クンカの世界へようこそ!(中)


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「何なのよもうっ!」
部屋から出たアタシは自分の部屋に紙袋をぶん投げ、すぐさま階段を下りていく。
アイツが家にやってきたってことは下には兄貴がいる。
取り合えず、蹴っ飛ばして釘さしてやらないと。
そうでもしないと妹がいる家でとんでもないことをしでかしかねない。
「エロゲ展開はエロゲの中だけでしてろってーの!」
あームカツクムカツクムカツク!!
てかあの淫売メス猫…何するつもりなのどういうつもりなの。
あのうろたえ具合、絶対その気ある。
付き合いはい・ち・お・う・認めたわけだけど何?
いきなり大人の階段2段抜かしとかで上っていく気?ふざけんな!
「………しかも見られた」
そう、そこだ。目下の大問題は。
見られた。プレシャス(兄貴パンツ)回収後のチャージングGOを。
さっき揺さぶったし、これからのこと考えればまだ影響はないかもしれない。
でも、絶対あとで何かある。
アイツの駄作漫画以上のことしてるって知られたんだ。
一生揺さぶられる。それこそ一生あの馬鹿といるかもしれないから質が悪い。
あの邪気眼に一生逆らえない?何その悪夢!?

………まぁアイツがそこまで卑劣だとは思わないけどさ。
なんだかんだで秘密にしてくれそうでもある。
本気の本気では人に恨まれることはできないのだ。夜のなんちゃらとか言ってるけど。
だからあの馬鹿と付き合うのも認められた。
「でも…」
それとこれとは別。
やっぱ怖いし、何より弱みを一方的に握られたというのが気に食わない。
「どうしよう…」
階段はすでに下りきったが、そこから足が進まない。
リビングに兄貴がいるというのはすぐ分かった。
「いくら付き合ったからっていきなり何か変わるわけじゃねーよな!
でもちょっとは…そう、足をスススーといくくらいは。いやでも…」
独り言でか過ぎ。てかマジ殺す。

考えがまとまらないけど、
このアホ発言を聞くのも耐えられないので、ノブを手にかける。
…これを開けたら兄貴は上に行ってしまう。
どうしようもないのに…
「馬鹿猫もすぐには開けられなかったのかな…」
ポツリとそう漏らす。
最後の言葉であれだけ動揺してたんだ。
絶対、入る前もそういうことは脳裏によぎったに違いない。
そうあの馬鹿猫も…
………いや、ある。あるかもしれない。
分の悪い賭けだけど起死回生の一手が。
兄貴の部屋から出て行く時、アタシは図らずともトラップを仕掛けていた。
…弱みを握られたのなら握り返せばいい。
あの馬鹿猫を…堕とす!

《ガチャッ》
「独り言、外まで漏れてるんですけど。きもっ!」
「き、桐乃!?い、いたのか!?」
「あんたマジ淫獣。妹いる家で何しようとしてんの」
「独り言?淫獣?な、なんのことです?」
目がバタフライしてるってーの、馬鹿。
まぁいいわ、今はせいぜい妄想してればいい。
「出て行ってほしい?」
「え?」
「2人きりになりたいんでしょ?アタシの言う事聞いたら外に用事足しに行ってあげる」

…よし。これで準備完了。
これで兄貴は軽く見積もっても20分は帰ってこない。
兄貴とはコンビニの新作スイーツを買ってくることを条件に家を出て行く取引を交わした。
わざわざ近場ではなく遠くの店のをだ。コンビニ限定だから誤魔化しようがない。
少し渋っていたが、帰ってくるまでアタシが黒いのを相手にすること、
そういうものを持ってくれば黒いのも喜ぶかもよと言ったらなんとか出て行ってくれた。
…なんかムカツク。でもまぁいい。
アタシは慎重に階段を上がり、兄貴の部屋のドアの前に立つ。
そして、ドアに耳を当てそっと息を殺した。
神経を集中させる。衣擦れすら聞き逃してやらない。
数年間、兄貴の行動を聴き続けた妹イヤー。こんなとこで使うとはね…

聞き耳を立てると、「でも…」やら「やっぱり…」を繰り返しているのが聞こえた。
それに加え、やたら衣擦れの音が聞こえる。
え、何?悶えてんのコレ?これ今入っても勝てるんじゃね?
…いや、まだ弱い。焦るな高坂桐乃。のど元に喰らいつかないと。
アタシはドアを開けてしまいたい衝動を堪え、聞き耳を立てることに再び集中した。
パンツの恨みは、こんなんじゃ収まらないのよ。

(それにしても遅いわね…………全く…莫迦な雄だわ)
しばらくすると、そんなことを黒いのは呟き、完全な沈黙が向こう側から伝わってくる。
どうやら何か心の整理を終えたらしい。
それからいくらか待ってもそれ以降は何も聞こえてこない。
アタシの頬を冷たい汗が伝う。
「何?覚悟完了しちゃったわけ?やっぱさっき入れば…」
もともと分の低い賭け。あれで妥協するべきだったのかもしれない。
そんな後悔の念がのしかかる。それが重さを増していこうとしたその時、
(な、何を考えたの私は!?)
突然、聞き耳を立てずとも聞こえる黒いのの声が鼓膜を振動させた。
これは…と更に聞き耳を立てる。
すると幾らかの沈黙が続いた後、すっと立ち上がりどこかに歩いていく音が聞こえる。
「キタ━(゚∀゚)━!!」
小さくガッツポーズ。やった!勝った!しとめた!
部屋の間取りを知り尽くしたアタシには分かる。この歩数でたどり着く場所…
アタシが(図らずも)仕掛けた罠、出しっぱなしの棚に引っかかったのだ!
クク…クククク…
そうよね?何回も来てる部屋の違和感には勝てないよね?
それに私のさっきの行動。無視できるわけがない。
アンタはパンツに引き寄せられる運命だったのよ!
アタシマジ策士!きりりん大勝利!
(つ、次はたたまなくてはね…)
ここでもチャンス到来!急いで出てきたのがこうも上手く転がるなんて!
持った!ついに持った!よしここで中に…
(…スペアというのが勘違いで使用済みという可能性もあるわね)
!?!?!?
…何言っちゃってんのコイツ。ま、まさか…

アタシは思わずそこから立ち上がり、自分の部屋に向かった。
少し音が大きかったが構わない。気付くわけがない。
アタシも『最初は』そうだった。
自分の部屋に入り、急いでコレクションを隠している襖を開け、
エロゲーを置いてある場所の更に奥のスペースに手を伸ばす。
「君に決めた!」
アタシは勢い良く手を引き、厳重に縛られている袋を取り出す。
そして、袋をビリビリと破り、中に入っていたプレシャスを片手に兄貴の部屋の前に戻る。
聞き耳なんて立てる必要もない。今開ければアタシの思い浮かべた光景が広がっている。
バンッとドアを開き、その行動を目視するまでもなくアタシの口は言い放っていた。
「何してんのーアンタ、きんもー!!」
「!!?!?」

目の前の光景を見た瞬間は、
どんなに勉強で良い成績を取ったときよりも、陸上で自己ベストを出した時よりも、
読モで数え切れないほどの反響があったときよりも、

気持ちよかった。

どれくらい笑っただろうか。日ごろから部活で鍛えている腹筋が痛い。
黒いのはそれだけアタシが笑っていたというのに、まだ言葉らしい言葉を発してない。
ずっと「あう…」やら「いや…」やら、うわ言のように呟いている。
言い訳なんか、出来ないわよねぇ?
「パンツを嗅ぐとかwwwマジありえないしwwwきwwもwwwすwぎwww」
「あ、あなただって…」
発情期の馬鹿猫はようやく言葉を発した。思わず反論したのだろうけど…
「アーターシーはぁ、ぼろいパンツを交換しただけだっての。
パンツ嗅ぐとかアンタが勝手に思い込んでることでしょ?
あ、でもアンタの常識ではパンツは嗅ぐものだから仕方ないかー」
「うっ…」
ぐうの音も出ずに押し黙る。
さて、この光景を眺めるのも楽しいけど、そろそろ本題に入るか。
あんま長引かすと兄貴帰ってくるし。

「そんな変態な夜のなんとかさんは、こういうのが欲しくなるのかなー」
アタシは片手で自分の鼻を押さえ、
もう片方の手で汚いものを触るように指でつまんだ『パンツ』を差し出す。
「わ、私を愚弄するつもり!?いい加減にしないと呪い殺すわよ!」
黒いのは今日初めてのはっきりとした怒気を見せる。当然の反応よね。
アタシだったら即殺す。
「何いまさら怒ってんの?今更アンタが変態って事実は覆らないっての」
「で、でも…こんなっ…」
「でもなーこれ嗅いだらチャラにしてあげてもいいかなー?」

「っ!?な、何を」
「だーかーら、『妹の義務』を話されても困るってこと。
でもアンタのしたことのがバレるとしんどいでしょ?
だからアタシの要求を呑んでチャラ。分かる?」
「………」
アタシの発言に黒いのは目を見開いて固まった。
はっきり言ってこれは無意味な取引だ。
なんだかんだ言ったって、お互い見られてはいけないところを見られたのだ。
お互い何も言わずにここは終わりましょう、それが自然な流れだ。
この行為が成立すればアタシのアドバンテージが確固たるものになるけど、
普通は成立しない。そう、普通はね。
でも…
「!? な、何してるの私の右腕!静まって!」
「きゃははは!こんな場面で邪気眼とかマジ救えないですけど!」
黒いのの右手が少しずつ私が持つパンツに迫る。
道理ではあり得ないってのが分かるだろうけど、
アンタの本能は言い訳を見つけてしまったのよね?
『これでチャラなんだから』って。
「嫌、こんなの…」
アンタの発言を聞いてすぐに直感したわ。アンタは…
「な、なんで…」
私の同類よ。
アタシは黒いのには聞き取れない声で小さく呟いた。
「…ようこそ」
クンカの世界へ。





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