黒の予言書のその後2


獣達をも寝静まる深夜。
薄暗い部屋の中で響くのは、マウスのクリック音のみ。

あちらの世界では女王たる地位で全てを支配していた私も、
此方の世界では単なる少女の体を持った人間に過ぎない。

そのため、足りない知識を補うための情報収集は欠かせない。
幸いなことに、私にはその手段が用意されていた。

「ふん、なるほどね………」

普段は見ることのないサイトのリンクを辿り、テキストを目で追う。

「裏筋をチロチロ舐めると……ふん」

こんな説明じゃ、裏筋ってどこだか分からないじゃない。

私は、先ほどとは別の―――
画像付きで解説されているサイトを探し出す。

「そう……なるほど……え、そんなところを?」

同人誌では割とよく見かける行為であるため、
どのような事をするのか、大体は分かっているのだが。
しかし―――

「絶対に歯は立ててはいけない…袋は優しく…ね」

彼を喜ばせたい。彼に失望されたくない。

この前の花火大会の夜、初めて繋がった日から、
日増しにその想いは強くなっている。

私は知識を増やすことでしか、この胸の疼きを止めることができない。


 ***

翌日。

夜に全く眠れなかったため、一日中眠気が取れなかった。
こうして彼と帰ってる間も、歩きながらうとうとしてしまう。
まったく、弱弱しい肉体だこと。

「今日はずっと眠そうだな~瑠璃。ちゃんと寝たのか?」
「昨日の夜はちょっと調べものをしていたのよ……ふぁ~」
「同人誌作りもいいけど、体も大事にしろよ」
「ふん。わかっているわよ」

誰のせいで眠れなかったと思っているのかしら。
まったくこの人は―――

「ちょっとうちで休んでいけよ。ぶっ倒れちまうぞ」

―――この人は、優しいんだから。

「では、お言葉に甘えさせてもらうわ」


彼の家に着くと、ちょうど彼の母親が出かけるところだった。
付き合う前からたまに出くわしてはいたのだが、
正式に彼女になってから会うのは初めてだった。

「あら、五更さん…だっけ?久しぶりね」
「あ、は、はい。お久しぶり、です………」

いつまで経っても慣れない。
彼の母親に出くわすと、いつも黙って俯いてしまい、ちゃんと話ができない。
きっと彼の母親からの印象は、あまりいいものではないだろう。

「京介あんた、五更さんがおとなしいからって手ぇ出すんじゃないわよ」
「………へいへい、わーったよ」

あなた、もう手出したじゃない。

私の無言の視線に気付いた彼は、少し気まずそうに言った。

「まーとにかく上がれよ」

コクリ

私は頷いて、靴を脱ぐ。

「お……お邪魔します…」
「はい、ゆっくりしていってね」

彼の母はそう言うと、玄関から出て行った。


「………っはぁ~」
「お前、お袋にはまだ慣れないんだな」
「……ニヤニヤしないで頂戴」

仕方ないじゃない。
緊張するなと言う方が無理な話よ。

「とにかく部屋で休んでろよ。俺はちょっとシャワー浴びてくるから」
「京介………」
「ん?」
「あ……いや、なんでもないわ」

私も一緒に―――なんて、言えるわけもなく。
そのまま階段を上がり、通いなれた彼の部屋に入った。

 ***

部屋に入り、ベッドに寝転がろうとしたのだが。
私の目に、あるものが飛び込んできた。

「あ、京介の、パンツ………」

無意識にそれを拾い、鼻の前に持ってくる。

「クンクン………はっ、何を」

私は何をやっているのだろう。
これではまるで、私が変態であるかのような―――

それでも私の手はそれを離そうとはせず、
そのままベッドに横になった。

「すー………はぁ、せめて彼が帰ってくるまでは………大丈夫よね」


右手で彼のパンツを鼻先まで持ってくる。
彼の雄の匂いが、私の脳髄を包む。

私は左手を下半身まで伸ばし………下着の中に入れた。
匂いを嗅いだだけだというのに、既にそこは濡れ始めていた。

「京介っ……はぁ、京介……」

この前、私のパンツをくんかくんかしていた京介も、
こんな気持ちだったのだろうか。

「あぁ……だ、だめっ…あっ」

今まで自分でする時には、穴より少し上の敏感な突起に触れるだけであった。
しかし、今日は少し違う気持ちになっていたのだ。

左手の中指の先端を、少しだけ中に入れてみる。
そして、彼のモノが入ってきた時の記憶を、あの甘美な時間を思い返す。

「うぅ……ふんっ…あぁ……入ってる」

ふと見ると、彼のパンツは私のよだれでグチャグチャになっていた。
私は思いつくままに、彼のパンツの中に手を入れ、指を1本だけ立てる。
この指を、彼のアレに見立てて―――

「ちゅぱ……ちゅっ……はぁ、京介、気持ちいい?」

昨日調べ尽くした知識を一つ一つ思い出しながら、
彼のパンツ越しに自分の指をしゃぶり続ける。

「れろ…ちゅ……んっんっ……んふっ」

同時に、左手の中指を激しくかき回す。
クチュクチュと音を立てながら、私の体は高まっていく。

「京介っ………京介、んんんっ」

ビクンッ ビクンッ

私の体は大きく震え、フワッとした感覚が全身を包んだ。



「はぁ、はぁ、はぁ」

こんな風になったことは、かつて一度もない。
私はその時、人生初めての絶頂を経験していた。
彼の部屋で、彼のパンツを片手に。


カチャ………


ゆっくりと、部屋の扉が開いた。


「……瑠璃?」

み、見られていた!?
どこから!?

私は無駄だと知りながら、パンツを掴んだ右手を隠した。
京介は少し照れくさそうに、私の方に近づいてくる。

「ち、違うのよ。これは、その……」

何も違わないけれど……違うのよ。

「これからはお前のこと、変態後輩と呼んでやる」

な……なんてこと言うのよ。

「あ、あなただってこの前」
「ああこれで、おあいこだ」

彼は私のすぐ横に腰掛けると―――
優しく私を押し倒した。

「さて、このいやらしい雌をどうしてくれようか」
「…な、なによ。仕返しのつもり?」
「さあな」

彼は私の上に覆いかぶさると、私の唇を奪った。


はじめの頃は数えていたキスの回数も、今となっては何度目かわからない。
それでも、私の頭は同じようにぼーっとしてしまう。

「ちゅっ……もう。私をどうするつもり?」
「ふん、こうするんだよ」

彼は私の濡れそぼった下半身に手を伸ばす。

「あぁっ………」
「ったく一人でこんなにして。お仕置きが必要だな」

彼は私のパンツをスルスルと脱がすと、
股の間に顔を埋めた。

「ひゃっ…だめ、そこ汚いから……」
「お前の体に汚いところなんてねーよ」
「んっ………」

この前、初めてした時だって、そこは指で触れただけだった。
いきなりこんな風に舐められるだなんて………

「あっ………そこ、すごく感じる………」
「ここか?」

彼は私の指示した場所を、丁寧に何度も舐める。

「その…どこがいいとか、言ってくれよ」
「え、えぇ……はぅんっ」

少しぎこちない感じはするけれど、
私の感じるポイントを、的確に攻めてくる。

「んんっ…あ、あの…」
「……ん?どうした?」
「ゆ…指を………入れて……」

自分の欲求を口に出して伝えることは、
想像よりもずっと恥ずかしいと、私はその時知った。

彼は左手で私の頭をなで、キスをしながら―――
右手の中指を、私の中に挿入した。

「はぁ…んっ」

こ、これは……

彼のモノが入ってきた時とは違う、
自分の指でした時とも違う。


「すごいな、こんなに濡れるなんて」
「ば、莫迦……んっ……口に出して言わないで……」
「ああ、だけどよ」

クチュクチュ

彼が私をかき回す音が、私の耳にも聞こえる。

「本当にすごいな。この前はここまでじゃなかったもんな」
「そんな風に言わな…はぁんっ」
「お、この辺がいいのか?」

ば、莫迦、そんなニヤニヤした顔をしないの。
いやらしい。

「んあっ……あっ……あんっ…あぁ」

駄目、だんだん高ぶってくる体に、思考が追いつかない。

「あぁっあっ…あっあっ…も、もう…」

彼の手がここに来てさらにスピードを上げた。

「だめ…だめ…いっいくっ!」

ビクビクビクッ

さっきよりも強い快感の波が私の体を包み込み、
私は思考能力を失ってしまう。

「……はぁ……はぁ…はぁ」


私は彼の肩に頭を乗せ、ただ呼吸をすることしかできなくなっていた。

「よかった……」

彼がつぶやく。
その言葉の意味が理解できず、私は彼に尋ねる。

「何が…はぁ、はぁ…よかったの?」

「いやな、ほら、この前は俺だけ先に気持ちよくなっちまったからな」

彼は照れくさそうに頬をかく。

「今度はお前をイかせようと思ってさ……ネットとかでいろいろ調べたんだ」

ふふふ。何よ。
結局、彼と私は同じことをしていた、というワケね。
なんだかおかしくて、少し安心して。
すごく、眠くなってきてしまったわ。

「…今度は」

私は眠りに落ちそうになるのをギリギリで留め、彼につぶやく。

「今度は、私が口でしてあげるから、楽しみにしておきなさい」

彼の返事を聞く前に、私の意識は途切れた。



おわり




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最終更新:2011年03月17日 23:46
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