るりのもの 02


幼馴染のきょうちゃんに恋人が出来たのは、
たしか、夏休みの終わりだったかな。

あの時の私は本当に落ち込んで―――
しばらくは夜も眠れなかったんだ。

大好きなきょうちゃんを、
五更さんに取られてしまって。
家族にも、いっぱいいっぱい心配をかけちゃった。


「ねぇちゃん、落ち込むのはわかるけどさ」

「………いわお…」

「せめてなんか食べねぇと、死んじゃうぜ」


優しい弟を持った私は、幸せものだなぁ。
私は、少しずつ少しずつ、受け入れていこうと思っていた。


―――そして、秋を越え、冬を迎える。


きょうちゃんと共に勉強し、励ましあう生活。
それもそれで悪くないなぁなんて思ったりもしたんだけど。


「はぁ……何か違うんだよ………」


私は眼鏡を拭きながら考えていた。

何もしないで受け入れて。
例えば10年経って、きょうちゃんが結婚して。
私じゃない人と家庭を築いて。

それに私は耐えられるの?


……


………私は、そっと決意した。


「…ん、やるだけやってみようかなぁ」



きょうちゃんが五更さんを好きなのは分かってる。
五更さんがきょうちゃんを好きになっちゃう気持ちも分かる。

それでも、私はきょうちゃんを私の元に取り戻したかった。
わがままなのかなぁ、とは思うけど。
でも決めたんだ。
絶対にきょうちゃんを―――


―――あれ?
そういえば、ずっと昔。
そう、子供の頃にも、こんな感情になったことがあった気がする。

私の中でずっと渦巻いていた黒いモノが、私を支配し始めていた。


◇ ◇ ◇


「私の家で、合格ぱーてぃーをやらない?」


私は、クラスメイト数人がいる場で提案した。
ちょっと突飛な提案かもしれないけどね、えへへ。


「気が早ぇんじゃねーの?」


きょうちゃんはそう言う。
うーん、確かに、その通りなんだけど。

作戦を実行するのにも、たいみんぐってものがあるんだよ。
日程をずらすワケにはいかないんだなぁ。


「あのね、ここにいるみんな、滑り止めの私立に受かったわけだし、
 ひとまず浪人はなくなったから」


赤城君の心底ホッとして緩んだ顔を見つめる。
自己採点の結果、すごくギリギリだったもんね。
今日のついさっきまで、ヤキモキしていたと思う。


「きょうちゃんもみんなもずっと頑張ってるし、
 たまには、いいんじゃないかなぁ?」

「高坂、俺も賛成するぞ。
 たまにはパーッとやろうぜー」

きょうちゃんは、『仕方ねーな』という顔をしながらつぶやいた。


「ま、息抜きも必要かもな………たまにはよ」

「やったー!ありがと、きょうちゃん!」

「な、なんで俺にお礼言うんだよ」


ふふっ……
私は心の中で、そっと微笑んだ。

はぁー、思ったとおりに進んでるなぁ。
やっぱり、きょうちゃんのことを一番理解してるのは私だよ。

思い描いていた通りの流れにひとしきり満足して。
そして、再び計画を思い返す。

まだ事前にやっておかなきゃいけないこともあるし。
作戦もいろんな『ぱたーん』を用意しといた方がいいよね。

よーし、がんばろっと。


◇ ◇ ◇


「人の服を脱がすのって、けっこー難しいんだねぇ」


私は眠っているきょうちゃんの服のボタンを外しながらつぶやいた。
男の子の服のボタンは、女の子のと逆だからかなぁ。


「ん……」

「―――っ!?」


び、びっくりしたー。
きょうちゃん起きちゃったかと思った。


ちなみに今は作戦①『寝てる間に既成事実』を実行中です。
けっこードキドキだよ。


ってことで………

………ふぅ。


なんとか上は全部脱がすことができたー。
ふーん、きょうちゃん………意外と筋肉あるんだぁ。

大胆になっていた私は、きょうちゃんの乳首をペロっと舐めてみる。


「んんっ………すぅー………」


きょうちゃん、かわいい。
これくらいの刺激じゃ、目は覚めないみたいだし。

だいぶ前のことになるんだけどさ。
おじいちゃんが、ふざけてお酒を飲ませたとき、
すぐに酔っ払ったきょうちゃんは、朝まで起きなかったんだよね。

だからお酒を飲んで眠ってしまえば。
うまく行けば、きょうちゃんが起きずに
『最後まで』できるんじゃないかと思ったんだ。

思ってたんだけど―――


「ん……んぁ?…っ!ま、麻奈実!?」

「っ!?」

「…お前、なにして……んだ?」


き、きょうちゃん起きちゃった。
ちょっと乳首舐めすぎちゃったかなぁ。

まだお酒が抜けきっていないのか、朦朧としてはいるけれど。

仕方ない、作戦②『責任転嫁』をやってみよう。

「きょうちゃんの方から、誘ってきたんでしょー?」

「は?」

「俺のはいぱー兵器を見せつけてやる!って」

「そんな事…言った……気もするけど………」

「言ったんだもん。ちゃんと責任とってね、きょうちゃん」


ふふっ、頭が混乱してちゃんと判断できていないみたいだね。
焦点の定まらないきょうちゃんの表情……ちょっとかわいいかも。

逆に起きてて記憶があるほうが、私も都合がいいしなぁ。


「きょうちゃんに誘われて、私こんなにドキドキしてるんだ」

「ちょ、おま、胸………」


きょうちゃんの手を、私の胸のところまで持っていってみた。
ふふ……きょうちゃん、指がぷるぷるしてるよ。

本能では揉みたいのを、理性で抑えてるんだねぇ。

五更さんはとってもかわいい子だけど、おっぱいは小さかったもん。
前に見たきょうちゃんの『これくしょん』は、眼鏡で胸の大きい子ばっかだったし。

だから、こういう風にすれば私にも勝ち目があると思うんだ。
ほら、きょうちゃんのズボンもしっかり膨らんでる。


よし、そろそろ次に行ってみよう。
作戦③『えっちな誘惑』


「きょうちゃんだけ、脱いで楽な格好なんてズルいよー」

「……んな、何を言い出すんだお前は」

「私も脱いじゃおーっと」


この日のために、私の持ってるなかで一番かわいい下着を選んでおいたんだ。
ずっと食欲なかったから、お腹周りもだいぶ痩せたし。

その、桐乃ちゃんとかと比べれば見劣りしちゃうだろうけど………
自分なりに『せくしー』なぽーずも研究したんだから。

「お、お前も酔っ払ってるのか?」

「ん?そうだよ、一緒にお酒いーっぱい飲んだでしょ?」


なーんて、私は一滴も飲んでないんだけどね。

ぱーてぃの買い出しの時、赤城君に頼んでお酒買ってきてもらったの。
ほら、大学生になったら飲み会もあるだろうし。
今日はその練習にしようって提案して。


「………よいしょっと」


私は下着姿になると、きょうちゃんのお腹の上にまたがった。


「きょうちゃん、私の下着姿、どうかな?」

「ど、どうって………なんて言えばいいんだよ俺は」

「思ったまんまでいいよ。五更さんと比べて、せくしー?」

「な……そ、そんなの答えられるわけないだろ………!」

「ふふふっ…答えない子にはオシオキしちゃおっかなぁ」


私は背中に手を伸ばし、ブラのホックに手をかける。


「ちょ、ちょっと待てって」


きょうちゃん、口ではそう言ってるけど………
さっきから私の胸を凝視してるねぇ。

うまくいってるみたい。


「んー…んーしょっと」


少し手間取るフリをして焦らしながら、ブラジャーを外してみた。
本当はきょうちゃんの手で外してほしかったんだけどなぁ。

さすがにこの様子では、まだ自発的に私を襲いそうにはないしね。

でもブラジャーが外れた瞬間。
きょうちゃんの視線が乳首に集中したのを、私は見逃さなかったよ。

「胸……大きすぎて気持ち悪いかなぁ?」

「そ、そんなワケないだろ…」

「きょうちゃんは、私の裸、どう思う?」

「そ、それは……そんな、言えるわけないって」

「やっぱりダメかなぁ?」

「だ、ダメって言うかさ………」


私は左手で自分の胸を揉み始めてみた。
きょうちゃんの持ってた本の女の人がこうやってたんだよね。


「きょうちゃん……はぁん……きょうちゃん」

「な……なにしてんだお前」


明らかに動揺してるきょうちゃん。
ふふふ、顔が真っ赤だよ。

私は右手を自分の……下の方に持っていく。
自分でするときにも、こんなに濡れたことはないよ。
そのくらいビショビショに濡れちゃってた。


クチュっ

「はぅんっ……」


音が出るくらいかき混ぜると、
自分でも我慢できなくて声が出ちゃう。


「あぁん……ああ……うぅんっ……んはぁ……」

クチュクチュクチュ


いやらしい音、いやらしい声、いやらしい匂い。
ふふっ、きょうちゃんも私に釘付けになってる。

いつもはお布団の中でこっそりしてるひとりエッチを、
今日はきょうちゃんのお腹の上でしてる。

なんだかいつもより、感じやすくなってるみたい。

「あぁん、きょうちゃん、きょうちゃん……欲しいよぅっ…」

「ま、麻奈実……」

「おっぱい…んぅぅん……はぁ…揉んで欲しいよ………」

クチュクチュ……

「こ、ここに……おちんちん入れてよぉ……あぁぁ…」


だんだんと高ぶってくる私。
ここまで来てしまったらもう止められない。


「あぁ……あぁん……あれ……今日ちょっと……」


いつもはもうちょっとイっちゃうまでに時間がかかるのに。

―――なんかだめ、頭の中が真っ白になっちゃう。


「……はぁ、だめ、もうだめ……い、いっちゃう、きょうちゃーん!」


ビクンっ


はぁ、はぁ……誘うだけのつもりだったのに、ちょっとイっちゃった。
私こんなにえっちな子だったっけ……。

私はそのまま前に倒れ、きょうちゃんに覆いかぶさる。


「お、おい麻奈―――」


きょうちゃんの顔を私の胸が覆い隠す。
きょうちゃんの熱い吐息が胸の隙間から漏れ出ている。

「―――っぷぁ、い、息できねぇって。殺す気かよ」

「ねぇ、私の『おなにー』どうだった?」

「ど、どうって言われても……び、びっくりした」

「それだけ?」

「他にどう言えってんだ」

「いろいろあるじゃない。興奮した、とか。かわいかった、とか……」


私はきょうちゃんの下半身に手をのばす。
そこはもう、はち切れんばかりにパンパンに膨らんでいる。


「襲いたくなっちゃった、とか」


ふふふ、前に本で読んだけど。
こうなっちゃった男の人は、もう落ちたも同然なんだよね。


「私、きょうちゃんとえっちしたいな」

「ちょっと待てって。だいたい俺、彼女いるし……」

「ダメ?」

「あぁ、ダメだ」


はぁ、きょうちゃんも頑固だねぇ。
本当はえっちしたくて仕方ないくせに。
きょうちゃんの優しさも、こういう時には邪魔になるものなんだねぇ。

仕方ない、じゃあ作戦④に行ってみようかな。


「あのね、私、彼女にしてくれとか言わないよ?」

「えっ?」


きょうちゃんがキョトンとした顔で私を見つめている。
突然何を言い出すのか、分からないって顔だね。

「五更さんとの仲を邪魔したりとか、絶対しないから」

「どういうことだよ」

「私はただ、きょうちゃんが幸せだったらそれでいいんだよ」

「………お、お前」

「きょうちゃんはどう?私に幸せでいて欲しい?」

「そりゃーな……長い付き合いだし、
 不幸になって欲しいとは思えねぇよ」

「……うん。じゃあさ、えっちしようよ」

「なんでそうなる!?」


私は左手できょうちゃんの下半身をまさぐりながら、
右手で自分の下半身をかき混ぜる。


「くふぅん……はぁ、はぁ、はぁ………
 きょうちゃんとえっちするのが、私の幸せなの」

「バカ、酔っ払いすぎだ」

「絶対秘密にするし、今日だけの関係でもいい。
 今日、安全日だから、中に出してもいいんだよ」

「な、何言ってんだよお前……」


これが作戦④『都合のいい女』だよ。

きょうちゃんのオチンチン、ビクビクしてる。
えっちしたくて仕方ないって感じ。

もう一押しでいけるかな?
私はズボンの上からきょうちゃんのモノをくわえてみた。


「ふぁん……おん……ふぅ……」

「うぉ……ちょ、ちょっとやめろって」


私がズボンを下ろそうとしたところで、
強引に引き剥がされた。

うーん、これもダメかぁ…。
五更さんもなかなかやるなぁ。

仕方ないなぁ、これが最後の作戦だけど。
あんまり使うとウザい女と思われて嫌なんだけどなぁ。
作戦⑤、やるしかないか。


「…私、魅力ない?」

私は涙を溜めながら、きょうちゃんを見つめる。
そして再び、きょうちゃんの上にのしかかった。

なんだかんだでお酒の抜け切っていないきょうちゃんは、
あまり強い力を出せないみたい。

私の優位はまだ変わらないはず。


「麻奈実、ホント今日は酔っ払いすぎだぞ……
 どうしちまったんだ」

「…私、魅力ないのかなぁ?」

「魅力ないってわけじゃないけど、俺はほら、彼女いるし」

「彼女いるのに、おちんちんこんな風にしてるの?」

「こ、これは生理現象だ」

「やっぱり、魅力ないんだぁ……うぅっ……うっ」

「な、泣くなって。……み、認めるよ、お前は魅力的だ」


作戦⑤『泣き落とし』
きょうちゃんは昔からけっこーこれに弱いんだよね。


「……うぅ…私、魅力的?」

「…あ、あぁ、すごくえっちだ」

「どの辺が?」

「………言わなきゃダメか?」

「……うぅっ…うっ…やっぱ魅力的なんてウソなんだ」

「わ、分かったからなくなよ!
 お、おっぱいがその、すごく魅力的だ」

「襲いたいくらい魅力的?」

「まぁ、な」

「じゃあ、証拠を見せてよ」

私は下のほうにずれると、きょうちゃんのズボンを脱がしにかかる。


「や、やめろ!」


ズボンを脱がそうとすると、きょうちゃんはまた私を拒絶する。
なんだか少し、拒絶の感じに違和感があるんだけど。


「やっぱりウソなんだ、魅力的だなんて」

「……み、魅力はあるよ。ほら、俺のモノも反応してるし…」

「………じゃあ……抱いてよ……」

「……抱きたい気持ち、ないって言ったらウソになるけど」

「…うぅっ…うっ……お願い………」

「………俺は、お前を抱かないよ」


……ダメだった。
もう作戦も尽きちゃったよ。


ここまでやって、きょうちゃんもしっかり反応してるのに。
なんでダメなんだろう。
なんで抱いてくれないの?

泣き落とし作戦のための涙が、
いつしか心の奥底から流れ出る涙に変わっていた。

私は女じゃないってことなんだろうか。
いや、彼のモノは反応していたから、それはないと思う。

それにさっきの拒絶された時に感じた違和感。
もしかしたら、貞操を守る以外に………何か理由があるのかもしれない。

じゃあやっぱり………あの女か。


私は以前よりさらに濃くなってゆく私の中の暗闇を見つめる。
私は変わってしまったのだろうか。

いや、たしか………



………ふと、子どもの頃を思い出す。
あれは確か、小学生の頃だったかなぁ。


『まなちゃん、なーに?』

『あのね…きょうちゃん、わたしのことスキなんだって』

『えー、でもキリノもおにいちゃんスキだもん』

『だけど、兄妹はけっこんできないんだよ?』

『………』

『あのね、かけっこすると、きりのちゃんだけおそいでしょ?』

『……う………ひっく……』

『きりのちゃんと、鬼ごっこしてもつまんないもん』

『……うぅぅ……まなちゃん、ひど…』

『きょうちゃんも、そう言うと思うなぁ』

『………う…うぅ……うぇ…うぇぇぇぇぇ』


そういえばあの頃から、桐乃ちゃん陸上始めたんだっけ。
まさか私のせい……なんてことはないよね。

なんだ、そうだ。私の中の暗闇は、私が変わったんじゃない。
ただ、きょうちゃんを手に入れていた私は、暗闇の存在を忘れていただけなのだ。


涙を拭き、我に返ると、私は服を着始めた。
今日はもう無理そうだなぁ。

服を着ながら、残念に思っていた。
せっかく『危険日』に合わせて家族に温泉旅行をプレゼントしたのに。


あ、そうだ。
後で五更さんに電話でちゃんと謝らなきゃ。
ふふふ、今日のこと、しっかり説明した上でね。

私はもう、黒い感情を隠せそうにない。






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最終更新:2011年04月06日 15:48
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