500  朧月 ◆CMupROGETU [sage] 06/08/28(月) 10:19:55 ID:???
朧月の場合② 僥倖

幸運は、重なってやって来るものだ。
ずしりと重いマッピングシステムを手に、朧月はそう実感した。
胸のもきゅーマークこそ情けないが、Tシャツが緑色であることは草木の茂る森林地帯に措いて功を奏していた。
周囲の藪に溶け込むように、低い体勢でゆっくりとマッピングシステムの指し示す場所へと向かっていた。
影瑠の──いや、影瑠自作と思われるマッピングシステムの言う「ジョーカー」まであと数メートルという所まで迫った時、
手元の機械からベルの音が鳴り響いた。
「!?」
朧月は咄嗟に腹這いになり、周囲を伺った。マッピングシステムを確認するが、近くに赤い点……「プレイヤー」は確認されなかった。
口に入った土を唾といっしょに吐き捨てながら、ゆっくりと中腰になり、腹や足に付いた枯葉や泥を払いのけた。
「ったく、いきなり何だよ! 誰もいなかったから良かったものを……って、あれ?」
マッピングシステムの画面から、緑の点がひとつ消えている。
それは朧月が目指している点ではなく、最初に見送った緑の点だった。
先ほどのベルの音は、それを知らせてくれていたのだ。
緑の点があった場所に重なるように輝く赤、その横には「MARESUKE」と記されていた。
「まれか……アイツは結構危険だなぁ……何を掴んだにせよ、あまりつっつきたく無いもんだ」
殺戮の宴とも言えるこのパーティを二次会とするならば、あのオフ会は一次会となるのだろうか。
ともかく、最初の宴会の時からこうなる事を知っていた朧月は、オフ会参加メンバーを観察していた。
朧月の見立てでは、半数近くは「殺し合いを回避し、適当に誰かとつるみそうな奴」や
「殺す事が出来ずに結局殺されてしまう奴」だったが、中にはコイツとサシで当たれば死ぬ、と感じさせる人間が数人いた。
まれすけはその少ない「天敵」の一人だったが、彼は一体何を手に入れたのか。そしてどう動くのか。
情報が無い今となっては、もはや正体不明の化け物にしか思えなかった。鬼に金棒とは良く言ったものだ。
「とにかく、まずは俺自身に武器が無ければどうにもならんよなぁ……っと、ここか」

501  朧月 ◆CMupROGETU [sage] 06/08/28(月) 10:20:28 ID:???
そこには、巨大な木が聳え立っていた。樹齢数千年クラスの巨大な杉の木だった。
話が話なら、大中小三匹の化け物の棲家へ通じていそうな大きな空洞が空いており、何かを隠せそうな場所はここだけだった。
「ま、何か隠すならここだぁな、っと。あらー?」
朧月はバッグにマッピングシステムを仕舞うと、ひょいと首を伸ばし空洞の中を伺った。
初めは暗くてよく見えなかったが、段々と目が暗闇に慣れてくると、自然物とは別の、明らかに四角い箱があることが分かった。
「やーれやれ、影瑠もとんでもない所にジョーカーを落っことすもんだ」
それほど深い位置に置かれている訳でも無かったが、かなり重めの木箱を持ち上げるのはやはり骨の折れる作業だった。
やっとの事で大木の虚から運び出した箱の外観をぐるりと眺めると、偉そうに存在感を主張している南京錠が目に入った。
「鍵か……そんなの、俺持ってないしなぁ……うーん……木箱……あ」
開かない箱を前に朧月はひとしきり考えるように顎をさすっていたが、突然手をぽん、と叩き、
再びバッグからマッピングシステムを取り出すと、あたりに誰も居ないことを確認し、そして
「っせーの、せっ!」
重い木箱を頭の上に持ち上げると、巨大な杉の木に、力いっぱい投げつけた。
凄まじい音があたりに響いたが、木箱は見るも無残に砕け散り、中身を顕わにしていた。
「鍵より弱い材質の箱に入れとく方が悪いんだ。開けられないなら壊せばいい……発想の逆転であるね」
箱の残骸を大方足で払いのけると、そこには黒いナップサックだけが残っていた。
やはり、幸運は重なってやってくるものだ。
朧月はナップサックの紐を掴むと、来た道を戻るように駆け出した。
近くには誰も居なかったが、あの轟音だ。どこまで響いたか分かった物ではなかった。
現に、名前を確認する暇は無かったが、ジョーカー跡地に向かっている赤い点もいくつかあるようだった。
お宝を確認している間に後ろからバン、では余りにも情けない。
自らまとめて持っていきやすい形になってくれていたのは、まさに幸いだった。
やがて湖にほどなく近い辺りまで逃げおおせた所で、朧月はようやく腰を下ろした。
思えばこのゲームが始まってから走り通しだった。そろそろ体を休めねば、「来る時」に動けなくなってしまう。
それだけは、避けたかった。
「はぁ……はぁ……こ、ここなら問題ないだろう……」
弾む息をなんとか抑え込みながら、黒いナップサックの口を開けた。

502  朧月 ◆CMupROGETU [sage] 06/08/28(月) 10:24:14 ID:???
中には、黒光りのする拳銃らしき物が2つ、入っていた。
よくゲームなどで見かける、名だたる軍隊や警察の標準装備。ベレッタM92Fと呼ばれる、それであった。
ナップサックをひっくり返し、上下に揺する。何かがばさばさと複数落ちた音がする。
朧月は、落ちた「何か」を一つ一つ手で確認していった。
替えのマガジンが2つ。あと、いくつ入っているのか分からないが、厚紙で出来た箱にぎっしり入った拳銃の弾。
──そして、カードケースに収められた3枚のカード。それがこの黒い福袋の全容だった。
「このカードは何じゃろな……いんせくと・らぼらとりー……虫研究所? Bセクションのカードキー……と、こっちはロッカーか……」
虫研究所。それに近い名前の施設があった事を思い出し、朧月は今日何度お世話になったか知れないマッピングシステムをチェックした。
昆虫研究所付近では、いくつかの赤い点を確認できた。さらにそこへ向かう二つの点。
一つはよろずやであったが、もう一つを確認しようとした時、その点は消滅した。
最初の死亡者となった(と思われる)赤い点の名は、「宣伝野郎」と表示されていたが、点の消滅と同時に画面から消えた。
「なんだ、宣伝野郎か……俺の見立てだと……えーと、そんな奴いたっけか?」
あの宴会を思い出す。事故、UMA、3ちゃん、まれすけ、カワイソスな軍師、色白、卑姐……
一人一人ランク付けとともに思い出して行くが、どうも思い出せない。
「ま、どうでもいいか。記憶に残らないような奴だったって事だろう。どうでもいい奴が一人死んだくらい、取るに足らん出来事だが……」
だが、初めての死者が出たことに変わりは無い。
そして、初めての死者を出した「殺人者」が他の標的へ向かっていることに間違いはなかった。
予想外ではあったが、これはいい誤算だった。まだしばらく膠着すると思われていたが、こうも早く動き出すとは。
運命の歯車と言うヤツが、埃を払いながら音を立てて動き出すのが目に見えるようだった。
「そういや、残りの一枚のカード、何だっけ?」
朧月は残された最後の一枚──どう見えもハイウェイカードにしか見えない磁気カードをぺらぺらと振ったり、裏返したりした。
「……よくわかんない代物だけど……ま、持ってりゃどこかで使えるだろうよ」
磁気カードをカードケースに戻し、これもポケットへ仕舞いこんだ。
「とりあえず、当面の目標は決まったな。昆虫研究所か……今は立て込んでそうだから、暇を見て出向くとするか……あ」
木にもたれかかって疲れを癒そうとした時、朧月はひとつ、重要な事に気が付いた。
「やべ……俺、虫苦手なんだった」
僥倖の尽きた瞬間だった。
────────────────────────────────────────
以上、今日のお仕事おしまいー。
やっぱここは必要以上にひっかき回してあっけなく死にたい所ではあるけど
交渉したり同行したりと「殺されない理由」が必要だったんでちょいと色々持たせたけど、持たせすぎだったかしら。
ええい、とりあえずしばらくは傍観者ー。

503  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/08/28(月) 13:28:50 ID:???
『ブラホ視点④-連投じゃないもん、昨日のは宣伝野郎視点だもん><』

魔サンドとブラホの二人は、薄暗い黒い悪魔の巣窟を歩いていた。
「し、しかし、ブラホさん、どうにかなりませんかね、これ^^;」

森を彷徨い、二人は目的地である昆虫研究所に辿り着いたのであった。
分かれ道の選択は魔サンドが「こっちですね♪」などと適当に決めていたのだが、逆にそれが良かったのかもしれない。
廃墟となった昆虫研究所の中には『昆虫』研究所の名に恥じない程のおびただしい数のゴキブリがいた。

「ここにゴキブリホイホイを置いたらどうなるんでしょうねぇ?
いちめんのゴキブリいちめんのゴキブリかすかなるゲジゲジ。山村暮鳥もびっくりですね^^;」
冗談を言う余裕があるところを見ると、どうやら魔サンドはそこまで昆虫が苦手ではないようだ。
「いっその事このボウガンで的当てゲームとしゃれこみましょうか♪」
「…」
「冗談冗談^^
…ところでさっきここに来る間、僕のボウガンの矢に何かしてましたけどあれは何なんですか?」
「…」
「まぁいいですけどね、いざとなったらこのボウガンでブラホさんを護りますよ^^それっ!!」
そう言うと魔サンドは壁にいたゴキブリに向かって矢を放った。
「おお、見事命中!!^^」
「…」

迷路のような研究所をしばらく歩くと、そこには『INsection』と書かれた扉があった。
外観と歩いた距離からして、ここは研究所の奥の方であった。
「インセクトイオン?INセクション?よくわかりませんが入ってみましょうか♪」
そう言うと魔サンドは全く警戒せずに扉を開け、中に入っていった。

扉の横にはカードキーの差込口や指紋認証、さらには網膜認証など厳重なセキュリティがあったが、
何らかの強い力により扉のロック自体が壊れてしまったようであった。
ここに来る途中にも『Asection』などいくつかの扉があったが、それらはカードキーでのみ開く仕掛けだった。
そしてどの扉もまだセキュリティが生きていて、二人は中に入る事が出来なかった。

しかしよりによって1番厳重なセキュリティの部屋の扉が壊れているとは、なんとも間抜けだな、とブラホは思った。

504  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/08/28(月) 13:28:54 ID:???
「うわぁ、何なんでしょうね、これ?」
部屋の中央には謎の装置があった。
『6』『4』と書かれた、人が入れる程の大きさの円筒状のケージが2つ。その間にコントロールパネルのような物。
部屋一杯の機械とそれを繋ぐコード。そしてもちろんゴキブリの群れ。
「ちょっと弄ってみましょうか♪」
魔サンドが2つのケージの間に設置されたタッチパネルに触れる。
「動かないかなー?動かないなー。」
「…」
ドラムを叩くようにタッチパネルを叩いている魔サンドを横目に、ブラホはケージの中を調べた。
『6』と書かれたケージの中のゴキブリを追い出し中に入ると、ペンか何かで書かれた文字を発見した。

『98;;:;30 ;;;;作動;;;;::;;巨::::なる虫;;;;;;暴::::研究::::::::死::::
::8;;501 一生::::不;;;;知;;;;::::持::::::::虫::::;;;;生して::::::::た』

所々擦れていてブラホには何が書いてあるか判らなかった。
その時、暗闇の中に幾つかの照明が点いた。

「…おお!!ブラホさん!!動きましたよ!!^^」
「…」
奇跡的な復活をさせた魔サンドであったが、謎の文字に興味津々なブラホにはすっかり無視をされてしまった。
「ちょっとブラホさ~ん、来てくださいよ~^^;
…お、なんだろうこれ、ポチポチっとな^^」
魔サンドがタッチパネルを操作すると、ブラホの入っているケージが一瞬光った。
「あれ?^^;」
「…」
「あ、ごめんなさい^^;」
ブラホは魔サンドを軽く睨みながらタッチパネルの方へ移動した。

505  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/08/28(月) 13:28:57 ID:???
そのタッチパネルの画面には、昔のゲームボーイのように緑色の背景に黒色の文字が表示されていた。
「適当に押していたら今みたいになっちゃって^^;ごめんなさい^^;
…でもここに『please insert insect』って書いてあるから多分大丈夫ですよ。
きっと昆虫を入れて何かする装置だと、僕は予想しました^^」
自慢気に語る魔サンドの言う通り、画面上部には『please insert insect』の文字が点滅している。
そしてその下に『ability change』『dupe』『power up』『size』の文字、さらに1番下に『credit 2』の文字が表示されていた。

「ブラホさん、これ面白そうですよ^^ちょっと試してみません?」
昆虫を持っているブラホにとって確かにこの装置は魅力的だった。
謎の文字等から考えて、影瑠の罠では無さそうだ。もしもこれが誰かの武器で、いきなり爆発したりしたら笑えるが。
そして操作方法も簡単そうだった。英語で書かれたメニュー画面からは、なんとなく意味も伝わってくる。
問題はどの昆虫をどうするかだ。『credit 2』の意味するところは残り2回しか作動できないという事だろう。

「どうしましょうか?ブラホさんに任せます^^」
「…」
しばらく考えた後、ブラホは『power up』のボタンに触れた。
画面が切り替わり、画面の中央に『please insert insect --> caze 6』の文字が点滅する。
そしてブラホはバッグの中からスズメバチの入ったケースを取り出し『6』のケージにセットする。
「あ、画面に『ok』『cancel』って出ましたよ。…ポチっとな^^」
魔サンドがokボタンを押すと。先程のように『6』のケージが一瞬光った。
「…」
「…」
「…何か変わったんでしょうか?^^;」
画面に『completion!!』の文字が出たことを魔サンドが確認し、ブラホはケージの中のスズメバチを取る。
確かにケージの中のスズメバチの警戒音が先程より増しているようであった。
どうやらこの失われた技術の装置は、いまだに幾分効果があるようだ。
「あ、credit1になってますよ。次で最後みたいですね。どうしましょうか^^?」

その時、部屋の入り口の方でゴキブリが蠢いた。
ブラホが急いでそちらを見るとそこには、鉄のツメを着けた女がいた。
「ちっ、気付かれたか…」
そこにはアリーナの衣装に真っ赤な返り血を浴びたよろずやが立っていた。
「…なんか、ヤバそうですね^^;」

508  弧月如杏 ◆/E/NyoAn/E [sage] 06/08/29(火) 01:37:07 ID:???
「如杏その3―病院へ」

おかしい。
予想通りなら病院に人が集中するはず。
大暴れできるはず。
      • なのに。

如杏は病院まであと少しというところまで来ていた。
来た道を引き返してここまで来たのだ、誰とも会わないはずはない。
しかし病院へ続く道路には人の影が全く見えない。

苛立ちが募る。
これでは影瑠も私もつまらない。
「早く誰か殺されに来いっつうの・・・」
そんなことをぶつぶつとつぶやきながら足を進める。

「何か・・・ねん」
病院のほうから声が聞こえてくる。
誰なのか。記憶の中から符合する声を探し出す。
「はぁ・・・忘れ・・・」
喋り方、方言、イントネーション・・・

「・・・事故か?」
声はもう聞こえない。おそらく病院内に入ったか立ち去ったかのどちらか。
完全に聞き取れてないから本当に事故かどうかもいまいちよくわからない。
「まあ・・・行ってみらんとわからんか。」
どのみち病院にいくのだ、誰かが病院内にいることが確認できれば殺しにいけばいい。

如杏は病院の正面玄関のドアに手をかけ、静かに開けた。
かすかに足音が聞こえてくる。

誰であろうとためらいはない。
たとえ影瑠側の人間であろうとも、殺しに行く。
それが私の役割。
影瑠が私に期待していること。

足音の主を探して、如杏は病院内部へと進入する。

509  名も無きリスナー [sage] 06/08/29(火) 01:42:57 ID:???
如杏「早く誰か殺されに来いっつうの・・・」
よろずや「うるせぇんだよテメェら!ガタガタ言ってんじゃねえ!」
マレカノ「私も戦う~~~><(マチェットを握り締めながら)」
ブラホ「…」

…あれ?ブラホヒロイン?

517  放浪軍師 ◆B5dupV1wRw [] 06/09/06(水) 00:00:34 ID:rwVQl+cK
  • 放浪軍師- 心情整理

さて、武器も確認したし。この場での己の能力も一通り解った。
あとは…

放浪軍師「これからどうするか…、やね」

俺に配布された爆弾…。俺の推測が正しいのなら、これは対影瑠用の武器と見て間違いないだろう。
影瑠には無効…なんて事も一瞬考えたが、奴はなんだか楽しんでいるように見えた。
己自身が危険に晒される事も、奴にとっては楽しみの一つじゃないだろうか。
だが…
影瑠を狙うのは、非常に危険だ!
普通に勝ち残るよりも可能性は薄い気がしないでもない。
だからと言って、奴のゲームに乗るのも微妙に気乗りがしない。

よし…、こういうときは…アレだ。
財布に入っていた100円玉を取り出す。

放浪軍師「表ならゲームに乗る…裏なら…影瑠狩りだ…」

       ―――― ピーン ―――――

宙を舞った100円玉を右手で受け止め、左腕に乗せる。
俺は生まれ持った鋭い目つきで、その絵柄を確認する。

放浪軍師「…そうこないとね」

さて、体調回復までもう少しだ。ゆっくり休むぜ。

【放浪軍師 影瑠狩りか?ゲームに乗るか? この書き込みの秒が偶数なら影瑠狩り、奇数ならゲームに乗る】

527  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/09/10(日) 01:05:27 ID:???
『ブラホ視点⑤-もう⑤か。⑥書いたらしばらく書くの抑えようかなw』

「どうしたのですか、血だらけですよ?夜の森で転んだのですか?^^;」
魔サンドが笑顔でよろずやに話し掛ける。
「んなわけねぇだろうが。なめてんのか?」
「ですよね^^;」
ブラホはこの状況下で冗談が言える魔サンドを尊敬さえした。

「しっかしお前ら、大した物持ってないな。おもちゃのボウガンに虫ケラかよ。」
よろずやが魔サンドとブラホを見て言う。

確かに魔サンドが持っているボウガンは武器と言うよりは玩具に近かった。
ボウガンとはいえ矢の先が♥型になっていて、さしずめハイテク化されたキューピッドといった感じだ。
命中すれば一応刺さりはしそうだが、急所にでも当てない限り致命傷にはならないだろう。
また、ブラホが抱えているスズメバチも、よろずやにとっては恐るべき武器ではなかった。
スズメバチの巣を放り投げたとしても、魔サンドはおろかブラホ自身さえも巻き添えになるだろう。
だからそれは絶対しない。よろずやもブラホと同じように『虫』という武器の特性を理解しているようだ。

「ま、武器がなんだろうと関係無いけどな。」
「それはもし僕の武器が核ミサイルでもですか?^^;」
よろずやは魔サンドの冗談を無視すると鉄のツメを構えた。暗闇の中、機械の人工的な光でツメが鈍く輝く。
「…ブラホさん、そこのタッチパネルの後ろにでも隠れていてください。」
今まで冗談を言っていた魔サンドの顔が一瞬真面目になる。
「…」
「大丈夫、なんとかしますよ^^」
魔サンドが普段の笑顔で言う。

528  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/09/10(日) 01:05:32 ID:???
「2人がかりの方がいいと思うぜ?」
「いえ、ここは正々堂々とサシで^^」
「…チッ、気にくわねぇヤツだ。」
よろずやがボウガン対策に左手でバッグを持ち防御する。
「もう後悔しても遅ぇぞ!!」
そして、右手の鉄のツメを構え、姿勢を低くして魔サンドの元へ一直線に駆け寄る。

それに対抗して、魔サンドはバッグと帽子の間から少しだけ見えているよろずやの目を狙いボウガンの矢を放つ。
「…そこです!!」
しかし、よろずやの超人的な反射神経により、魔サンドの放った矢はバッグで防御されてしまった。
♥型の矢がバッグに刺さる。

「…残念だったな。」
よろずやがニヤリと笑う。

まさに魔サンドが死を覚悟したその時であった。魔サンドとよろずやの間で何かが炸裂する。
「な、なんだ!?」
魔サンドは突然の出来事に、周囲の状況を把握できていなかった。
ただ1つわかっているのは、命拾いしたという事であった。

530  誤爆ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [] 06/09/10(日) 01:06:49 ID:HPB6vLeq
「…なんだよ、驚かせやがって。」
突然の攻撃をバックステップでかわしたよろずやが呟く。
「…」
攻撃の主であるブラホがタッチパネルを挟んでよろずやを見つめる。
「てっきりさっきのスズメバチでも投げたのかと思えば、ただのガラス瓶かよ。」
ブラホは、もしもの時に備えて、研究室の床に落ちていたガラス瓶を手に取っていた。

「隠れてるお前の事を少し警戒しすぎたな。ガラス瓶程度だったら、そのままそいつを殺しに行ってりゃ良かった。」
よろずやが、魔サンドを鉄のツメで指差して言う。

「…ブラホさん、助かりました^^;」
魔サンドが苦笑いをしながら言う。
「う~ん、狙いはバッチリなんですが、どうもよろずやさんが強すぎますね^^;」
ブラホが黙って魔サンドを見つめる。
「…」
「…?どうしたんですか^^?」
そしてブラホは、ボウガンと魔サンドの脚を順番に指差す。
「え?脚?…もしかしてよろずやさんの脚を狙えって事ですか?^^;」
「…」
「確かに脚なら防御がほとんど無いので当たるでしょうね。
でも脚に当たったところで、致命傷にはならなそうですけど^^;」
「…」
「…まぁブラホさんがそこまで言うならやってみましょう^^;」
当然ブラホは一言も発していなかったが、魔サンドは見事にブラホの考えを読み取っていた。
ブラホは、もしかしたら魔サンドが自分の心を読めるのではないかとさえ思った。

「何の話し合いか知らんが、次は今みたいにいかねぇぞ?」
バッグと鉄のツメを構え、仕切り直したよろずやが言う。
「…」
そしてブラホが魔サンドを見守る中、再びよろずやが魔サンドに走り寄る。

529  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/09/10(日) 01:05:44 ID:???
魔サンドは走り来るよろずやに狙いを定めた。
「今度は外しませんよ!!」
そう言って魔サンドの放った矢は、見事によろずやの太ももに命中した。
しかし、よろずやのスピードが衰えることはなく、よろずやは魔サンドの元へ距離を縮める。
「全然効かねぇよ。」
よろずやがそう言って鉄のツメで魔サンドを切り裂こうとしたその瞬間であった、
突如として、空気が抜けたビニール人形のようによろずやが地面に倒れる。

「…!?な、なんだこれは!?どうなってやがる!?」
流石のよろずやも、これには驚く他無かった。
「…これは一体?」
当然魔サンドは先程同様状況が飲み込めていなかった。
しかし困惑する二人をよそに、ブラホはただ独り冷静だった。

ブラホがあらかじめ魔サンドの矢に塗っていたのは、ヤドクハムシの体液であった。
最初に名無しサンプリングと出会った廃墟ですり鉢を入手したブラホは、
昆虫研究所へ来る途中にヤドクハムシをすり潰し、矢の♥型の部分に塗っておいたのであった。

「くそ…力が…入ら…ねぇ…」
よろずやがうつ伏せに倒れたままの状態で言う。
ヤドクハムシの毒は、キリンなどの大型動物でさえ麻痺させてしまう。
ティラノサウルス並みの獰猛さを持つよろずやも、さすがに力が入らないようだった。

「ど、どうやら僕の勝ちのようですね^^」
状況を今ひとつ理解していない魔サンドが得意げに言う。
「こんな…野郎…に…」
そう言うとよろずやは意識を失ってしまった。

「おお、やりましたよ!!ブラホさん^^」
「…」
ブラホは、改めてバトルロワイヤルの恐ろしさを感じていた。

533  4 ★ [sage] 06/09/10(日) 01:35:48 ID:???
4の場合③-拠点確保

「さって灯台にも着いたし中に入りますかね~」
が、灯台の入り口に張り紙がしてあるのが目に入る
なになに『この先危険だから入っちゃ嫌~よ -放浪軍師-』
「ふむ、この中には軍師が居るのか・・・どうする俺?」
仕方無しに灯台の周りを歩いて回る俺、しかし入り口はここ以外に無いようだ
「まいったなぁ・・・出入り口は一つしかないし、その出入り口にはあの張り紙だろ・・・」
しばらく悩む四天王。
「まぁ、悩んでも仕方ないか。なるようになるさ、うん」
そっと扉を開け、中を覗く俺、入り口から薄暗い灯台内を見渡す
「ぐーんしぃー・・・いるのー?」
そっと囁いてみる。が聞こえる音は寝息のみ
「ん?寝てるのか?」
「ぐーんしぃー寝てるのー?」
これで「うん寝てる」なんて返事がある訳無いのに何故か聞く男がそこにいた。
「ふむ、軍師は寝てるのか。」
チャーンス☆
「これでこっそり入って上の階に昇れるやんw」
こっそりと・・・色々忍び込んだ時の事を思い出し細心の注意を払いながら進む
「うーん」
土器ぃ!!あまりの驚きに誤変換さえおきるほど驚く。
「○○さぁぁぁん」
夢を見て何か寝言を言ってるらしい軍師がそこにはいた
「寝言かよ・・・脅かすなよな」
俺は軍師が寝ているのを確認し、再度上層部を目指す
上部に到着し扉を閉める。
「ちっこの扉、カギが壊れてやがる」
室内を見渡す、部屋の隅に古びた机があった。
「この机を少し隙間を作って扉の前においておいたら開けた時の音で誰かが侵入したら気付くな」
机を動かし扉の前に設置し、室内の探索に俺は向かった

続きはまた!

537  放送事故 ★ [sage] 06/09/11(月) 03:53:00 ID:???
甘かった
複雑な薬品名を前にどれが役立つ薬なのかわからないのでは
薬品棚を前に瓶をにらみつけることしか出来ない
薬は諦めるしかないだろう
さて、どうしようか
人の探索は半ば諦めている
この上薬も諦めるとなると病院にとどまる意味がない
かといって、慌てて出る必要もない
せめて自衛の手段くらい見つけてからにしよう

「倉庫でも探すか…」
案内板を頼りに倉庫へと向かう

それにしても、暗い病院は不気味だ
廃病院にも関わらず荒れていないのがより恐怖を駆り立てる
廊下の先の闇がどこか得体の知れない空間につながっているのではないかと考えてしまう
今のこの状況から抜け出せるのならば、それもいいかもしれない

倉庫の中はきちんと整理されており、病院の管理体制が伺えた
ただ積もった埃が年月の経過を表している
整然とした備品の山の中に何か埋もれているだろうか

539  放送事故 ★ [sage] 06/09/11(月) 22:30:45 ID:???
雑然とした倉庫の中で事故はようやく立ち上がった
腕には膿盆をガムテープで貼り付け
右手にはモップの柄
これで少しはマシな装備になった
ただし、服装は相変わらずメイド服
倉庫にはナース服もあったが、それは袋に押し込んでおくことにした
事務用品も用途の思いつくものはとりあえず袋に納めておいた
当面はなんとかなる、と思いたい

倉庫から出て玄関ホールへ向かう
仲間も薬も手に入らなかったが、役に立つものは色々手に入った
十分な結果だろう


来た道を戻っているだけだ
闇に向かって進んでいるのも変わらない
なのにこの違和感はなんだ
その正体に気付いたとき、体が強張った

足音がもうひとつある

540  放送事故 ★ [sage] 06/09/11(月) 22:30:59 ID:???
廃病院に足音
これは、「出た」のだろうか
冷や汗が流れる
足音は少しずつ近づいてきているようだ
少し、歩を早める
それに伴い足音も加速する
気が付くと、駆け出していた

闇に包まれた廊下を抜け
玄関ホールへと飛び込む
出口が見えた
あそこまで行けば解放される
湧き上がるのは安堵と好奇心
一体何が追いかけてきていたのか?

出口の前で振り返る
懐中電灯に照らし出されたそれは俺を凍りつかせるには十分だった
白い着物に赤い袴
腰が抜け、その場にへたりこんでしまう
そうしている間にもそれとの距離は縮まっていく
足は動かない

「事故?」
声をかけられるというのは予想していなかった
「へい?」
マヌケな声が口から漏れる
「やっぱり事故かー」
少し冷静さを取り戻し、相手をよく見る
顔、声ともに覚えがある
じょあんさんか、服装は巫女
影瑠の細かい気遣いには呆れる

「なんやじょあんさんかー。俺びびって腰抜けてんけど」
緊張が解けたことと、顔見知りを見つけた喜びから声に明るさが戻る
これで自分は独りじゃない

543  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 00:02:05 ID:???
「ぷっ」
事故の言葉に思わず噴出す
自分の状態を伝えることがどれだけ危険なことかわかっていない
「なんよそれ、ひどいなー」
笑いながら距離を詰める
まだだ、この武器のリーチ長くない
「で、今は動ける?」
確認をとっておく
逃げられると厄介だ
「いや、まだ無理っぽい。足カクカク」
笑みが漏れる
相手は私を信用している
確実に殺れる
「もー。ほら、つかまりな」
手を差し出すと同時に後ろ手に仕込み幣を抜く
「ありがと」
事故が私の手をつかむと同時に事故を引きながら幣を振り下ろした

545  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 04:19:52 ID:???
ガキン

とっさに振り上げた腕が刃を止めた
膿盆をつけたのは間違いではなかったようだ
腕を振り払い、距離をとる
といっても、カサカサとゴキブリのように動くことしか出来ないのが情けない
「じょあんさんは影瑠側なん?」
芝居がかった動きでゆらりと動く如杏に問う
「そっちの方が楽しそうやけんね」
笑顔で答える如杏。その笑顔が憎い
座った状態では柄を振り回すのは難しい
長さが裏目に出るとは思っていなかった
「じゃあ、死んでもらおうか」
刀を振りかぶる如杏。足はまだうまく動かない
ガッ
柄で受けるも体重を乗せた一撃は重い
刃越しに見える如杏の顔が悪魔に見える
なんとか刀を払い、横に薙ぐも軽やかにかわされる
立たなければ、戦うことも難しいようだ
奴の武器よりこっちの武器の方が長いのがせめてもの救いか
とりあえず振り回せば相手を間合いの外に追いやれる
今は必死に柄を振り回すことしかできない

そんな俺を見て、また如杏が笑う
「無駄なあがきやね」
くそ!なんとか立ち上がらないと……
足に力を込める
ただ立ち上がることがこんなに難しいとは思わなかった
ゆっくりと、ゆっくりと立ち上がる。もちろん、柄を振り回したまま
「おー、立てた立てた。オメデトウ」
ニヤニヤしながら如杏が拍手する
その余裕が癇に障る
立ち上がったところでまだまだ走れるような状態ではない
だが、攻撃に転じることはできる
防戦一方よりはまだ望みがある
そういえば、エプロンのポケットにひとつ可能性を入れてあった
もしかしたらうまく逃げられるかもしれない
出口は目の前、森に逃げ込めば……

546  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 04:22:32 ID:???
隙を作れば活路は開ける
そうと決まればやるしかない
振り回す手を止め、正眼に構える
剣道なんて授業でかじった程度だが、戦闘技術に関しては向こうも同じようなものだろう
単純な力だけなら男である俺に分があるはず
大丈夫、やれる
足の感覚を確認する
踏み込みもなんとかなりそうだ

ジリジリと距離を詰める
自分の間合いまで後一歩、それがベストの距離だ
ある程度形式のある試合と違って、動きに制限がないというのが怖い
先に動いた方が負け、と言われるが
これなら、きっと、勝てる
柄から左手を離し、ポケットに突っ込む
カチ
起死回生のアイテムは準備万端だ



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2006年09月20日 22:30