1スレ目549氏

自宅のリビングのソファに並んで腰掛けている、俺と黒猫。
俺たちの目線の先では、真夜というキャラが絶賛戦闘中である。―――あっ、転んだ。
「……ここからよ、彼の真価はここから発揮されるわ」
黒猫の顔が今まで見たことないくらいに輝いていやがる。
しかし……なんだ。よく考えるよな、こんな複雑な設定。
―――と、俺が若干アニメの展開についていけなくなり遠い目をしていたら、黒猫がこちらを横目で睨んできた。
「……観る時は真剣に観る。それがマナーよ。……私はアニメの観賞中によそ見をする人間と席を立つ人間が許せないわ。よく覚えておきなさい」
「おまえも現在進行形でよそ見をしているわけだが……」
「……私はもう二十回以上観たから良いのよ」
自分勝手なヤツめ。まぁ、桐乃に比べたら可愛いもんだけどな。
そうだ、桐乃だ。なんで俺が今、黒猫と二人でアニメを観ているのか?その原因はやはりというか桐乃にあった。


「今日、ゴスロリ邪気眼がうちに来るから」
土曜日の朝、妹からの第一球がこれだった。
「……あぁ、それで?」
投げやり気味に打ち返す。
「掃除をしなさい」
「どこを?っていうかなんで俺が」
「リビングと玄関」
「だからなんで俺が」
またファールかよ、と言わんばかりに妹は首を横に振り、舌打ちをした後、ため息をつき、もう一度舌打ちをした。
……なんで休日の寝起きにこんな仕打ちを受けているんだろうなー、俺は。
「あんたわかってないわねー、黒猫が来る前に服とか爪とか汚れたら嫌じゃん」
「なんだよ、その理由は!?服着替えて手ぇ洗えば済む話じゃねぇか!」
「……あんた、まさかあたしの着替えを覗く気?」
「なんでそうなるんだよ!?」
「うわー…、シスコンここに極めり」
「だから覗かねぇって!あー、もうわかったよ!掃除すっから、その人を蔑むような目をやめてくれ」
朝から大声出させないでくれよ……ったく。



「おーい、桐乃ー、掃除大体終わったぞー」
俺が玄関からリビングへ向かうと、そこにはソファに寝そべり携帯をいじる妹様の姿があった。
「……おまえそれは人としてどうよ」
「ん?鬼畜兄貴はさすがのあんたも拒否反応?」
「……いや、意味がわからない」
携帯をいじりながら桐乃が何を考えていたのかを考えると恐い。
―――と、その時、家のチャイムが鳴った。
「ん?黒猫か?はいはーい、今出るぞーー」
俺が玄関の扉を開くと、目の前には中学生の集団。いや、桐乃の友人たちがいた。
「おはようございます、お兄さん」
あやせが代表して俺に挨拶をしてくれる、―――その後ろにいるチビガキが俺を見て、小声で「ダサッ」と言ったが気にしない。
「で、今日はなんの用件……ってかまず桐乃を呼ばなきゃな」と、俺が言い終わる前に桐乃がリビングから顔を出した。
「あれぇー?みんなどうしたの?映画は明日じゃ…?」
「日曜日は加奈子の都合が悪いからって土曜日に変更したでしょ?」
「えー!?そうだったっけ!あちゃー」
桐乃が困った顔で俺を見てくる、―――あぁ、もうしょうがねぇなぁ!
俺は桐乃の耳に顔を近付け―――「きもっ」と聞こえたが気にしない―――小声で提案した。
「黒猫にはメールで遊べなくなったって送っとけ、もし万が一家に来ても俺が適当に対応しとくからさ、安心して映画観に行ってこい」
桐乃は少しの間、思案顔をしてから。
「……ん。まぁ三十点ってとこかな、あんたにしては上出来」
やけに上から目線だなおい!っていうか元々はおまえのミスが原因なんだからな!?
……友達の前だから声には出さないでおいてやるが。


「じゃあ、行ってくるから留守番よろしく」
手早く準備を済ませた桐乃があやせたちと共に玄関から出ていくのを見送る……わけもなく、俺はソファの上で一人うなだれていた。
「なんっつー最低の休日だ……」



というわけで、今俺は黒猫とアニメの観賞中だ。回想終わり。
ちなみに何故桐乃がいないとわかっていて、黒猫が家に来たのかといえば。
「家族には友人の家に行くと前日に伝えておいたのよ、今更ドタキャンされたから行きませんなんて恥ずかしくて言えないわ」
とのことだ。正直、黒猫の恥ずかしいの基準がよくわからない。
そんなことを考えていると、どうやらアニメが終わったらしい。
「……で、どうだったの?迅速に答えなさい」
黒猫がやや興奮気味に尋ねてくる。
「あーーー…、良かったんじゃねぇの?」
「…………でたわ」
ため息と共に黒猫が吐き捨てる。
「出たって何が?」
「ただ全体を何となく『良かった』なんて誰にでも言えて分かり切っている事は言わなくて良いのよ、私はどこがどう『良かった』のかを聞いているの」
「んーー?あぁーー、主人公の冷めた言動とか戦闘シーンとかが良かったかな。あとあれだ、背景が綺麗だな、と思ったぞ」
「――フン、まぁいいわ。……三十点ってところかしら、あなたにしては上出来よ」
こいつや桐乃の中での俺は上出来でも赤点なんだな。というかホント変なところで気が合うよな、こいつら。
「ところで、さっきから気になっていたのだけれど……」
黒猫は薄らと頬を染め言い淀む。
そして迷うようにゆっくりと指をあげ、その指が俺の股間のあたりを指す。
「道徳心の防波堤が崩壊して……、チラチラと薄汚いモノが見え隠れしているわ……」
ああ。簡単に言うとチャックが全開でパンツの隙間からナニが挨拶しているわけだな。―――って、ええ!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」
ナニ冷静に解説してんだよ俺は!これはドン引きものですよ!?
「いっ…いつから気が付いていたんだ…?」
「……あなたが私を玄関で出迎えた時には既にある意味、余所行きの格好だったわ」
「ならもっと早く言えよ!」
「……優しさとは時に残酷な結果を生むものなのよ」
「それは優しさでもなんでもねぇよ!?」
「そんなに騒ぐのならば代わりに私のも見せてあげましょうか…?」
「えっ!?でも、それはおまえっ。ちょっと、どっ、どうなんだろうな」
「…………冗談よ、なに本気で狼狽えているのかしら」



ちっくしょう…!自分の顔が赤くなっていっているのが手に取るようにわかる。
「それとも本当に見たいのかしらね?……兄さん?」
試すような眼で俺を眺めてくる黒猫。そして―――
「…………っ!」顔を少し下に向け、黒猫は自爆した。耳から血が吹き出そうなくらいに赤い。
「お、おっ、おお、おっきくなっているわ……」
茫然と黒猫が言った。
もしかするとさっきまでの余裕を感じさせる物言いは、自身の動揺を隠すためだったのかも知れない。
顔どころか耳や首まで赤くした黒猫が何事かを呟き始める。
「……後学の為。リアリティの追求。後学の為。リアリティの追求。……」
「ど…どうした、大丈夫か……?ってウオォっ!?」
黒猫が突然俺に飛び掛かってきた。
「兄さん、しゃ、射精するところをみ、み、見せなさい」
ちょっ!こいつ完全に眼が据わっちゃってるよ!
何故勃起した位でこんな事に!?いっつもおまえは同人で見てるんだろ!?あれは絵だけど!
「だっダメだ、現在おまえは冷静さを失っている、後で絶対に後悔す…っつあ!」
黒猫は俺の元気過ぎる本来の目的では未使用な生殖器を右手で掴むと、恐る恐る動かし始めた。
「あっ!こらっ!あぐっ!うっ!」
気持ち良さと痛さと恥ずかしさで俺は情けない声を出してしまう。くそう。
黒猫は熱心に右手の上下運動を続けながら、潤んだ瞳を俺の引きつり気味な顔に向けてくる。
「兄さん……」
「はうぅっ、なっ、なんだ?あっ…」
「わ、私…、私は……」



「ちょっとあんたたち何やってんのよ!?」



リビングの扉が猛烈な勢いで開けられる。
―――え?桐乃?玄関の扉が開く音なんてしなかったよな?―――
ちらりと時計の方に眼を向けると、既に時刻は午後の六時を廻っていた。




驚きで萎えてしまった俺の交接器から黒猫が手を離し、桐乃を挑発するように言った。
「……あら、何をしているのか見てわからないのかしら?」
「見りゃわかるっての!あたしが言いたいのはこんなとこですんなって事よ!」
「……わかったわ。じゃあ兄さんの部屋に行きましょう。……ほら、兄さん、早く立って」
俺がソファからゆるゆる立ち上がると、桐乃はこちらを鬼も逃げ出すような憤怒の形相で睨み付けていた。
「いや…、桐乃…、これは…だな…」
俺は全身の毛穴から汗を吹き出しつつも、必死で言葉を探す。
「いいから早く行きましょう、兄さん」
黒猫に手をひかれ、黒猫と俺はリビングを出て、自室へと向かった。


「――勢いで部屋に来たのはいいがこれからどうするんだ?」
ベッドに腰掛けた俺が尋ねると、同じようにベッドに腰掛けている黒猫が少し迷ったようにしてから口を開いた。
「……そうね。さっきの続き……をさせてもらってもいいかしら?」
「続きっていうと、――あれか」
「――あれよ」
言いながら黒猫は俺のジーパンに手を伸ばしチャックを下ろした。俺の愚息が再び外気にさらされる。
何かが吹っ切れてしまったのか先程までの恥ずかしさは無い、それは黒猫も同じなようだ。
「……触るわよ」
黒猫が、今度は両手で包み込むようにして、俺の息子を熱血させようとする。
―――こいつの手の平、ひんやりしてて気持ちいいんだよな。でも―――
確かに気持ちはいいのだが、手と息子が乾いているので少し痛ッ!いやいや、かなり痛い!そんな早く動かすんじゃねぇ!
「ちょっ、ちょっとタンマ!マジで痛い!」
「痛い…?気持ちいいのではないのかしら?」
不思議そうな顔をして黒猫が小首を傾げ、手を動かすのを止めた。
「別に気持ち良くないわけじゃないんだが、乾燥してるから摩擦で……な。唾か何かで濡らしてもらえると助かる」
「……中学生の唾を要求するなんて、あなた中々の変態ね」
頭が茹ってて忘れていたがこいつ中学生なんだよな…、しかも桐乃の友達…。
「……まぁいいわ。射精してもらわないと私もこんなことをしている意味がないものね。助力してあげるわ」
黒猫が小さく整った唇をもごもごと動かし、その口内に唾液を溜め込む。



充分に溜まったところで、黒猫は俺の男根の先っぽに、そのヌラリと白濁し泡立つ唾液を垂らし始めた。
―――なんて淫靡なマーライオンだ…。俺は黒猫の口から溢れる唾液の温かさに脳みそが沸き立ちそうになる。
「んっ……。これで多少はマシになったかしら?」
濡れそぼった男茎を包む黒猫の両手が、確認するようにゆっくりと動きだし―――次第に早さを増していく。
唾にまみれた肉棒が、ぐっちょぐっちょと耳と頭をとろかす音を奏でながら、その肉を固く熱くするのが非常に心地よい。
「……ね、ねぇ?」
呼吸を荒くした黒猫が、肉棒から俺の顔へと視線を移す。
「少しだけ、コレに口を付けてみてもいいかしら…?」
潤んだ瞳でおフェラ宣言!?―――いやいやいやいやさすがにダメだよな、今の状況も大概アレだがオーラルセックスはペケですよあなた!
いっ妹が、身内が家の中にいるんですよ!?そういえば日帰りで旅行に行ってる両親もそろそろ帰ってくっぅ!って!あああああーッ!!
鼻息が!鼻息が!先端に触れている唇の感触もやばいが鼻息が特にやばい!やばいな、うん。
「く…黒猫、これはまずいって…」
「……手コキがOKでフェラが駄目という基準がわからないわ」
ううっ、先っちょに唇を付けたまま話すなよ!マイクじゃなくてこれはマラだぞ。
あっ、くっ…、無気力で『普通』『無難』だった頃の俺カムバァアアアアアアアアアアアアアック!!
「ああ…っ!」
ついに限界を迎えた俺は、白い子種を黒猫の顔に撒き散らす。
「……?」
ぼんやりとした表情の黒猫は、細かく脈打つ俺の肉棒を眺め、そして―――
「……っ!!!!!」
尻尾を掴まれた猫のように一瞬、全身を硬直させた。


「…………臭いわ」
第一声がそれですか。まぁ気持ちはわからんでもないが。
「でも……。思ったよりもベトベトしないものね、意外にプルプルしているわ。」
端整な顔に精子を付けた黒猫を見ていると、何だか可笑しくなってくる。
「ふふっ…」
「……なに笑っているの?気でも狂ったのかしら?」
―――気は狂ってないが、おまえのせいで俺のキャラは確実に狂っちまったな。



「……帰るわ」と黒猫が言ったので、俺と黒猫は二人で玄関から外へ出る。


「本当に送っていかなくていいのか?」
「……ええ。まだそんなに暗くないし、それに……あなたにはまだ大切な仕事が残っているでしょう?」
「仕事?」
「大好きな妹の機嫌取りよ」
「はァ!?いつ俺があいつの事を大好きだなんて言ったよ!」
「――フフ、それなら別にいいのだけれどね。……じゃあ、また近いうちに会いましょう」
くそっ、年下相手に軽くいなされてしまった。
「ああ、またな」
年長者の意地で冷静さを装い、黒猫に手を振る。黒猫は眼を細めると、少し気恥ずかしそうに手を振りかえしてきた。


両親が帰宅してから夕食をとり、風呂に入って、今は自室のベッドの上でゴロゴロとくつろいでいる。
―――ううむ、このベッドで黒猫とあんな事をしたなんて…、我ながらどうかしてたよな。
軽く身悶えていると、ノックの音もなく突然に、自室の扉が開かれる。
そこにいたのは見間違いようもない、お風呂あがりの妹様だ。
「うおっ!お、おまえいい加減ノックくらいしてから開けろよ!」
「はァ?なんであたしがあんたに命令されなきゃいけないわけ?」
「命令じゃなくてこれは常識だ!常識!」
「うざっ」
な…殴りてぇ…!なんでこいつは、ご近所でふりまく愛想の一ツマミを兄に振り分けられないんだ。
「なにキモイ顔してんのよ?ハァー、あんたみたいな兄を持って、可哀想なあたし」
「それはこっちのセリフだ!」
「意味わかんない。…………ところでさ、あの後、黒猫と二人で何やってたわけ?」
「……何やってたかなんて、おまえには関係ないだろ」
……どうしたんだ、俺は?なんとなく胸がモヤモヤして、桐乃の顔をまともに見れないぞ。
「ふーーーーーん、まぁいいや。…………ねぇ、黒猫と同じ事、あたしにもさせてよ」
「――――なッ!?」



眉間に皺を寄せ、上から俺を見下す桐乃に―――
「あっ…握手だ!」
風呂に入った事が台無しになるくらい嫌な汗をかいてしまっている俺は、咄嗟にそう言葉を投げたのだった。
「……は?」
「だから俺とあいつはこの部屋で握手をしていたんだ!」
「握手って……、いくらなんでも無理矢理過ぎない?それ」
「お…、お互い、妹には苦労させられるよなって、そういう話を二人でしてたんだよ。そこで、握手だ。」
桐乃が指摘した通り、ちと苦しいかな、この設定は。
「じゃあリビングでコソコソやってたのはなんなのよ……っていうかいつあたしがあんたに苦労をかけたっての!?」
かけていないとでも!?
「ま、まぁそれはいいじゃねぇか。で、だ。黒猫がしていたことをしたいんだよな?なら、ほら。握手握手」
ベッドの端に腰掛けた俺は、精一杯の作り笑顔で桐乃に右手を差し出す。
何故か桐乃は「うぅっ……」と唸りながら、俺の右手と自分の右手を交互に見つめている、風呂あがりだからかほんのりと頬が赤い。
「も…もういい、寝る」
桐乃は逃げるように、俺の部屋から出て自分の部屋へと帰っていく。
―――あ。あのバカ、また扉を開けっ放しにしていきやがったな。
俺はベッドから腰をあげて開いたままの扉へ向かう。


一週間後の土曜日。
呼び鈴が鳴り、俺が玄関の扉を開けると、そこには夜魔の女王のコスプレをした黒猫が立っていた。
「……来たわ」
「……桐乃なら学校の友達と遊びに出掛けてていないぞ」
「我が眷族―――つまりはあなたに会いに来たのよ」
「俺がいつ、おまえの身内や子分になったっていうんだ?」
「あら?気付いていなかったのかしら。……憐れね」
なんだかよくわからない内によくわからない理由で憐れまれてしまった。ハァ…。
「ん。まぁとりあえずあがれよ」
俺が玄関から家の中へと案内すると、黒猫はホッとした表情で呟いた。
「……安心したわ」
「なにがだ?」
「招かれなければ……私が中へ入ることは出来なかったわ……」
どこの吸血鬼だよおまえは。



黒猫をリビングのソファに座らせてから、俺は飲み物と菓子を取りに行く。
「えー…っと。なんかあったっけか」
冷蔵庫のドアを開く。と、そこで気配を感じて振り返る。
「……どうかしたか?」
やたら近くに黒猫の顔があった。
「いえ……。今日、この家にあなた以外の人間は?」
「いや、俺一人だが」
「なら一刻も早くあなたの部屋に向かいましょう」
そう言うなり黒猫は、俺の上着の袖を掴んで歩き始める。


部屋に入って二人並んでベッドに腰をおろすと、すぐさま黒猫が話しはじめた。
「……私は先週の出来事によって不本意ながらあなたと契約を結んでしまったのよ。そして定期的にあなたの精液を摂取する事によって闇の力【ダークフォース】を維持、……代わりにあなたには眷族として不死を与えているわ」
「…………」
「……やはり元人間であるあなたには理解できないようね。仕方ないわ……、純血【オリジナル】との差はそれ程までに大きいのだから」
「…………そうか」
妹モノのエロゲ脳で解釈するなら『おにぃちゃんとえっちなことがしたいよぅ』といったところだろうか。
っていうか、これ完全にエロゲの設定だな。
……もしかすると黒猫なりに照れているのかも知れない。
そう思うと黒猫がとても可愛くみえて雰囲気に流されそうになるが……、ここはハッキリさせとかなきゃな。
「でもさ、おまえはこういうの……なんつーか、付き合ってもいないのに……」
「……既に眷族だと言ったはずよ」
「いやいやいや、そういうんじゃなくてさ。この前は勢いでやっちまったけど……、後悔とかしてないのか?」
俺の言葉に黒猫が少し悲しそうな顔をしてうつむく。
「…………後悔なんてしているのなら、わざわざこの家に来たりしないわよ。本当に救い難い人間ね」
「……今は元人間、……なんだろ?」
「……そうだったわね」
俺は顔を下に向けている黒猫の頭に軽く手をのせ、ゆっくりと撫でた。
―――うおっ、こいつの髪の毛マジでサラッサラだな。それと今まで気にもしてなかったけど、耳の形も綺麗に整ってんのな。
つーか、あれだ。髪を撫でられて目を細めている黒猫はホントの猫みたいで…………これはヤバいぞ、か、可愛過ぎるっ!
俺は思わず黒猫を力一杯抱き締めたくなる衝動にかられ―――というかすぐに抱き締めた。



普段の黒猫なら「……暑苦しいわよ人間」「服が皺になってしまうわ」とでも言うところだろうが……。
当の黒猫は「くふっ」と息を洩らしてからは身じろぎの一つもしない。
それにしても……、細過ぎんだろこいつ。ちゃんと飯食ってんのかよ?
誇張じゃなく、これ以上力を込めたら折れちまいそうだ。
「……ん」
首の横にかかる吐息が、確かな熱を帯び始める。
「にい…さん」
黒猫が俺の背中にそろそろと両腕をまわし、一度力を込めるとすぐに今度は力を抜き、俺の身体から少しだけ離れた。
潤んだ眼差しを向ける黒猫が薄く目蓋をとじ、顎をしゃくる。
―――目の前にはひどく蠱惑的な唇。この状況が意味するところはひとつだろう。つまりは……キスだ。
俺は黒猫の熱く濡れた唇に自分の唇を押し当てた。黒猫の唇を割って、粘り気を増した唾液と共に舌を差し込む。
ビクリ、と黒猫が身体を強張らせる。
……いきなり舌を入れたのはまずかったか……、などと考えながらも熱心に舌で相手の舌の感触を味わい。唾液を啜る。
しばらくそうしていると、黒猫も徐々にだが身体を弛緩させていく。
はじめは控えめに、そして段々と大胆に、こちらの舌に自身の舌を絡めてくる。
黒猫の口腔内は温かく、唾液は甘く、舌はねっとりとし、吐息は良い匂いがする。
俺は強烈な快感に囚われ、目を開けていることすらままならない。
あまりの官能に、頭がクラクラした。
息苦しくなったのか黒猫が、唇同士の接触を少しだけ緩めた。丁度良かったと俺も新鮮な空気を肺に送る。
小休憩を終えると、今度は黒猫の方から口を押し当ててきた。先程よりも更に深く、きっちりと合わさる俺たちの唇。
俺の背中にまわされた両腕にも力が入る。それを受けて俺も黒猫の華奢な身体を強く強く抱き締めてやった。
―――存在を主張する舌。溶けて交じる、二人の唾液。
―――近く、温かい、お互いの身体。その体臭。
目を開くと、そこには同じように目を開いた黒猫の顔、見つめ合い、激しく舌を絡め合う。鼻息が自然と荒くなる。
我慢出来なくなった俺は、黒猫の背中から両腕を戻し身体を解放してやると、慌ただしく黒猫をベッドに押し倒す。
その時に相手の歯で僅かに唇が切れたみたいだが、たいした痛みは無い。
俺は微かに身じろぐ黒猫の舌先をしゃぶりながら、おそるおそるその胸へと手をのばした。




―――思っていたよりも固い感触。
まぁこれは当たり前か。服とブラの上からだしな。
黒猫の舌から口を離すと、すぐに黒猫が「自っ分で、脱いだ、ほうが、いっ…いいのかしら?」と尋ねてくる。
俺は右手の中にある胸の感触を確かめるように、言葉を切りながら答えた。
「そう、だな。そうして、もらえると、助か、る」
黒猫は少し戸惑ったように返してくる。
「……なら、……一度、手を、胸から、はなっ離して、もらわないと……」
「あっああ!そうだな、すまん」
その訴えにすぐさま手を引っ込める。はーーー、おっぱいの魔力って恐ろしい。
黒猫は身体を起こすと、慣れた手つきで夜魔の女王から一人の少女へと姿を変えていく。
「……下着は……どうするべきかしら?」
ハニカミながら上目遣いをする黒猫なんてレアなものを目撃してしまった俺は、動揺しつつも声を発する。
「脱いでもらえると……、その、な」


カーテンをしていても外からの光で明るい部屋の中。ついに黒猫がその裸体を晒した。
―――不健康に青白くもキメ細やかな肌。うっすらと青い静脈の浮いたやや小ぶりだが形の良い胸。
生を感じさせる腹部。漫画のように縦に切り込んだようでは無いが、愛敬のあるヘソ。
決して肉付きは良くないがスラリと細く格好の良い脚。純白の太腿。つい触れたくなるようなふくらはぎ。幼さの残る、爪の小さな足先。
顔を上に戻すとそこには、おそらくは人生初めてであろう羞恥に歪む美貌。手入れの行き届いた長い黒髪。その黒髪を添え、なおいっそう芸術性を高める鎖骨。
はかなげな肩。脚と同じくほっそりとした腕。キュッと締まった手首。日焼けと老いに縁の無さそうな手先。
ゴクリ…、と唾を飲み込み、目線を少し横にずらす。
ひどく女性を意識させる腰。そして……。
―――こっ、こいつ、……生えてねぇ、毛が。
剃ってる?いや、でもその割りにはやけにツルツルしてるよな、ということは生えない体質?女って生えるのが遅いのか?
もう一度唾を飲み込んでから、ゆっくりと黒猫の秘部へと手を伸ばす。
ぷっくりとした形に触れ。そこを開く。……熟れきっていない林檎のように淡いピンク色をした、黒猫の中があらわになる。
そのピンク色の粘膜に息を吹き掛けると「んッ…!」黒猫が悩ましげに鳴く。
俺は上半身を起こし、黒猫の身体をベッドに寝かせなおすと、その上にのしかかり乳房を口に含んだ。
舌を這わすと、薄桃色の乳首がすぐに反応をみせる。
固くなった乳首をやさしく噛みながら。左手で、残ったもう片方の乳房を愛撫する。
上気し、強烈にメスの匂いを放ち始めている。均整の取れた肉体。




俺は乳房から口を離し、疼く男根を握り締め、切っ先を肉裂に差し向けた。
「あ……、あの……」
泣きだしそうな声で、黒猫。
「どうした?やっぱ恐いか?」
「……す、少しね。それよりも、ね。」
「ん?」
「…………契約、とか、仕方なく、じゃなくて。……私がしたいから、するの。」
「ん。わかってるよ」
「…………ちゃんと初めてだから、安心しなさい」
それもわかってるさ。
「じゃあ…、いくぞ」
俺は一つ息を吐き、角度をつけた亀頭を秘部にグリグリと擦り付ける。
「んんっ……んっ!」
二度、三度と的を外しながら、やっとの思いで膣穴を捉え、強張る肉棒をゆっくりと挿入する。
「んーーーーーーーーーっっっ!」
黒猫の美しく整った眉が苦しげに歪むのをどぎまぎと見つめながらも、奥へ奥へと肉棒を突き進めていく。
ミチミチと肉を押し分けて自身が侵入する征服感だけで頭が真っ白になりそうだ。
かなり強い締め付けも、痛みよりも愉悦の方が大きい。
そしてズッポリと根元まで肉壺に納まる。
ー――処女膜ってのはよくわかんなかったな……。あ、でも血が出てんな。
「だい…じょうぶか?」
長い睫毛に取り囲まれた切れ長の眼に問い掛ける。
「……えぇ。案外、平気、だったわ」
痩せ我慢だとわかる声音で、黒猫が微笑む。
俺は、痛みに震える黒猫の唇に、軽くキスをした。
「こっちを最初にしとけば良かったな」
黒猫の手を握りながらおどけた口調で言う。
「……なんの話?」
「キスの話だよ」
「……あぁ。確かにファーストキスが舌入れなんて、どこぞの幽霊娘かって感じよね」
「犬飼ってるあの娘か」
「……そう。その娘」
こういう時に出してほしい喩えじゃないな。




―――と、まぁ。その後も意外と淡泊に行為は続けられ、最後は俺が黒猫の腹に出してお開き。
結局一番お互いが盛り上がっていたのはキスの時だったな、うん。
それから春休みに入り、黒猫は通い妻状態。
俺は桐乃に必死で説明して暴言を吐かれ、最終的に桐乃は呆れつつも。
「ま、しょうがない、か……」と認めてくれた。……その時の桐乃の顔は、…………一生忘れられない気がする。
そして両親だが、初めは驚いていたもののすぐに黒猫に馴染んだ。黒猫が桐乃に少しだけ似ているからかも知れない。
そう桐乃に言うと「どう考えたって黒猫はあんた似でしょ」と馬鹿にした口調で返されたが…。
あーーー。あと。俺と黒猫が付き合い始めたことを、麻奈実には未だに報告できていなかったりする。
後に延ばせば延ばす程、切り出しにくくなることはわかってるつもりなんだけどな。
―――なんて風にグダグダと考えながら、靴を履いて玄関の扉を開く。
春休みが終わり、今日からは三年だ。ま、特に何が変わるわけでもないけどな。
扉を開ききり「ぶフぉッッ!!」盛大に噴いた。
「お、おまっ、それ、うちの!」
うちの高校の制服を身につけた黒猫が、スカートの端をつまみ挨拶をしてくる。
「……ごきげんよう、京介」
そうそう、呼び名も変わったんだ。
「う…ぁ、ごきげんよ……ってそれよりお前なんでうちの制服を!?」
「……生徒だからよ」
そりゃそうか。よく考えてみたら家も結構近いしな。
黒猫が俺の手を掴み、妖艶に微笑む。
「……さ、早く行きましょう。ラスボス地味子を倒す為に」


―――三年になったって特に何が変わるわけでもないってのは訂正が必要だな。
俺と手を繋いで歩く黒猫の横顔を見つめながら、俺はこれからの騒動を想像して……なんでか声を出して笑ってしまう。
「……何がおかしいの?」
不可解そうな顔をした黒猫を、横目で見る。……あっと、そういえばまだこいつの本名を言ってなかったな。
こいつの、黒猫の名前は―――――







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最終更新:2009年08月05日 12:16
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