ハルヒ+みくる+長門 ハルヒの猛進の続きです。
(長いので小ネタでなくエロなしSSに収録)
(長いので小ネタでなくエロなしSSに収録)
「涼宮ハルヒの溜息」のネタバレが含まれます。未読未見の方はご注意ください
みっみっみらくる~♪
女性出演者全員の合唱による、「恋のミクル伝説ver2.0」が、試写室(つまり、文芸部室だ)に
響き渡った。
わたしは去年の文化祭以来、音楽がそれなりにできることになっていたので、即興でアルトのパートを
歌わされたものだ。
わたしは、暗幕の作る闇に紛れてしっかりとわたしの手を握っている、朝比奈みくるの手を握りかえしながら、この映画第二弾撮影のことを思い出していた。
響き渡った。
わたしは去年の文化祭以来、音楽がそれなりにできることになっていたので、即興でアルトのパートを
歌わされたものだ。
わたしは、暗幕の作る闇に紛れてしっかりとわたしの手を握っている、朝比奈みくるの手を握りかえしながら、この映画第二弾撮影のことを思い出していた。
わたしはユキ・ナガト。
この全寮制の女子校に来るまでの記憶はない。気が付いたら、わたしはその寮の個室と学園を往復する日々を送っていた…
この全寮制の女子校に来るまでの記憶はない。気が付いたら、わたしはその寮の個室と学園を往復する日々を送っていた…
「うん、そのモノローグ、なかなかいいわよ」
涼宮ハルヒが、借り物のPCMレコーダを振り回しながら言った。放送室から強奪同然にかり出してきたものであることは言うまでもない。
「じゃあ、そのまま、ユキとミクルの出会いのシーン撮影するわよ」
涼宮ハルヒは、わたしと朝比奈みくるに、一つずつ紙袋を配る。持った感じから、おそらく服だろう。
「ひゃぁ」
朝比奈みくるが、嫌そうな声を、それでも涼宮ハルヒに気を遣ってかちいさく上げた。
なにせ、朝比奈みくるは去年、バニーガール、露出ウエイトレス、と衣装でさんざんな目に遭っているのだ。
それはトラウマにもなるだろう。
「今回の衣装よ、さあ、二人が着替えるから古泉君とキョンは出て行きなさい」
涼宮ハルヒは、男性陣を部室から追い出す。
朝比奈みくるは、紙袋からその中身を取り出した。
「…普通ですね」
「なに?みくるちゃん、ひょっとしてバニーのほうがよかった?着たいものがあれば今のうちに言いなさい」
「そんなことないです、これが着たいですぅ」
白のブラウス、黒のタイトスカート、ブラウンのパンティーストッキング、ハイヒール。
偶然とはいえ、見事なまでに、彼女の異時間同位体の服装だった。
「今回朝比奈ミクルは、前回ミクルビームで次元の断層に吹き飛ばされて行方不明になった悪い魔法使いが、ある全寮制の女子校の生徒になっていることを知り、教師としてその学園に潜入するのよ」
「ということはまさか…」
本にあるような凝った表現をすれば、自分の死刑が執行されることを確認する死刑囚のように、朝比奈みくるは上目遣いに涼宮ハルヒを見た。
「みくるちゃん、察しがいいわね。もちろん、女教師朝比奈ミクルの正体は未来からやってきた戦うウエイトレスさんよ」
その時の朝比奈みくるの顔を見て、わたしは、「かわいそう」という感情を理解できたような気がした。
涼宮ハルヒが、借り物のPCMレコーダを振り回しながら言った。放送室から強奪同然にかり出してきたものであることは言うまでもない。
「じゃあ、そのまま、ユキとミクルの出会いのシーン撮影するわよ」
涼宮ハルヒは、わたしと朝比奈みくるに、一つずつ紙袋を配る。持った感じから、おそらく服だろう。
「ひゃぁ」
朝比奈みくるが、嫌そうな声を、それでも涼宮ハルヒに気を遣ってかちいさく上げた。
なにせ、朝比奈みくるは去年、バニーガール、露出ウエイトレス、と衣装でさんざんな目に遭っているのだ。
それはトラウマにもなるだろう。
「今回の衣装よ、さあ、二人が着替えるから古泉君とキョンは出て行きなさい」
涼宮ハルヒは、男性陣を部室から追い出す。
朝比奈みくるは、紙袋からその中身を取り出した。
「…普通ですね」
「なに?みくるちゃん、ひょっとしてバニーのほうがよかった?着たいものがあれば今のうちに言いなさい」
「そんなことないです、これが着たいですぅ」
白のブラウス、黒のタイトスカート、ブラウンのパンティーストッキング、ハイヒール。
偶然とはいえ、見事なまでに、彼女の異時間同位体の服装だった。
「今回朝比奈ミクルは、前回ミクルビームで次元の断層に吹き飛ばされて行方不明になった悪い魔法使いが、ある全寮制の女子校の生徒になっていることを知り、教師としてその学園に潜入するのよ」
「ということはまさか…」
本にあるような凝った表現をすれば、自分の死刑が執行されることを確認する死刑囚のように、朝比奈みくるは上目遣いに涼宮ハルヒを見た。
「みくるちゃん、察しがいいわね。もちろん、女教師朝比奈ミクルの正体は未来からやってきた戦うウエイトレスさんよ」
その時の朝比奈みくるの顔を見て、わたしは、「かわいそう」という感情を理解できたような気がした。
一方のわたしの衣装は、
「白のセーラー服、赤いスカーフ、崑のプリーツスカート、白のニーソックス」
確認する。オーソドックスな衣裳だが、スカート丈は短い。
「どう?最初は光陽台の制服を調達するつもりだったけど、本屋で見たアニメ雑誌の表紙にこんなのがあって、有希に似合いそうだからこれにしてみたの」
紙袋には、まだ何かが入っていた。
「逆ナイロールの眼鏡」
「そう。有希が前にかけていたのとは違う感じにしてみたわ。悪い魔法使いだった記憶を失ったユキ・ナガトは内気な文学少女になっていて、それ故に、新任の女教師朝比奈ミクルを敵とも思わず、恋してしまうのよ」
それを聞いていた朝比奈みくるの顔がどんどんと赤くなる。何故わたしを見ているのだろうか。
「どうしてそうなるんですか~」
めずらしく、わたしは朝比奈みくると同じ意見を持った。
「白のセーラー服、赤いスカーフ、崑のプリーツスカート、白のニーソックス」
確認する。オーソドックスな衣裳だが、スカート丈は短い。
「どう?最初は光陽台の制服を調達するつもりだったけど、本屋で見たアニメ雑誌の表紙にこんなのがあって、有希に似合いそうだからこれにしてみたの」
紙袋には、まだ何かが入っていた。
「逆ナイロールの眼鏡」
「そう。有希が前にかけていたのとは違う感じにしてみたわ。悪い魔法使いだった記憶を失ったユキ・ナガトは内気な文学少女になっていて、それ故に、新任の女教師朝比奈ミクルを敵とも思わず、恋してしまうのよ」
それを聞いていた朝比奈みくるの顔がどんどんと赤くなる。何故わたしを見ているのだろうか。
「どうしてそうなるんですか~」
めずらしく、わたしは朝比奈みくると同じ意見を持った。
「シーン3、スタート」
超監督兼超カメラマン兼超助監督が、撮影開始を告げた。
場所は涼宮ハルヒのクラスの教室。撮影許可は取っていないとのことだ、
わたしは涼宮ハルヒの席で、カバーを掛けた四六判の本に目を落としていた。
ふと本から目を上げ、窓の外の遠くに目をやる。遠くを見ながら、台本にある台詞を口にする。
「朝比奈…先生、きれいな人だった…」
そこに、朝比奈ミクルが入ってくる。
「もう下校時間ですよ、早く寮に帰りなさ」
「有希、振り返って」
涼宮ハルヒの指示で、振り返る。朝比奈みくると目が合った。
「あなたは…ユキ…ユキ…さん?」
「先生は、わたしをご存じなんですか?」
朝比奈ミクルが、一歩前に出る。
「だって、あのとき、私はあなたを倒したはぁ、ぁ、ぁ、きゃあ」
不意に、朝比奈みくるが転んだ。慣れないハイヒールでバランスを崩したのだろう。
倒れてくる朝比奈みくるを、わたしは椅子に座ったままとっさに受け止めた。
「…ありがとうございます、長門さん」
「怪我がなければ、いい」
朝比奈みくるに腕をまわし、抱きしめるように抱き留めていた。
「うん、これはこれでいいからそのまま続けて」
NGになるかと思いきや、涼宮ハルヒはそのままカメラを廻し続けていた。
わたしは、なぜかこのまま朝比奈みくるを抱いていたいと思った。
超監督兼超カメラマン兼超助監督が、撮影開始を告げた。
場所は涼宮ハルヒのクラスの教室。撮影許可は取っていないとのことだ、
わたしは涼宮ハルヒの席で、カバーを掛けた四六判の本に目を落としていた。
ふと本から目を上げ、窓の外の遠くに目をやる。遠くを見ながら、台本にある台詞を口にする。
「朝比奈…先生、きれいな人だった…」
そこに、朝比奈ミクルが入ってくる。
「もう下校時間ですよ、早く寮に帰りなさ」
「有希、振り返って」
涼宮ハルヒの指示で、振り返る。朝比奈みくると目が合った。
「あなたは…ユキ…ユキ…さん?」
「先生は、わたしをご存じなんですか?」
朝比奈ミクルが、一歩前に出る。
「だって、あのとき、私はあなたを倒したはぁ、ぁ、ぁ、きゃあ」
不意に、朝比奈みくるが転んだ。慣れないハイヒールでバランスを崩したのだろう。
倒れてくる朝比奈みくるを、わたしは椅子に座ったままとっさに受け止めた。
「…ありがとうございます、長門さん」
「怪我がなければ、いい」
朝比奈みくるに腕をまわし、抱きしめるように抱き留めていた。
「うん、これはこれでいいからそのまま続けて」
NGになるかと思いきや、涼宮ハルヒはそのままカメラを廻し続けていた。
わたしは、なぜかこのまま朝比奈みくるを抱いていたいと思った。
教室での出会いをきっかけにして、朝比奈ミクルと、ユキ・ナガトは手探りするように、すこしづつお互いの距離を近づけていく。
教師と生徒、そして、同性という二重の背徳を背負いながら、二人は互いを思う気持ちを、少しずつ確かめて いくのであった。
それが壊れたきっかけは、悪い魔法使いユキのパートナーであった三毛猫、シャミセンが現れたことだった。
シャミセンが無理矢理ユキの手に押し込んだ魔法の杖、スターリングインフェルノ。
ユキ自ら、全てを忘れるためにスターリングインフェルノに封じていた戦いの日々の記憶。
その記憶が、再びユキの中に流れ込む。
朝比奈ミクルとは戦わなければならないという哀しい現実をもたらす。
そして二人は、一緒にお弁当を食べた学校の屋上で、今度は睦み合うためでなく、戦うために向かい合う。
教師と生徒、そして、同性という二重の背徳を背負いながら、二人は互いを思う気持ちを、少しずつ確かめて いくのであった。
それが壊れたきっかけは、悪い魔法使いユキのパートナーであった三毛猫、シャミセンが現れたことだった。
シャミセンが無理矢理ユキの手に押し込んだ魔法の杖、スターリングインフェルノ。
ユキ自ら、全てを忘れるためにスターリングインフェルノに封じていた戦いの日々の記憶。
その記憶が、再びユキの中に流れ込む。
朝比奈ミクルとは戦わなければならないという哀しい現実をもたらす。
そして二人は、一緒にお弁当を食べた学校の屋上で、今度は睦み合うためでなく、戦うために向かい合う。
ここまでのあらすじはこんなところだ。内容の是非は別として、これだけの長さの話を30分にまとめてしまうところは驚愕に値するが、今はそれをおいておこう。
悪い魔法使いとしての記憶を取り戻したわたしは、黒いマントと三角棒をまとった姿で、 露出ウエイトレス姿の朝比奈みくる、いや、朝比奈ミクルと向かい合っていた。
「シーン55、スタート」
超監督の声を合図に、演技をはじめる。
「ながと…じゃなくてユキさんっ、もうあなたに勝ち目はないですっ、おとなしく宇宙にかえってください」
「それはできない。あなたを排除するのはわたし」
私は、スターリングインフェルノをまっすぐ朝比奈ミクルに向ける。
「ここで決着を付ければいいではないか、朝比奈ミクル、君も構えたまえ」
私の肩の上で、シャミセンが何か言ったが、誰も気にしていない。これは腹話術。
「もうやめましょう~」
朝比奈ミクルは、ミクルビーム発射のポーズをしながら、それでも半泣きの表情だった。
もし、朝比奈みくるの陣営とと我々情報統合思念体が決定的な敵対関係となったら、彼女はこんな顔をしてくれるだろうか。ふと、そんなことを考えた。
「撃たないなら、こちらから撃つ」
「ミクルビーム!」
朝比奈ミクルの絶叫。去年の処置が聞いているので、実際にビームは出ない。
それでも、わたしは膝から崩れ落ちる演技をする。 手からスターリングインフェルノが落ちる。
三角帽も同じくすべり落ちた。
ユキは愛するミクルを撃てなかった、そういう筋書きなのだ。
「有希、次のカットまでそのままでいなさい、さあみくるちゃん、次のカットは泣き顔から入るから、目薬をたくさん差すのよ」
嫌がる朝比奈みくると、それを追いかけまわす涼宮ハルヒを、指示通り、膝が崩れた状態で微動もせずに、見つめる。目薬を差すついでに朝比奈みくるの胸を揉んでいる涼宮ハルヒを見ていると、面白くない、という感情がどんなときに沸き上がるのか、理解できた。
悪い魔法使いとしての記憶を取り戻したわたしは、黒いマントと三角棒をまとった姿で、 露出ウエイトレス姿の朝比奈みくる、いや、朝比奈ミクルと向かい合っていた。
「シーン55、スタート」
超監督の声を合図に、演技をはじめる。
「ながと…じゃなくてユキさんっ、もうあなたに勝ち目はないですっ、おとなしく宇宙にかえってください」
「それはできない。あなたを排除するのはわたし」
私は、スターリングインフェルノをまっすぐ朝比奈ミクルに向ける。
「ここで決着を付ければいいではないか、朝比奈ミクル、君も構えたまえ」
私の肩の上で、シャミセンが何か言ったが、誰も気にしていない。これは腹話術。
「もうやめましょう~」
朝比奈ミクルは、ミクルビーム発射のポーズをしながら、それでも半泣きの表情だった。
もし、朝比奈みくるの陣営とと我々情報統合思念体が決定的な敵対関係となったら、彼女はこんな顔をしてくれるだろうか。ふと、そんなことを考えた。
「撃たないなら、こちらから撃つ」
「ミクルビーム!」
朝比奈ミクルの絶叫。去年の処置が聞いているので、実際にビームは出ない。
それでも、わたしは膝から崩れ落ちる演技をする。 手からスターリングインフェルノが落ちる。
三角帽も同じくすべり落ちた。
ユキは愛するミクルを撃てなかった、そういう筋書きなのだ。
「有希、次のカットまでそのままでいなさい、さあみくるちゃん、次のカットは泣き顔から入るから、目薬をたくさん差すのよ」
嫌がる朝比奈みくると、それを追いかけまわす涼宮ハルヒを、指示通り、膝が崩れた状態で微動もせずに、見つめる。目薬を差すついでに朝比奈みくるの胸を揉んでいる涼宮ハルヒを見ていると、面白くない、という感情がどんなときに沸き上がるのか、理解できた。
次のカットで目薬を流す朝比奈ミクルの顔のアップを撮影、その次がようやくわたしの出番だった。
朝比奈ミクルが駆け寄り、私を抱きかかえる。そして、泣き顔で言う。
「どうして撃たなかったんですか」
「あなたを殺したくなかった。わたしが死ねば、あなたは死なない」
「そんなのだめですっ…今日の晩ご飯はユキさんの好きなカレーにしますから、ね、今日も一緒にたべましょう」
涼宮ハルヒから、「今よ死になさい」と、合図が入った。
私は、最低限の周囲の状況の把握と、後で生き返るのに必要な分の処理系を残して、体の機能を全て止めた。
早く言えば、自分で生き返る前提で死んだのだ。
筋肉が脱力して、全ての体重が朝比奈ミクルの腕にかかる。
「ユキ…さん」
目はあけたままにしておいたので、視覚情報は確保できていた。呼吸も心臓の鼓動も止まっているわたしを見て、 朝比奈みくるの目が大きく見開かれる。
「長門さんっ、長門さん長門さん長門さんっ」
わたしをがくがくとゆさぶる。後ろから「そこは長門さんじゃなくてユキでしょう」と言っている涼宮ハルヒの声がしていたが、朝比奈ミクル、いや、朝比奈みくるの耳には届いていないようだった。
「死んじゃいやですっ、ね、今日本当に長門さんの家でカレー作りますから、お風呂だって一緒に入っちゃいますから、だから、だから」
…もしかしたら、本当にわたしが死んだと思っているのではないだろうか。
涙がわたしの口に流れ込んだ。味覚を戻す。目薬でなく人間の涙だった。
つまり、今泣いているのは朝比奈ミクルではなく朝比奈みくるだということなのか。
そして、今わたしはユキ・ナガトではなく、長門有希として朝比奈みくるの腕の中にいるということなのか。
わたしに何かあったら、朝比奈みくるはこんなに泣くのか…
わたしは、体の機能を生き返らせた。心臓を再起動し、呼吸をはじめる。腕の血流が戻るのを待って、だらりとたれていた腕を上げ、ツーテイルに結んだ朝比奈みくるの頭にそっと手を置いた。
「大丈夫。今のは迫真の演技」
朝比奈みくると目があった。彼女の顔が呆然としたものから、怒りとも喜びともつかないものにかわる。
「長門さんのばかぁぁ、本当に死んだかと思っちゃいましたぁ」
わたしに抱きついて、大泣きする。
「すまない。あなたがそう感じると推測できなかった。あなたが生きている限り、もう死なないようにする」
朝比奈みくるにしか聞こえないように言う。
「これもこれでいいわね、じゃあ、ラストシーンは変更で、古泉君ごめんなさい、やっぱりあなたの出番なしだわ」
カメラを回す超監督の言葉も気にせず、わたしたちは強く抱き合っていた。
朝比奈ミクルが駆け寄り、私を抱きかかえる。そして、泣き顔で言う。
「どうして撃たなかったんですか」
「あなたを殺したくなかった。わたしが死ねば、あなたは死なない」
「そんなのだめですっ…今日の晩ご飯はユキさんの好きなカレーにしますから、ね、今日も一緒にたべましょう」
涼宮ハルヒから、「今よ死になさい」と、合図が入った。
私は、最低限の周囲の状況の把握と、後で生き返るのに必要な分の処理系を残して、体の機能を全て止めた。
早く言えば、自分で生き返る前提で死んだのだ。
筋肉が脱力して、全ての体重が朝比奈ミクルの腕にかかる。
「ユキ…さん」
目はあけたままにしておいたので、視覚情報は確保できていた。呼吸も心臓の鼓動も止まっているわたしを見て、 朝比奈みくるの目が大きく見開かれる。
「長門さんっ、長門さん長門さん長門さんっ」
わたしをがくがくとゆさぶる。後ろから「そこは長門さんじゃなくてユキでしょう」と言っている涼宮ハルヒの声がしていたが、朝比奈ミクル、いや、朝比奈みくるの耳には届いていないようだった。
「死んじゃいやですっ、ね、今日本当に長門さんの家でカレー作りますから、お風呂だって一緒に入っちゃいますから、だから、だから」
…もしかしたら、本当にわたしが死んだと思っているのではないだろうか。
涙がわたしの口に流れ込んだ。味覚を戻す。目薬でなく人間の涙だった。
つまり、今泣いているのは朝比奈ミクルではなく朝比奈みくるだということなのか。
そして、今わたしはユキ・ナガトではなく、長門有希として朝比奈みくるの腕の中にいるということなのか。
わたしに何かあったら、朝比奈みくるはこんなに泣くのか…
わたしは、体の機能を生き返らせた。心臓を再起動し、呼吸をはじめる。腕の血流が戻るのを待って、だらりとたれていた腕を上げ、ツーテイルに結んだ朝比奈みくるの頭にそっと手を置いた。
「大丈夫。今のは迫真の演技」
朝比奈みくると目があった。彼女の顔が呆然としたものから、怒りとも喜びともつかないものにかわる。
「長門さんのばかぁぁ、本当に死んだかと思っちゃいましたぁ」
わたしに抱きついて、大泣きする。
「すまない。あなたがそう感じると推測できなかった。あなたが生きている限り、もう死なないようにする」
朝比奈みくるにしか聞こえないように言う。
「これもこれでいいわね、じゃあ、ラストシーンは変更で、古泉君ごめんなさい、やっぱりあなたの出番なしだわ」
カメラを回す超監督の言葉も気にせず、わたしたちは強く抱き合っていた。
このwikiの更新情報RSS