ずっと傍に

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「どこ行ったのよ、クソマネェ・・・」

俺の名前は高坂京介。
いきなりだが俺は、今とても驚いている。
なぜかと言うと目の前には半べそをかきながら「元」マネージャーを、

もとい俺を探すクソガキ、来栖加奈子がいたからである。
**********************
「俺、お前らの担当外れることになったから」

あやせからの人生相談(今回はとても長かった)を終えた俺が
加奈子とブリジットにそう告げたのは一ヶ月前のこと。

「えっ!マネージャーさん、いなくなっちゃうんですか!?」

泣きそうな顔で俺に問いかけるブリジット。可愛い。
今回の人生相談は非常に長かった。
それに伴って俺がマネージャーとして過ごす時間もいつもの比にならないぐらい長かった。
つまり、それだけ俺とブリジット達は長い時間一緒にいたんだ。
「高坂京介」として生活しているとなかなか会えるもんじゃないので、正直な話俺もかなり寂しい。
「クソマネ、なんでアンタはそういっつも・・・」

加奈子がいつもとは対照的な声で何かをつぶやく。
あまりにも声が小さかったので、最後の方はよく聞き取れなかったが。

「あん?なんてったんだ?」

「なんでもネー。ま、頑張れヨ。会社で見かけたときは声ぐれぇかけてやッから」

あ、あの加奈子がこんな台詞を・・・。信じられん。

「おう、そん時はまた頼むよ」

まあ、もう明日から担当を外れるどころか、「マネージャー赤城浩平」の存在はなくなるんだけどね。
そう思うとやっぱり寂しいな。受験生でなければもう少しここにいられたものを。

「じゃあ、俺は行くわな。いままでありがt「せ、せめて最後ぐらいマネージャーさんのために何かさせてください!」

ブリジットがそう言ったことがキッカケで、その日は俺の送別会をすることになった。
その送別会では加奈子の歌を永遠聴かされたり、
ブリジットに手紙をもらったり、
コレを送別会といわずに何を送別会と言うのかというほど普通の送別会だった。
ただひとつの疑問点は

「・・・。」

この、異常なまでにおとなしい加奈子である。

いつもの加奈子なら、ロリコンがいなくなってよかっただの、せーせーするだの、
俺をバカにしたようなことを言ってきてもおかしくないはずだ。
だが今日はどうだ。俺を罵るどころかブリジットへの悪態すら見られない。
まあ、意外としっかりしたヤツだから、最後ぐらいはいい子でいようってことなんだろうけど。
こんな送別会を開いてもらっているのに深く考えるのはやめにしよう。
赤城浩平としての最後ぐらいは、人生相談を忘れて楽しんでも・・・いいよな?

送別会を終えた俺たちは、事務所の前に来ていた。
加奈子たちは家へ帰り、俺は事務所へ戻る(まああやせに会うだけなんだが)ことになっている。

「じゃあな、2人とも。これからも頑張れよ。」
「・・・はい。」「・・・オウ。」

ブリジットと、心なしか加奈子も寂しそうだ。
お互いにかなり情を抱いてしまっているから、それもしょうがないだろう。

そうして俺は加奈子たちに背を向け、入り口の自動ドア通りぬける。

なんでいっつも加奈子の前からすぐいなくなっちゃうの、という加奈子の声は
自動ドアの隙間から俺に届くことは、なかった。


そうして今に至る。

本物の赤城と偶然事務所の前を通ったところで、最初のシーンにつながるのサ。

『どこ行ったのよ、クソマネェ・・・』

加奈子が俺の探している。あの加奈子が、目に涙を溜めて俺を探している。
この一ヶ月で何があったのかは分からない。ただ加奈子が俺を探していることは確実だ。

「すまん、赤城。用事を思い出したから今日はここで切り上げよう。」

「なんだ急に?まあお目当てのブツ(ホモゲー)も買えたから別にいいけどよ。」

こいつはこういうとき本当に障害にならない。いい友達だぜ。
俺は赤城にいつか埋め合わせをする、と伝えて加奈子のもとへ・・・行く前に。
ちょこーっとだけ寄りたい店があるんだよな。店へ行くくだりは割愛させていただこう
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今俺は、加奈子のすぐ近くにいる。
こうして会うとなるとなんだか緊張するな。寂しがってる中学生に会うだけなのに。
さて、腹を括るか。俺は髪をかきあげ、さっきの店で買った物、サングラスを掛けて加奈子のもとへ向かう。

「加奈子」

俺の呼びかけに振り向いた加奈子は泣きそうな顔を、驚いたような嬉しいような
微妙な顔へと変える。やっぱ寂しかったのか?悪いことしたかな・・・

そんなことを考えていると、急に俺の体が重くなった。



「クソマネ!なんでアンタはっ、なんでっ、あんたは・・・」

加奈子が俺の胸に顔をうずめるように俺に飛びついてきたからだ。
そして何かを言おうとしているが、その声は途切れ途切れでよく聞こえない。
つーか、寂しいとかそんなレベルでこんな状態になるものなのか!?


「わ、悪かったな。急に事務所を辞めることになっちまってよ。」

「うっ、バカ。バカバカバカ!なんで何も言わずにいなくなっちゃうの!?」
              

「どうしていつも、加奈子の前からすぐいなくなっちゃうの!?」

・・・ん?今こいつ、なんつった?
まるで愛の告白みたいな・・・

「ど、どういう意味だよそれ?」

「だからっ!加奈子はアンタが傍にいて欲しいの!もうドコにも行かないでっ!」

いつもの喋り方からは想像できないような喋り方。
でもそんな喋り方が、加奈子の本気を俺に伝えてくれた。



「加奈子!」

ほぼ無意識だった。
ほぼ無意識に俺は、加奈子の背中に手を回していた。

「悪かったな、寂しい思いさせちまって。もう大丈夫だ。」
「俺はもう、ドコにもいきやしねーよ。」

俺がそういうと、俺を抱きしめる加奈子の手に更に力が込められた。

「バカ。ったりめーじゃん。加奈子が離さなねーヨ。」

久しぶりに聞いた。生意気な加奈子の声。
ただその声は今まで聞いたものとはまた違った、声。
「高坂京介」が加奈子から受けた、愛の告白だった。

「落ち着いたか?」

「うん・・・。アリガト」

俺たちは体を離し、近くのベンチに腰掛けている。
あんなことがあったから、ちょっとこっ恥ずかしいけど。


「まず、最初に言わなきゃなんねーことがある。」

加奈子が不思議そうな顔をしている。
でもこれは、俺のけじめだ。赤城浩平としてでなく、高坂京介として
加奈子の傍にいてやるためのけじめなんだ。

「俺の本名は高坂京介。マネージャーの仕事なんてしてないし、まだ高校生だ。」

俺はサングラスを外し、髪を下ろす。

「き、桐乃の彼氏!?でも、高坂って・・・」

「ああ、正確には桐乃の兄貴だ。色々事情があってさ。」

加奈子は一瞬だけ真剣な顔をしたが、すぐニシシと笑って

「オメーが誰であろうと加奈子の好きなのはオメーなんだヨ!気にすんなって。」

といって腕を絡めてくる。やっぱなんだかんだでいいやつなんだな、コイツ。


「もうお前のマネージャーでいられることはないけどさ、人生のマネージャーでいてやってもいいんだぜ?」

と、俺。正直言ってて恥ずかしい。

「はあ?マネージャーなんかで済むかよ!いつか夫にしてやんよw」

と、加奈子。俺より恥ずかしいこと言いやがるぜ。
そこで一旦沈黙が起こる。しばらくたってから加奈子がつぶやく

「じゃあ加奈子も、言いたいこと言うね?」

また、あの加奈子らしくない口調だ。
このときの加奈子は、普通の女の子に見える。実際そうなんだろうけど。

「さっきは泣いちゃってちゃんと言えなかったけどさ。」
「加奈子、アンタのこと。京介のことを。」
「世界で一番―。」

それから桐乃が加奈子の義妹になるのは、まだ先の話・・・
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最終更新:2011年04月29日 20:44
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