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 ・京介、加奈子メイン 他何名か登場
 ・エロ無し
 ・若干の暴力描写有り



「クソ…なんで加奈子がこんな事しなきゃなんねーのヨ」

と、悪態を吐くツインテールの少女-来栖加奈子。

「はいはい。この設問解き終わったら休憩にするからな。
 それと、いつも言ってるけど女の子がそんな口のきき方するんじゃねえよ」

そして勉強を教えているのは、俺…高坂京介である。
なんでこんな事になっているかというと、無事大学受験を終えたのだが
大学生にもなると色々と金がかかる。
性に合わないのでコンパ等は極力断ってはいるが、それでも金はかかる。
それに、高校時代であれば学校へ行くのは学生服だったが大学生ともなれば私服だ。
別にブランド等に拘りがあるわけじゃないが、それでも高校時代と比べれば服に金がかかる様になった。
まぁこれは桐乃の影響が有ると思う。悔しいけどな。
大学生になってまで小遣いを貰うのも気が引けていた為、バイトを探していた折に麻奈実が

「きょうちゃーん、あるばいと探してるしてるなら家庭教師さんやってみない?」

と、誘ってくれたのだった。
なんでも元々は、麻奈実に家庭教師の話が来たらしいのだが、既に数人の生徒を受け持っていて
これ以上増えると一人一人にあてるクオリティが下がるのが嫌らしい。なんとも麻奈実らしい理由である。
もっとも俺に家庭教師なんか出来るわけが無いと断ろうとしたが

「きょうちゃんは、ちゃんと理解して覚えていくタイプだから、お勉強教えるのも出来ると思うよー。
それにねー、天才肌の人よりも努力家の人の方が、先生に向いてると思うなー」

別に自分が努力家だとは思わないが、大学に入る為に苦労したし、頑張って勉強したのは確かだ。
まぁそれも麻奈実という優秀な家庭教師のおかげで合格出来たというのは間違いでは無いだろう。
ともあれそんな我が恩人の勧めを無碍に断る事は出来ないし、家庭教師ともなれば時給もそれなりだろう。
おい!?高時給に目が眩んだとか思うんじゃねえぞ?

「解った。俺の家庭教師である麻奈実の勧めとあっちゃあ断る理由は無いし
 こっちも丁度バイト探してたから、渡りに船だ。ありがとな、麻奈実」
「えへへー、そんな感謝されると照れちゃうよー///」

そんなこんなで家庭教師のアルバイトをする事になった訳だが、話によると俺が受け持つ予定の生徒は
今年俺の母校に入学した新入生で、入学後最初のテストで全教科赤点を叩き出した問題児らしい。
そんな事態に親御さんが危機感を覚えたらしく、その問題児の友人の家庭教師をしている麻奈実に話が来たという事だ。
もっとも俺の通っていた高校は、進学校という訳では無いが、それなりに勉強をしていないと入れる高校ではない。
なので初めてのテストで緊張したとか、体調が悪かったとか、初めてのテストを侮って対策を怠って居たとかだろう。

地図によるとこのマンションか…「えーと来栖、来栖っと…お、ここだ」
って今気付いたが、来栖ってどっかで聞いた事あるな。
この辺りじゃあ珍しい苗字だから知り合いなら覚えていると思うのだが思い出せない。
初めての家庭教師で緊張しているのか、なかなか開かない記憶の引き出しと格闘していると、来栖家の玄関に到着した。
「よし」と気合を入れ、インターホンのボタンを押す京介。
ほどなくインターホンのスピーカーから『ガチャ』という音が聞こえ

『はい、どちらさまでしょうか?』

と女性の声が聞こえる。母親だろうか?

「来栖さんのお宅でしょうか?本日より家庭教師をさせて頂く事になりました高坂です」
『ご苦労さまですー、今開けますねー』『ガチャ』

と、インターホンの受話器を戻した音のすぐあと、『パタパタパタ、カチャカチャ』と鍵を開ける音がし扉が開く。
扉が開かれると、そこには小柄だが母親であると思しき女性が顔を出した。

「はじめまして、高坂京介です。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございますー。娘の家庭教師をして頂けるという事でよろしくお願いしますね。
 こんな所で立ち話をするのもなんですから、中に入って下さいなー」

リビングに通され、ソファに腰を掛ける。
って、え?今娘って言った?てことは女子高生かよ!?麻奈実のヤツの勧めだからてっきり男子かと思っていたが…
しかも高校1年って事は、桐乃の同級生じゃねえか。
正直この年頃の女の子は難しい。
しかも、京介のよく知る女子高生というと、桐乃やあやせ、黒猫、瀬菜、沙織と曲者揃いである。
頭に浮かぶ面々を思い、思わず尻込みする京介に母親が声を掛ける。

「ごめんなさいね。今日は早く帰るように言ってあったのだけど、まだ帰っていないのよねぇ」
「いえ、まず最初は保護者の方と勉強の方針等をご相談させていただこうと思っていましたので」

これは麻奈実に言われたんだが、まずは親御さんの希望を聞いておいた方が良いだろうという事だった。
確かにスポンサーの意向を汲む事は大事だし、親御さんと話をする事で方針等を決める指針になるだろう。
もっとも話をしていて解ったのだが、この母親は特に教育ママという訳では無く、学校の勉強に着いていけなくなると
学校自体が嫌になってしまい、折角の高校生活を満喫出来ないのではないか?
という気掛かりから家庭教師を着ける事にした…との事である。
であれば、主に復習に重点を置くのがいいだろうと、京介が基本方針をどうするか考えていると

『ただいまー、あー疲れたー。あれ?誰か来てんの?』

「あら、娘が帰ってきたようだわ。紹介しますね。娘の加奈子です。ほら加奈子も先生にご挨拶して」

 ------ん?加奈子?来栖加奈子?って知ってる名前のような…

「あー、カテキョー来るって言ってたっけ?加奈子は勉強なんかしなくてもアイドルで食ってくって言ったじゃんかよ。ん?
あ、テメー!桐乃のアニキじゃんか!?加奈子のカテキョーってお前かよ!?」
「はじめまして、高坂京介です…って、げっ!加奈子か!?」
「あらあら、二人とも知り合いだったのね」

ニコニコと穏やかに笑う母親を尻目に、驚嘆する京介と加奈子。

「じゃ、じゃあ早速べ、勉強教えてもらおうか…な?」

食って掛かった割りにいやに素直な加奈子に???な京介だったが、自分は勉強を教えに来た家庭教師だという事を思い出し

「あ、ああ。お母さん。加奈子さんもああ言ってる事ですし、早速授業に入らせて頂きます」
「ええ、宜しくお願いしますね」
「は、早く来いよ…加奈子の部屋はこっちだからよ」
「加奈ちゃん?先生に失礼のないようにね?」
「わ、わかってるよ」
ズンズンと大股で歩く加奈子。

「ここだよ。まあ入れ」
「おう」

加奈子の部屋に通された俺は、思わず感心していた。
部屋は綺麗に整頓されているが、俺の部屋のように殺風景な訳ではない。
年頃の女の子らしく、可愛い小物が所々に配置されてはいるが、どれも主張し過ぎずに良い部屋のアクセントになっている。
部屋の色調も淡いピンクがメインになっているが、色のどぎつい物等も無く、程よく落ち着いている。
そしてやはり甘い少女特有の良い匂いがした…って俺は変態か!!!

「おい、あんまジロジロ見るなよな」
「あ、ああ、すまん。だが思ったより綺麗で感心したよ」
「テ、テメー!思ったよりって何なんだよ!?」
「お前って喋り方がガサツだろ?だから部屋もそんなんなんじゃねえかってちょっと思ったんだがな。そんな事はなかった。
 それになんだ…普通に年頃の女の子らしい可愛い部屋なんだな」
「そ、そうかよ…」

俺が素直に褒めると、これまたおとなしくなる加奈子。
こいつ黙ってれば可愛いのにな。

「加奈子はてっきりモテナイ男が女の子の部屋に初めて入って、「ああ良い匂いがするなぁ」とか考えてるのかと思ったぜ」
「ア、アホか!?女の子の部屋に入るのは初めてじゃねえし、そんな匂い嗅ぐなんて変態みたいな事するか!
 ほら、勉強するぞ勉強」
「キヒヒwww誤魔化したwwwこりゃ怪しいなぁwwwもしかして加奈子、貞操のピンチじゃね?wwwwwww」

こら!草を生やすな草を!やはりこいつは可愛くなど無い。

「誰がお前みたいなチンチクリンに欲情するかよ」
「あー、ひっでえ。オメーはシラネーかもシンネーけどよ、加奈子ってケッコーモテんだぜ?」
「はいはい、言ってろ言ってろ、俺はチンチクリンなツインテールよりも、清楚な黒髪ロングが好みなんだよ」
「けっ、いまどき清楚な女なんかイネーヨ。清楚に見えたって、裏じゃ人埋めてそうな腹黒い奴だって居るしよ」

おいおい、人を埋めるって尋常じゃねえな…最近の女子高生には、そんな犯罪者まがいが居るのかよ…
馬鹿話の甲斐あってか、加奈子の緊張もほぐれたみたいだし、俺も緊張が程よくほぐれた。
俺もこいつの勉強を見て報酬を貰う以上は、そろそろ真面目に授業をしなくちゃならん。

「さ、雑談はこれくらいにして授業を始めるぞ」
「えー?マジにやんのかよ?加奈子芸能界で食ってくし勉強なんてしなくたって大丈夫だって」
「そうはいくか。もし芸能界で仕事していけなくなったら、普通に学歴社会の中に放り出されるんだぞ?」
「ていうか加奈子芸能界諦めねーし、もし芸能界引退する事になったらお嫁さんになるからダイジョーブだって」
「お前な…嫁の貰い手が有るかわかんねーのに何言ってんだ?ひとまずこの前のテストの回答見せてみろ」
「げっ、なんでこの前のテストの事知ってんだよ?」

愚痴をもらしつつも渋々といった様子でテストの答案を渡してくる加奈子。
正直な感想を一言で言おう。

『これはひどい』である。

どうやって高校受験を突破したのだろうと不思議になるほどだ。
おいおい、こりゃ基礎からじっくりやらなきゃ駄目そうだな。
用意の良いことに、麻奈実が作ったという、基礎の確認に使える簡単な問題集を貰っておいてよかったぜ。

「まずな、この問題集から始めるぞ」

そして冒頭に至るのである。
「クソ…なんで加奈子がこんな事しなきゃなんねーのヨ」
「はいはい。この設問解き終わったら休憩にするからな。
 それと、いつも言ってるけど女の子がそんな口のきき方するんじゃねえよ」
「は?いつもって何だよ?お前にそんな注意された事あったっけ?」

あ、俺が偽マネージャーやってたのは内緒だった。
危うくマイラブリーエンジェルハイキックで宙に舞うところだったぜ。
なんとか誤魔化す事に成功し、俺の説明を聞きつつなんとか問題を終わらせた加奈子。

「ていうか、マジで勉強なんてやってらんねーし」
「お前さ、そんなんでどうやってウチの学校入ったんだよ?
 あの程度の問題で苦労するようじゃあ、よっぽどじゃねーとウチの高校入れないだろ?」
「そりゃ加奈子だって勉強したもん。桐乃やあやせと同じガッコ行きたかったし、桐乃もあやせも一生懸命
 加奈子に勉強教えてくれたんだから、そんな期待を裏切るような事デキネーッショ?」

なるほど、そうゆう事か。
メルルのコスプレイベントの時もそうだったが、こいつは興味のある事や、期待されていると力を発揮するのだ。
であれば、こいつにどうやって興味を持たせるか…だな。

「あのな加奈子、勉強は必要ないって言うけどよ、芸能界で息長く成功している人達には頭の良い人が多い。
 もちろん、必ずしも皆が皆そうだとは言わないけどな。
 勉強が出来る事で芸能界で成功するチャンスを広げられるなら、勉強しておいて損は無いと思わないか?」
「ちょ…おい、それマジかよ?」
「ああ、マジ山マジ男だ」

加奈子の眼の色が変わる。
ていうかマジチョロ過ぎですよ加奈子さんw

そんなこんなで、加奈子の家庭教師一日目が終了した。
当初の想像とは大分違ったが、加奈子も勉強する気になってくれたし万々歳なんじゃねーかな。
「さて、初めてのバイト代も入った事だし、夏服でも少し見にいくか」

しっかし、一ヶ月で平均点を上回る位まで勉強が出来るようになるとはなぁ…
それにしても、いくら加奈子の成績がよくなって色を付けてくれたとは言え、5万円もバイト代が出るとはな。
加奈子のおかげでもあるし、服を買いに行ったついでに髪留めでも買ってやるか。

夏向けのシャツと、小物コーナーに有った水色のリボンを無事購入し、折角町に出たのだから、ちょっと散策
してみようかと思ったところで、何かが聞こえてきた。

「………!……!?……ヨ!」
「こ……!……!!!……ああ!?」

ん?なんだ言い争いか?
どうやらこの路地のようだが…ていうか女の子一人に男三人ってみっともねぇなぁ…
幸い親父の勤めている警察署も近い事だし、通報してお説教食らってもらうt…っておい、あのツインテールは
加奈子じゃねーか!
クソッ、何やってんだアイツ!?

「ハァ!?誰がテメーらみてーなつるまねーと満足にナンパもデキネーような連中についてっかよ」
「あんまチョーシこいてっと拉致ってまわしちまうぞ?」

まったく政令指定都市になってしばらく経つってのに、この手合いは居なくならないもんだな…。

「おいおい、それ位にしとけよ。女の子一人に男が三人ってナンパにしたってタチ悪いんじゃないのか?」
「あぁん?誰だてめー?」×3
「え?なんで…お前が…」
「俺はコイツの保護者みたいなもんでね、それ位にしてやってくれないか?」
「ハァ!?横からシャシャリ出てきて、こっちの獲物かっさらおうったってそうはいかねぇんだよ!」

まったくこの手合いってのは、なんでこう直結的思考なのかね…と頭の中でごちる。
その瞬間加奈子の両目が見開かれた。

「オイ!アブねえ!!」
「??……っ!?」

ガンッ!とした強い衝撃を背中に感じたと思いきや、目の前にアスファルトの地面が迫ってくる。
いきなり後ろから蹴られた…のか?と、突然の衝撃に混乱しつつもなんとか顔面から地面に突っ込むことを回避する。
が、不意に背中を強く打たれた為、呼吸がままならない。

「ライダーキック炸裂ーwww」
「グ…カッ…ハ……」
「何コイツ?正義の味方ちゃん?ギャハッwwwwww」

後ろから蹴りを入れてきた4人目と思しき男が耳障りな笑い声を上げる。

「あーあ、お兄さんかっこ悪いの。ていうかメンドクセーからさっさと攫っちまおうぜ」

路上に停められている黒のバンを指差し男の一人が下卑た笑いを上げる。

「京介!!大丈夫か?オイ!誰か助けてくれよ!!!」

少女の悲痛な叫びが響くが、皆我関せずといった様子でそそくさと離れていく。
そりゃそうだ、こんな訳の解らない手合いに態々関わりたいといった奴はそうそう居ない。
俺だって絡まれているのが加奈子じゃなければココまでしたかは解らない。

「じゃ、正義の味方のおにーさん、さよーならっと!!!」
「!!!」

腹部に衝撃が走り、喉から酸っぱい物がこみ上げてきて、視界が白く霞む。
男の一人が去り際に蹴りをくれたのだった。
「キャッ!?痛い…!離せよ!」

加奈子のツインテールを掴み、乱暴に連れて行こうとするのが見える。
チ…クショウ…、そりゃ俺は日々平穏に過ごそうとしてきたから喧嘩なんてした事ねえ。
けどよ、目の前の女の子一人助けられなくて良いのかよ…高坂京介、お前はその程度の男なのかよ!

目は霞んでいて良く見えない。
胃から込み上げてきている物のせいで呼吸もままならない。
もろに蹴りをもらったせいで足もガクガクだ。
不意打ちを貰った上に4対1では勝てるはずが無い。

「嫌っ!痛い!離せってば!!!」

耳朶に加奈子の声が響く。
目は霞んでよく見えないが、加奈子が上げる悲鳴で方向は解る。
呼吸もままならないが、頭は驚くほどにクリアだ。
足はガクガクだが、立てない訳ではない。
4対1では勝てる筈は無いが、せめて加奈子さえ逃がせば良い!!!

「………っ!」

気が付くと俺は、加奈子の声のする方向へ走り出し、微かに見える輪郭から男の一人に背後からタックルをしていた。

「つっ!?んだこの野郎!!!」

男の一人に体当たりをした俺はそのままもんどりうって男と揉み合いになる。
が、しかし、他に3人居るのだ。
最初は何が起こったか理解できないでいた男達であったが、状況を理解した1人が俺に蹴りを入れたと同時に
他の二人もこちらへ駆け寄ってきた。
へへ…これでリンチは免れないが、加奈子は逃げられるだろ…と覚悟を決める。

「おい!京介!!!なにやってるんだよ!なんで逃げないんだよ!」

おい、お前が逃げないと俺の計画が台無しになるんだが…と何とか意識を両手で強く離さないようにしていた刹那

「歯を食いしばれ」
「え?んッガ!?」

『ドサッ』という鈍い音とともに、男が一人目の前に落ちてきた。
そして立て続けにまた例の『ドサッ』という音が立て続けに聞こえ、周囲からはうめき声しか聞こえなくなる。

「立てるか?いやそのまま横になっていた方がいいな」
「え?オヤ、ジ?」
「暴行及び傷害の現行犯で逮捕する」
「…れて。京介さんが助けに来てくれなかったら…私」
「それは大変な思いをした。なにより無事でよかった」
「…ん?ここ…は…?」
「む?気が付いたか京介」
「京介!!!」

カーテンの向こう側で事情聴取を受けていた加奈子が駆け寄ってくる。
ってここは…?なんで俺はベットで寝てるんだ?

「京介!京介!よかった、無事で…」
「え?ちょ、おま、イタタ」
「あ、ごめ…ん」

えーと、なんで加奈子が俺に抱き付いて来るんだ?

「よくやった、京介」
「親父?」
「話は来栖さんから聞いた。後でお前からも事情聴取する事になるが、まずはよくやったと褒めておこう」
「ああ、そっか…俺、あいつらと取っ組み合いになって」
「あれは取っ組み合いなんていう物ではない。オレが駆けつけた時にはリンチにしか見えなかったぞ」

話を整理すると、昼食を取りに外出していた親父が、たまたま怒声を聞き、俺がリンチされている現場に出くわし、
一人で四人の男を投げ飛ばし、制圧したということらしい。
ちなみに男達は、すでに親父の手配したパトカーに連れられて今頃警察署でこってり絞られているだろうとの事だ。

「クソ、情けねえなぁ。女の子一人守れず、挙句の果てに気を失っちまうなんてよ」
「そんな事無い!京介が助けてくれなかったら、加奈子は…加奈子は…!」

あー、だからもう泣くなって、こいつが泣いてるせいで全く持って調子がでやしねえ。

「うむ。お前の取った行動は勇気ある物で、全く恥じる必要など無い。むしろ立派な息子を持ったと嬉しく思う」

ってオイ!良い年したオッサンが頬を染めるな!気持ち悪い!
ふとそこで幾つかの違和感に気が付く。

「そういや加奈子お前なんで髪の毛下ろしてるんだ?」
「あ、うん。あいつらに連れて行かれそうになったときに暴れたから落としちゃったみたいで」

なるほど、じゃあ丁度よかったかもな。

「なぁ親父、現場に服が入った袋落ちてなかったか?」

ああ、これか、ちゃんと拾ってきてあるぞ。と手渡してくれる。
洋服の入ったビニール袋から、掌くらいの大きさの小さな包み紙を取り出す。

「ほら、加奈子。お前の成績が上がったお祝いだ。そんなに高いもんじゃねえけど、良かったら使ってくれ」
「え?これ加奈子に?」

俺から包みを受け取り、おずおずと袋を開く加奈子。

「お前いつも黄色のリボンで髪の毛括ってるだろ?偶にはこういう色も良いんじゃないかって思ってな」
「ありがとう、京介!」

うわっとと、だから抱きつくなって、あと親父もその「京介もやるようになった」って顔すんなよ!

「へへ…似合うかな?」
「ああ、よく似合ってるぞ」

やっぱ加奈子はツインテールが一番だよな。

「あー、で、そういえばお前いつから俺のこと京介って呼んでるんだ?」

もう一つの違和感の正体はこれである。
今までなら、『オイ』とか『オメー』とか呼ばれてたもんな。

「え?バッ、い、いきなり何を言い出すんだよ!?」

と、顔を真っ赤にして狼狽する加奈子。
お前何そんなにうろたえてんの?
いや別に俺だって『オイ』とか『オメー』等と呼ばれたい訳じゃない。
加奈子の本性を見てしまっているため、言うだけ無駄だと心の何処かで思っていたのだ。

「ま、俺は呼ばれ方に拘りがあるわけじゃねえし、好きな呼び方でかまわねえけどな」

しかし、兄さんとか、兄上とか、にぃにとか呼ぶのは、勘弁してほしいが。

「オホン、盛り上がってる所申し訳ないが、私は署に戻らないといけなくてね。来栖さんも遅くならないうちに
 ご両親と連絡を取って帰るようにしなさい」
「はい。ありがとうございます」

加奈子の奴、ホント外面はいいんだよな。

「京介、お前はこの後検査があるらしい。それと大事を取って一泊入院だ」
「げ、マジかよ…あ、親父この事、桐乃は知ってるのか?」
「いや、まだ知っているのはオレと母さんだけだ」
「だったらよ、桐乃には内緒にしといてくんねーか?余計な心配掛けたくねーし」
「特に隠すような事では無いと思うが。うむ、お前がそう言うのならその方が良いのだろう」

検査の結果、特に異常は無いという事で、翌日無事退院した俺に

「アンタ階段から落ちて一日入院とかチョーウケるんですけどwwww」

という桐乃の嘲笑が待ち受けていた。

 ----後日----

「フフフ、京介…か。加奈子なんかの為に一生懸命になってくれて…あ、そっか糞マネと似てるんだ」

 ----さらに後日・学校----

「あれ?加奈子リボン換えた?」
「へへ、ちょっとイメチェンしてみようかなって思ってよ。どうよ、似合うッショ?」
「うん、前の黄色いリボンも似合ってたけど今度のも似合ってるね」
「んー…でもそれだけじゃなくて、なんか雰囲気が変わったって言うか柔らかくなったっていうか…」
「あー、解った!加奈子恋してるんじゃないの?」
「え、ちょ、ま、加奈子はアイドルなんだから愛される側だっつうの!」
「えー、怪しいなー?誰なのー?もしかして例の家庭教師さん?」
「バ、バッカじゃねーの?加奈子が京介みてーな地味男に惚れる訳無い…と…思う」

「「え?」」

「「京介って…まさか」」


「アニキ…」
「お兄さん…」


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最終更新:2011年07月25日 23:07
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