Antipyretic 01


もしあんたが童貞ロードを爆走中の時に黒髪のモデルで、
超が二桁くらいは付く美少女で自分の事を死ぬほど(或いは殺したいほど)
好いてくれる15歳の彼女が居た場合はどう思うだろう?
多分、こちらがお願いすればどんな事でもしてくれるかも知れないが
単なる言いなりではなくおざなりなツンデレと言うわけでもない。
―――そんな一見、理想的な彼女が居た場合は………………


俺の彼女の名前は新垣あやせ、俺が大学生になった時、
同時にあやせが高校生になった時、俺たちは付き合う事になった。


あやせに429回"ぶち殺しますよ"と言われ23回"死んでるやる"と絶叫され
2回"好きです"と言われて俺らは恋人になった。
物理的に52回殴られて、5回死にかけた。

これは今は大学進学をきっかけに一人暮らしを始めた俺の部屋に、
あやせが遊びにきてエロDVDを発見されて罰せられてたのだが
何とか仲直りした直後の話だ。




俺の部屋にて

「京、キョウ、きょう、今すぐしたい クチュ(舌を入れる)、(処女あげる)」

「あやあや………結婚してくれ クチャ(舌を絡める)、(早く結婚したい)」


その時、何度か俺の携帯が鳴るがあやせが放り投げた。

「あやせ、本当に良いのか?(念押し)」

「…………コク(肯く)」

『わかった、あやせ愛してる』と言いかけ、行動に移そうした
刹那、チャイムの音

『京介!いるんでしょ?』と桐乃の声がする。

「お、お、お兄さん………(超焦)」

「ああああ、う、せ………(茫然自失)」



俺はしばらく固まっていたが『パチン!』あやせに53回目に殴られた衝撃で
何とか思考を働かせようとする。

「か、考えたら桐乃は俺の部屋のカギ持ってない筈だから………
あいつには少しばかり悪いが居留守でだ、大丈夫だ!」

と言った途端にカギが開く音がする

「マジかよ―――何で(疑問)、(絶望)」

しかしカギは開いたがチェーンロックのお陰で
いきなりこの場面に鉢合わせするのだけはどうやら避けられたらしい。

「お兄さん………どうしますか?(意外に冷静)」

「しぃー。多分、あのままなら諦めて帰るしかねぇだろうから(安堵)」

と安心したのもつかの間
ピピピ―――さっきあやせが放り投げた俺の携帯が鳴り出す。

『やっぱいるんじゃん!あんた、まさか可愛い妹がわざわざ訪ねて
きてあげてんのにぃ居留守とかしてないでしょうね?!』

と言うか―――チェーンがロックされてる時点で家にいるのは当然なんだ。
動揺してた俺は多分そういう当たり前の事すらその時は気付いてなかった。

「何故だか分からないですが、桐乃はお兄さんの部屋のカギ持ってるみたいですね。
それに携帯のせいで居留守も出来ないと、もうしょうがないですね。
―――もうこうなったら(何故か嬉しそう)」

「ああ―――し、しょうがないな、こうなったら(げんなり)」

「お兄さんから正式にわたしの事を………桐乃に(お願い)」

「しょうがないから、あやせ………ちょっと悪いが隠れてくれ!!(お願い)」


「「?」」


「はっ?(驚)
な、何でわたしが隠れないとダメなんですか?
わたしはお兄さんの彼女でしょ!!!(怒髪)、(天を衝く)」

「しぃー!
あやせ―――言いたい事は分かるのだが、流石に裸のままって(焦)
って?あ゛や゛せ゛、、く゛ひ゛し゛め゛て゛る゛は゛あ゛い゛し゛ゃ」

「き、鬼畜、変態、クズ!!
わたしの事好きって言ったのにぃ………さっきは処女奪おうとした癖に!!!!(殺)」

「わ゛か゛っ゛た゛か゛ら゛、は゛な゛し゛な゛ら゛あ゛と゛で必゛す゛(超必死)」


俺は首を絞められながら殺意の言葉を吐く裸のままのあやせを
クローゼットの中に押し込むと何とか服装を整えて

「はぁ~よく寝た…桐乃かよ、何か用か?」
ととぼけながらドアを開けた。

「遅い!何やってんの、あたしが何度も電話してるのに出ないしさ。
それに変な声だしぃ、あんた風邪でもひいたの?」

「そ゛う゛か゛…ゴホン、だ、大丈夫だ。と、兎に角俺は寝てたんだよ!
(自分に言い聞かせる)」

「それに涎ついてるじゃん、お兄ちゃんはお子様でちゅね(笑)」

「ほっとけ(あやせの唾液が主な成分)、(拭く)」

「へぇーあんた寝る時に手錠して寝るんだぁ?(疑惑)」

「え?(ギク)べ、別にイイだろ…」

「ふ~ん、、、やっぱキモ(軽蔑)」

「で、何の用だよ、わざわざそんな事言う為に訪ねてきたのか?」


「何、その言い方?
あんたが全然実家に連絡しないから心配して見に来てあげたんじゃん
ちゃんと感謝しなさいよね?
で・いつまで手錠かけたアホ面のままのあんたとあたしは
立ち話しないといけないわけ?(笑)」

「ち、ちらかってるから、、ちょちょっと待て、な?(汗)」


考えたらあやせはクローゼットにいるがあやせの服や靴はそのままなのだ
―――どう考えてもヤバイ

「ぷぷ、、ちょっとその超必死な感じ、あんた、あたしに見られて
ヤバイ事でもしてたの?(嘲笑)」

「う、うるせぇ………良いからそこでちょっと待ってろよ!!」

と言って一回ドアを閉めようとしたのだが、俺の妹は―――

「へぇ意外に片付いてるじゃん。想像とちょっと違うんですケド?(興味)
おじゃまします~♪(津々)」

「おい、コラてめぇ!な、何やってるんだよ!(怒)」


ヤバイ―――もう玄関であやせの女物の靴を見られた瞬間に終わる
と思っていたのだが

「何か、住人と同じで地味過ぎくない?この部屋(もの悲しさ)」

「そりゃ悪かったな………」


俺が心配していた事態にはならなかった。
どうやらあやせは自分の靴や服を一緒に持って隠れてくれたらしい。
俺の彼女はああ見えてやっぱり優しいのだろうか?


「この家はお客さんにお茶も出さないわけ?あ~喉渇いた!」

「出しゃ良いんだろ、出しゃ…まったく」

と言って気付く
テーブルには俺が飲んでいたコーヒーとあやせの紅茶のカップがある事に
―――桐乃の視線はその方向に見止まった。
このカップはあやせがプレゼントしてくれたペアカップなのだが
―――カップに書かれた天使の柄が今の俺には死神に見えた。

「あんた――これ?」 「…………(色々終わった)」

こんな事なら最初から紹介すりゃ良かった。
普通に紹介するのとクローゼットからあやせが裸で出てくるなら
どう考えても前者の方がその後に何かあるにしても全然マシなのは間違いない。


「片付いてると思ったら横着してカップくらいちゃんと洗いなさいよね(呆れる)」

「へ?
あ、ああそうだな、一人で住んでると………色々面倒でさ(超ヤバかった)」

「あ~もうしょうがないな―――この調子じゃちゃんと食べてないんでしょ?
こんな事だろうと思ってさ、ほらこれ(買い物袋)」

「な、なんだよ?それ(買い物袋)」

「もう鈍過ぎ、、だから、あ、あたしがご飯作ってあげようと思って来たんでしょ!
ふ、普通はこんな事絶対にしないけど、お母さんが心配してたしさ」

と言いながら冷蔵庫を開けて何やら思案し始める妹。


「あれ?
結構色々色々入ってるじゃん、なんか、、(意外)」


そうなのだ―――と言うか実は冷凍庫に隠していたエロDVDを
あやせが俺の為にご飯作ろうとして発見されたから
―――あの騒動だったわけで。

そして本当に時々だが同じ大学に通う麻奈実が俺の部屋に
遊びに来る事が実はあったりする。

と言うか黒猫も理由があってうちには何度か来てたりするのだが
我ながらよくこんな危険なジャグリングをやっているなと思う。
そして見事に失敗―――まぁ起きたことはしょうがない。


そんなわけでちょっと落ち込んだ様子を見せる桐乃に
俺はあやせがいる事も少し忘れて………

「あ~すげぇ腹減ってたんだ、おまえ意外に気が利くな。
んで何作ってくれんの?」

指に巻かれた絆創膏を見てしまえば、流石にもう良いから帰ってくれとは
どうしても言えなかった………

「そ、そう?
でも、でも意外は余計だっての。あたしクラスになると何でも作れるんだけどさぁ
あ(んた)京介はカレー好きでしょ?だからカレー作ってあげるから!」


―――俺はこれが後々面倒になる事は桐乃の笑顔を見ながらその時
すでに覚悟していた。


「あんたいつまで手錠してんの?
それだと食べにくいじゃん――ふざけてないでちゃんと食べてよね!
あんたの大好きな可愛い妹が作ってあげたんだから、わかってんの?」

「か、カギなくした………(実はクローゼットにある)」

でカギ持ってる人がクローゼットからこちらを覗いていて
ドア||-♯)(殺)
みたいな感じで見ている。


「大学生にもなって、ほんと相変わらず頭悪いよね、あんたってさ(苦笑)
ほ、ほらあ~ん」

「へ?
何やってんの?おまえ(?)」

「あ~ん(赤面)、、、あ゛~ん゛(怒)」  「………(聞こえないふり)」

これ以上あやせの機嫌を損ねて大丈夫なのか?
どうか躊躇していると


「ほら、あ~んって言ってるでしょ!何度言わせんの(超怒)
あんたがバカだから食べにくそうだからやってあげんてんのに、
あたしがせっかく親切にしてあげてんのに、、さ!!!」

「へいへい、頂きます(パク)」 「ど、どう?(緊張)」

「美味しいよ、すごく(恐怖の汗)、(戦慄の涙)」


「な、何泣いてんの、あんた?
そ、そっか、、あたしの手料理食べたら当然だよね(笑顔)
そんなのに美味しいならさ、、京介が食べたくなったら、また言いなさいよね?
気が向いたらまた作ってあげるからさぁ、にゃはは(上機嫌)」

桐乃が珍しいほどの上機嫌でいると桐乃の後ろにあるクローゼットの
隙間から人ってあれほど無表情になれるんだとちょっと感心するほどの
恐ろしい形相のあやせと俺は目が合った。


「そいやさ―――何でおまえが俺の部屋のカギ持ってるんだよ。
俺は渡した覚えねぇぞ」

「お母さんに貰った、大体あたしの学校とあんたの家って近いじゃん、
だから帰る時についでに様子見てこいって言われたんだからしょうがないでしょ!
お父さんもあんたがお、女連れ込んで何かしてないかとか言ってたしぃ」

「ぶー(吹き出す)」

そうなのだ―――桐乃が高校と俺の部屋はかなり近い。
ついでにあやせも同じ学校なのだが、まぁそれも偶然なのかも知れないが。

「あ、もう汚いでしょ!」  「わ、わりぃ…喉に詰まった」

「はぁ~ほら、ほら、、、京介ちゃんは赤ちゃんでちゅね(照)、
(俺の口元をハンカチで拭く)」

「ご、ごちそうさまでした(・人・)、普通に旨かったわ(感心)」

「ふふ(嬉)あ、そだ、アイスも買ってきたから、、あんたも食べるでしょ?」

『な、なんかおまえってしばらく会わないうちに………』

女らしくと言うか気遣い出来る様になったなと言いかけて辞めた。
もう実は色々今更遅いのかも知れないのだけど。

「何かさ、居ないなら居ないで全然イイと思ってたけどさぁ
やっぱあんた居ないと、、、あたしは絶対違うんだけどさ!
お父さんもお母さんも淋しそうでさ―――あたしは絶対違うけどっ!」

「そ、そうか―――色々ありがとうな桐乃。俺もたまには実家帰るわ(頭撫でる)」

「あ、あんたも、あたしが海外行った時、す、少しは淋しかった?」

毒を食らわば皿まで―――殺されるなら死んだ上に鞭で打たれる覚悟で
俺は……結局、桐乃のこの顔見たらある意味逆らえなくなるのが
我ながらやっぱりシスコンなのだと思う。


「ああ、滅茶苦茶淋しかったぜ、だからおまえはなるべく遠くに行くなよ
(更に頭撫でる)」

「ふ、ふ~ん、ふふ、、どおっしようかなぁ~?(ニンマリ)」

「―――あっそ(と言いつつ髪ぐしゃぐしゃにする)」

「な、何やってんの!バカ!やめろ、やめてってば(でも笑顔)」

しかしまったく間が悪い。
恋人と初めて結ばれようとしてた直後に妹とカレーを食べてマッタリしつつ、
痛いバカップルみたいなやり取りをクローゼットから恋人が見てるって
―――これは一体何プレイなんだろう?

「ほ、ほんと、あんた大学生?もうガキじゃん―――あ、そだ。
ほらお子様にあたしからプレゼントあるから、これ!(ノーパソ)」

「なに?これ!?(ノーパソ)」
まさか……エロゲー入ってるパソコンじゃないだろうな

「あたしの厳選したゲームとアニメ入ってるから!良いのあったらさ、
また更新するから、遊んだり見たら、、か、感想とかちゃんと言いなさいよ!」

「はははは……はぁ(ため息)」

エロDVD一枚で死にかけたのに、こんなの万死に値すだろ、
あやせに言わせれば


起動させてみるとエロゲーとアニメがぎっしり、ついでに
待ち受けが―――桐乃?
更に桐乃に繋がるスカイプのIDも入れてある
シスコンの俺には至れり尽くせり
あやせの逆鱗に触れる事間違いなしの構成だった。

「あたし新しいの買ったしさ、、、だからこれはあげる!
あ、あたしだと思って大切にしなさいよね?わかった(満面の笑み)」

「ああ、ありがとう………大切に使うよ」

「うん、それと、、えっと、さ、あんた、、、、、」

「なんだよ?」

「、、、、や、やっぱ良い、また今度でさ」

多分こいつの言いたいことは分かる。
そしてその答えはクローゼットの中に居るわけで
でも一回隠した以上はここでご本人に登場して貰うわけにはいかなかった
―――説明するにしてもいくら何でもタイミングってものがある。


外に出て、桐乃を見送る時

「あんたが元気そうで安心した、、」

「俺もおまえが元気そうで安心したわ。
ついでにちょっと見ない内にメチャクチャ美人になったな」

俺も大学生なのだ、妹にお世辞のひとつでも言える様ならないと
―――と言うか単純に桐乃に久しぶりに会ってテンション高くなった。
シスコンの悲しい性が主な理由かも知れないが
流石に屋外だからあやせには聞こえないだろう。



「と、当然でしょ!誰に対して言ってると思ってんの?(照)」

本当にしばらく見ない内におまえは良い女になったよ、桐乃
―――ちょっぴり誇らしい気分で妹を見送った後
さて……と、俺の可愛い彼女はどうなってるんだろう?
さて………俺はどうなってしまうんだろう?


速攻で部屋に戻ってクローゼットを開けた時―――

青ざめたあやせの表情―――俺は不機嫌な事を心配したのだが
―――それよりも悪い事があやせは裸のまま寒さで震えていた。

「おい、大丈夫か?!!あ、あやせ!!!!(心配)」

「……………………(ガクガクブルブル)」

俺は手錠をはめたままの両手で必死にあやせの裸体をさすると
あやせに思いっきり突き飛ばされた。

「さ、触らないで………変態!触るな!!!!(怒)」

「頭にきて機嫌が悪いのは分かるが、このままじゃヤバイだろ!!
後で何度でも殴られてやるから、今は大人しくしろ!(必死)」

俺は無理やりあやせを抱き寄せるとベットの方に抱きかかえて
毛布をかぶせて、また身体をさすってやる。


「ほ、ほんとうに……………や、やめて…(艶めかしい声)」

「え?ま、まさか(変な期待)」


変な気分であやせの全身をさすりながら触っていると

「ち、違う………………と、と、と・!」

「"と"?がどうしたんだよ?!」

「といれ―――おトイレ行かせて!!!!!もうバカ!死ね」

―――と思いっきり蹴りを入れた後
あやせは真っ裸のままトイレに消えていった。
しばらくしてあやせが戻ってきたので俺は


「あやせ…色々正直すまんかった(超土下座)」

「……………………」
無言で服を着始める………あやせ
―――こりゃ相当怒ってるな。

「まぁ何というかあいつも、桐乃も久しぶりに俺に会ったから(しどろ)
兄妹愛と言うか家族の触れ合いみたいな、も、もんでさ(もどろ)」


「『ちょっと見ない内にメチャクチャ美人になった…な』」

「へ?」

「『あたしが海外行った時…す、少しは淋しかった?』(桐乃の真似)」

「ぐ……」

「『京介ちゃんは赤ちゃんでちゅね』(桐乃の真似)」

「……もう辞めてくれ…(懇願)」

「『あ~ん、ほらあ~ん』(桐乃の真似)」


「ぎゃぁぁっぁぁぁ(超錯乱)」

「……………………………気持ち悪い(小声)」

「だ、だから謝ってるだろ、そんなに怒らなくても(分かるけど)」


「ほ、ほんとは―――桐乃が帰ったらすぐに続きしようと思ってたのにい
裏切り者、裏切り者、裏切り者―――(25回連続の裏切り者)」

「俺はそりゃシスコンだよ―――それも重症のなッ!
でもそれを分かった上でおまえは俺と付き合ったんだろ!(逆ギレ)」

「DVDの時は素直に謝った癖に!!お(兄さん)変態のあなたは
桐乃やお姉さんやあの泥棒猫といちゃついても、こうやって逆ギレして
―――色々理由を付けては………わたしをまた裏切るんでしょうね!(軽蔑)」


何かこいつ一時期の桐乃みたいだな―――桐乃よりも桐乃らしいと言うか
下手に家族じゃない分だけ妙に女の嫉妬や悋気がよく分かってしまう。


俺が麻奈実や黒猫と親しくしていた時に見せた桐乃の怒り。
あの時は単に麻奈実が嫌いなだけと思っていた。
あの時は単に親友の黒猫を取られるのがイヤなのだと思っていた。
今のあやせを見るとそうじゃなかったと今更気付かされる。

黒猫と付き合って別れた後、その話を麻奈実と帰り道で話しながら
俺は黒猫は麻奈実に似てると漠然と感じた。
―――黒猫は麻奈実の如く察しが良くて、
―――麻奈実も黒猫の事をまるで自分の事かの様に話す。
そして、あの時麻奈実は俺の事を好きとも言った。

だから俺には予感があった
―――いつか桐乃が納得したら、桐乃が認めてくれるなら、
麻奈実か黒猫に告白する未来が来るんだろうと。
それほどあの二人とは気が合ったし一緒に居て心地良かった。

でもそうはならなかった、麻奈実が言った
あやせならみんなが笑って暮らせる家庭を"無理やりにでも"作るという話。
―――あの時は笑い話だった筈だが………

あやせは麻奈実の様に桐乃に遠慮をして何年も我慢しなかったし、
黒猫の様に桐乃に配慮して付き合って別れるなんて事もしなかった。
俺に対して思慮なんて見せずストレートな愛情をぶつかってきた。
俺がそれに応えない場合は同じ分だけ憎悪も向けてきた。

23回の"死んでるやる"は桐乃とあやせの間で板挟みになって
煮え切らない態度を取った俺に対してあやせが言った数なのだ。

同情と言えばそうかも知れないし、責任と言えばそうかも知れない
純粋に恋人への愛情ではないかも知れないが………
彼女を放り出して一人にすれば確実にあやせは不幸になる………
だから桐乃との約束すら破って俺はあやせと恋人になった。

この感情を何と呼ぶのか分からないが
………………まさかここまで嫉妬深いとは
―――正直これに比べたら桐乃は超デレデレな可愛いらしい妹なのだと
納得せざるをえない。


「と、兎に角落ち着けよ、冷静になろうぜ、な、な?(なだめすかし)」

「うるさい!変態喋るな!クション(くしゃみ)」

「おまえ………やっぱ風邪ひいたんじゃ…?(心配)」

「もうお兄(さん)………変態のあなたには関係ありません。
申し訳ないですが、別れさせて下さい(冷血にきっぱり)」


「あやせ………そんな悲しい事言うなよ(抱きつき)」

キスしようとして思いっきり舌噛まれた。
ファーストキスはレモン味と言うが
あやせとの4回目のキスは鉄の味がした。
流石にキスしたくらいで許してくれるほど、甘くはない。
あやせは、そんじょそこらのやわな彼女とはワケが違う。


「さようなら、シスコンの変態さん。
あなたと付き合った期間ほどわたしの人生で無駄な時間はありませんでした。
あなたにわたしの初めてあげようとしてたなんて、
わたしって本当にどうかしてました。
今、思い出して考えるだけでも虫酸が走って吐き気がして気持ち悪い。
だから、だからもう絶対に、絶対に、絶対に連絡しないでくださいね」


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最終更新:2013年04月07日 04:54
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