女王様・黒猫 03


 黒猫の機嫌はホントに猫のようにコロコロと変わるので、たまについて行けない時がある。
 そう、例えば今とかだ。



「許可なく気安く触らないで頂戴」



 ひとしきり口の粘膜を蹂躙されてまた口元がベトベトになった後、首に回していた腕が急にぺしっと振り払われた。
 黒猫はまるでゴミを振り落とすようにパンパンと肩の上を払う。
 こ、こんちくしょう……自分の彼女に触るのにも許可がいるのかよ……!
 俺は黒猫を恨みがましい目で見つめていたが、それに気付かれ睨み返されると、条件反射でキンタマがヒュンとなってしまった。


「あなたは本当に立場の違いというものを分かっていないようね」
「ご、ごめんなさ……――ハッ!?」


 謝罪の言葉が口をついて出たことに愕然とする。
 もしかして俺、調教済み……?
 戦慄している俺を余所に、黒猫は身体を離して四つん這いに戻った。


「ホント邪魔な手。どこかにノコ切れるモノは……」
「せめて縛るぐらいにしてくださいっ」


 こえーよマジで! 冗談で言ってるんだろうけど、マジでやりかねない人が知り合いにいるから困る。
 しかし、そうして身を竦ませる俺を無視して、黒猫はニタァと口角を吊り上げた。


「あら、そんなに縛られたいの?」


 よ、用意周到すぎて逆に怖いよ!


「さ、触らないから縛らないで……」


 忘れてはいけない。踏まれたいと言ってしまったが為に、俺の海綿体は壊死させられそうになったのだ。
 それに手を縛られてしまったら今度また何かあった時にマジで抵抗できないジャマイカ。
 ただでさえ素人の緊縛は危険だというのに……。


「嫌よ、縛るわ。あなたの願いは基本的に聞いてあげないと言ったでしょう?」


 それなら聞くなよ! おお、もう、理不尽すぎて涙が出そうだ……。
 一体どこで選択肢を間違えたというの……冒頭シーンまでクイックロードさせて!


「ねえ……どうして縛られたくないの……?」


 このエロ猫は俺の気持ちなんてつゆ知らず、体側に伸ばした俺の両手を押さえつけてから色っぽい顔を近づけてきた。
 股間に腰がゆっくり落とされ、反り返ったナニに体重がかかって高い体温が伝わってくる。
 何枚もの布に遮られているはずなのに、互いの性器が擦れ合っているのがわかってしまう。


「ふふ、ビクビクしてるじゃない……本当は縛られてみたいんでしょう?」


 確かに、身動きを取らなかったのは物理的な問題だけじゃなかった。
 黒猫が前後に腰を揺すると、負けじと玉袋がせり上がり、頑健な肉棒が反射的にビクついてしまう。
 ぷにぷにの恥丘で股間が強く圧迫されて、痺れるようなジンジンとした感覚が下腹部に広がっていく。
 そんなことされたって俺は……俺は…………じ、じれったくて気持ちイイッ!
 ってバカ! こんな安っぽい色仕掛けになんて、俺はぜーったいに騙されないんだからねっ!!


「ホントにホントに縛られたくなんて……んむっ!?」


 両腕を押さえられたまま乱暴にキスされ、視界が淡い桜色に火照った肌で塗りつぶされた。
 すぐに柔らかい舌が歯の間から割って入ってきて、口の中で吐息が混じり合い、黒猫の匂いと味で一杯になる。


「んっ、んふうっ、うんっ」


 ぴちゃぴちゃと下品な音が部屋に響き、黒猫に五感の全てを奪われる。
 肉槍が鋭利さを増すのに反比例して、思考はだんだんと鈍らになっていく。
 しばらくお待ちください……ただいまテコ入れが行われています。


「――――んっ、ぷはぁ………………で、結局どっち?」
「……………………や、やっぱり縛られてみたいですぅ」


 ち、違うのよ……これは黒猫に無理やり……。


「“縛られてみたい”?」


 強圧的なその声に、俺のチンポがビクッと震えた。


「し、縛ってください……」


 し、死にたい……俺は涙目で何を言ってるんだ。
 人間としての尊厳を自ら損おうとするこの宣言……こいつは誰がどう弁護しようと変態の誹りを免れ得まい。


「大の男子高校生が “縛られたい”って、あなたね、自分の言っていること分かってる? ああ気持ち悪いわ、こんなモノちょん切ってしまいたい……彼氏を去勢できる法律ってないのかしら」


 お隣の独裁国家でもそんな法案は通りません!


「い、痛いのはもうやだ……」


 そんな言葉とは裏腹に、再びお尻で俺の基本的チン権がぐりぐり弾圧されると、股間の米軍のプレゼンスは否応なしに高まっていく。
 恐怖と快楽で肛門の筋肉が引き締まり、俺の雄心が黒猫の秘所をノックすると、彼女はその反応を楽しむように、より圧力をかけてくる。


「アソコをこんな硬くして、私にこすり付けて……本当に度し難い変態ね。厭らしい、生きてて恥ずかしくはないの?」
「ううっ……」


 こ、擦りつけてるのはおまえのくせに……。
 羞恥の炎を煽るように耳に吐息を吹きかけられて、俺の顔が熱を帯びる。
 どうやら黒猫は俺を辱めることにかけては天賦の才を持っているようだった。


「もし“五更さんの彼氏はマゾヒストだ”という俗言が広まって、私まで変態だと思われたらどうするのよ。現状、ただでさえセクハラ男の彼女だという不名誉な風評が立っているのだけど。ねえ、どうしてくれるの?」
「痛っ……あ、ああっ!」


 制服の上から無造作に掴まれたチンコをギリギリと捻り上げられて、心拍数が跳ね上がっていく。


「迷惑なのよ、あなたみたいな下種が彼氏だと。私の評判を落としてまで踏まれたい、縛られたいだなんて言うのかしら、この変態。ほら、答えてごらんなさいな」
「ひぃっ、ごめ、ごめんなさい! ごめんなさいっ!」


 股間も痛いが心も痛い。黒猫の歪んだ顔からは悪感情がにじみ出ていた。
 心身ともに責められて、俺のライフゲージが目減りしていく。


「……なんてね。あなたは私の自慢の愛犬よ。迷惑だなんて、全然思っていないから」


 心に暖かいものが広がって目頭が熱くなる。
 持ち上げられてから落とされるより、落とされてから持ち上げられる方が、より心が不安定になるものだ。
 陰茎を支配していた痛みは嘘のように引いていたが、代わりに鼻の奥がツンとなった。


「でもね、あなたみたいな盛りのついた犬はやっぱり放置しておけないの……だから、他人に迷惑をかけないように、飼い主がちゃんと躾けないと」


 心底仕方がなさそうに言いながら、黒猫は俺のワイシャツのボタンを器用に全て外していった。
 下着のTシャツごとひっくり返すように背中に回され、手首のあたりまで脱がされる。
 思っていたよりソフトな緊縛だが、こうして仰向けになっている限りはベッドとケツの間に挟まれたシャツに拘束されて、腕を動かそうとしても腰から手首が離れない。
 こうなってしまっては、全ては黒猫の胸三寸だ。


「ひっ」


 心臓を鷲掴みにされたようになる。
 黒猫の冷たいすべすべおててが俺の胸を這いずり回り、脇腹、鎖骨、首筋と撫で上げてきた。
 背筋とチンコに走るこの悪寒は、肌を刺す部屋の冷気か、それとも冷酷な視線のせいか。
 半裸で上体を晒す俺と対照的に黒猫は制服で身を固めたままで、それは彼女の言葉通り、まさに立場の違いを表していた。


「いつもいつも、可愛い女の子に鼻の下を伸ばして、いい顔をして、色目を使って……ご主人様をヤキモキさせるなんて飼い犬失格。今から調教し直してあげるわ」
「お、俺はそんな……痛ッ?!」


 頬に手を添えられたと思ったら、がりっと首筋に歯を立てられた。
 まるで獲物を仕留めた肉食動物のようにがじがじと肉を齧る黒猫。


「フン、口答えしないで頂戴……虫に刺されたなんて言わせないわよ」


 黒猫は甘い鼻息を漏らしながら噛んだ痕を舌でなぞった。
 表皮から浸透してくるくすぐったさの中にある痛み。
 その軌跡が描くものは断じてキスマークなどという生易しいものじゃない。
 コレぜったい歯形残ってるよね! 桐乃や麻奈実に見られたらなんて言い訳すればいいの!?


「ひん!」


 強烈無比な打撃が股間を直撃。黒猫の握りこぶしが俺の主砲をブチ抜いていた。
 テロ実行犯を涙目で見やると、なんかマジで不機嫌そうな顔をしてやがる。


「……いま別の女のことを考えてたでしょう」
「しょ、しょんなこと……」


 なんで分かるの!? 沙織じゃあるまいに、おまえにニュータイプの素質なんて……。


「あひん!」


 再び打ち下ろされる無慈悲な鉄槌。流石の俺も歯を食いしばって黒猫を睨んだ。
 モノローグを読むんじゃないよ! 俺には内心の自由すらないのか!


「……生意気な目。どうやらお仕置きが必要なようね」


 黒猫は極めて無感情な顔で、体を滑らすように俺のヘソの下まで退いていく。
 そして俺の股間に顔を寄せ、ベルトの金具に手を掛けてから口を開いた。


「……これであなたを叩いたらどんな声で啼くのかしらね」


 おまっ、なんて恐ろしいことを……!


「お、お願い……鞭打ちは勘弁してください……」
「あなたの意見なんて聞いてないわよ」


 そう言ってベルトが外され、しゅっと引き抜かれた。
 なんで反抗的な素振りを見せてしまったんだろう……そんな激しい後悔に襲われる。
 直近の無残な未来を予想して頬を引き攣らせる俺に、しかし、黒猫は優しい微笑みを向けた。


「安心して、痛いことはもうしないから」


 次いで、かちゃりとズボンのホックが外されて、あむっと薄桃色の唇でファスナーの引き手が咥えられる。
 ちいいい、と小さな音を立てながらスボンのチャックがゆっくり開かれた。


「……そう、あとはずーっと気持ちいいだけよ」


 熟れきった果実のような異常に甘く湿った声。
 実は職業で高校生を演じていて、中には大人の女性が入ってるんじゃないかと勘繰ってしまう。
 否応なしに期待が高まり、かつてないほど激しく硬く股間の一物が膨れ上がった。
 変態イベントを期待していた皆様ッ、大変長らくお待たせしました!


「もう、こんなに大きくして……ホント、いやらしい」


 くっきりとそのシルエットが浮かび上がったボクサーパンツを鼻先に迎えて、黒猫の上気した頬はもっと紅潮し、つぶらな瞳がますます潤む。
 あまりにもえっちなその表情に、節操のない分身が物欲しそうにひくん、と震えた。
 間近で陰部を観察されてる。
 言葉にすればただそれだけなのに、腹の底からは恥ずかしさとも性欲ともつかない熱い滾りが沸き上がり、下腹部の筋肉が変によじれた。
 股間のテントがぴくり、ぴくりと跳ねまわり、その度にぴっちりとした下着に押し戻される。
 そんな様子をつぶさに見ている黒猫は淫靡な笑みの色を深めていった。


「あらあら……触ってほしくて仕方がないのね。ずいぶん可愛いおねだりじゃない」
「お、俺のイチモツが、そんなに可愛いわけがない……」


 とことん嗜虐的な言葉を浴びせかけられ、うめき声を上げるしかない。
 しかし忸怩たる思いを隠せない俺の表情など一瞥もされず、肉欲の膨らみにひたすら視線が注がれる。
 そして、黒猫は熱に浮かされたようにふらふらと鼻を近づけたかと思うと、


「ちょっ……?!」


 いきなり股間に顔を埋めた。


「んふー……」


 ま、まさかここにきてクン化してしまうというんですか!?
 黒猫はかまぼこ状の膨らみのすぐ脇に口と鼻を深く押し込み、すー……、はー、すー……、はー、と無心に深呼吸を繰り返している。
 は、恥ずかしい……こうもまざまざと下着の臭いを嗅がれると、ホント無性に恥ずかしくて堪らない。


「……はぁ、すごい匂いね。あなたのこんな匂いを嗅いでいいのは私だけ……なんだか、癖になってしまいそう」


 少し顔を上げてそう言った後、黒猫はさっきより強く鼻を股間に潜りこませ、足の付け根をまさぐった。
 俺の怒張に鼻を寄せては愛おしそうに頬ずりをする黒猫。
 愚息が擦りあげられるたびに突起が飛び跳ねて、その反応に誘われるように黒猫はやわらかいほっぺを押しつけてくる。
 すんすんと鼻を鳴らしては身をよじり、隆起したモノにじゃれついてくるその姿は、まるでマタタビをもらった猫のようだ。


「黒猫……ずげぇエロいよ」


 とろん、と溶けきったその双眸が獣欲で覆われていて理性の光はまるで見えない。
 はあはあと息を荒げながら内股を擦りあわせる様子は、まさに発情した雌猫そのものだった。


「……失礼なことを言わないで頂戴。あなたなんて、こんなにカチカチになってるくせに」


 黒猫は茹った顔のまま俺の方へと身を乗り出して、右手で玉袋を下からすくうように包みこんだ。


「うっ、ああっ」


 袋の付け根を四本の指先で軽く何度も掻かれ、つつ、と裏筋をなぞり上げた人差し指の腹が、山のてっぺんでピタリと止まる。
 そこは先走り液によって布地が濡れて黒ずんでおり、光を鈍く照り返していた。


「お漏らししてるじゃない……もしかして興奮して感じてしまったの? まだ触ってもいないのに……」 


 グロテスクな肉の塊を布越しにグリグリと虐めてとても楽しそうな顔の黒猫。


「とんだ早漏ね。情けないオチンチン……いつもシコシコしているからよ」


 少しも恥らう様子もなく、自然と言葉責めを実行できる俺の彼女。
 もしも第二外国語に隠語があったら履修即単位は間違いあるまい。
 この子供のような小さな口から淫猥な言葉が吐きだされているのを見ると、黒猫を汚してしまったようで興奮する。


「ねえ、いつもどのぐらいの頻度でオナニーしてるの?」
「えっと、たしか週に一回ぐら、いッ!?」


 グッと爪を立てられる。


「嘘おっしゃい。本当のことを言わないと、尿道に親指突き立てるわよ」
「ふ、二日に一回です!」


 正直に答えると俺の相棒は解放され、下着越しに亀山君の頭がいい子いい子となでなでされる。
 間接的な愛撫だが、ズボンの上からよりもはるかにクリアな感触に亀頭がぷっくり充血していった。


「……意外に多いのね。オカズは?」
「も、もちろん……いつも黒猫に決まってるだろ」
「へえ……」


 ごめんなさい、半分嘘です……男なら分かるだろうけど、自慰の自の字は自由の事。
 そりゃ黒にゃんとの情事を思い出しながらするマスターベーにゃんもまた格別だけど、実際オナネタはその時の気分によるのだ。


「それならあなたにオナ禁を命ずるわ」
「はいぃ!?」
「あら、私をオナペットに使ってるのなら別にいいでしょう?」


 まるで俺の嘘を見透かしたような、小悪魔染みた笑みだった。
 こ、このS猫は、俺のささやかなプライベートタイムまで奪おうというのだろうか……。


「……なによ、私とのえっちだけじゃ足りないというの?」
「うっ、そういうわけじゃなくて……」


 そ、そんな拗ねた顔されたって……。
 もしオナ禁・誓いウォーカーになったとしても、時間が経てばダースベキダーになってちゃうんだもん!


「……もういい。それならその気にさせてあげる」


 そう言って、俺の耳元に顔を近づける黒猫。
 輪郭を確かめるような手つきで、隆起した黒いパンツに白い指先が絡みつく。


「くすっ…………痛めつけられて、縛られて、罵られて……それなのにこんなに固くするなんて」


 耳元で囁かれながら、やわらかな手のひらでクニクニシュコシュコと軽く扱き始めた。


「よっぽど虐められるのが好きなのね……どうせこんな風にされたら、きっと妹にだって欲情するんでしょう?」
「あっ、ああっ」


 ようやく辿りついた本格的な愛撫に、どっと熱い塊が海綿体に流れ込んだ。
 下着がチンコの裏面を擦り、ゴワゴワとした感触が無理やり性感を高めていく。
 一定のリズムで上下に擦られると、たまに下着の裏地がカリ首に引っかかって、その度に腰が跳ねそうになった。


「あなたは私のモノなのよ? だから、あなたの下半身も私がちゃんと管理しなきゃ」
「うあっ……そっ、そんな理屈っ……」
「論理じゃなくて、これは感情の問題なの。……あなたが私以外の女に心を奪われていたら、一秒だって我慢できない」


 たまらない。
 女としての独占欲をありありと見せられて、俺のチンコは嬉しい嬉しいと叫んでいる。
 だんだんと扱く力と速度が上がっていき、摩擦による痛みと快楽がごちゃ混ぜになって陰茎を満たしていった。


「ッ……くろっ、ねこ……そんなに、されたら、もうっ」


 このまま出してしまったらパンツが汚れてしまうので、下着の中では放つまいと必死に我慢する。
 だが、下腹部に力を込めると律動した肉棒の先端が強く布地に擦られ、不規則な刺激にビクリとまた跳ねて……。
 そんな必殺コンボにハマって、どんどん整いゆく射精の準備。


「情けない顔……すごく素敵よ」
「くっ、ああっ……!」


 その乱暴な手つきには、もはや手加減の欠片もない。
 亀頭が下着に擦れまくって、布に連動して柔らかい表皮が芯の上を滑りだすと、いよいよ限界が近づいてくる。
 尿道からは先走り液が強制的に絞り出されて、黒ずんだシミが広がっていた。


「や、やばいって! う、くっ……もう、出るっ……!」


 出したくないのに、身体は勝手に反応する。
 ついにチンコが不随意に痙攣しだし――


「くくっ、残念でした」


 黒猫の手が突然止まった。


「え……? あっ、うぅッ!?」


 そして絶頂を目前に控えて最高に敏感になったところを、黒猫は布越しにさわさわと撫でてくる。
 陰茎は溜まった物を吐きだそうとしつこく脈動を繰り返すが、精液は陰嚢に溜まったままだ。


「ちょっとぐらい我慢なさい……だって、肉欲に駆られるまま必死に腰を振るあなたって、最高に可愛いんだから」


 黒猫は俺の首筋に顔を埋めたまま、俺のパンツのなかに上から右手を突っ込んだ。
 まるでワイングラスを持つようにして、二本の指の間に下から掬われ挟まれる感触。
 先走りを馴染ませるように、亀頭の上で彼女の親指の腹は円を描きだす。


「なにも私とセックスする時まで精液を溜めていなさいというわけじゃなくて……もちろんそうしてくれたら嬉しいけれど……オナニーしたくなったら、私が搾り取ってあげると言っているのよ」


 最も敏感なところを撫でられ、亀頭に血が流れ込み張り裂けそうなほどパンパンになる。
 鈴口から零れるぬるぬるの液を掬っては全体に塗し、その刺激でまたカウパーが溢れだした。
 土踏まずが熱くなって、グッとつま先を丸めてしまう。


「粘ついてくちゅくちゅいってる……ほら、あなたにも聞こえるでしょう?」


 いきなり耳の中に入ってきたのは、ぬるっとした熱い黒猫の舌。そのまま俺の耳を吸い、舐め、嬲りまわす。
 くちゅ、くちゅ、とわざとらしく音を立てられ、全身の性感が研ぎ澄まされていく。
 黒猫はその間にも、俺のジョイスティックをウメハラ持ちで弄ぶ。


「こ……れっ、やば、いっ」


 脊髄をかけぬける激烈な快感に体を反らせると、手首がぎゅっと絞められて拘束されていることを改めて実感する。
 二本の指で皮を根元に引っ張りながら、露出した亀頭をひたすら親指で責めたてる黒猫。
 射精を促すものとは趣が違う、自慰では決して味わえない暴力的な快感に思わず声が漏れだしてしまう。


「一体とこが気持ちいいのか、いつイキそうになってしまうのか……あなたの反応を見れていれば、私の“眼”にはわかってしまうのよ」


 その言葉通り、根本を挟む二本の指が不意に上下しだして簡単に射精までもっていかれそうになるが、ぎりぎりのところで動きが止まる。


「ね、素敵でしょう?」


 そして、先走り液でコーティングされた亀頭の丹念な研磨が再開される。
 時折思い出したかのようにいきなり竿を扱かれ、絶頂に達する一歩手前で押しとどめられること数度。


「ひっ、はひっ――く、くろねこぉ……もう、もう、イカせてくれよぉ……あっ、ぐぅぅ」


 すっかり参ってしまった俺は、乾燥して粘ついた咽から懇願の声を振り絞った。


「じゃあ、もう一人でオナニーしないって約束する?」
「するっ、するからっ……」


 黒猫は俺の真意を確かめるように、わざわざ顔を真正面から覗き込んできた。
 色欲に曇ったその瞳の奥には、情けない顔をした俺が見える。


「ふふ、お願いする時は何と言うのだったかしら?」
「い、イカせてくださいっ、お願いします!」


 そんな恥も外聞もない叫びを聞きとげた黒猫は、にやりと笑ってから俺のチンポを五本の指で握り直した。


「それじゃあ……お望み通りイカせてあげる」


 ぐちゅぐちゅぐちゅっ、とすっかり汁まみれになったぬるぬるのペニスを一気に扱きたてられる。
 小さい手のひらが、信じられない勢いで亀頭とカリを擦り上げ、まるで熱湯に溺れているようだ。
 腹の底で快感が爆発して全身がゾクゾクと震え、散々焦らされた俺はあっという間に上りつめた。 


「ああっ、い、いくっ、いくっ!!」


 腕が暴れて手首がギチギチ締め付けられ、背骨が折れそうになるほどのけ反って腰を浮かしてしまう。
 快感に耐え切れず頭が後ろに反り返り、喉が伸び切り、顎が天を衝き……俺はついに絶頂を迎えた。
 だが、射精は許されなかった。


「ひぎッ!」


 黒猫が竿の根元をぎゅっと握り込んだのだ。
 行き場を失った精液が尿道の中で暴れ回り、突然の痛みに喉の奥で呼気と吸気がぶつかった。
 未だに肉棒をキツく握り締めている黒猫を涙目で見やる。


「にゃ、にゃんで……?」


 息切れしながら訊ねると、黒猫は最高に底意地の悪い笑顔を見せた。



「あら、イカせてあげるとは言ったけど、出させてあげるとは言ってないわよ?」



 え、えッ、エロネコォォッッ!!!!


 内心で血涙を流しながら:(;゙゚'ω゚'): みたいな顔をする俺を尻目に、艶めかしい仕草で立ち上がる黒猫。


「だって、あなた踏んでほしいんでしょ…?」


 黒猫は後ろの壁に軽く寄りかかり、紺色のソックスに包まれたちいちゃな右足を俺の股間に乗せてから言った。


「あなたの最初のお望み通り……パンツの中をグチャグチャにしてあげる」





つづく。



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最終更新:2011年01月23日 10:12
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