勘違い

「あー、あいつの眼鏡好き? あれは病気よね、まったく」

 珍しいことに、この女と意見が完全に一致した。

「四六時中、暇があったらあの地味女とベタベタばっかりして。
 秋には泊まりに行ったりもしてたみたいだし。
 ふん、今日も勉強とか言ってるけど、一体何ヤッてるのか判りゃしないわよね」

 判ってはいることだけど。
 その事実は、繰り返し確認する度に私をナイーブにさせる。

「エロ本だって眼鏡ものばっかりだし。
 知ってる? あいつ、あたしが貸してやったノーパソで『眼鏡かけたまま■■■■■』
 なんてワード入れて検索してたのよ! も~信じらんない!」

 何時もは自分も乗って彼の事を悪し様に罵るのだが、彼がいない時にそれをするのは陰口のようで気が進まない。

「ふん、今時、眼鏡属性なんて珍しくもないわよ。
 ツンデレ全盛の今の情勢じゃあ、時代遅れのマイナー好みと批判されても仕方ない無いけどね。
 まあ、どうせあの男は、エロゲーでも眼鏡緑髪の腹黒キャラを喜々として攻略するんでしょうけど―――」
「あ、最近はそうでもないわよ」

 え?

「あいつこの頃はね、エロゲーとかじゃ、黒髪ロングのスレンダーキャラを一番に攻略するのよ。
 はあ、まったくわけ解んないわ、あいつの好みだけは。
 ……って、何勝手に先に行ってるのよ、待ちなさいよ!」

 背後の声から逃げるように、私は更に早足になる。
 ―――追いつかれたくない。

「……黒髪ロングのスレンダーキャラ、ですって」

 頬がだらしなく緩んでる今の顔を、こいつにだけは見られたくない。











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最終更新:2010年01月13日 22:18
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