4-274

「ん、ここか。意外と普通の家だな」
ここが何処かというとだな。黒猫の自宅なわけだ。
初めて来たんだが、本当に家から近いんだな。普段使わない方向だから気がつかなかったぜ。
何でこんな事になってるかというと、ゲー研に顔を出したら瀬奈から黒猫が学校を休んだ事を聞いて、急ぎのクラスの配布品があるから渡しに行って欲しいと頼まれたわけだ。

門扉から玄関までが数歩の二階建て一軒家。我が家よりちょっと広いか?ってくらいの、いわゆる中流家庭の家だな。
玄関脇に呼び鈴があったので、俺は門を開けて中に入った。

りんご~ん

・・・・・・・・・・・・
留守か?一人で寝てるとか、ありえるな。
もう一度呼び鈴を押して誰も出なければ、ポストに配布品を入れて帰るつもりだった。

りん
・・・・・・パタパタパタ
「誰よ!」
ご~ん
ナイスなタイミングだよ。愛想の無い威厳高なわりに元気の無い声で、黒猫がドアを開けて顔を出した。
「よう。風邪だって?だいじょうぶか?」
俺は極めて愛想良く話し掛けたつもりだったが
「何であなたがここに居るのかしら?」
黒猫の愛想が良いとは限らねぇよな。思いっきり不機嫌オーラを出してるぜ。まあ、風邪を引いてる時に愛想の良いヤツってのも珍しいとは思うが。たださ・・・・・・
「しょっぱなからそれかよ。瀬奈に急ぎのプリントを届けるように言われて来ただけだよ。具合が悪い時に尋ねてきて、悪かったな」
それだけ言って帰ろうとしたんだ。もちろん、プリントは手渡したぞ。
「ん・・・・・・」
ところが、だ。
黒猫が俺に抱きついてきた。
「そ、、、う。。。ありが、、、と・・・・・・」
いや、俺に向かって倒れこんできたんだ。高熱で、本当に寝ていたらしい。
「おい、だいじょうぶか?家の人は?」
俺は、黒猫のおデコに手を当てて問い掛ける。
「うち、、、共働き、だから。私、、、ひとりよ」
息も切れ切れに言う。結構熱いぞ、お前。
「すまなかったな。
ちょっと上がらせてもらうぞ」
俺は黒猫を抱きかかえて・・・・・・いわゆる「お姫さまダッコ」だ・・・・・・家の中へ入っていったんだ。


「よう。お前の部屋、どこだ?」
入ったはいいが、初めて来る黒猫の家だ。右も左もわからねぇ。これが麻奈美の家なら目を瞑ってでも歩けるんだがな。
「二階の、右側・・・・・・」
俺の問いかけにすら辛そうだな、おい。憎まれ口すら利けないのか。そんな状態で出迎えたのか?
俺は二階へ上がっていった。部屋が引き戸で助かったぜ。こいつのイメージじゃないけどな。
部屋に入って驚いたね。なんつうか・・・・・・桐乃の部屋の押し入れがそのまま部屋になったって感じ。
「ジロジロと、見ないで、、、ちょうだい」
「ああ、スマン」
憎まれ口に素直に謝ったが、やっぱいつもの迫力がねえな。部屋の奥、窓際に置かれたベッドに、俺は黒猫をそっと横たえた。
「ギリギリ、合格、ね。あなたにしては、上出来だった、わ」
だからよ。息も絶え絶えになってまで憎まれ口を叩くか、ふつう。
「おい、着替えられるなら着替えた方がいいぞ。それと、薬を飲んで寝ておけ」
倒れかかってきたから部屋までは運んだものの、家の人が居ないんじゃさすがにヤバいだろ。俺はだから、見舞いもそこそこに帰るつもりでいたんだ。
だけどさ。帰ろうとした俺の制服の裾を、黒猫のやつが掴むんだ。

「着替え・・・・・・出して。クローゼットの中にあるから」
そう言って、部屋の入り口の脇に備え付けられたクローゼットを黒猫が指さした。まあ、着替えを出してやるくらいはいいか。
俺はクローゼットを開けた・・・・・・予想はしてたけどな。黒いドレスがズラ~っと掛けられてたんだ。
「余計なものは、見ないでちょうだい。着替えは、チェストの上から二番目の引き出しよ」
はいはい。余計なところは開けねえよ。俺は、言われた二番目の引き出しから、一番上にあったパジャマの上下を取り出した。着替えるならついでに、と思って黒猫に問い掛けた。
「タオルはどこだ?着替えるなら、身体も拭いておけ」
「・・・・・・・・・・・・」
心配しただけなんだが、なんで言い澱むんだ?
「おい、聞いてるのか?」
「・・・・・・一番上の引出しよ。余計なところを見たら殺すからね」
小声で聞き取りづらかったが、わかった。一番上だな。チェストの上に替えのパジャマを置いて、俺はその引出しを開けたんだ。

・・・・・・・・・すまんかった。
タオルはあったよ。あったけど、そのほかに・・・・・・その、小さく丸められたショーツが綺麗に並べられていたのも目に入っちまった。余計なところってのは、この事か。
俺は、見なかった事にしてチェストを閉めてパジャマとともにタオルを黒猫に渡してやった。
「ほれ。一人でできるか?できるなら外へ出てるぞ。まだ帰らねえから、終わったら声かけろ」
「・・・・・・・・・殺してやるっ」
ああ。元気がねえけど、言いたい事はわかった。見たよ、見ましたよ。
「わかったわかった。元気になったらな」
いつもの事だ。俺は軽く流して、黒猫の部屋から出て外で待つことにする。

十分ほど外で待機していただろうか。俺は、ドアの外から黒猫に声をかけてみた。
「お~い。まだか~?」
しばらく待ってみたが、ウンともスンとも言わねえ。俺は、あいつの機嫌が悪くなるのを承知でドアを開ける事にした。。。開けてよかったよ。
黒猫は、着替えの途中で前かがみに倒れてたんだ。
「おい、だいじょうぶか?」
さすがに慌てたね。意識があったのは幸いだったけど・・・・・・
「やっぱりだめだわ。。。兄さん、お願い。薬を・・・・・・キーボードのところにあるから」
おれは言われたところにあった薬袋と、処方箋を黒猫に渡した。
「・・・・・・・・・・・・」
おい。薬袋を見て、熱が上がったのか?顔が真っ赤だぜ。
黒猫が、薬袋を俺の方へ差し出した。俺が飲んだってしょうがねえだろ?と思って見てみると・・・・・・

座薬

・・・・・・・・・俺にどうしろと?いや、マジでさ。


「だ・・・・・・誰にでも頼む、ってわけじゃ、ないんだからねっ。。。はっ、はっ、はっ・・・・・・」
お前の顔が紅いのは、病気のせいか?羞恥のせいか?
「いや、俺だって使ったことはないんだがな」
といっても、かなり具合が悪そうだ。あまり時間もかけていられない。黒猫の潤んだ瞳が、なんかこう誤解をしてしまうような雰囲気を醸し出してるのも確かなんだよな。
「とりあえずうつ伏せに寝ろ」
って俺の言葉に文句も言わず素直に従うってのは、よっぽど悪いんだろう。ただな。この時俺は、ヘンなスイッチが入っちまったみたいなんだ。
「脱がすぞ・・・・・・」
俺は、わざと黒猫の耳元で宣言してやった。さらに顔が紅くなったのは、間違いなく羞恥のせいだろう。
おれは、まだ着替えの終わっていないパジャマの下と一緒に、ショーツも捲り下ろした。驚いたね。
女の下着が汚れやすいってのは知ってはいた(もちろん、その手の本の知識だ)けど、ここまでとは・・・・・・体調を悪くして、フロにも入ってねえのか?
けど、不思議と汚いとは思わなかった。なんでだろうね。

「尻・・・・・・持ち上げるぞ」
再び耳元で宣言してやったのは、間違えなく黒猫を羞恥で追い込む為だ。心持ち幼児体型の残るお腹の下に腕を差し込んで、下半身だけ膝立ちさせる。いわゆる、伏せのポーズだな。
「み・・・・・・見ないで、、、兄さん」
見ないでっていわれてもなあ。見なきゃ座薬なんて入れられないだろ。もっとも、その他の部分もこのポーズなら丸見えだけどな。
陰の唇とはよく言ったものだ。口を横に真一文字に結んだ唇にそっくりだよ。そこは淡いピンク色をしていて、桜餅のようだったね。
パジャマの下とショーツが膝の上でくしゃくしゃになっていて、膝は閉じられてるのに腿と腿の間には隙間が開いている。その先に見える下腹部には、翳りの「か」の字も無かったんだ。
それも余計に桜餅のように感じた原因だと思う。ホント、そこだけプクッと盛り上がっていて震えてるんだよ。

汚いとは思わなかったが、さすがにそのまま触れるのは憚られたし、こいつも嫌だろう。
俺は周囲を見渡すと、パソコンラックにウェットティッシュがあるのを見つけた。
「ちょっとそのままでいろ」
そういって、ウェットティッシュを何枚か抜き取ると、人差し指に巻きつけた。
今度は宣言なしに、まだ少女の面影として硬さを残す黒猫の尻タブを割って、お目当ての腔にウェットティッシュを巻いた指を差し入れようとした。
「ひっ!」
黒猫が可愛い悲鳴をあげた。やべぇ・・・・・・加虐心が湧いちまう。
けど、肝心の腔の方は、変に力が入って窄まってしまった。とりあえず、周辺だけ拭き取ってみるが、ウェットティッシュはそれほど汚れていなかった。

調子にのった俺は、だから前の方・・・・・・黒猫の、秘密の唇の方にも指を伸ばしたんだ。
「あっ、そっちは、、、違う。バカッ・・・・・・何、やってるのっ!ヘンタイっ!!!」
何をしたかって?それは・・・・・・

秘唇を指で開いて、顔を近づけていったんだよ。
臭かった・・・・・・想像以上に臭かった。そりゃそうだよな。フロに入ってない女のアソコだもんな。
しょんべんの渇いた饐えた臭いと、乳臭い子供っぽい臭いに混じって・・・・・・強烈な臭いは、あとになって欲情した牝の臭いだと知ったんだけどさ。
「座薬、とは、関係ないところ、でしょう。覚えて、なさい。あとで、ぜったい・・・・・・殺してやるっ、から」
黒猫が何か呟いてるんで耳をかたむけてやると、そんな憎まれ口を叩いていた。
だけどさ。。。
いつも高飛車でツンとすまして憎まれ口を叩いている黒猫でも、こんな牝の臭いをさせてるんだと思うと、そこはかとなく親近感が湧いたのも事実だよ。

だから俺は、黒猫の耳元でこう言ってやったんだ。

「いい匂いだぜ。お前でも、こういうくっさい臭いをさせるんだな」
「っくっっ・・・・・・ウソよ。昨日から、おフロにも、、、入ってない、もの。臭い、だけでしょ。それとも、兄さん、っはっ、、、そういう、臭いっ、がっ、好きな・・・・・・ヘンタイ、なの。
知らなっ、、、っかったっ、わ・・・・・・」
黒猫が息も絶え絶えに憎まれ口を返す。息も絶え絶えなのは、俺が黒猫の秘唇の中を、ウェットティッシュを巻いた指で刺激してるからさ。
病気の熱のせいだけじゃないのは、指が外側のヒダと内側のヒダの間を滑らせてる時に、内側のヒダが縒り合わさったところにある肉芽に触れる時に息を詰まらすからわかるよ。
俺は、黒猫のそこを弄りまわした。いや、最初は掃除のつもりだったんだけどさ・・・・・・察してくれよ、わかるだろ。

ひと通り撫でまわすと、俺は一度指を引き抜いた。後ろの腔と違って、こっちはだいぶ汚れていた。臭かったのは、これのせいじゃないのか?
恥垢とかスメグマとかいうんだろ、これ。
「臭ったのは、これのせいだろ。お前・・・・・・自分でシてないのか?」
羞恥を煽るために、指に巻いていたウェットティッシュを広げて黒猫の目の前に差し出した。
「・・・・・・・・・・・・」
効果覿面ってのはこの事だろう。真っ赤になって枕に顔を埋め、首を横に激しく振る黒猫なんてのは、滅多にお目にかかれるもんじゃないと思うぞ。
俺は、汚れたウェットティッシュを丸めて捨てると、綺麗になった黒猫のそこへ再び顔を近付けていったんだ。
もう臭くはなかったぞ。牝が発情するいい匂いはしてたけどさ。
「ひっ、なっ、なに・・・・・・ぁんっ!」
だから、そこに口を付けるのにも躊躇いはなかったよ。それに、黒猫の、だもんな。
「あっ、あっ、あっ・・・・・・ざ、座薬とはっ、関係ぃっ、ない、のにぃ。。。」
言葉では抵抗してるけど、元々体調がよくない黒猫の身体には力が感じられない。それでも、身体の方は反応して、肉芽が少しづつ膨らんできている。

「あっ、はっ、、、はっぅ、っくぅ、、、・・・・・・」
黒猫の息遣いが荒くなってきた。憎まれ口も少し前からなくなっている。
「はっ、はっっ、、はっぅ、、、ぁん、、、ぁうぅぅ・・・・・・」
黒猫の膣腔は、俺の唾液とは別のもので濡れ始めている。
「に、兄さん。。。なんっ、何かっ・・・・・・ヘン、、、ヘンに。。。」
その言葉に、俺は肉芽を舐め・吸っていた舌を、膣腔に捩じ込んでいったんだ。
「ひゃっ、はぅう~~、ぅん、くぅ~~っぅ!!!」
そんな嬌声とともに、全身に力が入り、俺が膣腔に捻じ込んだ舌を締め上げて、黒猫が絶頂を迎えた。
俺は、本来やらなきゃいけなかった事を思い出した。座薬を入れるんだったよな。

薬袋から座薬を1錠取り出して、挿入れる準備をする。黒猫はまだ絶頂の余韻で、まだ全身に力を漲らせているからな。これじゃ、さっきと一緒だ。
「はっ、はっ、、はっっ、、、はぁ、はぁぁ、、はぁぁ~~~ぁ・・・・・・」
呼吸が戻ってくると共に落ちそうになる腰を、再度お腹の下から腕を廻して降りないようにする。
力が入っていない膝を無理やり立たせて、尻タブを割った。力の抜けるタイミングを見計らって、予告もなしに一気に座薬を挿入してやった。
「ひゃっ、んっ・・・・・・」
いまさら力んでも遅いよ。もう、薬自体は後門内に納まっちまってるって。
でも、入り口で止まってちゃダメなんだよな、こういう薬って。
だから俺は、もう一度力みの抜けるタイミングで、人差し指を捻じ込んでやった。
「あっ、ああ~~ぁ」
人差し指の第一関節までスッポリと納まった。やっぱ、結構熱いな。
指先に薬が当たる感じがする。それを、少しづつ奥へ押し込んでやる。
「あっ、あっ、あっ、、、ぅんっ、っんっ、、んっぅ・・・・・・」

最終的に、俺の指は第二関節まで挿入っていったんだ。

「ぁん。。。」
俺が指を抜くと黒猫は軽い奇声をあげたが、よく見ると寝ているのか意識を飛ばしたのか、それ以外の反応はしない。
「そういえば、熱があるんで座薬を使ったんだよな」
俺は、そこでようやく冷静になれたんだ。病気の黒猫にこんなイタズラをしちまうなんて・・・・・・と、後悔したね。

でもさ。コレを読んでるアンタならどうするさ。
いつも威厳高ですましてる黒猫が、伏し目がちに座薬を差し出してきたんだぜ。熱のせいとはいえ、目を潤ませて火照らせた顔でさ。
我慢できるヤツが居たら見てみたいね。そもそも、そんなヤツはこんなところでこんな駄文を読んでねえダロ。俺ぁ、そう思うね。
最後の一線で踏みとどまった事の方を褒めて欲しいくらいだ。
・・・・・・ゑ?ヤるなら最後までヤれって???俺は、そこまで鬼畜じゃねえよ。

と誰に向かってだかわからないノリツッコミをしてても始まらねえな。黒猫は、パジャマの下とショーツを膝のところでくしゃくしゃに下ろした状態で、下半身丸出しだ。
俺は、クローゼットから新しいタオルと、ついでにその横に整理されている替えのショーツと共に取り出してくると、黒猫の両脚からパジャマとショーツを抜き取った。
俺の唾液と黒猫の愛液でベトベトになっている割れ目を、新しいタオルで拭き取ってやりショーツを穿かせたあとで、。着替えとして出しておいたパジャマの下も穿かせてやる。

あお向けにひっくり返して身だしなみを整えて、布団をかけてやったところで黒猫が気がついた。
「「・・・・・・・・・・・・」」
黒猫は布団を引っ張りあげ、顔を半分隠して俺の方をジッと怨みがちな目で見ている。
桐乃に観せられたアニメ、新世紀エバンゲリオン?の主役の少年の気持ちがよくわかるぜ。俺ってサイテーだな。でも、逃げちゃだめなんだよなあ?
「あ・・・・・・」
「とりあえず、お礼を言えばいいのかしら?薬のおかげで、だいぶ楽になったのは間違いないから」
俺の事を睨みつけながら、とりあえず礼を言ってくれた。
「でも、された事は忘れないわよ。姦られなかった事には一応赦しておいてあげるけど、いいように弄んだ事は事実でしょう。
座薬を差し出したのは私だけれど、それ以外の事をお願いした覚えは無いわ」
「す・・・・・・」
「謝らないでちょうだい。ひとつ貸しにしておいてあげるわ」
そう言うと黒猫は、ベッドから足を下ろし起き上がる。
「今日はもう帰ってちょうだい」
取り付く島もないとはこの事だと思うが、俺がやった事を考えればしょうがないだろう。俺は素直に従った。

俺が部屋を出て行こうとすると、黒猫がついてくる。
「お、おい。見張ってなくても帰るからさ。ムリするなよ」
俺は気遣ったつもりだったが
「この家に私一人なのよ。あなたが帰った後に、誰が玄関の鍵を閉めるのかしら?」
ごもっとも。
俺たちは、無言で玄関まで降りていった。
「じゃあな。お大事に」
「忘れないでね。ひとつ貸しですからね」
黒猫との付き合いもこれまでかなぁ。玄関の扉が閉まり鍵を締められた時俺は、ボンヤリとそんな事も考えていたんだが・・・・・・。

ゲホッ、ゲホッ・・・・・・
翌日、俺は風邪を引いていた。理由なんか、考えなくたってわかるわな。
「大丈夫?京ちゃん」
隣で麻奈実が心配そうに声をかけてくる。
「ああ、何とかな」
口ではそう言うが、よくまあ今日一日持ったもんだってくらい気分はよろしくない。
昇降口を出たところで、同じく帰り支度の黒猫と鉢合わせた。俺は気まずかったので声をかけないでいると、黒猫の方から挨拶をしてきた。
「こんにちは、田村先輩」
「こんにちわ。黒猫ちゃんも、いま帰り?」
俺とは目をあわそうとしないで、麻奈実と挨拶を交わしている。どういうわけか、黒猫は俺たちを無視しないで一緒になって帰路を歩いている。
「先輩は風邪ですか?気をつけたほうがいいですよ」
問い掛けてるのは、麻奈実にだ。俺の事は、鉢合わせた時から無視を通しているが、麻奈実とは珍しく会話をしている。

そのまま俺たちは、いつもの分かれ道についた。いつもなら、三人別々の道に別れるところだ。だけど、黒猫は俺と同じ方向に歩いていこうとする。
「約束しているのよ。だから、ついでに送っていってあげるわ」
ん?桐乃とか?
「そっか。じゃーねー、黒猫ちゃん」
そう言って麻奈実だけが俺たちと別の道に帰っていく。
二人きりになったところで、俺は恐る恐る黒猫に問い掛けた。
「桐乃と約束でもあったのか?」
無視されるかと思ったが
「ないわ、そんなもの。田村先輩への方便よ」
そんな事を言いながら、黒猫はスタスタと俺の家への道を歩いていく。
「ひとつ貸しって言っておいたでしょう。昨日の事なのに、もう忘れたの?」
そう言って俺の方へ振り向いた黒猫が、カバンの中の巾着袋から取り出したのは・・・・・・

俺が昨日黒猫に使った座薬のパッケージだった。俺の背筋に、風邪とは違った悪寒が通り抜けた。
黒猫は、俺の家への帰路を急ぐ。
「早く帰りましょう、兄さん。ちゃんと私が治してあげるから」

その日、帰宅してからの事は・・・・・・また別の話だ。
ああ。しっかり搾り取られたよ、黒猫に。おかげで翌日には完治してたけどな、風邪は。

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最終更新:2010年03月20日 08:35
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