22-769


「沙織ってござるござる言ってた割に忍者のコスプレしたことないよな」
「ほえ?」

何の気なしにつぶやいた俺の発言がきっかけだった。

「いや、今でこそあの眼鏡ほとんど使ってないけどさ。ああいう口調だったからそういえばくの一にでもなったことあるのかなっと」

とはいえ、『~氏』とか考えるに別に特定の何かってわけでもなかったのだろうが。

「あれは彼方さんの『コスプレ』とでも言うべきものでしたからね。なるほど、考えてみればその発想は無かったですわ」
「しょっちゅうニンニンとか言ってた気もするが」
「そういえばそんなこともあったでござるなぁ~ふふっ」
「おい」

口をωにして顔をほころばせる沙織に軽くチョップで小突きを入れ、沙織はてへっと舌をちろりと出す。
死ぬほどあざといが、加奈子の次ぐらいには似合うから困る。いや、麻奈実とタイぐらいか?
そんなことを居間のソファに体を預けながら考えていたところ、

「……また他の女の子のこと考えてました?」
「別に?」

こういうことには意外なほど鼻が鋭い奴だったりするのがこの沙織である。
なぁにぃ聞こえんなぁとばかりに目を上に泳がしてわざとらしくうそぶく。

「……新垣、あやせさんでしたっけ?」
「――ッ!?」

未知の角度からの追求に思わず背筋が凍った。
なんでそんなことを……と訊こうとしたが、それでは自白したようなものだと思いとどまる。
「『最近友達の――あやせって言うんだけどさァ――の様子がおかしいのよね。
そんで聞いてみたら”今度の休みにお兄さんと久しぶりに会うんだよ”って返ってきてさ。
あのバカに釘刺しておいた方がいいんじゃないの?』って匿名希望の方から投書を戴きまして」

ご丁寧に口調までトレースしてくれたおかげでバレバレである。
あ……あんのバカ妹がぁーッ!!と逆ギレしそうになったが、よく考えてみればこれに関してはあやせが軽率なだけで桐乃に罪はない。
ああそうさ、ばれなければ黙っておくつもりだったのは認めるよ。これに関しては完膚なきまでに俺が悪い。
って誰に言ってるんだろうか俺。

「別に京介さんが誰と会おうとわたしは止めませんよ?けども、彼女たるわたしには一言でも言伝してほしかったですね。
わたしの許可無く手を出していいのは桐乃さんと瑠璃ちゃんだけです」

あいつらならいいのかよ!と心の中で突っ込みながら、ばつの悪そうに俺は沙織を見た。
その悲しげな表情に、自責で思わず唇を噛んだ。

「いや、悪かった。ちょっと欲を出しちまった俺が本当に悪い。こんなできた彼女がいるってのにな」
「まったくですよ。
さて、話がまとまったようですし、コスプレでもしましょうか」
「えっ?」
「忍者のですよ。さっき言ってたじゃないですか」

そういえばそんなことも言ってたっけな……あまりの冷や汗にすっかり忘れてたぜ。

「忍者っつっても結構広い気がするが。ハットリ君のでもするのか?くの一はいなかったような……」
「ああ、それに関してはきちんとツテがあるので大丈夫です」
「ふぅん?すると俺は?」
「漆黒で構いませんよ。ちょっとした都合もあるので」
「うぅん、なんか面倒くs――」

にっこり。

「やらせていただきます」
「よろしい。それでは向こうで着替えてきてくださいな」

首を二度縦に振ってマンションの外に出る。
すっごいニコニコしながらキレるのがうちの娘の特徴でもある。というかやっぱあれ超恐ええよ!
「この格好をするのも何度目なのかな」

というほど多くもない気もするが。最初に素顔の沙織を見た時から指折り数えられるぐらいか?
なんにせよ沙織に付き合わされて結構コスプレをしてきたが、これが俺に一番合っていると自分でも思うことはある。
沙織も『姉さんの旦那さんが元ネタ』だとか言ってたし、そのへん思い入れがあるんだろうかね。
用意の済んだ俺は元いた部屋の玄関に手をかけてノックをした。

「おーい、戻っていいかー」
「はーい」

許しを得た俺は取っ手を回してドアを開けると、沙織の意外な姿に心を奪われた。
くの一っちゃらしいんだが、黒を基調とした軽装で、沙織の豊満なボディが余すところなく表現されている。
ってかこれは……

「……SO(ステラ・オーシャン)3のクレア?」
「ご名答!どうです?似合いますか?」

ふわっと一回転して腰を低く落とし、右手を閉じたチョキの形にして口元に寄せる。
元のキャラが貞淑で温和なグレーの長髪ということもあってか、はまりすぎて怖い位である。

「――いや、すっげえかわいい」
「ふふっ、お褒めに預かり光栄です。京介さんも良くお似合いですよ。さあさあ中へ」
「お、おう」

語彙力のない自分が恨めしいが、あげつらった言葉も変だと自己弁護してみる。
そうして忍者というか隠密に導かれて俺は部屋の中に入ったのだが――
「……なにこれ?」

部屋の中には縄に鞭といった――いわゆる、そういう系のシロモノ?が並べられていた。
というか、こんなのが部屋のどこに隠されていたのかという疑問もあるが、

「隠密といえば捕縛、尋問じゃないですか。だから京介さん、お願いしますね」
「いや、その理屈はおかしい」
「わたしは夜魔の女王の放った斥候という設定でお願いします」
「人の話を聞け!」

そもそも漆黒はダークヒーローではあるがそんな趣味はないと思うんだが。
黒猫に聞かせれば「漆黒はそんなこと言わない」とか一蹴されそうである。

「大丈夫です、人は誰しも暗黒面を持ってるものですから。さあ!京介さん」

やけにノリノリで怖いぐらいの沙織さんがちょいちょいと手招きをしてくる。
そのやたら扇情的な仕草に思わず俺も劣情を煽られてきた。

「……なに、そんなに俺にやって欲しいの?」
「……京介さんじゃなきゃ頼みませんよこんなの。言わせないでください恥ずかしい」
「わ、わかった」

好いた女にそこまで言われたら据え膳ってレベルじゃあるまい。覚悟を決して俺は沙織を縛りにかかる。
ご丁寧に部屋周りには引っ掛ける用のフックみたいなものがついていた。
世の中には色々便利なものがあるもんだな……と変にしみじみと思いながら縄を結っていると、

「あ、そうそう京介さん」
「ん?」
「この衣装、別に破っても構わないんで。脱がしたいならそれでもいいですけど」
「……」

けろっとした顔で言い放ちやがる。
こいつ、たまに痴女の素質があるんじゃないかと疑わざるを得ない時があるんだよな。
嫌いかと言われればうん、大好きSA!と答えるところだが。
薄暗い部屋の中、両手両足を部屋の壁と縄で拘束された女が一人いた。

「ここは……?」
「ようやくお目覚めかね」

そこから姿を現したのは、黒いマント姿に身をうつした漆黒――つまり俺だった。

「女王の為に御苦労様、と労っておこうかな?」
「下種が……一思いに殺せ!」
「殊勝な心がけだが――その容姿、殺すには惜しいのでな」
「なん……だと?」
「要は、俺の女になれ、ということだ」
「ふざけるな!誰がそんな……」
「そうだ。その強気な態度。それが実にいい。
まあいい、俺の手でじっくりと俺の味を教えてやる」

我ながら歯の浮くような台詞だが、いわば小芝居のようなものなのだから気にしたら負けだ。
沙織もそのへんがわかっているからこそ余計なことは言わない。
彼女に下種とか言われると地味に傷ついたりもするんだが、まあいい。今はとにかく雑念を捨てることだった。
俺――漆黒は徐に彼女の首筋を掴み、強引に唇を奪った。

「――んッ!?」
「俺謹製の媚薬だ。割と即効性だぞ。さて、次は――」

力いっぱいに首元から忍装束を引き千切る。
見た目よりも割とやわい作りだった。そういう意図だったと内心苦笑せざるを得ないが――
その何度見ても飽きない大きな双球が外気に晒され、俺は生唾を飲み込んだ。

「普段の力さえ出せれば……貴様なんぞに……!」
「その縄も貴様等の力を削ぐように出来ているのでな。無駄なあがきはよすことだ」
「くっ……」

いかにも悔しそうな素振りで俺を睨み付ける。
なんかどこかで聞いたようなセリフだが、今は考えるのはよそう。
漆黒はこね回す様な動きで両手を胸へと動かし、乳首をきゅっと摘み取る。
時に強く、時に優しく。

「うっ……ああっ……」
「どうだ、愉しくなってきただろう?」
「だっ……誰が!」
「そうか。では、こちらも味わうとするか」
「あっ……」

残っていた衣装を股の下まで裂き取り、残っているのは白いショーツ一枚となった。
そこをショーツの上から丹念に舐め回す。
女の体が電撃を受けたようにビクンと跳ねた。
「ああっ……ひ、卑劣な……」
「お仕置きに汚いも何もあるまい。現にお前のここは悦んでいるぞ?」
「き……貴様の薬のせいだろうっ」
「ん?言っている意味がわからないな。あれはただの栄養剤だぞ」
「なっ……」
「お前は自分が快楽に溺れていると認めたのさ。それが真実だ」
「姑息な真似を……!」
「何か違いがあるのか?違わないさ、ははは」

残ったショーツも破り捨て、露になった秘所に人差し指を滑らかに差し入れる。
今だきつさを失わないそれはまさしく名器と呼ぶにふさわしいだろう。
そしてそれがある一点に到ったとき、

「んっ……くっ…あっ…あ…あああああっ!!」

体をバイブのように著しく痙攣させ、目の前の女はイき果てた。
あ、そういやバイブ使うの忘れてたな。まあいいや、俺ももう我慢できん。
ヒャア、がまんできねぇ0だ!

「ま……まだ……!」
「心までは屈さぬか……ますます気に入った。まあいい、夜はこれからだ。じっくりと可愛がってやろう。まず一発目を受け取るがいい」
「な、何を!」

漆黒は名も知らぬ女の腰を持ち上げて後ろ向きにさせると、むき出しにした性器をそこにあてがった。

「やっ……やめろッ!?」
「悪いが、それはできない相談だな」

あくまで余裕そうに、漆黒はずぶりと思い切り差し入れた。
「ぐっ……うううううっ!!」
「なんだ、非処女か。とんだ淫乱女だったのではないか、ははははっ!」
「そん、な、ことっ……あぁんっ!」

初めても戴いたんだが……と恍惚に一瞬浸るも、すぐに打ち消して一心不乱に腰を振る。

「ほうらっ、中に出すぞ!」
「っ!?や、やめろっ!それだけは!」
「ペットの言葉に耳を貸す奴がいるか?」
「ぺ、ペッ……あっ、うぁあっ!」

内心すまんとおためごかしをしながら、俺は欲望を素直に沙織の膣内に解き放った。

「んっ……ああ……あああああああ!!」

キューッと収縮した膣に一滴残らず搾り取られ、ズルリと自分のモノを抜く。床に倒れた沙織の蕩けた表情は抜いた後だというのに未だ魅力的だった。
もう腰がガクガクで正直立ってるのも辛かったが、漆黒としての矜持で直立し続けた。
「パーフェクトです、京介さん。惚れ直してしまいましたわ」
「感謝の極み」

うっとりとした沙織の表情に頑張った甲斐があったかな、と自分を讃えようとしていた矢先――

「さて、第二幕の開始ですわね?京介さん?」
「えっ」
「だってまだあの『わたし』は堕ちてませんからね。物語はちゃんとやりきらないと」
「ちょっ――」

明日はあやせと待ち合わせがあるんだけど、

「京介さんに拒否権はありません」

にっこり。
ああ、そういえばこいつ知ってたんだっけか、そのこと……
もはや言葉は不要だった。
俺は黙って深く頷き、夜が更けても絞られ続けたのだった、マル。


次の日、俺がげっそりとした表情で遅刻までしてしまい、あやせに深く心配されたのは言うまでもなかったとさ。





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最終更新:2011年11月26日 19:22
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