この依頼のリプレイを読む

旧校舎のゴキブリ退治!?


●戦士たちの顔ぶれ
 夢の中にある学園、メガロアカデミアの旧校舎。
そこはうち捨てられていて最近はジャイアントエッジゴキブリという怪物が住み着き始めていた。
ジャイアントエッジゴキブリとは人間くらいの大きさのゴキブリで、雑食性だ。
しかも普通のゴキブリと違い、それは大きな刃を前足に二本も隠し持っていた。
このまま繁殖が続ければ間違いなく、そこを本拠地としたゴキブリは周辺の住民に甚大な被害を加えるだろう。
そこでゴキブリの繁殖を止めるためにメガロアカデミアから生徒が何人か派遣されてきた。
学生といえば少々不安だが、魔法や剣の扱いに長けた優秀な人たちだ。
そして、一夜の長い闘争の幕が切って落とされた。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!! やってやるぜぇぇぇぇ!!」
旧校舎の中で暑苦しく叫ぶ男、マイト・オーバーウェルム。
パートナーのマナ・オーバーウェルムもやる気に満ち溢れている。
「やれやれ……」
とそれを見てマイトにあきれ返るセレン・ディアス。
「マイトさんっていつもあぁなの?」
それを不思議そうに見ていたのは他校のリアトリス・ウィリアムズだった。
確かにあの様子は他校の生徒からすれば珍しいものだろう。同じ学校だったとしても慣れるものではないが。
「あぁ。いつもあんな感じだ。」
と答えるセレン。これはある意味でイルミンスールの名物なのである。
そしてセレンはイルミンスールのイメージを守るために話題を変えてみることにした。
「ところであっちの騒いでる方の女の子は大丈夫そうだけど君はゴキブリとかは大丈夫なのか?」
と。だがその言葉はリアトリスの地雷を踏んでしまったようであった。
「ゴキブリかぁ……、確かに好きじゃないけど戦えないほど苦手って訳じゃないかな。でもどうして私に聞くの?」
セレンに聞くリアトリス。その表情には諦観の色が見えていた。
パートナーのパルマローザはリアトリスを同情の目で見ていた。
なぜならそれは彼女にとっては他人事ではないからだ。
「何故かって? まぁ一応、女の子だから聞いておこうかと…… 特に他意は……」
リアトリスの言葉を聞いて不審に思うセレン。彼は最後まで気づかなかったようである。
「あー……、やっぱり……」
「落ち込まないでください……。よくあることです……」
と答えるリアトリスとパルマローザ。
実はこの二人、性別を何度も間違えられているのである。
そしてセレンに意外な真実が告げられるのであった。
「そのね……、確かにみんなよく間違えるけど僕、男の子だよ……」
「ついでに言いますが私は女性です」
「えっ!?」
と驚くセレン。大陸が浮遊している世の中だ。
女の見た目をした男がいてもおかしくはないだろう。彼はそう思うことにした。
「マナ。世の中は広いな」
と自分のパートナー、マナ・ルルティーファに話かけるセレン。
このマナというのは偶然にもマイトのパートナーと同じ名前だ。
と言うことで以下、差別化としてルルと表記する。
「そう……ですね」
と二人。その光景を見てアルジャン・シルバーバーグが言った。
「お前ももしかして男に間違えられてるのかも……」
「何か言った?」
そう言われて不機嫌そうに言ったのは鈴鳴 桜である。
彼女は胸が小さいのがコンプレックスだったのだ。
そして、ある程度人が集まったところに ウィング・ヴォルフリート が言った。
「それで、この依頼に参加したのは確か10人だったよな?」
「そのはずなんだけど……」
と鳴海 士は答えた。だがこの場には8人しかいなかった。
そして誰もいないはずの旧校舎から声が聞こえた……。
だがそれは悲鳴とは、ほど遠かった。
「うぉぉぉぉぉ!! 出たな、この魔獣め!! このっ、このっ、このっ、」
と。セレンは誰がいなくなったのか真っ先に気づいた。
「あのバカ……、先走って……」
「うん。確かにやるき満々だったもんね……」
同じくそのことに気づいたリアトリスも半ば呆れていた。
そして鳴海もウィングも今の状況を把握したらしかった。
「行こう。取り返しの付かないことになる前に」
「同感だ」
こうして成り行きで10人は旧校舎の中に入っていったのだった。
そう。数々の困難とゴキブリが待ち受うけるダンジョンと化した校舎へと……。

●旧校舎の中で
「マイトっ、大丈夫かっ?」
そう聞いたのはセレンだった。
今のところ、見る限りではマイトもマナも無事そうではあった。
見るとゴキブリの死体が一つ。相手が少なかったのが幸いだったのだ。
「あぁ。恐ろしい魔獣だったぜ」
「魔獣じゃなくてゴキブリなのだが……」
突っ込みを入れるウィング。
「どっちでも関係ないだろう。まさかゴキブリがここまで大きかったとは……」
そして鳴海はゴキブリの死体の大きさに驚いていた。
「とりあえずこんだけ大きな魔獣を退治したんだからこの皮を寮に持って帰るかな……」
「うえ~、それは寮に迷惑だよ~」
と嫌がるリアトリス。それに続いてルルは言った。
「そうです。こんなのが同じ寮にあると思っただけでぞっと……」
「でもこれがないと魔獣を退治した証拠が……」
と言うマナ。そしてこの場を収めたのはパルマローザだった。
「マイトさん。このゴキブリを倒した手腕は認めましょう。でもここのゴキブリはこれで終わりだと思いますか?」
「……もしかして、終わらないのか?」
「はい。多分、この中にはゴキブリがたくさんいます。こんな大きさのゴキブリで満足するなんてあなたらしくないと思いませんか?」
「あぁ。そうだな。良く考えればこれで終わるわけがないものな……」
「そうです。もっと大きなものをさがして最後にそれを持って帰りましょう」
「おぉ。いいこと言うじゃねぇか!! いくぞマナ……」
とパルマローザの誘導に従ってゴキブリの死骸を忘れて突っ込もうとするマイト。
そしてそれを止めたのはウィングだった。
「止まってください。まずは作戦会議です」
と。実はウィングはゴキブリの死体を一目見て、このゴキブリは強敵であることを悟ったのだった。
もしこのゴキブリが一気にたくさん現れた時には多分、自分たちは持たないだろう……と。
そして全員は改めてジャイアントエッジゴキブリの死体を見て相手の戦力を知った。
「うわー。気持ち悪っ……」
思わず鈴鳴桜は言った。確かに年頃の女の子なら当然の感想だろう。
「だなー。お前がいつもスリッパで踏みつぶす奴の拡大ば……、あべしっ」
その横で余計なことを言って叩かれるアルジャン。その様子を一目見て鳴海は言った。
「さてと、どうしましょうか?」
「そうだな……。みんなで行動して一階から虱潰しに探すというのはどうだ?学校なんだしそう迷うことはないだろう」
まず意見を述べたのはウィングだった。彼の意見は至極まともなものであった。
だがセレンはその意見に異を唱えた。
「……、それは反対だな。多分、この学校の構造はすごく複雑だ」
「どうしてそう言い切れるんだい?」
鳴海はセレンに聞き返す。するとセレンは言った。
「なぜかって?この校舎はイルミンスールの校舎に酷似しているからさ。多分、この校舎は迷宮校舎だろう」
彼がそう言ってみんなが周りを見渡すと辺りは複雑な迷宮になっていた。
「うわ~、すっごく授業とか受けづらそう……」
リアトリスが言うとルルが答えた。
「そんなことはありませんよ。教室移動の時なんか曲がり角を曲がったらすぐに目的地に着いたりします」
それを聞いて蒼空出身者は唖然とした。それは一見便利そうだが便利とはかけ離れてるものだからである。
「困ったね……、マッピングも難しそうだ」
と鳴海は言った。そしてマイトがその流れを断ち切った。
「おいっ、何かくるぜっ!!」
と。それはマイトの野生の勘のようなものであった。
だがその勘は外れてはいない。なんと話し合いをしているうちにみんなはゴキブリに囲まれてしまっていたのであった。
その数、およそ12匹。
「うわ~、覚悟はしてたけどやっぱり……」
「台所にでる女性の天敵そのもの……」
出現したゴキブリに嫌悪感を示す女の子と男の娘。
「なんだか眩暈がしてきたよ……」
「あぁ、俺もだ」
と冷やかな男性陣。
だがゴキブリは隙を与えてはくれない。皆は否応がなく各自、陣形を組んだ。
●戦闘開始
「うぉぉぉぉ、こいつはさっきよりも骨のある相手だぜぇぇぇぇぇぇ!!」
 まず戦陣を切ったのはマイトとマナだった。この二人は相手がゴキブリだろうと関係なしだ。
そして彼らには作戦と言うものや計画性と言うものもなかった。よく言えば単純である。
だからこそ二人はそれぞれランスと剣を持ってゴキブリを食い止めた。
猪突猛進な二人だがナイトとしての心意気は理解していたのだ。
そしてそれと反対方向に行ったのはルル、リアトリス、ウィングだった。
彼らが遅れたのは何も考えないマイトの行動をフォローしようという考えからだ。
最後に敵に立ち向かったのは桜だった。彼女のパートナーは男なのだが剣の花嫁である。
彼から光条兵器を取り出すのにタイムラグがあるのである。
「いくわよっ!!」
「おうよっ!!」
と、颯爽と光条兵器を抜き出す桜。花婿がの想いが乗ったこの剣の威力は並大抵の威力ではない。
そしてマイトとマナの方に加勢に行く。これでしばらくは後衛にゴキブリがくることはない。
「さぁ、私たちも負けてはいられませんよ」
パルマローザはそういいながらゴキブリ目掛けて弓に矢をつがえるように雷撃を放つ。
それは見事にゴキブリの足をもぎ取っていくが致命傷には至っていなかった。だが機動力を殺ぐにはこれで十分だ。
もう一方ではフラジールが無表情で雷撃を放っている。彼女に怯えや恐怖や嫌悪感はないのだろう。
「そうだな。でもな……、頑張れ、ルル!!」
とセレン。まだ火炎の魔法しか扱えない彼は自らの判断で魔法を使わないようにしていたのだ。
だがゴキブリもそんな簡単な相手ではない。刃物を持つ上に手足の量は人の3倍あるのである。
「うぉあっつ!!」
「きゃっ!!」
ゴキブリの手足を巧みに使った攻撃は確実に前衛を苦しめていた。
ジャイアントエッジゴキブリは1体1ならなんとかなるだろうが2体1だと正直、苦しい相手である。
それを前線が食い止められている理由は回復魔法であった。回復魔法が使えるファティもアルジャンは大忙しだ。
だが勝てない相手ではない。みんなそう思っていた。
そして一瞬の隙を見出したウィングが必殺技を放つ。
「神雷よ、我が剣に宿れ! 雷神滅鋼斬!! 」
大振りの一刀のもとに真っ二つになるゴキブリ。
後衛の援護のおかげもあって必殺技は避けられずにすんだ。
だが、その横を後ろに隠れていたもう一匹がすり抜けていってしまった。
「しまった!!」
と言うがもう手遅れである。前線はどこもかしこも手が空いてないのであった。
目標に向かって一直線のゴキブリ。どうやらゴキブリの目的はフラジールらしい。
「!?」
と驚くフラジール。いまさっきまでこのゴキブリに知性なんてものは見当たらなかった。
本来なら狙われているのは近くにいるウィングであろう。だがなぜかゴキブリはフラジールを狙ってきたのである。
雷撃にも怯まないゴキブリ。恐怖の概念のないフラジールもさすがに何かは感じたらしい。
後ずさるがもう間に合うはずもない。
「ちっ、させるかよっ!!」
もうだめだっ!!と思った瞬間にアルジャンが割って入った。だが前衛でも苦労するゴキブリを受け止めきれるわけはない。
軽くはじかれるアルジャン。そして刃がフラジールにつきつけられる。
「!!」
「フランジールっ!!」
と士は叫ぶがゴキブリの相手でそこからは動けない。
そして、もうダメだと思った瞬間。
そこになんと奇跡が起こった。なんとゴキブリが反対方向へ走っていたのだった。
横で冷や汗をかいたセレンが言った。
「ダメもとでやってみたがまさかこんな手段が通じるとはな……」
と。実はゴキブリの行き先はフランジールの持ってきたパンがあったのだ。
「見事な洞察力ですね」
パルマローザは詠唱の合間を縫って言った。
「いや、俺は何もできなかったからな。役に立ててよかった……」
とセレン。とりあえず危機は去ったようだった。
●戦いの決着
 みんなはさすがにあのこともあってか大技を使うのを控えちまちまと戦っている。
だが、あのことで気が引き締まったのかみんな隙がない。
そうして、ゴキブリの数は着実に減っていた。その数、残り1体。
最後に止めを刺したのはマイトの突撃だった。
「ちぇすとぉぉぉぉ!!」
疲れが出て無駄な力が取れたのかマイトの動きはとても綺麗だった。
床にはゴキブリの死体が12個転がっている。これはみんなが協力したからこそ出来たことであろう。
「これで終わりだね。それにしても辛い戦いだった。まさかこんな強いゴキブリがいたとは……」
と士は言った。
「そうだな……。」
セレンは言った。
「よっしゃぁぁぁぁ!! こいつの皮を持って帰るぜ!!」
マイトは踊りながら喜んでいた。しかし横でルルは怪訝そうな顔をしていた。
「……、あれを寮に持ち帰って欲しくないのですが」
当然の感想だろう。
「でもよぉ、証拠がないと誰も信じてくれないよ」
とマナが言う。そこでパルマローザが解決策を出した。
「……、確かに証拠は必要ですね。そうです。なら、魚拓ならぬ蟲拓をとってはいかがですか?」
「おぉ!! そりゃいいな!! 魚を取ったらその証拠に魚拓、モンスターを倒せばえーっと、モン拓?」
しなれないことに少し頭を捻らせるマイト。けれどもこれで寮にゴキブリが持ち込まれるのは回避された。
「……。で、このゴキブリ、まだたくさんいるみたいだけどどう退治するの?」
いいところで水を差したのはフランジールだった。
「うーん。確かにこれを相手にして連戦はかなり辛いね……」
と冷静な士。さっきだってかなり苦戦の末の勝利だ。
「そうだ!! 僕にいい思い付きがあるんだけど」
急に何かを思いついたリアトリス。何を思いついたのだろうか?
「何かゴキブリの弱点でもみつけたのか?」
「何々、教えて? リアトリスちゃん」
セレンと桜は聞いた。
「あのね……、ゴニョゴニョゴニョ」
リアトリスはみんなに名案を打ち明けた。この案を聞いたみんなはあっと驚いていたそうだった。
●戦士の凱旋
 夜も明けて、あらかた仕事を終えたみんなはとてもぐったりとしていた。
やはり夢の中とはいえ寝ないと疲労が溜まるのだろう。
そしてマイトとセレンは口々に言った。
「まさかあの校舎、あんな機能があったとはな……」
「俺も正直、意外だった……」
この二人が言うのは当然のことだった。
リアトリスの思いつきはイルミンスールの人では到底、思いつかない思い付きであったからだ。
そう。その思い付きとは、なんとゴキブリの卵を産む場所と思いながら角を曲がることだった。
もはや、ゴキブリの産卵場は施設と化していために目的地として認識されていたのだ!!
「それにしてもあれはさすがに気持ち悪かったわね……」
「へぇ、お前にも女らしいところがあったんだ……」
「えぇ……、もう殴る気力すら沸かないわ」
とショックを受けている桜。ゴキブリの卵をあれだけみたら気分も悪くなるだろう。
「バルサンの偉大さがよく分かったよ」
と言ったのは士だったが彼にいつもの余裕はなかった。
やはり気持ち悪いものは勇ましい戦士でも気持ち悪かったのである。
「うえー。もう黒豆が食べられない~」
「……、私まで巻き込むのはやめてください」
そう言って掛け合いをしているのはリアトリスだった。
どうやらみんな、ゴキブリ関連はうんざりといった様子である。
だが、みんな何かをやり遂げたという達成感は沸いているようだった。
 さて今回のゴキブリ騒動はうまい退治法を見つけることでなんとか幕を閉じた。
これでゴキブリの繁殖は劇的に減っていくだろう。
夢の世界の食料庫は彼らによって無事、守られたのであった!!



依頼達成!! 各自(MC、LC含む)ドリームコイン一枚ゲット!!

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最終更新:2009年09月09日 02:10