基礎からわかるキャラクター説明!



大宇宙 そら(実験体)


■性別:両性 ■所持武器:結晶生命体:クリスタルの内翼(氷の翼)
■攻撃力:15
■防御力:0
■体力:2
■精神力:0
■適合能力:13
(省略)
■キャラクター説明
skybuildingsの内部で暮らす少女.移植された結晶体により永久氷土の影響を受けない.
日本が所有していた唯一の結晶体適合者.彼女だけが唯一,同時に複数の結晶体を用いた移植実験が行われており,さらに,それに生きたまま成功している世界的に珍しい例となっている.この実験の成功により,気を大きくした軍は,さらに結晶体組織を移植しようと計画したが,非人道的かつ無意味として,外国から非難され,四体目と五体目を移植する実験は政府と話し合いの末,結果的に中止された.
そらは,三体の結晶体(幼生)組織を移植されたことで,通常とは異なり,結晶体(人体に移植された結晶体組織は,器官を形成する.このような状態になった結晶体を発光器官と呼ぶ)が活性化している時には,背中から6枚2対の翼が展開する.
欧米などの他の適合者は,国からある程度人格を尊重され,適合者本人の承諾がない限りは,普通1人の人間に対して2体以上の結晶体の移植実験は行われない.
実験体(外国では適合者と呼ばれる)は,分裂体とは違い,組織のみを用いるため,その精神は結晶体に侵されないとされている.
そらは,この実験により,意識不明にまで陥り,一時は生命維持装置などに繋がなければ,危険な状態(結晶体の各組織片が,それぞればらばらに自律神経や脳と融合し,体のリズムがめちゃくちゃに狂わされている状態)にまでなっていた,その後,結晶体組織がうまく体に適合できたため,意識を回復した.しかし,人格に問題が発生したとして,「矯正」された.そのことでも,外国から疑問の声があがっている.
そらは,自身――つまり「そら」の精神は――死んでしまっており,私はそらではないと感じている.
そらは,欧米の他の適合者とは違い(欧米などの他の適合者は,事情を説明して,自ら進んで実験に協力している),実験目的や,実験結果を知らされていないため,感覚的に結晶体や自身への影響についてを捉えている.
そのため,主観的に,父たちや,実験を施した人間たちを見ており,強い憎悪を抱いている.
三体も結晶体が埋め込まれたため,外見上は人間だが,結晶体とほとんど変わらない存在と化しており,彼らと意志疎通がある程度可能になっている(ただし,多くの結晶体は,「音声」で会話できるものもいるが,基本的に「音声」ではなく,「光」によって会話するため,元が人間であるそらには完全には,理解できず,ごく簡単な信号を読み取ることしかできないが).ゆえに,skybuildingsと,融合している結晶体に働きかけ,それを操作することができる.(そのときに,分裂体の位置を座標として示す)


巣籠 弥(すごもり-わたる)

  • 性別:男性
  • 所持武器:コルトパイソン
  • 攻撃力:11
  • 防御力:8
  • 体力:10
  • 精神力:1
  • キャラクター説明
そらのパパ.
大学で天文学の研究をしていたが,後に軍に入隊.結婚後,大学に戻る.
妻をある事件で亡くし,真相を独自に究明していたが,機関にばれて,拘束される.
その際,娘を軍の研究に提供するよう求められ,初めは拒否するが,その最中に娘が通学途中に倒れたことを知らされ,さらに,彼女が成人する前に亡くなる可能性が高いことを知らされる.
軍の研究内容を知らされる.軍のその研究に娘を差し出せば,それは結果として娘を助けることになると,突きつけられる.彼は妻の墓の前で苦悩した末,自分もその研究に参加することを条件に,娘を差し出した.



斎藤 栄志(さいとう-えいし)

  • 性別:男性
  • 所持武器:真っ赤なスポーツカー
  • 攻撃力:10
  • 防御力:7
  • 体力:10
  • 精神力:3
  • キャラクター説明
そらのパパの部下.
実験体の回収を命じられる.好きな食べ物はカツカレー(「勝」という言葉が好きだから).生真面目な性格で,良くも悪くも厳格な軍人.
29歳独身,なんだかんだで面倒見がよく苦労人.
二枚目だが,女性の気持ちが分からない典型的な古風な気質.
ちなみにロリコンではない.


高橋 伸太郎(たかはし-しんたろう)

  • 性別:男性
  • 所持武器:スケジュール帳
  • 攻撃力:8
  • 防御力:7
  • 体力:10
  • 精神力:5
  • キャラクター説明
そらのパパの部下.
実験体の回収を命じられる.
好きな女性のタイプは,浮気しても,ふくれっ面で「許さないもん」と言いながら,いつも許してくれるような女性.
斎藤とは正反対な性格で,仕事とプライベートは割り切る.その面ではある意味,斎藤よりも非情に徹する.
よく頬に紅葉をつけてくることから,みんなからは「紅葉(野郎/の人)」の愛称で親しまれている.
元は技術系.
割と腹黒い.


品川 稜(しなかわ-りょう)

  • 性別:女性
  • 所持武器:モデルガン
  • 攻撃力:7
  • 防御力:6
  • 体力:7
  • 精神力:5
  • FS:5
  • キャラクター説明
そらの親友.
父はそらのパパの同期(現,上官)であり,家族ぐるみの付き合いをしている.
恋多き女の子だが,恋愛に関しては非常に奥手なため,実ることはない.また,テレビのメロドラマに涙し,特に失恋ものでは「もう二度と恋なんかしない」と感情移入して誓うが,次の日には苦悩する.
悪い虫がつくことを心配した父が訓練(?)し,緊張したり,感極まると男性の顔面に拳を叩き込む癖がつけられた.
父の影響からか,夢は空軍パイロット.そのためかどうだか,父の訓練以前に幼い頃からずっと武芸に日々勤しんでいる.あまりに強く,ある程度の正義感も備わっているので男子からは「ヤワラ(「ちゃん」をつけない)」と呼ばれている.
本人は柔道はたしなむ程度(と言っても段はとれるレベルだが)なので,それを言われると怒る.


山中 鏡子(やまなか-きょうこ)

  • 性別:女性
  • 所持武器:おしゃれ眼鏡
  • 攻撃力:3
  • 防御力:3
  • 体力:4
  • 精神力:2
  • FS:眼鏡力:18
  • 特殊能力名:天文対話
[発動率88% 成功率100%]
効果:シークレット解除:30
範囲:隣接4マス前方1人:*2.5
時間:一瞬:*1
制約:なし:10
調整:シークレット:-10
  • キャラクター説明
そらのもう一人の親友.
一見,大人しそうな,割とごくふつうな女の子.しかし,それは世を忍ぶ仮の姿(本人談).見た目に反して,運動神経は良い.また,占いも得意らしい.眼鏡パワーという謎(?)の力を眼鏡に宿していると噂されている.その眼鏡力は,国家機密すら容易に暴くと言われ,計り知れないほどのメガネキャラ補正を秘めている.
彼女のメガネが光るとき,周囲のものは戦慄せずにはいられない.
また肝心な出来事の際には,いつもいない.
同姓同名の姉である鏡子は希望崎学園という,私立の学校に通っている.両親ともに『鏡子先生』には大変お世話になり,尊敬しているらしく,改名し両親ともども「鏡子」を名乗っている.
「鏡産主義」を掲げて,鏡子という名前を地域から世界全体へ広げようと画策し,手始めに 近隣住民から改名させ,自らの名字も「鏡子」にしようとしたが,「死ね」という投書とダイナマイトが送りつけられ,両親はその爆発に巻き込まれ(そのこと自体には何の意味もなかった),全壊した家を捨てて寄付として強引に取り立てた金で,豪邸へ引っ越す途中に,近隣住民から襲われ,手加減なしで本気で撃退してしまった結果,住民に死傷者を出し,彼らの看病のために彼女の両親らはお互いでお互いの足を叩き折り,共に生存者と入院している.足は完全に折れているが,彼らは普通に歩いている.彼らはその理由を,「あなたへの愛ゆえに」としている.また,自らが殺したものたちについても「降り注がれた愛によって,彼の御霊は(地上という)牢獄から解き放たれたのでしょう」と語っている.
しかし,彼女の両親たちは心の底からの善意で動いており,鏡子という名前に改名させることは愛に溢れた行為であると,常人には理解できない実感をもって,その考えを信仰している.

カジマジ

  • 性別:両性
  • 所持武器:シグナル・シナプス
  • 攻撃力:0
  • 防御力:20
  • 体力:10
  • 精神力:0
  • 特殊能力名:ニューロ・コイタル
[発動率80% 成功率100%]
効果:発動率40%アップ:1.5*40
範囲:同マス1人:*1
時間:1ターン:*1
制約:自分死亡:50
調整:術者死亡時非解除:-10
  • キャラクター説明
修学旅行で京都の寺に行った際,そら(分裂体)と友人たちの前に現れた,正体不明の結晶体.
音声により会話できるが,口が悪い上に,必ず言葉尻に暴言をつけ,さらには,文句を言うときには,ぺらぺらぺらぺら理屈を述べる.
自称は「カジマジ」.
この星の観測者から分かれた一部分だとか,初めはよく分からないことを言っていた.しかし,品がないので,そらをはじめ誰も信じていない(観測者側から,プロテクトされているために,重要なことは何もアウトプットできないとカジマジ自身は述べている).
本人(?)曰わく「品がないのは,おまえらに合わせてるだけだトンマ」.
とりあえず,文化祭の演劇で,イルミネーションとして大活躍した.
なんだかんだ文句を言いながら,一度引き受けると,最後まで真面目にしてしまう.本人は,それを「修正すべき欠陥」と言うが,そらたちは,そのままでいいと思っている.愛称はカージー.

たまに,謎の少女と交信していることがある.


斎藤 夏希(さいとう-なつき)

  • 性別:女性
  • 所持武器:医療器具
  • 攻撃力:8
  • 防御力:5
  • 体力:7
  • 精神力:5
  • FS:5
  • キャラクター説明
斎藤栄志の姉.
そらの通う学校の学校医兼カウンセラー.
暇なのか,毎日学校に現れており,校長室にもよく訪れる.生徒たちにも人気で,よく知られている.漫画的な,綺麗な女医さん.保健室の芭戸先生と対立している.なぜか女子生徒からの人気の方が強い.好きな食べ物はカツどん.兄とは違い,物事に対しては柔軟で,融通が効く方だが,整理整頓ができないなど,生活はだらしない.本人は父に似たと言っている.
ちなみに男っ気は薄く,三十の大台が見えてきたため,そのことに関して,ピリピリしている.

斎藤 華(さいとう-はな)

  • 性別:女性
  • 所持武器:サバイバルナイフ
  • 攻撃力:10
  • 防御力:7
  • 体力:10
  • 精神力:3
  • キャラクター説明
そら(分裂体)のクラスに入ってきた転入生.
逃亡した実験体がそら(分裂体)に対して接触を試みようとするのを牽制するために,軍の要請により岩戸機関(日本政府直轄の諜報機関)から,送り込まれた少女.
戸籍上は斎藤家の末妹と言うことになっているが,血は繋がっていない.
幼い頃から諜報員としての訓練を積み,また軍人としての訓練も受けているため,何事もそつなくこなせる.そらに誘われて,「009(高速移動能力を持った中国の秘密諜報員が,世界各国の犯罪を未然に阻止する,超ハイスペクタクルSFアクションハードボイルド映画の世界的ヒット作.華たちが見に言ったのは,第十作目,『009~ダイヤモンドアイ~(009が,高速移動能力を駆使して秘密結社による,人類セーラー服化計画の要となる,マリアの真珠と呼ばれる"何か"を,その秘密結社よりも早く奪取するという話.前半の30分が,009と,敵の秘密結社の女幹部,テキーラ(Mr.ゼロの元彼女,ゼロが結社の真の思惑を知り,結社が彼女を利用しようと(テキーラこそが,マリアの涙)していることに気づいて,彼女を守るために,ゼロは結社を抜けた.しかし,結社を抜けた理由を,彼女にゼロは知らせなかったため,別れることになった.話があるといって,ゼロを装うことで,009は彼女と会うことができた.)との濡れ場(回想."マリアの涙"とはどれほどのものかを探るため,0
09と女幹部との巧みなやりとりが展開されている.物語のラストシーンでは,その女幹部と009との熱いキスで幕が閉じられる)であったことが問題視された,結局,年齢制限は設けられなかったが,前半30分はカットされ,日本の人気俳優,滝弘(この映画にも出演しており,彼が演じるMr.0が結社を抜けて,彼らの恐るべき計画をリークするところから,中盤以降の話が始まる.ラスト,009をかばって死ぬ.実は生きていたという設定で,再登場することがお馴染みになっている.再登場するときのお馴染みのセリフは,「ゼロ! (まだ)生きていたのか!」「心の傷が癒えるまで身を隠していたのさ!(仏道修行に励んでいたのさ!)」.三作目と四作目,七,八と,続けて登場しており,ファンの間では,十一作目にも登場するのではないかと,期待されている)が,代わりに前半30分のあらすじを語っている.しかし,配給会社の努力も空しく日本では成績はふるわなかった)』.)」という映画を見に行ったとき,荒唐無稽であると感じているが,そう荒唐無稽でもない.
プロ意識が非常に高く,いついかなる時も,本当の感情を表に見せることはなく,冷静沈着.
同居している斎藤栄志に対しては,彼が成り上がりの軍人であること,また,自身が特殊な訓練を受けてきたことから,格は自分の方が上だと認識している.そのため,当然のように彼を下に見た言葉遣いをするが,栄志曰わく「ガキは大人を敬え」と一蹴されている.そのことを,腹正しく思いながらも,(大人と子どもの体格さや,)一応は仕事なので社交の意味で屈託なく微笑んでみせ,素直に従うように見せかける.
ただし,プロの駒としてや前線での作戦立案能力などに関しては,栄志に対して一定の評価を下してはいる.
それでもやはり気に入らないのか,洗濯当番のときは,彼の下着は自分のと一緒に洗わなかったり,食事当番のときには,彼の分にはわざと賞味期限がとっくに過ぎた材料を使っている.
本人曰わく,本当なら下剤の一つも仕込みたいが,いざという時,支障を来すとダメなので,嫌がらせにしても,あまりムチャはできないらしい.
異性への興味が非常に薄く,また,密かにそら(分裂体)に惹かれていっており,自身の感情を否定しながらも,苦悩している.(そら以外への同性はもちろん異性に対しても同様に興味は示していない)
学校ではそら以外の人間とは交友関係が薄い.


巣籠そら(分裂体)

  • 性別:無性
  • 攻撃力:3
  • 防御力:3
  • 体力:4
  • 精神力:3
  • FS:シンパシー:17
  • キャラクター説明

極普通の女の子.
生活に支障はない程度だが,幼い頃の記憶,特に取り留めもないような記憶の一部分が,ところどころ抜けている.
山中鏡子の占いによると秩序/宇宙/コスモ(-[すごもり])を司るとか,司らないとか.
修学旅行の際に,友人らと「カジマジ」と名乗る結晶生物と出会ったことを契機に,おかしな出来事に巻き込まれていく.

関係組織


【百色会(はくしかい)】

希望崎学園の生徒を中心に組織された過激派の学生運動グループ.
構成員は希望崎学園のみならず幅広く,そらの学校にも隠れシンパがいる.
彼らの主張はもっぱら正当性を持ち合わせている上,基本的に言論が過激なのであって実力でものをいわせることはない.しかし,彼ら(魔人)への深い偏見によって,自警団などの市民団体は彼らやその関係者に対して過激な行動にでており,政府も彼らへの弾圧を強めているため,百色会の中には実力行使(テロ活動)を行うものも現れてきており,自体を一層悪くしている.
百色会の左派グループは全国のテロリストと屈託し,そらたちの学校など全国の公立学校をいっせいに占拠し,政府に不当な弾圧をやめ,自分らの要求を受け入れるように求めるが,戒厳令が出され,魔人部隊までもが動員されたことにより,わずか半日で制圧される(後に右派の幹部数名が逮捕されるが,釈放――市民団体により関係者ともども粛正される――百色会の中の左派の勢いがさらに高まる),それが結果的に市民団体の結束までも促し,全国規模の魔人狩ブームに発展した.


【市民の市民による市民のための力】


魔人排斥運動を行う自警団の一つ.「私たち『市民に』ご協力を」,と言いように都合よく略す.
あまりに過激な取締りのため,彼らの中から逮捕者もでている.
元々は,それほど過激な集団ではなかったが,組織内の穏健派を追放してきた結果,今の形になった.
実はそのバックには巨大な魔人組織の影があるが,感情に狂った彼らにはもうなにも見えない.市民の安全を謳いながら,市民を脅かし,彼らによって魔人ではないにも関わらず,非協力的であることを理由に,魔人であるとされて,処刑されたものも出ている.


【さくらの団】


二十から三十代の若者を中心とした,地域活性化を目的としたボランティア団体.
町内のビンゴゲームを企画したり,有名なアーティストを呼ぶなど,地域を盛り上げていた.
特に,町内の商店街の人たちと協力して催したさくらの祭は,予想を超えて大賑わいし,第2回も企画されていた.
さくらの祭で,特に賑わったのは,マジックショーで,魔人たちを招いて「マジック」と称して「一発芸」をステージの上をしてもらうのが大変好評だった.


そら(分裂体)SS1「パパ」


近頃,おかしな夢を見る.ちょっとずつ夢は変わっていっているけど,おんなじ夢.
東町の体育館への道に聳える鉄塔のてっぺんに,わたしは立っていて,そこから寂しげな目で町を見下ろしている.




朝起きたときには,もうパパは仕事に行ってしまう.私が学校へ行く支度をする頃,ちょうどお手伝いの神永さんが,ゴミ出しから帰ってくる.
「おはようございます」
神永さんは,私の朝食をテーブルに並べていた.
「おはよう」
神永さんはそう挨拶を返しながら,私にメモを渡した.
「お父さんからだよ」
「もう,いいって言ったのに」
私はメモに目を通さないで,制服のポケットにそれを突っ込んだ.
「愛されてるってことじゃないか」
「うん……けど,ちょっと大げさかな」
神永さんは私の気も知らないで,微笑んでいた.


「もういいです」
家の前に止まっている車に近寄り,そこから顔を出している運転手にそう告げ,歩き出す.
「おい,待ちなって」
運転手の斉藤さんは,慌てて車からおりて,追いかけ,私の肩をつかむ.
「君の父親に昨日はきつく言われたんだよ,頼むから」
「……斉藤さん,それ私服ですよね.私が言うのも何ですが,こんなアルバイトみたいな仕事じゃなくて,もっとちゃんとした仕事を探した方がいいと思います.私はもう大丈夫ですから,学校に行くのに,そんな車で送ってもらう必要はないんです」
「…………ま,まあまあ.世の中こう物騒だろ.一昨日も事件があったって言うしな」
……私は周りをキョロキョロ見渡した.
斉藤さんもつられてキョロキョロ見る.
犬を連れて散歩をしているおばさんが,訝しげに斉藤さんを見ていた.
「もう,行きますね」
私はそう告げ,斉藤さんに背を向けた.
そのとき,後方から斉藤さんとは違う声がした.
「ついでだから,一緒に行かない?」
私と同じ制服だったけど,見たことのない女の子だった.
「ま,まるはちなな……! おまえもう学校に行ったんじゃ」
斉藤さんは狼狽しながら,その少女を見た.
「頼りないからきてみたの.予定とは違うけど,修正範囲内」 
二人は訳の分からない会話をしていた.
「あの,何の話ですか?」
「昨日のゲームの話よ.」 女の子が言った.
「私たち兄妹だから一緒に住んでいるの」
「斉藤さん,妹さんもいたんですか?」
「あ,ああ」
斉藤さんは苦々しく頷く.
「私,はなって言うの.今日から私もあなたと同じ学校へ行くのだけど,この町にはまだきて間もないから,良かったら案内してくれる?」
「そうなんだ,私でよかったらいいよ」
「ありがとう」
斉藤さんは,はなちゃんの後頭部をじっと睨んだ.
視線を感じたのか,はなちゃんは斉藤さんの方を向いた.
斉藤さんはぞっとしたように青ざめ,「エリザベート」と絶叫した.そして,自分の真っ赤なスポーツカーに駆け寄ると,ゴム手袋をはめ,その周りを調べ始めた.
斉藤さんに注がれる周囲の視線.
「行こう」
はなちゃんはそう言ってわたしの手を引いた.
振り返ると,知らないおばさんが不安げな面もちで誰かに電話していた.


【夕方】


「ただいまー」
家に帰るとパパがもう帰ってきていた.
居間のテレビでは,二人組の男が,何事か絶叫している.
「おっ,また,出てるのか」
テレビを覗き込み,パパは言った.
「何が?」
カバンをソファーに置き言う.
「ほら,四年前ママの墓参りで,帰りに二人で見に行っただろ?」
「そんなことあったけ」
「上野のテーマパークで見たろ?」
首を傾げる.パパは悲痛な面もちで私を見る.なんだか気味が悪かった.
「ゆっくり,ゆっくりと思い出せばいい……ゆっくりでいいんだ……」
パパはぶつぶつと呟きながら,両手に顔をうずめていた.
仕事が大変でストレスが溜まっているのか,近頃なんだかパパは怖い.
「私,ごはん作るね」
そう告げて,私はキッチンを向いた.
パパはぼそりと何かを言った.


そら(実験体)SS2「お父さん」



私を見る父の表情は辛そうだった.
父はぎゅっと拳を握りしめ,私に謝罪を述べた.
その言葉の真意も知らないそのころの私は,甲斐甲斐しく,首を振って父の手を包んだのだ.
「私は大丈夫だよ」
父はうつむき,嗚咽をこらえていた.
看護士さんとお医者さんが入ってきて,私の診察をする.
父はぽろぽろと涙をこぼし,私はなんとなく,自分の様態があまりよくないことを悟った.
母がいなくなった後,父は弱くなった.おじさん(父の同僚立った人で,そらの仲良しである友だちの父親)がよく仕事を紹介しに来てくれていたけども,父はいつもふさぎ込み,ほとんど上の空だった.そして,たまにふらっと家を出ると,一週間も帰らないことがざらにあった.
診察が終わった後も,父は泣いていた.
怖くないと言えば嘘になるけど,私は父のことが何より心配だった.母の命日では,父は食事も取らずに,ずっと自分を責め立てるようになっていた.だから,そんな父を私が無理に連れ出し,テーマパークや観光地に連れ出し,父を慰めていた.父は「合わせる顔がない」といって,いつもお墓の前に立とうとはしなかったけれど,それでも,その日,ほんの少し笑顔がかいま見れるようになれたことは,私にとって救いだった.
なのに,私までいなくなったら,父はどうなるのだろう.思いあまったりはしないだろうか,ちゃんとやっていけるのだろうか,そんなことがよぎる.
「お父さん,私がいなくても,ちゃんとごはん食べなきゃダメだよ? 武田先生(医者)も,安静にしてればすぐに退院できるっておっしゃってたでしょう?」
「そら……怖く,怖くないか? おまえのためなら,パパ何でもする.ママのようにはしない.約束するから」 
「お父さん,私は大丈夫だから.お父さんもあんまり思いつめちゃだめだよ」
「そら……」
父は鼻をすすり,
「ああ,約束する……! 絶対!」
私は父のその言葉に少しだけ勇気づけられた.たとえ,病気が悪くても,頑張れそうなそんな風に思えたんだ.



その晩だった.
怖かった.暗闇と化した部屋の中,ナースコールを手探りでつかみ,それを押し続けた.
けど,誰も助けに来てはくれなかった.
大きな手が私の腕をつかみ,また,私の口を覆った.首筋に痛みが走り,闇の中,金属の光沢のようなものを感じた.
薄れていく意識の中で,私はただ信じてナースコールを押し続けた.



【Й】



目を閉じればありありとあの時の恐怖が蘇る.
そして,腹の底から沸き上がるような憎しみも.
弥はもう父なんかじゃなかった.あれは私にとって,復讐の対象でしかない.
そして,私の形をしたあの人形も,ただただ吐き気を催すだけ.
あれはよくあの人形を見ている.私の居場所を奪った父親の玩具――私の友達なのに,私の学校なのに,みんなとの修学旅行も私が行くはずだった場所に,あの出来損なった人形は,当たり前のように居て,無邪気に私を演じている.
赦せない.赦したくない.あれが悪くないのは分かってる.分かってるんだ.だけど,だけど.
もしかしたら,私は――……本当の「そら」は……――死んでしまったのかもしれない.
きっと「そら」なら,あの人形も,「あの男(※父親のこと)」も,みんな赦していたかもしれない.
こんなに人を憎むことなんか,なかったかもしれない.
人を殺した.
きっと「そら」でだったら,たとえ事故であっても,苦しんだかもしれない.だけど,違う.私は気持ちが楽になったから.その瞬間,頭の中にあった霧がすっと晴れるように,すべて納得がいった.
ああ,こうなることを望んでいたんだな,と私のうちの声が呟いた.
何がきっかけだったかは覚えていない.気がつけば,私の周りには人間の死骸がかっこ悪く転がっていた.殺したという事実だけが目下にあり,血の生臭さが辺りに充満していた.頭はやけに冴えており,身体はやけに上気していた.
まるで,脳がふたつに分かれたみたいに,この身に走る動揺とは別個に,思考は整然と言葉を行き交わした.私は,そのときには,すでに生まれていたのかもしれない.

あれから,また連絡が来た.あれは人の世が楽しいらしい.あれはおしゃべりだ.やかましい.一方,私の中にいるこいつは,何もものをいわない.そのことは,いっそう自身への疑念を強めた.

私はもう人間じゃあないのかもしれない.
今日も私は「私から出でる私」を処理した.
奇妙な感覚だった.自分の姿をしたものを,原型も止めないように抹殺しなければならないというのは.
けど,やっぱり,私の姿ゆえにこいつらは憎いんだ.
私とともに施設から脱したあいつらが,私のもとから消えたのも,私に殺されると感づいてしまったからかもしれない.
殺す理由はあっても生かす理由はない.私は二人もいらないし,あれは私の持ち物だ.生き物でもない.

世界はぐるぐると回っている.

解釈Ⅴ「宇宙篇」



次元の「狭間」に蠢き,時を食らう存在.次元と次元の隙間に巣くい,彼らは死んだ空間を食らいながら,世界の外側から世界を犯していく.空間を食らう癌.患った外郭宇宙(宇宙のの一番外側(正確には違う)に存在する,連続した亜空間のように空間が歪曲し,メビウスの輪のように,その結びを持たない)を食い破りながら,内部に自己を増殖させる.彼らは宇宙から出でながら,宇宙すら飲み込んで,宇宙を孕み,また生み出す.
その世界の知性体を取り込みながら,ミクロコスモスはマクロコスモスを飲み込んでいく.
彼らは生命体でありながら限りなく卑小な宇宙となり,母なる宇宙は,より小さな生命によって解体され,その細胞へと収まる.
彼らの核は宇宙でありながら生命体の設計図を成し,彼らの存在は宇宙としての存在でありながら,彼らのその細胞は生物の体をなす.コスモスは,それを包むより大きなコスモスの中で複製され,膨れ上がり,小さなコスモスの花びらを腐り落としては,新たなコスモスの中へと生まれ落ちる.
彼らの本性は無限でありながら,彼らの意志は無く.彼らはその中に宇宙を持ちながら,その中に住む宇宙の総和が,彼らのあらゆる行動原理と化す.ニューロンとしての宇宙が,宇宙を満たす欲望が,彼らを突き動かし,内部宇宙の絶対者は,彼らに自己拡散を求める.



この宇宙の外部に存在する外郭宇宙.卵の殻のように宇宙と宇宙を仕切り,世界をその内に宿す.
宇宙の根元であり,新たな宇宙を生み出す種.
アルケミスト(錬金術師たち)は,この未知の可能性に対する知的好奇心に酔っていた.
アルケミストが拾った卵(らん)は,宇宙でありながら,一個の生命であった.どこから流れてきたのかは,およそ分からない.途方もない時間をかけて,その卵は第4次元のこの世界へとたどり着いた.その卵は宇宙が自ら切り離した悪性の腫瘍だった.
アルケミストは非常に子どもらしい楽観により,その卵を肯定的に捉えた.
自らの好奇心と名誉を満たす興味深い研究対象だった.
世界の内側で生じた小さな亀裂に,アルケミストは無関心だった.はじめはそれはごく小さなものだった.この時点でこのことの重大性に気づくことはできた,多くの世界のアルケミスト――探求者は,異変が及ぼす結果を敏感に感じ取り,この卵を手放してきた. しかし,彼らは諦めきれなかった.故に,アルケミストは可能性を,可能性として放置し,目をつぶった.卵という見かけにより,それは無害であると,彼ら無意識に可能性に蓋をした.
世界の内側に生じた異変に対して,卵は静かだった.彼らに気づかれないよう,少しずつ,少しずつ,卵は口を開け,宇宙そのものを覆い尽くそうとしていた,
内部に生じた小さな,しかし無数の亀裂は,やがて一つにつながり,卵を包む外郭宇宙は崩壊した.
卵と呼んでいたものは,根元であり,中心だった.卵を核に,宇宙は再構成され,卵は身を置いていた宇宙そのものを養分とし,そこに住む生命を消化し,自らのうちに宿す新たな宇宙の胎動に歓喜した.
卵から出でた生命――彼らは,そこに住む知性体を滅ぼし,その次元を食らいつくす.
第4次元において,唯一生き残った魔人の祖の一人(人祖)は,この第三次元に逃げ延び,ここの人類と交わることで,この世界に魔人の種を広げていく源流の一つとなった.
しかし,第4次元と第3次元を繋ぐポータル(スカイビルディングス)は残った.「人祖」は,自らの肉体とともに,ポータルごと入り口を封じ込め,第4次元との繋がりを絶ちきろうとした.
しかし,永いときをかけ,彼らから出でた細胞の一つ――メフィストフェレスは永久氷土の中心にたどり着き,そこで自らの能力が消えないように仮死状態で眠りについていた人祖を食らい,メフィストフェレスの一部はその能力に対して適用した.
しかし,それでもポータルを通り,第三次元を侵食するメフィストフェレスは,この世界の人類に対して,適性を持っていないため,人にばれぬよう,人を食らい,適性を得ようとしている.
また,メフィストフェレスはスカイビルディングスと同化し,そこに根付き,巣くいながら,人類を俯瞰している.メフィストフェレスの中には,人類の歴史に興味を持っている,(その残虐さを「読み物」として).メフィストフェレスは,人間に対して適性を持つ(普遍的ものではなく,一部のDNA型のものだけ)と,その人と契約を結び(契約を結びそうな人間に対してのみ,まともな精神の相手に対しては事後契約),(寄生=食事かつ生殖活動である彼らにしてみれば)共生,つまり,片利共生だが,相手が何らかの利を望めば共利共生する.
次元虫が発する何らかの神経伝達物質は,人の精神を歪ませる.その一方で機知に富み,狡猾になる傾向もある.
メフィストフェレスは空間をエネルギーとして食らうが,生殖のためにそれとは別にDNAを必要とする.そのため,生命体,特に知性体を好んで食らい,DNAを摂取し,またそのDNA情報を記憶し,その情報の一部を元に適性を持った次世代を生み出して,適応する.
メフィストフェレスは,本来は卵――その根元たる自己を防衛するために,卵のクローンとして生み出され,分化し,存在する.
しかし,知性体を食らうことで,一部のメフィストフェレスは意志を持ち,自由に行動を可能にしている.
(干渉にも,2タイプがあり,国に直接介入するタイプと,民間人に接触するタイプとがある.また,民間人と接触して体を得て,その後国に介入するケースもある)
メフィストフェレスに取り付かれた人間は,メフィストフェレスを介してエネルギーを供給され,また,メフィストフェレスは空間に対して,重力の影響を無効化する.





最終更新:2011年07月13日 21:53