あやせのテディベア物語 02


その後、俺は一体何度イッたか分からない。
8回目まで覚えているのだが、あやせの責めは一向に終わる気配がなかったので、数えるのを諦めたのだ。
とにかく、それ以降はただ彼女の求めるがまま、身悶えし、嬌声を上げ、泣き叫ぶだけだった。
何時の間に眠っていたのだろう。
あるいは気を失っていたのかもしれないが、気がつくと、夜が明けようとしていた。
ラブホテルのカーテンから漏れる朝日が眩しい。
あやせはベッドの上で俺の身体に寄り添って、スヤスヤと穏やかな寝息を立てていた。
俺の胸元は、あやせのキスマークや噛み跡だらけになっている。
俺は、昨夜の激しい責めを思い出した。
ゾクゾクと、背筋を何かが通り抜けていく。
部屋の時計は6時を指していた。
(…帰らなきゃ)
俺は、シャワーを浴びて服を着るべく、起き上がろうとした。
その時、眠っていたはずのあやせが、俺の身体を背中から抱きしめてくる。
「おはようございます。お兄さん」
耳元で、美少女が囁いた。
「ひっ!あ、あやせ…。お…おはよう」
素肌の温かさが、乳房の膨らみが、背中に感じ取れる。
「私を置いて…どこに行くんですか?」
背後から俺のうなじに何度かキスをしながら、あやせは言った。
「い、いや…。ただ、トイレに行って、シャワーに入ろうかって」
「…」
無言のまま、彼女は俺の股間をまさぐってくる。
俺のモノは絞り尽くされて、既にフニャフニャの状態だ。
「だ、だって…もう朝だし、帰らないと…あ!ちょ、や、やめ…。あぐ、に、ニギニギするな…。ぁうッ」
あやせはグニグニと遠慮のない手つきで、その硬度を確かめてくる。
「ふふふ。ちゃんと全部出し切ったみたいですね。…可愛い」
俺はビクビクと身体を震わせながら、必死に訴えた。
「あっ!あっ!で、でも…そんなに強く握られたら、勃っちまうって!ぅあッ」
「大丈夫…。その時は、また抜いてあげます」
俺はその言葉に戦慄を覚えながら、
「と、とにかくシャワーを浴びて帰ろう」
と、訴えた。
今日は土曜日で学校は休みだが、朝早いうちにホテルを出ないと、誰かに目撃されたら一大事だ。
あやせは、背後から俺にしがみついたまま、ハミハミと耳たぶを甘噛みしている。
まるで鼠をいたぶる猫のようだ。
感じているのを悟られまいと、俺は悲鳴を咬み殺す。
それからあやせは、
「そうですね。お兄さん、先にシャワー入って良いですよ」
と、甘い声で囁くように応えた。
「それじゃ」
俺は立ち上がり、全裸のまま股間を押さえて、そそくさとバスルームに駆け込んで行く。
昨日あれだけ絞り取られたのに、危うく勃起するところだった。
虎口を逃れる思いで、一人バスルームに逃げ込んでから、俺はようやく安堵の溜め息をついた。
コックを全開にして湯を浴びる。
心地良い温かさが、身体を包み込んだ。
どうして、こんな事になったのだろう?
俺はシャワーを浴びながら、ひとり目を閉じ記憶を辿った。

それは昨日の事である。
学校からの帰り道、夕暮れの中、あやせは俺を待ち伏せていた。
「お兄さん…。ご相談したい事があります」
いつも通りといえば、いつも通りの風景。
俺はその時、てっきりまた桐乃との間に何かあったのだろうと思い、
「ああ、良いよ」
と言った。
「また、公園にでも行くか?」
あやせの部屋で手錠を掛けられたらかなわないしな、と冗談混じりに言うと、
「いえ。できれば…二人きりになれる所が嬉しいです。その…」
あやせはいつになくモジモジと恥じらいながら、上目遣いで信じられない事を言った。
「お兄さんが、嫌でなければ…ですけど」
「い、嫌なわけあるか!よし、そういう事なら俺に任せろ」
そう即答して、俺が彼女を案内した先が、このラブホテルの前だったのだ。
「ここなら、一晩中二人きりで話ができる」
そう言ってから、俺はあやせがどんな行動を取っても対処できるよう身構えた。
俺のセクハラジョークで彼女がマジ切れするのも常である(また怒った顔が可愛いのだ)。
裏拳や後ろ回し蹴りなら腕でガードしたし、防犯ブザーを鳴らされたら一目散に逃げただろう。
だが、彼女が次にとった行動は、これまでのどの行為よりも破壊力があった。
「そう…ですね。ここなら」
「えっ」
驚いて声を上げる俺に、あやせは振り向いて言った。
彼女の瞳から光彩が消えているのを見て、俺は息を飲む。
「それじゃ、中に入りましょう」
静かな声が、逆に怖い。
制服のまま、少女は俺の手を引いて、躊躇いもせず怪しげな建物に入っていく。
「あ、ちょっ…」
自分で連れてきた手前、もう後には引けなかった。
あやせの「あの」表情を見せられては、今さら冗談でしたなどと言える訳がない。
少女に導かれるまま、俺は未知の世界に足を踏み入れる。
ピンクを基調としたいかがわしい内装の廊下を抜け、空いていた一室に入った。
(…マジか?俺、こんな棚ぼたシチュエーション)
震える手で、室内にある自動精算機を操作する。
「ご休憩(2時間)」「ご宿泊(翌朝10時まで)」という二つのボタンが生々しい。
(いや、あやせに限って、こんなにうまい話がある訳がない)
冷静になるまでもなく、これまでの事を考えれば、そう俺が思うのは当然だった。
こういう時、大抵は何か下らないオチが着いて終わるのだ。
しかし、そんな思いとは裏腹に、俺の心は黒髪の美少女中学生あやせたんとラブホに入ったという事実に興奮しきっていた。
部屋の中は、建物の外観や廊下の内装とは異なり、意外にも清潔感のあるモダンな雰囲気だった。
高級品ではないが、インテリアもそこそこ洒落たものが揃っていた。
ダブルベッドの枕元にはティッシュの箱とコンドームが2袋用意されている。
バスルームの戸は、半透明のスリガラスで向こうがボンヤリ透けて見えるように出来ていた。
ここがセックスする場所なのだと実感しつつ、俺は宿泊のボタンを押し、高校生にとっては決して安くない額を精算機に投入する。
あやせは、表情ひとつ変えずに携帯を取り出した。
(通報!?)
そんな俺の警戒心を察したのか、あやせは言った。
「私は、加奈子の家に泊まるという事にします。お兄さんも、家に連絡して下さい」
「あ、あぁ」
俺は言われるがまま、家にいるお袋に電話をかけ、麻奈実の家に泊まると告げた。
…思えば、この時に気付くべきだったのだ。
あれだけ嘘を嫌っていたはずのあやせが、なぜ両親に嘘をついてまで俺との時間を作ったのかを。
俺達は、二人並んでベッドの上に腰掛けた。
「それで…。そ、相談って」
自分でも明らかに分かる。
目は泳ぎ、声はぎこちなく、ソワソワと貧乏ゆすりをして、明らかに挙動不審な様子だったに違いない。
どんなに冷静になろうとしても、胸の高鳴りは抑えられなかった。
「…はい。お聞きしたい事があって」
「あ、ああ」
「今日…。桐乃から聞いたのですが…」
あやせの瞳からは、光彩が消えたままだった。
「お兄さん…。桐乃に、夜這いをかけたそうですね?」
静かに…しかし、低い声であやせは言った。
興奮が、一気に冷めた。
背筋を、氷のように冷たい汗が伝って落ちていく。
無論、実の妹に夜這いなどするはずがない。
…が、俺は先日、黒猫の一件で真夜中に桐乃へ人生相談を持ちかけた事がある。
性的な事は何もなかったとはいえ、考えてみれば、深夜に妹の部屋に押し入る事自体が怪しげといえばその通りだ。
恐らくは、あやせはその時の事を桐乃から脚色込みで聞いたのだろう。
「ご、誤解だ、あやせ!俺は何もやましい事はしていないっ」
「私、お兄さんにメールしましたよね。桐乃に何かしたらブチ殺すって…」
「あ、あわわ…」
だ、だめだ。
もうスイッチが入ってしまっている。
「手を出したら殺すって…殺すって言ったじゃない。…言ったでしょ?言ったよねぇッ!」
「ひぃっ!」
恐ろしい剣幕で詰め寄るその迫力に思わず俺は悲鳴を上げた。
「だから決めたんです。私…桐乃を助けるには、これしかないって」
(こ、殺される!?)
酷い言い草かもしれないが、こいつなら、ありえない事ではない。
ベッドから立ち上がって逃げようとしたその瞬間、あやせが飛び掛かって来た。
「あっ!」
「…」
無言のまま、彼女は俺をベッドの上に押し倒し、あっという間に馬乗りになった。
「お兄さん…」
レイプ目で俺を見下ろす黒髪の美少女。
「あああっ!やめて、あやせ!殺さないでくれッ」
俺は半泣きになって、命乞いをした。
「覚悟して下さい」
「あ…あぁ…」
しかし、あやせは俺を殺すより、もっと信じられない事を言った。
「もう二度とお兄さんの性欲が桐乃に向かないように、私が全部吸い取ってあげますから」
「え…?え…?あ、ちょ」
手際良く俺のワイシャツのボタンを外していくあやせ。
思わず抵抗しようとすると、彼女は一段と声のトーンを落とし、
「それとも…私とするのは、嫌…ですか?」
と、馬乗りのまま言った。
…拒めば、刺される。
そう確信した俺は、もう逆らわない事にした。
「い、嫌じゃない」
「私と…しますか?」
「す、する!します!」
それから俺は怒涛のように、あやせの中へ飲み込まれていくのだった。

(最初は『桐乃のため』と言っていたのに)
…シャワーを浴びながら、俺はあやせの言葉を思い出していた。
「もう誰にも渡さない」
「他の女になびけば、殺す」
俺は、恐ろしかった。
何がきっかけであれ、あやせは俺を滅茶苦茶に犯し抜く事に喜びを覚えてしまったのだ。
逆らう事など、できるハズがない。
(これから…どうなっちまうんだ?)
溜め息が漏れた。
「…何を考えているんですか?お兄さん」
考え事をしていたばかりに、あやせが何時の間にかバスルームへ入って来た事に気付かなかった。
シャワーを浴びている後ろから、彼女は全裸のままギュッと抱きついてくる。
「あ…、あぁっ!」
「フフフ…。そんなに怖がらないで下さい」
あやせの白い指が、俺のペニスを包み込む。
「あら?もう固くなってる」
この上なく嬉しそうな、少女の声。
俺は半狂乱になって、「助けて!」と叫んだ。

続く




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最終更新:2011年06月14日 16:52
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