あやせのしっぽ



あやせのしっぽ


桐乃にちょっとした悪戯をしてくれた黒猫の奴に、俺はほんの些細な仕返しをしてやった。

さすがにコスプレ衣装とはいっても、あのしっぽは無いだろ。
黒猫もしっぽを引き抜かれた時にはさすがに痛みと恥ずかしさとで涙を流していたので、俺は軽く涙を拭ってやったりしたんだが、今度は妙にもじもじとして、あいつはどこか上の空で家路についてしまった。

その結果、黒猫のお手製のネコミミとしっぽが、俺の部屋に残っているわけ。

さて。
これ、どうしたらいいだろう。

さすがに俺が装着するわけにいかない。
それはいくら何でも変態すぎるだろ。

うーん、なんとか有効活用できないかな、これ。

俺の手の中でくねくねしている黒猫のしっぽを前に思案に暮れ居ていたら、ふとネコミミメイド服のあやせの姿が浮かんだ。

いいじゃん!いいじゃん!すげえじゃん!
ネコミミとしっぽを装着したラブリーマイエンジェルあやせたん!
これが、萌えの力ってやつか!

思わず俺はあやせの携帯に電話していた。


トゥルルルルル・・・
ケータイの向こうで呼び出し音が鳴っている。

あ゛、そういえば今日桐乃があやせと一緒にモデルの仕事って言ってなかったか?

やばい、万一桐乃にバレたら、鬼と化した妹様に半殺しにされるんじゃないのか?
そのことに思い至った瞬間に、
「はい?」
と、訝しそうなあやせの声が聞こえていた。

「あ、新垣あやせさん?」
かるーく、キョドる俺。

「桐乃のお兄さんですか?」
やばい、めっっちゃ怪しんでる。

「あ、いや、えっと、桐乃、居る?」

「いえ、もう撮影は終わって帰り道です。
 何の用事です?」


「いや、その・・・

 この間は、ありがとうな。桐乃のこと。
 あいつのこと、大切に思ってくれて。
 おかげであいつを連れ戻す事ができたよ。」

とりあえず、あやせの注意を桐乃で逸らす。

「そうですね。私も桐乃が帰ってきて安心しました。

 ・・・向こうで二人きりのときに、
 まさか桐乃に手を出したりしてないですよね?」

いかん。
やっぱり俺、あやせに完全に妹に手を出しかねない鬼畜兄貴と勘違いされたままだ。

「さ、さすがにそんなわけ無いだろ。
 俺の妹への愛は海よりも深いんだよ。
 そんな肉欲に拘るような陳腐なものじゃないんだよ。」

「・・・」
あやせが押し黙った。
ん、俺、なんか間違えたか?


「それよりさ、おまえら、もう桐乃の帰国祝いってやった?」

「え?」

「いや、ほら、桐乃の奴、予定より早くかえってきちまったからさ、学校でぎくしゃくしてなきゃいいんだけど、って思ってさ。」

「・・・実は、まだなんです。」

言いにくそうに、あやせが答えた。
もしや、以前のように桐乃は微妙な立場になってしまったりしているのだろうか。
沈黙で答えてしまった俺の考えを悟ってか、あやせが答えた。

「いえ、桐乃が留学から突然戻ってきてってことで、クラスで孤立してとか、そういうことはないんです。
その、なんというか、戻ってきたのもあまりに急なことだったので、帰国祝いも準備ができていなくて。
本当に桐乃が心から喜んでくれるようなお祝いをしてあげたいんですが・・・」

なぜか俺はほっとした。

そこで、俺は先ほどから考えていた、あることを持ちかけてみた。

「そうか。
 それなら、実は、ちょっとしたアイディアがあるんだが。桐乃の奴が喜びそうな。

ただ・・・」

「ただ・・・何です?」

「いやね、以前にEXメルルのフィギュアをプレゼントしたこと、覚えてる?」

「はい・・・忘れるわけがありません。
あのとき、私にとんでもない事をさせようとしましたよね?あんないやらしい服を!」

「いや、あれは純粋に桐乃が喜ぶ事をだな・・・」
っていうか、おまえもおまえで加奈子に随分なことをした覚えがあるんだけど。

「それはわかっています。
 あのとき桐乃、本当に喜んでくれましたから。」

そうだろうよ。件のEXメルルフィギュアはあいつの秘密のスペースに、それはそれは大事に飾られてる位だからな。
表の友達の中で、本当の桐乃を知ってなお、桐乃のことを大切にしてくれてるんだからな、おまえは。

「まあ、あのときは加奈子がメルルのコスプレをしてただろ?」

「今度は私にEXタナトスのコスプレをしろと!?」
ふつ、ふつ、と、ケータイの向こうで綾瀬の逆鱗的なものが刺激されているのではないか、という雰囲気がするが、ここは焦らず言葉をつづけることにした。

「いや、流石にそれはいくら桐乃でも引くだろ?」

とは言ったものの、メルルコスの加奈子に、質量を持った実体だ、3Dカスタム妹だ、とハアハアしてたくらいだから、もしあやせがタナトスコスをしたらそれはそれで桐乃の奴はめちゃめちゃ喜びそうだが、それは言わないことにする。

「そうですね。そこまで非常識な事は、いくら桐乃のためとはいえ、私には・・・」
だが加奈子に逃げられたときに備えてタナトスコスを用意していたあやせの事だ。
もし、それが桐乃が一番喜ぶことだ、と、言われれば、やりかねないだろ。

「ま、まあ、流石にそういうエロい事をやれってわけじゃなくて、ネコミミメイドで桐乃をもてなしてやる、ってのはどうだ?」

「やっぱりコスプレじゃないですか!!!
 死ねえええええええええ!!!!」

「ちが、落ち付けって!!
 ちゃんと話を聞け!!

 実はな・・・」

そうして、俺は問題のない範囲で桐乃が裏の友人にもらったネコミミとしっぽに大変ご満悦であったこと、その友人からお揃いの黒猫Ver.のネコミミセットを入手した事を伝えた。


「まあ、確かにコスプレ、と、一括りにしてしまえばそうなんだが、たかがネコミミだ。
ねんどろいどとか、かわいいって、おまえも言ってたよな。
 全部とは言わないが、少しはあいつの趣味に理解を示してやってほしいんだよ。
 かわいいもの、だったら、まだ許せるだろ?
 桐乃が茶トラなら、おまえが黒猫で、一緒にそろったらかわいいと思うぜ?」

「そうですね。
 桐乃が喜んでくれるのなら・・・
 その程度であれば、私はかまいません。」

「そうか、ありがとうな。」
ほんと、いい奴だよ、おまえ。

「で、いつ、それをすればいいのですか?」

「うーん、そうだな。
 さすがにおまえも、まさか外でそんな格好するわけにいかないし」

「当たり前じゃないですか!」

「だよな?
 じゃ、たとえばさ、今度うちに桐乃と遊びに来るときに、桐乃に内緒で準備しておくってどうだ?」

「それなら、大丈夫です。
 実は今日、撮影が終わった後、桐乃の部屋に遊びに行かない?って話もあったんです。
 でも、肝心のお祝いをどうしようかってのが決められなくて、また今度にしようって、話になってしまっていて・・・

 でも、お兄さんのおかげでなんとかなりそうです。
 桐乃には私からうまく言っておきますから、今日これから伺います。」

「そ、そっか。」

こいつ、桐乃のためとなると、実に積極的になるのな。

そんなわけで、あやせが我が家に来ることになった。

そういえば俺、あやせに着拒されてたんじゃなかったっけ?

黒猫のしっぽを手の中でもてあそびながら、そんな疑問をつらつら考えていたところ、暫くして、呼び鈴がなった。

玄関を開けると、あやせがいた。

何故かあやせのイメージに無い黒のゴスロリ系の服装だったが、それも似合っているあたり、さすがは読モといったところか。

「お、おう、久しぶりだな。」

「そうですね。」

淡々とあやせが答えた。
相変わらず何かしたらぶち殺しますよオーラは健在だ。

「そういえば、なんでおまえ、真奈実とケータイ交換してんの?」

いや、それでこの間は助かったんだけど、ふと、疑問に思ってそう聞いた。

「また田村先輩ですか?」

ん、俺、なんかまずいこと言ったかな。
あやせの言葉の端に、何かを非難するかのようなとげとげしさを感じた。

「あ、いや、
 ・・・なんでもありません。」

「そうですか。」

「そういえば、桐乃はどうしたんだ?」

話を逸らそうと、あやせと一緒に仕事を終えたはずの桐乃のことに話を移した。

「こんどは桐乃ですか!?」

なぜかあやせがますます不機嫌になる。
……どうすりゃいいんだよ。

「私は先に帰ってきたんですけど、桐乃は池袋で撮影のあと、なんでもその、趣味の買い物をするとかで。」

んー、そうなのか。
でも、秋葉原じゃあるまいし、池袋でどうするつもりなんだ?

「どっちにしても、ここじゃなんだから、まあ、あがってくれよ。」

いつまでも玄関先というわけにいかないので、とりあえず居間に通すことにした。

「さすがに桐乃の部屋に勝手に入るわけに行かないからさ、こっちで。
あ、いまお茶でも入れるから。」

「ありがとうございます。」
ソファに腰掛け、淡々とあやせが答えた。

そういえば今、この家にはあやせと俺と二人っきりなんだな、と思うと、変にテンションがあがってくる。
間違えてもラブリーマイエンジェルあやせたん!とか言い出さないように自重しよう。

「ところで、なんでおまえゴスロリなの?」

ふと、さっきから疑問に思っていたことを尋ねてみた。

「いえ、桐乃に見せてもらったねんどろいどのキャラクターにネコミミのキャラクターが居て、なんでもネコミミをつけるときはこういう服を着るものだ、というので。」

なにを吹き込んでるんだ、あいつは。

「で、桐乃とお揃いのネコミミって、どんなものなのですか?」

「ん、あ、ああ、
 これ、これね。」

黒猫の置いていったネコミミを渡す。
あやせがそれを手に取り、しげしげと眺めている。

ふと、ぴょこ、と、ネコミミが動いた。

「きゃ!」

小さな悲鳴をあげて、あやせが思わず俺に抱きついてきた。
オーマイマイ、ラブリーマイエンジェルktkr!

そういえば、いつぞやの桐乃と黒猫と沙織のお手製メイド喫茶の会の時に、黒猫のネコミミがぴょこぴょこと動いていて、桐乃がやたらとツボに入っていたっけ。

「あ、これ、動くらしいんだよね。」

無駄に落ち着いた俺の言葉に、ふと我に返ったあやせが、真っ赤になった後俺を突き飛ばしながら言った。

「わ、私になにするんですか!」

って、俺のせいなの?

「な、なんにもしないって。
 ま、まあ、よくできてるだろ?」

「・・・そうですね。
 これ、電池でうごくようになってるみたいですね。」

「だ、だろ?
 まあ、それ、つけてみろよ」

俺は努めて冷静を装った。
もう一つ、動くのがあるんだよね。

「こう、ですか?」

「そうそう。鏡見てみる?」

「そうですね、お借りしてもよろしいですか?」

「いいよ、こっちだから。」

そう言って、あやせを洗面台まで案内する。

風呂場に隣接した洗面台のミラーに、ネコミミのあやせの姿が映る。
しなやかな黒髪と白い肌に、それはやたらと似合っていた。

なかなかどうして、黒猫に負けず劣らず可愛らしい黒猫だ。
引っかかれそうだけど。

鏡の中のあやせのネコミミが、ぴょこん、と、動く。

「あ、これ、かわいいですね。」

「だろ?」

そこで俺は続けて言った。

「それでさ、ネコ、って言ったら、しっぽがあるよね?」

「はい?
ええ、そうですけど・・・」

「でさ、あるんだよね、しっぽ。
 桐乃もネコミミと一緒にしっぽもつけてたんだよね。」

「そう、なんですか?」

「結構可愛かったぞ。」

「・・・やっぱり桐乃が好きなんですね。」

ざわ、と、あやせからぶち殺しますよオーラが発せられる。

「ん、まあ、ともかく、
 あやせもつけてみない?しっぽ。
 きっと桐乃も喜ぶと思うぞ。」

「・・・桐乃のためなら。」

「そうか、そう言ってくれると思っていたよ。」

後ろ手に持っていたそれをあやせに渡す。

「へええ、なんだかかわいいですね。
 そういえば結構太くて長いんですね。」

くね、くね、と、うごくそれを掴んで、あやせが言った。

「まあ、人間サイズだからな。」

エロゲやアニメには否定的だが、ネコとか、かわいいものに対しては、素直にかわいいと思えるんだな。

「ところで、これ、どうやってつけるんです?」

「ああ、それはね、はじっこの部分をお尻に・・・」

俺の目線を追って、あやせがしっぽの端の部分を見る。
その形状と、俺の説明から、あやせはその装着方法を悟った。

「っ!!!人になにをさせるつもりなんですか!?

 こっ、この、変態!!変態!!変態!!!」

耳まで真っ赤にしてあやせが俺に殴りかかってくる。

しかもグーで。
いくら女の子のか細い手とはいえ、全体中が乗ってくると、流石に痛い。

それはそれで、

って違う違う。
ここで負けるな、俺。

「ま、まあ、そう言うなよ。
 確かに俺もそう思う。

 だがな、これを作った奴によると、より精巧にリアルなしっぽらしさを追求した結果、これしか方法が無いそうなんだよ。

 これはな、桐乃の友達がな、桐乃のためにって、作ったものと同じものなんだよ。
 言ってみれば、おまえと同じく、桐乃によろこんでほしくて、じゃないか。
 だから、桐乃を喜ばせるためにも、これをちゃんとつけてやってくれないか?」

「・・・わかりました。
 もう、ここまでやったんです。
 だったら最後まで、やります。」

あやせは、そう、決意した。

まず、あやせの尻に浣腸を施す。

衛生のためと、しっぽを円滑に装着するために、必要なのだ。
腸の違和感に、あやせの白い肌が少し血の気が引いているようだ。

「あの、お手洗いをお借りしていいですか?」
もじもじしながら、あやせが言う。

「ダメだ。」
かわいそうだが、俺はそう答えた。

「お兄さん、お願いです・・・おなか、痛いです・・・」

「もう少し我慢してくれ。
 全部出さないと、ちゃんとこれを着けることができないんだよ。」

「そんな・・・」

あやせはたまらず涙目になる。
だが、これだけはきちんとしておかないと、後が大変なのだ。

10分が一時間にも、それ以上にも感じられた。
ふるふると震え、腹の中のそれと戦うあやせの表情が、だんだん力無くなってくる。
最初は、きっ、と、俺を敵のような目で見据えていた視線が、だんだんと力無くなり、やがて、懇願するようなまなざしになってくる。

「もう、いい、ですか?」

「おねがいです、このままだと・・・」

「んん・・」

あやせの目から虹彩が消える。
ただそれを堪えるためだけに脳が働き、うつろな表情になったところが頃合いだ。

「もう、いいよ」
にこっと、微笑み掛けてあげると、あやせの瞳に潤いが戻る。

トイレを終え、すべてを出し切ったあやせが戻ってくる。
悔し涙を流したのだろうか、目元が少し赤く腫れている。

「お兄さんは酷い人です」
そうあやせは言うが、俺に殴りかかる気力までは取り戻せない。

「仕方ないだろ、しっぽを着けるには、ちゃんと中まできれいにしないといけないんだから。桐乃の前で無様なことになるのはいやだろう?」

「うう・・」
そういわれては、あやせも言い返す術はない。

「じゃあ、これ、着けようか。自分でできる?」

「やります。
 っていうか、あなたに着けてもらいたくないです。」

気丈に言い放ったあやせは、立ったままスカートの中にしっぽの装着部を潜り込ませる。

もぞもぞと、それを臀部にあてがい、なんとかそこに押し込もうとするが、うまく入らない。

暫くの間、しっぽと格闘するあやせ。
しかし、うねうねと生き物のように動くそれが、彼女の股間でだらしなく振り回されるだけで徒労におわった。

「やっぱり無理・・・」
先ほどまでの痴態を恥じる様に屈辱の色をにじませた声で、あきらめの言葉をつぶやいて彼女の手がとまった。

力の無い恨めしそうな目で俺を見る。

「手伝うよ。」
優しさを装ってあやせに言う。
しかしあやせはダメ、ダメ、ダメと繰り返しつぶやくだけだ。

その手元で、しっぽが力無く、くねくねと動いている。

「桐乃に喜んでもらいたいんだろう?」
桐乃の名に、あやせが反応した。

「お願い、します・・・」

俺はあやせをソファに浅く腰掛けさせ、両膝を立てさせた。

「もうちょっとお尻を手前にだして?」

「・・・はい」
俺の言葉に従ってあやせが尻をこちらに向ける。

「じゃあ、スカートを膝のところで持ち上げてて?」

指示通りにすると、スカートの中から清楚な白の下着がのぞいている。

「入れる部分が見えるように少しめくっていいかな?」

こくん、と、無言でうなずいて応える。
おそらく、感情を殺した表情をしているだろう。
なるべく彼女の顔を見ないようにしながら、俺はなるべく装着部位外の恥ずかしい部位が見えないようにパンツをめくりあげる。

「く・・・」
あやせは短く言葉を漏らす。

あやせの繊細なそれは排泄という機能を担った部位とは思えないほどに綺麗だ。
美少女はお尻の穴も綺麗なんだなとか、アイドルはうんちしないよ位の間抜けな感想を漏らしそうになり、俺は努めて平静を装って、尻穴にしっぽの装着部の先端をあてがい、押し込む。

むり、
と、先端部が挿入されると、
「ぐぅ」
と、音ともつかない声を上げる。

「先っぽが入ったから、少しずつ、入れてくからね?」
と、あやせに確認する。

彼女は情けない声を上げないようにと、両手を口許にあてがって、少し涙をうかべて、こくん、こくん、と、うなずいている。

この様子なら、大丈夫だろう。

俺はしっぽを一段一段あやせの中に押し込む。
腸管の中に押し込まれるその度に、あやせは臀部を揺らし、喉を震わせるような声を漏らす。

「もうすぐ、終わるからね。ちょっと力を抜こうか?」
最後の部分が抜け落ちないように、ひときわ大きくなっているのだ。

彼女が尻穴を弛緩させた瞬間に、最後の一段を押し込む。

「かはっ」
あやせは耐えられず、両手を離して声を漏らした。
がくがくと膝が、そして彼女の身体が震えた。
既に目元から涙があふれており、嗚咽をもらし続けている。

俺はあやせの頭に、ぽむ、と手を置き、
「終わったよ。」
と、伝える。

その瞬間、悦びの表情であやせが俺を見つめた

それから暫くして、桐乃が帰ってきた。

「ただいま」

桐乃は相変わらず、ぶす、っとした表情を気取っているが、膨らんだ鞄と微妙に喜びを隠せない表情に、どうやらいいことがあったらしいことがなんとなくわかる。

俺はソファに座ったまま、
「桐乃、あやせが来てんぞ。」
と、友人の来訪を告げた。

「うそ、マジで?マズっ。」

慌てて鞄の中身を奥に押し込む。
恐らくあやせに見つかるとまずい類のものを買ってきたのだろう。
池袋にもそんな店があるんだな。

「・・・って、あんた、なんか変なことしてないでしょうね?」

「しねーよ。
 居間で待たせるのも悪いんで、おまえの部屋に通しといたぞ。」

「あっそ、ありがと。」

そういうと、桐乃は階段を掛けあがっていった。

よっぽど嬉しかったんだな。

そりゃあそうだよな。
海外で独りぼっちでがんばるために、大好きな友達と連絡を取らないって縛りをして、それでいろいろ無理になって、帰ってきて、それでも喜んで迎えてくれた友達だもんな。


まず、桐乃の歓喜の声が我が家に響きわたった。

暫くして、桐乃が階段を掛け降りる音がした。

最後に、俺の後頭部に桐乃のドロップキックが炸裂し、俺は気を失った。

翌日、まだ痛む頭をさすりながら、昨日の俺はどこかおかしかったんじゃあないか、
と思いながら、家を出た。

道すがら、真奈実が手を振っている。

「きょうちゃーん」

「おう」

いつも通りの朝の風景。

桐乃の人生相談をきっかけに、俺の中で「普通」という言葉の意味合いが変わった。
本当の意味で本当に普通で、大切なこの日々。


だが、今朝はちょっとだけ違った。

「ねえ、きょうちゃん?」

「ん?」

「きょうちゃんって、その、お尻とか、好きなの?」

ぽっと、頬を赤らめて真奈実が言った。

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最終更新:2010年06月27日 23:23
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