547  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 04:23:18 ID:???
踏み込むと同時にポケットからデジカメを取り出しシャッターをきる
フラッシュが光る
「くっ……」
如杏が眩しさに目を閉じる
可能性が作り出せる隙はこの一瞬のみ
逃すわけには行かない
踏み込みの勢いを殺さず、そのまま力いっぱい如杏を突いた
鈍い音と嫌な感触とともに、如杏の胸に柄が突き刺さる
「がぁっ……」
如杏の口から空気が漏れる
今の手ごたえは肋骨がイったのかもしれない
もだえ苦しむその顔には先ほどまでの余裕はなく目の焦点が合っていない
これなら、少なくとも追ってくることは出来ないだろう

「ごめんな」
そう呟き、出口の扉に手をかけた

548  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 04:24:05 ID:???
「あああああああああああああ!!!!!!!!!」
雄たけびが病院内に響き渡る
如杏が立ち上がっている
が、目はうつろなままだ

俺は病院を飛び出した
当然、如杏も追ってくる
とにかく森へ
ブッシュに隠れてやりすごせるかもしれない

森の中は中々進みづらい
道なき道をいっているのだから仕方ないが、植物に進路をはばまれる
それは如杏も同じなのだろう、ガサガサと葉擦れの音が後ろからも聞こえる
振り返る余裕はない
ただ前へと走る

「うあっ!?」
何かにひっかかり、もんどりうつ
と、同時に少し開けた場所にでる
後ろからは如杏が追いついている
手には、短刀
ドスッ
さっきまで転がっていた地点に穴が開く
ドスッ
転げまわって避けるのも限界がある
ドシュッ
避けそこない、わき腹から血が滲む
「くぅ…!」
尚も振りかぶる如杏、どうやら俺はここまでらしい

549  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 04:25:55 ID:???
その時だった
「事故!!!」
叫ぶが早いかその人影はギターケースで如杏を殴り飛ばした
如杏は動かない。今度こそ完全に気絶したようだ

改めて人影を確認する
ギターケースを担いで仁王立ちしている青年
SIMPLEだ

「立てるか?事故。この先に俺が隠れてる廃屋がある。そこまで行こう」
人を信じられないこの状況だが、こいつを疑うことはできなかった

558  放送事故 ★ [sage] 06/09/12(火) 17:00:03 ID:???
「ありがとな、SIMPLE」
「ん?」
「助けてくれて」
「バカ、当然だろ」
「いや、うんありがと」

「ところでさ、よく見つけてくれたな」
「ああ」
「愛か」
「ねーよ。あそこ、罠仕掛けてたんだよ」
「罠?」
「俺の支給品、これと弦だったんだけどさ。弦が異常に多いんだよ」
「うん」
「だからあの辺の足元に弦を張り巡らせてみた。誰かひっかかったらわかるようにして」
「……」
「で、反応があったから行ってみたんだよ。誰がひっかかったんだろうな」
「俺だな」
「あー……」
「……うん」
「ごめんな?」
「いや、いいんだけどね。助かったしさ」
「今度なんかおごるわ」
「別にいいって、おかげで合流できたし」
「いや、おごるわ」
「いいって。それより隠れ家まだなん?」
「もうちょいかな」
「そっか」
「着いたらその腹の傷どうにかしようか。救急箱くらいあったはずだし」
「使用期限とか大丈夫なんか?それ」
「腐っても薬じゃね?」
「それもそうか」

573  名も無きリスナー [sage] 06/09/19(火) 19:38:21 ID:???
「ゲーム」の開始が告げられてから、一時間ほどが経過した時分。
闇の中を奔るいくつかの影があった。
島の北側を覆う樹海。
昼間でも薄暗いこの森は、夜になれば漆黒の闇に閉ざされる。
星の光も届かぬ黒一色の樹海の中を、
屈強な男たちが隊伍を組んで奔っていた。

「―――オイ『Germany』。アノ男ガイッテイタスゴイ物ッテノハ一体ナンナンダロウナ! 」

「興味ガアルノカ?」

「アア。コノ国デ非合法ナコロシアイヲサセテマデノ報酬ダ。金ヤ土地トイッタ類ノモノデハナイダロウ。」

「デハ、コノ島ノ?」

「アア。俺ハソウカンガエテル。『Finland』ハドウオモウ?」

「ハハハ、カンケイネーヨ。ヨウハ他ノ参加者ヲ全員ウチコロセバイインダロウ?
ドウセ他ノヤツラハシロートダ。俺タチガイキ残ルニキマッテイルサ」

「アイカワラズ、ダナ」

574  名も無きリスナー [sage] 06/09/19(火) 20:00:17 ID:???
コンゴで。コソボで。中東で。
世界中の紛争地域で傭兵として戦い抜いてきた自負心が、男たちにはあった。
その戦場が日本の小島に移ろうとも、それが戦争である以上は最後の一人まで敵兵を殲滅せしめる。
それが男たちの気概であった。

始めにこの島に拉致られて来たときには、さしもの傭兵たちも困惑した。
しかし、自分たち以外の参加者を全員殺せば生きて帰ることが出来ると聞いて安心した。
しかも、他の参加者のほとんどは戦闘の素人だという。

ならばこれは普段の日常と何も変わらない。
風晒しのテラスでエスプレッソコーヒーを飲むのと何も変わらない。
恋人と湖へドライブに出かけるのと何も変わらない。

支給された武器はナイフとサブマシンガン。
弾薬もたっぷりある。
さあ。
楽しい楽しい「狩り」の時間だ。

577  12:00 影瑠定期放送 [sage] 06/09/20(水) 00:26:38 ID:???
おま○んこぉぉぉぉう!!
やぁ!東北一のイケメンことみんなのアイドル彩巧影瑠だよ!
みんな殺しあってる~?
命がけで戦わないと死んじゃうよ~^^

この放送は6時間ごとの定時放送で、これからも午前と午後の6時と12時には放送を入れるから聞き逃しちゃダメだよ~。
それじゃあまず立入禁止区域を教えるね。
まずみんなが最初に集まった建物ね。
ここは俺達の本部施設だから大切な機材とかいっぱい置いてあるんだ。
だから絶対入っちゃダメー。

あと、もちろん地図には書いてないけど兵士たちの詰所とか
「関係者以外立入禁止」って書いてあるところも全部ダメだからね~。

じゃあ次に死亡者のお知らせ~。
あらら。はじまってまだ2時間だって言うのに、もう一人死んじゃってんだね~。
「宣伝野郎」さん。以上一名。
お気の毒でした~。

それじゃ、まだ生きてるみんなも最後の一人になるまで頑張って殺し合ってね~。
影瑠でした~。

580  弧月如杏 ◆/E/NyoAn/E [sage] 06/09/20(水) 01:43:13 ID:???
「おま○んこぉぉぉぉう!!」
いきなりの叫び声で目が覚めた。
どこからともなく聞こえてくる影瑠の声。
定期放送らしい。
「あー、バッグは・・・あった!」
あわてて地図を取り出し、書き込みを加えていく。
「どこかわからんのに立ち入り禁止って言われてもねぇ・・・まあいいけどさ。」

放送が終わり、辺りは静けさを取り戻した。
如杏は一息つこうと水を一口飲んだ。
「それにしても誰なんかねぇ・・・邪魔しやがったんは・・・」
地図の裏側に思いついた名前を書き出していく。
「事故を助けたってことは・・・こいつらのうちの誰かやね。」
いろいろなパターンを考え、最終的に事故を含めた6人に絞り込んだ。
当面のターゲットはこの6人だ。
「さーて、とりあえずは邪魔された仕返しをしに行こうかね・・・アイタタタ」
事故に折られた肋骨の部分を押さえながら立ち上がる。
戦闘に支障はなさそうだ。

「待ってろよ事故・・・今度こそしとめる!」

581  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/09/20(水) 02:57:05 ID:???
『ブラホ視点⑥-しばらく書くの押さえようかなヽ( ○ )ノ』

「しかし、よろずやさんって獰猛な人だったんですね^^;」
魔サンドが倒れているよろずやを横目に言う。
「もし、不慣れな武器でも渡されていたら今頃やられていたでしょう^^;」
「…」
ブラホにはそれが、魔サンドがボウガンの扱いに慣れているような言い方に聞こえた。
もしや、動いているゴキブリに矢を命中させたのも偶然ではなかったのだろうか。
「チンゲンツァイ様…ありがとうございます…」
「…」
魔サンドが誰かの名前を口にする。だが特にブラホは追求する気にもならなかった。
独りで危機を脱した安堵感から来る喜びに浸っている魔サンドを無視し、ブラホはもう一度タッチパネルの前に移動した。



先程と同様の画面。違っているのはcreditの数。ブラホは何をすべきか考えた。
「あと1回みたいですけど、どうするんですか?
なるべく早くしないと、よろずやさんが復活するかもしれませんよ^^;」
「…」
ブラホが倒れているよろずやを見る。横になっているとはいえ、どことなく恐ろしいオーラを発している。
もし、倒れているのが演技だったら…と考えると恐ろしくなってくる。
ブラホは速やかに思考を働かせた。そして『size』のボタンを押す。
画面が切り替わり、画面の中央に『*2』『*4』『*6』『*64』の文字が縦に並ぶ。
「サイズの倍率指定でしょうかね?…ここはやっぱり…^^」
そう言うと魔サンドは『*64』をタッチする。
すると『please insert coin!!』と画面に出て、また倍率指定の画面に戻ってしまった。
「ありゃ、credit不足でしょうか…残念^^;」
「…」
ブラホは64倍になったタランチュラも見てみたかったが、さすがに扱いに困るとも思った。

582  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/09/20(水) 02:57:13 ID:???
ブラホが『*4』のボタンを押すと、画面が切り替わり中央に『please insert insect --> caze 6』と出た。
「さっきと同じですね^^」
ブラホはタランチュラの入ったケースをバッグから取り出すと、6のケージに置いた。
「ブラホさん、いきますよー。」
魔サンドがそう言うと、先程と同様にケージが光る。

「…」
ブラホがケージ内のタランチュラを見て驚く。確かにサイズが4倍になっていたのである。
そしてそのタランチュラをケージから取り出し、魔サンドの所へ持っていく。
「うわわ^^;なんですかそれ^^;…ケースは4倍にならないんですね^^;」
魔サンドは特に驚く様子も無く、ケース内で圧迫されているタランチュラを見つめる。

「あ、見てくださいブラホさん、画面が…」
そう言われて画面を見ると、そこには『insect is infinity ha ha ha!!』と表示されていた。
そしてどこをどう操作しても、全く動かなくなってしまった。
「回数制限が来たのでしょうか?^^;」



「さて、ブラホさん、これからどうしましょうか?」
魔サンドが言う。
「…」
ブラホは目的である昆虫研究所にも辿り着き、仲間も出来たので特にその先を考えてもいなかった。
「一応ここは危険ですよね^^;」
魔サンドが倒れているよろずやをチラリと見る。

583  ブラホ○ ◆6464Q.3rTs [sage] 06/09/20(水) 02:57:17 ID:???
「とりあえず、どこか適当に行ってみましょうか^^」
魔サンドが地図を見ながら笑顔で言う。なんとかなるさ、といった感じである。
「ブラホさんはどこか行きたいですか?」
「…」
「じゃあ僕が勝手に進んでいきますよ^^」
まるで遠足の自由行動のようだ。魔サンドが笑顔で先頭を切って歩き出す。
軽快なステップで、もう部屋から出て廊下を歩いている。早い。

ブラホがそんな魔サンドの後を付いて行こうとすると、視界によろずやが入った。
「…」
よろずやが防御の為に持っていたバッグが、よろずやから少し離れて落ちている。
ブラホは、あまりよろずやを刺激しないようにそのバッグの中身を見た。
中には、全員に支給される地図や水が入っている。
「…」
そして一丁の銃が入っていた。その銃の横には『infectious prison』と書いてあった。
ブラホはそれが何を意味しているのかよくわからなかったが、とりあえずその銃を自分のバッグに入れた。
もしそのままにしておけば、この銃でよろずやが復讐しに来るかもしれない。そうなると厄介だ。
それに加え、ブラホは自分の無力さも感じていた。よろずやとの戦闘でも、ブラホはほとんど無力であった。
もちろんブラホは誰かを殺す為ではなく、護衛として、虚栄として、銃を手に取ろうと考えた。
「…」
どうせならナイフと鉄のツメも拝借しておきたかったが、無理によろずやの体に触れてよろずやが起きてしまっては面倒なので、
ブラホは銃だけを拝借し、魔サンドの後を追った。
「どうしたんですかブラホさ~ん、置いていきますよ~^^」
「…」
ブラホは緊張感無く大声を出す魔サンドの所へ駆け寄った。
「さぁ、行きましょう^^何かあったらこのボウガンでどうにかしますよ^^…それっ!!」
そう言うと魔サンドは壁にいたゴキブリに向かって矢を放った。
「おお、またもや見事命中!!^^」
「…」



そして二人はまた、夜の森へと消えて行った。

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最終更新:2006年09月20日 22:31