くんかの世界へようこそ!(上)

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http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1289713269/25-32 「さ、先に上がってろよ。今飲み物持っていくから」 「ええ。そ、そうさせてもらうわ」 先輩の家に着き、私は二階へ、先輩はリビングへと向かっていく。 心臓の音が、階段を一段上るたびに大きくなる。 今日は冬コミに向けてのゲーム製作をする為に、高坂家へとやってきた。 それだけならばいつものことなのだけど、今日は少し勝手が違った。 付き合ってから初めて、あの部屋で先輩と二人きりになる。 先輩も意識しているからか、学校からこの家に着くまでの道中、やたら口数が多か った。 どうでもいい内容ばかりで、普段なら反応するのも億劫なのだが、 私も何か喋らずにはいられず、実のない言葉のキャッチボールを続けてきた。 私の頭の中 ―先輩もだろうけど― 家に着いてからのことで一杯だった。 今日もいつも通りで過ごせるのか、と。 そんなことを思い出しているうちに、先輩の部屋のドアの前に立っていた。 いつもは難なく入っていけるのに、何なの今日のプレッシャーは… ノブに手をかける。これを捻れば、簡単にドアが開く。 異様に喉が渇いてきた。妖気の膜も不調なのか手にはじんわり汗が浮かぶ。 「夜の眷属に、撤退の二文字はないわ…!」 意を決して、不安半分期待半分でノブを回す。なんてことはない、いつものドアよ。 でも…それでも思わずにはいられない。 開いたこの扉の先にはどんなものが待っているのかしら… 「昨日取ったのはこれだから…これでよし、っと」 …扉を開けたらそこは魔境だった。 「なっ!?」 「えっ!?」 部屋の中にいたのは私の友人であり、私の恋人の妹でもある高坂桐乃。 彼女はどこかニヤニヤしながら兄のタンスの棚を漁っていた。 しかし、私に気付いた彼女は目を見開き、だんだんと顔を青ざめさせていく。 思考を停止させ、新たな気持ちで部屋に入り直したいところだけど、 残念なことに情報が頭に入ってしまう。 洗濯ものをしまうような甲斐甲斐しい女ではないし、 何より私が入ってきた時に呟いていた台詞から、何をしていたか推測するのは難しくない。 駄目押しは彼女のそばに置かれていた紙袋。少しだけ中身が見えた。 …パンツだ。しかも男物の。 「そ、その中身は…スペアかしら?」 「っ!?な、なんでアンタがっ!!?つーかす、すすす、スペアとか!い、意味 わかんないし!!」 青ざめた顔が見る見る赤くなり耳まで真っ赤になったところで彼女は吠えた。 「私は自分が恐ろしいわ、私の漫画が理を自在に操ることが出来ただなんて…」 「いやいやいやいや!違うっての!こ、これはっ!」 彼女は視線をさまよわせ逡巡してみせた後、何か良いことを思いついたという 喜びの顔を私に向ける。 「そう!これは義務!」 「ぎ…!?」 「義務よ義務!ただでさえどうしようもないアレが、 パンツまでみっともなくしちゃ救いようが無いでしょ! だから妹としてパンツを管理してんのよ! ボロボロのパンツ穿いてるとか身内として許しちゃダメじゃん! だから古いのを捨てて補充してあげてるわけ! 兄のパンツをチェックするのは妹の義務!」 そして腕を組み胸を張る高坂桐乃。『完全に論破』という言葉が後ろに見えそうなくらいの不快なドヤ顔が私に向けられる。 この女はもしかしたら本当に頭に蛆が湧いているのかしら。 「はぁ…」 言い訳にもならない世迷い事を聞かされ、思わず溜息が漏れる。 さて、どうしたものかしら… 驚くほど冷静に対応してしまったが胸中は穏やかではない。 ドアを開ける前の葛藤を挽肉にされたことを怒ればいいのやら、 ブラコンの行動を超えたもっとおぞましい何かに慄けばいいのやら。 …とにかく、この状況を放置するのは良くないわね。 この暗黒空間で何が行われようと、そう時間がかからない内に先輩はやってくる。 まず「ホントあたしって完璧よねー」などと妄言を吐いている女を追い出さなくては… これ以上の混沌は、夜の眷属である私でも立ち向かいたいと思わない。 「…そろそろ先輩が上がってくると思うんだけど大丈夫かしら。 まぁ妹の義務を果たしてるだけなら、その紙袋を持ってても問題ないのでしょうけど」 「!?」 私の言葉で自分が全く窮地から脱していないことに気付いたらしい。 「ま、全く問題ないけどもう用済んだし? あーこんな臭くてキモい部屋いらんない、さぁエロゲーやろーっと」 紙袋を胸に抱えそそくさとドアに向かってくる。 彼女は私の横を通り過ぎていき、入れ替わりで私が部屋の中に入る。 ホッと息をつこうとしたところ、彼女はドアに手をかけながら不機嫌そうに言った。 「くれぐれも変な声とか出さないでよね。本気で寒気がするから」 「あ、ああああ、あなた何言ってっ…!?」 「…ふん」 力強くドアが閉められる。 ドタドタと不機嫌そうに歩いていく音が少しずつ遠ざかっていった。 「な、何を言っているのかしらあの雌はっ…」 彼女がいなくなると急に力が抜け、私は床に座り込んだ。 何だかんだで気が張っていたらしい。改めて毅然とした態度を取れた自分を褒めたくなった。 『くれぐれも変な声とか出さないでよね』 去り際に彼女が言った言葉がまだ耳に残っている。 …今日はそんなことは起こらない、はずよ。 私はせいぜいき、キスまでなら赦してあげるつもりで来たわけだし… 先輩だって、恋人になって家に初めて呼んだ相手にそういうことをしたがるわけ… したがるわけ… …………… …するかもしれない。 彼は息をするように厭らしい事をしている駄目人間。 契りを結ぼうとする可能性は低くない。むしろ大いにあり得る。 そしてそれを私が拒めるか、というと… 「あ、あ、ああ…ど、どうしましょう!?」 そう思うと、急に落ち着かなくなってきた。 顔が業火で焼かれるように熱い。心臓がいつもより強く脈打つ。 油断していた。一回家に帰ってシャワーでも浴びくるべき… いや、帰ってまたこの家にくるなんて明らかに不自然、ここはこの家のシャワーを、 って私の莫迦!明らかにこっちが誘っているじゃない! そのまま、纏まらない思考のまま、私はしばらくの間、百面相を繰り広げた。 「それにしても…遅いわね」 思考の濁流に流されてからしばらくして、私はふと思った。 私が暗黒時空(この部屋)に入ってから数分は経っているはずなのに。 …もしかしたら、先輩も同じように下で悩んでいるのかもしれない。 「全く…莫迦な雄だわ」 何故だか笑みがこぼれる。私にも彼の莫迦がうつったのかもしれない。 彼が本当にそう思っているかはともかく、少し心が落ち着いてきた。 もうなるようにしかならないわ。激流に身を任せて同化しましょう。 私は両手で両頬を軽く叩き、いつもの「私」で先輩を迎えようと佇まいを正した。 「…?」 余裕がいくらか出てくると、何回も来ている部屋の中に 微かな違和感があることに気づいた。 その違和感の正体はすぐに分かった。タンスだ。 いつもは閉まっているのにある棚が飛び出している。 …あの女、閉め忘れたのね。 彼女のことを思い出すと、先ほどこの部屋で行われていただろう行為が頭の中に浮かんだ。。 あの女、パンツを盗んで何かをしているのよね、きっと。 ………パンツってそんなにいいものなのかしら。 「!?!?!? な、何を考えたの私は!?」 一瞬頭に浮かんだ考えに身の毛がよだつ。 ありえないありえないありえない!! あんなもの天国への階段(メイドインヘブン)で世界が何回変わってしまおうと 受け入れられることがない穢れた行為よ…! あんな異常行動に私が興味を持つわけがない、そのうちあの女にも引導を渡してやるわ。 私はタンスに背を向け、他のことを考えようとする。 本当に遅いわねあの愚図…さっさと来たらこんな思いしなくて済んだものを。 取って置きの呪詛をお見舞いしてあげるから覚悟なさい。 ……… …… … で、でも棚が開いているのは、みっともないから閉めてあげないといけないわね。 私は立ち上がり、タンスの前に移動する。棚の中身は案の上パンツだ。 ある1枚を除いて綺麗にたたまれている。 このたたまれていないものは、おそらく彼女が用意したスペア。 私が入ってきたせいでたたむことができなかったのだろう。 一瞬どうするか悩んだが、私の腕は一枚の布切れにゆっくりと手を伸ばした。 一枚だけたたまれてないなんて不自然だもの、 たたんであげるのはどこも不自然じゃないわ… ついに指先が布の感触を捉える。腕の先から弱い電流が流れてくるような感覚に襲われる。 「つ、次はたたまなくてはね…」 私はパンツをつまみ胸の前に持ってくる。そしてたたむために両手でパンツをつかみ… 「…スペアというのが勘違いで使用済みという可能性もあるわね」 心で思う前に自分の口が意味不明の言語を口走る。 なっ…どうしたというの私…この部屋に充満する瘴気に当てられたとでもいうの!? で、でもその可能性もあり得ないというわけじゃないし…一応確認しないと。 こ、恋人に穢れたパンツを穿かれるなんて我慢ならないもの。 両手に力が入る。 パンツを自分の顔の近くまで持っていき一呼吸。 義務よ…恋人の… どこかの莫迦が言っていたような言葉を思い浮べながら私は意を決した。 「スン…スンスン…」 臭わないわね…やっぱり未使用… いや、まだ分からないわ。もっと近くで… 私はパンツを鼻に近付けていく。そしてついに… 「何してんのーアンタ、きんもー!!」 「!!?!?」 パッとドアの方向を見るとそこにはパンツの持ち主の妹、高坂桐乃がいた。 「あっ…えっ…? あ、ああああ…」 世界がモノクロに反転する。 な、何なのこの状況。 不快なほどの笑顔でm9(^Д^)プギャー をする女と パンツを鼻に押し当て完全に固まってしまった私。 ベルフェゴールが因果律を弄んでいるかのような最悪な展開が、今ここにあった。 &br()&br()&br()

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