー、もうこうでもない!」
お嬢様は先ほどから、ペンを走らせながら唸っていた。
彼は未だ眠り続けている。やはり死ぬことはなかったのだが、
長い時間の急速は必要らしい。
「咲夜。彼にお詫びの手紙を書きたいんだけど、どう書けばいいのかしら?」
ペンを止めて私の方を見るお嬢様。お嬢様はこれでも真剣に悩んでいるようだ。
とは言っても、こういう手紙は普通、お詫びする本人が書かなければ
意味がないものなのだが。
「お嬢様が彼に伝えたい気持ちを書けば、通じると思いますよ」
「そう、そうね。えっと、『私はあなたを失うのがどうしようもなく恐かった。
…私はあなたが、好き』…っ、違う違う…『大事だから』っと…」
自分で言いつつ、その言葉に赤面するお嬢様を、私は微笑ましく見守る。
素直なくせに、意地を張る。きっと根っからの天邪鬼なのだろう。

きっと今頃は、妹様も同じように手紙を書いていることだろう。
そして…今のお嬢様と同じようにきっと真っ赤になっているはずだ。

何故なら、彼女達は吸血鬼の姉妹。

姉妹は合わせずとも、本質が似てしまうのだから――



End




何が書きたかったのでしょう、私?
ともかく、こんなお話がお終いです。

蛇足の姉妹は本質が云々~は、私の友人が言っていた事なのですが
本当かどうかはわかりません。

th_4859.txtより。

───────────────────────────────────────────────────────────

『Which do you like?』


修羅場って言うものは意外に簡単にできるという事は、
短い人生史上、僕は初めて知った。
場所は博麗神社の境内。
ガランとした空気が、現在の状況を更に盛りたてて悪くしている気がした。
目の前に座っているのは、この幻想郷の象徴である博麗神社の"巫女"博麗霊夢。
そして、その友人(らしい)である魔法使いの霧雨魔理沙だった。
二人は僕を睨みつけながら、不遜に座っている。

「それで、あなたに聞くんだけど…私と魔理沙、どっちが好きなの?」
僕は無理矢理正座をさせられて、現在の修羅場のど真ん中に立っていた。
彼女達が言うにはこうだ。
二人とも僕が好きらしいが、無論の事、三人で付き合う事は、この幻想郷の
普通から考えても、一般的に僕の世界の常識でも不可能。
雌雄を決する為の弾幕ごっこを行ったが…途中で、僕の気持ちがそもそも
どちらの方に向いているか聞いていないという事から。
今の状態になっているらしい。

「それで、どっちが好きなのかハッキリして欲しいって訳?」
「そう、私?それとも魔理沙?」
「それを聞かない事には、何も出来ないからな」

…考えてみれば、僕は、二人をそう言う対象としてみた事も無かった気がする。
しかし、彼女達がこういうなら、どちらか決めないとならないんだろう。

「時間、くれないか?」
「あぁ、私はいいぜ。霊夢はどうだ?」
「いいに決まってるでしょ。でも、あんまり時間はとらせないでね」
そうしないと、と彼女が口ごもった。

早く、お互いに決着をつけたいんだ。
「…一週間だ。それだけ考えさせてもらうよ」
僕にしては思い切りが良かったかもしれない。
普段なら、どうしてもこういう重要な物事を決めるのには、とてつもない時間を
かけるタイプのはずなのに。
今回だけは違うようだ。




それから、僕はずっと考え続けた。

彼女達二人を、僕がどれだけ好きか、と言うことを。
比べるなんて言うのは、最も失礼な事だし、そもそも僕がハッキリしないのが
一番の原因だったのかもしれない。
だから一週間の間、僕は考え続けた。
どちらが好きなのか。
山を歩く時も、川を歩く時も、寝る前も、風呂に入る時も。
そうして、約束の日はやってきた。
その日も二人は相変わらず、不遜な態度で座っていた。
「で、決めたんだな?」
開口一番、魔理沙は挑戦的な目で、僕を見た。
霊夢は何も言わなかったが、僕の方を見ながら何か考えているという事は
分かった。
その表情から読み取れるのは、緊張、悲しみ、不安。
どれとも取れた。
「僕が好きなのは…」
彼女達の顔を見渡す。
そして、僕は紅白の少女の方に目を止めた。

「霊夢だよ」

「え…?」
「なっ…そう、なのか?」
霊夢と魔理沙。お互いの驚きの内容は恐らく違うものだろう。
「…なぁ、聞きたいんだが、何で霊夢なんだ?」
魔理沙の質問には答えられない。
「私じゃ、ダメなのか?霊夢だって、普段は能天気でのんびりしすぎで、
そう、恋する対象としては、ちょっとおかしいぜ!?」
違う。
魔理沙は、きっと僕に恋しているわけじゃない。
「魔理沙は、何でも持っていく霊夢が、嫌だったんだろう?」
「なっ…何を?」
「霊夢は僕を好きになった。だから奪おうと考えた。それは『恋』じゃない。
ただの嫉妬だと思う」
「…もういいぜ。私は――」
「最後に言っておくよ、魔理沙。僕は霊夢の事が好きだ。魔理沙は
本当は誰が好きなんだ?」
僕の問いには答えず、彼女は外に出て行った。
顔は帽子で隠していたから、きっと顔を見られたくないんだろう。




「魔理沙…」
「霊夢、一つ聞くけどキミは僕が好きなの?」
「…うん」
「友達を泣かせてまで?」
「それでも…あなたが…好きなの…!どうしようも…なく…っ」

頭がちょっと温かいとか、能天気とかいつも言われている
彼女にしては珍しく感情的だった。
涙に濡れている彼女の頭を、僕は抱えた。



後書き

===チラシの裏===

修羅場を書くの苦手です。

===チラシの裏ここまで===

昼メロって見た事無いんですよね(笑)
我が友人曰く、「修羅場ってドロドロなら」それは昼メロらしいです。

そうか、つまり修羅場ればいいんだな、という単純思考の名の元に
書き上げたのが、これです。

なんか歪んでますけど。
あ、別に英語に意味はありません故。

最後に一言言います。

>>683氏
この俺、530(仮名)はヘタレ物書きのレッテルを貼られている。
ウドンゲネタで書いては、必要以上に期待ハズレな物を書き、残念がる奴もいる。
単発ネタでリクエストを依頼されたんで、SSを一本書いたらそいつは二度とスレに来ねえ。
リクエストされても、自分の思いのまま書くなんてしょっちゅうよ!
だが、こんなおれにも吐き気のする『悪』はわかる!

『悪』とはヘタレ物書きのおれ自身のことだ!


ゴメンなさい>orz

1スレ目 >>777

───────────────────────────────────────────────────────────

「「で、どっち?」」
ここは幻想郷、の冥界。そこにある大きな邸、白王楼で俺は崖っぷちに立たされていた。
目の前にいるには、二人。一人は、いつもはのほほんとしている、この白王楼の主人、幽々子様。
もう一人は、いつも真面目、そのかわり半人前の妖夢。
二人とも真剣な表情でこちらの返答を待っている。
「え、えっと・・・」
あー、もう。なんでこんなふうになったんだったか。

・・・あぁ、いきなり夜にここに呼び出されて、二人同時に『好きなんです』って言われたんだっけか。
それで、こんなふうになったわけで。今は眠いせいで頭が回らない。こんなときに言わなくても。
「じゃあ、両方j」
「「両方は駄目」です」
二人同時に止めてきた。仲良いなぁ、もう。
「そう言われても・・・ねぇ」
幽々子様を選べば妖夢が悲しむ。妖夢を選べば幽々子様が悲しむ。
二兎を追うものは一頭も得ずって言うけどさ、今はどっちもほしくないです。
「やっぱり○○に決めてもらうのは駄目かしらねぇ。やさしいもの」
幽々子様が仕方なさそうに首を傾げて言う。普通の形でなら良かったのだが、威厳がそれを許さなかった。
内部には有無を言わさぬ威圧感があることを。
「そうですけど、○○さんに決めてもらわないと駄目ですよ」
すかさず妖夢が反論する。妖夢の意見に同意するように半霊も動く。
「俺が決めるのは、・・・両方d」
「「両方は駄目」」
だからね、両方に反応しないでくれ。そしてハモるな。
「ああ、これじゃあ埒が明かないわね。やりたくはなかったけど、やっぱあれにするしかないみたいね」
「やっぱり、あれしかないんですね」
アレリーマンは頭が悪い証拠だぞ?なんて思ってると、幽々子様と妖夢が互いに顔を見合わせて。
「やっぱり、女の」
「戦いですね」
二人が睨み合う。それはもう、火花が飛び散るぐらいに。いや、実際に飛び散ってます。
・・・うわぁ、眼力とかすげぇ。人間業じゃないわ、幽霊だけど。
こうして、幽々子様と妖夢の戦いは始まった。・・・俺にできるのは、ゴングを鳴らすだけだった。
―――カーン!





―――翌日(朝)

あーあ、昨日のせいで全然寝れなかったなぁ。
まだ眠い頭を無理やりに起こして居間へ歩いて行く。
「あ、おはようございます」
歩いていたら、妖夢に挨拶をされた。寝た時間は短いだろうに、良く起きられるな。
「ん、おはよぅ・・・」
頭がまだおきておらず、ついでに眠いので適当に答える。
「今から幽々子様を起こしてきますので、入って待っててください」
そう言ってトテトテと走っていく。ああ、昨日あんなことがあったのに、いい子だなぁ。

――――○○は気付かない。それすらも、妖夢が考えた策略だと。

そんな事はつゆ知らず。俺は居間の障子を開く。そしていつもの所に座り、ぼ~っとしてる。
最近、蛍のことをゴキブリって呼んでから虫によく襲われるなぁ。蛍の呪い?・・・墓にしてくれ、せめて。
「おはよう○○、昨日は良く寝れた?」
「うわっ!」
突然隣から声をかけられたので、驚いて声を上げてしまった。そのせいで、目が覚める。いわゆるショック療法。
それはともかく、隣を見てみると、妖夢が起こしに行ったはずの幽々子様が。
「ゆ、幽々子様・・・今さっき妖夢が起こしに行ったんですけど」
「あらそう?妖夢ったら、私が起きてるのに気付かなかったのかしら?」
当たり前でしょ。いつもは起こさないと昼まで起きてるのに。
「今酷い事考えてたでしょ。まったく失礼ねぇ」
そう言って頬を膨らませる。心を読むな、ここの人々は読心法を学んでるに違いない。
「・・・んでも、なんでそんなに早いんですか?」
俺は恐る恐る聞く。できるだけ平然を保って。
「たまたま早く起きたのよ。いつもならもう一度寝るんだけど・・・○○の顔が見たくてね」

――――これはたまたまではない、幽々子が朝早く起きる妖夢の為に立てた考えだったのだ。恐るべし女の戦い。

そんな考えも知らず。微笑んだ幽々子様につい俺は、赤くなる。そのまま数刻の沈黙。
ドタドタドタ 
廊下を走る音。聞いてると全速力だとわかる。
ズシャァッ
「幽々子様っ!!早起きしていたんですね!!!」
俺が空けたままにしていた、障子の隙間に妖夢が滑り込む。なんと、丁度で止まった。昔やったな、こういうの。
「そうよ、気付かなかったの?」
微笑と共に幽々子様が答える。良く見ると頬がピクピク痙攣している。
(せっかく二人っきりになれたのに・・・。意外と早かったわね)
そして、妖夢と幽々子様が睨み合う。ちなみに、場所的に俺は二人の間。つまりはというとこうなる。
「熱ッ!二人とも、火花は、や、めて。熱ッ!」


そんなこんなで三人で食事をはじめる。俺は隣を見ないようにして食べる。
なぜなら、隣には幽々子様がいるから。これ以上は言わん!
昨夜、朝の出来事のせいか、二人は喋らずにもくもくと食べる。
隣では魚が一匹二匹と食べられていく。なんでそんなに早いんだ。
「○○さん」
突然妖夢がこちらを見て話し掛けてきた。
「ん?」
とりあえずは妖夢の方を見る。普段と変わらない顔。しかし、良く見ると目の奥の奥あたりが不気味に光っている。
「ほら、これおいしいですよ~」
拙い、このパターンはっ!!な、なんとか逃げなければ、色々と大変なことにっ!
「い、いや。すでに食べてるし。うん」
「でも、こっちの方がおいしいと思いますよ?」
「妖夢が食べてるじゃないか」
「だからですよ」
相手のほうが一枚上手、どんどん逃げ道がなくなって行く。くそぅ、半人前のくせに。
「はい、あーん」
来たっ、地獄への第三歩目!っていうかもう踏み込みすぎ!閻魔様もビックリダヨコレハ!鬼ハ嘘ツカナイ!
どうしようかと思い、隣を見てみると、幽々子様がこちらを見ている。
その表情といえば、『マリア様が見ているぞ!』ではなくて、『般若が睨んでるぞ!』のほう。
つまりはこちらを睨んでるというわけだ。鬼の形相で。
「どうしたんですか?あーん」
なんて言いながらも妖夢は、地獄への招待状といわんばかりにを魚の切り身こちらに持ってきている。
やはり、売られた招待状は買う羽目になるのか・・・。
「ん、おいしい・・・」
食べてみたら、なぜか自分のよりおいしいと感じた。なぜだかは解らないが。
「おいしいですよね~」
そう言って妖夢は笑った。はたから見れば普通の笑み。幽々子から見れば勝ち誇った笑み。
恐る恐る幽々子様の方を見てみると、いつも通り普通に食べていた。周りからでる負の感情を除けば。
・・・暴走しますよ、巨大化しますよ。
そんなこんなで俺は、地獄のような食事を終わらせた。




―――昼

とりあえずこの地獄から逃げなければ。そう思ったが、幽霊の俺には結界を越える手立てはなかった。
せめて屋敷の外にでも・・・と思ったが。
「○○~。ちょっと来なさい~」
普通に受け取れるはずの発言が、俺には『さっさと来い』に聞こえた。
もちろん逃げることは許されない。たとえ閻魔が認めても、だ。

幽々子様のところに来た俺が見たものは、普段と変わらない二人の姿。その様子に内心ホッとする。
「はい、これ」
そう言って渡された物は、普通の湯呑み。中には普通のお茶。
さすがに薬物投与はないか・・・
隣を見ると、和菓子を食べながらのんびりと外を見る幽々子様。
・・・ああ、久々に平穏だ。
そんなことを考えながらお茶を啜る。

カコーン

こんなところにししおどしはないが、聞こえた気がした。
と、もう一度飲もうとしたはずのお茶がない。隣を見ると、幽々子様がお茶を飲んでいる。
もう片方の手には湯呑み。
「飲んじゃった」
湯呑みを返しながら幽々子様が言った。
「・・・まぁ、いいですけど」
そう言って残ったお茶を飲み干す。
「あ、間接キッス」
「んなっ!いきなりなんですか!?」
「いや、そうじゃないかしら?」
「た、たしかにそうなんですが、言うことな、ないじゃないですか」
「どうして?」
なぜって、妖夢への挑発になるからですよぉ~。
そんな心の叫びは聞こえず、幽々子様は相変わらずこちらを見ている。
「・・・なんとなくです」
本音は言えず、とりあえずはなんとなくですました。
お茶は全部飲んでしまったので、饅頭を食べる。
すると、また奪われて食べられてしまった。
そのあとこちらを見て少し赤い頬で微笑んだ。やっぱり俺も赤くなる。
「○○さんっ!少し手伝ってくれませんか!!」
ついに切れたか、半人前。結構遅いぞ、だから半人前なんだよ。
「おお、解った。今行く」
断る理由がないので、とりあえずは妖夢のところへと向かい、途中で投げられた箒を受け取る。
幽々子様はというと、最初はムッとしていたが、やがて妖夢を睨んでいた。
返しといわんばかしに妖夢も睨む。当然その間にいる俺は。
「熱っ!だから花火はって、うわ、箒が燃えた!」
その後燃え尽きた箒を取り替えて掃除をした。幽々子様は、睨みながらもお茶と和菓子を食べていた。






―――夜

ああ、今日は悲惨だったなぁ。とりあえずは、こんな不運もお湯で綺麗さっぱり流してしまうか。

ここのお湯はなぜ温泉、しかも露天である。なぜこんなところにと前に幽々子様に聞いたところ。
『キニシナイ!!』
との返答が返ってきた。まぁ、気にしないんだけどさ。
「温まるなぁ~。そういえば猿の幽霊なんているんだろうか?おーい、猿やーい!」
返事はない。どうやら猿は居ないらしい。ここに来るほうがおかしいが。
「はぁ~。いつ入ってもいいわねぇ」
「どわぁぁ!ナヅェソコニイルンヅェス!?」
あまりにも突然の出来事だったので滑舌が悪くなり、謎の言葉が出てしまった。
「まぁ、いいじゃないの」
「良くない良くない!」
どうしても下に目が行ってしまうのは男の性。しかし耐える。
「いいじゃないのよ」
むー、と頬を膨らませて言う幽々子様につい赤くなる。

「○○さん、私も一緒、に・・・」
これまた入ってきた妖夢が固まる。っていうかお前もその考えだったのか。
「ゆ、幽々子様!ナヅェソコニイルンヅェス!?」
おお、ブラザーそれはさっき俺も言わせてもらったぜ。
「ナヅェって、キバッテルデショ?」
へいブラザー!いつからここはオンドゥル星になったんだい?冗談もほどほどにしてほしいね、はっはっは。
「いるからに決まってるじゃない」
「決まってません!な、なんで○○さんと一緒に入ってるんですか!?」
「偶然よ、偶然。たまたま一緒になっただけ」
「偶然なんてありえません!脱衣所は一つしかありませんよ!?」
「まぁまぁ、いいじゃないの」
妖夢の反論をさらっと返す。ちなみに俺は蚊帳の外。ではなく、二人の間に挟まれていた。
まぁ、解ってるさ。解ってるけど抜け出せないんだよ。おお、呪縛とは恐ろしいものだね。
「・・・・」
「・・・・」
またもや無言の睨み合い。もはや定番となった俺の状況。
「熱い!ギャー、髪が燃えたぁ!」
このあとチリ髪に何とかならずになったが、幽々子様と妖夢に挟まれて縮こまって入っていた。


なんで風呂に入って疲れなきゃいけんのだ。
そう愚痴を漏らしながらも眠りにつくために部屋に入る。
念のため周りを適当に調べておく。よし、隠れてはいないな。
「あー、今日一日でこんなに疲れるとは。厄日か?」
そう考えながら布団に入る。
なんで二人は俺のことが好きなんだろうか?
そして横を向いて問題について考えていたら、突然目の前の畳が上がった。
「あ、ゆゆたんインしt」―ダンッ!!

突如開いた畳を叩き戻す。今のは間違いだ、間違い間違い、・・・きっと疲れているんだ。
「あ、ゆゆたんインs」「そこかぁぁぁぁ!!」―ダンッ!!
畜生!夢じゃなかった。そう思いながらも目の前に出てきた畳を叩き戻す。今度は続け様に。
「あ、ゆゆたんいn」―ダンッ!!
「あ、ゆゆたんインしたo」―ダンッ!!
出てくる畳を叩く叩く。巨大もぐらたたきのように。はずしたら負けだよ、生きるか死ぬかだ。
やがて、観念したのか成仏したのか畳が上がることはなかった。
ようやく眠れる、そう思って布団に入ってまどろみの中に入ったとき。
「あ、ゆゆたんインしたお!」
「ちぃ!後ろか!」
反応が遅れたせいか、幽々子様の出現を許してしまった。
「一緒に寝ましょ。ほら、最近寒くなってきたから」
そんなことはない。昼に「ああ、そろそろ夏ね」とか言っていたじゃないか。
「入らせてもらうわね~」
許可なしですか。もういいや、早く寝よう。
後ろから幽々子様の温かみが感じる。あれ、幽霊って冷たいよな・・・?
まぁいいか、寝よう。そう思ってまたうとうとしていると。
「あの、一緒に寝ても・・・」
またか、また同じ展開か。障子を開けた妖夢がまた固まる。
「ゆ、幽々子様!またですか!」
妖夢が叫ぶ。うるさい、眠れないではないか。
その後も色々と二人で講義していたが、無視して寝た。







―――そんな地獄のような日々が続き・・・


「もう、きりがありませんね」
「そうね、○○は決めてくれないし・・・」
「いや、両方って決めましたよ?」
「そろそろ、堪忍袋の尾が切れそうなんですよ」
「あら、私もだったりするのよ」
俺の意見は果てしなく無視され、話がどんどん進んで行く。
「いくら主だとしても、これは譲れません」
「いくら可愛い庭師だとしても、これだけは譲れないわ」
・・・嫌な予感。
「ならば、正々堂々と!」
「弾幕ごっこね!」
そう言って同時に庭に出て、弾幕ごっこを開始する。
うわぁ、死闘だよ。二人とも本気じゃねぇのか?
まぁ、ここは止めておかないとな。
「二人とも、やめてくだブベラッ!!」
死蝶や斬撃やらが体に当たって即座に意識を奪って行く。
あー、二人とも本気だなぁ。痛いよ、痛すぎるよ。
薄れ行く意識の中で。二人が俺の名を呼んだ気がした。




ここはどこだ?目に写るのは天井。つまりは寝かされてるってことか。
その後、妖夢と幽々子様の顔が見えた。
「・・・すみません、なんかご迷惑がかかったみたいで」
「・・・私も、主人としてあるまじき行動をしちゃったみたいね」
二人が謝罪の言葉を述べる。丁度良い、ここらで本当の気持ちを喋っておくか。
「・・・お二人とも、大事な話があります。どちらか、決めました」
二人とも固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「・・・両方d」
『両方はだm』
「駄目です」
二人の言葉を返しで止める。
「いいですか?私は、あなたがたがそうやってる姿は見たくはありません。だったらいっそ、どちらも嫌いになります」
俺の言葉に二人とも言葉を失う。
「・・・わかったわ。両方ってのが不服だけど。妖夢となら、まだ」
「・・・私も、同じです」
「良かった、二人ともわかってくれて」
そして三人で笑った。



―――翌日

俺はいつものように風呂に入る。もちろん、今回は一人だ。
「あ~。一人が懐かしい~」
良い気分で大合唱していた所、ふと脱衣所を見ると。脱衣所に人影が写る。
――ガラガラ
そこには、幽々子様と妖夢が。
「ゆ、幽々子様に妖夢・・・。ど、どうして?」
「あら。一緒に入ったって良いじゃない。三人でね」
「・・・・・・・」
思わず言葉を失う。結局俺は一人で居る暇はないのか?

・・・俺の安息はまだ遠い。



―――END








~~あとがき~~

初めての方は初めまして。二回目以降の方はお久しぶり?です。
これから読む方はよろしくお願いします。もう呼んだ方はありがとうございました。
さて、今回リクエストは『妖夢&幽々子で、両方』でしたが、
たぶん、想像していたものとはだいぶかけ離れたものになったんではないでしょうか?
たまには告白は最初に、ってのもいいのでは?と思い書いてみました。
まぁ、思いついたのがこの作品だったから、ですが。
プロポスレのネタとは多少離れたものになったのかもしれません。
っていうか、まじめに書いていないので、だいぶはっちゃけてます。呼んでみた人もわかるんじゃないでしょうか?
それでも、こんな作品に萌えてくれたら幸いです。
ずいぶん長ったらしく書いてしまいましたが。これで終わらせていただきます。

2スレ目 >>186

───────────────────────────────────────────────────────────

 土曜日の夜。アパートの自室で暇をもてあましていると、不意に携帯から着信音が響く。その着信音は、おれの友人が作曲したメロディ。
 おまけにおれは、その音を指定着信音として設定しているので、そのメールがだれからのものなのかもすぐに分かった。
 携帯を手にとり、メールを見る。予想通りの宇佐見からのメール。『いつもの場所に集合』とのこと。
 おれは意気揚々と上着を羽織って、堅苦しいアパートの部屋を抜け出して『いつもの場所』に向かった。
 いつもの場所。おれの所属するサークル『秘封倶楽部』のたまり場の、とある喫茶店だ。

 ***

 あいかわらずこの喫茶店には人がいない、店長がかわいそうなぐらいに。夜だからなおさら。だからこそ『秘封倶楽部』のたまり場になっているともいえるんだけど。
 おれからいわせてもらえば、喫茶店のくせに洋風レストランみたいな内装をしているのが原因だと思うのだが──ま、それはともかくとして。
 おれを呼んだ宇佐見はもちろん、メリーも当然のようにとっくに来ていた。
「お、来た来た!」
 おれが店の中に入った途端、聞こえてくる声。宇佐見の声だ。いつも通り元気なやつ。
 おれは二人に向かって手を上げて「うぃっす」と声をかけ、同じ席に座る。
「今日は珍しく早かったわね」
 紅茶を一口飲み、微笑を浮かべてそういうのはメリー。その仕草がやたらに似合っていた。やっぱ、いい意味でお嬢様っぽいよなあと思いなおしてみたりする。
 まあ、美人からいわれる皮肉は気にならないものだ。だからといって、おれの遅刻のくせが治るとも思えないが。
「今日は起きてたからな。で、今日はどこいくわけよ」
 おれらのサークルは、基本的にどこかに行くのが活動。その『どこか』というのが、少々特殊に過ぎるだけのこと。
「まだ決まってないー。決まんなかったら今日はメリーの恋の悩みでも聞くことにするね」
 宇佐見が冗談めかしてそういうと、メリーが軽く紅茶を噴く。頬が少しだけ赤に染まっている。
 なにいってんのよ馬鹿蓮子。その言葉とともに小突かれる宇佐見。宇佐見はあははと軽く笑っている。
 あいっかわらず仲のいいやつら。こっちは見てて飽きないからちょうどいいや。知らず知らずのうちにおれは笑っていた。
「……ま、それはともかく」
 メリーがこほんと咳払いをする。まだかすかに頬が赤かったが黙っておいた。そのほうが面白いから。
「今日はここに行ってみようと思うの」
 そういってメリーはテーブル上に地図を広げ、ある一点を指でしめす。
 そこは、大学でもわりと有名な心霊スポットとして扱われている、やたらに古いお寺だった。寺といっても、ほとんど廃墟らしいが。
 昼でも木が生い茂っているせいで薄暗く、現地民からは『冥界寺』とか呼ばれてるらしい。物騒な名前。
 でも春には花見スポットになっているらしい。おれにはわけがわからなかった。
「じゃ、そこ行ってみよっか」
 宇佐見はすっかり行く気だ。メリーも同じく。おれにも拒否する理由はない。
 おれらは揃って店を出た(メリーの紅茶の代金はおれ持ち)。

 ***

 店を出たあと、一度コンビニによる。おれは外で待っていたのだが、宇佐見がビニール袋をひとつ提げて出てきた。
 なにを買ったのか。聞いてみたが、秘密とのこと。まったく、変なやつ。今は気にしないことにしよう。
 おれらはとにかく歩を進め、コンビニだとかビルだとかのあふれかえった都市部から、閑散とした郊外に出る。
 まあ、おれらがいくようなところはどこかしこも人が住んでいないような場所ばっかりだ。いつものこと。
 そのあとは川原に沿って、舗装すらされていない道をいく。真っ直ぐの一本道なので迷いようもない。
 やがて見えてくるのが、墓場。無数の墓標をこえたところに、『冥界寺』とやらを見つけることができた。
 レッツ、不法侵入。
「うわ、暗……メリーなにか見える?」
「いいや、見えないわね」
 メリーと宇佐見はおそらく、例の『境界』とやらのことについて話しているのだろう。だがおれには、境界どころか目の前すら見えなかった。
 こんなこともあろうかと、上着のポケットにつっこんでおいた懐中電灯をつける。備えあれば憂いなし、というやつ。
「お、ナイス!」
 いいながら、ばしばしとおれの背中をたたく宇佐見。痛いっつーの。
 おれは目を凝らし、わずかに光が通る暗闇を見すえる。はっきりいって、下手になにも見えないよりよっぽど不気味だ。
 
 ──葉のすっかり散った木々の間に見えた、ひとつの建物。

 それはまるで、今にも崩れ落ちそうな骨格のよう。それでも外観だけは『寺』を保っている、不可思議な建築物。
 メリーが、どこかぼんやりとした様子でそちらのほうを見つめている。
「メリー、なんか見えたか」
「ううん。ここはハズレみたい」
 メリーはそういってため息をつく。はく息が白い。今夜は冷える。
「じゃあさ、今日は一杯やってかない? どーせ明日休みだしさ」
 宇佐見はそういい、例のビニール袋からなにかを取り出し、おれに向けてそれを投げつける。
 おれは反射的に腕を伸ばし、それを受ける。そしてメリーのほうにも、同じように。
 おれの手の中にある、冷たいそれ。その正体は──缶ビールだった。よく冷えている。
 コンビニでなにを買っていたかと思えば、馬鹿かこいつは。おれは笑いながらプルタブを空けた。
 宇佐見は早々に一口空けている。メリーはわずかに体を震わせながらも、それでもやはり缶を開けてこちらに笑顔を向ける。馬鹿ばっかだ。
『乾杯!』
 かん、と。おれら三人が缶を打ち合わせる小気味いい音があたりに響く。おれは一口で、一本の三分の一ぐらいを空けた。
 三人ばかりの、花もない宴会。おれは空をあおぐ。
 今日はやけに、三日月がきれい。

 ***

 はじめはなんてこともない、ただの宴会だった。さすがにビール一本程度ではおれも酔わない(メリーはちょっと酔ってたけど)。
 問題は宇佐見。こいつの飲み方は少々パンチが効きすぎ。三口で一本を空けてしまうのは明らかにやりすぎだ。
 そして宇佐見がビニール袋から四本目を取りだした時点で、おれの第六感が反応を開始した。危険警報。脳内で警鐘がかき鳴らされる。
 あの馬鹿をただちに止めろと、おれの耳元でだれかが叫んでいる。そんな錯覚。おれは宇佐見から缶を取り上げた。
「宇佐見、おちつけ」
「いーじゃん別にー。あはははは!」
 宇佐見は、おれの背中をしばきながら缶を取り返そうと手を伸ばす。だがまあ、身長差のせいでどう足掻いても届かないのだけれど。
 赤い顔をして、笑顔のままおかしな笑い声を上げている。完全に酔っている。どうやらこいつは笑い上戸のようだ。
「メリー、どうしようこいつ」
 そういいながら、自分の顔が微妙にひきつっているのがわかる。
 理由。宇佐見がおれの顔で遊んでいるからだ。頬を突っついたり引っ張ったり。ガキかおまえは。
「たぶん一度寝るまで駄目ね。色々と」
 呆れきった目つきで宇佐見を見つめるメリー。やれやれ、とでもいいたげな仕草もつけて。
 その様子はまるで、出来の悪い妹を見守る姉のようだとおれは思った。
「隙ありっ!」
「あ」
 そんなことをぼんやりと考えていると、手の中の缶をかっさらわれた。見事な跳躍。感心している場合じゃない。
 にへら。宇佐見はそんな笑みとともに、その缶を開ける。
 オーケー、おれの負け。なんて酒飲みだ。宇佐見の見事な飲みっぷりを見て、おれは思わずため息をついた。
 それを見ても、メリーは実に落ち着いたもの。寺(と呼べるかどうかやや微妙だが)の入り口前の木造階段に座りこんで、目を細めてぼおっとしているだけ。
 ………………?

 寝かけてるじゃねえか!

 ***

 おれら二人は、各々の家への帰り道を歩いていた。こっちに来るときにも通った、あの川原沿いの道。
 なぜ二人かといえば、宇佐見はおれがおぶっているから。宇佐見のやつ、四本目を完全に空けるがいなや、屋外だというのに眠りこんでしまった。なんてやつ。
 おまけにメリーまで夢に落ちかけというアクシデントが発生したのだが、このおれが頬をぺちぺちとたたいたおかげで問題解決。
 はっと目を覚まし、慌てて外面をとりつくろうメリーはなかなかの見物。ひとしきり笑わせていただいた。その代わり鉄拳を一発もらったのだが。
 とにかく、このおれ一人で二人をつれて帰るとかいう事態には陥らなくてよかった。
 それに加え、おれが思っていたよりも宇佐見はずっと軽かったため、あまり力が強くないおれでも楽々とおぶることができた。
 もしおぶれなかったら、引きずっていく羽目になっていたところだ。
 剣呑剣呑。……意味が違う気がする。
「あーもう。人の上で遠慮なく寝てやがんのこいつ」
 思わず愚痴。いくら軽いといっても、意識がない人間を運ぶことはまぎれもない重労働だ。
「今のうちに、これとっとくわね」
 メリーはそういって、上着のポケットから携帯電話をとりだす。当然、カメラつき。メリーはそれを、宇佐見の顔に向け──そしてフラッシュが焚かれる。
「……おれも写ってんじゃねえかそれ」
「もちろん」
 メリーは悪戯げに笑う。ちくしょう、いつか見ていろ。
 というわけで、おれはさっそくメリーに向けて反撃ののろしを上げるため、口を開いた。
「で、だ。おまえに聞きたいことがあんだけどさ」
「なに?」
「宇佐見がいってた『恋の悩み』ってマジなん?」
 メリーは思わずなにかを噴いた。やった、反撃成功。こんなことで喜んでどうする。
「メリーの想い人、それがだれかどうかはこんなおれでも気になる事柄だと断言できるわけですが」
「……あんた、そんなキャラだったかしらね」
 メリーのその問いに、おれはさあ、と首をかしげるだけに留めておいた。残念ながら、おれはその問題に答えることができない。
「よし、好きな人暴露大会開催。いっせーのーで、で宣言な」
「もしかしてまだ酔ってる?」
「酔った勢いでいこうぜ」
 おれはへらへらとして笑ってみせる。自分では酔っていないつもりだが、やはり実のところは酔っているのかもしれない。
 まあ、それはそれでどちらでもいい。
「ま、いいわよ。酔ってるんなら、どうせ明日には忘れてるでしょうし、ね」
 そういいながら、微笑むメリー。ああこれは、出来の悪い弟を許容する慈悲の女神のごとき姉の微笑だ。実はメリーとおれと宇佐見で三兄弟だったんです。嘘。
 おれとメリーは呼吸をそろえる。いっ、せー、のー、で。

「宇佐見」
「蓮子」

 おお、フルネームが完成したぞ。……あれ?
 メリーにとっては予想外の答えだったのか、目を丸くしている。それはおれも同じことで、たぶんおれの目も丸くなっているのだろう。
「えっと……本気?」
 メリーの問いかけ。おれは数秒の間思考してから、「心の底から本気」と答えた。そのまた数秒後、なんて頭の悪い答えなんだと思わず後悔した。
 なんたること。メリーとおれと宇佐見で三兄弟、ではなく三角関係だったとは。そんな馬鹿な。
「む……困ったわね」
「なんでだよ」
 おれはそう聞き返す。
「わたしとあんたが、恋敵ってことになっちゃうじゃない?」
 メリーは大真面目にそういう。そして、おれがおぶっている宇佐見の顔を覗きこむ。愛しいものを見る目つき。
 おれの飼ってた猫が、えさみたいに小さな鳥を見つけたときの目によく似て……ないな。うん。ぜんぜん似てなかった。
 メリーがあんまり真面目にいうものだから、おれは思わず笑ってしまった。
「どうして笑ってるのよ?」
「いや、だってさ」
 そういいながら、なぜだか知らないが笑いが止まらない。宇佐見の笑い上戸がうつったか。酒癖は伝染病じゃないと思うのだが。
 おれは妙にうろたえたメリーに、こういった。

「おれはメリーも好きだよ」

 数秒の空白。まるで時間が止まったかのよう。
 そして、メリーの顔が徐々に朱に染まる。それはまさに、火が出そうなほどだ。
「残念。わたしの目の前には友達と恋人の境界が見えるの」
「おれは後ろを振り向かない主義でな、そんな境界はもう見えないんだ」
 おれらは、冷静を装って軽口をたたく。──正直なところ、おれの頭はかなり酩酊しているのだけれど。
 なにかの冗談みたいに後ろから、宇佐見の安らかな寝息が聞こえてくる。それに気づいたおれとメリーは、面と向き合って笑いあうのだった。


 三日月のかかる夜。
 想い人を背に、かけがえのない友人を隣に。
 酒の入った頭のままに、静かな川原沿いの道を行く。
 そんなのも悪くない──などと思った、とある休みの日のこと。

 End.

───────────────────────────────────────────────────────────


            ※    1    ※




――――はぁ……どうして、こうなったのだろう。



あいつがこの幻想郷にきたのは半年前の春。森をふらふらとさまよっているのを私が見つけた。
聞けば外の世界から迷い込んだ人間だというので、私用のついでに博麗神社に連れて行った。
「魔女なんて見たのは初めてだよ。本当に箒にまたがって飛ぶんだね」
と、変なところで感心していたのを覚えている。魔女ではなく魔法使いの人間だと訂正しておいた。

霊夢に預けて数日、あいつは結局もとの世界には戻らなかったようで、博麗神社の居候となっていた。
霊夢は霊夢で、労働力が確保できたと喜んでいるし、あいつはあいつでこっちの生活にあっさりと馴染んでしまっている。
はじめはアリス達と、『うら若き男女が一つ屋根の下』な状況を冷やかしたり心配したりしたものだが、そこはのほほんな二人のこと。
期待、もしくは懸念していたような事も起こらず、いつしか皆も全く気にかけなくなってしまった。


――――私以外は。


気がつけばあいつの事を考えている。霊夢との間に何か起こりはしないかと、心がざわめく。
研究も放り出して、毎日博麗神社に顔を出してしまう。護身用の魔法を教えてやるぜ、なんて言って。
ちょっと困った顔をしながらも、時間を作ってつきあってくれたあいつ。
初めて自力で作ったスペルカードに感激してたあいつ。
穏やかで少し天然で、そして優しいあいつ。ちょっと優柔不断だけれど。
あいつの笑顔が忘れられない。できるならずっと見ていたい。ずっと隣にいたい。
どうしてこんなに好きになってしまったんだろう。でも、告げる勇気がどうしても出せない。
ここまで自分が恋に臆病だったとは。最後はひとり煩悶しながら眠りにつく毎日だった。

それから半年。桜の季節になった。
今年はどっかの死に損ない(むしろ生まれ損ないか)も余計な事をしなかったようで、例年どおりの春である。
花見をするのも例年どおり。毎夜博麗神社は、人間と人間以外が集まって騒いでいた。

この日私は、少し卑怯な事をした。
あいつの為に作った特別な魔法薬。少しだけ、人を正直にする薬。
あまり飲めないというあいつの杯に、隙を見て少しだけ混ぜる。
あいつの気持ちが知りたかった。今の私にできる精一杯だった。


それが、いけなかった。




            ※    2    ※




「霊夢、好きだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

あいつの口から最も聞きたくなかった言葉。最も聞きたくなかった名前。
何の努力も自覚もなしに、力も人の心も、私が欲しいもの全てを手に入れる博麗の巫女。
私ははじめて、ほんのわずかな時間だけ、彼女を何の躊躇もなく憎んだ。憎んでしまった。

「……え?え?ちょ、ちょっとやめてよ○○さん、いきなりこんなとこで…」

慌てふためく霊夢の顔。少し赤くなっているのは、皆の前で恥ずかしいのか酔っているのか怒っているのか。
それとも、まさか霊夢も……なのか。

「ちょ……みんな見てるじゃない…!やめてったら……!」

私や霊夢の思いをよそに、あいつは高らかに叫んでくれた。

「そうだ! どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!
 霊夢!好きだァー!霊夢!愛しているんだ!霊夢ー!
 幻想郷に来る前から 好きだったんだ! 好きなんてもんじゃない!
 霊夢の事はもっと知りたいんだ! 霊夢の事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!
 霊夢を抱き締めたいんだァ! 潰しちゃうくらい抱き締めたーい!
 心の声は 心の叫びでかき消してやる!霊夢ッ!好きだ!
 霊夢ーーーっ!愛しているんだよ!
 僕のこの心のうちの叫びを聞いてくれー!霊夢さーん!
 住処が同じになってから、霊夢を知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!
 愛してるってこと!好きだってこと!僕に振り向いて!
 霊夢が僕に振り向いてくれれば、僕はこんなに苦しまなくってすむんです
 優しい君なら、僕の心のうちを知ってくれて、僕に応えてくれるでしょう
 僕は君を僕のものにしたいんだ!その美しい心と美しいすべてを!
 誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!恋敵がいるなら、今すぐ出てこい!相手になってやる!
 でも霊夢さんがぼくの愛に応えてくれれば弾幕ごっこしません
 ぼくは霊夢を抱きしめるだけです!君の心の奥底にまでキスをします!
 力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます!
 キスだけじゃない!心から君に尽くします!それが僕の喜びなんだから
 喜びを分かち合えるのなら、もっとふかいキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらいます!
 霊夢!君がスキマの中に素っ裸で入れというのなら、やってもみせる! 」(AAry

宴席の中心でずいぶんとおおげさに愛を叫ぶ○○。おおげさな奴……英語で言えばオーバーマンか?
神社を包む割れんばかりの拍手。顔を真っ赤にして俯く霊夢。握り締めた両拳がぷるぷる震えている。
……あいつって…あんなに酒乱だったっけな?

「表現できたぜ……おれのハートを!究極の愛を!……表現できたぜェ~~~!
 万雷の拍手をおくれ幻想郷のボケども」

なにやらうっとりした表情でギターをかき鳴らすジェスチャー。拍手がさらに大きくなった。
えーと……あれ?なんか性格が変わりすぎてないか?……薬が強すぎたかな?
こっそり懐の瓶を取り出し、ラベルを確かめると、私自身の字ではっきりと『惚れ薬 ~男はオ・オ・カ・ミ☆~』と書いてあった。
しかもその上にかぶさるように『エロいよ危険!ギャラクティカ失敗作』と殴り書きしてある。
く………



薬を間違えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



「どうしたのよ○○さん…!酔ってるの?何か変よ?」
「ああ、君へのラヴに酔いしれているのさモンシェリ………僕の想い、受け取ってくれるね?」
「きゃっ…ちょっと……やっ!こら、どこ触ってるのっ!怒るわ、よっ…!」

有無を言わさず霊夢を抱き寄せる。薬のせいだと分かっていても、胸が痛んだ。
……これはまずい、まずいぜ!この薬は過去に類を見ないずば抜けた失敗作だ!
一度里に下りた際、某半獣で試してみたところ、角を生やしアフロのヅラをかぶって暴走したあげく、
知己の不死人を一晩中(自主規制)しまくるという悲劇を生んだ。相手は三回くらい死んでたっぽい。
なぜアフロのヅラだったのかはいまだに謎である。教えて下さいゆでたまご先生。
そんなわけで、早く止めないと霊夢が(イチャスレはエロ禁止です)で(えっちなのはいけ(ry)に!

      ざわ……
                 ざわ……

そんな二人を、いい酒の肴とばかりに興味津々に見守る野次馬たち。生温い視線が集中する。
お前ら後で職員室な。

「ちょっとあんた達、何嬉しそうに見て…んっ……!ん、んん~~~~っ!」

ズキュウゥゥゥゥゥゥン!!

不意を突き、ありえない効果音を立てて唇を奪う○○。会場が一気にヒートアップした。
うわぁ…舌入れてる……すご…うらやましい………じゃなくて!……うらやましいぞ!(本音)

「○○くんの ごういんな キス!」
「おおーーーーーっと!れいむ、くちびるをうばわれたーーーーーっ!」

マイクを持って絶叫する放送席。いつの間に作ったんだ?

「いやーこれは過激ですねー、明日のトップ記事はもう決まりですねー」
「このシチュエーションをどう思いますか、解説のチルノさん?」
「さすが○○、あたい達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」
「……いや、あんたそういうキャラだったか?」
「そもそも“しちゅえーしょん”って何さ?何かのさなぎ?」
「……あんたもう黙ってろ」
「おおーーーーーーっと!れいむ、おしたおされたーーーーーーっ!」

解説の⑨と羽蟲を完全に無視して、実況役の天狗娘が職務をまっとうせんとばかりに叫ぶ。真面目なのか馬鹿なのか。
見れば霊夢が組み敷かれ、いまにも(子供は知らない方がいい)に突入しそうだ。うお、ドロワーズ脱がされてる。
かぶりつくギャラリーたち。実況もマイクを投げ出し、カメラを携えて飛んで来る。お前ら後で体育館裏な。
もはや半泣きで弱弱しい抵抗を続けるしかできない霊夢は、
いつもの超然とした雰囲気など微塵もない、ただの年頃の女の子に見えた。

「ちょっと……やっ…!こら、どこに手入れてるの…!ダメだってっばっ…」
「そうは言うがな霊夢。性欲をもてあます」
「いや…ねえお願いやめて……誰か助けて……!いやぁぁぁっ!魔理沙ぁっ!」

その一言で我に返る。……なに傍観してるんだ私は!とっととあいつを止めないと!
霊夢にばかり羨ましい目に……じゃなくて、既成事実を作られてたまるか!(どっちにしても本音)

「彗星『ブレイジングスター』!」

近くの桜に立てかけてあった愛用のホウキをひっ掴み、またがりながらスペルカードを宣言する。
言霊を受けて輝きを増すホウキ。私が魔力を解放してやると、光の尾を引きながら霊夢達に向けて真っ直ぐに突っ込んだ。
そのままの勢いで二人を弾き飛ばす。

「ぶべらっ!!」
「おおーーーーーーーっと、れいむ、ふっとばされたーーーーーーーーーっ!」

グシャッ!

吹っ飛ばされ、回転しつつ頭から車田落ちをする霊夢。すまん、ちょっとジェラシー入った。
通り過ぎたところで魔法を解除し急ブレーキ、ホウキから降りて霊夢に駆け寄る。
周りから起こるブーイングの嵐。お前らうるさい。

「(貞操は)大丈夫か霊夢?」
「……方法に難があるけど…とにかく助かったわ、ありがと」

乱れた裾と荒い呼吸と潤んだ瞳と上気した頬が妙に色っぽい。霊夢のくせに(ギリィッ)。
霊夢の手を引き、起こしてやる。握る手に思いっきり力がこもっているのは無意識のなせる業だ。
と、半ばまで立ち上がったものの、ぺたんとへたり込んでしまった。

「……霊夢?」
「……○○さん……いくら酔ってるからって…ぐすっ……ひどいよこんな事……」

げ、マジ泣き!

「そんな人じゃないって……ひっく、信じてたのに……」
「あー……ほら、あれだ!なんか理由があるんだよ!満月光線浴びすぎたとか!」
「ん……今日の月は上弦」
「あ、あー……んじゃ上弦光線だ」
「…………」
「とにかく、なんか浴びたんだ、うん。間違っても何かを飲んだせいなんかじゃないぜ!」
「…………ねえ魔理沙」
「な、なんだ?助けてやったお礼をリクエストできるのか?」
「あんたもしかして………


 ○○さんのお酒に、何か混ぜた?」


ぎくっ!

「な……なななななんの事かさささっぱりアイドンノゥだぜ?」
「……全部あんたの仕業か」

………こういう時のこいつの勘は鋭い。
全身からはジェノサイド巫女オーラつまりは殺気を噴き出しながら、ゆらりと立ち上がる霊夢。
これは………私、死ぬかもな。こんなことなら真正面から告白するんだった……

「……って、○○はどこに落ちた?」
「話をそらすなっ」
「そうじゃない!あいつがいないんだって!」
「どうでもいいのそんな事は!どこかの草葉の陰で泣いてるわよ!」
「いや勝手に殺すなよ」
「そんな事よりも!」

どこから出したのか、お祓い棒を構える霊夢。笑顔がどす黒い。

「まずは魔理沙に、恥をかかせてくれたお礼をしないとね……ふふふふふ」
「う……お、お礼のリクエストはできるのか?」
「剥かれてから吊るされるか、吊るされてから剥かれるかの二択でどうぞ」
「そ、そいつは素敵だな。キャンセルできればもっとゴージャスで素敵だぜ?」
「あら、キャンセルもクーリングオフもない、ってのもシンプルで素敵じゃない?一括でお願いね」

あくまで笑顔のまま歩み寄る悪徳業者。さっきまでのか弱い乙女は何処に行った?

「ちょっっと待った!ちょ、ちょっと待った!!」
「You gotta remember♪ 今も夢符のかけらを手に あの頃のように (come on!) 光はなつ少女のハート♪」

歌いながら近寄るな。怖いから。
彼女の本気っぷりを、口ずさむメロディーが思い知らせてくれる。
ちなみに途中の『come on!』はギャラリーの連中だ。こういう時だけ結束固いよなお前達。
今にも「ケヒヒー」とか言いそうな、いやらしい笑顔でにじり寄ってくる霊夢。
グッバイ私の貞操……できればあいつにあげたかったな………

「ケヒヒー」

あ、ほんとに言った。

「ちょっと!今のは私じゃないわよ!」
「んじゃ誰だよ?お前以外にそんな奇声を上げる巫女なんか見たことないぞ?」
「巫女に限定するなっ!」
「奇声を上げることは否定しないんだな」
「あー……あんたは一晩中悲鳴を上げたいみたいね?」
「…………ま、待て!ちょ、おま……!」
「問答無用!ケヒヒー!」

やっぱりお前じゃないか……いやそれよりも!

「待て霊夢!後ろ、後ろっ!うしろ見ろっ!」
「いまどきそんな手にひっかかるもんで…………わひゃぁっ!?」
「じゃ、僕は霊夢を一晩中いい声で鳴かせてやるとしようかな」

全く気配を感じさせず、いつの間にか○○が霊夢の背後に迫っていた。
背中につつーーーっと指を這わせる。

「うひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

全力で走って逃げる霊夢。飛べばいいのに。
そんな霊夢に両腕を広げてゆっくりと近寄る○○。

「何を恥ずかしがっているんだいハニー。ほら、早く僕の大胸筋に飛び込んでおいで」
「来るな!寄るな!近付くなっ!」
「皆さんも僕らのゴールインを今か今かとお待ちかねだぞ。そうだろうみんな!」
「「「そーですねー!」」」
「ギャラリーを味方につけるな!あんた達もノるな!」
「さあ遠慮はいらない。今夜はたっぷりと愛しあおうじゃないか。ここの描写だけで一冊の本になるくらいに!
 タイトルは『REIMU特別編 SAGA』でいいかなー!」
「「「いいともー!」」」
「あんた達……いいかげんにしなさいっ!」

懐からお札を取り出す霊夢。さすがに突っ込み疲れて実力行使に出るようだ。
ひらたく言うとキレた。

「夢符『封魔陣』!」

懐からお札の束を取り出し、一斉に放つ。
呪力を帯びたお札が鎖のごとく連なり、○○を包囲する小結界を形成する。このまま結界を縮小し、縛り上げるつもりだろう。
完成してしまえば、常人が自力で解くことはまずできないのだが……なんだ、この胸騒ぎは?

「……甘い、甘いわ霊夢!だからお前は巫女なのだ!」

○○は直立して腕を組んだまま、微動だにしない。……一体なんなんだ、あの東方キャラには不敗だとも言いたげなあの余裕は!?

「そんな紙切れで、僕のラヴ・エクスプレスから途中下車できるとでも思っているのか?」
「あら、切符を間違えたかしら!なら列車ごと止めるまでだわ!」
「残念、切符はここで切らせてもらう!


           塔符『チェーンソー 15』!」


「な……スペルカード!?」

宣言と同時に、○○の周りに出現する無数の小さな鋼鉄の刃。
単体ではたいした威力も無いが、全ての刃を一定の軌道上に密集、高速運動させる事によって、
大木すらも切り落とす程の破壊力を生み出す。
あいつが自分の少ない魔力でも使えるものをと、外の世界の道具にヒントを得て作ったものだ。
嬉しい、ちゃんと活用してくれるなんて!魔法を教えて本当に良かった(恋する乙女の思考)!

「これが にんげんの サガか……」

紙は バラバラになった。

「うそ……」

さすがにスペカが破られる事態は想定していなかったらしい。霊夢が放心した瞬間を、あいつは見逃さなかった。

「では、乗り越し料金を払っていただこうか!」
「きゃあっ!」

低い姿勢でダッシュ、そのまま霊夢を押し倒し馬乗りになる!

「さあ、二人でめくるめく愛の幻想郷(終点)へ旅立とう!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!いやっ、いやぁっ!」
「その通り!最初の『ケヒヒー』は僕だ!」
「そんな事誰も聞いてな……ひぃっ!そ、そそそそこはだめ…だって、ばっ………!」
「オレサマ オマエ マルカジリ」

お祓い棒でぽこぽこ叩かれているのを気にもかけず、霊夢に覆いかぶさってすりすりしている。
薬の効果で、だいぶ魔獣と化しているようだ。うん、看板に偽りなし。

「ちょ、ちょっと……なんとか…やんっ!なんとかしてよ魔理沙!あんたの…薬の、せいで、しょっ!」
「ええー、今助けたら私を吊るして剥くんだろ?いや、剥いて吊るすんだっけ」
「うっ………」
「愛の幻想郷…そうか行くのかボンボヤージュ(ぼそっ)」
「ううっ……」
「今すぐボーーンボヤージュ♪(T0KIOっ)」
「うううっ……」
「………お礼のリクエスt(ぼそっ)」
「ああもうっ!分かったわよ!返品可!送料込みっ!とにかくなんとかしてーーーーーっ!」
「よーし、商談成立!今助けてやるぜっ」

ホウキを構えて駆け寄り、大きく振りかぶる。愛する人に刃を向けるなんて……なんて悲しい運命のいたずらなのかしら。
ごめんね、れいむと(ごめんね、18さいみまんにはいえないの、ごめんね)されたくないの、ごめんね。
まさに後頭部にホウキを打ち込まんと“担いだ”と同時、それまで身体をまさぐっていた○○の両手が止まった。

「…………な、なに?」
「…………」
「………なんだ?」

妙な間が場を支配する。ギャラリー達の晩酌をする手すらも止まっている。つーかこの状況で普通に飲んでるお前ら凄いよ。
しばらくの後、霊夢の薄い胸板をぽんぽんと叩き

「……貧弱、貧弱ゥーッ!!」
「「うるさいわぁっ!」」

ゴシカァン!

霊夢の蹴り上げ(ゴシッ)と私のフルスイング(カァーン)が絶妙なタイミングで2hitコンボ、
○○は「モルスァ」みたいなことを言いながらすごい勢いで飛んで行った。
そのまま桜の樹に激突し、動かなくなる。

「「幼児体型で何が悪い!」」

霊夢と綺麗にハモる。私達の禁忌に触れたその罪はあまりにも重かった。
巻き起こる拍手。賛同者は多いようだが、数人が余裕の笑みを浮かべているのが非常にむかつく。
大きけりゃいいってもんじゃないんだ!……くそっ、泣いてない、泣いてないぞ!泣いてないったら!

「んで、魔理沙」
「ん?」

乱れた巫女服を直しつつゆっくりと立ち上がる霊夢。
桜の下で転がっている○○に札を放ち、今度こそ封魔陣で縛り上げる。

「なんの悪ふざけ?○○さんにあんな変な薬飲ませるなんて」
「あ、いや、実はな……間違えてケダモノになる薬を……」
「私は動機を聞いてるの。○○さんに何をするつもりだったのよ?」

うあ……さすがは霊夢。一番答えたくない部分をピンポイントに以西把爾亜(いすぱにあ)剣術で突いてくる。
しかし、いくらなんでも馬鹿正直に
『カレの意中の人を聞き出す薬を飲ませるつもりだったの(はぁと)!○○とか好きだからー!』
なんて言えるわけがない!

「ふむ、『カレの意中の人を聞き出す薬を飲ませるつもりだったの(はぁと)!○○とか好きだからー!』ってところかしら?」
「なっ…!なんで一言一句正確に分かるんだよ!」
「勘よ」
「……なあ、なんかもう『勘が鋭い』では済まされないレベルだな」
「だって巫女だもの」

……巫女関係あるのか?

「しかし、魔理沙もだなんて……困ったわね…」
「何が困るんだ?私がその……○○をす、好きになって、不都合でもあるのか?」
「いや、そんな事はない……んだけど………」

ちょいとばかり真面目な顔で考え込んでいる。珍しく、言葉を選んでいるようだ。

「ねえ魔理沙。もしも、もしもよ……○○さんのことを好きな人が他に居たとしたら…どうする?」
「えーっと……霊夢?それってまさか……」
「あ、あー…あたしじゃないわよ?だからもしもの話、って言ってるじゃないの!」
「じゃあ誰なんだよ」
「え、えっと、それは……ええと…そ、それは、神山満月ちゃん!」
「今日の月は上弦だぜ」
「じゃあ神山上弦ちゃんよ!」
「だから誰だよそれ」
「も……もう!うるさいわね!とにかく違うの!」

耳まで真っ赤にしてお祓い棒をぶんぶん振り回す霊夢。そのリアクションが全てを物語っている。
もしかしたらこいつ、恋愛感情とは全く無縁の生活してきた分、こういう事に関しては私より純情なんじゃなかろうか。

「ブルータス、お前もか……」
「だから違うって言ってるでしょ!ブルータスでもない!」
「嘘だなブルータス。顔に書いてあるぜ」
「うっ……そ、そんなの分かるわけないでしょ…」
「わかるさ。魔法使いだからな」

バチバチバチッ!ボゥッ!

霊夢との間に火花が散り、運悪く線上に舞い落ちた桜の花びらが炭と化す。

「しっかし、まさか霊夢もあいつが好きだったとはな。普段は顔に出さないから全く気付かなかったぜ」
「あんたこそ。あんた達、友達付き合いしてる様にしか見えなかったわ」
「あーそういや、やたらと魔法の講義中にお茶持ってきたり、そのまま一緒に話し込んだりしてたよなあ。
 あれはさりげなくけん制してた、ってわけか」
「あんたこそ、魔法講義とか言って毎日押しかけて来て。私を見張ってるつもりだったのかしら」
「ほほーう、つまりお二人は恋のライバルだったわけですね」
「「さりげなくメモるな!」」

ゲゲシッ!

横からすい~っと寄ってきてペンを舐めていた天狗娘をダブルで蹴っ飛ばす。
「モルスァ」みたいなこと言いながらすごい勢いで(ry

バチバチバチッ!

再びにらみ合い、火花を散らせる。ボタン連打で押し勝て!

「まったく……そうと知ってりゃ、大人しくしてなかったのにな!
 もっと遠慮なく二人っきりのあまぁ~いシチュエーションとか、あむゎ~いシチュエーションを作ってたぜ!」
「こっちこそ!馬鹿正直に晩御飯なんか食べさせないで、とっとと追い返せばよかったわ!
 そして新婚夫婦のようなアツアツのディナータイムを!」
「おいおい!その晩飯の食材は私も提供してただろっ!」
「一番食べてたのもあんたでしょ!三杯目にはそっと出し、って言葉知らないの!?」
「ああ知らないな!生憎そんな言葉が載ってる辞書は持ってないぜ!」
「色気より食い気、って言葉は載ってそうですよね」
「「戻ってくるな!」」

ゲゲシッ!

低空をふらふら飛んできてシステム手帳を開いていた天狗をダブル裏拳で吹っ飛ばす。
「モルスァ」みた(ry

バチバチバチッ!

三度火花を散らせる私達。どんどん火力も上がっている。まさにPower of Love(大○ガス)。

「……とりあえず、こういう場合は」
「……ああ、やる事はひとつだよな」
「……○○さんへの告白権を賭けて」
「……恨みっこなしだぜ」


「「弾幕ごっこで、勝負!!」」


「……重要なのは○○さんが誰を好きなのか、だと思いますが」
「「水差すな!」」

天狗(ry
「モノ(ry



……そして、宴が始まった。



私と霊夢のガチ勝負だったのが、『貰えるものは貰っとけ』感覚で参加してきたギャラリー連中でバトルロワイヤルになったり、
気が付けばせんだみつおゲーム→アタック25→キャンディー掴み取り大会の流れになっていたり、
そのキャンディーを箱ごと亡霊姫が食い尽くしていったり、そいつを食い物の恨みとばかりに皆でぼこったり、
どさくさに紛れて○○の結界が解かれ、「俺は人間をやめるぞぉぉぉぉ!」と霊夢のドロワーズを頭にかぶって暴走を始めたり、
それを見てキレてしまい、夢想天生をぶっ放した霊夢にマスタースパークを撃ち返したあとはもう記憶に無い。



――――はぁ……どうして、こうなったのだろう。





            ※    3    ※





「……で、気が付いたら立っていたガンダムは霊夢と私だけだったわけだ」
「誰がガンダムよ」
「ああ、お前はジオングだったか。足なんて飾りだろ?」
「そういうあんたはゴッグで充分。なんともないわよ」
「いんや、私はZZだぜ?ハイメガ粒子砲もあるしな」
「……うん、話はよーく分かった。僕が酔いつぶれてる間に起こったことも、1年戦争が起こったことも分かった。
 分かったからトリアーエズ、二人とも離れてくれないかな?」

朝からずっと、魔理沙と霊夢が僕の両腕にしがみついて離れないのである。

「やだ」
「嫌よ」

即答。離れるどころかよりいっそう力を込めてしがみついてくる。

「言ったでしょ?どっちかを選ぶまで離さない、って」
「私達の気持ちは伝えたはずだぜ?」
「とは言っても、ずっと君等の事は友達だと思ってたわけで……いきなり選べと言われても」
「あら、女の子にあんな恥ずかしいことさせておいて……責任とってくれないの?」
「そうだぞ。私だって……“はじめて”だったんだからな」

もじもじする霊夢&魔理沙。なにやら誤解を招く表現だが、別に変なことをしたわけではない。
簡単に言うと二人から同時に“愛の告白”というものをされてしまったのだ。
面食らう間もなく、早くどちらかを選べと迫ってくる二人。
あげく、答えるまで離さないと両腕をがっちりロックされて今に至る。

「いいから早く“ま・り・さ”って言っちゃえよ。楽になるぜ?」
「田舎のおふくろさんも『早く霊夢との間に出来た孫の顔が見たい』って泣いてるわよ?」
「お前には黙秘権も弁護士を呼ぶ権利もないんだ。さっさと『ああっ魔理沙さまっ』って言わないと、逮捕しちゃうぜ?」
「大丈夫よ。おつとめ中も籍は入れたままにしておくから。鳥居に黄色いハンカチ巻いておくわ」

……僕は犯罪者か。

「似たようなもんだ。恋泥棒は重罪だからな」
「カツ丼食べる?」
「…………モノローグ読まないでくれ」

普通なら、可愛い女の子二人にに抱きつかれているというこの状況は喜ぶべきなのだろうが、
これではどう見ても捕獲です。本当にありがとうございました。
某黒服に捕まった灰色の地球外生命体と、今なら友好を結べる気がした。

「さあさあどっちなの?早く選んで」
「さあさあ選べ選べ」

左右からさあさあと共にぎゅうぎゅうと薄い胸が押し付けられる。いろんな意味であまり嬉しくない。

「「胸の話はするな!」」
「ぶるわぁっ!」

間髪入れずダブルでチャランボを決められた。……だからモノローグ読まないで。

「さあさあ」
「さあさあ」
「魔理沙?霊夢?」
「紅白?黒白?」
「連邦?ジオン?」
「アル責め?エド責め?」
「おすぎ?ピーコ?」
「まきますか?まきませんか?」

もう何を選ばせているのかもよく分からないまま詰め寄ってくる乙女達。
どう見ても拷問です。本当にありがとうございました。

「もちろん私よね?一緒に暮らしてるし、もう夫婦みたいなものだものね」
「私を選ぶに決まってるよな?お邪魔虫の妨害にも負けず、熱く激しく愛しあったもんな」
「あら、かつてゴ○と呼ばれてたのはあんたでしょ?お邪魔虫さん」
「ああ、あれはもう2代目が継いだんだ。主婦ならワイドショーくらい見ろよ」
「すぐに私達の家に入り込むところとかぴったりだったのに、残念ね」
「心配しなくても、もうすぐ“お前だけの家”になるさ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

僕にしがみついたままにらみ合う二人。溢れるジェノサイド巫女&魔砲使いオーラつまりは殺気。
その間に立ってる僕に重い空気がのしかかる。首が痛い。

「……黒くてすばしっこい悪い虫は」
「……正妻気取りの春な頭に」

「駆除しなくちゃダメみたいね!」
「大奥のルールを教えてやるぜ!」

「はーなるほどなるほど。こうやって○○さんをめぐって事あるごとに二人が衝突、んで間の○○さんが痛い目にあう、と。
 今後はこのラブコメ展開が続くわけですね」

「「お前がオチ担当か!!」」

軒下に潜んでノートパソコンでブログの更新をしていた天狗娘を、二人の弾幕が蜂の巣にする。





――――「モルスァ」みたいなことを言いながら、すごい勢いで飛んで行った。



                                          完






@@@@@@@@@@@@@@@@あとがき@@@@@@@@@@@@@@@@

霊夢のリクエスト、見事に失敗。出来ない事言ってすいませんでした。

これでもはじめはシリアス書くつもりだったんですが…
何を受信したのやら。無駄に長いし。

妄想が暴走してネタだらけでもう何がなにやらになってますが、
少しでも楽しんでいただける部分があれば幸いでございます。ええ。

こんな長文妄想に付き合ってくださった皆様に愛を。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

>>241
目安箱バナー