一生の願いに、一生の幸せを 後編





もう逃げない。
もう逃がさない。

「俺は桐乃が大嫌いだ。我が儘で、理不尽で、俺なんかと違って良く出来た妹が大嫌いなんだ!」

「…でもな、そんな大嫌いな妹を、必要としている俺がいる」
「お、お兄さん…?」
「わかってるぜ?おかしなこと言ってることぐらいはさ。―――でも俺は妹が、桐乃が傍にいてくれないとダメなんだよ。あいつはもう、俺から切り離せないところにいるんだ。
…でもな、あやせ」
改めて、自分の心に確認する。

大丈夫だ。
俺の気持ちは、嘘じゃない。

「桐乃だけじゃ、だめなんだ。―――桐乃と同じぐらい、俺はお前のことを必要としているんだ…!!」
誰も、代わりなんて務まらない。
俺は、新垣あやせが必要なんだ。

「お前がどこかに行くなんて、考えたくねえ…!!認めたくもねえ!!」

あやせの肩を掴む手が、段々と震えてきた。

「俺は、お前が必要なんだよあやせ!!どこにも行ってほしくない!―――お前も、俺の傍にいてほしいんだよ!桐乃の為じゃなく、お前の為でもなく、俺の為に!!」

これが、俺の本音。

貪欲な、俺の望み。

自分勝手な、俺の我が儘だ。

「これが俺の気持ちだ、あやせ。これ以上、俺が言えることはない。これ以上お前を止められない。だから、これが最後だあやせ。―――お前は、どうしたい?」

ここまで言うと、あやせは、心ここにあらずみたいな顔をしていた。

「あやせ…!」
あやせの肩を少し揺らそうとした。が、その寸前にあやせの肩が震え出した。
「わ、私…。私は…」

ポロポロと言葉を紡ぎ始めたあやせを、俺は黙って見る。

「私は…、桐乃と…」

止まっていた涙が、再びこぼれだした。

「桐乃と―――お兄さんと…、一緒に、いたいです…」
「…あやせ」

あやせの頭を胸の辺りに寄せ、手を背中と頭の上に置いてやる。

そうしてやると、抑えていたものが爆発したのか、泣き声は更に大きくなった。

「ごめん…なさい!私…、私…!」
「いいって、あやせ」

俺は、あやせの頭を撫でる。




「言ってくれてありがとうな?すげー嬉しかった。


―――だから、今は泣いていいから」
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

あやせが泣き止んで落ち着くまで、俺はあやせの頭を撫で続けた。


今まで我慢していたのだろう、桐乃の為に。自分の為に。
その枷が外れた今、あやせを止めるのは酷ってもんだ。

今は、感情のままに泣かせてやっておこう。






―――そうして、数十分後

俺、御鏡、あやせはエターナルブルーの外に出ていた。

「――美咲さんは、あやせさんを諦めるとのことです」
御鏡から最初に言われたのは、今回の結果だった。
いろいろあったけど、これは成功したと言っていいだろう。
しかし…
「意外と簡単に諦めんのな。桐乃にはあんなにしつこかったのに」
「いやぁ、実は美咲さんはあまりあやせちゃんに執着してなかったんだ」
「はぁ?」
「あくまでも、美咲さんにとってあやせちゃんは桐乃ちゃんの代わりだった…そういうことだよ」

あやせちゃんには失礼だと思うけどね、と付け加える御鏡。
あやせも重々承知の上だったのだろう、気にした様子はなかった。

「でも、元々条件の一つだった『桐乃さんを海外に誘わない』、は無くなっちゃったことになる。つまり、また桐乃さんは海外に誘われることになるよ?」
「そんなの、何度でも諦めて貰うさ」

そう言うと、御鏡はクスッと笑い、「そう言うと思った」と見透かしたように言った。

「…そろそろ、来るかな?」
「ん?なんか呼んだのか?」
「うん。今回の、関係者の一人をね」
「関係者?…って、お前まさか!!」


「―――あやせ!!」


聞き覚えのある声がこだまする。

声がした先にいたのは、


我が家の自慢の妹様、高坂桐乃だ。

「桐乃…」
あやせが、ボソッと親友の名前を呼ぶ。
ヅカヅカと歩いて来た桐乃は俺達に目もくれず、あやせの前に立ち止まった。



そして、何も言わずに――

パァンッ!

あやせに、平手打ちをかました。

「こんの…バカ!」
そう、怒鳴って。

「き、桐乃…!」
「アンタは黙ってて」
「はい!でしゃばってすみませんでした!!」
ギロッと睨まれると、なんか逆らえなくなる俺。
蛇に睨まれた蛙とはまさにこのことだ。

「桐乃…」
頬を抑えるあやせに、桐乃は言った。
「バカ!バカバカバカ!あんたわかってる?あやせが海外に行くって言われてどんな気持ちだったか!どんなに辛かったか!!自分勝手に話を進めて!
私のため?何様!?確かに相談したのはあたしだけど、そこまでして欲しいなんて言ってないっつーの!!」
「お、おい桐乃!」
流石に言い過ぎだろう。
間違っていたとはいえ、あやせはお前の為にしたんだから。

桐乃を制止しようとした俺を、御鏡が肩を掴んで止めた。
「な、なんだよこんな時に」
「あの二人は大丈夫ですよ」

ほら、と御鏡が目をやった先を見る。
再び、あやせと桐乃に目を向ける。

「桐乃…」
言葉を紡ごうとしたあやせを、桐乃は遮った。
ガバッと、あやせに抱き着いて。

「き、桐乃…?」
困惑しているあやせに、桐乃は言った。

「あやせが…いなくなったら、あたしどうしたらいいの…?
いつも支えてくれたあやせがいなくなるなんて、あたし嫌だよ…?

あやせは一人だけなんだから―――だから、もうどこにも行こうとしないでよぉ…」
そう言った、桐乃の声でわかる。

桐乃は、泣いていた。

前見た時はあやせが泣いていたけど、今回は逆だった。

状況も、なにもかも逆だった。

ただ一つ違うのは、あやせはどこにも行かないってことだ。


「桐乃…」
あやせも、桐乃の肩に手を回した。

「ごめんね…ごめんね、桐乃…!」

そう言ったあやせも、また泣き出してしまった。



暗くなったとは言え、人通りが多い街中で、泣きながら抱き合う少女二人は、なんか変な絵だった。

だからといって、それをどうこうしようとするような空気が読めない俺ではない。

このあと、俺達は再び数十分待たされることになったのだが…

待つ時間が苦、なんてことは、塵ほどにも思わなかったね。





「―――あ~…、久しぶりに泣きまくったら喉乾いた!」
「久しぶりって、前も泣いてただろうが」
「うっさい黙れ!」
「うぼぉ!」
コイツ、ボディーブローかましてきやがった…!

「女性に涙をカミングアウトするのは、失礼なことだよ?京介くん」
相変わらずの微笑面で、そう言ってきた御鏡を睨む。
だけど、御鏡はそれに怯むことなくニコニコしていやがる。
慣れてきやがったな、コイツ…。

「ってわけで、今からファミレスでも行かない!?もちろんあんたの奢りで」
「ふざけんな!!俺よりも金持っているであろう御鏡に奢って貰いやがれ!!」
「…あんた、こういう時に『任せとけ!』ぐらい言えないの?だから甲斐性ないのよアンタ」
「ぐうぅぅ…!」
好き放題言いやがってこのアマァ!

「つか、ファミレスに行くのは賛成なんだけどよ…。そろそろ帰らねえと親父達に怒られるぞ?」
「…あ、もうこんな時間なんだ…残念」

俺も、少し残念だった。
こんなメンツで集まることなんて、二度とないだろうしな。

「まあ、また改めて遊びに行こうぜ、な?」
「うん、賛成」
「てめぇは誘わねえぞ」
「ここまで来て仲間外れかい!?京介くん!!」
「お前を仲間だとは認めない」
「酷い!」


とまぁ、今日はみんな帰ることになり、この奇妙な集まりはお開きとなった。
帰り用に御鏡が、自社の車を2台呼んでくれたのにはビビったね。

車には最初、俺と桐乃、御鏡とあやせで分かれて乗ろうと言っていたのだが、俺があやせの親に説明するためと無理矢理理由を付けて、俺とあやせ、桐乃と御鏡で分かれることにした。
桐乃は、納得いかないって顔をしていたけどな。

それに、御鏡はウチの親も知ってるから(親父は嫌ってるけど)、多分コイツが送っても問題ないだろう。

「私がいないからって、あやせになんかしたら、殺すから」
「しねえよ。とっとと乗りやがれ」
シッシッと手を払う仕種をする。
相変わらず不機嫌そうな桐乃は、やっと車に乗り込んだ。

「それじゃ、僕も」
「今日はありがとうな、御鏡。本当に、助かった」
コイツがいなかったら、何も出来ずに終わっていただろうと考えると、本当に感謝してもしたりなかった。





「―――御鏡!」
「…ん?どうしたの?」
「あ、まあ、その…」

車に乗ろうとしていた御鏡に、俺は声をかけた。

「…今度ウチに遊びに来い。もう少し詳しく秋葉を紹介してやるよ」

そう言った俺を、御鏡は不思議そうな目で見ていた。

「…なんだよ?」
「あ、いや、その…」

「…いいの?」

その時、俺は何を思ったのか、とんでもないことを言ってしまった。

「友達、だからな」

「…ふふふ。うん、必ずお邪魔するよ」

それじゃ、と言った御鏡を乗せた車は、すぐに見えなくなった。

「んじゃ、俺達も行くか」

「…はい」

御鏡達を見送った後、俺とあやせも、車に乗り込んだ。




俺達を乗せた車は、途中まであやせの家を目指していたのだが…
「ここで停めてください」
と言ったあやせによって、途中下車することになってしまった。


送ってくれた車を見送って、俺はあやせに聞いた。

「なんで、途中で降りたんだ?あやせ」
「お兄さんとお話をしようと思いまして。―――お兄さんも、私と一緒に来てくれたのは、同じ理由なんじゃないですか?」
「まあ、そうなんだけど…。でも、別にあやせの家の前で話してもよかったんだぞ?」
「嫌です。家の前で大声だして親に見られたらどうするんですか?」
大声出す気はねえけどな。
まぁ、もう降りてしまった後だし、同じことか。

俺は、先を歩くあやせについて行った。







「ここって…」
「はい、お兄さんと私の思い出の場所です」

俺の家の近くにある、児童公園。
あやせの言う通り、考えたらいろいろあった場所なんだよな。

ここで、桐乃とあやせは仲直りした。
ここで、俺はあやせに犯罪者予備軍認定された。
ここで、俺はあやせに人生相談を受けた。
ここで、俺はあやせにハイキックをかまされた。
ここで、俺はあやせに防犯ブザーを鳴らされた。

…ろくな思い出ねえなオイ。

「お兄さん、どうしたんです?苦虫を噛み潰したような顔をしてますよ?」
「…なんでもない」
「そうですか?ならいいんですけど…」

そうして、俺はあやせが話し始めるのを待っていたのだが…

…桐乃といい、あやせといい、話があるって言った奴は、なんで話し出すまでに時間がかかるのかね?

それからしばらくして、やっと喋ったあやせは、こんなことを言ってきた。

「―――お兄さん。私、待っているんですよ?」

「な、何を?」
「お兄さんの気持ちを、私に言ってくれることです」
「気持ち…?」
「はい。――私は、こういうのは、先に男の人に言って欲しいんです」
「…スマン、さっぱりわからん」
「もう…私はちゃんと行動で示したんですよ?だから、お兄さんも逃げないでちゃんと言ってください」
「行動って…あっ」

その時、この前のあやせとのデートで、あやせが俺にした口づけを思い出した。
行動っていうのが、このことだとしたら…

不意にあやせに目をやると、スカートを掴んでいるあやせの手が、少し震えているのがわかった。

―――この娘は、平然を装って、精一杯の勇気を振り絞って、俺の答えを待っているのか。

ここで答えないなんてことをしたら、マジで嫌われてしまうかもしれないし、ちゃんと答えないとな。

…まあ、答えなんて最初から決まっているんだけど。

「あやせ」

あやせは、ビクッと全身を強張らせる。

「俺、お前のことが大好きなんだ。だから…」




「俺と、結婚してくれませんか?」




「嫌です」
「え?」
あれ?今、俺フラれた?

「あ、あやせ?どうして…?」
「なんでいきなり結婚なんですか!?順序飛ばしすぎです!!」
「ゆ、ゆくゆくはそうなるんだから、同じことだろ!?」
「全然違います!結婚する時は、改めてプロポーズするのが普通です!」
「そ…そうなの?」
「そうなんです!―――ああもう!!お兄さんのせいで全部台なしじゃないですかぁ!!」
「お、俺のせいかよ!?」
「当たり前です!!もう…、今度はちゃんと言ってくださいね!?」
そう言って膨れる、あやせ(←可愛い)。

「えっと…、また言わないといけないの?」
「当たり前です!!」
「改めてってなると、なんか恥ずかしいんですけど」
「自業自得です!!私だって、聞くのは恥ずかしいんですから、おあいこですよ!?」
「そ、そうなの?」
「そうなんです!!」

―――と、言うわけで、俺はもう一度あやせに告り直さないといけないという、羞恥プレイをする羽目になった。


「あやせ」
「…はい」
「俺、あやせのことが大好きなんだ。だから…」


「―――俺と、付き合ってくれませんか?」


「―――はい…!」

こうして、


俺とあやせは、晴れて恋人同士となった。





「…ふふ」

「…へへ」

不思議なもんだ。
あのあやせと、こうして恋人同士になるなんて、想像もしてなかったしな。

改めて、あやせを見る。
俺の彼女であり、最愛の人。
この娘が、俺がずっと一緒にいると、誓った娘なんだ。

間違いない。
俺は他の誰でもない、あやせを選んだんだ。

「…ん?」

あやせを見ていると、ある物が目に入った。

「あやせ、そのペンダントって…」
「これですか?―――あの時、お兄さんから貰った物ですよ」
「ああ、やっぱり。使ってくれてんだ」
「もちろんです。お兄さんが始めてくれたプレゼントですから」
嬉しいことを言ってくれるものだ。

と、そこで俺はついでに、あやせに聞いておきたかったことを聞くことにした。

「…なあ、あやせ」
「なんですか?」
「あの時のデートって、結局なんだったんだ?」
前にも聞いたことなのだが、あの時は話題をすり替えられて、聞けなかったんだよな。

「あれは…、あの時の私にとっての、最後の我が儘のつもりだったんです」
「我が儘?」
「海外に行く前に、お兄さんの誤解を解いておきたかった…。それに、最後くらい、楽しい思い出を作っておきたかった。―――だからあれは、お兄さんとの最初で最後のデートをしようと思った、私の我が儘だったんです。」
なるほど。
だから、あの時のあやせは、違和感を感じるほど素直だったのか…。

「あと、あやせ…」
一番聞いておきたいけど、一番聞きにくい質問をすることにした。

「あの時の…、キ、キスは?」
そう聞いたとたん、あやせの顔が真っ赤になった。
「あ、ああれはその…!――衝動に任せてしまったんです」
「衝動?」
「お兄さんが私に駆け寄って来てくれて、とても嬉しかったんです。―――だけど、同じくらい、悲しくもなったんです。
だから―――あのキスは、ありがとうって気持ちと、さようならって気持ちが入り混じったものだったんだと、…今は思います」

「そう、だったのか…」

あの時、もう少しちゃんとあのキスの意味を考えていれば、もう少し早く動けたかもしれないと思うと、あの時浮かれまくっていた俺を、殴りたくなった。

「…でも、それを含めた全てのおかげで、今こうしていられるのかもな」
「?何か言いましたか?」
「なんにもない」





―――そう。

ここまで来るのに、いろんなことがあったけど、その全てがあったから、俺はこうしてあやせと繋がったんだと思う。
そう考えると、今まで起きた全てのことが、よかったって思えるんだよ。


「さて、名残惜しいけど、そろそろ帰ろうぜ。あやせ」
「はい…そうですね」
「そんな落ち込むなって。また会えるだろ?」
「…はい」
「それじゃあ、行こうぜ。送っていくからさ」
俺は公園の出口に向かって歩き出した。

「あ、ちょっといいですか?お兄さん」

「ん、なんだ?まだ何か」
喋りながらあやせの方を振り向くと、また言葉を遮られた。

今度はキスされたわけじゃないぞ?

抱き着かれたんだよ。
そりゃあもう、ドスン!ギュッて感じで。

「あやせ…?」


「…お兄さん」
「ん?なんだ?」
「…夢じゃありませんよね?―――お兄さんは、傍にいてくれてますよね?」
―――ああ、可愛いなぁもう!

あやせを、ギュッと抱きしめる。
「夢じゃないぜ。俺はここにいる

たとえ、見えない場所にいても、俺はお前の傍にいるから」

「…だから、お前も俺の傍にいてくれ、あやせ」
「はい…!」


―――もしまた、あやせが苦しい思いをしていたら、

悲しい思いをしていたら、

何度でも言ってやろう。

「お前の傍に、いつもいる」と。


「お前を、いつでも助けてやる」と。

夢で終わらせねえよ。

俺は確かに、ここにいるんだから。





一生かけて、叶えてやるさ。

『桐乃と、お兄さんと、一緒にいたい』

そう望んだ、あやせの、願いを。









その後、あやせとの交際を知った桐乃と、黒猫を巻き込んだ一問着が起きるのだが、それはまた別の話。




―――数ヶ月後、

俺は渋谷駅で電車を降りて、全力疾走していた。

改札を抜け、待ち合わせの場所に急ぐ。

「うおぉぉぉぉ!」

待ち合わせ場所が見えてきた。

そこにいる、一人の少女がこちらに気づいたのか、軽く手を振ってくれている。

近づいていくにつれ、段々とハッキリしていく、そのシルエットは…

間違いなく、俺の愛しの彼女――新垣あやせだ。

「すまん…ちょっと遅れた…」
呼吸を整えながら、あやせに話かける。

そんな俺に、
「許しません」
と、あやせは笑顔で死刑宣告をした。

「ど…どうすればいいでしょうか?」

「うーん、そうですね…」
少し考えている仕種をして、あやせはすぐに、思いついたように言った。

「お兄さん、少し目を閉じてくれますか?」
「え…?」
辺りをキョロキョロ見渡して、あやせに確認する。
「…ここで?」
「はい」
ニッコリと笑っているあやせは本気だ。

「――わかった…」



覚悟を決めて、目をつむる。
なんでもこいやオラ!



「…お兄さん」

「ん?―――んん…!?」

あやせの優しい声がして、頬に手を当てられた。そして…




「っへ、いはひいはひあやへいはひ!」



頬を、つねってきた。


パッと離してくれたが、まだズキズキとしている。

「な、なにすんだあやせ!!」
すっげー痛かったぞこんにゃろう!!

「ははは、あははははは…!」

「あ、あやせ…?」

見たこともない、あやせの大笑いに、驚いてしまう。

「ははは…――お兄さん」
「な…なんだ?」
「私、今とっても幸せです」

そう言って、ニッコリと笑ったあやせは、今まで見てきたどんな笑顔も霞むぐらい、可愛かった。

「これからもずっと、―――いえ、一生、幸せでいさせてくれますか?」

そう聞いてきたあやせに、ごく当たり前のように俺は答えた。
「もちろんだ」

この時、俺は思ったね。


俺は、最高に幸せだってな。






Fin.

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最終更新:2011年06月01日 16:27
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