必須元素
必須多量元素 Essential macronutrients
C,H,O,N,P,S,K,Ca,Mg
必須微量元素 Essential micronutrients
Fe,Mn,Zn,Cu,B,Mo,Cl,Ni
各必須元素の概要と欠乏症状
炭素
概要
欠乏症状
窒素
概要
欠乏症状
リン
概要
欠乏症状
カリウム
概要
欠乏症状
カルシウム
概要
欠乏症状
マグネシウム
概要
- クロロフィルの構成分
- Mg2+イオンとしての働き
- 代謝産物の中和
- 酵素(ex.Rubisco)の活性化剤
- リボゾームの構造維持
- フィチン酸に必要
- Mg-Caには拮抗作用があり,どちらかが多いと少ない方は吸収されなくなる.
欠乏症状
- タンパク質合成阻害
- 葉脈間クロロシス
イオウ
概要
- 含硫アミノ酸に必要
- タンパク質のS含量は0.5~1.6%
- N/S比が16程度で健全
- Sが不足するとタンパク合成が滞るのでNO3-が溜まる
- ビタミンと補酵素に必要
- チアミン
- ビオチン
- リポ酸
- CoA
- グルタチオン
- 酵素反応に関与
- 酵素と気質を結びつける
- S-S結合により立体構造を維持する
- 植物キレーター(Phytochelatin)に必要
- グルタチオン:[glu-sys]2~11-glyという構造で,sysのSH基で重金属をキレートして無害化する.
- 香味成分に必要
- アリルスルファイド
- ビニルスルファイド
- アリシエン
- 食用阻止物,もしくはSの貯蔵物質であると考えられている.
欠乏症状
- クロロシス
- N欠乏に酷似する(ただ,Sの方が転流が遅いため,全体的に症状が出やすい.)
鉄
概要
pHが高かったり,重金属(Cd,Mn,Zn,Cu...etc)による抑制があると吸収が悪くなる.植物は鉄キレート物質(ムギネ酸etc)を放出して鉄を吸収しやすくすることがある.
- いくつかの酸化還元反応で電子供与体として働くフェレドキシン(水溶性鉄タンパク=酵素)に必要.以下の様な反応に関与.
- 光合成作用
- NO3還元
- SO4還元
- N2還元
- superoxide disnutase(SOD?)に含まれる
- クロロフィルの前駆物質合成に関与
- 鉄ポルフィリン(hame)タンパクに含まれる
- ex)catalase
欠乏症状
- クロロシス:転流が遅いため上部の葉から発生し,色もかなり黄色になる.
マンガン
概要
- 酵素の活性化
- 一部例外もあるが,イオン半径の近いMgイオンに代替作用がある.
- 光合成システムⅡでの水分解酵素を活性化
- SOD?(MnSOD)
欠乏症状
- 葉脈間クロロシス
- 酸性土壌である日本ではむしろ過剰に陥りやすい.Mn過剰となると葉のふちにMnがたまる.
銅
概要
- 各種の銅酵素に必要
- superoxide dismutase(CuZnSOD?)
- cytochrome oxidase
- ascorbic acid oxidase(Cuの栄養診断に用いられる)
- リグニン化・開花に関与
- Cu欠乏→phenol oxidase活性低下→phenolからligninが合成されにくくなる→phenol化合物蓄積・lignin含量低下→開花率低下
欠乏症状
- 不稔
- こより状に先端が曲がる
亜鉛
概要
- carbonic anhydraseに必要
- alcohol dehydrogenaseに必要
- CuZnSOD?に必要
- IAAの合成に関与
- RNAの合成に関与
欠乏症状
- 節間生長が減少しロゼット状の生育を示す.
- 白芽症
- トラ葉
モリブデン
概要
- 亜硝酸還元酵素に必要.
- 窒素固定微生物のニトロゲナーゼに必要.
欠乏症状
- 一般的な葉脈間クロロシス及び古い葉の枯死
- カリフラワー,ブロッコリーなどのアブラナ科植物では葉がねじれた鞭状となるwhiptailと呼ばれる症状が出ることがある.
塩素
概要
- pHの調整
- photosystemIIにおける酸素の発生.
- 葉,および根における細胞分裂に必要とも(Harling et al. 1997)
欠乏症状
葉の先端がしおれ,続いて葉のクロロシスと壊死が見られる.ブロンズ化と言われる葉がブロンズ様の色になる症状が見られることもある.根の先端が短く,太くなる場合もある.
ただ,塩素は地球上どこにでも十分すぎる量が存在しており,人為的に塩素を取り除いた環境を作り出さない限り塩素欠乏は発生しない.それどころかほとんどの植物は必要量を遙かに上回る量の塩素を吸収しているのが普通である.
ただ,塩素は地球上どこにでも十分すぎる量が存在しており,人為的に塩素を取り除いた環境を作り出さない限り塩素欠乏は発生しない.それどころかほとんどの植物は必要量を遙かに上回る量の塩素を吸収しているのが普通である.
ホウ素
概要
- 細胞分裂と伸長
ホウ素はペクチンを構成する多糖の一つであるラムノガラクツロナンIIにおいてジエステル結合により架橋を形成する.ペクチンは細胞壁の網状構造を保つ働きをしている.
- 糖の転流
- 核酸の合成
- 植物ホルモン代謝
欠乏症状
細胞壁の構造が保てなくなるため,新たな細胞が作れずに生長点部位が破壊され壊死に至る.症状の現れ方は植物種により多様である.ex)大根の芯腐れ,セロリの茎割れ
ニッケル
概要
- 尿素をアンモニアに分解する反応を触媒する酵素であるurease(ウレアーゼ)に含まれる.
- N代謝に関連しているカモ?
- 窒素固定細菌においてはデヒドロゲナーゼの成分.
欠乏症状
尿素が葉に沈積し,結果として葉の先端が壊死する.ただ,植物のニッケル要求量は植物の乾物重に対して0.1ppm程度と極めて少ないので,土壌で生育している植物がニッケル欠乏に陥ると言うことはまずあり得ない.