俺の後輩がこんなにかわいいわけがない

黒猫に校舎裏に呼び出されたときに桐乃からあんなメールが来ていなかったら…
という設定です。でははじめます。

「…あ…あのっ…」
 俺の顔を見るなり、黒猫はいつもと違った弱々しい声で話しかけてきた。
「おう。待たせて悪いな。どうしたんだ黒猫」
「別に待ってはいないわ。…私も今来たところだもの。」
 何だこのデートの待ち合わせのような会話は。…普通は立場が逆な気がしないでもないが。
「…えっと…今日はあなたに言っておくことがあるわ。」
「何について?」
「クラスのこととか…部活とか…。いろいろと、うまくいくようになってきたから…」
 相変わらず、いつもの尊大さと違う歯切れの悪い言葉で俺に話しかける黒猫。普通の相手ではなかなかこいつの言いたい事をわかってやれないだろう。でも、俺にはわかる。こいつはこいつなりに、下手な礼を言っているのだろう。
「俺は何にもしてねーよ。それができたのは・・・お前の努力だ。」
 これは俺の本心からの気持ちだった。こいつにはもう大切な…それこそお互いの感情をぶつけ合えるくらい強い絆で結ばれた友達がいる。もう、俺がばたばた騒ぐ必要も無いだろう。
 とはいえ、俺は少し寂しさを感じていた。大切に守ってきたものが手の内から巣立っていってしまうような…
「それでもっ!」
 黒猫の叫びが俺の思考をかき消した。

「…それでも、私はうれしかった」
「え…?」
「私を心配してくれたことも、私と一緒にいてくれたことも、全部っ…」
 言葉をとめた黒猫は、俺の目をはっきり見てこういったのだ。
「全部…嬉しかった。私は、あなたの、優しさが、おせっかいが、嬉しかった」 
 自分の顔が赤くなるのがわかる。よく見ると、黒猫の顔も真っ赤だ。
「そ、そうか…」
 それだけの言葉をひねり出すのが、俺にはやっとだった。
「だから、私はあなたに言いたいことがあるわ…」
 黒猫は、真っ赤な顔をさらに赤くして、それでも俺の眼をまっすぐに見つめて、こう言った。
「あなたが、好きです。私と、一緒にいてください。…付き合ってください」
 付き合う?ああ、また一緒に買い物に連れてけとかそういう…ってそうじゃないだろ!驚きのあまりトリップしてどうする!
「あの…やっぱり、迷惑…だった…?」
 俺の無言を否定と捉えたのか、黒猫が震える手を握り締め、今にも泣きそうな顔でそう言った。
「そんなことねえよ!」
 つい出てしまった怒鳴り声に、黒猫が身を震わす。
「あ、わりい…驚かすつもりは無かったんだ」
「いえ、いいわ…」
 ―俺もこいつも、相当ひねくれたところがあると思う。でも、こいつは勇気を振り絞って、俺に告白してきたんだ。だから俺も、自分に素直にならなきゃなんねーな。
「俺も…」
「え…?」
「俺も、お前のことが好きだ。俺と、付き合ってくれ」
「…っ」
 目に涙を浮かべた黒猫が、俺の胸に飛び込んでくる。その姿を見て、俺は不覚にもこう思っちまったのさ。
…俺の後輩が、こんなに可愛いわけが無い…ってな。


















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最終更新:2010年01月11日 22:31
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