初めての証



「おはよう、瑠璃」
「おはようございます、せ……京介」

2学期が始まって数日が過ぎていた。
最近俺は、毎日瑠璃と一緒に学校に通っている。

爆発しろと言われても仕方ないくらい、充実した毎日だ。

「京介、あのね……」
「お、おう……」

まだ付き合って日が浅い俺達は、
お互いの名前を呼び合うたびにドキドキしている。

初々しいって?
ふん、バカにするならしやがれ。

「そうだ、瑠璃」
「どうしたの?」

俺は、今日の本題を切り出すことにした。
内心かなーり動揺しているが、そんなものチラリとも見せず。

「ええええっとだな」
「何を動揺しているの」


ふっ。
まぁ落ち着けよ、俺。

俺の動揺が伝染してしまったのか、
なんだか瑠璃まで顔を赤くしている。

「今日なんだが、親も桐乃も家にいないんだ」
「そう……」
「その、帰りにうちに寄らないか?」
「それはいいのだけど……」

瑠璃は何か言いづらそうな顔でこちらを見つめている。
……大丈夫だ、安心しろ。

「ちゃんとコンドームは買っておいたぞ」
「ば、莫迦、そうじゃなくて……」
「ん?」

瑠璃が俺の股間を指差してる。

「ふぅ、まったく。社会の窓が全開よ、変態先輩」
「……あ」
「煩悩にやられて脳味噌が腐ったのではないかしら」

ひでぇ言い草。でも、実際そんなに悪い気がしないのは、
こいつの返答に照れ隠しが混じっているのが分かるからだろう。


可愛い彼女である。

「あら、罵られて喜んでいるの?とんだドMね」
「おま」
「妹にもよく苛められて喜んでいるものね。
 こんなド変態を恋人に選んでしまうなんて、早まったかしら」

ぜ、前言撤回。
ひどすぎね?

肩を落としてため息をつく俺の耳に、
少し背伸びをした瑠璃がそっとささやく。

「や……やさしくしてね、京介」

そういうと、早足でスタスタと歩いていってしまう。

たぶん俺は、この上なく気持ち悪い顔でニヤニヤしていたことだろう。
俺を追い越していった一年の女子が、俺を振り返るなりすごい顔をしていた。

ま、とりあえず……瑠璃を追いかける前に、俺はチャックを上げた。


◇ ◇ ◇


「高坂先輩!」
「どうした瀬菜」
「ハァハァ……ちょ、ちょっと」
「?」

瀬菜がわざわざ3年の教室に来るなんて珍しい。
しかも俺に用事?

「どうした高坂……って瀬菜ちゃん?」
「あ、お兄ちゃん!」

なんでお前ら、兄妹で学校で遭遇してそんなに嬉しそうなんだ?
俺だったら絶対そんな顔にはならないぞ。
絶対にだ。

……まぁそれはとにかく。

「俺に用事じゃなかったのか?」
「あ、そうなんですよ」
「……で?」

早く要件を済ませてくれないか。
さっきから、お前の兄貴の視線が痛いんだ。

「さっき、体育の時間に、ちょっと五更さん怪我しちゃって」
「えっ?」
「今保健室で寝てるんですけど……って先輩!?」

瀬菜の言葉を全て聞く前に、俺は走り出していた。


◇ ◇ ◇

「まったく、そんな必死な形相で……ぷぷっ」
「だ、だってよ……はぁ、はぁ」

俺は今、保健室にいる。
ベッドには横になっている瑠璃。

先生はさっき、笑いながら保健室を出て行ってしまった。
気を使ってくれたのか?……んなわけないか。

「そんな心配するほどの怪我ではないわ」
「そ、そうなのか?」
「ちょっと足を滑らせて、尻餅をついてしまったの……」

そう話す瑠璃は、少し元気がないように見える。
やっぱりどっか、悪いんじゃないのか?

「尻餅ってなぁお前……」
「それはそうと、休み時間、もうすぐ終わりじゃないの?」
「いいんだよ、んなもん」

3年の2学期にもなれば、重要な単元は既に終了してるしな。
次の授業も自習の予定だし、事情を知っている赤城あたりがうまいことやってくれんだろ。


「たまにはいいだろ、こういうのも」
「私をサボる理由に使わないで頂戴」
「……なぁ、本当に大丈夫か?」
「な、何が」

やっぱり元気がない。
鈍い俺でも、さすがにこれは思い違いではないだろう。

「言いたくないならいいけどさ」
「……」
「その代わり、俺にして欲しいことを言え」
「……分かったわ」

瑠璃は俺の服の、胸の部分を引っ張る。
口には出さなくても、二人の間だけで分かる魔法の言葉だ。

「ああ」

瑠璃からの『抱きしめて』の合図に従って、俺は瑠璃を抱きしめる。

よくよく考えると、服の引っ張り方だけで相手のことが分かるなんて。
とんだバカップルだって、俺も思うけどさ。
仕方ねぇだろ、気付いたら分かるようになってたんだ。


しばらく抱きしめて、そっと体を離すと、
瑠璃は、俺の左の袖を引っ張った。

俺は瑠璃にキスをする。

「んっ……」

瑠璃の目は、少し泣きそうになっていた。
ホントはすぐにでも聞き出したいところだったが―――
瑠璃が話す気になるまでは、待ったほうがいいようが気がする。

と、急に瑠璃が何かに気付いたような表情になった。

「あのね、先輩」
「ん?話す気になったのか?」

瑠璃は俺の後ろを指差す。
振り返ると、保健の先生がニヤニヤしながらそこに立っていた。


◇ ◇ ◇

学校が終わると、俺は瑠璃と一緒に家に向かった。

「体はもう大丈夫なのか?」
「えぇ、もう大丈夫」

まだ本調子ではなさそうだが、
昼間よりは元気が戻ったかもしれないな。


今、俺達はベッドの上で二人で寝ている。
家には親も桐乃も誰もいない。

正直、今日は瑠璃を襲うつもりで部屋に招きいれたのだ。
だけど―――

「その、調子悪かったらまた今度でもいいんだぞ?」
「発言と下半身が一致していないわね」

いやいや、無理だって。
この状況で勃起しちゃだめって方が無理。

「だいたい、こうしてベッドの上まで連れ込んでおいてやめると言うの?」
「そりゃそうなんだがな」

やっぱ気になっちまうよ。
昼間、何があったんだ?

俺が目で訴えていると、瑠璃の目にはだんだん涙が浮かんでくる。

「お、おい、俺なんか悪いこと言ったか?」
「違う、違うの……京介は何も悪くないの……うっ……うぇぇ……」


ついに瑠璃が泣き出してしまった。
俺にはただ、瑠璃を抱きしめることしかできない。

俺は困惑しながらも―――少しだけ嬉しかった。

普段は強がっていて、あまり涙を見せない女の子。
でも俺の前では、こうして正直に泣いてくれる。


どれくらい時間が経っただろう。
俺のシャツはすっかり瑠璃の涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってしまっていた。

「うっ……ぐすん……」

瑠璃もやっと少しは落ち着いたようで、俺のシャツの惨状に気付いたようだ。

「ごめんなさい、京介……服が」
「あぁ、気にすんなって」

俺は瑠璃にタオルを渡すと、シャツを脱ぎ捨てた。
上半身裸の状態で、瑠璃を後ろから抱きしめる。

「話してくれないか、瑠璃……」
「あの……幻滅、しない?」
「しない」

「嫌いにならないかしら?」
「なるはずないだろ」

瑠璃は小さくため息をつき、話し始めた。

「今日ね、体育の時間に、足を滑らせて尻餅をついたの」
「あぁ」

尻餅は本当だったんだな。

「それでね。ち……膣から血が出て」
「!?」
「それでね、保健室に行ったのよ」
「そ、それで?大丈夫なのか?」

おいおい、血が出たって。

「先生が言うには」
「あぁ……」
「尻餅で、処女膜が破れたんだろう、って……」
「えっ!?」

ちょ、マジで?
そんな簡単に破れるもんなの処女膜って?

「私……」

瑠璃は再び涙目になる。

「今日、京介に破ってもらうはずだったのに……」


肩を震わせ、ポロポロ涙を零す瑠璃。
はぁ……まったく。

このかわいい恋人を、俺はどうしてくれよう。

「げ……幻滅した?」
「……くくくっ」
「な、何笑ってるの?」
「俺はお前が大好きだ、瑠璃」
「っ!?」

瑠璃の唇は、涙の味がした。
俺は瑠璃の服をゆっくりと脱がしにかかった。


◇ ◇ ◇


「じゃあ、入れるぞ」
「ちょっと待って」

瑠璃は俺のペニスを持つと、何を思ったのか……
せっかく(すげー頑張って)着けたコンドームを外してしまった。

「お、お前、なんで」
「処女膜、あげられなかった代わりに、このまま……」
「え?」
「……お願い」


お願いとまで言われちゃ、仕方ないな。ふふふ。
俺は生のまま、瑠璃の入り口に自分の分身をあてがった。

そのままゆっくりと腰を突き出す。

「い―――」
「や、やっぱり痛いか?」

すごく痛そうな表情で、首を横に振る。
説得力など皆無だ。

「途中でやめたら、呪うわよ」
「あ、あぁ」

俺はそのままゆっくりと腰を進める。

ん?
途中で何か抵抗があった気がするが……

やがて俺の分身は全て瑠璃の中に納まった。

「京介……繋がっているのね、私たち」
「そうだな、瑠璃……」

俺は瑠璃との結合部に目を落とす。


「あれ?血……」
「あ……」

瑠璃は、まだ痛みが強いだろうに、パッと顔を明るくした。

「全部破れてしまっていたわけではなかったみたいね」
「あぁ、そうみたいだな」

俺は瑠璃にキスをする。
今までにないほど激しいキス。
このまま、瑠璃の痛みをかき消してしまえばいい。

「少しずつだったら、動いていいわよ」

瑠璃の言葉に、少しずつ俺は腰を動かし始める。
平気そうに見せかけているのはかなりのやせ我慢だろう。

それが分かっていてなお、俺は瑠璃が愛おしくてたまらず、腰を動かしてしまう。

「んっ……あ……あぁん……んっ」

あぁ、こんなに人を愛おしいと思ったことは、未だかつてない。
俺は瑠璃のためなら、なんだってできるんじゃないかと思えた。

「んぁっ……あぁん……あぁ」


少しずつ、少しずつではあるが、瑠璃の吐息から快感が漏れ始める。

「少し……んんっ……気持ちよく……なって……きたかも」

もっともっと、瑠璃に快感を与えたい。
そう思いながらも、俺の限界は着実に近づいてきている。

「る……瑠璃、悪い……俺もう……」
「ふふっ……いつでもいいわよっ……私でイって」

瑠璃の言葉に、俺は腰の動きを早くする。
俺は急速に限界へと近づいていく。

「瑠璃、瑠璃、あぁ……もうイく、抜くぞ」
「ま、まって、抜かないで、もう少しっ」

瑠璃は両足で俺の腰をがっしりと掴んだ。
―――ってちょっと待て、もう無理―――


ドクン ドクン ドクン


中に思いっきり出してしまった。
これが、瑠璃と俺の初体験であった。


◇ ◇ ◇


「ねぇ京介」
「どうした?瑠璃」

俺の腕枕で猫のように甘えながら、瑠璃は俺に話しかける。

「ああああのね」
「何動揺してるんだ?」

ふぅっと息を整える瑠璃。
その仕草が可愛くて、俺はつい頭を撫でてしまう。

「ば、莫迦にしないで頂戴」
「バカになんてしてねーよ。んで?」

瑠璃は少し顔を赤らめながら言った。

「明日、母さんも妹もいないのだけど……うちに来ない?」

ったくこいつは。
これ以上俺を惚れさせてどうするつもりなんだかな。


  • おわり-

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最終更新:2011年04月20日 07:40
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