俺妹クンカム三国伝~BraveBattleWarriors~


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たすけて

仕事で那須にいる桐乃からメールが来た。たった四文字のメール。
アイツがこんなにストレートに助けを求めてくるなんてよっぽどの事だ。
マジモンでヤバい事があったんだろう。親父に相談するかとも思ったけど
アイツは俺に助けを求めてきたんだ。なら俺がなんとかするしかねぇだろ。
アメリカの時とは違う。那須なら俺一人だって飛んでいけるしな。
桐乃を泣かせるヤツが居たら死んでもブッ殺ししてやる。
桐乃が苦しんでるならずっと側にいて慰めてやる。
俺は兄で、アイツは妹なんだ。そんぐらい当然だろ!



「……は? 部屋が無かっただけ?」

至って元気そうな我が妹の姿に、ここにくるまで燃えさかっていた妹魂(シスコン)の炎はアッサリと消えてしまった。
いやね、本人の話だと泊まりがけのモデルの仕事だったが、スタッフの手違いで宿が足りなかったんだと。
「んなっ……紛らわしいメールしてんじゃねぇ!!」
「メール?」
「しただろうが! "たすけて"って! ホレ、これが証拠だ!!」
俺は桐乃に携帯の画面を見せる。頭に「?」を浮かべた桐乃は自分の携帯を確認すると
「ああ、間違って途中で送信しちゃったんだ、きっと」
なんの悪気もなく、いい放ちやがったよ、コイツは。
本人曰く、「たすけて」だけでなく、上に説明したような事情もメールするつもりで
つまり、俺が受け取ったメールはHelpMeではなく、ただの近況報告だったと言うわけだ。
「あ、あたしが悪いんじゃないもん! メール打ってたら急に声かけられて、それで送信ボタン押しちゃったんでしょ」
「じゃあ何か、その声がかけたヤツが悪いってのか」
「あやせが悪いわけないじゃない!」
「あやせも居るのか」
モデル仲間だから、当然といや当然か。
「何喜んでるのよ、キモッ」
「あれ? どうしてお兄さんがここにいるんですか?」
噂をすればなんとやら。ラブリーマイエンジェルあやせたんが現れた!
「もちろん、あやせに会いに来たのさ!」
「はぁ? キモッ! 何言ってんの? ウザッ! シスコンの癖に」
いいや、俺はあやせに会いに来たことにするね。今、この時点でそう決まった。
誰がクソ生意気な妹の為に那須くんだりまでやってくるってんだよ。
そんなヤツいたら見てみたいね! フツーやってこないだろ、兄貴だからって妹の為に、手持ちの金全部使ってまでよ!
「……あ」
「――ってわけでね、この馬鹿兄貴は勘違いしてわざわざココまで来ちゃってさー……」
「あ、あのー、桐乃…いえ、桐乃様」
「なによ?」
あやせに俺がいる説明をしていた桐乃が振り返る。
なんでか上機嫌なコイツに腹が立つが、今はかえってチャンスだ。
「……帰りの電車代、貸してくれ」
俺は兄のプライドを那須の地に捨て、妹に頭を下げた。それはもう、腰は90°綺麗に曲げて。
みないで! こんな情け無い俺をみないで、あやせたん!! 穴があったらディグダグしたい!



「大丈夫ですわ。2人も3人も同じですもの」
……って、なんでここに沙織(お嬢様)がいるの?
桐乃に連れられて、やってきたのはホテルではなく、立派な一軒家だった。
「だって、ここは私の別荘ですもの。桐乃さんと偶々お逢いしまして、
 宿泊の場所にお困りのようでしたから、私の別荘をお使いになったらよろしいのでは?と」
「あたしとあやせの分のホテル、スタッフが探してきても良かったんだけどさー
 沙織もこういってくれてるし? 持つべきモノは友ってやつだよねー。兄貴は頼りになんないしさ」
ぐぬぬ……好き放題いいやがって……
まあしかし、沙織の提案をよくもまあ周りのスタッフも許可したもんだ。
お嬢様モードの沙織本人もだけど、沙織の家にも社会的な信頼があるってことなんだろうが。
「くすくす…桐乃さんも素直でありませんわね」
「あ、あたしのどこが素直じゃないってのよ! ほらアンタも沙織にお礼言いなさいよね!
 那須に来てそのまま何もしないで帰るより、荷物持ちでも観光できる方がいいでしょ!」
「まて、今一瞬、不穏な言葉が聞こえた気がしたが……」
「本当なら撮影は明日の午前で終わりで、そのまま東京に帰るんですけど
 沙織さんの御厚意で私たちは那須に残ることにしたんです」
「たまたま私も明後日までここにいるつもりでしたので。
 お礼なんてとんでもないですわ。むしろ私の方がお礼を言いたいぐらいです。
 お兄様達と一緒ならいつものように退屈なお泊まりにはなりそうもありませんし」
パンと手を合わせて上品に笑う沙織。
"いつものように"か。コイツ、こんな広い別荘でも一人なんだな……
「へっ……じゃ、遠慮せずに楽しむとすっかな。荷物持ちも……ま、しゃーねぇか。
 あやせと沙織に荷物持たせる訳にはいかねーしな」
「……ウザ! はい、これあたしの荷物。部屋に運んどいて」
おい、俺の話聞いてなかったのかよ。お前の荷物を持つ手はねぇ!!
「で、お前の部屋はどこだよ」
「二階の一番奥の部屋ですわ」
「ん、わかった。ホラ、あやせも荷物寄こせよ。沙織、あやせの部屋は?」
「二階の一番手前の部屋ですわ。京介お兄様はその間でよろしくて?」
「へ、変なことしませんよね? 中を漁ったりとか…!」
「俺はどこでもいいぜ、沙織。お前の中で俺どーなってんだよ、あやせ!」



「はぁ~いい湯だな~……おっさんか、俺は」
つーか別荘のお湯が温泉ってどういうこと? 沙織マジお嬢様。
「改めてお嬢様ん時の沙織は別世界の人間だって感じるなぁ
 話してみりゃ、俺の知ってる沙織なんだけどな」
桐乃たちの話では、沙織もモデルをやらないかとスタッフに誘われたそうだ。さもありなん。
あやせは沙織に随分と感銘を受けていたようだ。
清楚なお嬢様で、性格も飾ることもなく気さくで、その上美人となれば、
桐乃とは別に尊敬の対象になるのも自然な流れってもんだろう。
「私、オタクに偏見を持っていた自分が恥ずかしいです。オタクにもあんな素敵な人がいるんですね!」
って力説してたよ。……うん、オタクモードの沙織の事は黙っておこう。
「ふー……桐乃のメールを見たときはどうなることかと思ったが……」
いっとくが、今俺が安心してるのは桐乃が無事で安心してんじゃないからな。
思いがけない幸運と、温泉でホッとしているんだからな。
「しっかし、冷静に見て、男として今日の俺ってダメすぎねぇか?
 妹に金借りそうになって、妹の友達の別荘に泊めて貰って……
 OK、ポリアンナ、今日の俺のよかった探しをしてみようじゃないか。
 今のままじゃ俺は まるで だめな おにいさん 略してマダオだからな!」
今日の俺の良い所……風呂をみんなに譲って最後に入ったこと?
「うああぁぁ死にてぇ……俺ってば完全にマダオじゃねぇか! 親父ィ、こんな俺を叱ってくれぇぇ」



ガチャ…

「あ……」
「あ……」

あたしは同時に自分の部屋から出てきたあやせと目があった。

「……あやせ、その……」
「桐乃も……だよね?」

あたしたちは同じ目的で廊下に出た。
兄貴の部屋にある、兄貴の服が目的だ。
流石に沙織の家で、浴室に侵入して着替えをくんかするのはリスクが高すぎる。
けど、兄貴は室内ではTシャツだけだったから、上に着てたYシャツは部屋にある筈。
それにここに泊まるって決めてから、コンビニで着替えのパンツとか買ってたし。
良くできた妹のあたしとしては、新品パンツとかきっと穿きづらいから、あたしが先に穿いて穿きやすくするのもやぶさかじゃない。
ふ、普段はこんなこと出来な…しないけど、あたしのメールをみて那須まで駆けつけてくれた兄貴には
少しぐらい感謝っていうか、ご褒美っていうか、そういうのがあってもいいって思うし? 今回だけ! 今回だけね!
問題はあたしと同じことを考えているこの親友の存在だ。
もしこれが兄貴の服一式なら、2人で分け合ってくんかくんかすればいい問題。
でも部屋にはYシャツ一つしかない。
ううん、違うな。
もし兄貴の服が一式あっても、兄貴のパンツは一つしかない。
最大級のプレシャスをあやせと取り合うことは避けられないんだ。

「桐乃……私はお兄さんのパンツ、3枚持ってる」

あやせが先制攻撃を仕掛けてきた。
「へ、へぇー…けっこう集めたじゃん。あ、あたしは5枚持ってるけど
 い、いっとくけど、洗濯後の兄パンは兄パンとしてカウントされないから?」

「それは当然でしょ、桐乃。お兄さんの匂いがついてないパンツは只のパンツじゃない」

「だ、だよねー。やっぱ洗濯カゴから?」
「うん。桐乃が加奈子の相手をしている間にね」
お母さん! もっと洗濯早くしてよ!
っていうかあやせスゴすぎ! 加奈子けしかけている間にパンツ獲るとか、タナトス並の知謀じゃん!?

「桐乃は……一緒に住んでるのに、ずっと前からお兄さんのをくんかしてきたのに、5枚しか持ってないの?
 ねぇ、桐乃……私はあの日から、今日までの間に3つもお兄さんパンツをゲットしたよ?
 これって、私が桐乃よりお兄さんの事を想ってるってことじゃないかな?」
「ハッ! 何を言い出すかと思えば……あやせ、あたしが兄パンを5枚しか持ってないのはね、リリースしているから!!」



リ、リリース!?
リリースってつまり……その……
「お、お兄さんの匂いを嗅いだ後、またそのパンツにお兄さんの匂いを付けるってこと!?」

「そ。あたしの匂いをつけた後にね。なんだ、あやせってば、兄パン穿いたことないんだ?」

落ち着け、落ち着くのよあやせ。
私が桐乃より経験が浅いのは分かっていたはず。桐乃なら私の思いもよらない方法でお兄さんのパンツを堪能してても不思議じゃない。
桐乃がお兄さんパンツを穿くのは分かっていた。でもそれをリリースしてまたお兄さんに穿かせるなんて……
つまり、それは……

「それってお兄さんの匂いと桐乃の匂いが混ざるってことだよね?」
「そ。兄貴とあたしの匂いが混然一体となってパンツに染みこむの! ちょー良くない?」

いい……凄くいい……
お兄さんの匂いだけでも三つ星なのに、桐乃の匂いも混ざるなんて五つ星じゃ足りないぐらいの評価だよ!
で、でもダメ! そんな気持ちを桐乃に分からせちゃ、負けを認めることになる!

「き、桐乃……お兄さん以外の匂いが混じったパンツをお兄さんパンツって言えるのかな?」

あ、桐乃ってばダメージを受けてる。ピンチの時の桐乃って本当に分かり易いな。
助けてあげたくなっちゃう。お兄さんもそうなんだろうな。
……ダメダメ、今は徹底的に叩きつぶさないと。相手は桐乃なんだから。
「私の持ってるお兄さんパンツは3枚ともお兄さんの匂いしかしない純正品だけど……」
「く……」
よし、もう一押しだ。

「その内の一枚はね、お兄さんの体育着の上にあったんだ。それって、お兄さんが沢山運動して
 沢山汗を掻いて、沢山お兄さんの匂いが染みついたパンツってことだよね?」

「あ、あやせがそんなEXレア級の兄パンをゲットしていたなんて……ッ!?
 BP20000……あたしの兄パンには対抗できるのがない! ライフで受ける!!」
桐乃はよく分からない単語を口にしているけど、とにかくダメージを受けているのは確かだ。
このまま、もっと私がお兄さんをどれだけくんかしてきたか、
語りに語って桐乃に今日のくんかを諦めさせる。勢いでなんとかするしかない。
だって、お兄さんとのくんかの思い出は、妹の桐乃の方が沢山あるに決まってる。
桐乃が冷静になったら、私の3枚のお兄さんパンツなんて吹けば飛んでしまうんだ。
「桐乃、私は……っ!」



「あら、桐乃さん、あやせさん、どうかいたしました?」



た、大変な事になりましたわ……
まさかきりりんさんだけでなく、ご友人のあやせさんまで京介お兄様のパンツを嗅いでいたなんて……
それも既に3枚もパンツを所持していらっしゃるとか。
未だお兄様パンツを手に入れていない私はなんて未熟者なのでしょうか。
「さ、沙織!? い、今の話、聞いてた!?」
「話? 何かお話をされていましたの?」
「ぜ、全然! たまたま廊下であやせとあっただけ!」
きりりんさんは、相変わらず突発的な事態には対処ができないですわね。
そんな露骨に私に確認をとっては、今まで2人でお話をしていたと言ってるようなものではありませんか。
「あの、沙織さん」
「はい? なんでしょう、あやせさん?」
「その……手に持っているの、お兄さんの服ですよね?」
あら、気づかれてしまいました。
暗がりだからでしょうか? あやせさんの虹彩に光がないように見えますわ。
「どうして……どうして沙織さんがお兄さんの服を持っているんですか?」
「いえ、京介お兄様は急に泊まることになったので着替えがないでしょう?
 脱いだ服をまた着るのは不快でしょうし。急いでコチラにきたので汗も沢山吸ってましたわ。
 ですからこれはクリーニングしておこうと浴室から、こっそり持ち出してきたのですわ。
 代わりに私が使っているバスローブを置いてきましたのでご安心を」
もちろん、クリーニングの前にお兄様の匂いを堪能させていただきましたけれど。
「へ、へー。あ、ありがとね、馬鹿兄貴の代わりにお礼言っておく」
ふふ、桐乃さん、涎が垂れておりますわ。でもこのお兄様の服は渡しませんよ?

「……どうして洗濯をするのに二階にくる必要があるんですか?」

……あやせさんは中々手強いですわね。
「それ、お兄さんのパンツですよね?」
「え? 兄貴のパンツ!?」
ズボンとシャツの間に挟んでいましたのに、気づかれましたか……
さて、どうやってここを切り抜けましょうか。
私としても、初めてのお兄様パンツを手に入れることができる機会、逃したくはございませんわ。
「京介お兄様のお召し物が一つ足りないのに気がつきまして。
 それに、桐乃さん達に不便がないか、確認して回るのも家主の務めですもの」

スンスン

あら? いけませんわ!
口を隠すつもりで手を掲げたのに、その手にお兄様パンツを持っていたせいで
お兄様パンツを間近で嗅ぐような形になってしまいましたわ!!



――嗅ぎ慣れている!!

私は桐乃とアイコンタクトをとった。
桐乃は頷く。
沙織さん、クンカーだ。
しかもここは沙織さんの別荘。地の利は確実に沙織さんにある!
その上、さっき言ったように、この別荘で沙織さんは家主――私達をもてなし、同時に行動を采配する権限がある。
桐乃の家での桐乃以上にやっかいだ。それを口実にあらゆる手段がとれる。
どうするの、桐乃!
このままじゃ、お兄さんの服が全部取られちゃうよ!

「さ、沙織にそんなことさせられないよ。兄貴の服はさー、あたしのと纏めてクリーニングしとくからさ。
 コインランドリーでさ。ほら、あたしとアイツは一応、兄妹じゃん? だから纏めて洗濯するって、うん」

桐乃……さすがだね。
まさかお兄さんの部屋への侵入を防ぐどころか、沙織さんからパンツを取り戻そうとするなんて!
そうだ、沙織さんに地の利があるなら、桐乃には妹っていう生まれ授かった立場がある。天の利を持ってるんだ!
……まずい。
沙織さんがお兄さんパンツを手に入れることは防ぐことができた。
だけど今度はお兄さんパンツが桐乃に渡ってしまった。
考えてみたら、私には沙織さんのような地の利も、桐乃のような天の利もない。
お兄さんが私に着せようとしたタナトスは最強だったけど、パンツ争奪戦では私は一番弱いんだ。
でも挫けない。
お兄さんの匂いを思いだすんだ。温かくて、優しくて、そんなお兄さんの匂いが目の前にある。
それが去っていくをの指を咥えて見ていることなんてできるわけない!
そんなの新垣あやせじゃない!
私に地の利も、天の利もないなら……人の利で勝負するしかないんだ!

「もう! 桐乃も沙織さんも優しいんだから。でもちゃんとお兄さんの意見を聞いてあげようよ?
 お兄さん、今日は勘違いしてここまで来ちゃったんでしょ? 自分が知らない内に服が無くなってたら
 また勘違いして大変な事になるかも知れないよ? ちゃんとお兄さんに言いにいこう?」



どういうつもり、あやせ?
みすみす兄パンをゲットする機会を捨てるつもり!?
「やっぱり、別荘を貸して貰って、お洗濯まで沙織さんにさせるのは私も悪いと思うし……」
「いえ、お気になさらないでください」
「そ、そうだよ。あたしたちだって手伝うからさー。あやせってば料理上手いんだよ。
 あたし、明日の朝はあやせの手料理たべてみたいなーなんちゃって。
 あたしは、下手くそだからさ、まあ洗濯はやっぱあたしの役割って感じ?
 これってさー、アレだよね。衣食住ってやつ? あたたちで分担してさ」
ふ……あやせが何を考えているか分からないけど、これなら確実に兄パンはあたしのもの!
「そんな、全て私にお任せくださいませ。桐乃さん達は明日もお仕事があるんですから」
ぐ…沙織、手強い……味方にすると頼もしいのに、敵に回るとこんなに恐ろしいヤツだったなんて!
「桐乃の言うとおりですよ、沙織さん。本当なら別荘を貸して貰った私達が全部するべきなんですけど
 けど、このままじゃ平行線です! だからここは平等に多数決で決めましょう」
「そーそー、2対1であたしたちの勝ち!」

「違うよ桐乃、この家にいるのは4人でしょ?」

あやせ……何を考えているの!?

「お洗濯のこともそうだよ。ちゃんとお兄さんにも相談しよ?
 お兄さんに、誰に洗って欲しいか決めて貰う方がスッキリするよ」

な…ん…だと……
兄貴にあたし達の誰にパンツを洗わせるか決めさせる?!
そんなの……くっ……あの変態ならあやせを選びかねない!
普通は可愛い女の子に自分のパンツを洗われるなんて死にたくなる
けどそれを羞恥プレイとして喜々として受ける懐の広さを兄貴は持っている!
バカ!バカ!バカ!バカ!バカ!
あたしのバカ!
普段から「兄貴のと一緒に洗濯しないで」とか言っちゃってるせいで
兄貴はあたしに押し付けたら、あたしのご機嫌斜めになると勘違いしちゃってるハズ!
アイツはあたしの不幸が、自分の不幸より嫌いな超ド級のシスコンなんだから! 大好き!
ホントはあたしが兄パン手揉み洗い上等なの知らないんだ。
そして沙織だ。
もし沙織がいつものオタクモードなら、むしろ気安さから沙織に頼むと思う。
でも今の沙織はお嬢様モードだ。お嬢様にパンツを洗わせる?
アイツは変態だけど空気は読める。その選択肢を押す確率は低い。
ヤバイ。何回シミュレートしても、兄貴はあやせを選ぶ気がする……

そうなんだ。実際、あやせは兄貴の好みのタイプなんだ。
妹萌えの権威であり、兄貴の第一人者であるあたしが、お墨付きを出してもいい。
兄貴のコレクションが巨乳メガネであると判明した時、
あたしは「性的欲求と恋愛対象」は必ずしも一致しないと自分に言い聞かせて慰めてきた。
そして兄貴にエロゲーを勧めて、兄貴の攻略傾向を知ったとき、それが正しいとわかった。
でも、それはあたしを祝福はしなかった。
兄貴の好きなタイプは、勉強もスポーツもできて、小生意気な可愛さを持ってて、誰もが認めるアイドルで
人には言えない趣味があって、茶髪で、丸顔で、実はお兄ちゃんが大好き、なヒロインじゃなかった。
礼儀正しくて、真面目で、清純で、思いやりがあって、黒髪ロングで、オタ耐性がない、そんなヒロインだった。
まさにあやせ……って最初の頃は思ってたし、だから兄貴にあたしの友達に近寄るな!って言ってきたけど、
実際は色々あって、あやせもヤンデレ属性を開花させたっていうか、あたしも一安心っていうか
そう思ってたのに! なんかむしろそれで気易い関係つくってるとか、兄貴何者!?
アチコチにフラグ立ててさ、アイツはエロゲーの主人公かっての!!



「もう……やめましょう」


私はお兄様のパンツを広げ、皆様の前にかざしました。
「私、これの為に折角仲良くなったあやせさんや、桐乃さんと争うことはしたくないのです」
「沙織さん……」
「沙織……」
「こんなもの無くたって、人は生きていけます!! 死ねよやーーーーー!!」
私は大きく振りかぶって、お兄様パンツを窓の外に投げ捨てようとしました。

「「ダメー!!!」」

二人がそんな私を止めに入ります。
「兄パンは……兄パンは力なんだから! 兄パンは、この人生を支えているものなんだ!
 それを、それを、こうも簡単に失っていくのは、それは……それは、醜い事なんだよ!」
く……きりりんさん、そのセリフは……そんなニュータイプのようなセリフを出されては私……私は……
「昔、クンカーって、パンツを嗅ぐ事に関してはスペシャリストがいましたのよ。そういうのって大概個人的には不幸でしたわ」
「人間の知恵はそんなものだって乗り越えられる!」
「そうです。それがお兄さんの生み出したものなら、私達を救ってみせます!」
ああ、刻が見えますわ……

私達は、自然と、お兄様のパンツを三等分に裂いていました。

なんのことはない、最初からこうすれば良かったのですわ。
こうすれば、三人全員にお兄様パンツが行き渡るのです。
そうして私達はそれぞれのお兄様パンツを鼻にあて、お兄様の匂いを堪能しはじめました。



スンスン


「はぁぁぁ……兄貴のパンツちょーキモい。破れてるとかありえなくない?
 どんだけ凶暴なリヴァイアサン隠し持ってるわけ? っていうかもうバハムートだし?
 パンツじゃなくてあたしの処女膜まで破ればいいじゃない! 最低! 変態! …スンスン…
 メールみて駆けつけるとかどんだけシスコンなの! 新幹線っていうレベルじゃない。シスコン線じゃん。
 ここ那須だよ? 那須でアンタの茄子包んでたパンツ妹に嗅がせるってアウトドアな変態も極まりすぎ!
 そ、そんなに兄ナスに跨って欲しいの? がくぽ気取りなの? ハッ…アンタGac●tのつもりなワケ?
 バッカじゃないの! あんなのよりアンタの方が何倍もカッコイイに決まってんじゃん!
 ちょ、調子に乗るんじゃないわよ! あ、あくまで個人的な意見なんだからね! 100人に聞いたら100人が
 G●cktの方がカッコイイっていうんだから。アタシだけなんだから、アンタをカッコイイって思うのは!
 だからせいぜいあたしのこと大事にするのね。き、来てくれてありがと!勘違いさせてゴメン!!」


スンスン


「な、なんですかお兄さん、これ3分の1ですよ? パンツ3分の1しかないのに、
 どうしてこんなに濃厚なんですか? わ、わかってますよ、破廉恥なお兄さんは興奮したんですね。
 女の子三人と一つ屋根の下にいて、変態なお兄さんが興奮しないはずがないですもんね。
 だ、だからですね、いつもより匂いが濃いのは……スンスン……危険です、お兄さんは危険人物です。
 それに狡猾です。本当なら興奮した時点で通報しなければならないのに、私にお兄さんの匂いを覚えさせて
 離れさせないでいますね。私が通報したら、もうお兄さんの匂いは嗅げないわけですから
 私はお兄さんを通報できない。私が通報できないのをいいことに、匂いを撒き散らしているんですね。
 最低です。知ってますよ、こういうのを性奴隷っていうんですよね?ああ……私、完全にお兄さんの性奴隷です!
 お兄さんの匂いがどんどん私にいやらしい命令をしています。
 か、髪ですか……私が大事に大事に伸ばした、この髪にお兄さんは匂いを付けたいんですね?
 そうなんですね? す、好きにすればいいじゃないですか。私はお兄さんに逆らえないんです……
 ああ、お兄さんの変態……変態ぃぃ……もっとぉ……もっとお兄さんの匂い付けてください! もっと強く!!
 なんで分からないんですか! 私はお兄さんの所有物なんですよ! もっと私がお兄さんのものだって
 刻み込んでくれないと困ります! お兄さん! お兄さん! お兄さん!」


スンスン


「京介お兄様ぁ、私、私ついにお兄様のパンツをコレクションすることができましたわ。
 沙織を誉めてくださいまし。ナデナデしてくださいまし……スンスン……
 お兄様のパンツは素晴らしいですわ……争いを鎮めることができるのですもの。
 ああ、このお兄様の匂いは虚無の深淵から生まれたいたわりと友愛なのですね!
 お兄様の匂いを嗅いでいると、宇宙(そら)へと飛んでいる気分です!
 このパンツは宇宙船なのですね、誰だって明日への乗組員!!
 見えましたぁ……ガイアが見えましたぁぁ……
 お兄様ぁ……お兄様と一緒なら宇宙(そら)も飛べるのですねぇ……
 むしろ、これから大気圏突入しても、きっとお兄様と一緒ならへいきですわぁ
 京介お兄様ぁぁ……君はどこへ落ちたい? 私はすでにお兄様に堕ちてしまっていますけどぉぉぉ……
 ダメです! ダメェ……お兄様の虜になってはぁ…私、もうお嬢様でいられなくなるぅ……
 お嬢様じゃないとダメなのにぃ……趣味を続けられないのにぃ……
 それでも、このお兄様のパンツにぃ……私ぃ……よしなにしちゃうっ!!」



なんで俺の服がバスローブに替わってるんだ?
いや、バスローブがあったってことは、多分これを置いていった沙織が持っていったってことだろうが
しかし俺のパンツまで持ってくことはねーだろ。お嬢様ってそういう羞恥心がないのかね?
つーか、年下の女の子にパンツ持って行かれるとか、俺が羞恥心で死ぬわ。
だが、待て。考えるんだ、精一杯俺に都合が良く考えてみるんだ。
沙織は俺のパンツに気づかないで持っていった。
これだね。ズボンとシャツの間に入っていたパンツに沙織が気づかなかった。
沙織以外が持っていったとしても、この路線で行こう。
とすれば俺がすることは一つだね。気づかれない内にパンツを取り返す。

そんなわけで俺はバスローブで別荘の中を探し回ったよ。
なんか二階で物音したから、階段を見上げたよ。
三つの影が奇妙な踊りを踊ってたよ。
スンスンとか唸るような音も鳴ってたよ。
おいおい、黒猫じゃねーんだから魔界からモンスター呼んでんじゃねーよ。おっかねー。
おっかねーが、この上には桐乃やあやせがいるんだ。
化け物だろうと、不審者だろうと、あいつらには指一本触れさせるわけにはいかねえ!
俺は拳握って階段を駆け上ったさ。


「兄貴ィィィ!!」
「お兄さんンン!!」
「お兄様ぁぁぁ!!」


俺のパンツは三人の美少女に裂かれていた。
なんで? おまえらそんなに俺の事嫌い?
これ新しいイジメですか?
「おめぇのパンツねぇから!! 」ってか?
やべぇ、涙が出てきた……

あ、あいつら俺に気づいた。




「「「死ねエエエェェエエェェエエェェ!!!」」」



精神的イジメの次は肉体的イジメかよ、おめーらぁぁぁぁ!!

そげぶ!

俺は宙に浮かんで、階段を転げ落ちる間に思ったね。
ああ、なんかここ一連の記憶が全部吹っ飛びそうな衝撃だって。
まさに階段オチってか。
面白くもなんともねーよチクショウ!



<了>




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