誘われ攻め



俺の目の前に居る黒髪の美少女は新垣あやせ。
妹・桐乃の親友であり、スタイル抜群、容姿端麗、清廉かつ気高い女の子だ。
ちょっと、思い込みの激しいところが少々問題だが。
今、俺はそんなスーパー美少女と俺の部屋に二人きりで居る。
「どうせロクでもない状況なんだろ?」と想像した人、それは正解だ。
何しろ、あやせは今、俺の部屋の隅で震えながら怯えているのだ。

それも全裸で。

さて、俺が変態鬼畜野郎ではないことをどうやって説明したものか‥‥‥

‥‥‥‥‥‥

「お兄さん、ご相談があります!」

いつものように俺を呼び出し、いつものように相談事を持ちかけるあやせが
俺の目の前に居る。今度はどんな無理難題なんだ? 
だが、そんなあやせの相談事の前に俺は一言、言いたい。

「なあ? その『お兄さん』ってもう止めにしないか?」
「え? でもわたし、これでもう慣れちゃってますから」
「そうだけど、俺たち‥‥‥今は恋人同士だろ?」

うわぁ、言っちまった。自分で言っておいてこれだけ恥ずかしいとな。
そう。俺とあやせはいつの間にか恋人同士の関係になっていた。
安心しろ。まだ“そういう関係”にはなっていない。
もっとも俺の予定では、あと数回でエッチシーン突入の筈だけどな!
でもそれには、丁寧にフラグを立てておかないと、俺の身の安全が保てない。

「お兄さん? 何か変なことを考えていませんか? 身の危険を感じましたが」
「偶然だな。俺もだ。それで、相談って何だ?」
「はい‥‥‥最近お仕事が忙しくて、勉強の方が疎かになっていたんです」
「あー、最近、モデルでの露出、増えたもんな」
「ろ、露出なんて言わないで下さい! 通報しますよ!!」

何か、最近のあやせ、すげー過敏になっているな。
この調子じゃ、フォークとスプーンを出しただけでも通報するんじゃないのか?

「ですから、お兄さんにわたしの勉強を見て貰いたいんです」

つまり、疎かになった勉強を取り戻すために俺に家庭教師をしろってことか。
意外だな。あやせが勉強と仕事を両立できないなんて。
おっと、桐乃と比較してはダメか。アイツは特別製だしな。

「じゃあ、ドコで勉強する? 図書館がいいか?」
「あまり人目につく場所は‥‥‥。もし良ければお兄さんの家で」

キタ、キタ、キタ――――――ッ!!
これは? もしかして、早くもエッチ突入か? ってイカンイカン。
あくまでもあやせの勉強のためだからな! 俺、自重しろ!

‥‥‥‥‥‥

「お邪魔します」

あやせが俺の部屋にやってきた。
しかし、勉強というお題目があるだけで、簡単に俺の部屋までやって来るんだな。
ちょろ過ぎねえか? 我が恋人ながら、いや恋人だからこそスゲー心配になるぞ。

「あ、あくまでも、勉強のためにここに来たのです! 勘違いしないで下さい!」
「わかってるよ。早速だけど、あやせの成績ってどんなものなんだ?」
「テストの結果は持ってきてないんですけど、数学と英語がちょっと苦手です」
「そうか。じゃあ、数学から始めるとするか」

中学の数学なんて久しぶりだが、結構覚えているもんだな。
あやせも飲み込みが良くて、実に調子よく勉強が進む。
こんなに飲み込みが良いのなら、少し工夫すれば成績だって落ちないだろうに。
この調子なら、時間が余るんじゃねえか? と思えるぜ。

‥‥‥‥‥‥

「ありがとうございました。お兄さん」

ホントに時間、余りやがった。さてどうしたものか。
その時、俺の中の卑猥な感情が頭をもたげた。
とりあえず‥‥‥ダメ元で言ってみるか。

「なあ、あやせ?」
「何ですか? お兄さん」
「キスしていいか?」
「ブチ殺しますよ? そもそも、そんな事をするために来たんじゃありません!」

あやせが汚いモノを見るかのように吐き捨てる。はぁ。やっぱりその反応かよ。
曲がりなりにも恋人同士だろ? でもここで引いたら、恋人としての俺が廃る。

「勉強はさっき終わっただろ? あとは‥‥‥」
「べ、勉強のためにお兄さんと二人きりになることを認めたのですからね!」
「キスも“勉強”だろ?」
「もう、お兄さんってば‥‥‥いやらしいです」

よしよし。ここで俺の作戦は、
(1)あやせたんには積極性を出して貰う
(2)そして積極的に俺を誘うように仕向ける
(3)最終的に高坂京介のターン
いわゆる、俺視点で誘われ攻めってヤツだ。うーむ、どっぷりゲーマーだな、俺。

「お兄さんのばか‥‥‥優しくして下さい」

オイオイ、もうこんなに積極的!? あやせたん、ちょろ過ぎんぞ。
第1段階、早くもクリアか?

「いやだ。イジメてやる!」
「この‥‥‥変態」

OKサインを貰った俺はあやせの両手首を掴んでベッドに押し倒した。

「きゃっ! お兄さん‥‥‥わたしもお兄さんの手を握っていたいです」

そうか。そうだよな。イカン、変態鬼畜野郎になるところだったぜ。
あやせの懇願を受け入れた俺はあやせと掌同士を合わせ、お互いに握り合い、
そして‥‥‥愛し合った。

‥‥‥‥‥‥

俺が、とても愛おしかったあやせの上から脇に退けると
あやせは両の手で顔を隠し、小刻みに震えていた。
ごめんな。ちょっと、やりすぎたかも。
そう思っている中、あやせは起き上がると俺を突き飛ばして部屋の隅に逃げ、
まるで子犬のように震えている。


とまあ、ここまでが冒頭の状況説明になるんだな。
え? 俺が変態鬼畜野郎ではないことの説明ができてないって?
慌てるな。それはこれから説明しよう。


「あやせ、ゴメン。ちょっと、やりすぎたかも」
「へ、へ、変態! 変態!! 変態!!!」
「あ、あやせ?」
「近寄るな! 変態ッ!!」
「変態ってお前!?」
「わたしを『イジメてやる』って、まさかこんな変態プレイだなんて!」
「変態プレイって、俺があやせの耳を甘噛みしたことか?」
「違います!」
「あやせの足の指の間を舐めたことか?」
「違います!」
「あやせの‥‥‥後ろに‥‥‥指を入れたことか?」
「そんなんじゃありません!!」

俺の理解を超えた取り乱し様のあやせは、俺の理解を超えたコトを言い放つ。

「―――振ったことです」
「あ? 何だって?」
「ですから! こ、腰を振ったことです!! それもあんなに激しく‥‥!」
「‥‥‥はい? 良く意味が解らんが?」
「惚けるのですか? だったら証拠をお見せします!!」

あやせは、俺の部屋にある桐乃のノートパソコンを手慣れた様子で操作して、
ブラウザでエロ画像サイトを表示させた。

「見て下さい! 腰なんか振ってないじゃないですか!」
「いや、それ静止画だし。動画じゃないとわからないだろ」

俺はアカプルコ・コムのエロ動画を再生してあやせに見せた。
その動画を見たあせやは顔を真っ赤にし、

「は、はぁ、はぅ‥‥‥!」

バシッ

「ど、どういうつもりですか!? ブチ殺しますよ!? 汚らわしい!!」

久々にあやせのビンタを喰らった。いってえ!

「いや、だからコレが普通なんだって」
「ウソ! ウソですっ!! こんな破廉恥なことが、はぁ、はぅ‥‥‥!」

バシ――――ン

またビンタを喰らった。いってええええええ!!
しかし、腰を振ることを知らないなんてマジかよ? あまりにも疎すぎんぞ。
う~ん、これはあやせに性教育的指導を行う必要がありそうだな。
しかし‥‥‥冷静に考えると、何だこの状況?
俺の部屋で、俺とあやせの二人が、お互い裸のまま覗き込んでいるのは、
桐乃から借りたノートパソコンに表示されているエロ動画サイトって異常だろ。
もしこの状況がお袋や、ましてや桐乃に見られたらどうなるんだ?
まあ、あやせに見られるよりはずっとマシと思うが、そのあやせは俺と一緒に
エロサイトを見ているわけで。やっぱり異常だよな。この状況。

‥‥‥‥‥‥

―――とまあ、これで俺が変態鬼畜野郎ではないことが解ってもらえたと思う。


あやせの顔を伺うと、真っ赤な顔をしている。
漫画やアニメなら頭から煙を噴いているところだろう。
そう思いつつあやせを見つめていると、あやせはとんでもないことを口にした。

「わたし、そういうことに疎くて‥‥‥良かったら教えてもらえませんか?」

第2段階の誘い、キタ、キタ、キタ――――――ッ!!
こ、これは美少女を調教するという、至極のシチュエーション突入か!?
家庭教師からそっちに突入ってエロゲでも鉄板人気コースだろ。
よーし、みっちりと突き合って、いや、付き合ってやろうじゃないか!
あ、あくまでも、あやせの歪な知識を修正するためだからな! グフフッ。

「お兄さん。何かいやらしいことを考えていませんか?」
「気のせいだ」

恥じらいながら、自分自身を抱きしめて身を捩らせるあやせ ←かわいい
そして、その日から第2段階に突入した。

‥‥‥‥‥‥
「お兄さん、そ、そこは! ダメですっ!!」
「大丈夫だよ。俺に任せろ」
‥‥‥‥‥‥
「お兄さん、これはどうですか?」
「まだ少し甘いな」
‥‥‥‥‥‥
「お兄さん、こうしてあげます」
「おお、いいね!」
‥‥‥‥‥‥
「お兄さん、動かないでください」
「うおおおおおおお‥‥‥!」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

あやせは日々、俺があれこれ教えたことを砂が水を吸い取るように吸収した。
さらにあやせは自ら進んで、アレコレ勉強してくるんだな、コレが。
すげえよ。すげえエロくなったよ、あやせたん!
よーし、第2段階クリアだぜ!

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

「お兄さん、起きてください!」

あやせの声で俺は目を覚ました。

「んあ? 俺、どうしたんだ?」
「もう! 夢でも見ていたんですか!?」

ああ、確かに夢心地の状態だったが。まるで夢のような‥‥‥ゆ、夢?
そうか。夢か。そうだよ! 夢だったらどんなに良かったか。

「さてお兄さん。目を覚ましてください! 続きがありますから」

は、はははは。やっぱり夢じゃなかったか。
あやせはアレコレ勉強した“成果”を俺で試してみるんだよ!
そのせいで俺は、精も根も尽き果てた状態だ。
さらに最近のあやせは、俺が疲れた様子を見せようものなら‥‥‥

「‥‥‥わたしのことキライ?」

泣き出しそうなか細い声で俺に問いかけてくるようになった。

「そんなことあるわけないだろ」
「ウソ! わたしのことをキライになった証拠だってありますよ!」

そう言ってあやせが取り出した“証拠”を俺は凝視した。
万歩計‥‥‥?

「これがどうしたんだ?」
「わたし、これを身につけていたんですよ」
「はぁ?」
「段々数が減っているんです! これってわたしをキライな証拠ですよね!?」
「か、数って‥‥‥?」
「わたしの口からそんな破廉恥なことを言わせるんですか? 通報しますよ!」

ドコに通報するってのよ?
それに破廉恥って、既にかなり破廉恥なことを言っていると思いますがねえ、
あやせサン? それ、エロ過ぎませんか?

「とにかく、わたし、お兄さんのためにイロイロと勉強したのですから、
 家庭教師のお兄さんにはみっちりと付き合ってもらいます!
 真面目に取り組んで下さい。数が減るなんて絶対に許しません!!」

黒髪の美少女は、文字にすると何の変哲もないが、
その実、とんでもなく破廉恥な内容の言葉を俺に投げつける。
何だこの状況? まさか、調教するつもりが、調教される羽目になるとは。


でも、正直―――悪くない。


あ、そう言えば当初の目的‥‥‥

「あやせ、お前、勉強‥‥学校の方の勉強はどうなっているんだ?」
「大丈夫です。わたし、成績は良いんですよ!」
「いや、勉強が疎かになったって言ってたろ?」
「はい。疎かにはなりましたが、成績は落ちていませんし。うふふふ」

黒髪を揺らしながらあやせが微笑む。どういうことだ?
そもそも、あやせの勉強を見ることから始まったことなのに。
そう言えば、エロ画像サイトも手慣れた様子で表示させていたっけ。

「なあ、あやせ?」
「何ですか?」
「あ、いや‥‥‥何でもない」

俺は、俺を変態扱いした元となったあのことをあやせに問い質そうとした。
本当に知らなかったのか? と。
だが止めた。今さら問い質して何になるのか。
俺の腕の中にはラブリーマイエンジェルあやせが居る。
それで十分だ。他に何が必要だというのだ。

「でも、お兄さん。一言だけ」
「何だ?」
「わたしが大っ嫌いなのは、ウソを“吐かれる”ってことですから」

あやせはそう言うと俺の胸に顔を埋めてきた。あやせのターンが始まるサインだ。

あれ‥‥‥? おかしいな。第3段階は? 俺のターンは一体ドコに?

ま、いいか。


『誘われ攻め』 【了】

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最終更新:2011年05月05日 08:10
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