6スレ目756


「先輩。」
「ん?なんだ?」

登校中、突然黒猫に声をかけられた。
今日は麻菜実がなにか用があるらしく、先に行ってしまったので珍しく一人での登校。
久しぶりの「二人っきり」という状況に、内心びくびくしながらも、それを悟らせぬよう、努めて平常心を心がけた。

「今日の放課後、先輩のうちに行ってもいいかしら?またデバッグ、手伝ってほしくて。」

とのこと。家という閉鎖的な空間となると、なんというか期待、じゃないがどうしても「あの出来事」がフラッシュバックしてしまう。
と言っても、デバッグとか将来に関わるような事を言われると、そんな下らない下心の為に断ることなんて出来ない。
もともと断る気なんてないんだけど。可愛い後輩の頼みだし。

「ああ、わかった。昇降口んとこで待ってるよ。」

そもそも桐乃もいるかもしれないし。期待してるような事にはならんだろう。

「...そう。ありがとう。じゃ、また放課後。」

とりあえずそういう事になったので、そこはそのまま黒猫と別れた。
色々不安はあるが、男という生き物は、というか俺はそうとう馬鹿に出来てるみたいで、なんとなくフワフワした気持ちで教室へ向かうのだった。
だってあれだ、その...キス...してくれたわけだし。悪い感情じゃないはずだろ??



我ながら大胆なことをしたと思う。
実際凄く緊張していたんだけれど、顔には出てなかっただろうか。

「......はぁ」

デバッグに付き合ってほしいのはホント。コンテストが終わった今、まだ瀬菜にも見せてない新作のゲームがあるのだ。
彼女と割といい協力関係が築けている今、あの男に協力を頼む必要なんて無いのだけれど、今回はしっかり、100%自分のものが作りたいのだ。
瀬菜に頼るのは最後の最後にしたい。
...というのも結局は言い訳なのだけれど。

彼に「アレ」をして以来、二人っきりになるのはこれが初めてだ。あっちもそれはわかっているだろう。
...さっきも平静を装ってたつもりなんだろうけどモロに顔に出てた。スケベな顔が。
まぁ悪い気は、しない。自分もあわよくば、みたいな気がないわけでもない。

でも、ある訳でもない。

先輩はなぜかモテる。妹も、きっとそう。多分沙織もそうだ。あの地味な眼鏡もそう。他にも知らないだけで、何人かいるかもしれない。
もし私が、「そう」なってしまったら色々波風が立つだろう。そんな酷い事にはならいないとは思う。彼女たちはそんな人たちでは無いとわかっているし、信じている。
でも怖いものは怖いのだ。そもそも先輩だってだれが本命かは分からない。

今日はただ、そんなふわふわした気持ちに決着をつけたいだけなのだ。

そんな...言い訳なのかもしれない。これも。
デバッグなんて逃げ道まで用意して、自分はなんて馬鹿な女なんだろう。

「......はぁ」

ため息をつきながらも、陰鬱な気分とはほど遠い、不思議な気分のまま、教室へ向かった。




授業が終わった。

今日も一日、なんら変わった事は無く、普通に授業を受けて、普通に麻菜実と飯を食って、また普通に授業を受けた。

「麻菜実、すまん、今日は用事があるから一人で帰ってくれ。」
「ん、なんの用事?すぐ終わるなら待ってるけど。」
「いや、そんな早くは終わらないと思う。黒猫のやつにゲームの手伝い頼まれてて。」
「......ふーん。分かった。頑張ってね。」
「おう。ごめんな。」

あんな事もあったし、そんな状態で麻菜実と3人で、となるのもちょっとアレなので、今日は先に帰ってもらう事にした。スマン。
...あいつちょっと不機嫌だったな。なんでかわからんけど。今度なにか奢ってやろう。

そんなこんなで昇降口で待っていると、程なくして黒猫がやってきた。

「...ごめんなさい。待った?」
「いや、全然。今来たところ。」
「...その返しはなんかキモいからやめて頂戴。」
「ぐは......」

酷いヤツだ。じゃあなんて返せというのだ。
コイツほんとに俺の事が好きなのだろうか。...ん、いや、好きなの?そもそも。

「んじゃまぁ、そろそろ行くか。」
「ん」

コクン、と頷くとそのまま俺の後ろに着いて歩き出す。

......桐乃、いないといいな。



道中。

「今回はどんな奴つくってんの?」
「今回もノベルゲーム。世界観も基本的には変わってないわ。ただ前の評判の悪さもあったし、今回はなるべく分かりやすいのを心がけてストーリーを書いたわ。
正直書いてて凄く悩んだし、あんまり楽しくもなかったけど、それでもしっかり、私の書きたいものが伝わるように頑張ってみたの。そういう点も含めて、
色々見てもらいたくて。」
「ふーん...そうか。楽しみだな。」

相変わらずこういうことになると饒舌な奴だ。そういう所もなんだかクリエイター然としていて凄いと思えるし、それに、可愛くも思える。

「変だと思った所は遠慮なく言って頂戴。私のためにも。」
「おう。熊谷さんばりに言ってやるよ。」
「そ...それはちょっ...いや。そうして頂戴。」
「お...おう...」

いや、自分で言ったがそこまではさすがに出来ない。
あそこまで非情に徹することができるなら俺は編集者になれる。無理や。

そんなこんなで、で家に着けば非常にテンポがいいんだが、現実は甘くない。家まではもう半分と言った所。
なんとなく、会話も途切れてしまう。

「......」
「......」

あー、困った。どうしよう。バレないようそーっと黒猫に目を向ける。

「......なによ。」

ばっちり目が合った。

「い、いや...」

情けない。なんて情けないんだ俺。
もうここは男らしく、直球勝負でいくしかない!そう、
「この前のキスのことだけど...」
みたいな感じで!行くぞ、行くぞ俺!
息を吸い込む。

「n.......」
「ねぇ。」
「は、はぃぃ!?なんでしょうか!?」

しまった。被った。なんかみっともない声を出してしまった。

「??なんかあるなら先にどうぞ?」
「いえいえ、なんでもありません。先にどうぞ、姫。」
「そ...気持ち悪いわね...」

いちいちこいつは傷つく事を...

「こ、この前の...事だけど...」
「お、おう...」

この前のってその、キス...の事だよな?やっぱこいつも気にしてたのか?
まぁそりゃそうだろうけど。
いかん、ドキドキしてきた...

「そ、その...ね?あれは、別に...そういう事じゃ、いや...そういうことでも...」
「お...おぅ......」

やばい、なんか俯いて赤くなってる黒猫マジ可愛い。ヤバい。
なんだこれ、俺の後輩がこんなに可愛い訳がないってか?
いや、ヤバい。ほんと可愛い。マズい。可愛すぎてマズい。
そしてうろたえる俺マジカッコワルイ。ほんとヤバい。

「あの時は...コンテストに無事間に合ってゲームができて浮かれてたというか舞い上がってたというか、その時に助けてくれた先輩がすごく大きく見えたというか、なんというか違うの。」
「...おう。」

大きく見えた、か。
え、今は大きくねえの?

「すごくフワフワしてたというか、そんな時にいざ行かんという先輩を見て、なにかしてあげようと思ったら咄嗟にああしてしまったというかああなってしまというか...」
「おう。」

不本意だったってこと?
なんとなく、自分の中の熱が引いて行く気がした。全部俺の、俺だけの勘違いだったのか、と。

「で、そんなフワフワしてる自分がすごく嫌で、作業してる最中も余計な事を色々考えてしまって。このままじゃマズいと思って、今日こうして誘ったの。」
「おう。」

そう、か。こいつは俺以上に悩んで、苦しんでたのか。自分の軽薄さが嫌になる。
こいつが本気でゲームに取り組めなくなってしまったというなら。それは解決してあげなきゃいけない。
俺の役目はそういうもんだ。そう、そういうものなのだ。

「でもデバッグを手伝ってほしいのも本当よ?こうして悩んで作った作品にも、なにか新しいものが宿っていると思うの。でも、その...アレが別に...」
「いや、大丈夫。分かった。俺もさ、いきなりキスなんてされてちょっと浮かれてた。あれはまぁ、忘れることはできないけどさ、アレはアレだ。」
「......うん。」
「お前もさ、色々大変だったんだろ?そうやって出来たゲームだ。デバッグもしっかり付き合う。」
「......うん。」
「俺も色々考えたけどさ、お前のゲーム作りに協力してやれる関係ってのもさ、大正解だと思うんだよ。」
「......うん。」
「だからそんな気負うな。いつもみたいに俺を馬鹿にしながら、あーでもないこーでもない言ってりゃいいんだよ。」
「うん。」

そんなこんなで、今度こそ家に着いた。
いいだろう。今日は時間が許す限り、いや、許さなくても、こいつが満足するまで、とことん付き合ってやろう。



先輩の家に着いた。

どうやら桐乃はまだ帰ってきていないらしい。

「おじゃまします。」
「おう、入れ。飲みもん持ってくるから先部屋上がっといてくれ。」
「わかった。」

いつも通りのやりとり。
そうだ、こうやってネジを巻き戻すための、今日。

久しぶりの先輩の部屋。
桐乃が海外に行ってた間を思い出す。私はこの、先輩のベッドに寝っころがって、二人並んで作業をしたのだ。
いつも通りにする、と言ったのだ。今日もそうしなきゃいけない。胸がキリキリと痛いけど、我慢しなきゃいけない。
私がそれを望んだのだから。

「おまたせ。お茶でよかったか?」
「ええ、ありがとう。後で飲むわ。」
「おう。んじゃ、さっそくするか?」
「...ええ。お願い。」

少し体をずらして先輩のスペースを空けて、ちょいちょいと手招きする。
ここでまた、「脚でも揉んでくれないかしら?」なんて言えたら100点だったのだけれど。そこまでの余裕は無かった。

先輩は少し顔を赤くして、困ったような表情を浮かべたけれど、意図を理解したのか、しっかり、私の横でうつぶせになる。

「どれだ?」
「ん、これ。」

アイコンをクリックしてプログラムを呼び出す。黒の背景にタイトルがデカデカと躍る。

「はは、今回もお前らしいな。やっぱり。」
「悪かったわね、同じようなのばっかで。」
「い、いや、悪い意味じゃねえよ...」
「ふん、御託はいいからさっさとやって頂戴。」
「はいはい...っと」

いつも通り。先輩もしっかりゲームに集中して、デバッグという名のテストプレイに入る。
私も並んでディスプレイを見つめる。いつも通り。いつも通りの私たち。

のはずなのに。

やっぱりそう簡単に、割り切る事なんてできなくて。
寝そべる布団の感触が。隣の先輩の香りや、真剣な顔が。私をどうしようもなく切なくさせる。

...もう一度だけ、キスができたらいいのに。

いや、一度だけじゃなく、もっと。そして今度は唇に、私のを重ねることができるのなら。

それはどんなに、気持ちの良い、幸せなことなのか。

そんな邪念が振り払えない。

「なぁ。」
「...なに?」

突然声を掛けられた。下心、悟られなかっただろうか。少し不安だ。

「ここなんだけど。」

画面を見ると、立ち絵の位置がズレている。プログラム構文のミスだろうか。後で直さなきゃ。
うん、ゲームに集中すれば、どうやら平常心でいられるみたいだ。
もともとの目的はこっちだ。...そういう建前だが、今はそっちの方が楽。気を引き締めよう。

「あら、あとで直しとくわ。メモっとかないと...」

ベッド脇に置いた鞄からメモ帳を取り出して該当箇所を書き留める。
その時、少し肘が当たってしまった。先輩はあからさまに反応したが、ここで私が反応したら負けだ。
続けよう。


それから数時間。メインの1ルートの見直しが終わった。

「どうだったかしら?」
「うん、前のやつに比べて話も大分分かりやすかったし、なにより、しっかりハッピーエンドになってる。キャラクターの心情も前より明るくなってるし、あの吸血鬼の女の子?不覚にも萌えてしまった...」

おぉ、好感触。このハッピーエンドは正直無理矢理というか、前の教訓を踏まえて、自分の意志を曲げてまで持って行ったシナリオだった。
それがこうも絶賛されてしまうといよいよ、自分の感覚と世間のズレというか、そういうものを感じてしまう。
しかしやはり、プレイヤーに喜んでもらえるのは何ものにも代え難い満足感がある。
そしてその吸血鬼の女の子は桐乃がモデルだという事は可哀相なのでいわないであげておこう。

「そう...悪い所は?」
「やっぱ言わなきゃ駄目か...ま、お前のためにならんしな。」

本当に、優しい人だ。脇役ヅラの唐変木なのに。

「少し文章のテンポが悪い感じがしたな。説明臭いというか。世界観上仕方が無い気もするんだが、まぁそれが正直な感想。」
「そう、ね。分かったわ。どうもありがとう。」
「いやいや気にすんな。どうだ?良くなりそうか?」
「ええ。おかげさまで。最終チェックは瀬菜に頼んでまたどこかに出してみる。」
「おう、頑張れよ。これで全部か?」
「いえ、あと2ルートあるわ。同じぐらいの長さで。」
「うぉ...まじか。どうする?やるなら付き合うぞ?」
「また今度でいいわ。何時までかかるか、分からないし。」
「そうか...」
「......」
「......」

終わってしまった。なんだか気まずい空気が流れる。
前の私はどうやって切り上げていたのか、全く思い出せない。
先輩の温度が名残惜しくて、離れる事ができない。離れ、られない。
頭が働かない。


「黒猫?」
「......」

胸が痛い。もうこのまま時間が止まればいい、なんて安い考えまで浮かぶ。
苦しくて苦しくて仕方が無い。

「飲み物でも飲むか?」
「......」

もうなにがなんだかわからなくなって、なんだか頭に血が上ってクラクラする。
だからつい、飲み物を取りに立ち上がる先輩の服の裾を掴んでしまった。

「...黒猫」
「ちょっと...待って。もう少し。」
「なんで泣いてんの...?」
「え...?」

自分でもわからないうちに涙が出ていた。
訳がわからない。こんな自分嫌だ。なんてめんどくさい女なんだろうと、先輩は思っているかもしれない。
そんなことを思うと余計に止められなくなってしまって。

「先輩。違うのこれは違うから。ちょっと待って。ゴミが入っただけ。」

馬鹿な言い訳だ。こんなの典型的な構ってちゃんじゃないの。この私に、こんな愚かな部分があるなんて思っても見なかった。
嫌で嫌で、嫌だ。嫌だ。先輩、今はお願い。放っておいてほしい。構ったりしないで。優しくなんてしないで。
そんな風にされたら、私はおかしくなってしまう。

だからお願い......!!

「黒猫。」
「嫌っ、駄目...!」

やっぱり駄目だった。先輩はこんななった女の子を、放っておくような人ではない。
大した抵抗も出来ず、腕のなかに包まれてしまった。
暖かい。どうしようもなく安心する温度。

だけど、嫌だ。

こんなズルい方法でなんて嫌だ。


「なぁ、どうしたんだ?お前ずっと、なんだか上の空だったみたいだしさ。言ってくれよ。力に、なるから。」
「い、嫌だっ...」

言える訳なんてない。ずっと横の先輩が気になって、下心が疼いて、変な気分になってました、なんて。
いつも通りになるって言ったのに。そうなりたかったのに。

「...分かった。じゃあ言うまで離さんからなっ」
「なっ...!嫌っ、それは困る!変態!離せ!鬼畜!」
「なんとでも言え!俺は言ったら聞かない子なんだよ!」
「くっ......」

本当に、ズルい。私も大概そうだけど、あっちもズルい。もう逃げ場なんてないではないか。
どうすればいいかなんて一つしかないではないか。

想いを全部伝えるしか。

「うっ...ぐすっ...っ......」
「え、ちょっと待って。そんな嫌だったか!?俺臭い!?え、臭い!?キモい!?」
「ぐすっ...馬鹿...じゃないの??...臭いしっ...キモいわよっ...変態っ、死ねっ...ぐすっ...」
「ぐはっ...で、でも絶対離さないからな!そんなに不快ならもう言うしかないんだからな!分かったか!」

もう、駄目だ。我慢なんてできない。
後の事なんてもうどうにでもなれだ。この馬鹿な先輩は言わなきゃ離してくれないのだ。
それに私ももう、止められないぐらい、馬鹿になってるんだ。

「分かった...言うからね?...ぐすっ、絶対に逃げないで聞くのよ...?」
「おう。任せろ。」
「..........す、好きっ...なの...」
「.........え?す、すまん、もっかい頼む。」
「死ねっ...だから...先輩がっ...んっ...好き、なの...」
「Oh......]
「Oh......じゃないわよっ...!」
「イテっ...」

本当に、先輩はどうしようもなく先輩で。好きで好きで、たまらない。


「先輩は...『お前のゲーム作りに協力してやれる関係ってのも大正解』って言ったわよね?」
「あぁ。」
「『も』って言ったわよね?」
「あ、あぁ...」
「...じゃあゲーム作りの関係じゃない大正解ってなに?」

この期に及んで私はやはりズルい女だ。ここまで来て私から言うのを避けるなんて。
もうどんだけビビりなのって。こんなの桐乃に言ったらどんだけ罵倒されるか分からない。

「...おう。よく聞けよ?二度は言わないぞ。」
「うん...。」



「お、俺がお前の彼氏になって、しっかりみっちりお前のお、お手伝いをするんだよっ!!」



思わず、笑ってしまった。
お手伝いってなによ?それにしっかりみっちりって、なんでそんなエロっぽい表現なのよ?
それでもやっぱり、嬉しくて。こんな幸せがあっていいのかと思うぐらい幸せで。

「ドモりすぎよ...馬鹿。」
「す、すまん...緊張してつい...」
「それにみっちりってなによ...変態。」
「い、いや、それに深い意味はなくてですね...」
「私の彼氏に...なってくれるの...?」
「あぁ。それはもちろん。よろこんで。」
「浮気したら挽肉にするわよ...?」
「が、合点です...」
「キス、しても...いいかしら...」
「おう...」

そのままゆっくり、唇を重ねた。



長い、長いキス。もう何分こうしているのだろうか。

お互い息を荒げ、舌を絡め、唾液を交換する。
初めての感覚に戸惑いながらも、馬鹿みたいに夢中になって、キスをする。

途中で、桐乃が帰ってきた気がする。この馬鹿は気付いているだろうか。
気付いていて、しているのだろうか。だとしたら、あの女のエアリード能力には感謝しなくてはならない。

「ん...はぁ...っ.......」

気持ち良い。こんなに気持ちがいいのはやはり好きな人とだからなのだろうか。
こういうシーンも、小説の中で書いた事があったけれど、これほどまでに想像を越えて行くものだったとは。
体が熱い。切ない。全身が切なくて、むずむずして、我慢できない。
先輩にしがみつく腕に力が籠る。

「黒...猫...?いや、瑠璃のほうがいい?」
「どっちでも...いい。」
「それ、結構困るな...んじゃ、瑠璃で。」
「...分かった。」
「瑠璃、体...触るぞ。」

先輩の手が、ワイシャツの中にするりと入ってくる。

「...っ!!」

ただお腹や脇腹を撫でられているだけなのに、悲鳴を上げたくなるような程の快感が私を苛む。
嘘でしょう。本当に撫でられてるだけなのに。胸にだって、まだ触れていない。そんなところに触れられたら一体どうなってしまうのだろうか。

「だ、大丈夫か?」
「ん...だい...じょうぶ...だから、も、もっと...お願い...」
「...っ、分かった。」

もっとお願い、だなんてなんて事を言ってるんだろう。いつも先輩には変態変態言ってるけれど、これでは私の方が...変態ではないか。
そもそも付き合ったその日に、なんて、もしかしたら私はとんでもなく淫乱なのかも、しれない。
それともこのぐらい、普通なのだろうか。分からない。でも今はもうこのままで...


「服脱がすぞ。」

頷いて答える。正直声を発する余裕なんて無い。
先輩はぎこちない手つきで、ワイシャツのボタンを外して行く。なんだかそれが可愛くてつい、抱きしめてしまう。

「うおっ...ちょ、瑠璃、それじゃできない」

そんなの、知らない。先輩の頭が胸に当たって、なんだかむずがゆい。声や吐息の一つ一つも、確実に私の性感を高めて行く。
程なくして、ボタンを全部外す事に成功したらしい先輩。私の下着を見てなんだか変な顔をしてる。

「おまっ...黒って...」
「う...悪かったわね...好きなのよ、黒が...」
「いや、いいんだけどそれさ......めっちゃエロい。」
「...っ!い、いいからはやくしなさいよ変態っ...」
「お、押忍...」

外し方分かるだろうか、とか心配していると、びっくりする程すぐ私の下着は取り払われた。なんか変な才能でも持っているのだろうか。
妹のブラで練習とか...していたら嫌だ。折檻の必要がある。
とか変な事を考えているといきなり、ぬるっとした感触が胸を襲う。

「ひぁっ...!んっ...あぁっ...!」

そんないきなり舐めなくてもっ...!さんざん愛撫で焦らされたせいか、なんというか、凄かった。
頭が真っ白になって、その、下半身が熱くなるみたいな...これがイクってことかもしれない。

「瑠璃...イった??」
「し、知らないっ...わよっ...くわえたまま喋らないでっ...んぁ...!」

今度は甘噛み。もう片方への愛撫も忘れない。優しく、柔らかい、愛のある手つき。ほんとになんなのだろうこの人は。
もう胸だけで何回イったのか分からない。頭はぼーっとしているのに、下半身は灼けるように熱い。
さっきからふとももに当たっている先輩のモノが微妙な刺激を与えてきて切ない。

「せ、先輩...??」
「なに??」
「し、下が...その...えっと...」
「下?......あっ、と、おう。分かった。」

太ももに手が伸びる。そのまま、感触を楽しむように秘部のギリギリまで行っては戻り、行っては戻りを繰り返す。

「お前、脚めっちゃキレイだな...」
「う...んっ...あっ......ありがとう...あっ、ん...!!」

ちゅっ、と脚に口づけが飛ぶ。足先から太もも、付け根まで、もう片方も。
それでも、一番大事な所には触れてくれない。わざとやってるのかたまたまなのか知らないが、その焦らし攻撃で、
あそこは自分でもわかるぐらいとんでもない事になっている。触れてほしくてたまらない。頭がおかしくなるぐらい、欲しい。


「ねっ...ねぇ!!先...輩...??」
「ん?どうした...?」
「あの、その...えっと...」
「え、なになに?どうしたの?」

愛撫を中断して、私の言葉に耳を傾ける先輩。そんなところで止められたらおかしくなる...!
下半身の熱があり得ないほど加速する。早く、してくれないと。失神してしまうかもしれない。

「せっ、先輩!」
「う、うおっ、なに!?」

先輩の頭を引っ張って、耳元に口を寄せる。


「んっ...あぁっ...は、はやくっ...下さいっ...!!」


もう、恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
でもそれ以上に早く、欲しい。あそこまでしっかりお願いしたのだ。くれないと、困る。

「触るぞ。」
「んっ...はいぃ...!早く、してくださいっ...!」


ひた、と指が触れる。


「んんんっ...!い、いやっっ...!!あっ...ん...!!ぃっ......!!!!」

ただ、触れただけなのに。今までで一番大きな絶頂。
ドクン、ドクンと、断続的な快感が下半身を襲う。

「せんっ...ぱい...せんぱいっ...!」

抱きついてキスをする。作法なんて何も無い、貪るようなキス。はしたない、キス。

「先輩...わたしっ...はしたないですか......?」
「いや、そんなことないぞ。すっげえ可愛い。」
「ほんと...?嫌いにならない...?」
「あぁ、当たり前だろ?」
「そっ、か......ねぇ、先輩?そろそろ......」
「あぁ。わかった。」


私はもちろん、先輩のももう準備は万端。
おずおずと取り出したそれは、想像してたよりずっと大きくて、グロテスクだった。
でも、不思議と愛おしい、みたいな。
初めての怖さもあるけど、それより先輩と一つになれる、という期待の方が数段に大きかった。

「痛かったら言えよ??ゆっくりするからな?」

先輩は大きく屹立したそれを、私の濡れそぼったモノにあてがった。
そしてゆっくりゆっくり、腰を押し進める。

「いっ...ん...あっ...!」

痛い、けど、想像してたよりはずっと平気だった。
十分な前戯の賜物か、もしくは過剰に分泌された脳内麻薬のせいか。両方かもしれない。

「せん...ぱい...?私は...大丈夫だから...好きに動いてっ...」

余裕なさげに頷くと、先輩は一気に腰を突き出した。

「ひっ...いっ...!!」

やっぱり少し痛かった。けどしっかり繋がれた安心感というか多幸感で、そんなものは吹き飛んだ。
もっと、もっと欲しい。先輩にも気持ちよくなって欲しい。
先輩に合わせて、私も一生懸命腰を動かす。先輩より先に何度かイってしまったのがすごく申し訳なく感じた。

「せんぱい......?どうっ...!ですか...っ?」
「すげえ気持ち良いぞ...す、すまん、もうちょっとで...イきそう...」
「んっ...あっ...はい...わかりましたっ...ん...早くっ...!私もっ...もうちょっと...!!」

先輩のスピードが上がる。私もなんだか、頭が真っ白になってきて...

そのまま二人で果てた。



事後。

「あああぁぁぁぁぁあああああぁぁ......」
「瑠璃?どうした?」

なんだか奇声を上げている瑠璃。一体どうしたというのだろうか。

「どうした?じゃないわよ...!途中で桐乃が帰ってきたの気付かなかったの?」
「なん......だと......」

shit!!なんということだ。いや気付いてたんなら教えてくれよ。まぁ止まれやしなかっただろうけどさ...

「私もその場に流されてつい最後までしちゃったけど、あの女に聞かれてたなんて思うと...あぁぁぁあああぁぁぁあ......」
「俺も...一体何を言われたもんか......」

これは結構由々しき事態だ。客観的に見ると俺は妹の友達に手を出しちゃった変態兄貴なわけだ。

「でも...先輩...?これを間違った事だなんて思うんじゃないわよ?」
「おう。それは分かってるよ。桐乃にもしっかり話して理解してもらおう。」
「ええ。沙織にもね。」

ま、でも俺たちはこうして晴れて結ばれたわけで。少々困った事態を抱えることにはなったが、後悔なんかは微塵も無い。

「瑠璃。」
「なに?」
「これからもよろしくな。」
「...ええ。もちろんよ。あなたは私と契約してしまったのだから、もう逃れる事はできないのよ。」
「あー...そういやあったなそんな設定...」
「む...なによそれ...」
「ま、細かい事はさておいてさ。ほんとよろしくな?駄目な男だけどさ。」


頷く瑠璃の頭を俺はそっと撫でた。


「ところで。」
「うぉっ、おわりじゃ無かったの?キレイにまとめたと思ったのに!」
「なんの話をしているの?一体...」
「で、なに??」
「と、突然思い出したのだけれど...さっき私...」
「な、なんだよ...」
「し、しし、してもらうばっかりで私からはなにもしてあげてないわよね...?」
「......え?」
「つ、次は期待してても...いいから......」

「な!!!なんですとおぉぉぉぉ!!!!!」






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最終更新:2010年11月22日 19:43
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