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【俺の妹】伏見つかさエロパロ20【十三番目のねこシス】

1 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 16:57:05.02 ID:a/4sE1CN
1 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2011/05/30(月) 17:07:05.82 ID:E3HEWFNa [1/2]
ここは伏見つかさ作品のエロパロスレです
次スレは>>980か480KBあたりで立ててください

◆まとめwiki
http://www15.atwiki.jp/fushimi_eroparo/

◆前スレ
【俺の妹】伏見つかさエロパロ19【十三番目のねこシス】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1306742825/

◆書き手さんへ
 ○陵辱・NTR・百合・BLなどの特殊嗜好モノや、
   オリキャラなどの万人受けしないモノは投下前に注意書きをお願いします
 ○書きながら投下はお控えください

◆その他
 ○書き手さんが投下し易い雰囲気づくりを
  ・SS投下宣言、直後は雑談をしばらく自重
  ・自分の嗜好に合わないSSなら黙ってスルーすること←ココ重要
 ○こういうSSが読んでみたい等のリクエストは節度を持って
 ○荒らし、煽りは勿論スルー
 ○sage進行です。メール欄に半角で sage と書いてください。ageた人を煽るのはやめましょう。
   大半のsageていないレスは荒らし目的の釣りか煽りです、慎重に見極めて反応しましょう。

2 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:02:48.65 ID:a/4sE1CN
コピペミスりました、すみませんm(_ _)m

3 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:07:18.93 ID:a+nkvFHo
◆このスレへの、SL66氏並び同一人物の書き込みを禁止します。

【SL66専用】伏見つかさ総合【俺妹】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308717152/

こちらをご利用ください

4 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:14:13.00 ID:d1TvAWHn
【書き込み/スレッド作成の手引き】
書き込みは「削除ガイドライン」に触れないように注意。
スレッドは作品またはテーマ毎に1つまで。
 ただし、なりきり用に限り、作品/テーマ毎にもう1つまで立てられます。
 また、できるだけ作家/会社/シリーズ等毎にまとめましょう。
 *なお、なりきりについてはピンクのキャラサロン等も利用できます。
既存スレッドとの重複や類似、特定の作品についてのスレをテーマ/カップリングで限定して立てることは禁止。
 あまりに限定的なシチュエーションやテーマでのスレッド作成は控えめに。
既存のスレッドの検索は、スレッド一覧にて、Windowsは[Ctrl]+[F]、Macは[Command]+[F]
単発質問は質問スレッド、ちょっとしたネタや雑談は雑談スレッドへ。
荒らし、煽りは完全無視が有効です。

5 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:18:39.27 ID:9arWYZL0
荒れるからSL氏の話題も禁止しましょう

6 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:19:03.92 ID:wZPEUuOb
俺は…信じてる()

7 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:19:14.19 ID:a/4sE1CN
>あまりに限定的なシチュエーションやテーマでのスレッド作成は控えめに
スレタイ的にむしろ【SL66専用】伏見つかさ総合【俺妹】が相当するのではと考えたのですがやはりダメでしょうか?

8 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 17:26:56.23 ID:pAQz8p7m
こちらが本スレなので移動願います

【SL66専用】伏見つかさ総合【俺妹】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308717152/l50

9 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:04:56.71 ID:+vebDzby
>>1がアホすぎる件
隔離スレにここへの誘導貼ってどうすんだよ
ホント勘弁してくれ

10 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:34:43.92 ID:jvktb/VP
もうこのスレ終わりでいいだろうが。
過疎でグダグダで不快な粘着やアンチも常駐。

不快なスレで人が来ないんだから、
職人さんもvipなりキャラスレなりに投下した方が
みんなに読んでもらえるし。

かつての賑わいを今から盛り返すのも無理で
新しい職人さんも望めず、代わりの場所もあるなら。

過疎っても細々続けられるならまだしも、
SLみたいなのが現れてスレ開いた人を不快にしてるし。

なんで>>1が新スレ立てたのか理解不能。

11 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:39:24.54 ID:tsvnaT+M
一乙

12 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:49:06.44 ID:HSi1/LJO
スレ立て乙!
(・∀・)

13 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:51:20.01 ID:inmv1MXS


14 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:57:52.22 ID:Fx91NDAe
>>1
クソスレ乙

15 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:58:04.10 ID:D5eHfjio
>>1乙!
某書き手の擁護批判ともに専用スレでってことで収拾ついたのかな?

16 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:58:39.50 ID:jvktb/VP
職人さんがいいの書いても
過疎ってたら読まれることもなく消えてくんだよ
もったいない


17 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 19:01:28.78 ID:9arWYZL0
まとめwikiで回収するから大丈夫だって
カリカリしないでお茶でも飲みなって

18 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 19:09:07.73 ID:oC5tBt/B
クソスレage

19 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 19:10:16.51 ID:HSi1/LJO
提案なんだけど

一部酷いアンチ(荒し)が居るみたいだから、それ来たら、皆反論とか意見を書かずスルーで、
どうしても、意見したい場合、テンプレの「自分の嗜好に合わないSSなら黙ってスルーすること」
だけを書くとかどうかな?


△△ :名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 18:58:39.50 ID:*********
>>○○
「自分の嗜好に合わないSSなら黙ってスルーすること」


みたいな感じで。

スレ汚しだったらすまん、無視してくれ。


20 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 19:26:09.96 ID:8onQvtw0
自演されたら意味ないけどね……
でもスルーするのは同意、行き過ぎた信者もアンチもノイズとして相手するべきじゃない

21 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 19:40:45.67 ID:Fx91NDAe
黙ってSSだけ投稿すりゃいいのに一々アンチ対策でムダ雑談しちゃうとかクソスレ乙

22 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:16:39.02 ID:xZcBOl9y
もうSLのことはみんな忘れようぜ。俺は特に悪感情は持ってないけど、話題に出すと絶対荒れる。

それよりも、アニメの配信15話、帰国後の桐乃の服がマタニティドレスにしか見えない件
http://www.oreimo-anime.com/package/img/package08.jpg

23 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:19:44.93 ID:epElMpXA
アンチも擁護もアホか

24 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:29:20.65 ID:oUMkJPkF
>>22
京介や り や が っ た

25 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:37:38.13 ID:D5eHfjio
>>22
瀬菜ちゃんのは7巻だったか
かわいいね

26 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:40:55.12 ID:HdmTzAg2
>>1おつ

>>22
桐乃スレじゃそのパケ絵に手を加えてあったのがはってあったぞ

27 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:41:36.68 ID:Qc2IidKM
>>22
桐乃が可愛いすぎる
腹ボテセクロス待ってます

28 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:45:29.58 ID:Mi2us3KO
>>22
アメリカで黒人にレイプされて孕んじゃったか

29 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 20:47:37.54 ID:E1WWo7B8
京介なら孕ませてしまうのも頷けるなw
数日間は二人で過ごしたわけだし不思議じゃない

30 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 21:14:39.66 ID:9arWYZL0
戦々恐々としてる京介が見たいです

31 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/22(水) 22:13:17.18 ID:D7Rhge2G
たまには原点に戻って桐乃と京介のエロ話でも読みたい気分
自分でまったりと書き進めようかな・・・

32 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 00:57:12.07 ID:tT2Z/5+x
>>31
その時は挿絵を書かせてくれ

33 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 06:47:56.15 ID:y9Rr9onL
各女性キャラのオナニーの方法と頻度について述べよ

34 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 15:31:09.20 ID:417otemj
ここに投下するくらいならvipいくわー。

35 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 16:42:39.24 ID:pfygG84N
>>33
黒猫は妹たちに見つからないように口を押さえながら寝る前にトイレでこっそりやってそう

イくと同時に珠稀たんがドアを開けて焦ってごまかす瑠璃たんペロペロ

36 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 17:32:13.31 ID:hpbm7Yma
>>33
「あ、ああ!キモチいぃい!!!諭吉キモちいぃいい!!ああ!あっあっうそ、すごいぃい!!
え?漱石とどっちがいいって?そんなの…そんなの諭吉に決まってる!!もう諭吉なしじゃ駄目なのぉぉお!
漱石より全然キモチいぃいいいのぉおおお!!諭吉専用○○コいくぃぅぉおおおお!!!!」



フェイトそんお札オナニー

37 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/23(木) 20:16:38.38 ID:sQoByLf4
フェイトそんは硬貨のひんやり感しか味わったことないに決まってんだろjk

38 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 00:11:54.23 ID:MLgp/KNf
ttp://www.e-nls.com/pict1-26684?c2=1111

桐乃がアメリカ行ってる間の京介の愛用品見つけた

39 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 00:38:00.72 ID:XfgLFJWo
重複だけど、どっち消すの?

40 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 00:43:24.66 ID:FZOH28+O
こっちだろ
向こうの方が先に立ったんだしな

41 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 00:44:12.21 ID:P7Vt15UR
スレタイが拒否反応

42 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 00:45:36.92 ID:FZOH28+O
知らんがな
どっちだって変わらんだろ
先に立った方を消費するのが当たり前

43 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 00:55:08.06 ID:SjNWsoBy
なんであっち伸びないの?
災能溢れる書き手がいるんじゃないの?

44 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 01:34:08.94 ID:fnUA8Up+
何のための隔離スレだよ
あいつの話題はよせ
本スレはこっちで良い

45 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 01:55:02.91 ID:QOhXFK0n
荒れるんだったら、まったり進行でいい
あんな状態じゃあ、書き手様も投下しにくかったに違いないし

住民は今一度>>1を再確認しましょう
>◆その他
> ○書き手さんが投下し易い雰囲気づくりを
>  ・SS投下宣言、直後は雑談をしばらく自重
>  ・自分の嗜好に合わないSSなら黙ってスルーすること←ココ重要
> ○こういうSSが読んでみたい等のリクエストは節度を持って
> ○荒らし、煽りは勿論スルー
> ○sage進行です。メール欄に半角で sage と書いてください。ageた人を煽るのはやめましょう。
>   大半のsageていないレスは荒らし目的の釣りか煽りです、慎重に見極めて反応しましょう。


46 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 02:05:26.00 ID:D2d415pI
住人のせいにするなよ
騒いでいるのSL信者とアンチ、俺妹に興味ない荒らしのせいだろ
そんなんとスレ民一緒にするなよ

47 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 05:57:45.42 ID:OLYWnkW/
slは今週来てくれるかなぁ

48 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 06:58:44.48 ID:B4wTxXYE
>>48も騒いでいる屑のうちの一匹って感じだけどなwww
被害者面がきめぇ……

49 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 07:23:48.13 ID:57vTUzgh
だから向こうの話題は出すなとあれほど……
とりあえず口直しに、お兄ちゃんと高坂せんぱいの濃厚なエロシーンをですね……ぐへへ

50 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 07:43:18.34 ID:B4wTxXYE
↑取り敢えず
ここの住人は、低能な屑しか残っていないってことが分かったwww

51 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 07:54:22.84 ID:0fDlVSVy
盛り上がってるように見えても本人と便乗嵐の2,3人がID変えてるだけだから無視ですよー

52 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 08:36:29.66 ID:XfgLFJWo
荒らしはスルーが鉄則

53 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 15:39:18.32 ID:Pm/TZ0sl
ギスギスしてる上に過疎ってんな……
投下する気も削がれる人が多いんじゃないか?

54 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 20:23:11.93 ID:NLvb+VdS
そんなことより修羅場い話しようぜ!

55 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 20:30:49.46 ID:kMDfsd3D
>>43
あんな適当な立て方しておいて、伸びる訳ないじゃん。
嫌がらせで立てたとしか思えんのに、そんな所に、誰が行くのよ。
信者どころか、本人すら行かんだろ。

56 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 20:34:55.36 ID:Mexti3JW
自分では建てないくせに文句だけは一人前ですねw

57 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 20:44:19.99 ID:kMDfsd3D
2ちゃんなんて、そんなものだろ。

58 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 21:52:48.59 ID:57vTUzgh
>>39-48

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:/::::: /                 /::::::/  ー===―- _     ',:::::
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∧::'.                     、::.            i  /:::::::
i \:、          .:/           \      人, /:::::::::
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59 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:02:55.52 ID:XfgLFJWo
だれ?

60 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:04:31.64 ID:fnUA8Up+
普段はVIPで書いてるので、エロパロのしきたりとかあまり詳しくないんだけど

・京介×桐乃
・非エロ
・IFストーリー「もしも京介が黒猫の告白を断っていたら」
・20レス程度

投下してもおkでしょうか?

61 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:08:12.20 ID:QOhXFK0n
>>60
早く投下するんだ

62 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:09:00.47 ID:mAzyOXXG
おk

63 名前:1:2011/06/24(金) 22:11:28.64 ID:fnUA8Up+
「兄貴、いる!?」

ノックの一つもなしにドアを開け放たれ、
静謐な空気を木っ端微塵にデストロイされたことに業腹を煮やす暇もなく、

「あたしの部屋に来て!」
「……いきなり何だってんだ?」
「いいから!」

俺は物凄い力で腕を引かれ、半ば引きずられるようにして桐乃の部屋に連行された。

「そこに正座」

指先には座布団。
言われるがままに正座する。
桐乃が定位置のワークチェアに座ると、もはや目線の高低差は如何ともし難く、
眼差しの鋭さはどう好意的に解釈しても実兄に向けるべきそれじゃなかった。
白状する。
俺はビビっていた。
今の状況を喩えるなら、岡っ引きに連行され町奉行の御前に座らされた罪人の図、が正しい。
誰が誰役かは言わずもがな。

「なんで黒いのをフッたの?」

と桐乃はズバリ訊いてきた。

64 名前:2:2011/06/24(金) 22:12:40.35 ID:fnUA8Up+
「黒猫から聞いたのか?」
「当たり前じゃん、他の誰から聞けるわけ?
 てか、話逸らさないでくれる?」
「…………」

この展開を予想していなかった、と言えば嘘になる。
しかしこの場を穏便に乗り切るためのセリフは悲しいほどに準備不足で、
また上手いかわし文句を即興で組み上げられるほど、俺の口先は器用でもなかった。

「なんでだっていいだろ」
「ハァ?何その言い方。
 あんた、黒いのにも似たようなコト言ったんだってね。
 『理由はうまく説明できないけど、付き合えない』って……バカじゃん?」
「お前にバカ呼ばわりされる謂われはねぇよ。
 黒猫はそれで納得してくれたんだから、それでいいじゃねーか」
「よくないっ!」

案の定、桐乃は可愛らしい八重歯を剥いて噛み付いてきた。

「黒いのが納得しても、あたしは納得できない!」

知ったこっちゃねえ、と返せば足蹴を食らうのは自明の理、

「なんでお前が、俺が黒猫をフッた理由を知りたがる?」
「あたしが黒いのの代わりに聞いてあげてるの!」

65 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:14:03.47 ID:fnUA8Up+
「そうするよう、あいつに頼まれたのか?」

桐乃は視線を四方に泳がせつつ、

「そっ……それは……別に、そういうわけじゃないケド……。
 黒いのだって本当は聞きたかったに決まってるし……。
 だっ、第一、有り得なくない?
 女の子が一生懸命恋の告白したのに、まともな理由もなくフるとかさぁ?」

あんた人の気持ち考えられないの?
バカなの?
死ぬの?
桐乃が繰り出す怒濤の三連撃に、こめかみの血管がピクリと痙攣する。
だがしかし、まぁ待て、俺は誰だ?
桐乃の兄貴だ。その温厚さ菩薩の如しと謳われる好人物だ。
これくらいの暴言笑ってスルーできなくてどうするよ?

「あんた、もしかして超キモイこと考えてない?」
「何だよ、その超キモイことって」
「この前あたしに『彼氏作るな』って言ったから、
 自分も『彼女作らない』なんて誓い立ててるんじゃないの?」
「お前こそ勝手な妄想してんじゃねぇよ。
 なんで俺がお前に遠慮して、彼女を作るのを諦めなくちゃならねえんだ」

66 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:15:03.90 ID:fnUA8Up+
「はぁ!?あんた妹に彼氏出来たらギャーギャー喚くクセに、
 自分が彼女作るのは何の問題もないとか思ってるワケ?
 どんだけ自己中なの?死んだ方がいいよ?」
「お前さっきまで、俺がそういう考え方するのがイヤだって言ってたじゃねえか!
 俺にはキモイと蔑まれるか死ぬかの二択しかねえのかよ!」

口論はいつしか怒鳴りあいに発展していたが、
お袋と親父は福引きで当てた日帰り旅行に繰り出し、終日、家には俺と桐乃の二人きり、
仲裁人の登場は期待できそうになく、
携帯も桐乃の部屋に入ってからというもの頑なに沈黙を守っていて、
誰でもいいから連絡してきてくれよ、という祈りは神への道半ばで潰えたらしい。

「……あんた、黒いののことが好きなんじゃなかったの?」

と不意に大人しい声で桐乃が言った。

「あたしがスポーツ留学してた時は、ずっと黒いのこと気にかけてたんでしょ?
 黒いのを部活に誘って、一緒にゲーム作って、友達まで作ってあげてさぁ……。
 そこまでして、黒いのに惚れさせといて、いざ告白されたら付き合えないって、おかしいじゃん」

こいつめ、ちょっとシリアスな雰囲気を醸せば、
俺がベラベラ本心を話し出すと思っているんじゃないだろうな。
とは言え、ここでつっけんどんな返しが出来るほど、俺は初志貫徹型の人間じゃあなかった。

67 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:16:10.84 ID:fnUA8Up+
「なあ、もう一度訊くぞ。
 どうしてお前は、俺が黒猫をフッた理由にこだわるんだ?」

桐乃はぎゅっと下唇を噛み、しかし今度は目線を逸らさずに、

「あの子が……黒いのが可哀想だからに決まってんでしょ。
 電話では普段通りに喋ってたけど、黒いの、多分泣いてた。
 実際に泣き声が聞こえてきたわけじゃないけど、分かったの」

なぜ分かる、とは訊かなかったさ。
訊いたところで、友達だから、と臆面もなく言い返されていただろうからな。
そして桐乃が言うからには、黒猫が泣いていたというのは真実なんだろう。
約束の場所、校舎裏のベンチで、

『謝らないで。これは予言されていた世界の選択。
 アカシックレコードに刻まれた絶対の理、確定事象なのだから』

首を横に振った俺に、黒猫はそう言ってくれた。
声には自嘲の響きが含まれていて、表情はなぜか愉しげだった。
が、黒猫が心の裡で本当は何を思っていたのかは……今更、言葉にするまでもねえわな。

「あたし、怒らないから」

桐乃は両手を膝頭の上にのせ、固く握りしめて言った。

「兄貴が黒いのをフッた理由、ちゃんと聞かせて?」

68 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:16:46.08 ID:fnUA8Up+
選択肢は三つある。

1.今すぐ無言でこの場から立ち去る
2.強引に煙に巻く
3.自分でもイマイチ整理できていない本心をぶちまける

1番は完全な悪手だ。
桐乃と俺の関係は悪化の一途を辿り、事態解決のために、やがて3番を選択せざるを得なくなる。
2番も妙手とは言い難い。
張りぼての嘘はすぐに見透かされてしまうだろうし、応急処置はしょせん応急処置で、
やがては3番を選択せざるを得なくなる……あれ、このゲーム最初からルート決まってね?

「すぅーはぁー」

と深呼吸をひとつ。なあに、そう気負うな京介。
ぶちまけたところで人生が終わるわけじゃない。

「俺が黒猫をフッた理由は……」

ほら、後の祭りを楽しんでやる気で言っちまえ。

「……お前だ」
「お、お前って……あたしの、こと……?」

69 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:17:42.51 ID:fnUA8Up+
ああそうだ。その通りだ。
桐乃、お前以外の誰がいる。

「やっぱり、あたしのせいだったんだ」

桐乃は悄げた様子でそう言い、一転、俺を睨み付けると、

「さっきも言ったと思うケド……。
 あたしに彼氏を作らせない代わりに、自分も彼女を作らないとか、
 そーいう下らないルールで自分を縛るの、やめてよね。
 あたしはあんたに彼女ができようができまいがどうだっていいし、
 黒いのとあんたって厨二病と地味顔で相性良いと思うし、
 ワケわかんない女に誑かされるよか、黒いのと付き合う方がずっとマシだと思うし……。
 とにかく、ホントに余計なお世話だから……だから……」

締めさせねえ。

「余計な世話してるのは、お前の方だっつーの」
「なっ」

桐乃が再び八重歯を剥いたところで、俺は正座を崩し、傍らのベッドに腰掛けた。
普段なら「勝手に座んな!」と激怒されて然るべき行動だが、
お前と目線の高さを同じにするためだ、今くらい許してくれよ。

70 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:18:37.04 ID:fnUA8Up+
「俺は黒猫に告白されて、嬉しかったよ。ものすげえ嬉しかった」

後輩の見目麗しい女子から、慕情の丈を告げられる。
そんな、思春期の頃からボンヤリと夢見ていた、青春の理想が叶った瞬間だった。
しかも相手は前々から好意を懐いていた黒猫だ。
正直に言う。天にも昇る心地だったね。
でもな、そんな舞い上がってる状態で、エロゲなら選択肢さえ現れない状況でも、
脳裏にはお前の姿があって、気づけば俺は、黒猫にノーを突き付けていたんだよ。
お前に『彼氏を作るな』と言った手前、俺が彼女を作るわけにはいかない?
そんな理屈をこね回している余裕が、あの時の俺にあるわけねーだろ。
俺は徹頭徹尾、直感で動いた。
その結果がコレだ。

「そ、そんなの理由になってない!
 あたしが頭の中に思い浮かんで、それでいつの間にか黒いのをフってたとか……」
「だから最初に言ったはずだぜ。
 理由は上手く説明できない、ってよ。
 でもまぁ、あれから俺なりに心を整理して、
 もしかしたらこうなんじゃねえかな、って仮説は立ててある」

他人事っぽく言ってるが、こればっかりは自分で自信が持てないのだから仕方ない。

71 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:19:41.85 ID:fnUA8Up+
現実的には十秒、体感的にはその数倍の時間が流れ、

「……仮説って?」

と桐乃が言った。

「俺はお前のことが好きなのかもしれない。
 妹としてじゃなく、一人の女としてな」

と俺は言った。
言葉は喉元で詰まることなく、滑らかに舌と唇を経由して、部屋の空気を震わせた。
意外と抵抗なくできるモンだな。
実妹への告白もどきも。
達成感にも虚脱感にも似た感覚をしみじみと味わう俺を余所に、桐乃はぶるぶると肩を震わせていた。
実の兄貴から性的な目で見られていることを知ったんだ、感慨もひとしおだろう。
もちろん、悪い意味でだが。

「………っ……」

鼻を啜る音が聞こえた。
俯いた桐乃の目から、ぽつりと透明の雫が落ちる。
ティッシュを取って拭ってやりたいところだが、拒絶されるのは目に見えていた。
むしろ半径五メートル以内の存在を許されている今この状況が奇跡と言える。
マジキモイ、ホンットキモイ、死んで、今すぐ死んでと罵詈雑言を浴びせかけられ、
部屋に存在するありとあらゆる縫いぐるみを投げつけられた挙げ句、
鋭いパンチとキックの猛襲を浴びて這々の体で桐乃の部屋を逃げ出した俺は、
数分後に駆けつけたあやせに半殺しに遭い、
数時間後に駆けつけた両親から離縁状を突き付けられる……ところまで想定していたんだが。

72 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:20:27.99 ID:fnUA8Up+
「……いつから?」

自主退室しようとした折だった。
蚊の泣き声レベルの声が聞こえてきたのは。

「いつから、あたしのことが好きだったの?」
「さあてな。
 お前をアメリカまで連れ戻しに行った時は、もう好きだったんじゃねえか。
 普通いねーだろ、寂しくて死にそうだから帰ってきてくれ、なんて言う兄貴なんてよ」

俺は他にも、桐乃をただの妹としてではなく、一人の女として見ていた記憶を思い出す。
好きなのかもしれない?
アホらしい。
今更保険をかけた言い方はよせ。滑稽極まりねえぞ。
俺は桐乃が好きなんだ。愛しているんだよ。
正常な恋愛の先駆けとしての、黒猫からの告白を断っちまうくらいにな。
さて突然ですがここで問題です。
実妹への恋心を自覚し、あまつさえその想いを告げた変態兄貴が、次に取るべき行動は何でしょうか?

「来年の春になったら、俺はこの家を出て行く」

答え。妹から、物理的に距離を置くこと。

「だからあと半年だけ、我慢してくれ。
 俺が大学に受かって、親父から一人暮らしの許可を貰うまで――」
「ま、待って!」

73 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:21:14.36 ID:fnUA8Up+
桐乃は乱暴に涙の痕を拭いながら、

「一人暮らしするって、どういうこと?
 そんなの、あたし聞いてない。なんで?
 地味子と一緒に受ける大学、家からでも十分通える距離にあるじゃん。
 なんでわざわざ家を出てくの?」

おいおい、それをお前が訊くのか?

「一人暮らしすること自体は、結構前から考えてた。
 家事とか色々大変だろうけど、将来的には良い経験になるだろうってよ……。
 でも、今ちゃんとした理由が出来たんだ。
 俺はお前を怖がらせたくないし、怖がられたくもない。
 そんな関係が続くくらいなら、潔く実質的な縁を切った方がいいだろ?」

大学生になったら、何か打ち込めるものでも見つけて、お前のことは忘れるさ。
帰省もお前が家を空けてるときにするし、
お前が望むなら、二度とこの家の框を踏まないと約束してやる。

「……じゃん」
「ん、何か言ったか?」
「バカじゃん、って言ったの!
 あたしの気持ちも知らないで、一人暮らしするとか、
 あたしを怖がらせたくないとか、勝手なコトばっか言っちゃってさ」

74 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:24:55.43 ID:fnUA8Up+
桐乃はもじもじと内股を擦り合わせながら、

「あんたは自分だけが、本当はいけない感情を持ってて、
 そのせいであたしに引かれてる、って思ってるのかもしれないケド……。
 ほ、ホントはね……あた……あたしも……」

言葉尻を切り、上目遣いに見つめてくる。
可愛い――じゃなくて、どうしてそこで口を閉じる?

「もうっ、これだからあんたは……最後まで言わなきゃ分かんないワケ?」

馬鹿正直に肯く俺。
このとき俺の脳味噌において、両思いの可能性は完全な埒外にあった。
人の機微に鈍い鋭い以前の問題である。
果たして桐乃は、首筋から顔にかけてを赤く染めながら言った。
その朱色でさえ、俺はセリフを耳にする直前まで、マイナスの感情によるものと信じていた。

「あたしもね、兄貴のことが………………好き、かも」
「は?」

今、現実に耳にできない言葉ランキング堂々の第一位が聞こえた気がしたが。

「ちゃんと聞こえた?」

夢じゃないよな。現実だよな。

75 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:25:45.06 ID:fnUA8Up+
誇張表現の一つである『ほっぺをつねる』をリアルに実行し、
鮮烈な痛みに顔をしかめたあと、俺は桐乃が羞恥に身悶えしていることに気が付いた。
タコの縫いぐるみを胸に抱き締め、濡れた目で俺の反応を伺っている。
え、何この可愛い生き物。

「……聞こえた」

ああ、聞こえたとも。
小躍りしたい気持ちを必死で抑え、目頭に熱いものを感じ、
手をやれば熱い雫の感触、俺は自覚がないうちに泣いていた。
ついでにこんなことも尋ねていた。

「いつから?」

奇しくもそれはさっき桐乃にされた質問と同じで、桐乃はクスッと笑いつつ、

「あたしは物心ついたときから、兄貴のことが好きだったよ。
 でも、それはあくまで兄妹としての好きで、
 兄貴のことを……その……男女的な意味で好きになったのは、
 去年、兄貴がお父さんからあたしの趣味を護ってくれたときだと思う」
「全然気づかなかった」
「当たり前じゃん。ずっと、隠してたんだから。
 モデルの演技力ナメんなっつーの……なんてね?」

桐乃の言葉に角はない。
甘えるような口調は、もう何年も昔の幼い桐乃を思い出させた。

76 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:26:20.73 ID:fnUA8Up+
「何度も兄貴に伝えようと思った。
 でも、失敗したときのことを想像したら、怖くてできなかった。
 気持ち悪がられたらどうしようって、引かれたらどうしようって……。
 ねえ、もしも兄貴が、一年前にあたしに告白されてたら……なんて答えてた?」
「その時はまだ、お前のことは生意気な妹としか見てなかったからな。
 多分、普通の兄妹でいよう、って言ってたと思う」
「そっか。じゃあ、我慢して正解だったんだ」
「でもな、もしあの時お前の気持ちを知ったところで、
 本気で気持ち悪がったり、引いたりはしなかったと思うぞ。
 むしろお前の気持ちに応えてやれない自分が、イヤになったんじゃねえかな」
「ふーん……じゃあ、どっちでも良かったんだね。
 兄貴に気持ちを伝えて、だんだん好きになってもらうのも、
 兄貴があたしのことを好きになって、気持ちを伝えて来るのを待つのも」

桐乃はしみじみと言い、昔を懐かしむような顔になって、

「あはっ、あたし、都合の良いことばっかり言ってる。
 そういうのは、今だからこそ言えることだよね。
 あんたのことが好きだって気づいた時は、自分で自分が許せなかった。
 報われない恋心なんか持ってても仕方ないじゃん、って自分に言い聞かせてた。
 でも、忘れようと思えば思うほど逆効果で、
 最近は自分でも、ワケ分かんなくなっちゃってたんだ。
 あんたに自分の気持ちを気づいて欲しいって気持ちと、
 あんたが黒いのと結ばれたら諦めがつくんじゃないかって気持ちが、ぐちゃぐちゃに入り交じって……」

楽になりたかったの、と桐乃は言った。

77 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:27:15.06 ID:fnUA8Up+
「黒いのが告白して、あんたがそれにオーケーして、それで終わり。
 あんたがあたしのために黒いのをフるなんて、絶対有り得ないと思ってた」
「けど、これが現実だぜ」
「うん……そだね。ってか、あんたいつまで泣いてんの?」

桐乃は椅子から立ち上がり、ティッシュの箱をとって、俺の隣に腰を下ろした。

「はいコレ」
「ありがとよ」

二、三枚ティッシュを重ねて鼻をかむと、
通りのよくなった鼻孔を、桐乃の匂いがくすぐった。
隣を見れば、ライトブラウンの髪に縁取られた瓜実顔。
胸元を覆うは薄手のTシャツ、ホットパンツから伸びた足は健康的な肉付き。
これまでは極力意識しないようにしてきた桐乃の女としての部分が、
今、抗いがたい魅了の魔法でもって、俺の本能に襲い掛かる。
クソッ、鎮まれ、俺のリヴァイアサンよ。
いくら今が絶好のシチュエーションとはいえ、超えちゃいけない一線ってモンがある。

「ねえ、兄貴」
「な、なんだ」
「これからどうするか、考えてる?」
「どうするって……どうもこうもしねえだろ」

78 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:27:54.76 ID:fnUA8Up+
桐乃は頬を膨らませると、

「これまで通りってこと?
 あたしは兄貴のことが好きで、兄貴もあたしのことが好きなのに、
 普通の兄妹のままでいるワケ?」

この子はいったい何を言っているんだろうね。
気持ちが通じ合おうが俺と桐乃が兄妹であることには変わりないだろうが。
誰かに『俺たち(あたしたち)恋人になりました☆』と報告でもするのか?
親父に言ってでもしてみろ、女のお前はともかく、俺はグーで殴られる自信があるぞ。
あやせに至っては、全てを言い終わるまでに息の根を止められている目算が高い。

「みんなには秘密にするに決まってるじゃん。
 大抵の人は、兄妹でそんなの、おかしいと思うに決まってるし。
 あたしが言ってるのは、そうじゃなくて、
 他の人が見てないところでは……こ、恋人みたいに振る舞っても問題ないよね、ってこと」
「ああ」

と肯いてみたはいいものの。

「…………」

恋人みたいな振る舞いが具体的に何を指すのか、互いに想像を巡らせ、沈黙する。
脳裏を過ぎるのは、これまで散々意識してきた、漢字四文字の禁断行為。
俺は無言でベッドから立ち上がった。三十六計逃げるにしかず。
このままなし崩し的に、というエロゲ的展開は何としても避けねばならぬ。
いやマジで。俺の心の準備的にも。

79 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:29:36.54 ID:fnUA8Up+
「……どこ行くの?」

掠れた声が、ドアノブに手をかけた俺の後ろ髪を引いた。

「自分の部屋だ」
「ねえ、今日は遅くまで、お父さんもお母さんも帰ってこないよね?」
「ああ」
「じゃあ……」

途切れる言葉。
確実に桐乃は誘惑してきている。
振り返ったが最後、俺は本能に忠実な獣に成り下がるだろう。
心の悪魔が囁いた。
別にいいじゃねえか。何を躊躇う必要がある?
据え膳食わぬはなんとやらだ。ここで逃げれば男が廃るぜ。
俺はゆっくりと振り返り――。

「エロゲーしよっ?」

――満面の笑顔で、しすしすスペシャルファンディスクを掲げる妹の姿を見た。

「はっ」

溜息が出たね。
が、その溜息の内訳は、安堵九割落胆一割で、いつしか邪な思考は跡形もなく消えていた。
何も急ぐことはないんだ。時間ならたっぷりあるんだからな。

「やるか、エロゲー」

先に予習を済ませておくのも、悪くはないさ。


おしまい! 続くかな〜?

80 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:32:24.88 ID:ojYht9QR
GJなんだよ
良いもの読ませて頂きました
最後吹いたw

81 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:38:07.19 ID:P7Vt15UR
GJ!
面白かったです

82 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 22:59:44.42 ID:6lBA5h7S
面白かったよ
しっかりオチもついてたしねw
VIPで何書いてたの

83 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 23:04:52.74 ID:qazFDCun
gj
この調子ならすぐにエロゲ的展開になるなw

84 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/24(金) 23:08:06.85 ID:ScMDZxxE
>>79
何これ泣いた
GJ!!

85 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 00:15:04.39 ID:iMD4Hfmb
加奈子×京介が読みたい!!!

86 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 00:20:26.04 ID:OkIa5F74
GJ!
王道来ましたね。オチで転けましたけど。w


87 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 00:24:38.72 ID:Q8xUePHq
>>79
挿絵を描かせて

88 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 00:31:22.62 ID:2yKFeylF
>>63-79
最後がよかった。
想いっきり笑えたよ。
いや、馬鹿にしてじゃなくて。
今週一週間の疲れがふきとんだぜ。


89 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 01:15:20.67 ID:947XGAmn
>>79
なんか原作も諸々の問題片付けてこんな感じでスパッと終わったらいいなと思った
ありがとう。いいもの読ましていただきました

90 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 02:30:53.35 ID:aFQAVsIW
SLさんに対する嫉妬が酷すぎる

91 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 03:01:28.38 ID:+dZsve2z
SLって‥‥‥誰?

92 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 03:08:48.70 ID:TiOzbrWx
>>79
GJ!
エロシーンを期待した自分が恥ずかしい…

93 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 05:13:18.32 ID:e06kWRTL
>79
すごいな
キャラが原作っぽく感じられた
愛があるとこういうの書けるんだよなあ
感服しました。
また書いてよ。

>87
あんたにも期待しちゃうぜ

94 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:33:41.23 ID:Bmk3nC4P
好評頂けたようなので
勢い余って続き書いてしまった

>>79の続き
・桐乃×京介
・微エロ
・15レス程度

投下してもおkでしょうか?

95 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:35:27.40 ID:r07Xe3JM
>>94
今日は暑いので全裸待機しても問題ないよね?是非お願いします!

96 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:36:49.28 ID:Bmk3nC4P
燦々と降り注ぐ灼熱の日差し。
焼けた砂浜は柔らかい白。
打ち寄せる波は透き通る青。
夏で、海だった。

「兄貴ー、こっちこっちー!」

俺がぶらぶらと散歩をしている間に着替えを済ませた妹が、
ビーチパラソルの影から飛び出してくる。
黒のビキニと白の素肌のコントラストが眩しい。

「どお、似合ってる?」
「ああ、可愛いぞ」

妹は顔を綻ばせ、波打ち際に走り出す。

「競争だよっ」

俺はジーンズとTシャツを脱ぎ(水着は元々穿いてきていた)、妹の背中を追いかけた。
結果は惨敗。
くるぶしを海水に浸し、涼に気を緩めた俺を、水飛沫の洗礼が出迎える。

「あははっ、兄貴ってば、走るの遅すぎィ。食らえっ」
「うわっ、マジやめろって……こんにゃろ」

97 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:37:30.38 ID:Bmk3nC4P
俺は水飛沫を返しつつ、猛攻を避けつつ、妹との距離を詰めていく。
そして――。

「悪さをするのはこの手か?」
「やっ、離してよぉ。もうしないからぁ」

言葉とは裏腹に、妹は抵抗する素振りを見せない。
濡れたライトブラウンの髪が、妹の額に張り付いていた。
それを取り払ってやりながら、ごく自然に、唇を合わせた。

「んっ……はぁ……っ……」

軽く舌を絡ませる。
交わした吐息は、夏の空気よりも熱く湿っていた。
妹は銀色の橋架を指先で切りながら、

「……海の味がした」

これまた詩的なことを言う。
俺は原因を言ってやった。

「お前にさんざ海水をぶっかけられたからな」
「あはっ、それもそうだよね」

98 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:38:39.76 ID:Bmk3nC4P
妹は無邪気に笑い、俺の胸に抱きついてくる。
普段なら優しく頭を撫でてやるところだが……露出した肌と肌の触れあいが、否応なく性欲を刺激する。
俺は……。

1.せっかく海に来たんだ。泳がなくてどうする。
2.りんこへの愛を抑えることはできない。

――ここまでエロゲ。
しすしすスペシャルファンディスクの主人公と義理の妹りんこりんの物語である。
一応訊いとくが、まさか俺と桐乃の物語だと勘違いしてたヤツはいねえよな?

「どっち選ぶの?」

と桐乃が催促してくる。
そう慌てるな。
俺は淀みなくマウスを動かし、1番を選択した。

「……………なんで?」
「そりゃあ、海に来たんだから、泳がなくちゃ損だろうが」

というのは建前で、2番からは危険な香りがプンプン漂ってくるからである。
妹と一緒にエロゲーのHシーンを鑑賞したところで、死ぬほど気まずいだけ。
一年前はそう思っていた。
が、ここ最近、特に俺たちの肩書きが兄妹と恋人(←new)に更新された一時間ほど前からは、
一年前とは別の意味で、Hシーン回避に全力をかけている俺がいる。

99 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:39:30.35 ID:Bmk3nC4P
「でも、なんでこんなところに選択肢があるんだろうな」

大抵のファンディスクは一本道じゃないか、と素朴な疑問を口にすると、桐乃は不満げに唇を尖らせて、

「エロゲーにも色々あるでしょ?
 純愛ゲーとか抜きゲーとか。
 しすしすはどっちかって言うと純愛ゲーで、Hシーン飛ばしてる人も多いんだよね。
 そういう人に配慮したんだと思う。
 あたしには理解できないケド」

あのー、エロゲって基本、男性向けですよね?
妹萌え成分を日常描写から補給するのはまだ理解できるとして、
女のお前がHシーン見て何が楽しいんだよ。
お前もしかしてアレか、主人公に自己投影して、ヒロインを犯す気分を味わってるのか……。
と訊くまでもなく、桐乃は答えを言ってくれた。
柳眉をいっぱいに逆立てて。

「Hシーン飛ばす人は、しすしすの魅力を何も分かってない!
 だってだって、快楽に身悶えするりんこりんの表情、ホンットに超可愛いんだよ!?」

オーケー、お前の魂の叫びはとくと伝わった。
だがもうちっと声のトーンを抑えような?
家に親父やお袋がいたら、確実にすっ飛んできてたぞ。

100 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:40:17.64 ID:Bmk3nC4P
それからしばらくは平穏な日常描写が続いた。
主人公とりんこりんは色々な場所に出かけ、夏を目一杯満喫した。
作中に漂う雰囲気的に、エンディング間近といったところで、

「もっと早くにプレイすれば良かった」

と桐乃が呟く。

「このファンディスクが発売されたのはいつなんだ?」
「先月の初めくらい、かな」
「意外だな。お前がしすしすの続編を一ヶ月も積んでたなんてよ」
「んー……色々と忙しかったからね」

リアの来日に偽装デート、コミケ遊覧に御鏡襲来と、確かにイベント盛りだくさんだったな。
でも、それとなく時間を見つけてプレイすることは出来たんじゃねえか?

「あ、あたしは……兄貴と一緒にやりたかったの。
 しすしすはたくさんあるエロゲの中でも、特に思い入れのある作品だし?」
「桐乃……」

俺はじんと来ていた。
傍から聞いてりゃトチ狂った兄妹と思われても仕方ないが、今更恥も外聞もねえ。
桐乃可愛いよ桐乃。

101 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:41:11.36 ID:Bmk3nC4P
内心の倒錯的な愛情を紳士的な台詞に変換し、

「なかなか構ってやれる暇が作れなくて悪かった。
 でも、お前も遠慮すること無かったんだぜ」

いつもみたく部屋に飛び込んで来て、
『エロゲーしよっ!』と俺を引きずって行けばよかったんだ……。
いや、ここ最近は偽彼氏事件が尾を引いて、険悪なムードが続いていたんだっけか。
桐乃はディスプレイに視線を戻し、

「……夏、もうすぐ終わっちゃうね」

ゲーム内時間は、八月の終わり。
現実時間は、八月の半ばを過ぎたあたり。
常日頃からニブチンと叩かれてやまない俺も、このときばかりは言外の意図を察したさ。

「何言ってんだ。
 夏休みはまだ二週間近くも残ってるじゃねえか」

遊園地に海にプールに花火大会に流星鑑賞、夏の風物詩を楽しむ時間に不足はねえよ。
この主人公の受け売りみたいでイヤだが、

「行きたいところがあるなら言え。
 どこでも連れてってやる」
「どこでも?」
「ああ、どこでもだ」
「じゃあ、海がいい。
 撮影の時に使った水着、何着かもらってて、それが超可愛くてさぁ――」

102 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:41:54.76 ID:Bmk3nC4P
桐乃の話に相槌を打ちながら、俺はマウスをクリックする。
街での買い物を終えた主人公とりんこりんは、手を繋いで帰路を歩む。
流れるはひぐらしの清音、背後に伸びる影法師は細く長く。
『いつまでも一緒だよ』と最後に互いの想いを確かめ、画面が暗転、Endの三文字がフェードイン。
佳境もなく、劇的なオチもなく……。
そんな、純愛日常モノのファンディスクにしてはありきたりの最後を予想していた。
結果から言う。
エロゲはやはりエロゲだった。
帰宅した主人公とりんこりんは、買い物袋を床に置き、一息吐いたところで見つめ合った。

『ねえ……あたしたち最近、シてなくない?(←りんこりん)』

そりゃそうだ。
Hシーンに繋がりそうな選択肢は徹底的に避けていたからな。
どうせ今回もH回避用の選択肢が用意されているんだろう、とクリックを続けると、

『あたし、もう我慢できない(←りんこりん)』
『俺もだ。好きだ、りんこ(←主人公)』

最後の最後の不可避H……だと?
おい待て、性欲に溺れるのはやめろ!
俺の心の叫びも虚しく、画面にはピンク色のエフェクトがかかり、立ち絵は美麗CGに変化する。
流石は本編で初H経験済みの二人とあって、
あれよあれよという間にりんこは生まれたままの姿に早変わり。
ゴクリ、と喉を慣らす音が重なった。

103 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:42:42.20 ID:Bmk3nC4P
マウスにかけた指先が止まる。

「先、進めないの?」
「いいのか、進めても」

俺の本能の箍が最後まで壊れない保証はできねえぞ。
あと無意識でやってるのか知らんが、内股をもじもじと擦り合わせるのはよせ、
それ女の扇情的な仕草ランキング審査委員特別賞を受賞するレベルの仕草だから。
桐乃は平静を装っているのがバレバレの声音で、

「こ、ここからが良いトコでしょ。
 あたしに言わせれば、なんで今まで避けてきたの、って感じ」
「……分かったよ」

どうなっても知らねえからな。
俺は設定で『オートモード』を選択する。
よほど溜まっていたらしく、前戯もそこそこに主人公は挿入を開始した。

『匂い立つ雌の匂いに目眩がした。
 濡れそぼった茂みを掻き分け、秘蜜の源泉たる割れ目を探し当てる。
 軽く腰を突き出しただけで、一物はいとも容易く呑み込まれた。
 ぴっちりと絡みつく肉襞は、喩えるなら飢えた獣だ。
 一刻も早く精を絞り尽くさんと、蠕動の妙絶にて一物を攻め立ててくる。(←主人公モノローグ)』
『あぁっ……いいよっ……兄貴、もっと動いてっ……もっと激しくしてぇっ……!(←りんこりん)』

序盤からクライマックスである。

104 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:43:51.64 ID:Bmk3nC4P
文章やCGからは目を逸らせても、如何ともしがたいのがエロボイスで、
りんこりんの艶やかな嬌声を聞かされてリアルの一物が反応しないヤツは、
聖人君子か不能者くらいだろうよ、と俺は誰ともナシに言い訳する。
つまるところ、俺は勃っていた。
それとなく片膝をついてテントを隠し、バレてないよな、と隣を見れば、
桐乃はハァハァと呼吸を荒くしてりんこりんの肢体に魅入るでもなく、
顔を真っ赤に上気させ、両手を内股に挟み込み、切なげな呼気を漏らしてこちらを伺っている。
ああ、クソ。
ただでさえ理性が飛びかけている時に、反則行為の三点セットときたもんだ。
心頭滅却すれば火もまた涼し、と故人は言ったが、そいつ結局焼死してて説得力に欠けるから困る。

「しても、いいよ?」

と不意に桐乃が言った。
目的語不在の言葉に、想像の両翼は自重を知らずに羽ばたき始める。

「兄貴も男だし、あ、あんまり我慢するのも体によくないと思うし」

それにさ、と桐乃は俯いて言う。

「さっきも言ってたじゃん。
 あたしたちの他に誰もいないときは、恋人らしいことをするって……」

105 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:44:36.48 ID:Bmk3nC4P
親は日帰り旅行で不在。
俺たちは家に二人きり。
傍らには清潔なベッド。
恋人っぽいことをするには絶好のシチュエーションだ。
これ以上は望めない。
またしても心の悪魔が囁く。
今犯さずしていつ犯す?
心も体も準備万端、押せば倒れる脆さを晒す女を前に、逡巡はどこまでも無価値だぜ?
……応とも。
まったくもってお前の言うとおりだ。
今まで何を悩んでたんだか、自分が馬鹿らしくなってくるね。
理性よさらば。
本能よこんにちわ。
俺は桐乃に覆い被さりかけ――。

「してもいいよ……キス」

――目を瞑り、薄桃色の唇を突き出す妹の姿を見た。
え?……キス?キス、だけ?
あー……あっはっはは、そうですよね、いや、うん、分かってたよ、
恋人らしいことと言えば、チューに決まってるじゃないか、もちろん俺は最初からそのつもりだったさ。
とまあ白々しい言い訳はここまでにして、たとえキスでも、
俺たちの肩書きを鑑みれば、栄えある背徳的行為第一号には変わりない。
緊張と興奮に脳髄が痺れた。
が、次の瞬間には、俺は桐乃の唇に、自分のそれを押し当ててていた。

106 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:45:21.62 ID:Bmk3nC4P
「んっ……」

妹とキスしている。
非現実的な現実は、不思議とあっさり飲み込めた。
舌先で閉じた唇を割り、桐乃の舌を探し当てる。

「っ……ぁ……ふぁ……」

ここまでされるのは予想外だったんだろう。
桐乃は驚きに大きく目を見開きながらも、
数秒後には、自分から舌を絡めてきてくれた。
淫靡な水音が響く。
唇と一緒に唾液を吸い、舌で口蓋を蹂躙する。
このとき既に俺の脳味噌は完全に出来上がっていて、
手は桐乃の後頭部から、着々と胸へと南下しつつあった。
ヤバイ。止まらねえ。
桐乃も止めろよ。
許すのはキスだけで、最後までするのはイヤなんじゃないのかよ。
指先が至上の弾力に触れる。

「あっ……」

さあ平手打ちしろ。渾身の力で俺を突き飛ばせ。
果たして桐乃はピクリと身動きしたのみで、
ああ、なんてこった、暴走は看過されちまった。
もはや俺を阻むものは何も無い。
俺はそっと桐乃に体重をかけ、本格的に南方侵略を開始した。

107 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:46:15.07 ID:Bmk3nC4P
その時だった。

「ただいまー。桐乃、京介、二階にいるのー?
 お母さん帰ってきたわよー」

脳裏を過ぎるは、最悪の未来。
まぐわう息子と娘を目撃したお袋は、まず絶句し、次に親父の名を叫び、最後に卒倒するだろう。
俺たちは迅速かつ的確に行為の証拠隠滅を完遂した。
即興のコンビネーションは血の繋がりが成せる業か。
トントン。

「入るわよー?」
「は、はぁい」
「桐乃ー、京介どこにいるか知らない?……って、あんた桐乃の部屋で何してるの?」
「桐乃に勉強見てくれって頼まれてさ。
 夏休みの宿題で難しいところがあったみたいで……な、桐乃?」
「そっ、そうなの!
 理科の先生が超意地悪でさあ、有り得なくらい難しい宿題を出してきたんだよね」

お袋はジト目で俺たちの顔を交互に見遣り、

「ふぅん、桐乃が京介に宿題を手伝ってもらうなんてねえ……いつ以来かしら」

108 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:47:15.78 ID:Bmk3nC4P
これ以上追及されたらボロが出る。
そうなる前に、と俺は訊いた。

「お袋たち、帰りは遅くなるんじゃなかったのか?」
「それがねえ、あの人、急に職場から呼び出さちゃって、
 一人で温泉を楽しむのもアレだし、帰ってきたのよ」

なるほど、さっきから親父の気配を感じないのはそのせいか。
幸いなことにお袋に長居するつもりはなかったようで、

「京介、あんた桐乃に勉強教えてあげるのはいいけど、変なことしちゃダメよ」

と釘を刺して出て行った。
俺は桐乃と顔を見合わせ、深い深い息を吐く。
お袋は冗談で言っていたのだろうが、ついさっきまで俺たちは「変なこと」の真っ最中だったのだ。

「ふふっ、危ないトコだったね」

ここで笑えるお前の胆力に感心するよ。
ピンク色のムードはどこへやら、緩慢な空気が流れる。
桐乃はおもむろに唇に人差し指の腹を当てると、

「さっきの……ファーストキスじゃなかった、って言ったらどうする?」

109 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:48:20.15 ID:Bmk3nC4P
「別に……どうもしねえよ」

お前も中学三年生だ。
兄妹関係が冷え切っていたときに、
彼氏の一人や二人いたとしても、今更怒りやしないさ。

「ぷっ、兄貴ってば、すっごい顔が強張ってる」
「うるせえ」
「あたしのファーストキスを奪った誰かに嫉妬してるんだ?」

こいつめ、なんでこんなに嬉しそうなんだ?
俺の心をナイフで抉るのがそんなに楽しいのか。

「やっぱり忘れちゃってるんだね」

何を。

「小さい頃に、キスしたこと」

誰と誰が。

「あたしと兄貴が」

マジで?

「うん。今日みたいに、あたしと兄貴がお留守番を任されたことがあって、
 そのときに二人でテレビ見てたら、ちょうど昼ドラが流れてたの。ドッロドロのやつ」

110 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:49:17.65 ID:Bmk3nC4P
止めろよ、当時の俺。
なぜ桐乃の目を覆って子供アニメのビデオをセットしてやらなかったんだ。

「そんなに過激なシーンは無かったよ。
 あっても、精々キスくらい。
 それでね、あたしもあんたも、その頃は全然そういうことを知らなくて、
 二人で実際にやってみない?ってことになったの」
「どっちが言い出したんだ?」
「……あ、あんたに決まってるじゃん」

怪しい。
が、今言及すべきはそこじゃない。

「それがお前のファーストキスか」
「うん。でも、あたしが言うのもなんだけど、あんなのはファーストキスのうちに入らないと思う。
 半分、遊びみたいなものだったし、あんたは次の日には忘れちゃってたし……」

なぜ恨めしげな目でこちらを見る。
俺は言った。

「それじゃあ、実質的なファーストキスはさっきの、ってことでいいのか」
「うん。そだね……それでいい」

111 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 13:50:19.17 ID:Bmk3nC4P
桐乃はクスリと笑い、冒頭のりんこりんの台詞に準えて言った。

「……ソースの味がした」

これまた散文的なことを言う。
俺は原因を言ってやった。

「昼飯に焼きそばを食べたからな」
「あはっ、それもそうだよね」

それから俺たちは、ひとつ約束事をした。
次に恋人らしいことをするときは、事前に歯を磨いておこう、ってさ。



おしまい! 続くかな〜?

112 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 14:25:18.12 ID:+dZsve2z
GJだ、このまま続けてくれ

113 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 14:45:12.80 ID:XKpomXpV
>>111
乙!キスの下り勃起した

もしかしてあやせ、結婚しよう書いた人?


114 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 14:50:17.25 ID:HKkX6ACw
>一応訊いとくが、まさか俺と桐乃の物語だと勘違いしてたヤツはいねえよな?

そ、そんな奴はいないよ。全然いないよ

115 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 15:04:58.78 ID:yqPFh7Pr
糞スレ

116 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 15:06:06.96 ID:r6w/9VLq
なんという王道寸止めw
だがやはり王道は面白いwGJ!

117 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 15:28:30.73 ID:sUvBrtTf
高坂兄妹キモすぎ

118 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 15:54:11.12 ID:PByIhV3q
それ言っちゃおしまいよ

119 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 15:58:02.36 ID:joM+Pt94
むしろ誉め言葉

120 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 16:03:07.75 ID:4VudQLxT
>>111
続き来るのはええよ
重ねてGJ

121 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 16:08:08.31 ID:x+xypERT
続けろ下さい

122 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 16:15:36.26 ID:fYRyJJKU
ニュースを見るたびに腹が立つ管の笑顔。
自分の無能さやだらしなさで遅れている被災地の復興。
どんな理由でも、自分を中心に話題になっていることを楽しんでいる不謹慎な人間がこの日本のトップ。
この時期に、被災地では自殺者や疲労で死んだ年寄りまでいる中で、ニヤニヤへらへらしてられる無神経な総理。
そのことについてほとんど声を上げない日本人。


123 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 16:21:08.90 ID:947XGAmn
続編きてた!
この自然なじらし方がまたいい感じだw
桐乃って自分の書く小説じゃすげえいきなりクライマックスなことさせてるのに
自分のこととなるとマジ純情。だがこんな桐乃もいじらしくていいなw

124 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 16:24:44.33 ID:FFx8b/pA
GJ

125 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/25(土) 20:05:34.12 ID:OkIa5F74
酉付きで是非とも続けて下さい。
あまり飛ばし過ぎて、綾瀬市から目を付けられない様に…。w

126 名前:短編『闇の中の二人』 ◆ACPRLbMxAk :2011/06/26(日) 01:57:40.59 ID:go0laUGR
「な、何ですか、あなた! その格好は!?」

スイーツ(笑)2号の闇天使が、聖天使の衣を纏った私を見て目を丸くしている。
私はこの衣での外出も平気だし、夏休み中の高校の校門前にも出て行けた。
ふっ。違和感など有るはずも無いわ。これが千葉の堕天聖のもう一つの姿‥‥‥

「あなたも変態だったんですね? ひょっとしてお兄さんと変態プレイを!?」
「違うわ」
「うそ! 絶対に変態に決まっています! 通報しますよ!!」
「ち、違うと言っているじゃない!」

あの雄から聞いてはいたが、これが闇天使の実態ね。ああ、呪わしい。
などと考えていると、この雌の口からとんでもない言葉が出てきた。

「黒猫さん! ご相談があります!!」
「貴女のようなリア充が闇の世界の住人である私にどんな相談事かしら?」
「‥‥‥噂通りの邪気眼っぷりですね。それはともかく、実は―――」

コスプレ大会の優勝賞品目当てに、この私にコスプレ大会に出場ろと言う。
優勝賞品をあのスイーツ女に贈るらしい。そして、この聖天使の衣が必要らしい。あの雄の相談と何一つ変わらぬ展開ではないの。一体何を考えているのかしら。

「このCDジャケットのコスプレでいきましょう!」
「これは歌手じゃないの。コスプレ大会ではなくカラオケ大会じゃなくて?」
「いいえ、コスプレ大会です。わたしも出場ます。似た衣装も持ってますし!」
「あ、貴女も出場るというの?」
「だってこの歌手は二人組ですよ? 黒猫さん、ひとりでできるかな?」
「フッ、貴女って凄く勝手ね。どれだけふり〜すたいる♪なの?」


コスプレ大会当日の舞台裏―――闇天使との最終打ち合わせ。

「髪型の似ている黒猫さんは、この帽子を被って私の左側に立ってください。
 わたしは右側に立ちますから。ほら見て下さい! そっくりじゃないですか」

姿見を見ると、確かに衣装などは似ているようにも見える。しかし顔は‥‥‥

「貴女、莫迦なの? こんな完成度の低いコスプレで勝てると思っているの?」
「大丈夫です。本物を見た人は居ないんですから。さあ! 歌い出しですよ!」
「え? イントロは? まさかアカペラで歌うの?」
「何言っているんですかぁ。この曲にイントロはありませんよ!」
「そ、そうだったわね。私としたことが、迂闊だったわ」
「さあ、歌い出しは息を吸ってください」
「注文の多い女ね。解っているわよ。何度も聴いていたのだから」

「「すぅー」」

交わした約束 忘れないよ♪  目を閉じ 確かめる♪
押し寄せた闇 振り払って進むよ♪


こうして聖天使の衣を纏った聖天使と闇天使のデュオはコスプレ大会で優勝した。
闇天使はスイーツ女に贈る優勝賞品を獲得して上機嫌だ。
さて、用も済んだから私は帰ることにするわ。“決め台詞”を拒絶してから。

「黒猫さん! 私と契約して、コスプレイヤーになってください」
「嫌よ」


短編『闇の中の二人』 【おしまい】

127 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 02:10:35.01 ID:51KlpqZ+
スレの雰囲気が元に戻ってて嬉しい
良い書き手さんが来てくれたおかげだね

128 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 05:06:19.74 ID:x97x6tsg
>>127
かんそうぐらいってやれよ

129 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 07:17:59.67 ID:EPHgVbRp
作品にふれろよw

130 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 12:38:30.48 ID:Qw9dlqMN
>>126
またあなたかw
よくもまあ、こんなにぽんぽんとネタが浮かぶ事…。(褒め言葉)

131 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 13:32:38.06 ID:5Gw4eQpM
>>111
GJ
良かったです

132 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 23:24:35.88 ID:pvV+JUuy
SL氏のSSが好きというわけじゃないが(はっきりいって、
京介の扱いのあまりの酷さに苛つくし)物語が完結しないのは
一番気分が悪い。
一部の馬鹿共のせいか、投稿しなくなったじゃないか。
どうしてくれる。


133 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 23:30:20.94 ID://h/OHHZ
それはもう一方の方でやってくれ
荒しに口実を与えるな

134 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 23:47:42.93 ID:SRCiY1GR
>>111
上手いなぁ。
ぜひ続編を。

>>126
ネタもの得意ですね。
そしていつも短く纏められてるなぁ。

>>132
元々投稿間隔空いてたじゃん。
心配しなくても続き書き終わったらそのうち来るでしょ。
一部の馬鹿どものせいで投稿しなくなったのは普通の書き手の人。
黒猫スレにもアップロダができて書き手減ってるんだから投稿しやすい雰囲気を作ろうぜ。

135 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 23:53:11.45 ID:dgnvExUa
GJです

136 名前: 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/06/26(日) 23:57:44.02 ID:a5f5x8Mu
どっちにせよ投下して下さったお2りともGJどす

137 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/26(日) 23:59:28.45 ID:45m5wvTF
>>132
どうしてくれる()

きめえうぜえ死ね

138 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 00:33:45.88 ID:CYmVkQla
はいはい煽ったら負けですよー

139 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 00:38:23.07 ID:3vjmUATE
俺の負けでいいから
煽っていい?

140 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 00:44:34.02 ID:vwU+TQ5f
雰囲気悪くなるから専用スレでやって

141 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 03:17:53.35 ID:ep8wevRb
SLさーんまだかー

142 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 03:47:49.83 ID:UJxbX3Df
あやせかわいい
加奈子もかわいい

143 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/27(月) 08:04:42.79 ID:ifpjChHR
SLに関する話題はこっちで
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308717152/

144 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 01:39:41.10 ID:XrDdZQwj
あやせかわいい

145 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 03:04:22.64 ID:Uexkm7Ao
SL氏かわいい
作品も凄い

146 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 03:08:04.20 ID:ELVOkPcl
>>126
GJ!
あやせの「あなた”も”変態〜」ってセリフから察するにあやせも変態なのか?

147 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 04:31:55.05 ID:7xR0h7+d
>>146
どう考えても京介と一緒で変態なのかって意味だと思うよ

148 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 09:22:58.03 ID:AnoWWUcD
SLは面白いつまらない以前に内容がキチッてるからな

149 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 10:23:05.60 ID:pVI3chW7
クソスレ化が激しすぎる…
住民減りすぎじゃね?

150 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 12:13:39.05 ID:8xofa6dN
そもそもSSの投下が無ければ一日に数レス進むくらいが普通なわけで
週1ペースでも書き手が投下してくれれば十分だよ

151 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 15:54:07.17 ID:6scBnsoL
俺にとってはこの流れの方が好き
もちろん、職人さんが居てのエロパロ板だが

152 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 16:36:59.19 ID:3SaX7dky
キチガイが住み着いてるスレに職人来るわけねえだろw
ましてや平和なvipやキャラスレがあんのに

153 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 16:53:14.24 ID:86bTOZZq
キチガイ=ID:AnoWWUcD ID:pVI3chW7 ID:Uexkm7Ao

「糞スレ」と「SL」っていう上がってもいない話題を一生懸命振りまいてスレを荒らそうとするやつのことかww

154 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 20:39:52.25 ID:foOKnk+8
キチクn長編てもう書き手いなくなっちまったっすか(T_T)

155 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/28(火) 23:33:46.70 ID:uXSmE+Vy
SL66氏

156 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 00:31:28.83 ID:gaHlN31w
あやせかわいい

157 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 03:24:46.68 ID:Z15O9Z4o
なんでSL氏に根強いアンチがついてるのか、なんとなく分かった。

「氏が書く作品は、表現や文章のレベルが高すぎる」

中高生が読む(のがメインの)ラノベ二次創作で、これは致命的
そりゃ、反発出るわ

158 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 08:02:24.59 ID:9EHf7rM1
語彙、表現、原作再現度、話の面白さ
全てにおいて上の書き手は存在する
残念だけど

159 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 08:02:45.05 ID:Nv56Ruzs
なんでこのスレに粘着荒らしがついてるのか、なんとなく分かった。

「このスレの作品は、表現や文章のレベルが高すぎる」

自宅警備員が読む(のがメインの)エロパロ板で、これは致命的
そりゃ、反発出るわ

160 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 08:38:38.06 ID:OsbqYPr8
致命的か?

161 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 08:47:45.84 ID:fW6++OLg
頭がね

いかん、カレを擁護するスレが自演にしかみえない
ちょっと偏見すぎるかな 

162 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 08:51:52.80 ID:gye8Oqap
加奈子はDV男にはまりそう

163 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 09:06:36.67 ID:9Sf/0C7J
S!L! S!L!

164 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 11:28:12.20 ID:+rbvLcSp
>>161
自演ではないと思うけど、明らかに荒らしの愉快犯ではある

普通ならこんなのに付きまとわれたら書き手本人も迷惑するだろうし、そうでなくとも、あからさまに他の書き手を見下したり
「原作を越えた!」とか言ってるレスには、本人が嗜めるような書き込みをすれば、このスレも(彼自身の評価も)多少は違うんだろうけど
彼は自分を嗜めるレスに対しては荒らし認定して噛み付くくせに、こういうのは野放しにするんだよな

迷惑どころか、ヨイショされて本気でいい気分になってるのかも知れない
ぶっちゃけ場をかき乱したいだけの愉快犯なんだから、心の底ではSLのことだって鼻で笑っているのは明白なのにな

165 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 13:04:18.12 ID:UH/v8ogN
こっちで消えろって言われてSL専でまた叩かれてまたこっちに戻ってきた
ただの子供

166 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 14:09:57.32 ID:fW6++OLg
おかえり('・ω・`)

167 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:16:51.54 ID:+shN39gM
・仮題「夏祭り」
・非エロ
・あやせ×京介
・30レス程度

前後編のうちの前編になります
投下してもおkでしょうか?

168 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:22:39.10 ID:nKtbemAK
問題ない
こちらはいつでも全裸待機で準備は万端だ

169 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:28:30.71 ID:+shN39gM
それは例えるなら、夜空にきらめく綺羅星の一。
赫赫たる輝きは仰いだ者の目を惹きつけてやまず、
されど所有欲を懐いた者には冷ややかな一瞥を投げかける。
見渡せば、夢破れた者たちの屍の群れ。

「あやせ、今まで何人にナンパされた」
「覚えてません。
 お兄さんがいけないんですよ、わたしを30分も待たせるなんて」
「桐乃を説得するのに手間取っててな」
「それで、あの子は……?」
「電話で話したとおり、家で休ませてる。
 俺も残って看病するって言っても、
 あたしの分まで楽しんで来て、の一点張りでよ」
「わたしも同じです。
 桐乃がいないと意味ないよ、ってメールを送ったら、
 あたしの代わりに花火の写真を撮ってきて、って逆に宿題を出されちゃいました」

困り顔で目を細め、たおやかな所作で腰を上げるあやせ。
ラブリーマイエンジェルの愛らしさを表現したところで何を今更と笑われそうだが、
今夜の彼女は、持てるボキャブラリーの粋を尽くして誉めちぎらずにはいられない。
長い黒髪は後ろで一つに結わえられ、
覗く項は健康的な白、身に纏うは黒地に朝顔をあしらった湯帷子、
下駄は歩みに合わせて幽玄の音を奏で、鼻緒の赤は大人びた雰囲気に一抹の幼さを残している。
要するに何が言いたいかというとだな。

「あやせたんすげー可愛い。鼻血出そう」

170 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:29:05.14 ID:+shN39gM
「今何か言いました?」
「浴衣、似合ってるって言ったんだよ」
「そ、そうですか?
 お兄さんなんかに誉められても全然嬉しくないですけど、
 一応は、誉め言葉として受け取っておきます」

あやせはフイと顔を背け、

「今日お兄さんと一緒に出かけるのは、桐乃に頼まれて、仕方なくですから。
 その点だけは勘違いしないで下さいね」
「へいへい」

俺のことは精々、ナンパ避けにでも使ってくれ。
お前の美貌には到底釣り合わない地味顔だが、それくらいの役には立つぞ。

「わたしはお兄さんのことが嫌いです。
 でも、卑屈なお兄さんはもっと嫌いです。
 わたしの隣を歩くなら、せめて、堂々と胸を張って下さい」

そ、そそ、それってつまり……。

「今日一日限りなら、お前の彼氏を名乗ってもいいってことか!?」

171 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:29:38.46 ID:+shN39gM
「じゃあ、もし誰かに俺たちの関係を聞かれたら、何て答えればいい?」
「そうですね……」

あやせは人差し指の腹を唇に当て、可愛らしく小首を傾げると、

「兄妹ということにしておきましょうか」

兄妹、ねえ。

「知り合いに会った時はどうするよ?」

例えば加奈子とか麻奈実とか。
確率は極々低いと思うが、一応な。

「その時は即刻どこかに隠れて下さい。
 もしもお兄さんが隠れるのが間に合わなかった時は、
 少々面倒ですが、時間をかけて事情を説明しますから」

やれやれ、どうあっても誤解される事態は避けたいと見える。
俺との仲を色眼鏡で見られるのがそんなに嫌かよ?
俺は大歓迎なんだがな……。

「絶っ対に嫌です」

ですよねー。

172 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:30:15.14 ID:+shN39gM
肩を竦める俺を余所に、あやせは

「もうすぐ電車が来ます」

と踵を返し、駅構内へと歩き出した。
ナンパに失敗した男どもの怨嗟の視線を背中に浴びつつ、浴衣姿の後を追う。

さて、ここらで俺とあやせがデートするに至った経緯を説明しておくか。
事の発端は数日前。
桐乃が隣町のお祭りに行きたいと言い出したことがそもそもの始まりだった。
暇を持て余していた俺は一も二もなく承諾し、経つこと数日、
俺たちの予定を聞きつけたあやせが突然の参加を意志表明、
本人曰く、前々からそのお祭りに興味があった、というのは桐乃向けの建前で、
俺が桐乃の浴衣姿に欲情して間違いを犯さないよう監視するのが真の目的なのだとか。
んなことするわけねーだろ、と力説しても馬耳東風、
あまりの信用のなさに慨嘆に暮れていた俺を蚊帳の外にして、
桐乃とあやせは仲睦まじく、祭りに着ていく用の浴衣を選んでいたっけな。
そして迎えた祭りの当日、桐乃は馬鹿みたいな高熱を出して寝込んじまった。
即日快復の見込みは薄く、祭りは生憎の一晩限り。
どうするべきか、と悩んだ俺に桐乃がかけてくれた言葉は、冒頭であやせに受け売ったとおりである。
説明終わり。

電車に揺られること十数分。
駅から出た俺たちは、しばし言葉を失った。

「大賑わいだな」
「この辺りでは、有名なお祭りですからね」

173 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:31:01.29 ID:+shN39gM
耳を澄ませば、祭り囃子の清音が聞こえる。
遠くに見えるのは御神輿だろうか。
お面を付けた子供が「まだ帰りたくない」と泣きながら、親の手に引かれていた。

「あやせは今まで、このお祭りに来たことはあるのか?」
「小さい頃に、両親に連れられて何度か。
 でも、ここ数年は遠慮してました。
 暴走族の集会に使われたり、スリや置き引きが増えたりと、悪い噂ばかり聞くようになったので」
「一日限りになったのもそれが原因らしいな」

晩飯の席で、親父(現職の警官)が喋っていたことを思い出す。
何年か前までは、祭りは二日間に渡って開催されていた。
が、軽犯罪の温床と化すにつれて、自治体は期間の縮小を決定し、
警察は気合いを入れたパトロールを実施する運びとなったらしい。

「今日だって、お母さんを説得するのにすごく苦労したんですよ。
 悪い人に絡まれたらどうするの、ってうるさくって」
「あやせママは心配性か」
「というよりは、過保護の方が正しいですね。
 今でもわたしのことを子供扱いするんですよ?
 もう十五歳なのに……」

軽く頬を膨らませるあやせ。可愛い。

174 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:31:32.38 ID:+shN39gM
「結局、あやせはどうやってお袋さんを説得したんだ?」
「友達のお兄さんも一緒だと言ったら、渋々納得してくれました。
 もっとも、もしお母さんがお兄さんの素性を知っていたら、
 絶対に認めてくれなかったでしょうけど」

冷ややかな目つき。たまりませんなあ。
ちなみにあやせが言った俺の素性とは、近親相姦上等の変態鬼畜兄貴のことである。
今更それを訂正する意志も元気もないとは言え、

「一応、俺はあやせのお袋さんに、保護者役を期待されているわけだよな?」
「まあ、そうとも言えますね」
「そこで、だ。
 お前の護衛を万全なものにするために、一つ俺に提案があるんだが」
「何ですか?」

俺は爽やかな笑顔で言った。

「手を繋ごう」

あやせも華やぐ笑みでこう答えた。

「嫌です。穢らわしい」

例によって例の如く、台詞と表情の不一致甚だしいなオイ。

175 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:32:18.75 ID:+shN39gM
まあいい。

「お前が嫌なら無理強いしないが、はぐれないようにしろよ」

この歳で迷子になったら笑い者だぜ。

「お、お兄さんまでわたしを子供扱いしないで下さい。
 お互いがお互いを見失わないよう、意識していれば大丈夫です」
「心配になったら、いつでもお兄さんの腕に抱きついてこいよ。
 俺はいつでもウェルカムだ」
「わたしはいつでもノーサンキューです」

そいつは残念。
俺は誰からも必要とされない右手をポケットに仕舞いつつ、
道なりに連なる屋台骨と、それを縁取るネオンの光を眺めた。
さてと……俺たちもそろそろ、露店巡りに繰り出すとしますかね。

駅前を離れ、大通りを歩き始めることを数分。
右手からカランカランと鐘の音が鳴り響いたので振り向くと、

「やったぁ、一等賞だっ!」

と小さな男の子がはしゃいでいるのが見て取れた。
手渡された最新型の携帯ゲーム機を誇らしげに掲げ、周りの友達に自慢している。

176 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:33:35.56 ID:+shN39gM
あやせが言った。

「へえ……きちんと当たりクジも用意されているんですね。
 三等以上の景品なんて、所詮は人目を引くための飾りだと思ってました」
「実際、ほとんどのクジ屋はハズレクジしか用意してないんだろうさ。
 けどガキの頃なんて疑うことを知らねえから、馬鹿みたいに小遣いを注ぎ込んだよな」
「仲間を見るような目でこっちを見ないで下さい」
「隠すなって、誰もが通る道だろ?
 百円玉数枚で豪華景品を手に入れる夢を見るのは」
「わたしは三回ほど挑戦したところで、無垢な子供を食い物にする仕組みに気づきましたから」

あやせ様は幼少期より素晴らしい炯眼をお持ちで。
しかし真の賢者とは最初からクジ屋に金を落とさないヤツのことで、
クジを引いちまった時点で俺とあやせは五十歩百歩の距離にあるんじゃないか、と言えば睨まれるのは自明の理、

「どうだ、試しに俺たちも引いてみないか。
 さっきの騒ぎが仕込みじゃなけりゃ、あのクジ屋は世にも珍しい優良店みたいだぜ」
「仕込み?あの男の子がサクラかもしれないと疑ってるんですか?」
「可能性はあるだろ」
「お兄さんは捻くれすぎです。
 あんなに可愛い男の子が、そんな悪事に荷担するわけがないじゃないですか」
「分かった分かった、汚れてるのは俺の心の方だ。で、どうするよ?」

あやせはしばし迷った末に、ハンドバッグから財布を取り出して言った。

「それじゃあ、一回だけ」

177 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:34:20.64 ID:+shN39gM
列の最後尾に並び、クジ箱の前に着く頃には、
背後には先の一等賞獲得の噂を聞きつけたのか、長蛇の列が出来ていた。
クジ箱には『一回:三百円、二回:五百円』の文字。
気のよさそうな店主の「二回の方がお得だよ」の言葉を半笑いで聞き流し、
俺とあやせはそれぞれ三百円を手渡した。
まずは俺から。
箱に手を突っ込み、勘とセンスで一枚の紙片を掴み取る。
最初から当たる期待なんかしてないっての、
というようなクールな風体を装いつつ、内心では八百万の神様に祈りを捧げる。
あのう、二等の音楽プレイヤーが欲しいんですけどなんとかならないですかね?
今持ってるプレイヤーの調子がすこぶる悪いんです。
ここで当たれば新しいのを買わずに済むんです。

「ほい、兄ちゃん。残念賞だ」

クラッカー単品を拝領する。
ハハ……これで誰かの誕生日を祝ってやれるぜ。
三百円には到底釣り合わないが、夢と希望を買ったと思えば慰めにもなる。

「さあさ、次は嬢ちゃんの番だよ」
「……行きます」

あやせが袂を捲り、箱に手を差し入れる。
指先に全神経を集中させるためか、目は瞑られ、呼吸さえも止まっているように見えた。
やがて俺の倍ほどの時間をかけて、あやせは紙片を選び出した。
手渡された紙片を、店主が慣れた手つきで検める。
果たしてその結果や如何に?

178 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:37:10.45 ID:+shN39gM
クジの中身を確認した店主の手が、ミニクラッカーの寄せ集めに伸び……その隣のハンドベルを鳴らした。
カランカラーン。

「おめでとう、特別賞だ!」

おいおいマジかよ。
特別賞なんてあったのか。
けど、展示されてる中に特別賞の札付きの景品なくね?

「ちょっと待っててくれるかい。景品は別のところに置いてあるんだ」

と言って、店主が屋台の裏手に消える。
あやせが譫言のように呟く。

「当たった……信じられない……」
「すげえな。特別賞だぜ、特別賞」

茫然自失としていたあやせも、徐々に実感が込み上げてきたのか、

「お兄さん、わたしやりました!」
「おう、やったな!」

極々自然なハイタッチを交わす。
あやせは慌てて手を引っ込めて何か言いかけ、戻ってきた店主を見て絶句した。
無理もないと思ったね。
店主が脇に抱えていたのは、星くずうぃっち☆メルルの等身大ぬいぐるみだったんだからな。

179 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:38:48.57 ID:+shN39gM
「はいよ。大切にしてやんな」
「あ、ありがとうございます」
「ハッ、桐乃への土産を買う手間が省けてよかったじゃねえか」

と俺が言うと、あやせは困惑気味の表情になって、

「確かにあの子は大喜びするでしょうけど、
 これを持ったまま歩くのは流石に恥ずかしいので……お兄さんに預けておきますね」
「おう……」

って自然に受けとっちまったが、なんで俺?

「だって、お兄さんなら"そういう趣味の人"と思われても問題ないじゃないですか。
 むしろ白い目線が心地良いんじゃないですか?……変態」

ハイ今日の初「変態」頂きました。
って、問題あるし心地よくもないわボケ!
しかしこの縫いぐるみ、妙にディティールに凝ってるな。
遠目からだとマジに俺が児童誘拐してるように見えないこともなさそうで怖いんだが……。

「ママー、あたしもメルルのぬいぐるみほしい」

と後ろで小さな女の子が、母親に駄々をこねている。
譲ってやりたい気持ちは山々だが、
悪いな、俺の家にも一人、メルルの大きなお友達がいるんだよ。
それから俺は試行錯誤を重ね、ぬいぐるみを肩車する方法が、
一番負担がかからず、両手も自由になるという結論に達した。
道行く人の冷たい視線?知ったこっちゃねえや。
だがあやせ、お前まで俺から微妙に距離を取るのはやめてくれ。

180 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:40:21.62 ID:+shN39gM
さて、次に俺たちが足を止めたのは、夏祭りの露店といえばコレをおいて他にない、金魚すくいの屋台である。
といってもあやせは通り過ぎる気まんまんだったようで、

「急に立ち止まってどうしたんですか?」
「金魚すくいやろうぜ」
「構いませんけど、やるならお兄さん一人でどうぞ」
「寂しいこと言うなよ。やりたくない理由は何だ?」
「大人気ないじゃないですか。あんな小さな子供たちに交じって金魚すくいだなんて……」

待ち合わせ場所で顔を合わせた時から思っていたが、
どうもあやせはまだ、祭りの雰囲気に乗り切れていない感じだな。
矜持は捨てて童心に還る、これ縁日の鉄則だぜ?

「イヤなものはイヤです」

強情だな。
しゃーねえ、諸刃ならぬ逆刃の剣になりかねんが、一丁挑発してみるか。

「お前さぁ、もしかして金魚すくいできねえの?」
「は、はぁ?」
「一匹もすくえなくて、惨めな思いをするのがイヤだから渋ってんだろ?」
「なっ、なんでそうなるんですか!?
 馬鹿なこと言わないでください。
 金魚すくいは得意……じゃありませんけど、お兄さんよりたくさんすくえる自信はあります」
「口では何とでも言えるよな」

181 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:41:45.16 ID:+shN39gM
「くっ……分かりました。
 実際に証明すればいいんでしょう、実際に証明すれば」

おー釣れた釣れた。

「ただの勝負じゃつまらねえし、そうだな、
 多くすくえた方が、後で何か食べ物を奢るってのはどうだ?」
「の、望むところです」

硬貨を支払い、ポイと椀を受け取って、水槽の前に陣取る。
チビッ子たちよ、俺の肩に乗ったメルルに興味津々なのはいいが、
どうか俺とあやせの神聖な戦いの邪魔だけはしないでくれよな。

「それじゃ、始めるか」
「……はい」

意気込みとは裏腹のなんとも緩慢なかけ声で、火蓋は切って落とされた。
ポイを握るのは久しぶりだが、やっぱり体が覚えてるモンなんだな、

「おらよっと。一匹目」

幸先の良いスタートを切り、その後もテンポ良く二匹目三匹目をすくい入れる。
東に高坂京介ありと謳われた実力を遺憾なく発揮し、
十匹目をすくい入れたところで椀の中はいっぱいに。

182 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:42:48.19 ID:+shN39gM
「兄ちゃんすごいな」と店主。
「わぁっ、どうしてそんなに上手いのー?」と背後の子供たち。

へっ、これも一重に練習の賜さ。
新しい椀を店主から受け取り、恐らくは数で俺に負けているあやせを煽ってやろう、と隣を見ると、

「……………」

あぁ……。まぁ、その、なんだ。

「久しぶりだもんな、初めから調子が出ねえのは仕方ねえよ」

あやせは空の椀と破れたポイを見つめて言った。

「……なんです」
「ん?」
「昔から、下手なんです。何度やっても、一匹もすくえたことがなくて。
 今のわたしになら簡単かと思ったんですけど……やっぱり、ダメでした」

微かに湿った双眸、噛み締められた下唇。
やれやれ、俺は知らず、あやせのプライドをいたく傷つけていたらしい。

「おっちゃん、ポイもう一つ」
「あいよ」

受け取ったポイを、そのままあやせに握らせる。

183 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:43:50.02 ID:+shN39gM
「何度やったって、同じです」
「やってみなくちゃ分からねえだろ。
 それにな、物事には何でもコツがあるんだよ。金魚すくいだって例外じゃない」

あやせの右手に自分の手を添える。
あやせはぴくりと肩を震わせ、しかし、我慢してくれた。
他意がないことを直感的に悟ってくれたのかもしれねえな。

「ポイを水につけるときは、ゆっくりじゃなくて、思い切りよくだ。
 あとは金魚は追いかけるな。寄ってきてくれるのをじっと待て」
「………」
「いい位置に金魚が来たら、ポイの面の端っこですくいあげる。
 金魚が暴れないうちにな。ちゃんと聞いてるか?」
「……は、はい……」

こっちは真面目に教えてるのに、そんなに艶っぽい声を出されても困るんだが。
触れあった右手が妙に熱い。
つーか、教えるために無意識にとった体勢だが、
このあやせの背中から覆い被さるような格好、かなりヤバくね?

「あっ、お兄さん……!」
「おっ、来た来た」

タイミングよく金魚が寄ってきて、俺はあやせの右手をアシストする。
ぽちゃんと水音。椀の中には、形、色ともに良しの金魚が一匹。

184 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:45:22.44 ID:+shN39gM
「出来たじゃねえか」
「……こんなに簡単なことだったんですね」
「だろ?さ、次は自分一人の力でやってみな」

数分後。
屋台から離れたあやせの手には、水草模様が描かれた金魚袋があった。

「酷いです。わたしを置いてきぼりにするなんて」
「他の利用客にスペースを空けてやろうと思ってな。
 で、何匹すくえたんだ?」
「四匹です。お兄さんと一緒にとったのも入れて。
 お兄さんには遠く及びませんね。
 ……そういえば、お兄さんの金魚はどこですか?」
「周りの子どもたちの椀に、一匹ずつプレゼントしてやったよ。
 どうせ持って帰っても、おふくろに『池に返してこい』って言われるのがオチだからな」

というわけで俺の成果はゼロ、この勝負はお前の勝ちってことで。

「そ、そんなの反則ですっ」

自分が不利になる反則を咎められるとはこれいかに。

「だって、お兄さんにコツを教えてもらうまで、わたしは一匹もすくえなかったんですよ?」

俺はあやせを遮り、

「勝者には豪華賞品、フランクフルトが送られます」

185 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:46:17.44 ID:+shN39gM
「……先に屋台を離れたのは、これを買うために?」
「まあな」
「いくらしたんですか?」
「聞くな。俺だって初心者相手に賭け試合吹っ掛けたことに、罪悪感を感じてんだ」

その罪滅ぼしがコレだ。さあ、遠慮なく食え。
あやせはしばしフランクフルトを眺め、
やがて熱さを確かめるように唇を付け、あむ、と先端に齧り付いた。

「どうだ、美味いか」
「はい、とっても……あ、お兄さんも」

無垢な笑顔で俺にフランクフルトを差し出しかけ、慌てて引っ込めるあやせ。

「な、何でもありません」
「はいはい、分かってるよ」

お前も優しさも照れ性もな。
とても美味しい、という感想は本当だったようで、あやせは気持ちの良い頬張りっぷりを見せてくれる。
いやあ、実に健全な光景ですなあ。
眼福眼福。

「……お兄さん?」

おっと、考えが顔に出ていたらしい。

186 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:47:03.72 ID:+shN39gM
「目がすっごくいやらしいです」
「気のせいだろ」
「いかがわしい妄想をしているようなら、即刻ブチ殺しますよ」
「失敬な。次にどこに行こうか考えてたんだよ」

というのはもちろん嘘で、あやせもそれを承知しているんだろうが、
右手に金魚袋、左手にハンドバッグの状態では万全の殺害ができないと判断したらしく、

「お化け屋敷……はどうですか?」

と俺の話題転換に乗ってくれた。
つーか、この祭りに来てから初めてだよな。あやせが行き先を指定したのって。

「このお祭りのお化け屋敷は、その怖さで有名なんです。
 入ったうちの二組に一組は、ゴールできずに、入り口まで引き返してくるそうです」
「詳しいな。入ったことがあるのか?」
「子どもの頃、お父さんと一緒に二回ほど」
「ゴール出来たことは?」
「……ありません」と俯き気味に白状するあやせ。

親父さんが怖じ気づいたとは思えねえし、
お化け怖さに泣きじゃくるあやせを、親父さんが肩車して引き返したんじゃないか、と想像する。

「よし、行ってみるか」

187 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:48:19.22 ID:+shN39gM
というわけでお化け屋敷である。
見た目は打ち捨てられて久しい蒼然の廃屋、奏でるは物寂しい和楽の調べ。
一日限りの興行の割りにはえらく意匠が凝らされた造りだな。

「前の方がゴールされるまでしばらくお待ち下さいね」

と受付の女性に言われ待つこと数分、
わんわん泣き喚く小さな男の子と、その母親と思しき人が入り口から現れた。

「今年も相当怖そうですね」とあやせ。
「入る前から怖じ気づいててどうするよ」
「お、怖じ気づいてなんか……!
 わたしがゴールできなかったのは、小学校に入る前の話ですよ?」
「今はもう怖くないと?」
「当たり前じゃないですか。
 中に人が入っているお化けなんか、ちっとも怖くありません」

ほう、そいつは頼もしい。
ところでさっきから気になってたんだが、どうしてあやせは俺の背後に立ちたがるんだ?
入り口は俺たちが横に並んでも余裕がある広さだぜ?

「うるさいですね。早く進んでください」
「分かったから押すな」

俺としては隣でお化けにびくつくあやせたんを鑑賞したかったんだがな。

188 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:49:55.66 ID:+shN39gM
消沈しつつ入り口の垂れ幕をくぐると、ひんやりとした冷気に出迎えられた。
中は狭い通路が延々と続く構造になっているようで、
等間隔に配置された蝋燭の光が、唯一の光源として正しい行く手を教えてくれる。

「なかなか良い雰囲気だな」
「…………」

進むこと数歩、最初の角を曲がってすぐのところでファーストコンタクト。
右手に包丁、ぼろぼろの服を身に纏い、ざんばら髪で顔を覆った女が、

「きひひっ」

と不気味な笑い声を響かせながら、通路の先へ走っていく。
ああ、こりゃ怖ぇわ。
ガキなら小便漏らすのを必死に我慢して、一目散に引き返しても仕方ないレベル。
だが、その怖さが夏には丁度良い。
俺はさらに歩を進め、通路の天井からだらりと垂れるろくろ首や、
壁から突き出す無数の手、右手のガラス窓にへばり付く口裂け女を華麗にスルーしていった。
そういやあやせ、お前さっきから口数が少ないが大丈夫か?

「えっ……あ、はい……大丈夫です……」

瞬きが多い。呼吸も肩でしているような感じがする。
パニックの前兆じゃあるまいな、と訝った矢先、あやせの背後に誰かが立った。
トントン、とそいつがあやせの肩を叩く。
元々振り向いていた俺には、そいつの顔――のっぺらぼう――が丸見えで、
普段なら大いに驚かせてやれと口を噤んでいるところなのだが、その時ばかりは流石に止めた。
否、止めようとした。

189 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:50:49.17 ID:+shN39gM
「ばぁっ!」
「いやぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」

誰何もなく、躊躇いもなく。
あやせは下手人に渾身の平手打ちを叩き込んだ。

「ぶべらっ!?」

のっぺらぼうの面が派手に吹き飛び、中の人がもんどり打って倒れる。
俺はなおも追撃にかかろうとするあやせを羽交い締めにし、

「お、落ち着け!」
「離して!離してくださいっ!
 お兄さんが邪魔で、そいつを殺せませんっ!」
「物騒なこと言ってんじゃねえよ!
 お化けが怖いからって、お化けに暴力ふるってどうする!?」
「そんなこと言ったって――きゃっ」
「わっ」

後ろに倒れ込んだところで、何かの仕掛けが作動したらしい、
通路を照らしていた蝋燭の光が一斉に消え、視界が暗幕に包まれる。
ジェットコースター的展開に、さらにあやせのパニックは悪化するかに思えたが、

「…………」

身動きが止まる。

190 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:52:35.64 ID:+shN39gM
が、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、

「……っ……」
「ちょ、おま……もしかして泣いてんのか?」
「泣いてなんか……いませんっ……」

強がる言葉は湿っていて、耳を傾ければ、微かな嗚咽が漏れ聞こえる。
羽交い締めにしたあやせの体は、固く強張り、震えていた。

「立てるか?」

真っ暗闇の中で、首を横に振る気配がする。
俺がゆっくり立ち上がると、手を差し伸べるまでもなく、あやせは腕にしがみついてきた。
ふにふにとした柔らかい感触に狂喜乱舞するのは後回しにして、
今はこの場所から抜け出すことをが最優先だ。
亀の歩みもかくやの遅々としたスピードで、いずことも知れない出口を目指す。
恐怖音が聞こえる度、また何かに蹴躓く度、
骨が砕けるんじゃないかと思うくらいの力で腕を抱き締められたが、そこは無言でこらえたさ。
やっとの思いで出口に辿り着くと、スタッフの女性が迎えてくれた。

「お疲れさまでした」
「はは、どうも」

スタッフの女性は俺の右隣に視線を移し、生暖かい笑顔を浮かべて、

「今年は少し怖くしすぎたのかもしれませんね。
 例年に比べて、出口まで辿り着かれる方が極端に少ないんです。
 どうぞ、そちらに休憩スペースがあるので、お連れ様が落ち着かれるまでお休みください」

191 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:53:52.67 ID:+shN39gM
入場時に預けていた荷物(あやせの金魚袋やハンドバッグ)を受け取り、
ベンチに腰掛けたところで、あやせはようやく俺の右腕を解放してくれた。

「少しは気分が落ち着いたか」

あやせは手のひらで涙を拭い、鼻を啜って、コクリと頷く。
流石にここで「お前ビビりすぎだろ」と笑う勇気は無かったさ。
のっぺらぼうくんの二の舞を演じるのはご免だしな。

「人間誰でも、これだけは絶対に無理、ってモンが一つや二つあるもんだ。
 それにな、お化けを全然怖がらないような女は可愛げがねえし、
 怖がってる演技をするような女はもっとつまらねえ、と俺は思う」
「……慰めてくれてるんですか?」
「まあな。
 でもよ、いくら怖かったからといって、お化けに暴力を働くのは反則だぜ。
 あやせがぶっ飛ばしたのっぺらぼう役の人には、後で一緒に謝りに行こうな」

あやせは悄げた様子で肯き、こんなことを訊いてきた。

「お兄さんは、お化けが怖くないんですか?」
「怖いに決まってるだろ」
「後ろからお兄さんのことを見てましたけど……全然、そんな風に見えませんでした」
「ああ、言い方を間違えたな。
 怖くて、驚かされて、同時にそれが楽しいんだよ」
「お兄さんが言うと、変態っぽく聞こえます」

お前がいつもの調子を取り戻してきてくれたようでお兄さん嬉しいよ。

192 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:54:43.67 ID:+shN39gM
何もそんなことを夢にせんでもよかろうに。
と俺が呆れたその時、

「おーい」

と誰かが話しかけてきた。
視線を上げれば、見知った学友の顔がそこにあり、

「赤城?……って何だよその格好」
「おいおい、見て分からねえか?」

ぼろぼろの浴衣に乱れた髪、頭の後ろにかけたお面……。

「お前……まさか、さっきののっぺらぼうか?」
「ああ」
「なんでお前がお化け屋敷でお化けやってんだよ?」
「割の良いバイト探してたら、この街に住んでるヤツに紹介されてさ。
 ……なあ、このアニメキャラのぬいぐるみ、高坂のだろ?」

暴れるあやせを取り押さえたときに、肩から落っこちてたみたいだな。

「ああ、確かに俺のだ。拾ってくれてサンキューな」
「えーっと、星くずなんとかマルルだっけか?」
「違ぇよ。星くずうぃっち☆メルルだ」

193 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:55:37.55 ID:+shN39gM
語気を強くして訂正すると、

「そ、そっか。
 とにかく、持ち主が見つかって良かったよ。俺は仕事に戻るわ」

と赤城は引き気味の笑顔で立ち去りかけ、

「待ってくださいっ!」

俺が何か言うより先に、あやせが赤城を引き留めていた。

「わたし、あなたに酷いことをしました。
 あの……、お怪我はありませんか?」

顔を近づけるあやせに、赤城は大袈裟に飛び退いて、

「心配ご無用。男の体は丈夫に出来てんだ。
 これくらい痛くも痒くもねえって」
「それでも、ごめんなさい。
 わたし、何とお詫びすればいいか……」

深々と頭を下げるあやせ。すると赤城は愉快げに笑い、

「君が俺に襲い掛かったのは、それだけ俺を怖がってくれてたってことだろ?
 お化け役冥利に尽きる、ってもんさ。
 これからはこいつを勲章だと思って仕事に励むよ」

ほっぺたの紅葉をかきながら、お化け屋敷に戻っていった。

194 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:56:12.09 ID:+shN39gM
「気持ちのいい方ですね。
 お兄さんの友達だというのが信じられないくらい」
「二言目が余計だ。
 でもまあ、あいつは本当にイイ奴だよ。
 一目惚れしたなら紹介してやろうか」
「………わたしはそんなに軽い女じゃありません」

あやせは急に立ち上がり、往来に向かって歩き出す。
隣に並んで表情を伺えば、打って変わったむくれ顔。
いったい何があやせの機嫌を損ねたんだろうね、と訝しみつつ、
俺は自然な流れで、右腕を差し出した。

「何ですか、それ」
「いや、ほら、お前が腕を組みやすいようにな」
「余計なお世話です」
「さっきはあんなに力強くしがみついてきてくれたのにな?」

俺は痺れた右腕を軽く振って見せてやる。

「あっ、あれは足に力が入らなくて、仕方なくですから!」
「じゃあもう一回お化け屋敷に入るか」
「絶対イヤです。……お兄さんは、そんなにわたしと腕が組みたいんですか?」
「ああ。もう一度あの感触を味わいたい」
「感触?」

195 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 15:57:48.59 ID:+shN39gM
あやせは頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、
やがて合点がいったのか顔を林檎のように赤くすると、

「もうっ、どうしてお兄さんの頭の中は、いつもいかがわしいことで一杯なんですか!?」
「相手が他の女ならこうはならない。
 あやせ、俺がお前のことを愛しているからだ」
「よく臆面もなくそんな恥ずかしいことが言えますね!
 愛を穢らわしい欲望の言い訳に使わないで下さい!
 どうせその言葉も嘘のくせにっ!」

変態っ!死ねっ!と盛大に俺を扱き下ろし、
あやせは俺を引き離さんと、ずんずん歩調を上げていく。
ちょいと調子に乗りすぎたか。お兄さん反省。
あやせを追いかけようとしたその時、携帯が鳴った。
受信メール一件。差出人は赤城。

『高坂、あの子とはいつから付き合ってるんだ?
 田村さんは知ってるのか?
 またバイトが終わったら電話する』

赤城よ、お前の勘違いが現実だったらどれだけ幸せか。
俺は苦笑して携帯のフラップを閉じ、顔を上げた。

「あやせ?」

声は、俄に大きくなった囃子の音にかき消された。
御神輿が大量の担ぎ手と奏者を伴い、行く手の十字路を横断していく。
往来が元の混雑に戻ったとき――、あやせの姿はどこにも見えなくなっていた。


夏祭り(前)おしまい! 続くよ〜

196 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 16:13:03.72 ID:+shN39gM
>>171
最後の部分が欠けてました……
丸ごと訂正


「あやせたんすげー可愛い。鼻血出そう」
「今何か言いました?」
「浴衣、似合ってるって言ったんだよ」
「そ、そうですか?
 お兄さんなんかに誉められても全然嬉しくないですけど、
 一応は、誉め言葉として受け取っておきます」

あやせはフイと顔を背け、

「今日お兄さんと一緒に出かけるのは、桐乃に頼まれて、仕方なくですから。
 その点だけは勘違いしないで下さいね」
「へいへい」

俺のことは精々、ナンパ避けにでも使ってくれ。
お前の美貌には到底釣り合わない地味顔だが、それくらいの役には立つぞ。

「わたしはお兄さんのことが嫌いです。
 でも、卑屈なお兄さんはもっと嫌いです。
 わたしの隣を歩くなら、せめて、堂々と胸を張って下さい」

そ、そそ、それってつまり……。

「今日一日限りなら、お前の彼氏を名乗ってもいいってことか!?」
「もうっ、またそうやってすぐに調子に乗る……!
 お兄さんがわたしの彼氏?
 あ、有り得ないですから。妄想は大概にして下さいね」

これくらいの暴言は慣れたモンだ。

197 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 16:22:09.94 ID:+shN39gM
>>191の最後も欠けてました
たびたびすみません……
丸ごと訂正


入場時に預けていた荷物(あやせの金魚袋やハンドバッグ)を受け取り、
ベンチに腰掛けたところで、あやせはようやく俺の右腕を解放してくれた。

「少しは気分が落ち着いたか」

あやせは手のひらで涙を拭い、鼻を啜って、コクリと頷く。
流石にここで「お前ビビりすぎだろ」と笑う勇気は無かったさ。
のっぺらぼうくんの二の舞を演じるのはご免だしな。

「人間誰でも、これだけは絶対に無理、ってモンが一つや二つあるもんだ。
 それにな、お化けを全然怖がらないような女は可愛げがねえし、
 怖がってる演技をするような女はもっとつまらねえ、と俺は思う」
「……慰めてくれてるんですか?」
「まあな。
 でもよ、いくら怖かったからといって、お化けに暴力を働くのは反則だぜ。
 あやせがぶっ飛ばしたのっぺらぼう役の人には、後で一緒に謝りに行こうな」

あやせは悄げた様子で肯き、こんなことを訊いてきた。

「お兄さんは、お化けが怖くないんですか?」
「怖いに決まってるだろ」
「後ろからお兄さんのことを見てましたけど……全然、そんな風に見えませんでした」
「ああ、言い方を間違えたな。
 怖くて、驚かされて、同時にそれが楽しいんだよ」
「お兄さんが言うと、変態っぽく聞こえます」

お前がいつもの調子を取り戻してきてくれたようでお兄さん嬉しいよ。

「お化け屋敷に入るのは、端から恐怖体験が目的だろ。
 それを言うなら、お前はお化けが苦手なのに、どうしてお化け屋敷に行きたがったんだよ?」
「……小さな頃からの夢だったんです。
 このお祭りのお化け屋敷を踏破することが」

198 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 17:56:51.78 ID:I7f7Y0JP

やっぱりあやせは可愛いな
続きが楽しみだ

199 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 18:43:04.78 ID:TPPmMqwg
>>197
GJ!
続きが楽しみ

200 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 18:50:28.65 ID:d7p5bqwz
京介が何気に女殺し
こんなならあやせも惚れてまうやろ

GJ!!

201 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 18:53:10.90 ID:ki2PDj5G
なんだこの天使…可愛すぎてつらい
そして京介のタラシっぷりw

202 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 19:01:03.11 ID:gaHlN31w
ほらな。やっぱりあやせなんだって

203 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 19:14:43.96 ID:OsbqYPr8
最近あやせ続くな乙

204 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 19:38:14.17 ID:TZwaXB8n
ここにきてあやせフィーバー
桐乃とは一体なんだったのか

205 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 19:40:15.94 ID:9EHf7rM1
>>196>>170の訂正?

乙です!

206 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 19:52:28.52 ID:t0vQuume
エロネタですら使えない黒猫は間違いなくただの舞台装置

207 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 19:56:01.85 ID:TZwaXB8n
ああ?黒猫はエロネタに使う必要がないほどそれだけで価値があんだよ

208 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 20:00:08.01 ID:7rWwSpLv
SLディスったりキャラディスったり忙しいな糞が

209 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 20:01:54.03 ID:TZwaXB8n
加奈子が一番かわいい

210 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 20:14:50.39 ID:OsbqYPr8
ブリジットもカワイイ

211 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 20:46:12.12 ID:sXOKaOzA
みんなかわいい

212 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 21:09:08.15 ID:DJwiG0X7
加奈子は男前

213 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 22:08:22.79 ID:JS4kcvXZ
乙!
後編を期待してるよー
ちゅーぐらい期待してしまうのだがw

214 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 23:12:39.24 ID:GDIyd/en
ラッキースケベでアナルセックス期待

215 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 23:18:13.53 ID:wmSyW8tL
>>214
どんなラッキーだよw

216 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/29(水) 23:57:52.60 ID:uU6wB43o
>>195
GJ!
後編楽しみにしてるよー

217 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 00:01:18.14 ID:YYRNS3fQ
>>195
あやせたん最高!
後編も楽しみにしています

218 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 02:48:23.84 ID:aEQ7dO34
>>195 雰囲気がいいな。長くてもダレないし、続きが凄〜く楽しみ。

219 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 03:01:55.49 ID:Ndg3kB8D
桐乃に足を舐めさせたい

220 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 07:54:31.88 ID:h0I4Ojry
ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira014442.jpg

221 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 08:10:12.91 ID:U8h55NVM
>>215
オリ主が風呂場で滑ったら一緒に入浴していたタバサの尻穴にズブリ!


という超展開を見せたゼロ魔二次SSがあったなw

222 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 16:17:19.89 ID:KxG9KPdJ
>>220
これなんて漫画?

223 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:31:32.89 ID:5GMgwUVC
SLさんなんで来ないの
このスレ見捨てられちゃったのかな・・・

224 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:32:17.44 ID:aOh0HEJe
あやせかわいいのう

225 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:33:05.56 ID:NEYmA7JW
確かにあやせはかわいい
だが加奈子もかわいい

226 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:44:50.94 ID:7efzGgzu
久しぶりに来たらブリジットネタが無い……
仕方ないから小ネタ自給自足するか




「あの…マネージャーさん、この後ちょっといいですか?」
イベントが終わり、控室に戻ってきたブリジットが声を掛けてきた。
「ああ、お前を送ったらどこかで飯食って帰るだけだ。…そうだ、よかったら一緒に夕飯どうだ?バイト代も出たし奢るぜ」
「お…奢ってもらうなんてとんでもありません!ちゃんと自分の分はお金出します。それでよかったらご一緒させて下さい!」
ブリジットは慌てたようにパタパタと手を振りながら言うと、続けて
「私もちょうど、相談したい事があったし……。すぐ着替えてきちゃいますね」
……?なんだろう…。今、一瞬ブリジットの顔が曇ったような…。それに相談て……?

「痴漢!?」
「お、お兄さん声が大きいです!」
あれから、俺達はイベント会場を出ると、ブリジットが住んでいるマンションに程近いファミレスで食事を取る事にした。
食事を済ませ、ドリバーに食後のコーヒーを取りにいこうかと考えていると、ブリジットが神妙な顔で話し掛けてきた。
「お兄さん、ご相談したい事があります…」
その内容を聞いた結果が、さっきの俺のセリフというわけだ。俺は声を潜めながら改めて確認する。
「痴漢てあれだよな、電車とかバスで…」
ブリジットは、顔を赤らめながらコクリと頷く。
「それをブリジットは最近毎日されてる……」
コクコク
顔を俯かせさらに顔を赤くするブリジット。
何てこった…ブリジットがそんな目にあっていたなんて。あのすべすべしたふとももや、柔らかでふにふにしたお尻が痴漢に好き放題にされているなんて!許されざるよ!
「ブリジット行くぞ!」
俺は立ち上がるとレシートを掴み、開いた手でブリジットの手を握るとレジに向かった。
「あの、行くってどこに…」
「こういう話は他の人がいる所では話ずらいだろ。後はお前の部屋で聞かせてもらう!」

この後、俺はブリジットから綿密な事情聴取を行い、情況を再現しつつ対応策をアドバイスした。
その際に
『お…お兄さん……そんな所まで痴漢さんは指を入れたり……ひゃう!?』
『なんでベッドに押し倒すんですか!?電車の中にベッドはありませんよ!!ああっ!そこは今敏感になってるからダメェ…!』
ブリジットから苦情が出たような気がするが、気のせいだと思う。俺は実演を交えつつ、各シチュエーション毎の対応のしかたを教えただけだ。
だからベッドに横たわるブリジットは、実技で疲れ果て眠ってるだけだ。断じてイキ過ぎて失神してるわけじゃないぞ!



翌日、件の痴漢は捕まったとブリジットから聞いた。何でも中学生の尻を触った所を張り込み中の鉄道警察隊に捕まったそうだ。


227 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:52:32.75 ID:7efzGgzu
エロいブリジットは需要ないだろうと直接描写削ったら半端な内容になった気が……orz
やはりエロは必要か
ただ以前にコスプレネタもソープネタもやったから他に思いつかないや
独占欲が肥大化した京介に奴隷調教を受けるブリジットとか誰も見たくないだろうし……

228 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/06/30(木) 23:54:25.85 ID:aOh0HEJe

ただエロは載せとけ

229 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/07/01(金) 00:06:38.17 ID:yiWIaCcD
トンでもなく見たい乙

230 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/07/01(金) 00:40:18.26 ID:kQgPqwW1
          ..:::´::イニ三三三三≧ミ{ケル'
        イ=ミ^三≫:'^⌒^⌒^⌒^⌒^\
      /{{{麥}ル'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
        ::::::云彳:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:::'
      |::::::::{i:i:| ::::: / ::::::::::::::::::::::::::| ::::::::::::::: |::|
      |:::::::::{i:i|:::::::: ‥  l i ノ ̄ ̄`ヽ、―ニ 二
     !::::: {i:i|:::::::i|:::;∴. / ´`ヽ _  三,:三ー二
.      l::::::: {/|:::::::i|::::::i|:::(--  / ̄ ,   ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.       l::::::::(●)ミ,;∴.(  ...|  /!   
       l:::::::八 :::小. :::::::(`ー‐し'ゝL _  
         l::::::::::::\:::∧ ::(--‐‐'´}    ;ー------------
        |::::::::::::::|:丶:::> `ヾ-‐ーー'"  
        |::::::| :::::| :_{^⌒≧=-  __,,∠L:⊥..、
        |::::::|::::::/ \ ゚^'〜、{乃    }:::ヽ
        | ::::j/    ≫=- ._V厶.   }}::::::::.
.      厶≪         {{{麥}》   /{:::::::::}
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     /:::::::::::丶:::丶、____,/ / ∧ \:::::::∨:::::::::〉
     {:::::::::::::\}:::::::::⌒^⌒::{  / 丶  〉::::::::::::::::/

231 名前:名無しさん@自治スレで設定変更議論中:2011/07/01(金) 08:42:52.43 ID:NM26srkZ
うらやまけしからん

232 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 00:22:49.13 ID:EaBcZuhY
これだよ、これ
このスレはこうじゃなくっちゃ

エロは難しいからなあ・・・。
いつもエロ部分で止まってシャドーボクシングを始めてしまう。

233 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:54:21.64 ID:/Izap0qo
登場人物
高坂京介 高坂桐乃 ほか

語り
高坂京介


ゆるいエロしかありませんが、やってみます。

234 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:54:55.38 ID:/Izap0qo
俺・高坂京介は今、総武線に揺られている。都内、正確にはアキバ帰りだ。
また妹のパシリ乙、と思ったそこのあんた。残念だが間違っている。
なぜなら、俺の目の前では我が妹・桐乃も一緒に電車に揺られているからだ。
そう。断じて俺はパシリではない。荷物持ち要員なだけだ。悪いか?

今日の俺は桐乃様の命を請け、渋谷での限定発売アクセサリー、
秋葉原での同じく限定発売フィギュアの買い物に駆り出されたってわけだ。
アクセサリーもフィギュアも嵩張るものではないことに気付いたのは
千葉駅から電車に乗った直後だったということが俺の迂闊さを物語っている。
まったく、桐乃のヤツ、一人で行けっての。

だが‥‥‥アキバ帰りの今、桐乃はスゲー機嫌が悪い。
限定アクセサリーも限定フィギュアも入手できなかったからである。
おまけに電車はメチャ混み。桐乃の不機嫌は頂点に達していた。

「んああああー、ムカつく!」
「オイ、うるせーぞ。大人しくしてろ」
「うっさい! マジムカツク! アクセもフィギュアも買えなかったし、
 電車は混んでるし、アンタのせいだかんね!」
「お、俺のせいかよ!?」

限定アイテムを買い損ねたのは、桐乃が出かけるのに手間取って店に着くのが
遅くなったせいだ。女というのはセットアップに時間がかかるからな。
そして電車が混んでいるのは、混んでいる時間帯だからだ。俺のせいじゃない。
まあ、桐乃の理不尽さは今に始まったことではないから、腹も立たないけどな。
とは言うものの、今日の電車はとても混んでいる。俺にとってもキツイ。
華奢な桐乃は躯を他の乗客に押し潰されそうだ。桐乃が文句を言うのも解る。
仕方ねえ‥‥‥な。



235 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:55:22.81 ID:/Izap0qo
「ちょっ! ナニすんのよ!?」
「うっせ! 黙ってろ!!」

俺は桐乃を車両の隅に押しやり、そして桐乃の前に立ちはだかった。
こうして俺が壁になってやれば、桐乃も少しは楽になるだろう。
‥‥‥のはずだったのだが、他の乗客に押されて、俺と桐乃は完全な密着状態に。

「(な! ナニしてんのよ!? アンタ!)」
「(仕方ねえだろ! 混んでいるんだからな!)」
「(ドサクサに紛れて触る気!? このシスコン!)」
「(いいから黙っとけ! こんな時くらい兄貴の言うことを聞け!)」
「(超かわゆいアタシと地味なアンタが兄妹だなんてね! 全っ然似てないし)」

他の乗客を気にしつつ小声で会話をする俺と桐乃。桐乃の香水の匂いが香しい。
そして、気がつくと俺の左手は何やら温かく柔らかいモノに触れていた。

「(こ、このスケベ!)」

桐乃が物凄い顔で俺を睨む。どうやら俺の左手は桐乃の腰に侵攻していたらしい。
そして右手は‥‥‥? ハ、ハハハハ。桐乃の背中に回っていたよ、オイ。
ん? 指先に感じるこの感触は? ハハハハ。ブラジャーの留め具ですね!
指を動かせば外せるんじゃね?

ぷちっ

そう、こんな具合にな‥‥‥


‥‥‥外しちまったよ!! 必死に言い訳するが、これは事故だからな!
ああ、この辺で桐乃が怖い。きっと悪鬼の形相の筈だと思いつつ桐乃の顔を
見ると真っ赤な顔で震えている。痴漢に遭うとこんな顔になるのだろうか。
電車が揺れる度に俺と桐乃は密着を繰り返し、段々と桐乃の躯が熱くなる。
シスコンの俺が熱くなると言うのなら解るが、何で桐乃が熱くなるんだよ。

そんな桐乃と躯を密着させていると、不埒なことを想像してしまう。
これじゃ俺が痴漢そのものじゃねえか! 畜生、千葉駅まであとどんだけだよ?
体を火照らせて震える桐乃を抱きしめた格好で、千葉駅に辿り着くまでの時間を
ただ黙って過ごすしかなかった。

‥‥‥‥‥‥



236 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:55:48.84 ID:/Izap0qo
「どうしました? 大丈夫ですか?」

俺はその声で、半分意識が飛んでいた状態から正気に戻った。
声の主である凛とした感じの女性が俺の目を見据えてこう言った。

「お手数ですが、ご足労願います」

ご足労って、こんな混んでいる電車で‥‥‥って、いつの間にか空いてるし!
俺の意識が飛んでいる間に電車は千葉駅に滑り込んでいたようだ。
そして俺の目の前には、俺の左手を腰に、俺の右手を背中に回されて
惚けた表情の桐乃が居た。

―――さて、客観的に説明しよう。
混雑もしていない総武線の車内の隅に、茶髪の美少女が地味な男に追い詰められ、
両の手で抱きつかれている―――
こんな感じになる。文字にすれば痴漢の現場そのものにしか見えない。

「オイ? どうした? しっかりしろ!」
「ふえ?」

桐乃は惚けた表情から復帰せず、俺の呼び掛けにも要領を得ない。
ダメだコイツ、早く何とかしないと。さもないと、とんでも無いことになる!

‥‥‥‥‥‥



237 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:56:11.87 ID:/Izap0qo
とんでも無いことになる―――そんな俺の予感は的中した。
凛とした女性に俺と桐乃は千葉駅の鉄道警察隊まで連れて来られた。
桐乃は電車を降りてからここに着くまで、ずっと惚けた表情で俺のシャツの
裾を掴んだまま。おーい、正気に戻れー!
そして警察隊に着くと、俺は男性の隊員に、桐乃は凛とした女性の隊員に
それぞれ話を聞かれる。勿論、痴漢の加害者と被害者という立場でな。
まったく、冗談じゃねえよ!

「君はあの女の子に一体何をしていた?」

俺の親父を彷彿させる屈強そうな男性隊員が俺を問い詰める。
いや、元々は超満員電車でしたよ? 妹を守った結果がこうなのであって。

「大丈夫よ。何があったのか話してちょうだい」

相変わらず惚けた表情の桐乃は、凛とした女性隊員に問いかけられる。
何か嫌な予感がする。あの表情はエロゲでヘブン状態の時と似ているからだ。
もし桐乃が訳も解らず俺のことを痴漢だと証言したら一体どうなるのか?
桐乃! 嘘は言うなよ! ありもしないことを言うなよ!

「えっと‥‥‥電車の隅に押し込まれて‥‥‥腰と背中に手を回されて‥‥‥
 ブラのホックを外されて‥‥‥」

本当のことも言うな! 二人の隊員が俺を睨み付ける。最悪だ!
もしここで桐乃が「こんな人知らない」とか「逮捕して下さい」なんて
言いやがったら、俺の人生は終了するだろう。
どうせ終了するなら、いっそあやせの手で‥‥‥なんて発想が出てしまうのは、
俺の頭が混乱している証左に違いない。落ち着け俺。冷静になれ俺。

‥‥‥‥‥‥



238 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:57:01.71 ID:/Izap0qo
そうか‥‥‥冷静に考えれば俺たちって兄妹じゃないか。似てないけどな。
疚しいことなんて何も無い。正直に兄妹だと言えば大丈夫だろう。
うん、冷静になっているな、俺!

「じ、実は俺たちは―――」

本当のことを言えば大丈夫。
そんな高を括っていた俺が発した言葉に、さっきまで惚けた表情だった桐乃が
突拍子もない言葉を続けた。

「恋人同士なんです!」

うぇっ!? 今、何と!? 恋人同士? 俺と桐乃が? またその展開?
困惑した俺は桐乃の真意を問おうと、桐乃の目を見た‥‥‥が、
惚けた表情から完全復帰した桐乃が俺を睨む。そして、
『アンタ、黙ってなさいよ! 殺すよ?』という声が視覚を通して聞こえてきた。
まるで蛇に睨まれた蛙のように俺の動きは完全に封じられてしまった。

「本当? 脅かされているんじゃないの? 大丈夫よ。本当のことを話して」

この凛とした女性隊員は、俺をとんでも無い鬼畜野郎だと見ているらしい。
いや、脅されているのは俺ですから!

「本当に恋人同士です! 証拠だってあります!!」
「証拠って、オマエ?」
「京介ぇ〜? もしかしてぇ、まだ三回目のデートだからって照れてんのぉ?」

桐乃が悪戯っぽい表情で俺を見つめながら、甘ったるい声で話す。
うへええええぇ、キモチわりー!
それにしても三回目のデート‥‥‥だと? 偽デートの他にもあったか?



239 名前:『似てないふたり』:2011/07/02(土) 01:57:24.29 ID:/Izap0qo
「フヒヒ、しょうがないなあ。ほら、アレを見せてあげようよ!」
「アレ?」
「ほら、コレ♪」

そう言うと桐乃はバッグから携帯を取り出した。勿論、“あの”携帯だ。
ああ、そういうことか。仕方ねえ‥‥‥な。
俺は、これから展開されるであろう恥を忍んで“あの”携帯をポケットから出し、
桐乃の携帯と並べて机の上に置く。共に“裏返し”でな。
男性隊員と凛とした女性隊員は『俺と桐乃のらぶらぶツーショットプリクラ』が
貼られた二つの携帯を見比べると、俺たちを恋人同士だと認めてくれた。
二人の隊員がニヤニヤしているように見えたのは気のせいじゃあるまい。
チクショー! 恥ずかしいぜ! これだけでもひどい羞恥プレイ状態なのに、
桐乃のヤツは、

「見て下さい!」

と言って待ち受け画面まで披露しやがった。しかも―――

「さあ、アンタも見せなって!」

やめて! 死にたくなる!! お揃いプリクラの携帯という時点でアウトなのに、
妹の、いや『恋人の水着写真』を待ち受けにしているなんて見られたら、
千葉駅にはもう近づけなくなるぞ。警察24時モノで撮影されたら、
モザイクとボイスチェンジで処理されて放送されるに違いない。
バカップルなんて視聴者の興味を惹くには最高のネタだろうしな!

だが、そんな俺の心の抵抗も虚しく、俺の待ち受けが披露されてしまった。
ああ、俺の尊厳が‥‥‥

‥‥‥‥‥‥



240 名前:『似てないふたり』 ◆ACPRLbMxAk :2011/07/02(土) 01:59:37.40 ID:/Izap0qo
「よかったね〜♪ あのプリクラと待ち受けのお陰で助かったし」
「ああ、そうだな」

電車の中での破廉恥行為を窘められただけで“恋人同士”の俺たちは放免された。
あのプリクラが決定打になったのは否めない。感謝したいくらいだ。でも―――

「なんで、『恋人同士』なんだよ? 兄妹って言えば良かったじゃないか」
「だって、似てないアタシたちが兄妹と言ったって信じてもらえないし」
「ますます怪しまれる、か?」
「そう! 似てないんだから、恋人同士の方が通りが良いでしょ? ふふん」

妙に桐乃のテンションが高い。限定のアクセサリーとフィギュアを
買えなかったことでの不機嫌は、どこかに飛んでしまったようだ。

「オマエ、機嫌直ったのか?」
「ムカついてんに決まってるでしょ! 電車の中でアタシにあんなことして!」
「へ!?」
「『へ!?』じゃないっての! 超かわゆいアタシを抱きしめて、
 そして、アタシのブ、ブ‥‥‥ブラを外すなんて!!」
「あ、あれは事故だ!」
「ふーん、否定しないんだ。へへーん、この変態♪」

このクソアマ、俺の弱みにつけ込んで調子に乗りやがって。

「‥‥‥ナニ、ボサッとしてんの? さっさと腕を出して!」

何だよいきなり? と言いたかったが、警察隊の真ん前で揉め事はマズイし、
何よりも桐乃が不機嫌になることを恐れた俺が素直に出した右腕に
桐乃は自らの腕を絡ませる。

「オイ、何だよ!?」
「だって、アタシたち“恋人同士”じゃん? こうしないと変に思われるでしょ?」

俺は警察隊の中の人を横目に、抗うこともなく桐乃の行動を素直に受け入れた。
“あの”携帯を人前で披露し、恥ずかしいなんて感情は吹っ飛んでいたからな。
決してシスコンだから、ではないぞ!

「アンタに似てないアタシに感謝しなさいよね」
「はぁ?」
「似てないから、恋人同士って言い逃れが出来たんだから」
「へいへい。こんな地味な俺と似てなくて良かったなぁ」

俺はカドが立つ寸前ギリギリの悪感情を込めて言い放ってやった。

「ホント‥‥‥似てなくて‥‥‥良かった」

桐乃はそう言うと、俺の右腕を強く抱きしめた。


『似てないふたり』 【了】


241 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 02:24:13.03 ID:8WJzJ4M8
桐乃かわいい
おつ

242 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 02:25:40.85 ID:P3BN8LUd
>>240
前半に比べて落ちが単調すぎないか?会話もなんか事務的に読める・


243 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 02:58:20.81 ID:fcPA4cgZ
SLさんがいないスレなんて精々こんなもんだろうな。
ま、よく頑張ったほうだと思うよ。

244 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 03:16:12.06 ID:8WJzJ4M8
あやせかわいい

245 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 03:17:28.09 ID:wHS/GfKy
眼鏡外したバジーナさんかわいい

246 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 03:19:09.42 ID:wHS/GfKy
カズさんと食事に行ったら「結局はあやせだよな」って言ってた。
俺は違うと思うけど(笑)

247 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 04:34:12.32 ID:h5q3WooV
>>240
前から楽しく読んでたけど、最近クオリティ落ちてるぞ
もう少し真面目に書け

2点

248 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 05:23:48.19 ID:it9nkGkw
なんだ2点って? 3点満点か?

249 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 05:45:07.15 ID:WOvDue3r
>>247
おいおい
本当のことを言うなよ
バカな作者が意地になって、もっとつまんないの投下したら洒落にならんwww

250 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 06:35:12.18 ID:LD/Hs/3m
>>233-240
GJ! 桐乃かわいいw
あと、荒らしはスルーで。

251 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 08:09:48.90 ID:ouR+YdIa
荒らしはスルーしろ!

252 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 08:17:54.05 ID:zuNs2pbQ
>>240
桐乃かわいい!

253 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 08:20:50.00 ID:wHS/GfKy
あやせェ

254 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 08:20:51.71 ID:RFsu0RP3
乙おつ
面白かったよー

255 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 08:37:17.12 ID:reR0ga+V
おつ乙
桐乃蕩けるなw

荒らしは無視な

256 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 08:45:13.36 ID:wHS/GfKy
作者も俺妹くらい当てりゃ今後の生活に困らないんだろうな
羨ましい

257 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 10:34:07.02 ID:X5sACPor
ぐっじょぶ

258 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 :2011/07/02(土) 10:38:47.51 ID:SMVbNa35
乙!
恋人として見られて上機嫌の桐乃可愛いよ

259 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 11:07:58.66 ID:4mCCS2wm
桐乃かわえぇ

260 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 11:19:19.52 ID:lUlzk87w
>>247
○「自分の嗜好に合わないSSなら黙ってスルーすること」


261 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 11:21:49.69 ID:4mCCS2wm
>>260
○荒らし、煽りは勿論スルー


262 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 11:34:22.14 ID:NEU+bUDM
なんか自演くさい単発レスが増えるんだよな
この作者の旗色が悪くなるとwww

263 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 12:27:59.58 ID:wHS/GfKy
格闘技やってる自演乙も俺妹とか見てんのかな

264 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 13:10:13.84 ID:E1jWBgq0
>>262
その作者はそもそも専用スレがあるのでここでは話題にしないで

265 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 13:59:19.54 ID:NEU+bUDM
>>264
お前、読解力皆無のバカだろ?

266 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 14:34:46.03 ID:lrTq25mL
SLさん、他の作者を貶めるのはやめてください

267 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 14:42:23.88 ID:wHS/GfKy
つまりあやせが一番かわいいって事だよな

268 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 14:44:49.17 ID:KVCipSDH
あやせとエロの親和性は異常

269 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 15:36:51.96 ID:hr6vI6PH
原作中では一番遠ざけているのに…いやだからこそか

270 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 16:00:25.22 ID:LD/Hs/3m
ハマると抜け出せない性癖だと自覚しているからこそ、エロに対して過剰に警戒するんだよ

271 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 17:10:19.26 ID:X5sACPor
ごり押し対象のキャラがあやせじゃなくて心底助かった

272 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 18:46:04.51 ID:efjr40xS
・「あやせと京介の夏祭り」
>>195の後編
・言うまでもなくあやせ×京介
・非エロ
・30レス程度

投下してもおkでしょうか?

273 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 18:52:48.45 ID:BFB3YxHe
おk

274 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:04:13.02 ID:lUlzk87w
>>261
>>247は荒しだったのか。
了解した。

275 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:06:50.47 ID:efjr40xS
【後編】

はぐれちまった――その事実を噛み締めた次の瞬間には、
俺は携帯のメモリからあやせの連絡先を呼び出し、通話ボタンを押していた。
無機質な電子音が反復し、

「もしもし、あやせか?」
「お兄さん?今どこにいるんですか?」
「俺はあやせとはぐれた場所から動いてない。
 あやせの方こそどこにいるんだ?」
「分かりません。周りに見えるものも、似たような露店ばかりで、特徴がなくて……」

か細い声を聞きながらも、俺は安堵していた。
携帯で情報を共有しながら探せばすぐに発見できると、高をくくっていたのだ。

「とりあえず、何でもいいから目に着いたものを、」
「お兄さん?何を言ってるんですか?」

脈絡の無い遮り方から、最悪の事態を予想するのに、そう時間はかからなかった。
まさか――。

「俺の声が聞こえてないのか?」
「お兄さん、わたし、携帯の充電が……」
「あやせ、とりあえずそこから動くな。
 両方が好き勝手動いたら、入れ違いになることがあるかもしれない」

276 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:07:34.75 ID:efjr40xS
ふつりと通話の線が途切れる。
俺の言葉が届いたかどうかは分からず終いで、
どちらかと言えば聞こえていなかった公算が大きい。
ああ、クソ。
俺を置いて勝手に歩調を早めたあやせに、
折悪しく二人の間に割って入った御神輿に、
そしてあやせとはぐれる可能性に思い至らず、暢気に携帯を弄っていた自分に腹が立つ。
俺は地理に暗い頭をフル回転させて、
おそらくはあやせが『俺とはぐれたことに気づいた場所』に赴き、

「朝顔模様の黒い浴衣を見た、俺と同い歳くらいの女の子を見ませんでしたか」

と聞き込み作業を開始した。
が、色好い反応は梨の礫、誰もが迷惑そうな顔をして、首を振るか、無視するか。
人波は休みなく流れ、時々刻々とあやせの目撃情報は失われていく。
巡回中の警官にあやせの人相と俺の電話番号を伝え、
見つけたら連絡してもらうようにお願いしたが、
往来にあふれかえる浴衣姿の女の数を考えると、とても期待できそうにない。

どうして、はぐれた時のために待ち合わせ場所を設定しておかなかった。
どうして、無理矢理にでも手を繋いでおかなかった。

後悔の濁流が逆を巻く。
俺の主観を抜きにしてもあやせは美人だ。
そんなあやせが一人、不安げな顔をして彷徨っていたら、悪漢の良い標的である。

277 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:08:18.73 ID:efjr40xS
「絶対見つけてやるからな」

独りごち、駆けだした。
焦燥と熱気で既に全身は汗みずく、顎先から汗が滴り落ちたが、今は拭っている時間も惜しい。
唯一の救いは進路を邪魔するヤツが誰もいないことだった。
ハッ、女児向けアニメのヒロインを脇に抱えた汗まみれの男が全力疾走してきたら、そりゃあ誰でも道を譲るわな。
涼やかな眉宇。玉石のように濡れ光る両の瞳。
高い鼻梁。薄紅色の唇。処女雪の如き白い肌。
あやせの顔を脳裏に描きながら、大通りを何度も往復する。
……いない。
御輿の通り道になっている、脇道も探してみた。
喧噪を嫌う家族連れや老人と、寂れた屋台しか目に着かなかった。
どこか、見落としている場所でもあるのか。
まさか、あやせはもう……。
最悪の可能性が脳裏を過ぎり、背筋を冷たいものが滑り落ちた。
その時だった。

「イヤですっ!」
「そうは言ってもよぉ、嬢ちゃん。
 いい加減に折れてくれねえと、俺たちも困るんだわ」
「な、ちいっとばかし、車に乗るだけだからよ」

高く澄んだ拒絶の声と、低く野太い猫なで声。
視線を向ければ、路傍に小さな人集りが出来ていた。
屈強な男たちが人壁を造り、その近くには黒塗りのライトバンがアイドリング状態で停止している。

278 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:08:50.76 ID:efjr40xS
思考が働くよりも先に、足が動いていた。
顔を見るよりも前に、名前を呼んでいた。

「あやせっ!」

ラッセルの要領で人壁をかき分け、輪の中心に躍り出る。
いた。やっと見つけた。

「お兄さんっ!」

憂いを帯びていた表情に、ぱっと大輪の花が咲く。
矩形の御影石に腰掛けていたあやせが、立ち上がりかけ、姿勢を崩す。
俺は駆け寄り、体を支えてやりながら、

「大丈夫か?何もされてないか?」

あやせはふるふると首を横に動かし、

「でも、転んで、足を挫いてしまったんです。
 お兄さんを探して走っているときに、下駄の鼻緒が切れてしまって……」

浴衣の裾から覗いた右足首は、確かに、少し腫れているように見えた。
怪我を庇いながら歩くことはできても、走って逃げることは難しそうだ。

279 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:09:41.21 ID:efjr40xS
しゃーねえ、ここは一丁腹を括るか。
俺はあやせを一人で立たせ、居並ぶ悪漢どもをギロリと見据えた。
どいつもこいつも鋳型で作ったみたいに、豪腕、巨体、極道面の三拍子揃ってやがる。
土下座して見逃してくださいと懇願しても、たぶん、一顧だにしてくれないだろう。
無論、そんな情けねえマネをする気は端からないがな。
だって、あやせが見てるんだぜ?
それにさ、マンガの主人公みてえなセリフ、一度言ってみたかったんだよな。
『逃げろあやせ、こいつらの相手は俺がする!』ってな感じのセリフをよ。
俺は見よう見まねのファイティングポーズを取り、

「逃げろあやせ、こいつらの相手は――」
「遅かったじゃねえか兄ちゃん、こっちはアンタのことずっと待ってたんだぜ」
「へ?」

朗らかな笑みを浮かべた男どもに、べしべしと肩を叩かれる。
痛い、あの、マジ痛いっす、いやホントマジ痛いんで勘弁してください。
クスクス笑いに気づいて振り返れば、
おいおい、俺の決死の呼びかけが聞こえなかったのか?
あやせはその場から微動だにしちゃいなかった。

「ふふっ、おかしい」

おかしいって何が?

「お兄さんは勘違いをしています。
 その人たちは、お祭りの運営をしている方々ですよ?」

……マジで?

280 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:10:19.38 ID:efjr40xS
「襲われてたんじゃなかったのか?」
「まさか。逆です。
 わたしが足を挫いて動けなくなっているところを、助けて頂いたんです」

愕然としたね。
人聞きの悪いこと言うでねえ、と呵々大笑する男たち。
年配の方が言った。

「足は見た感じ大事なさそうだが、こんなところでジッとしてるよりは、
 応急医のいる休憩所で、看てもらったほうがいいと思ってなあ。
 歩かせるのも酷だと思うて、車を手配したんじゃが、
 嬢ちゃん、絶対あんたが迎えに来てくれる言うて、テコでも動かなかったんじゃ」

手配した車とは、あのライトバンのことだろう。
冷静になって見返せば、男たちは全員、同じ町章入りのシャツを着ていた。
拉致寸前の状況は、完全な俺の脳内妄想だったらしい。
安堵と同時に、顔から火が出そうなほどの羞恥に見舞われた。
身を隠せる穴はどこにもなく、掘ろうにも悲しいかな、アスファルトの固さは如何ともし難い。

「さて嬢ちゃん、いい加減、休憩所に行かねえか。
 望みどおり兄ちゃんと合流できたんだ、一緒に乗りゃあいい」
「いえ、本当にお気遣いなく。
 ゆっくり歩く分には問題ありませんし、
 何より、休憩所で時間を潰していたら、
 せっかくお祭りに来た意味がなくなっちゃいますから」

281 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:11:40.01 ID:efjr40xS
「……そうか。
 それじゃあ俺たちは見回りに戻るからの、後は任せたぞ、兄ちゃん」
「う、ういっす……痛てて」

最後に馬鹿力で俺の肩を叩き、男衆は散っていった。
はぁ、と深い溜息を吐いて、御影石に座り込む。
傍らにはブルーハワイのかき氷があった。
誰のだ、と尋ねると、

「さっきの方たちが、わざわざ買ってきてくれたんです」

至れり尽くせりだなオイ。

「これ、ちょっと食べてもいいか」
「か、構いませんけど……」

返事を訊くや、俺は一気にかき氷をかきこんだ。
うめー。冷てー。喉の裏側の痛みがたまんねー。
走り通しで疲弊しきった体に、水気と甘味の染みること染みること。
あやせは唖然たる面持ちで俺の食べっぷりを眺めていたが、やがて切なげに目を細めると、

「……すみませんでした」
「なんでお前が謝る?」
「あのとき、わたしがお兄さんから離れなければ、こんなことにはなっていなかったでしょう?」
「そもそも俺が余計なことを言ってなけりゃ、お前が俺から離れようともしてなかったはずだぜ」
「それを言うなら、お兄さんのセクハラ発言を軽く聞き流せなかったわたしに原因があります」
「いいや、調子に乗りすぎた俺が悪かった」
「いいえ、悪いのはお兄さんを調子づかせたわたしです」
「あやせに責任はねえよ。聞いて驚け。
 俺はお前が近くにいるだけで自然にテンションが上がってくる、特異体質の持ち主なんだ」

282 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:12:44.27 ID:efjr40xS
議論は果てなく平行線を描くかに思えた。
が、あやせの一言が終止符を打った。

「じゃあ、言い方を変えます。
 迎えに来てくれて……ありがとうございました」
「お、おう」

謝罪の言葉は受け取れなくても、感謝の言葉なら受け取れる。
あやせはそっぽを向きつつ、

「一人になってからも、鼻緒が切れて身動きが取れなくなってからも、わたしは心細くありませんでした。
 お兄さんなら絶対にわたしを見つけてくれるって、信じてましたから」
「あやせ……」
「だって、前に言ってたじゃないですか?
 わたしの匂いなら1キロ先からでも分かる、とか。
 神経を研ぎ澄ませればわたしの心が読める、とか……」

わ、我ながらキモイな。
けど、そこまで言ったことあったっけ?
セクハラの限度は弁えてるつもりだが、ハッキリと否定できないのが俺が俺たる由縁である。

「まぁ、真面目な話……お前が危ない目に遭ってなくてよかったよ」
「お兄さんは、わたしがあの人たちに連れ去られかけていると思っていたんですよね?」
「恥ずかしながらな」

283 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:13:20.09 ID:efjr40xS
「もし本当にお兄さんの想像どおりだったら、どうしていたんですか?」
「どうしていたも何も、そりゃあ、お前を助けようと頑張ってたんじゃねえの。
 つーか、あの輪の中に飛び込んだ時点で、逃げ場はどこにも無かったんだ。
 最初から覚悟は出来てたさ」
「お兄さんには勝てる自信が?」
「いいや、からっきし。
 俺の親父は警官で、しかも柔道の有段者でさ。
 ガキの頃に基礎だけしっかり叩き込まれたんだが、今じゃ全然思い出せねえ。
 喧嘩に関しちゃ、俺は素人だよ」
「じゃあ覚悟というのは、ぼこぼこにされる覚悟……?」
「多勢に無勢でも、時間稼ぎくらいできるだろ。
 その間にお前が逃げられたらいいな……って、そんなのは今だから言えることだよな。
 あの時は何も考えちゃいなかった。無心の行動ってヤツだ」
「はぁ。お兄さんって、本当に馬鹿ですね」

お前な、ここは普通「お兄さんカッコイイ!素敵!」って言う場面じゃねえの?

「いいえ、馬鹿です。
 相手が相手なら、大怪我を負わされていたかもしれないんですよ?
 周りの誰かに応援を求めないで、一人で突っ込んでくるなんて……。
 ふふっ、大馬鹿以外の何者でもありません」

バカバカうるせぇな。
しかし辛辣な言葉とは裏腹に、あやせは妙にご機嫌である。
俺を罵倒できるのがそんなに嬉しいのかね。
お兄さんちょっと複雑な気分だわ。
というわけで(?)、俺はついさっき気づいた衝撃の事実に、
いささかセンセーショナルな脚色を加えて披露することにした

284 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:13:56.25 ID:efjr40xS
「ところでこのかき氷、あやせの食べ残しだよな?」
「急に何を言い出すんですか?」
「食べ残しだよな?」
「そうですけど、それが何か?」

それが何か?それが何か、だと?
俺があやせの食べ残しを食べている。
それが意味するところは一つ。

「……間接キスだ」

ふははは。今まで失念していたのだろう。
ついうっかり、俺にかき氷を食べる権利を与えてしまったのだろう。
が、後悔しても時既に遅し!

「そうですね。お兄さんの言うとおりです」
「え?」
「それで、間接キスだから、どうかしたんですか?」

オー、ジーザス。俺は夢を見ているのか?
でなければ現代に起こった奇跡を目の当たりにしているか、だ。
あやせが俺との間接キスを認めている?
まさか。いやいや、有り得ない。
怒りで顔を真っ赤にしたあやせに、「変態!」「死ね!」とエッジの効いた暴言と暴力で虐げられるのが、
俺の描いていた未来予想図(的中率97%)だったというのに……いったい何がどうなってやがる?

285 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:14:46.23 ID:efjr40xS
「少しは、多めに見ることにしたんです」

あやせは顔を怒りで真っ赤にする代わりに、ほんのりと頬を桃色に染めて、

「金魚すくいのコツを教わったり、お化け屋敷に付き合ってもらったり、
 はぐれて身動きの取れないわたしを探しにきてもらったり……。
 今日一日で、お兄さんにはたくさん借りが出来てしまいました。
 ですから、少々の変態的行為には目を瞑ろうかと。
 あくまで今日一日だけ、ですけど」

あーハイハイ、そういうことね。
つーか、何でもないことのように言っておきながら、
やっぱりあやせの中では、間接キスは変態的行為に属してるのな。
俺はかき氷の空容器を近場のゴミ箱に放りつつ立ち上がり、

「どこまでセーフで、どこからアウトなんだ?」
「そうですね……」

あやせは人差し指を唇に添えて思案のポーズになり、

「お兄さんからわたしに触れるのはNGで、わたしからお兄さんに触れるのはOKです」

なんだそりゃ。
意味を理解できないでいると、早速あやせは宣言を実行に移してきた。
右腕が手繰り寄せられる。
お化け屋敷の終盤、暗闇の中でしていたように、
しかしあの時よりも締める力は優しく、あやせは俺と腕を組んだ。

286 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:15:18.86 ID:efjr40xS
「か、勘違いしないで下さいね」
「挫いた足首に負担をかけないようにするため、だろ?」
「……物わかりが良くて助かります」

正鵠を得ていたにも関わらず、あやせの唇はツンと尖っている。
やはり詮無い理由があるとはいえ、俺の腕を借りることには、忸怩たる思いがあるんだろう。
柔らかな感触に諸手を挙げて大喜びしたいところだが、
今は余計な刺激を控え、寡黙な杖役に徹するのが得策か。
可惜身命、触らぬ神に祟りなし。

「……ところで、足首はどのくらい痛むんだ?」
「ほんの少しです。お兄さんを支えにしていれば、ほとんど痛みは感じません」
「それでも、痛みは歴とした体の危険サインだぜ。
 当て所なく練り歩くのは、やめといた方がよさげだな」

ぬいぐるみの位置を整え、腕時計を見る。
九時三十分前、か。
ちょいと気が早いかもしれないが、

「花火が見える場所に移動しないか?」

早く行けば見晴らしの良い場所が取れるかもしれないし、
あやせが座って休めるようなベンチが見つかるかもしれないぜ。

「……実は、さっきの方々が教えてくれたんですけど……」

とあやせは耳許に囁いてきた。

287 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:15:56.93 ID:efjr40xS
「な、なんだ?」

耳たぶに触れる吐息がこそばゆい。

「地元の方も知らない、秘密の見晴台があるそうです。
 お兄さんを待っている間に、地図を書いて頂きました」

あやせはハンドバッグから半紙を取り出し、見せてくれた。
限りなく抽象化された街の縮図を読み解く。

「ここから、そう遠くないみたいだな」

街路の混雑、あやせに配慮した徒歩を加味しても、20分ぐらいで着けそうだ。
しっかし……本当にそんな場所があるのかね。

「あの人たちは、嘘を吐くような人たちじゃありません」
「嘘だとは思っちゃいねえが、ただ、なんとなくイメージが出来なくてな」
「何でも、一見すると入るのを遠慮したくなるような建物らしいですよ」

どんな建物だよ。魔窟か?
あやせはクスリと笑んで言った。

「とりあえず行ってみませんか。一件は百聞に如かずとも言いますし」

さて、そんなこんなで歩くことしばらく、
人気のすっかり希薄な脇道をさらに逸れ、
街灯の明かりさえ乏しい小径を突き進み、
野良猫の寝床と化した隘路をそろりそろりと通り抜けた俺たちの目前に現れたのは、
想像していた魔窟よりもずっと現実的かつ退廃的な建物であった。

288 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:16:31.60 ID:efjr40xS
「廃ビル、ですね」
「廃ビル、だな」

かれこれ十数年は放置されている感じだな、この廃れ具合は。
入り口は当然のことながら閉鎖されていて、
駄目元で裏手に回ると、搬入口の扉の鍵が開いていた。
中は暗く、埃っぽかった。
採光窓から差し込む月明かりが、唯一の光源だった。

「どうする?」
「どうするって、ここまで来たのに引き返すんですか?」
「や、お前が心配で聞いてんだよ。あやせは怖くねえのか?
 雰囲気的に、マジモンのお化けが出てもおかしくないような場所だぜ、ここ」
「ふふっ、わたし、気づいちゃったんです。
 どんなに怖いお化けでも、触れられるなら、暴力でなんとかなるってことに」
「お前はもう二度とお化け屋敷に入るな」

調度の類が何もない一階を見回る。
当然のことながらエレベータの電源は落ちていてた。

「屋上に出るには、階段を使うしかなさそうですね」
「でも、それじゃあお前の足がもたないだろ」

平素の徒歩と階段の上り下りじゃ、かかる負担も段違いだ。

289 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:17:22.06 ID:efjr40xS
「どうしましょうか」

俺の腕を掴むあやせの手に、力が籠もる。

「方法はふたつある」
「ふ、ふたつもあるんですか?」
「まあな。知りたいか?」
「知りたいです。それで本当に、屋上に上がれるなら」

俺はもったい付けて言ってやった。

「あやせ、俺にお姫様だっこされるのと、おんぶされるのと、どっちが良い?」

「どっちもイヤ」――予想していた返事はいつまでも聞こえずに、

「……おんぶの方が、まだマシです」

声の震えから、相当、苦渋の決断であったことが伺える。
俺は組んだ腕を解き、あやせの前に進み出て、身を屈めた。

「言っとくけど、下心はねえからな」
「嘘つき」

見破られるの早ッ!

290 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:18:07.40 ID:efjr40xS
見破られるの早ッ!
取り繕っても仕方ないと判断し、開き直ることにする。

「……ああ、嘘だ。
 けどな、女の子を心の底から荷物扱いできる野郎なんていねえっての」

相手がお前なら、なおさらな。

「ほら、さっさと乗れ。花火が始まっちまうぞ」

刻限を知らせたことが上手く作用したのだろうか、
あやせは怖々といった様子で俺の肩に触れ、徐々に体を預けてきた。
後ろに手を回し、薄い浴衣の生地に包まれた太股を支える。
豊満な果実が二つ、背中で潰れるような感覚があった。
あやせは何も言わなかった。
俺も何も言わなかった。
実際に階段を昇り始めると、あやせの感触を味わう余裕が無きに等しかった、というのもある。
とにかく一歩一歩が辛い。苦しい。
おっと、別にあやせの体重にケチを付けているわけじゃねえぞ。
俺は自分の体力不足を嘆いているだけだ。

「……大きいですね、お兄さんの背中」

と不意にあやせが言った。

「そりゃあ、女のお前と比べると大きいだろうよ」
「そういう意味で言ったんじゃありません」

じゃあどういう意味で言ったんだ、と尋ねようとしたとき、強烈な既視感が脳裏を掠めた。
この状況、この会話。
全てに共通する出来事があったはずだ……。

291 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:19:16.13 ID:efjr40xS
「ああ」

思い出した。

「桐乃だ」
「桐乃がどうかしたんですか?」
「昔々に、家族で祭りに出かけたことがあったんだ。
 どこの祭りかは忘れちまったが……とにかくすごい混雑で、
 気づけば、隣にいるはずの親父とお袋がいなくなってた。
 手を繋いでたおかげで、俺と桐乃ははぐれずにすんだ」
「それから、お兄さんと桐乃は?」
「必死に親父たちを探したよ。
 けど、あの頃の俺はガキで、桐乃はまだ小学生にもなってなくてな、
 死ぬほど心細くて、俺が泣きそうになったとき……桐乃に先を越された。
 道ばたに座り込んで、わんわん泣いてたっけ、あいつ。
 それを見てたら、『俺がなんとかしねえと』って気持ちが沸いてきてさ、
 俺は桐乃をおぶって、迷子センターを目指したんだ」

道中、桐乃は言った。

『お兄ちゃんのせなか、おおきいねぇ』

俺はこう答えた。

『桐乃の背中にくらべたら、大きいに決まってるだろ』

すると桐乃は、俺の背中をぽかぽかと叩いてこう言った。

『そういうイミで言ったんじゃないもん。
 お兄ちゃんにおんぶしてもらったら、あんしんするってイミだもんっ』

292 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:20:00.21 ID:efjr40xS
言葉の意図が同じだとすると、もしかしてあやせも、
あの時の桐乃と同じ感想を懐いてくれているのだろうか。
はは、まさかな。
そいつは希望的観測が過ぎるぜ、京介。

「……羨ましい」
「何か言ったか?」
「じ、時間が惜しい、と言ったんですっ。
 お兄さんは階段を昇ることに専念してください」

ほらな。
やっぱりあやせは、一刻も早いおんぶからの解放を望んでいるんだよ。
俺は気合いを入れ直すべく、あやせを抱え直した。

「きゃっ……」

艶やかな声が漏れた。
俺の手は計らずとも、あやせの水蜜桃の如きお尻をわしづかみにしていた。
いや、マジでわざとじゃないって。
揉みしだきたい欲求と格闘すること数秒、

「お兄さん?」

冷えた声が耳朶を刺す。
ああ、分かってる。聞き苦しい言い訳をする気はねえよ。
疑わしきは被告の"不利"なり。
情状酌量の余地はなし。
新垣大法廷の判決は、今日も今日とて事もなし。

293 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:21:28.62 ID:efjr40xS
「……本当に展望台みたい」
「……最高の見晴らしだな」

屋上に通ずる扉を開くと、二人して思わず息が漏れた。
痛む後頭部を撫でさすりつつ(原因が何かは言わずもがな)錆びた鉄柵に歩み寄れば、
眼下には祭りの賑わいが、彼方には夜空を写し取ったかのような、河川の暗い輝きが見えた。
高さ、距離ともに、望楼としては申し分ない。
それから、夜風を浴びて待つこと数分、

「あっ」

と傍らのあやせが喉を鳴らした。
黒洞々とした満天に、色鮮やかな花が咲く。
遠雷のように低い音が、わずかに遅れて鳴り響く。
綺麗だな、と感心する一方で、桐乃も見たかっただろうな、と家で寝込んでいる妹のことを思った。
眺めている間は腕組みをする必要がないと思ったのか、あやせの腕から力が抜ける。
一抹の寂しさが去来し、次の瞬間には、戸惑いが胸中を占拠していた。
手の甲に触れるあやせの手。
反射的に握ると、ややあって、あやせも握りかえしてくる。

「わたしは――ときどき分からなくなるんです。
 お兄さんが、悪いお兄さんなのか、良いお兄さんなのか」
「今のところ、俺はあやせにどう思われてるんだ?」
「教えません。教えたら、お兄さん、きっと調子に乗っちゃいますから」

その言い方だと、答えを言ってるも同じだぜ。
まあ、ちっとは見直してくれたってことか。

294 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:25:29.23 ID:efjr40xS
あやせは言った。

「お兄さんはどうして……最初に会った頃のお兄さんを演じ続けなかったんですか?」
「最初に会った頃のお兄さん?」
「ですから、その……常識的な妹想いで、気持ち悪いことを言わない……普通のお兄さんです」

裏を返せば、今の俺は倒錯的なシスコンで、
口を開けばセクハラ発現をする変態兄貴だと思われている、ということだ。
所詮は自分で蒔いた種、望み通りの結果だがな。
俺は言った。

「良い部分と悪い部分、全部ひっくるめて俺なんだよ」
「悪い部分を、わたしの前で隠すことはできるじゃないですか。
 そうすればわたしも……わたしだって……」
「あやせは誰かに嘘を吐かれるのが、何よりもイヤなんじゃなかったのかよ」
「それは、そうですけど」
「俺が常に良いお兄さんでありつづけるのは、俺がお前に嘘を吐き続けるのと同じだぜ」
「…………」

黙りこくるあやせ。
俺はこれからも、妹と愛の証を収集する変態として、臆面もなくセクハラ発言する畜生として生きていく。
桐乃とあやせの関係を繋ぐための、必要不可欠な人柱として。
数秒の沈黙をおいて、あやせは花火の音圧に潰されそうなほど、小さな声で呟いた。

「……ひとつ、お兄さんにお願いがあります」
「なんだ?」
「今から花火が終わるまでの記憶を……後で必ず忘れると、約束してもらえますか」

そいつは無理な相談だな、と思いつつも、
切実な眼差しを向けられて、俺は首を縦に振ってしまう。

295 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:27:49.22 ID:efjr40xS
双眸に目もあやな夜空の光を浮かべながら、あやせは言った。

「……わたしは、お兄さんみたいなお兄さんが欲しかった。
 困っているときに、いつも助けてくれる……そんなお兄さんがいる桐乃が、羨ましかった」

冗談はよせよ、俺なんかを兄に持てば、度の過ぎた愛情を注がれた挙げ句、
近親相姦モノの薄い本を一緒に集めるハメになるんだぜ――そう言いかけて、改める。

「お前が桐乃の親友でいてくれる限りは、お前も俺の妹みたいなモンだ」
「それだけ、ですか?」
「どういう意味だ?」
「お兄さんにとってわたしは、それだけの存在でしかないんですか?」

おかしいな。
俺の自惚れじゃなけりゃ、あやせがそれ以上の関係を望んでいるように聞こえるんだが。

「わたしのことを愛してる、とか……わたしと結婚したい、とか……全て、冗談だったんですか?」
「そ、それはだな……」
「桐乃を性的な目で見ているお兄さんが本当のお兄さんなら、
 その言葉も本心から出たもの、ということになりますよね」
「う……」

痛いところを突いてきやがる。
一方の命題を真と言えば、他方の命題もまた同様に真と認めることになる。
自分が言った嘘に、自分自身が縛られる……まるっきり狼少年の末路じゃねえか。
答えに窮する俺に、あやせは静かに言葉を重ねた。

296 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:30:06.69 ID:efjr40xS
「わたしは嘘が嫌いです。大嫌いです。
 でも、自分のために吐く嘘じゃなくて、誰かのために吐く優しい嘘になら……騙されても構いません」

あやせは暗にこう言っていた。
二つの命題のうち、一つは確実な偽であることを知っています、と。
何の因果か俺は今、妹を性的な目で見ているという体面を保ったまま、
あやせに告白してオーケーをもらえるかもしれない状況に立っていた。
なのに。

「…………」

好きだ、の一言が出てこない。
馬鹿野郎、さっさと言え。
愛している、結婚しよう、と軽々しく求愛していたのはどこのどいつだ。
不意に空気の震えが止まり、痛いほどの静寂が辺りを満たす。
時間切れ、か?

「……お兄さんの意気地なし」

落ち着いた非難の声が、胸に深く突き刺さる。
俺は恐る恐る隣を見て……次の瞬間に、かつん、と前歯に何かがぶつかる音を聞いていた。
ふっくらとした感触と、湿った体温を俺の唇に残して、あやせはそっと体を離す。
俺が嘘つきなら、お前は天の邪鬼だ。
華やぐ笑みで「死ね」と言い、蔑みながらキスをする。

297 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:34:10.86 ID:efjr40xS
「……っ……はぁ……」
「おま……花火はとっくに終わって……」
「いいえ……まだ、終わってません……」

ひゅるるるる、と甲高い音が空を裂き、あやせの言葉を証明する。
無数の火花が描いたのは、祭りの終わりを締めくくる『Fin』の文字。
あやせは半ば惚けた表情で言った。

「……約束、守ってくださいね」

記憶を任意に消去できるほど、人間の脳味噌は便利に出来ちゃいない。

「もし桐乃に話したりしたら……」

きらり、とあやせの目が光る。
俺は慌てて言った。

「言わねえっての。
 言ったらお前よりも先に、桐乃本人から殺されそうだ」

全ては、真夏の夜の白昼夢。
それを否定する材料は、今や唇に残った感触のみで、それさえも時間が経てば消えてしまう。
その前に、と俺は言った。

「好きだぞ、あやせ」

今更ですか、とあやせは答えた。

「知ってますよ、お兄さん」

機を逸した愛の言葉は、至極あっさりと聞き流された。
それでも、その時あやせが浮かべた笑顔を――俺は一生、忘れないだろう。

298 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:35:38.06 ID:efjr40xS
さて、この話にはオチがある。

それから俺たちは睦言を語り合い、
口づけを交わす間に生まれたままの姿になり、屋上の一角で情事に耽る……こともなく、
風上から運ばれてきた、火薬の臭いに追われるようにして、屋上を離れた。
あやせに腕を貸しつつ駅に辿り着き、
家からの最寄り駅で、迎えの車にあやせを預け、
自転車を漕ぎ漕ぎ自宅に到着、シャワーで汗を流して今に至る。
コンコン。

「……誰?」
「俺だ。さっき帰ってきた」
「いいよ、入って」

許可を得て部屋に入ると、
桐乃は俺が出かけた時と同じように、ベッドで横になっていた。

「お祭り、楽しかった?……てか、後ろに持ってるの、何?」

俺は最初の質問には答えず、桐乃へのお土産を披露する。

「ウソ……メルルの縫いぐるみじゃん……しかも超おっきいし……どこで手に入れたのっ!?」
「体に障るから興奮すんな。
 あやせがクジ屋で当てたんだ。お前へのプレゼントに、だってよ。
 今度会ったらお礼言っとけ」
「うん、分かった。分かったから、早く貸して!」

299 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:36:12.44 ID:efjr40xS
病人とは思えねえ喜びぶりだな、オイ。
病は気から、って言葉もあるし、メルルが特効薬になれば言うことはないんだが……。

「…………」

どうした、いきなり黙り込んで。
桐乃は何を思ったか、メルルの股間に顔を押しつけると、俺とメルルを交互に見比べ、

「なんで兄貴の……」

と言いかけ、慌てて

「この子、超臭いんですケド」

と言い直した。
ああ、それにはちゃんとした訳がある。

「歩いてる間はずっとそいつを肩車してたからな」
「じゃあこの子に染みついてるのは、兄貴の汗ってコト?」

肯くと、桐乃は思い切り顔をしかめて、

「しっ、信じらんない!
 なんで袋に入れるとか、どこかに預けとくとか考えなかったワケ!?」
「うるせーな、洗えば済む話だろうが。
 こっちに寄越せ、潔癖症。
 明日、お袋が出かけてる間にでも洗っておいてやるからよ」
「いい」

はぁ?

300 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:36:57.58 ID:efjr40xS
「洗ったりしたら、この子の形が崩れちゃうかもしれないじゃん」
「じゃあ、クリーニング屋に持って行ってやる。
 洗濯のプロなら上手く洗ってくれるだろ」
「じ、自分で持ってく」
「外出できないくらい熱があるくせに、何言ってんだ。
 俺が持って行ってやる。
 お前が寝てる間に、メルルは綺麗になって戻ってくる、それでいいだろ」
「うっ、うるさい!もうあんたは出てって!」

八重歯を剥いて威嚇する桐乃。
さっきまで臭いと言っていたぬいぐるみを、今は俺から守るようにして抱いている。
やはり高熱で譫妄状態にあるのかもしれん。
ここは大人しく退散したほうが良さそうだ。

「じゃあな。ゆっくり休めよ」
「うん……」

俺は最後に額を合わせて熱を測り、以前よりも温度が上がっていることを確認して、部屋を出た。
このまま熱が引かなければ、朝一で病院に連れて行くことも考えないとな。
自室に戻り、ベッドに横になったところで、電話がかかってくる。
発信者の名前を見てから、通話ボタンを押した。

「赤城か?どうした?」
「おう高坂、今お化け屋敷のバイトが終わったところだ」
「そっか、そいつはご苦労さん」

で?

「で、じゃねえだろ。
 お前俺のメール読んでなかったのか?」

301 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:37:50.09 ID:efjr40xS
ああ、そういや俺とあやせの関係を問い質すメールが届いていたっけな。

「あんな可愛い子と、どこで知り合ったんだ?」
「妹の友達だ。初めて会ったのは、一年くらい前だな」
「お前の妹って、確か瀬菜ちゃんの一つ下だろ?
 あの顔と体で中三って……お前の妹といい、その子といい、後輩の子といい、
 どうしてお前の周りにだけ反則級の美人が集まってくるんだ?
 あ、いや、もちろん田村さんも含めてな」

知るか。あと麻奈実をとってつけたように扱うんじゃねえ。
赤城は急に真面目な声になって訊いてきた。

「お前とその子は、いつから付き合ってるんだ?結構長いのか?」
「なあ、赤城」
「なんだよ。もったい付けるなって」
「俺はあやせ――その子の名前な――とは付き合ってない。
 今日は妹とあやせと俺の三人で祭りに行くつもりだったんだけどな、
 妹が熱出して行けなくなったから、二人で行くことになった、それだけだ」

「なんだよ、高坂に先越されたかとビビっちまったじゃねえか」と赤城は安堵の笑いを響かせることもなく、

「おい水臭ぇぞ、高坂。
 俺とお前は、秋葉のエロショップを一緒に巡った仲なんじゃなかったのかよ?」
「は?何言ってんだお前」
「しらばっくれても無駄だぜ。いいから本当のことを言えよ」
「いや、付き合ってねえものは付き合ってねえし」
「残念だ、高坂。
 お前のことは、何でも話せる、気のおけねえ親友だと思ってたんだがな……」

ふつりと通話が途絶える。
最後の方が涙声になっていたのは気のせいか?

302 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:40:23.31 ID:efjr40xS
ふつりと通話が途絶える。
最後の方が涙声になっていたのは気のせいか?
腑に落ちない点はあるものの、考えても仕方ないと思い、ベッドに横になる。
目を瞑ると、廃ビルの屋上での記憶が再生された。
あやせとキスをした今となっても、あやせと付き合うことは、上手く想像できない。
あやせは俺に好意を懐いてくれていて、一方で桐乃を脅かす存在として敵意を懐いている。
しかし俺が桐乃を性的な目で見ているというのは、
あやせと桐乃の仲を取り持つための、いわば自分を犠牲にする嘘であり、
あやせはその嘘を看破していることを、言外に臭わせていた。

つまり、何が言いたいかと言うとだな。

桐乃がオタク趣味から足を洗うか、
あやせが桐乃のオタク趣味を完全に認めるまで、
俺が嫌われ役、あやせが桐乃の守護者役のスタンスは崩れない、ということである。
あやせの俺への好意が、桐乃との友情より優先されるほど、強いものかどうかも分からないしな。
例外があるとすれば――屋上であやせが設けたような、『記憶に残さない秘密の時間』くらいだろうよ。

次の再会を夢見ながら、いつしか俺は、本当の眠りに落ちていた。

あやせに腕を貸しながら駅に戻る道中を、
お化け屋敷を片付け中の赤城に、イベント帰りに花火だけ見に来た加奈子とブリジット、
普通に祭りを楽しみに来たゲー研一同および黒猫三姉妹および田村一家に、仕事の息抜きに来た御鏡と藤真社長、
果ては出会いを求めて彷徨っていたフェイトさんに目撃されていたことを、当然、知る由もなく……。


おしまい!

303 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 19:56:14.76 ID:efjr40xS
一応ですが

>>167〜 の「あやせと京介の夏祭り」



>>60〜 の「もしも京介が黒猫の告白を断っていたら」

の話と繋がりはありません
つまり京介は浮気してません

304 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:11:13.84 ID:h5q3WooV
>>303
面白かった
ただ、ここはエロパロなのでエロいと尚よし

次はエロも入れるように。

305 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:14:03.12 ID:it9nkGkw
>>303
面白かった

じゅうぶんエロかった。

306 名前: 忍法帖【Lv=7,xxxP】 :2011/07/02(土) 20:14:55.13 ID:SMVbNa35
>>303
断っていたら〜も面白かったけどこれもよかった。乙
キャラがちゃんと把握できてるのがよくわかって自然に読めた

あやせは今の立場のままだとどうしても切ないことになっちゃうからなあ
原作で何かしらの救済があることを願う

307 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:21:30.90 ID:CMsP0KkO
>>303
文句なしに面白かった
だから前にも聞いたがVIPで何書いてたか教えろ

308 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:37:12.69 ID:zuNs2pbQ
>>303
GJ!
あやせ可愛すぎる
てか桐乃がクンカたんにw

309 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:37:45.56 ID:ouR+YdIa
エロほしい

310 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 20:48:59.40 ID:lUlzk87w
おもしろかった!
良いモノ書いてくれてありがとう♪

311 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 22:27:17.61 ID:ne2PHgMd
>>303 上手かった。vipのリトルプリンセスとか書いてた人?

312 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 22:34:02.28 ID:ms3eRWpj
>>303
GJ!!

スレの流れがおかしくなってもココに居続けて良かったわ

313 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 22:34:37.41 ID:VLs8hzVR
>>303
GJ!
次は他のキャラも書いてほしいなーなんてw


314 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 22:41:02.62 ID:sgCZNjId
あやせの一歩リード乙!!

それはそうと>>299で、「兄貴の匂いに混じって、女の匂いがする…」
という修羅場を想像した俺は、どうやら心が汚れてるようだ
あやせと二人で行くって分かり切ってるのにorz

315 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 22:57:57.74 ID:X5sACPor
GJです

316 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 23:15:43.01 ID:efjr40xS
>>307
VIPでは色々書いてました
最初に書いたのは京介があやせを家庭教師する話

>>313
次は黒猫とのカップリングを書きたいと思ってます
やっぱりエロパロなので今度こそエロ有りで

317 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 23:43:20.52 ID:zxd1ivZd
>>316
今から読むけど楽しみにしてたわ!
乙!


wikiで何個か作品が削除されてるけど大丈夫かね

318 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 23:44:07.91 ID:ms3eRWpj
>>316
あぁ、やはり貴方だったのか…
VIPでの偽9巻の続き、今でも待ってますよ〜w

319 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/02(土) 23:46:42.56 ID:PLT9HFJf
>>303
おつかれさまー
あやせと京介がお互いギリギリのところを探りながら会話するのが良いね。
二人きりになれるシチュエーションが必要なのは分かるけど、廃ビルってのは・・・。
あと、いろんな人に目撃されてたってんなら後日談とかあればもっと良かったのに。
次回作も期待してます。

320 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 00:00:53.13 ID:HOA4p7ip
>>316
このスレのSS全部読み飛ばしてたけど、まさか偽シリーズの人だとは!!
今からスレ遡って全部読んでくる!

321 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 00:14:00.38 ID:GGBHtVYA
>>316

せっかく過去作で良い伏線作ってんだからそれをもっと全面に出して欲しい。
契約に縛られて右往左往する人々が、その上で関係を構築するために四苦八苦するドタバタが読みたい

322 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 02:09:56.63 ID:YROuazp8
アンチSL氏の荒らしが酷いな…
何この自演レスの山は

323 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 02:17:18.11 ID:Hu5RYi+S
久々にその名前聞いたわw
この書き手さんSLよりよっぽどうめぇから

324 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 02:37:36.78 ID:l5Ka83gk
もういいだろその話題は
専用スレでやってくれよ

325 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 02:56:13.25 ID:YavOvgbS
この作品みてると今日も一日頑張れる気がする

ていうかあやせいればなんでもおk



326 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 04:57:05.30 ID:JrCwrkxM
ちなみに>>316さんの過去作
http://morikinoko.com/archives/51678241.html

今まで色んなSS見てきたけど、個人的にSS書き手の中で↓書いた人と316さんのふたりが最強だと思う

キョン「かまいたちの夜?」
古泉「またバイトwwうぜぇwwおらっw」ハルヒ「はうぅ…」
古泉「涼w宮wハwルwヒwのw反w転w」長門「おー!」
朝比奈「キョン君…だめ…だめえ……」
アカギ「『希望』の船、か。ククク、悪い冗談だ」
アカギ「いいだろう…渡ってみせよう、その鉄骨」
インデックス「ご飯くれるとうれしいな」一方通行「あァ?」
インデックス「お腹がすいたんだよ」一方通行「そォか」
インデックス「行こ!あくせられーた!!」一方通行「…おォ」
上条(悪)

327 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 06:05:31.67 ID:nnzOWEhW
>>316
今更ながらGJ!
死亡フラグガンガン建っててワロタw

328 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 07:15:08.95 ID:qTeqOiZM
SL氏GJ!

329 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 09:22:17.73 ID:mLMgl1l+
>>316
偽シリーズの人が来たと聞いて飛んできた。
原作よりちょっとウェットな感じが魅力的。

9巻(偽)第二章ってまだ欠番だよね?
首長くして待ってるよ。

330 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 12:12:00.63 ID:jb5EBUD8
要はあやせかわいいってことだな

331 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 13:45:24.50 ID:965S52t+
ちょろせだしな、SS書きやすいキャラではある

332 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 15:44:34.18 ID:YbULJ/Mz
ぐじょぐじょ甘甘な作品がないあやせたんの不思議

333 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 17:10:19.97 ID:3vAwZCah
あやせの魅力はスリルだからな

334 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 20:40:45.45 ID:eFEbckry
>>333
スリルのサビが脳内再生された

335 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 20:52:37.18 ID:W3/cFdQb
あやせと加奈子の3Pが読みたいんだーぜ

336 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 22:25:57.39 ID:h2h3DuIX
あやせはスリル(瞳孔)・ショック(着信拒否)・サイエンス(ライター)

337 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/03(日) 23:13:51.10 ID:9BEhsyqN
>>335
黒猫とあやせの3Pだろjk
黒髪での髪コキとか好きだろ?

338 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 01:08:36.78 ID:Q265n1lc
既に黒猫じゃあ需要無いよ

339 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 01:15:57.05 ID:WB5FDi53
今まで色んなSS見てきたけど、個人的に全SS書き手の中でSLさんが最強だと思う

340 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 02:32:21.28 ID:9JKqPGlG
>>316 あやせに家庭教師する話大好きです。vipにある作品の中では一番に。次回作も楽しみにしています。あやせがヒロインなら尚嬉しい。

341 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 15:17:28.61 ID:C1EN5wB3
まさか偽の人が帰ってきていたとは。
本編を脅かしかねんほどの実力の人だから正直嬉しい。
あやせ可愛すぎるわ。


342 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 15:39:06.29 ID:bCJiYyQX
本編ってまだ続くの?

343 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 19:50:53.35 ID:X4xjdQJT
エロカワ先生…
早く帰ってきて…

エロカワ先生での雌奴隷調教される沙織が見たかったのに…

344 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 19:52:37.17 ID:GN0eNQDm
お前の自演病は死ななきゃ治らねーなSL

345 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:16:16.96 ID:YNNy2n1y
投下します。
前スレの「秘密の関係」の続きで、回想の時系列としては六巻あたりです。
エロ描写無し、下品なネタ多めのギャグです。
計20レス、ほとんど台詞なうえ冗長ですがご了承願います。

346 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:17:37.31 ID:vmV+P0cK
支援

347 名前:秘密の関係 16/35:2011/07/04(月) 20:19:02.01 ID:YNNy2n1y

 ……これでわかっていただけたと思う。
俺が黒猫の胸を触りたがった理由も、ついでにわかっていただけたと思う。
 誤解を恐れずに言うが、俺はあやせに指一本触れちゃいない。指一本、触れさせてもらえない。
俺が一晩かけて立ち直り
(妹の罵詈雑言に微かな喜びすら感じる男が、あやせの暴行などで再起不能になったりはしないのだ。
「むしろお得じゃね? 俺ってすっげえ恵まれてんじゃね?」という程度の発想転換は容易い。
男だてらにビッチお兄さんと日向ちゃんに呼ばれてはいないのである……あの年頃の子供って恐ろしく鋭いからなぁ)、
爾来週二三回くらい、桐乃の居ぬ間を見計らって押しかけられるようになったわけだが、
勉強(DVDって実用目的で真剣に観ると全然興奮しねえのな。理性さんまじパネェ)も
深爪(桐乃にあからさまにキモがられ、お袋にはめっちゃにやにやされ、
それから親父が妙に優しくなった。俺ってどんだけ家族になめられてんだよ)も徒労だった。
あやせは俺になにもさせてくれないのである。
毎度毎度「触ったらブチ殺しますよ? にぎりつぶしますよ?」と事前に釘を刺す。
それでもちぢみあがらないのが我ながら不思議なものだ。
あやせの機嫌が悪い日なんか、ベッドに四肢を縛り付けられもした。



348 名前:秘密の関係 17/35:2011/07/04(月) 20:20:22.93 ID:YNNy2n1y
 俺がマグロ暮らしに適応して行くにつれ、あやせも俺の扱いに熟達して行った。
「てめーどこでンなテク覚えたんだ」
と俺が嫉妬剥き出しで問うと、少女向けの雑誌に書いてあったという。
『処理』を効率よくするために、勉強したのだという。
その後あやせの持ってきた雑誌を見せてもらったが、
オタクどもが現実の女性をばいた(←なぜか変換できない)と見なし、
二次元の世界に没入する気持ちがわかった気がした。
二次元よりこっちを先に規制すべきじゃないのかとさえ思った。
ようはエロ雑誌顔負けの内容である。気違い読本である。
 恋愛は小説の子であるとはいうものの、
この手のイカれた記事を鵜呑みにするやつはさすがにいないだろうと以前まで俺は思い込んでいた。
ところが世の中にはあやせみたいな思い込みの激しい女の子がいるものだ。
「お兄さんの変態なご趣味に、つきあってあげてるんです」
そうしれっと主張するあやせは、俺を罵ったりじらしたり、名状しがたい画期的な行為をしたりして、
「今気付いたんですけどこれ、いいダイエットになるかもです」
などと、それはそれは楽しそうで、
俺の「いくらなんでも多彩すぎんだろ!」
という突っ込みには耳を貸さない。


349 名前:秘密の関係 18/35:2011/07/04(月) 20:22:24.03 ID:YNNy2n1y

 のみならず――
「ところで、加奈子のことなんですが……」
「加奈子? あいつもうオワコンなったの?」
「いえ、そうじゃなくてですね……あの娘と、してみたくないですか?」
「ちょっと待て。何をだ」
「ほら、あの娘ってかわいいから、なんというか、いじめたくなりません? 
桐乃の家で遊ぼうって呼び出して、わたしとお兄さんが二人がかりでしちゃえばって……
あの娘、ああ見えてすっごく初心(うぶ)なところありますし、ちょろいと思うんですよ」
「このレイパー! 通報しますよ!」
 こ、こいつ、友達をなんだと思ってやがる。奴隷? ペット? 3■(ピー)要員?
「いけませんよお兄さん。正しくはレイピストです。受験生なんだから間違っちゃだめですよ」
 レイパーあやせは優等生、末世の観も甚だしい。
「お兄さんにはがっかりです」
「そんなこと言っておまえ、俺をロリコン犯罪者に仕立て上げるつもりだろう」
「いくじなし。…………お兄さんが……じゃ、桐乃も……」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもありません! さっさとパンツ脱いでください! 三十秒で支度しなきゃブチ殺しますよ!」
「やめて! タナトス眼鏡はもう嫌だ!」
「せっかくお兄さんのために用意してあげてるのに……どうして嫌がるんですか」
「あやせ様がノリノリすぎるからぁ!」
「気持ち悪っ! あれは演技、そう、演技に決まっているでしょう!」
「それはそれで凹むぜ……そうか、そうかそうか、そうかがっかりだ。あやせはどうせ俺なんかが相手じゃな……。
……どうせ俺は地味面のキモオタさ
……アニメのコスプレしたら『そっくりすぎて逆にキモい』なんてこき下ろされる不気味の谷男さ……
あやせみたいな美少女と釣り合うどころか親友にもマジ顔で
『なあ高坂、お前と妹さんってさぁ、種ちげぇの?』って言われる出来損ないさ……」
「ちょっ、何いきなり泣いてるんですか! しかも愚痴の内容重くなってません? してあげませんよ!」
「ヤリ捨てるなんて超ひどくね? なああやせ。おまえはさ、俺の体をこんなにしちまったんだぞ? 
俺はもうおまえなしじゃ生きていけねーんだよ? 寂しいと死んじゃうんだよ? 
そこんとこ、ちゃんと責任は取ってもらうからな」
「もぉ、調子のいいことばっかり……いたしかたありません。責任、取ってあげます」
「よし、じゃあ結婚しよっか、あやせ」

350 名前:秘密の関係 19/35:2011/07/04(月) 20:24:12.75 ID:YNNy2n1y
「それはお断りします」
「愛のこもったプロポーズを一蹴!?」
「どうみてもセクハラです。本当にありがとうございました……ほんと、死ねばいいのに」
「まったまたぁ。そんなこと言って俺がマジで死んじゃったら、おまえ泣いちゃうだろ?」
「ええ泣きますね、きっと。悲嘆にくれる桐乃を慰めながら、涙を流します
……邪魔なお兄さんを消したおかげで、桐乃が永遠にわたしだけの親友になったんだって、嬉し泣きです」
「突っ込みどころもリアリティもありすぎだよオイ! 『を消した』って何? おまえが下手人なの?」
「わたし流の冗談です。お兄さん風にいうとセクハラです」
「俺の冗談はそんなに血生臭くない!」
「ええ、イカ臭いですもんね。よく知ってます。おかげでわたしも大変ですよ。
この前なんかお母さんに
『あやせ、あなたは女の子なんだから、スルメばかり食べてちゃダメよ』
と言われてしまいました。だいたい、お兄さんのが濃すぎるのがいけないんです。
舌について離れないし、喉にひっかかる感じもずっとずっととれないんですよ? 
男の人ってみんなこうなんでしょうか? またお母さんがなんですが
『ねえあやせ。ごっくんしてあげたときはね、後でしっかり歯磨きしなきゃダメなのよ』
って叱られちゃいましたよ。もう! どうしてくれるんですかお兄さん!」
「うぉぉぉおい! お母さん勘付いてんよ! ぜってーお察ししてんよ! 
つかおまえのお母さんなんなの? PTA会長なのに放任しすぎじゃね? 
PTAって何? 娘のアレは許すのになんで二次元のアレは許さねぇの? 
どんだけ二次元憎んでんの? プロなの? 利権なの? 
男女共同参画的なアレなの? 目指す未来はBraveNewWorldなの? 
なんなの? 死ぬの? オタク死ぬの? HENTAIディレッタントは根絶やしにされなきゃなんないの? 
そもそもどうしてこんな流れになってんの? どうして唐突に会話が下(しも)い方面に転がってんの? 
つーかあやせおまえキャラ違ってね? 俺のブレっぷりも大概だけどおまえ純情潔癖キャラじゃなかったの? 
なんでそんなんなっちゃってんの? なんでそんなに汚れちゃったの? いや俺が汚したんだけどさ」

351 名前:秘密の関係 20/35:2011/07/04(月) 20:25:40.17 ID:YNNy2n1y
「ちなみにお母さんはこうもおっしゃいました。『その男の子、今度うちに連れてらっしゃいな』と!」
「ハイ死んだ! ハイ俺死んだよ! もうね、青少年健全育成条例第二十条だよコレ。
二年以下の懲役又は百万円以下の罰金キタコレ。
いや待て落ち着くんだ俺、まだグレーゾーンは残っている。思い出せ、例の文句を……
そう! この物語の『主人公』は十八歳以上だから……って余計アウトじゃねーか! 
ギリギリアウトじゃん! ギリギリで手が後ろに回るじゃん! しかも俺の親父ソッチの人だし! 
とっつぁんに手錠かけられるなんて最悪じゃねーか! もはやホームコメディじゃねーよこれホームサスペンスだよ!」
「ふむ。手錠、ですか……」
「なぜ手錠に反応!? 物欲しそうな顔してんじゃねぇ!」
「まあ、これまでの話は冗談ですけども。具体的には『お兄さんにはがっかりです』と言った後からが冗談です」
「なんだほとんどが冗談だったのかハハハ……って、
加奈子を手込めにしようってアレは冗談じゃねーのかよ! 一番ヤバげなとこだけ本気かよ!」
「この件に関しましてはスーパーでフリーに行きましょう、お兄さん」
「一番ヤバげなフレーズきちゃった!?」
「おやおや言葉狩りですかお兄さん? 謝罪と賠償を要求したって無駄ですよ?」
「逆差別差別用語で返した!?」
「違います。逆差別差別差別差別差別差別差別差別用語です」
「オイオイそろそろきわどいってレベルじゃねーぞどぎつすぎんだろ! 今度はその熟語連呼して狩らせるつもりかよ! 
『例のあの人』みたく呼ばせんのかよ! けど奴隷を社員に呼び代えただけでしたみたいなオチがつくのかよ! 
現代社会においても憎しみの連鎖は断ち切らせねぇって腹かよ!」
「わたし思うんです。どのみち桐乃がわたしだけのものにならないというのなら、こんな腐った世界なんて、いっそ……!」
「ちげーから! これセカイ系ちげーから! 兄と妹のハートフルボッコストーリーだから! 
俺の後輩みたいな電波飛ばすんじゃない! 
ていうかまさかあいつの言ってた『ベルフェゴールの呪縛』の真のラスボスって、ま、ま、ままままさかおまえだったのか! あやせェ……!」

352 名前:秘密の関係 21/35:2011/07/04(月) 20:27:56.93 ID:YNNy2n1y
「キョーッキョッキョッキョ! よくぞわたしの正体を見破りましたねお兄さん! 
そう! タナトス・エロスなどしょせん現世における仮の姿、
その正体は死と生命とを司る『闇天使』にして、時と空間とを止揚せし『因果律の破戒者』! 
そうしてその真名はぁっ! 殺める世界の世と書いて――『殺世』なのです!」
「あやせじゃねーか! まんまだよオイ! 俺のラブリーマイエンジェルのまま何一つ変わりねーよ!」
「お兄さんのはじめての相手は桐乃ではない! このあやせです!」
「誰しも一度はあこがれるその台詞!? 俺も超言いてえ! 言ってやる! 言ってやるぞ! あやせのはじ――」
「そうそう、断っておきますがわたしはお兄さんがはじめてではありませんので」
「え、なにそれ、真剣に凹むんだけど……つーか泣くよ? 割ったり破ったりするよ? 俺だけじゃなくてみんなもさ」
「生理のときに痛がってしてみせればすぐ信じるんですから、童貞って、ほんとちょろいものですね」
「ラわーん! おまっ、そんなリアル展開みんな望んじゃいねーぞ! 
かの芥川先生も『現実の女は萌えない』って言ってたんだぞ! たぶん!」
「ちなみに三回ほど堕ろしてます」
「それなんてケータイ小説?」
「むろんいずれも合意のアレです。なおかつパパはランダムでした」
「お尻が軽いだけかよ! レイプとかじゃねーのかよ! 悲しいのは過去じゃなくて頭かよ!」
「まあ、これも冗談ですけども」
「はぁ……今度はどっから冗談だよ」
「言葉狩りむにゃむにゃあたりからです」
「ほとんど全部じゃないか」
「そこらへんから早くも色々と後戻りしにくくなりましたからね」
「それ以前も相当あぶないとこあったと思うんだがなぁ。だいたいおまえを描写するのに放送禁止用語用いざるを得ないし」
「指摘されてもとぼけていられればいいんですよ、ついうっかり表現ミスというふうに。それが風刺というものです。
ごめんねおにいさん日本語不自由でごめんね、って陳謝すればネット憲兵さんたちもひそかな優越感を味わいつつ許してくださいます」
「でもなぁ……冗談だっつっても、叩かれるときは叩かれんだぞ? 
文は人だぞ? 叩きたいから叩くんだぞ? 自己表現の権利だぞ?」
「言葉の間違いっておもしろいですよね。
漢字なんて人前で声に出さなきゃ読み間違えていないのと一緒ですし、お手軽権力意識です」

353 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:28:32.49 ID:vmV+P0cK
保守。あやせママひでーw

354 名前:秘密の関係 22/35:2011/07/04(月) 20:30:09.42 ID:YNNy2n1y
「だからおまえ、そういう挑発的できわどい言動は慎めって。……いくら読み間違いが民主国家最大の不祥事であってもな……あれ?」
「大丈夫ですって。
今しているみたいにメタっぽい発言を二言三言挿入した後、何事もなかったかのように本題に戻りさえすれば、
形式上はどんな脱線だって見逃していただけます。
まるっとなかったことにできます。自分の言葉に責任を持たなくてよくなるんです。わたしたち子供は大人を真似るんです」
「ごめんねおにいさん日本語不自由でごめんね! 
……で、本題ってなんなの?」
「とうぜん加奈子レイプの件です」
「むしろそっちをなかったことにすべき! 
……ったく、いくら加奈子がチビだからって、おまえにそうそうどうにかされるとは思わないがな。
こないだマネージャーしたおかげで知ったんだけど、あいつ結構すげえやつなんだぜ? 
あの侠気はブリジットちゃんが惚れるのも納得だ」
「フフ、加奈子なんてお兄さんと同じくらいちょろいですよ。
鎖骨と肋骨を同時にくすぐればあっという間に『はにゃ〜ん』です。
あの娘ったら涙目でびくびくするんですよ? ほんとかわいいんだから」
「経験者は語る!? ちょ、そういうのもうやめたげて! 
あいつアホなんだから変な世界に目覚めたらどうすんの? あいつアホなんだから! 
それから忘れずに指摘しておくが、お兄さんは決してちょろくはない! ちょろくはないぞ! 
身持ちの堅さは乙女座チックといってもいい! セクハラをするのだって、おまえだけだしな!」
「ふーん……」
「なんだその目は……なぜ俺の頬を凝視する……。――そんなに殴りたいの?」
「はぁ……、今はいいです。
お兄さんのほっぺの件につきましては後日あらためて、じっくりしっぽり伺うことにいたします」
「べ、べつにホッとしてなんかいないんだからね! ……というかさ、何かおかしくないか? 
俺とくろ……。…………おほん。たとえ俺が惚れっぽくてちょろいとしてもさ、それはむしろおまえにとって――」
「で、ですが! 加奈子の頭と胸が残念だという点に関しては同意しましょう!」
「あれれー? 残念リストに付け足しなくない?」
「加奈子ったら
『やぁっ、やめろよぉ! 加奈子アホになるぅ! アホになってしまいますからもうやめてくださいおねがいします』
って散々鳴いてましたもん。あの娘、追い込まれて口調の変わったときが一番かわいいんですよね」


355 名前:秘密の関係 23/35:2011/07/04(月) 20:33:01.30 ID:YNNy2n1y
「口調が変わるねぇ……あのクソガキもあれでさ、
将来結婚して娘でも出来たら落ち着いて、物腰の柔らかい、いいママさんになるかもなぁ……」
「――加奈子はお嫁になんかいきませんよ」
「あ、あやせ?」
「だってあの娘は、一生、わたしとお兄さんがお世話をしてあげるんですから……」
「やっぱ俺共犯なんすか!?」
「より正確にいうと主犯です。わたしは心神喪失状態にありますのであしからず」
「責任能力捨てちゃった!? 親父の言ってたMD無罪! 悪質ですよあやせさん!」
「まさかとは思いますが、その『あやせ』とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか。
もしそうだとすれば、あなた自身が変態鬼畜ロリコン強姦魔であることにほぼ間違いないと思います」
「とうとう俺の妹の親友が透明な存在になっちゃったよ! ……もうさ、おまえの不健全っぷりにはついてけねーわ」
「『ついてけねーわ』……ですか……」
「え? なに急に青ざめて震えてんの? 涙ぐんだ目ぇ伏せるとか。
何気なく放たれた決定的な一言に乙女心が砕け散りましたーみたいな感じになってない? 
いやさっきの本気じゃないからね? ここシリアスパートじゃなくてギャグパートだからね? 
ほんとはついてけるよ? むしろあやせになら一生ついていきたいよ?」
「……ノーサンキューです」
「ですよねー」
「けど先ほどの『もうついてけねーわ』という言葉は、わたしじゃなくて別の女性に言ってあげてください。
たとえば桐乃がいつも嫌いだ嫌いって言っている、あの邪気眼電波女なんかどうでしょうか。
ぜひとも彼女に言ってあげてください。むしろ言え。
それはもう無神経に、無慈悲に、一切の容赦なく、あの女に言い放っちゃいましょう! 
もちろん弁解もフォローも抜きで」
「あーうん。前向きに検討しておく」
「できもしないことの約束が許されるのは幼稚園と国政選挙までですからね? 
それ以外は総括必至です。ブラック研修です。ホームパーティでネットワークビジネスです。
だってテレビでそう言ってましたもん! テレビだから安心なのですっ! たとえ視聴率が低くとも!」
「……もう突っ込めないからな。つーか飛躍しすぎでわけわからん」
「大丈夫ですよ! お兄さんのアレなら絶対にばっちりです! もっと自信持ってください! 
きっと加奈子だっていちころです! 身をもって思い知ったわたしがいうんだから、間違いないです!」


356 名前:秘密の関係 24/35:2011/07/04(月) 20:34:23.75 ID:YNNy2n1y
「……いったいナニについて励ましてくれているんだろうね」
「もぉ……お兄さんのえっち……」
「おまえから振ったネタだろうが! ほっぺ押さえて赤らむんじゃねえ! かわいすぎんだろこんちくしょー!」
「やだもうお兄さんたら、かわいいだなんて……
あなたにそんなことを言われたら――気持ち悪いじゃないですかこの変態ッ!」
「ひげぶっ!? ……。ぐっ……こ、ここハイキックするところじゃないよね普通……?」
「お……おおおお兄さん! い、今……す、スカートのなか、見ましたね?」
「わけがわからないよ」
「鼻血出てるじゃないですか! エッチ! 変態!」
「そりゃおまえがカオ蹴っ飛ばしたからだろ!」
「……。もぉ、それならそうと、ちゃんと言ってくださいよ。
鼻血を出すほど興奮したのはわたしに蹴られたからだなんて……
まったく、て、照れちゃうじゃないですか……。ほんと調子いいんだからもう……。
ふ、ふん……どうせお兄さんは、他の女の子にも同じことを言ってるんでしょう?」
「あー、仮にさっきの返答をSM的に解釈したとしてもだ……照れるようなところどこにもなかったよね? 
マゾ暴露は口説き文句とかじゃないよ常識的に考えて」
「あの、お兄さん、わたしに蹴られるのは……もしかして、嫌だったんでしょうか……。
お兄さんが喜ぶと思って、わたし、今までずっと……。
けど、おせっかいだったんでしょうか……ひとりよがりだったんでしょうか……。
お願いします、お兄さん。本当のことを、あなたの本当の気持ちを――教えてください」
「そんな顔で言われたらなぁっ、嫌だなんていえるわきゃねーだろ! 
――俺はッ、あやせに蹴られるのが大ッッ……好きだぁぁぁぁぁ! 
夢に見れば歓声とともに目覚めるくらいっ、超・大・好きだ! 
ハイもローも最高だ! 後ろ回し蹴りなんか丼三杯余裕だぜ! かかと落としでなら死んでもいいね! 
そして桐乃にもらった『しすしす』に誓おう! 
高坂京介は残りの人生を、新垣あやせのサンドバッグを務めるためだけに生きると……!」
「うわぁ……」
「ドン引きかよっ!? 自分から言わせといてドン引きかよ! ほんっとおまえは天使だな!」
「えへへ、どんどん崇拝しちゃってください」

357 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:35:49.44 ID:vmV+P0cK
保守

358 名前:秘密の関係 25/35:2011/07/04(月) 20:37:38.99 ID:YNNy2n1y
「今の反語だからね! Ironyだよ? 
積み重ねた言葉で見えないよ君の横顔? こちとらおまえの毒舌で涙目なんだよ!」
「積み重ねた嘘でもう動けなくなってるんですね、お兄さんは。……主に女性関係で」
「ななななにを言っているのかねあやせさん? 
お、お兄さんはべべ別に、ううう嘘なんかつつっ吐いたことありませんよ? 
かかっか、隠し事とかもなっないんだからね? ほんとだよ?」
「……うそつき」
「ぐぬっ……」
「――加奈子の無垢な体を、めちゃくちゃにしたいと思ってるくせに」
「そっちかよ! せっかく話逸れてたのに戻んのかよ!」
「うやむやにしようったってそうは遺憾の意です」
「はぁ……言っておくがなあやせ、俺は断じてロリコンではない。
だからあのクソガキの柔肌なんかには、これっぽっちも興味はない。
ぷにぷににもふにふににもむにもにゅぽっちんぺたりんこにも全然全く反応しない。
本当だ信じてくれ嘘じゃない」
「ではいったい、お兄さんのパソコンにインストールしてあるこれらのゲームはどういうことなの……」
「ちょっ! いつの間に起動しやがった!」
「このなかの妹さんたち、ちっちゃくてかわいい娘ばかりでしたよね。
……まあわたしとしてはりんこりんこそ最萌也と断言しますが」
「ラブタッチの件以来おまえが色々馴染みまくっている点についてはもはや何もいうまい。
だいたいさ、そういうちっちゃい妹どもに欲情するってのは元々俺の趣味じゃなくて桐……箪笥を嫁入り道具にする伝統が廃れつつある
この現代社会における貞操観念と家族制度との相互的瓦解現象に伴う
個人の疏外と自動機械化と形骸化とに対する反動としてみた場合のオタキズムには
その発生の動機からしてある種の純潔崇拝かつ家庭崇拝という
いわばロリな妹萌えが必然的に内包されているのかもしれなくもなくて、
いや待てやっぱそうじゃなくてだ、まあ要するにその、
二次元と三次元は別腹だということであってだな、色々と難しいアレがあってだな、
わかりにくく要約するとつまり現実のババアの肌に向けた拡大鏡は脂ぎった山脈を眼前に躍動せしめるが
二次元のおにゃのこは無限にきめ細かい肌をもつというゼノンのパラドックスがうんたらかんたら……」
「あっ、ちょっとお兄さん! LMAフォルダのパス変わってないじゃないですか!」
「話きけよ」
「こないだ撮ったのなんて、桐乃に見られたらわたし自殺しますよ!」


359 名前:秘密の関係 26/35:2011/07/04(月) 20:39:15.54 ID:YNNy2n1y
「いや、その、すまん。ミルキーマイエンジェル眼鏡verが実用的すぎて忘れてた」
「しかもなんですかこの大量のZIPファイルは! 前はありませんでしたよね! 
むろん全てデッリィートです! 根絶やしです!」
「何……だと……? ま、待て……なぜわかった? カモフラージュは完璧だったのに……!」
「『数学課題』や『セキュリティ関連』の、どこが完璧だというんですか。
もちろん『新しいフォルダ』は問答無用でごみ箱行きです。まったくもう。
お兄さんは受験生なんですから、インターネットで時間を無駄にするのはよくありませんよ。
卒業できなくたって知りませんからね? 
その、お兄さんがわたしと一緒に高校に通いたいという気持ちはすごくすごく理解できますが……
けどやっぱりダメだと思うんです、お兄さんとわたしの将来を考えれば。
……親友の兄がダメ人間だと、わたしもダメ人間みたいに思われてしまいますから」
「なんかさ、この頃とみに俺の人権が蹂躙されてるような気がするんだけど気のせいかな」
「わたし言いましたよね? えっちなゲームは許しますし、削除しないでおいてあげます。
けど、お兄さんがセクハラをしていいのはわたしだけなんです。
そこのところ、忘れないで下さいよ。忘れたらどうなるか……わかってますよね? 
…………ふう。さて、色々と捗るようデスクトップはわたしの水着画像を参照して――と、完了しました。
よかったですね、ハードディスクがきれいになって。こまめな整理整頓でごみ箱もすっからかんです。
これでいつ家宅捜索されてもへっちゃらですよ。それはもうどんとこいです」
「ちくしょう……俺のZIPが……。
神様、ごめんなさい……俺は、大切なものを守りきれなかった……ちくしょう、ちくしょう……!」
「謝るのは神様ではなくわたしでしょうに!」
「おまえは俺の嫁か! いくらなんでもひどすぎる!」
「な、なに言ってるんですか変態! 今のセクハラ! セクハラです! 通報しますよ!」
「サーセン失言っしたー!」
「くぅっ……なんて素早い土下座なの。まるで隙がない……!」
「っふ……。俺だってなぁ、成長してんだぜ? 主に桐乃のDVからこの先生きのこるためによ! 
『神土下座の高坂二代目』は伊達じゃないのさ! ご近所限定の二つ名だけどな!」


360 名前:秘密の関係 27/35:2011/07/04(月) 20:42:04.73 ID:YNNy2n1y
「情けない格好で情けない台詞を言いながらかっこいい顔しないでください」
「うぉっまぶしっ!? ……あ、あのなぁ、レーザーポインターで眼球狙いはさすがに洒落になんないよ?」
「スタンガンが売ってなかったので、つい」
「ついじゃねーよ! まさか他のやつにもこんな物騒な真似してんじゃないだろうな。マジで通報されんぞ?」
「失礼な! わ、わたしがこんなことできるのは、お兄さんだけですから……」
「もじもじされても嬉しくねー! だいたいおまえは、いちいち凶悪なんだよあらゆる意味でさ。
とにもかくにも没収だ! 危険物はお兄さんがひとまずお預かりします! 
……ところでナイフ隠し持ってたりとかしないよね?」
「ああっ! ひどいですお兄さん! 奪っちゃやです!」
「きょうび一般人が自衛手段を持つのは犯罪なんだぞ? 
ヤツら虫ピン逮捕だってできなくもないんだからな。
護身用と言ったが最後、一発アウトでノルマの足しだ。おかげでウチはメシを食える」
「お兄さんはそうやって……加奈子の貞操も奪うつもりなんですね。権柄尽くに」
「こっからソッチの話題に繋げた!? もうさすがだよおまえ。脱帽だわ。どんだけ粘るんだって話だよ」
「なにを言ってるんですかお兄さん。わたしはなにもしてません。むしろお兄さんがしてるんです。
そう、嫌がって暴れる加奈子を力尽くで組み伏せたいというお兄さんの無意識の願望が、
お兄さんの突っ込みをして加奈子の話題へと幾度となく立ち返らせるんです」
「すごいね無意識! なんでもありじゃん」
「ところでお兄さん――手錠ってどこで買えますかね」
「これまた唐突だが、もう驚いてやらんよ。
そいつで加奈子の自由を奪っていいようにする気だろ? 俺は絶対に加担しないからな」
「違います。加奈子ではなくて、お兄さん用に必要なんです」
「俺かよ!?」
「最近のお兄さんは、隙あらばすぐにわたしの体を触ろうとするじゃないですか。
先週なんか『手じゃねーからセフセフ!』なんてのたまってわたしの全身をくまなくアレでアレしやがりましたし……
そろそろ躾け直さなきゃいけない時期だと思うんですよね。
手錠だけではなくて、荒縄あたりで首をキュっと」
「それ死んじゃうから!」
「ただちに死亡しないので問題ないです。
十数分は猶予がありますので、責任はわたしにあるんじゃなくて、
わたし以外のみなさんこそが背負わなきゃいけないんです」


361 名前:秘密の関係 28/35:2011/07/04(月) 20:44:25.65 ID:YNNy2n1y
「……さすがに俺もそのネタはスルーするよ? 叩かれるの嫌だぞ俺」
「もう、どうしてお兄さんはそんなに説教臭くなっちゃったんですか。
加奈子のうなじをむさぼるように見つめていた去年の頃のお兄さんは――
中立ぶっておきながらわたしを反オタクの悪役に仕立て上げ、
『偏見に立ち向かう俺かっけー』していた右傾キモオタお兄さんは、
いったいどこに行ってしまわれたんです?」
「おまえや桐乃に散々痛めつけられているからな。臆病になっちまったんだよ」
「大人になるってかなしい事なの、とでもほざくおつもりですか。……ぶち殺しますよ」
「なんでそうなるんだよ!」
「だいたいお兄さんがふらふらしてるのがいけないんです! 
ふらふらしないよう、手錠でがっちり固定しなきゃダメなんです!」
「おまえさ、手錠ってキーワードに執着しすぎじゃね?」
「で、お兄さん。その手錠って、どこで買えますかね」
「あー、やっぱ密林とかじゃねーの。あっこなんでも売ってるし」
「いわゆるおもちゃのたぐいでしょう? 安物は安心できません。
お兄さんがいつもあそこで購入しているメンズグッズとは違うんです」
「……め、メンズグッズって、あ、アクセサリーとかのことかな……?」
「いえ、そこの棚に鎮座まします器具等のことです」
「あああああれか?! あ、あれは、うん……パソコン機器だよ? 
パソコン機器をメンズグッズって呼び方するなんて、あやせは変わってるなー」
「スタイリッシュに乾燥中の黒いアレは、たしかそう、フリップホールでしたっけ」
「詳しいなオイ!」
「お兄さんのセクハライフに寛容なわたしだからよかったものの、桐乃に見つかったら大変ですよ? 
捨てられるだけじゃまず済まないでしょうからね。おそらくずたずたに切り刻まれます、お兄さんごと」
「……以後気をつけます。はい」
「ほんと、頼りになりませんね。お兄さんほどの片栗粉マイスターなら手錠にも詳しいと思ったのに」
「オタのジャンルが違うんだよ。俺はただのどこにでもいるシスコンエロゲーマーだっつーの。
……おまえが非オタだからこそついでに言っておくが、オタクだからって何でも知ってるわけじゃねーんだよ? 
妙なところで頼りにされても困るんだよ?」
「お兄さんのド変態知識が役に立たないとなると……
やはりここは有名どころ、S&Wあたりのが無難ということでしょうか」


362 名前:秘密の関係 29/35:2011/07/04(月) 20:46:07.42 ID:YNNy2n1y
「無難どころかガチじゃねーか! 拉致監禁でもやらかす気かよ!」
「服ほどじゃありませんが結構割高な価格設定ですね。それに複数入り用ですし。
……使い勝手については、今度おじさまと会ったときにご相談してみます」
「おじさま……だと? おまえもしや、妙な趣味のおっさんに春をばら売りしてるんじゃなかろうな? 
お兄さんは援交なんて言葉使わないぞ? 売淫ってはっきり言うぞ? 
『開放的』という形容の前にはちゃんと『股が』って付け足すぞ?」
「やだなぁお兄さんたら、わたしがそういうことをするのはあなただけだって知ってるくせに……。
おじさまといえば高坂大介氏――お兄さんのお父さんのことじゃないですか」
「なにやってんのウチの親父!? いやたしかに適任だけどさ!」
「いえね、撮影の折にですね、桐乃の見学で出くわすんですけど、
そのたびに『息子と結婚してくれ! ウチの娘になってくれ!』ってしつこいんですよ。誰かさんに似て」
「遺伝!? 血筋なのか!? この身に流れるヤツの血が、俺を狂気へ駆り立てるというのかっ……!」
「やんわりと『通報しますよ』と脅しても
『それは私のおまわりさんだ。何かあったらいつでも頼って来なさい。
不届きな輩がいるのなら、おぢさんが合法的な暴力というものを見せてあげよう』
ですもん! 世も末ですね!」
「かっ、かっけー! さすが親父だ、通報されても何ともないぜ! ちょー輝いてんよ日の丸で! 
マジでダーティなオッサンぶりが、いまこそ初めて誇らしい! あこがれちゃうよ公僕に!」
「それで、あんまりしつこいものだからわたし、おばさまに通報しちゃいました。
お兄さんの、お母さんにです」
「待て、こないだのたわしコロッケ事件はお前が原因か! 
親父の二十四時間耐久土下座達成でお袋もなんとか落ち着いたものの、
あの夜俺と桐乃は朝まで真剣十代生討論しちまったんだよ? 
『お父さんとお母さんが別れるならさ、もう兄妹二人だけで生きていこうよ』とか
『あたしたちはずっといっしょにいようね』とか誓わされたりしちゃったし! 
……まあ結局例のごとくエロゲー大会になだれ込んだわけだが」
「むむっ、またそうやって桐乃を畜生道に引きずり込もうとしたんですか」
「違うんだあやせ! 俺は悪くねぇっ! 
そうだ、桐乃だ! 桐乃がエロゲやろって言い出したんだ!」

363 名前:秘密の関係 30/35:2011/07/04(月) 20:47:55.48 ID:YNNy2n1y
「たとえそれが事実だとしても、
えっちなゲームで一緒に遊ぶ兄妹がどこの世界にいるというんですか!
 明らかなアブノーマルです!」
「いやいるよ? わりと結構いるみたいよ? 
俺のクラスメイトはしょっちゅう妹とホモゲーしてるっつって自慢してたし、
部活の後輩なんか実姉調教ものをがんがん姉ちゃんとしてるっぽいよ? 
妹の部屋で妹のパソコンを使って妹にいかがわしいことするゲームをやるなんて、べつに普通じゃん。
うん。みんなやってることじゃん」
「……お兄さんのお知り合いって、みなさん頭おかしいんですね」
「それこそキの字筆頭のおまえがいうな! 最近桐乃が心配してんぞコラ!」
「わ、わたしのどこが頭おかしいんですか! 
仮にわたしがおかしくなったとしても、それはみんなあなたのせいに決まっています! 
ああも毎回毎回失神させられたら、誰だって変になっちゃいますって! 
この底なし! セクシャルモンスター! 退治しますよ!」
「はンッ、やれるもんならやってみろよ、あやせェ……!」
「ふ、ふん……そうやって強がっていられるのも今のうちですよ。
今日のわたしには、心強い味方がついているんですからね」
「もしや加奈子か!? 
そ、それとも、もしかするともしかしてェ……き、桐乃だったりしちゃったりして〜、フヒ♪」
「いえ違いますしありえませんけど――と言った拍子になんでちょっと残念そうな顔してんですか! 
その豚鳴きが本気だったら、わたし本気もで泣き出しますよ!?」
「いやね、最近おまえの初々しさが薄れて来ちまったからさ、
ここいらで最高にキモい台詞吐いて恥ずかしがらせようと思ってな」
「恥ずかしいという以前に、そんな発想が出来てしまうあなたの存在そのものが気持ち悪い」
「ひでえ言い草は相変わらずだが、俺はそんなおまえが生理的に大好きなんだ。
……で、さっき言ってた心強い味方ってなんなの? 
こないだ頼んだぐるぐる眼鏡、やっとしてくれる気になったの?」
「先日まで『ぐるぐる眼鏡は眼鏡じゃない!』と公言して憚らなかったお兄さんがどうして急に転向したのかは、
今はまだ、あ・え・て問いません。
ですが、今後わたしがぐるぐる眼鏡をかけることは絶対にありえないとだけは言っておきましょう」
「チッ……じゃーなんなんだよ。また桐乃コスでもすんのか? 
あんなん二度と嫌だぞ俺。だってあれおまえが楽しいだけじゃん」

364 名前:秘密の関係 31/35:2011/07/04(月) 20:49:17.78 ID:YNNy2n1y
「ぐるぐる眼鏡が駄目だとわかった途端、がらりと投げやりになりましたね。
執着しすぎです。はぁ、いたしかたありませんね……
えへへ。ではでは、このわたしがヒントを出してあげましょうか! 
フフ、今日の主役はですね、わたしもさっき思いついたんですけど、
なんとお兄さんのよく知っているものでして……」
「んだよ桐乃じゃあるめーし、こんなんでいちいちなぞなぞ当てっこなんかやってられっかよ。
おまえってさァ、ほんっとめんどくせー女だな。かわいいのはツラだけってやつ? 
けっ……クソ、クソ、ちくしょうめ……俺のぐるぐる眼鏡……
あーあ、もうなにもかもがめんどくせぇ……
もう妹とかどうでもいーし、受験とかもどーでもいーし、進路は田村屋で妥協すんわ……」
「今のお兄さん何気にものすごくひどくないですか? 
わたし、けっこう真剣に傷ついているんですけど……
ベッドでごろんごろんしてないで、せめてその、もうすこし盛り上がって行きましょうよ」
「あーわかったわかった。とりあえず疑問符か感嘆符乱発しときゃ格好つくだろ。
あー!!! まじだるいし!!!!?????? 
あやせが!!!!! ぐるぐる眼鏡つけてくれねえっていうから!!!!!!!!! 
俺さぁー!!!? ちょー傷ついちゃったし!!????????? 
ふぁぁ!!!!!! なんか眠くなってきちまったわ!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるさいだまれしゃべるなうざいっ!」
「かはっ……!? ぐ……フライングニードロップ……かよ……。
オイコラあやせ、いつかの桐乃とまったく一緒な真似してんじゃねーぞ……
つーかどけ。乗りたきゃ俺を仰向けてから乗れ」

365 名前:秘密の関係 32/35:2011/07/04(月) 20:50:21.55 ID:YNNy2n1y
「え? いまわたし、桐乃と同じ事しちゃったんですか? 
それってつまりわたしたち似たもの同士の大親友ってことですかね! 
好きなブランドも好きな音楽も好きな異性のタイプも好きな暴力手段もスリーサ……スリーサイズもみんなお揃いだったなんて! 
スリーサイズみたいにあらゆる点でお揃いだったなんて! 
やっぱりわたしたちは、
わたしがちっちゃいころお母さんに連れて行かれたセミナーで習ったソウルメイ……とちょっと待ってください。
『いつかの桐乃とまったく一緒』ってお兄さん、ようはこれ、桐乃にも同じようにされたって意味ですよね!? 
こんなにむごい仕打ちを受けるなんて、寝床で妹になにやらかしたんです!」


366 名前:秘密の関係 33/35:2011/07/04(月) 20:51:41.72 ID:YNNy2n1y
「ぐぉっ、誤解だ……だ、だから首を絞めるな……
それにスリーサイズは見たところおまえが負ぎゅぎぎがげげげぼごごごごご……! 
おえっぷ……お、おまえの想像とはたしかに場所も行為も一緒……
おまえと桐乃のスリーサイズのようにぴったり一致してるけれども……ふぅ……ただひとつ、人物、人物が違う。
桐乃に暴行されたのは俺じゃなくて、黒猫――ある程度は知ってるはずだと思うけど、俺の高校の部活の後輩で、桐乃のアッチ側の親友なんだが――
このベッドでそいつに、桐乃がフライングニードロップかましやがったってわけだ。
おまえがさっきしたのと同じようにさ」
「なぁんだ、桐乃が成敗したのはあの邪気眼電波――あれ、なにかおかしくないですかこれも……。
つまりはその邪気眼電波女がお兄さんのベッドに寝てたって、そういう前提になりません!? 
どうしてよその女がお兄さんの布団にもぐりこんだの……」
「すまんすまん間違えちゃったわ今の無しな! 
あれな、思い出してみたらやっぱこのベッドじゃなくて桐乃の部屋だったわ! 
いやーごめんごめんご勘違いさせちまったみたいで!」
「そうよ、思い出してみれば……わたしとお兄さんが初めて結ばれ……
もとい、初めて『処理』をした日、お兄さん、やけに物怖じしなかったというか、
年下の女の子を部屋に上げるのに慣れていたというか……」
「な、なーあやせぇ! 今日のサプライズはなんなのかそろそろ教えてくれよぉー。
俺ってば毎回毎回楽しみにしてるんだぜ? 
なぁなぁあやせってばぁー。ラブリーマイエンジェルあやせたんってばぁー」
「ほ、ほんとうにお兄さんは変態ですね! ……あんまり期待しないで下さいよ。
わ、わたしだって恥ずか、もう! 恥ずかしいんですから……」
「謙遜すんなよー。さっきのフライングニードロップだってすばらしかったじゃないか」
「桐乃よりもですか」

367 名前:秘密の関係 34/35:2011/07/04(月) 20:53:11.02 ID:YNNy2n1y
「……。
俺桐乃のこと嫌いになったわけじゃないから、うまく言えないかもしれないけど……
最高だ、あやせ。桐乃よりずっと良い。
あやせのこのしなやかで鋭い足技にくらべたら、桐乃のなんて物足りないよ。あやせの蹴りは最高だ。
脅しも、罵倒もすごくて、桐乃のじゃ全然むかつくだけだけど、あやせには蔑まれるだけでもうすぐにも首くくりそうだ。
桐乃のあんな毒舌に怯んでいたなんて自分で情けないよ。
あの吸い付くような一撃を食らったら、もう桐乃のブヨブヨとした体なんて触る気もしない。
桐乃なんてエロゲ貸してくれるくらいしか価値のないキモオタだよ。
あやせさえいれば俺は……、あやせぇ、あやせぇぇ」
「死ね! ……なぜか思わず死ねと言いそうになってしまいましたけども、
誠を尽くしたお兄さんの熱意は、たしかに伝わりました死ね」
「いや言ったよね? はっきり『死ね!』って返したよね? しかも語尾にもつけたよね?」
「まあまあ、細かいことはお気になさらず。
ではお兄さん、そろそろいきますよ? 今日のビックリドッキリおしぼりグッズは……じゃじゃーん!」
「……あー、それ」
「そうですとも! お兄さんの夜のお楽しみにして無機なる淫婦! 
在野の汚らしい冒険者どもをして神の穴とまで言わしめた黒き魔筒――ってお兄さん? 
なんですかその『はいはい出オチ出オチ』と言いたげなげんなり顔は! 
フリップホールですよ? 黒フリですよ? はぢめてのおもちゃ遊びですよ? 
もっとこう……ね? あの、わたしから言わせる気ですか?」
「なんとなく予想ついてたし、大して面白くもないし、あと女の子が黒フリとか略すな……
つかぐるぐる眼鏡の後じゃな、やっぱインパクトが足りないんだよ。
せめて『京介氏』呼びくらいはしてくれねえとキカンボーMAXとはいかねえな」


368 名前:秘密の関係 35/35:2011/07/04(月) 20:54:13.76 ID:YNNy2n1y
「ふ、ふん。お兄……京介氏はされる側に過ぎないから、そうやって余裕ぶっこいていられるんですよ。
する側のわたしにとって、この使い込まれた黒フリは心強い味方なんです。
なぜならこれを使っているあいだ、京介氏はわたしになにもできないじゃありませんか? 
まさしく『処理』にうってつけです! 
今日こそ失神しませんよ! むしろ失神させたげます! 
京介氏は怯えて、竦んで、タケリタケの性能を生かせぬまま果ててゆくんです! 
……近いうちに手錠付きで加奈子の相手もする予定ですからね、今日は色々と鍛えてあげますよ」
「その話題まだ有効だったの!? ……まったく! ほんと! おまえってやつはっ……! 
――『ござる』口調もお願いしていいっスかね」
「――こんな感じでござるか、京介氏」
「ひゃっほう!」
 ――以上のような、ヤマもオチもイミもない殺伐とした会話を交わして数週間後、
あやせは本当に本物の手錠を調達してきたのであった。
官品でなかったのがせめてもの救いである。
(加奈子? はてなんのことやらさっぱりだぜ)

369 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:54:56.27 ID:9yUU7Qtc
おつかれさまでした。

370 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:55:12.81 ID:YNNy2n1y
以上です。続きます。

371 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 20:57:04.63 ID:vmV+P0cK
リアルタイムで読ませていただきました。
途中途中のパロに笑わされながら読ませていただきました。
面白かったです。(ちょっとくどかったかもですが)

372 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 21:14:27.75 ID:2aIqk2/F
率直に言って過剰なコントでキャラが崩壊してる
コメディばかりで話が全く進んでない

373 名前: 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2011/07/04(月) 21:24:12.03 ID:NhFQ1nUk

なんかすげーキャラがぶっ飛んでるな
ギャグっていったらそれまでだけど
面白かったけど、違和感が先立って素直に楽しめなかったかな?といったところ

374 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 21:56:47.67 ID:K90Bz7sy
よくわかんなかったけどマウスのホイールをくるくるしてたら下に着いてしまった

375 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 22:46:58.94 ID:LfCJh6ng
>>368
会話が多い
段落がない
改行がない
続きとタイトルだけ書かれてもカップリングが分からない

結論、読みにくい。もう少し読者への気遣いを


376 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 22:57:32.38 ID:9yUU7Qtc
>>375
キャラ愛があっていいSSじゃないか
奴よりナンボもマシ

377 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 23:09:33.89 ID:K90Bz7sy
いや本当に読みにくいですよ
そこだけはマジなんで

378 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 23:10:06.43 ID:LfCJh6ng
>>376
圧は読みたくない文章は書くが、読めない文章は書かない男だ

379 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 23:15:11.49 ID:RA0/sN9T
SL?

380 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 23:33:03.79 ID:mI8SJNpu
都合の悪いものは
すべてSLの仕業ってか?
病院『で』逝け(バカは死ななきゃ治らない

381 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/04(月) 23:38:16.42 ID:8DVDw1pt
ループ話がしたい方は専用スレにどうぞー

>>368
乙でーす!
次回作もまってまーす

382 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 01:24:10.31 ID:sqkqlbWQ
>>370
GJです。途中読みながら笑わせて貰いましたwww
掛け合いがセンスあり過ぎて羨ましいです。
続き楽しみにしてますね。

383 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 01:45:46.81 ID:eXSdzp/c
俺の言いたいことは
>>372が全て言ってくれた


384 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 02:55:58.22 ID:1Nsky5u8
>>368
崩壊しすぎwww

だがキャラに対する愛は感じられる
次はエロシーンも入れてくれ是非

385 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 02:57:43.73 ID:/ffDWNje
とりあえずあやせかわいいってことでFA

386 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 03:21:52.15 ID:6OBKOxfg
下手糞ss書きはSLさんの文章をよく読んで見習うといい
すこしはマシになるだろ。

387 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 09:02:38.71 ID:LzyKR2te
読みたくない…

388 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 10:18:25.29 ID:/ffDWNje
なら俺が書いてやる

京介「ええんか!ここがええんか!」パンパンッ

あやせ「お兄さん桐乃に聞こえちゃう」アンアン

桐乃「ちょっとこれはどういうことよ!」バシッ

京介「き、桐乃、コレはだな・・・」パンパンッ

桐乃「私も混ぜなさい!」ヌギヌギ
京介&あやせ「えー」

どや

389 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 10:39:36.92 ID:LzyKR2te
えー

390 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/05(火) 14:05:54.74 ID:QbCPqRYu
>>388
ふさたんでも髪の毛むしって投げつけるレベル

391 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 01:27:31.38 ID:ZTI9+1ZO
佳乃「ああっ!」
京介「ああっ!」
大介「うっ」

佳乃「ど、どうしましょう…」

大介「うむ…」

なんてことだ。母さんが高熱で苦しんでる桐乃のために座薬を取り出したがふとした拍子に親父の股間に中身がかかっちまった。
わが家の座薬はこれしかなく、桐乃は高熱のため絶対に必要だ。

佳乃「あ、そうだ!あなたの座薬まみれのあれを桐乃に入れればいいのよ!」

大介「なんだって!?正気か、母さん」

佳乃「だってそれしか…」

大介「そんなことならん。親子でそんなことできるわけない」

佳乃「京介、こっちきなさい。」
ん?

大介「母さん、なにを…?」

佳乃「京介のをあたしのアナルにいれるの。これならあなたもしやすいでしょ。体面よりも娘の方が大事でしょ?。それに子供ができるわけじゃないから近親相姦にはならないわよ」

大介「しかし…」

桐乃はもの凄く苦しんでる。少しでも和らげれるのなら俺も母さんとしてもいい。

京介「母さんのいうとおりだ。俺は母さんとするよ」

桐乃の部屋にて

桐乃と親父がいるところで母さんのアナルにおれのチンポを生で入れる。

ぬちゃ

佳乃「あぁん、ほ、ら、あなたも、桐乃にいれなさぁい…んんっ」

大介「…ああ…」

ぬぷ

親父がベッドの上で桐乃の上を向いたお尻に挿入する。

佳乃「いいわよ〜ほら腰を動かして桐乃にまんべんなく座薬の液をつけるのよ!

俺と母さんは完全にアナルセックスを楽しんでた。親父と桐乃は服を着てるが俺と母さんは裸で胸を揉んだり舌を絡めたりしている。



392 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 01:45:21.81 ID:nh/J9+WV
キチガイの文章ですわ

393 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 02:46:12.61 ID:73KMGoBD
これ前のダッチワイフの人?

394 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 03:02:46.66 ID:4JSfXakp
俺も見た瞬間そう思った

395 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 07:50:37.10 ID:zmzccP11
>>388

キョン「ええんか!ここがええんか!」パンパンッ

みくる「キョンくん涼宮さんに聞こえちゃう」アンアン

ハルヒ「ちょっとこれはどういうことよ!」バシッ

キョン「ハ、ハルヒ、コレはだな・・・」パンパンッ

ハルヒ「私も混ぜなさい!」ヌギヌギ

キョン&みくる「えー」


かえても全く違和感がない
不思議!

396 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 15:14:39.41 ID:fJvnr9wj
ただのアホですわ

397 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 18:51:50.39 ID:rYpZT30g
応用性の高いことは、素晴らしい事なんだけど?

はい論破

398 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/06(水) 23:39:33.51 ID:ZTI9+1ZO
>>393
>>394

覚えてくれて嬉しいです。


ふと思いついたので久しぶりに投下しました。


399 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 00:12:47.35 ID:ATF5M4O4
あやせ「勝手にジュースもらうわね」がちゃ

あやせ「……」

冷蔵庫を開けたまま静止するあやせたん。

あやせ「ちょっとお兄さんいいですか?」

なんだ?

あやせ「これなんですけど…」

とあやせが指し示すのは白くて太くて長いものだ。
中は空洞になっており、入口から白い液が垂れたままラップでくるんである。

京介「これか?きりたんぽっていうんだぜ」

無垢なるあやせたんはそれをきりたんぽと信じて疑わないだろう。

あやせ「片栗粉Xの間違いですよね?」にっこり

!!!!!!

京介「な…!?」


桐乃「なーに?あ…」

あやせ「な、なんでもないのよ」ばたん

桐乃「なんで閉めるのー?あやしー」

あやせ「な、なんでもないわ(桐乃に見せるわけにはいかないわ)」

桐乃「なんでもないことはないでしょう?それにジュースもまだ取り出してないし…えいっ」がちゃ
あやせ「あ…」

桐乃「あ、これは…!?」片栗粉Xを手にとる桐乃。

あやせ「あ、あのね、これは…」

桐乃「きりたんぽ!兄貴、またつくったのね!」

あやせ「そう、きりたんぽなの…え?」

桐乃「兄貴お手製のきりたんぽなのよ。煮ても焼いても良しの万能食材なの。うちでは母さんも父さんも大好物なのよ!」

あやせ「え?え?話が見えないわ」

400 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 00:15:24.35 ID:ATF5M4O4
説明しよう。桐乃のパソコンでネット巡回していたところ素晴らしい発明に出会った。他でもない自家製オナホール片栗粉Xの作成法だ。
このお手製オナホールを使用後、台所に捨てる際に母親に見つかったのだ。とっさにきりたんぽと嘘をつき、気づくとその日の夕食の鍋の材料として使われていた。
それが評判だったため片栗粉Xを使用後は冷蔵庫で冷やして食材に利用することとなったのだ。
もちろん家族のものはその用途を知らない。


あやせ「つまり真実をしるのはあたしとお兄さんだけなんですね」
あやせの前には片栗粉Xが輪状に切られたものが並べられている。
桐乃「さあ、食べてみて。生でも美味しいんだから。」パクモグモグ

あやせ「ぇ…」

桐乃は俺のザーメンまみれの片栗粉Xを自分の親友に進める。

あやせ「…(ここで食べなかったら桐乃にこれがきりたんぽじゃないという疑念が生じる…)…い、いただくわ…」



401 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 01:07:07.92 ID:JWHqUunW
>>400
続きは……続きはまだですか?

402 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 01:43:18.11 ID:34P6o9eC
わろた

403 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 02:48:55.26 ID:Dk1JpprV
桐乃の(使用済み)タンポンじゃないんですか?
きりたんぽん

404 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 03:01:00.99 ID:LJXO7njO
あーあ。
SL氏がいないとすぐにこのザマか。

405 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 04:16:43.81 ID:1LZ+Aw7V
黒猫かわいい

406 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 16:35:20.32 ID:LgXBRhQi
ひでぇ話だw

407 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 18:26:32.01 ID:ULdwCj+p
続きまだですかー

408 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 21:41:33.45 ID:CUj0bQQN
>>404
まあまあ落ち着け
小ネタは長編を引き寄せる撒き餌になる。

409 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 21:50:32.02 ID:Gljm+45R
あやせかわいい

410 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/07(木) 23:59:35.97 ID:+p0+I6vG
流れはあやせか…
書きかけの鰤ネタは置いといてあやせネタを書くべきか

411 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:07:16.71 ID:3VHw53EN
キャラスレの全年齢妄想ではとまらなくなってこちらに来ました。
公式ツイッターの上海旅行ネタから、とは言っても
桐乃と京介がエッチするだけの話です。

※※※
ここは上海の結構いいホテル。俺は部屋の前で、妹様が着替えを済ませるのを待っている。
何でも俺妹の中国でのイベントということで、俺達は黒猫、沙織と上海に来ているのだ。
昼間の熱烈歓迎が終わり、美味しい夕食をいただいたあとで俺と桐乃、黒猫と沙織とでそれぞれツインの部屋に入った。
さて、のんびりくつろごうかと思ったところで、桐乃が着替えるので少しの間部屋を出ろと言う。
そんなのバスルームでやればいいだろと思ったが、とにかく押し切られる形で俺は部屋を離れた。

桐乃と約束した時間になったので俺は部屋に入る。なぜか電気が消えていたので点けようとすると
「電気は点けないで」との桐乃の声。俺はそれに従い部屋の奥へと進む。

「桐乃……………」
厚手のカーテンが開かれ、ライトアップされた建物の灯りがうっすらと室内を照らす。そこに浮かび上がった桐乃の立ち姿。
一見すると、以前の人生相談の時来ていた寝間着にも見えたが、よくよく見るとそれはいわゆるスケスケなネグリジェってやつだった。


412 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:08:17.07 ID:U5Q+5gLn
「どう、似合うかな?」
桐乃が尋ねるが、俺はしばしの間、桐乃の妖艶な姿に見入っていた。乙女の柔肌、胸の膨らみ、そして……
「ああ、何と言うか、エロ可愛いな、桐乃」
その答えに桐乃がどう思ったかは分からないが、桐乃はさらに話し掛けてくる。
「やっとふたりっきりになれたね、京介。」
それを聞いて俺はまた興奮しちまった。不覚にもリヴァイアサンがむくむくっとかま首をもたげる。それに気付いたらしい桐乃。
「もぅ、京介のえっち…大きくさせちゃって」
「だってなあ」
「でもね、京介。今日はあたしもえっちだから責められないね。それで京介、あの、京介の………」
顔を急に真っ赤にする桐乃。
「どうした?」
「見てもいいかな?京介の、その、ごめん何て言えばいいか自分でもわかんなくて」
ここに来て恥じらいを見せる桐乃な俺はきゅんときてしまった。
「ああ、だったらこう言えよ。『リヴァイアサン』って」
「リヴァイアサンって魔物の名前だっけ?でも、ピッタリな名前かも。
じゃあ改めて、京介のリヴァイアサン、見せてもらってもいいかな?」



413 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:09:37.58 ID:3VHw53EN
※※※
桐乃の目の前で、俺はズボンを下ろす。トランクスを脱ぐ迄もなく、不覚にも元気なリヴァイアサンが隙間から飛び出していった。
「うわあ……」
「もしかして、キモいとか思ってたりするか?」
「ううん、大丈夫。触ってもいい?」
俺が頷くと、桐乃の掌がリヴァイアサンを包み込む。
「リヴァイアサンが、ピクピクしてるよ」
そういいながら桐乃は掌でしごき始めた。
「痛かったら言ってね」
「大丈夫。自分でやる時はもっと激しいんだぞ」
その言葉に安心したのか、桐乃の手の動きは段々はやくなっていく。
「いい、すげえ気持ちいいよ、桐乃」
「いきそうになったら言ってね。京介がいくところを、この目で見たいから……」
「わかった。もっと激しくしごいてくれ……いい、もういきそう……」
桐乃がその言葉に顔を寄せた瞬間、リヴァイアサンから勢いよく精液がほとばしる。
「きゃあん」
思わず声をあげる桐乃の顔を、容赦なく白濁が襲う。妹に顔射……俺はその背徳感に興奮しちまった。
「すまん、大丈夫か?」
「うん。これが京介の赤ちゃんの素なんだね、なんか、変な味がする……」
口元に垂れたものをぺろりと舐めながら、桐乃はそう呟いた。
桐乃の顔を拭ってやったあと、俺は桐乃にリクエストをした。



414 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:10:14.04 ID:JptHFJ0E










415 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:10:41.27 ID:3VHw53EN
※※※
「この前はさ、桐乃が俺を抱きしめてくれたけど、
あの後、俺もこうして桐乃を抱きしめたいって思うようになったんだ」
俺は桐乃の背後に立ち、身体に手を廻す。
「桐乃、楽にしていいんだぞ」
「うん、わかってるけど、変に緊張しちゃって。やっぱエロゲーとは違うよね」
そんなことを言う桐乃が、今は可愛くて仕方がない。
「桐乃のことを感じたいんだ」
そう言って俺は桐乃の後頭部に顔を近付ける。シャンプーのいい匂いにたまらずクンクンしてしまう。
「きょ…京介、あぁん」
俺がぺろりと舌を出してうなじを舐めたら、桐乃が可愛らしい声を上げた。
それがまたたまらないので俺は耳たぶとかも舐めたり息を吹き掛けたりしてみた。
「あぁん、駄目、駄目ったら、もぅ……」
そんなため息を尻目に、俺はいよいよ桐乃のおっぱいに手を伸ばす。
ネグリジェに手を潜り込ませ、何も着けてない乳房を掌に収める。
「おっぱい、前より大きくなってるな」
「いつとの比較なわけ?まあ、確かに大きくなってるのは否定しないケド」
「もっと大きくなると嬉しいんだけどな」
「馬鹿、変態!」
そう言いながらも桐乃は俺のなすがままに身をまかせている。
「あぁ…京介のいやらしい豊胸マッサージで、あたしのおっぱいどんどん成長しちゃうかも…
陸上とか、モデルとかに影響出たら京介の責任だからね……」
「じゃあおっぱいはこの辺にしとく」
俺は黒いパンティ越しに桐乃の臀部をいじくり廻す。むっちりしたお尻の肉付きは、これで陸上やってんだよなと疑問になりつつも、俺を虜にした。
そしていやらしい指は、桐乃の大事なところをまさぐり始める。
布越しに伝わる、濡れた感触。桐乃が感じてると思うと、指先が段々荒々しくなっていく。
「京介が、弄ってる…あたしのを……あはっ…
エッチな兄貴に痴漢されちゃって、あたしいかされちゃう、いかされちゃうよぉ……ああっ、ああん……」
ぶるぶるっと身体を震わせると、桐乃はがくっと膝をおとした。



416 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:12:16.41 ID:3VHw53EN
※※※
桐乃をベッドに横たえさせて、ネグリジェを捲りあげる。
ここまでも十分エロすぎるんだが、ここで終わりになんて、もうできなかった。
「やべぇ、やばすぎるぜ。桐乃。もう止まんない。このまま、最後まで行っちゃってもいいか?」
一応尋ねてはみたが、もし桐乃が拒んだとしても、今の俺は無理やりにでも桐乃を犯してたかもしれない。
だから、桐乃が応じてくれたのには、正直ホッとしたのだった。

「あぁん、さっきあんだけ顔を汚しまくったのに、京介のリヴァイアサンはもう復活してるよぉ……」
「それもこれも俺の妹がエロ可愛すぎるからいけないんだぜ。じゃあ、いくからな」
早く桐乃が欲しくて仕方ない俺のリヴァイアサンが、桐乃の濡れ濡れなおまんこに侵入していく。
ずぬんっ!
「あっっ!!」
「大丈夫か桐乃、無理すんなよ」
「ん、んッ、大丈夫…かな?あんまり京介のリヴァイアサンが大きいから…
でもいいから続けて、リヴァイアサンで、あたしを犯して!!」
その言葉に流されるままに俺は腰を動かし始めた。
ぬちゅぬちゅといやらしい音が響く。
「あっ、あっ、感じる。リヴァイアサン感じちゃうぅ……」
「ううっ、桐乃の締め付けが気持ちよすぎるぜ」
「やん、あん、あん、リヴァイアサンエロいよぉ……エロエロリヴァイアサンで、もぅ、たまらないの」
「くっ、桐乃、もう出そうだ」
「えっ、あっ、ああっ」
俺は間際に腰を引いて身体を起こすと、びゅびゅっと飛び出た精子が桐乃の身体に飛び散る。
「ああん、京介の精子が、熱いよぉ……」



417 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:13:47.79 ID:3VHw53EN
※※※
「さっきはあたしが京介に犯されちゃったから、今度は、あたしが京介を犯すんだから」
そう言うと桐乃は横たわる俺の腰のうえにまたがった。
「ホント、いやらしいリヴァイアサン、でも大好き。京介と、京介のリヴァイアサン……」
桐乃は腰を落として、リヴァイアサンを受け入れる。俺もたまらず腰を突き上げる。
「ああ!!奥までずんってきちゃってるよぉ…いやん、いやん…激しいの、でもイイ、激しいのイイっ!」「おい、そんなに激しいと、こらえきれずに出しちゃうぞ」
「お願い、今度は中に出して!!京介のリヴァイアサンを全部受け入れるから」「いやまずいだろ」
「イイ、いいから」
「あっ、ダメだ」
しかし桐乃は俺を押さえつける。
「そのまま、そのまま京介の精子を注いぢゃって!!あっ、イク、イッちゃうう!!!」
「ああっ、桐乃!!!」
そのまま精子は桐乃の中にとぶどぶと注ぎこまれていった。



418 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:15:52.46 ID:3VHw53EN
※※※
桐乃に中出ししてしまったことで俺の理性は飛んでしまっていた。もうどうなってもいい。
俺はひたすら目の前の桐乃を貪ることしか頭になかった。
「桐乃がここまで淫乱妹とは思わなかったぜ、こうなったら精根尽き果てるまで桐乃を犯しまくってやるからな」
「あたしのことばかり責めても駄目だからね。京介のリヴァイアサンだっていくらあたしを犯しても固いままなんだから」
俺は何がなんだかわからないままに腰をふりまくっていた。
桐乃の喘ぎ声が快感になっていた。桐乃にしても俺になされるままだしな。
「ああん激しいよぉ……感じちゃう、感じちゃう…でもこれで京介の子供ができるね」
「えっ??」
「こんだけ京介に気持ちよくされて、そして京介の子供できるなら、あたし、どうなってもいい……」
「桐乃……」
「京介、お願い、あたしをイカせて、そしてあたしを孕ませて……」
俺はふと我にかえった。そして自分の快楽だけに溺れてたのを反省した。
桐乃の思いに気付くと、より桐乃が愛おしくなってたまらなかった。
「桐乃、好きだよ。愛してる。だから、だから俺の子を孕んでくれ!!」
「うん、うれしい。あたし受け止めるから、兄貴の精子、いっぱいちょうだい……」
「おりゃああっ」
俺はこれまでになく激しく腰を桐乃に打ち付けた。
「ああん、イクイク、京介のリヴァイアサンにイカされちゃう……孕んじゃうぅ……ああっ ああっ 兄貴大好きぃぃ!!!!」
ほとばしる精子が桐乃から溢れださんばかりに注がれていく。
俺と桐乃は快感に震えながら果てたのだった。

419 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:16:32.22 ID:3VHw53EN
これで終わりです。どうも失礼しました。

420 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:17:09.08 ID:yW8i3S9J


421 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:26:25.19 ID:IxRHPeV9
12うへぇ

422 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:27:06.38 ID:SuhsmSd2
乙です
ホントにエッチするだけの話だったw
だ が そ れ が い い

423 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:40:31.90 ID:bi+AllAI
エロパロスレだからって直球で来られても反応に困る。
エロに行き着くまでのギクシャクが欲しい。
ふとした会話で沈黙する二人、どうしても妄想がとまらない自分への嫌悪、相手はどう思っているかの疑心暗鬼。
平気なように振る舞えば空回りしてしまう。突発的に素直に告白し合い今後の生活に思いを馳せる。

俺妹ならそこに桐乃がどうしたって絡んでくる。グループや友情の揺らぎ、近親への罪悪感、祝福されない未来。
誰一人泣かないように、かつ妥協を探って笑顔になるカタルシス。

矛盾してるようだがエロパロスレでエロを書いたら負けない気がする

424 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:57:05.20 ID:r2B6d5j+
>>423
どうしたww

425 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:58:33.33 ID:yW8i3S9J
あやせェ

426 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 00:59:42.64 ID:SuhsmSd2
>>423
一体ナニと戦っているんだお前はw

427 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 01:01:20.68 ID:QGR3Vweh
>>423
エロを書いたら負けない気がする

その通りだ


428 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 01:06:43.63 ID:JzfGIjHM
>>427
正論過ぎてわろたwww

429 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 01:21:56.15 ID:+FygPjou
>誰一人泣かないように、かつ妥協を探って笑顔になるカタルシス。

みんな笑顔なハッピーエンドもいいけど、誰かが病んじゃうバッドエンドもそれはそれでエロいと思う。

京介にふられてバイブで処女喪失しちゃう闇猫、
京介の心を体で繋ぎ止めようとする桐乃、
お兄さんを寝取った桐乃への嫉妬と親友としての友情との板挟みで、ついに発狂して桐乃をレイプしちゃうあやせたん、
サークルクラッシュの末、頼れる人が京介しかいなくなってどろどろねっちょりぐっちょんちょんな愛欲の日々を送る沙織、
京介にたぶらかされて加奈子を肉便器に調教するブリジット、
一夜かぎりの過ちのはずがなぜか高坂家に居候しているフェイトそん、
そして卒業式の日に伝説の桜の木の下で赤城が言う。
「高坂! 俺と伝説になろう!」

430 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 02:30:27.85 ID:ltQxQkVq
>>429
せなちー、ハ・ウ・ス! ^ ^

431 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 04:02:04.32 ID:wAe3lYyV
ふざけた小ネタもどき投下してる奴の気が知れん

432 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 17:05:38.01 ID:ATIsODke
>>410
何言ってんだ。とっととブリジットネタを投下しろ。
あやせネタはたくさん来てるから少しくらい時間かかってもおkだ。

433 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 18:35:39.21 ID:lKBmqcBj
藤林丈司は変態

434 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 21:49:54.37 ID:wUGhUSJd
>誰一人泣かないように、かつ妥協を探って笑顔になるカタルシス。
そんなもんにカタルシスはないww

435 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 22:12:47.97 ID:SuhsmSd2
いやまあエロパロなんでむきになるなよw

436 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 22:19:45.68 ID:keRrM1BG
エロパロで熱くなれない奴はどんなことにも冷めている

437 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 22:37:23.99 ID:yW8i3S9J
そう、何事にも熱くなるんだ

438 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 22:47:45.20 ID:bi+AllAI
>>434
状況の説明があり、過程を見ることができて、小説なら細かい心理描写もつく。
我々は登場人物の真意に最も近いところにいる。
傍目からはどんなに情けなくても一本筋が通ってれば感動する余地は十分にある。

君は京介の土下座外交を見てなにも感じなかったのか?

439 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 22:49:52.99 ID:wUGhUSJd
そういうのは初っ端からちゃんと書けてるやつの作品にたいしてだけだな

440 名前: 忍法帖【Lv=9,xxxP】 :2011/07/08(金) 22:57:09.49 ID:GWRss8G/
そもそも冒頭にキャラスレの妄想からって注釈があるじゃん
そういうこと踏まえてみることも必要じゃないの?

441 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/08(金) 23:14:23.84 ID:+FygPjou
頬よりちんこを濡らしたいな

442 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 02:52:17.34 ID:t6/QIk6t
細かい心理描写とか見たかったらSLさんの作品を読むといい

443 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 02:57:08.36 ID:VSYjpRK5
あやせが可愛すぎて生きるのが辛い

444 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 03:25:47.84 ID:pySF3TKO
>>442
どこらへんに心理描写があるんだ?
SLの京介は主体性が希薄だし、あくまでキャラの状況を説明しているだけで
「こう思った」「感情があふれた」なんて表現はなかったはずだぞ。

どこを読んでそう思ったんだ

445 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 03:36:26.05 ID:2kAvp+iI
はいはーい、専用スレでねー

446 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 05:31:37.77 ID:KXEkNyio
要はあやせがかわいいってことだろ?
何も疑うことはないさ。
あと加奈子もかわいい

447 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 10:07:47.69 ID:OGGFC3oh
エロパロも結局はパロディなんだから何をどんな風に書こうが書き手の自由だし、他人のオナニーに自分だけの作品論(笑)を押し付けて文句言うのも愚かな話だろ

人には人の妄想したもの書きたいものがあるんだから、内容に文句あるなら自分で書くかスルーすればいいし、なにより加奈子かわいいよ加奈子メルルコスもいいけど新妻加奈子は正義(*´Д`)ハァハァ


448 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 11:50:51.69 ID:V1FqvzmK
おわってんなー

449 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 12:44:59.74 ID:SZDKc1YU
>>446
桐乃だって可愛いですわい!

450 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 15:47:15.36 ID:5mwSXUAV
逆に黒猫はクソ不細工

451 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 15:58:26.63 ID:GPwakvpn
キャラsageは不快にしかならないからやめとけマジで

452 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 17:17:26.76 ID:kKy2CR3L
荒らしに触れるなよ

453 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 17:52:35.35 ID:zch7wW7c
GJ


さて何回リヴァイアサンといったか数えてみてはいかがでしょうかwwww


454 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 18:16:58.75 ID:VSYjpRK5
>>450
ちょっと表出ろ

455 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 18:38:21.18 ID:wzMC5Y78
          ..:::´::イニ三三三三≧ミ{ケル'
        イ=ミ^三≫:'^⌒^⌒^⌒^⌒^\
      /{{{麥}ル'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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      |::::::::{i:i:| ::::: / ::::::::::::::::::::::::::| ::::::::::::::: |::|
      |:::::::::{i:i|:::::::: ‥  l i ノ ̄ ̄`ヽ、―ニ 二  <表へ出た結果がコレよ
     !::::: {i:i|:::::::i|:::;∴. / ´`ヽ _  三,:三ー二
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       l:::::::八 :::小. :::::::(`ー‐し'ゝL _  
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        |::::::|::::::/ \ ゚^'〜、{乃    }:::ヽ
        | ::::j/    ≫=- ._V厶.   }}::::::::.
.      厶≪         {{{麥}》   /{:::::::::}
.      /:::::::::::\        人赱人/´::::::::::::::\
     /:::::::::::丶:::丶、____,/ / ∧ \:::::::∨:::::::::〉
     {:::::::::::::\}:::::::::⌒^⌒::{  / 丶  〉::::::::::::::::/

そしていつも以上の不細工と化す黒猫氏であった

456 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 18:44:50.74 ID:v60NZAQ/
ごめん、ここ俺妹に関係ないキャラは出禁だから

457 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:04:47.83 ID:OGGFC3oh
キャラ叩きは余所でやってね
アンチスレは探せばすぐ見つかるよ
ここはエロパロ、愛でる場所だから叩き良くない

458 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:18:03.46 ID:NxGrko8j
京介×桐乃少ないぞ!
もっと書け!書いてくださいお願いします!

459 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:33:34.06 ID:Yy/upP0h
スレの流れを無視してブリジット×京介物を投下
>>432の激励で何とか書き上げたよ…
では2レス程貰いますわ

460 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:35:54.72 ID:Yy/upP0h
「本当にごめんなさいお兄さん……」
俺がいるベッド脇の椅子にチョコンと腰掛けたブリジットが、何度目かの謝罪の言葉を口にする。
「ブリジットもう気にするなって」
「でも、私のせいで……」
こんな申し訳なさそうな、そして今にも泣きそうな顔をされたら俺も困ってしまう。

この状況を説明するには2時間程前に遡る。
俺はブリジットと一緒に、ある雑誌グラビアの打ち合わせに行っていた。といってもお菓子系タイトルとかのいかがわしい雑誌じゃないぞ。いわゆる女子小中学生向けのティーン雑誌って奴だ。
大体あんな裏地を外して乳首や縦筋丸見えなスクール水着や、局部だけ泡で隠したエロい恰好をブリジットにさせられるか!そんな仕事を入れたら、俺は社長をぶん殴った後ブリジットを連れて逃げるね!
おっと話が逸れたな。ともかく俺達は、撮影スタジオを併設してる雑誌社でどの衣装を撮影に使うのか等を、スタイリストさんとかを交えて打ち合わせしたわけだ。
打ち合わせが終わり帰ろうとした時『今他の女の子の撮影しているのでよかったら見学していきませんか?』
雑誌の担当者から声を掛けられたので、俺とブリジットは見学させてもらう事にした。
ところが見学してる最中、突然壁に立て掛けてあった材木の束がブリジットのいる方へ倒れてきた。咄嗟に俺はブリジットを抱きしめ、自分の身体を楯にした………

あれだけの材木の下敷きになって、左足首捻挫と右手の骨に軽いヒビ、そして後頭部に軽いコブ、この低度ですんだのは運がよかったのだろう。しかし出版社が手配してくれたとはいえ、個室とはねぇ…
事故のお詫びなのか、TVや小型冷蔵庫、それに枕元の壁に鏡付きの洗面台までついてる。詳しくは知らないが、結構高いんじゃないかこの部屋?
「それよりブリジット、肘の怪我は大丈夫か?」
ブリジットの左の肘には、小さな絆創膏が貼られていた。俺が抱き抱え、床に倒れた時にできた擦り傷だ。
「こんなのたいした事ありません。それよりお兄さんの方が入院だなんて……」
「入院といっても、念のため精密検査するだけだから2〜3日で退院だから心配するなって」
俺はそう言ってブリジットを安心させようとしたのだが
「それもそうなんですが…あの……その……」
何か様子がおかしい。何と言うか、言いづらい事をどうやって言おうか迷ってる感じだ。それでも意を決したようにブリジットは口を開いた。

「お、お兄さんはしばらく利き腕が使えませんよね!?」
「ああ、そうだな」
どうしたんだ?急に声が上擦りだして…
「だから…その………自分で『処理』できませんよね!?」
…………………はい?
「か、かなかなちゃんから前に聞いたんです。男の人って、定期的に『処理』しないと色々と大変な事になるって…」
あのガキ!何て事をブリジットに吹き込みやがる!まるで俺が、毎日猿の様にオナニーしてるみたいじゃねぇか!
「え〜と…、今から『処理』しますね…」
大体あいつは普段から俺の事を舐め過ぎだ。一度キツく言っておく……え?
加奈子の事に腹を立てていた俺は、ブリジットの声に反応するのが一瞬遅れた。
ブリジットは真っ赤な顔しながら、俺の着ていた浴衣(病院が貸してくれた)をはだけ、やや強引にトランクスをずり落ろした。そしてボロンと露出したリヴァイアサンを、その小さな手で握るとゆっくり扱き始めた。
その手技に、俺のリヴァイアサンは素直に反応し、みるみる固くなっていく。するとブリジットは顔を寄せると、その小さな口を一杯まで開きながらリヴァイアサンを飲み込んでいった。
「うっ…」
暖かな口内で、竿に絡み付く柔らかな舌の感触に俺は思わず声を漏らす。そんな俺の様子をちらっと窺うと、ブリジットはゆっくりと唇をスライドさせていく。
ちゅぷ……ちゅぷ………
軽く揺れるポニーテールの動きに合わせ、ブリジットの唾液で濡れたリヴァイアサンが見え隠れする。そして時折、俺の気持ちいいポイントを確認するかの様に俺を見上げるブリジットの視線。
そんな様子を見ている内に、俺は次第に、ここが病室であることを忘れていった…。


461 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:37:18.68 ID:Yy/upP0h
ジュボ…ジュボ…
いつしかブリジットの奏でる口唇奉仕の水音は激しさを増し、俺のリヴァイアサンはこれ以上ない程硬直していた。
カリ首だけを咥え鈴口を舌先で刺激する、かと思えば一杯まで突き出した舌先で竿を下から上に、上から下へツー…と舐め上げていく。快感が単調にならないよう、俺の様子を窺いながら刺激を与えてくる舌技に俺は呆気なく限界を迎える。
「くっ…ブリジット、そろそろ限界だ……!」
「いいですよ…、私のお、お口に遠慮なく出しちゃって下さい」
俺のギブアップ宣言を聞くと、ブリジットはさらに頬を染めながらリヴァイアサンを咥えこんだ。そしてさっきよりも、さらに派手な水音を立てながら顔を激しく上下させていく。それにより俺の射精感はさらに高まっていく。
「出すぞブリジット!」
そしてついに堪え切れなくなった俺は、無意識に動かせる左手でブリジットの頭を掴むと腰を突き出し、激しく射精した……。
射精による腰の痙攣が収まるのを見計らうと、ブリジットはコクン…コクンと喉を鳴らし精液を飲み干していった。その様子に半萎えだったリヴァイアサンがみるみる硬度を取り戻していく。
「ん…んんんんん!?ぷはぁ…」
ブリジットはいきなり口内で再度固くなったリヴァイアサンに驚き、慌てて口を離す。その際に、僅かに残った精液が口元から零れた。
「お、お兄さん!?今出したばかりなのに……」
「いやすまん…お前が美味そうにザーメン飲んでいる様子につい興奮しちまってな……」
「お、美味しそうになんて飲んでないです!ベッドを汚しちゃいけないし、それにお兄さんの出したものだし………」
俺の言葉にブリジットは真っ赤になり抗議しながら、次第に俯き最後にはよく聞こえないくらいの声でゴニョゴニョと呟いた。
「それよりもう一度『処理』しないといけませんよねソレ……」
チラチラとリヴァイアサンを見ながら聞いてくる。
「でも…またお口でしたら、お兄さんはすぐおっきくしちゃいますよね……?」
いやいや!俺そんなに絶倫じゃねーし!今回はたまたまだよ?ブリジットが一生懸命俺の精液飲んでいる様子が健気で可愛くてつい、な……
「だ、だからさっきと違う方法でしないといけませんよね…。と、ところでお兄さん。足の痛みは酷いですか」
ブリジットの問い掛けの意味を理解しつつも、俺は敢えてすっとぼけてみる。
「そうだな〜、痛くないといったら嘘だけど、女の子一人跨がるくらいは平気だが…それがどうかしたか?」
すると、ブリジットは『意地悪…』といった表情で俺を見ると、ゆっくりとスカートを脱ぎはじめた……
 


やれやれ……入院したって事務所から聞いたから、見舞いに来てやったのに……元気過ぎるじゃねーか
こりゃもう少し経たないと中に入れねぇな。どっかで時間潰して……
あ?…おいおい、あそこ走ってくるの桐乃とあやせじゃね?ったく面倒くせぇな……
さ〜て…どうやって時間稼ぎするかねぇ…ブリジット、マネージャー、こいつは貸しにしとくかんな?
一つため息をつくと、病室の番号を確かめながらこちらに向かってくる桐乃とあやせの方に加奈子は歩き出した。

おしまい

462 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:41:21.82 ID:Yy/upP0h
本番シーンは蛇足かな〜って削ったらあんまエロくならなかったような……
もうちょっと構成力を身につけたいもんだ

463 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 20:48:23.90 ID:VSYjpRK5
おつ

464 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 22:12:57.83 ID:XmrnynDf
ロリとはやるではないかこやつめ
GJをくれてやるでおじゃる

465 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:03:15.48 ID:RWO48o6Y
すまん。どこがGJなのか解説してほしい。

466 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:09:42.22 ID:2ZLC/RHz
いやうまいと思うよ。
過程も最低限で解説してるし文章もバランスが取れてて読みやすい。


強いて言えば幼女特有の柔らかさとか唾液の甘さ、人としての罪悪感を書けばよかったんじゃないかな

467 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:46:30.53 ID:aXR1ryQ7
こういう小ネタ好きだわw
GJ!

468 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:48:09.66 ID:siNWRpXL
『僕と契約して、魔法少女になってよ!』

甘言に乗せられて、終わりない戦いに足を踏み入れたのはいつの日の事だったろう。


思えば、私がバカだった


あのとき、私は死んでもいいと思ってた。
クラスメート。私の、一番の親友。
容姿でも、成績でも、そしてあいつが注ぐ愛情でも……
私があの子に勝っていることは、太陽が登って沈むように当然のことと思っていたし、密かに優越感も持っていた。

なぜそのことを知ったのかは、もう思い出せない。でも、多分、交わった証がゴミ箱に捨ててあったのを偶然、目にしたからじゃなかっただろうか。

私は逆上して、あいつを締め上げた。そうしてようやく聞き出した相手の名前に…私は絶句した。






469 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/09(土) 23:59:27.03 ID:siNWRpXL
あいつの言うところによると、しばらく前から、彼氏彼女の関係は続いていたらしい。

そして、自分が妹に好意以上の感情を向けられていることも、知らされていたのだと言う。
私が時々声を抑えて、あいつを呼びながら一人でしていたそのことまで、知っていたようだった。

買った負けた、どころじゃない。私は、情けすらかけられていた

胸がいっぱいになり、押しつぶされそうで、その場に居られなくなってしまった。

家を飛び出し、どこまで走ったのだろう。
全速力で走ったし、ひょっとしたらあいつが途中まで追いかけていたのかもしれないけど、どうでも良かった。

470 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 00:16:49.88 ID:5eczmUic
疲れて立ち止まると、曇り空が染まりかけ、もう夜になろうとしていた。

でも、どんな顔をしてあいつと顔を合わせればいいのだろう。

どうにも足が動かず、立ちすくんだその時、
私は出会った

願いを叶える代わりに、魔法少女として戦わなければならないのだ
その、砂糖菓子みたいな甘ったるい生き物から持ちかけられた、契約。

二つ返事で飛びついた。
なんでもできるような強い力には、それ相応の代償がつきものということも薄々分かっていたけれど、どうでも良かった。

かくして私は、時間すらねじ曲げて、あの子の代わりに、兄と結ばれた。

こういう感じのクロスを希望します!
だれかかいてください!><

471 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 01:54:17.89 ID:1Bma0MjZ
>>470
しょうもない

472 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 07:59:04.90 ID:v6ZFx6rc
混ぜるな危険

473 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 08:41:19.63 ID:g+Xqfp3r
つまらない

474 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 08:41:27.67 ID:2vRGumBL
混ぜるな残念!

475 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 18:55:31.32 ID:aAv0Br7H
有毒な作品が発生します。ご注意ください。

476 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/10(日) 19:21:23.59 ID:r+SriyqA
エロパロ板の空気には合わないな
VIPでなら見たい

477 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 04:06:51.44 ID:DnkP9cax
あまりにも酷いな。
SL氏はまだか

478 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 05:00:09.24 ID:lJNX69nn
>>468-470
クロス作品ってのは、元の作品が同じカテゴリだからこそ映えるんだよ
学園×学園、ファンタジー×ファンタジー
なんでもかんでも混ぜりゃいいってもんじゃねぇから
まどまぎ厨はそんなこともわかんねぇのか?

半年ROMってろよカス

479 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 09:24:40.57 ID:4usRKRsB
事あるごとに何かを叩いては悦に入ってるようだけど、コイツらはどうしてこんなにエラそうな態度なの?

アニメ化以前の平和が全て懐かしい

480 名前:短編『シスコン』 ◆ACPRLbMxAk :2011/07/11(月) 20:47:48.04 ID:5jEyWHpx
「これ見てくんない?」
「なんだこれ?」
「アタシの『妹空』がアニメ化されるでしょ?」
「ああ、そうだったな」
「んで、原作だけじゃ足りないんでオリジナルを追加することになったの」
「それが、このシナリオか?」
「そっ! どうよ?」
「どうって‥‥‥読んでみなきゃわかんねえよ」
「じゃあさっさと読む!」
「へいへい」

‥‥‥‥‥‥

「なあ、お前の『妹空』のオリジナルを読んだけどさ、なんか違うんじゃね?」
「え!? どういうことよ?」
「なんというか、手を抜いてあるというか‥‥‥」
「アタシが手抜きしたって言うの?」
「そうは思わねえけどよ、薄っぺらな感じがするんだよ。特に真ん中あたりが」
「ムカツク!」
「おいおい、それはないだろ。俺は感想を言ったまでだ」
「‥‥‥じゃあ、どうすればいいのよ?」
「この『妹空』には、真ん中あたりに手を入れるべきだろうな」
「は‥‥‥?」
「いや、だから真ん中に手を入れろっての」
「なッ!! アンタ正気なの!? 『妹空』の真ん中に“手を入れろ”なんて!」
「正気か?って、いきなりどうしたんだよ?」
「信じらんない! まさかアンタそこまでシスコンだったなんて!」
「はぁ? 意味わかんねえよ!」
「うっさい! このシスコン!!」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

「‥‥‥と言うことがあったんだけど、お前達どう思う?」
「やれやれ、相変わらず無意識に地雷を踏んでしまう蒙昧な雄だこと」
「京介氏、それではきりりん氏の取り乱し様も仕方ないでこざるよ」
「何で!? 俺どんだけ不味いことをしたっつーの?」
「まずは携帯で、全知識を掌る神に問うてみることね」
「‥‥‥要するに、ググれってことか? 一体何を?」
「『シスコン』を中国語でどう書くか、よ」
「『シスコン』を中国語で、ね‥‥‥ググると‥‥‥『妹控』か」
「じゃあ、その『妹控』の文字をよく見てみなさい」
「え? よく見ると‥‥‥‥‥‥ギャ――――――ッ!!!」
「ようやく気付いたようね。無意識なシスコンだこと」
「いやはや、京介氏はきりりん氏のことが大好きなようですなあ」


『シスコン』 【おしまい】

481 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 21:45:29.80 ID:tdyP3UI5
ハイハイわかったわかった

羊がネズミで家になる シリーズはクイズ板でやれ


482 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 22:04:09.15 ID:N6TAswqq
>>480
こういうネタ嫌いじゃないです。
ところで作者(伏見)、妹空ってタイトルにしたのは、これ知っていたのか、はたまた偶然か…。
これはさすがに、後者っぽいけど。

483 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/11(月) 22:13:11.00 ID:OuhdTiX7
>>480
なるほど、面白かった。
こう言うネタ、好きだ!

484 名前: 忍法帖【Lv=20,xxxPT】 :2011/07/11(月) 22:27:41.19 ID:LVtSrTKo
流石シスコンw

485 名前:432:2011/07/12(火) 00:42:36.46 ID:sXZdwMW9
>>462
遅くなってすまん。良く書いてくれた。
ラストの加奈子も良い!
またよろしく。

>>480
相変わらずセンス良いねー。

486 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/12(火) 01:59:07.01 ID:gjzvBLyT
これで責められるのは流石に不憫だなw

487 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/12(火) 02:32:08.34 ID:PaisyzHM
>>479
つ鏡

黙ってSLさんを待ってろカス

488 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/12(火) 15:41:08.40 ID:V+cGrsfE
あやせかわいいなァ
もっとヤンデレっぽいSSがあってもいいんじゃないか

489 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 00:33:24.74 ID:xWHy14Uc
VIPスレから
桐乃×京介で【願い】を執筆中です。

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310480351/

初投稿なので至らぬ点も多いですが、いろいろアドバイスお願いします。

490 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 00:46:38.42 ID:Ilzq+hmb
 __     __  ___ _____  _____     ___ ___    ___
 |   |    /  /  |  //       | /__  __/ [][] _| |_| |__ _| |_
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 |.     /  /  /  /   / 
 |    /. /   | ./   /  
  ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄.  ̄ ̄ 

491 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 03:41:45.08 ID:fWDLhGjS
>>489
力の有る書き手(このスレならSL氏)の作品をよく読んで参考にするといいよ

492 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 08:21:00.32 ID:CXzdOuRH
クロス系ってダメなの?
このスレの人間は、読むと引き付け起こして死ぬのか?

493 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 08:23:55.64 ID:NAUm5yFe
うん死ぬからやめて

494 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 08:50:48.84 ID:wjE1OZfI
死にたいから投下して

495 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 11:29:25.75 ID:Yc/kYWWQ
アニプレ同士ならなんとか

496 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 11:59:17.68 ID:5qyJ7CLh
というかマジでやめて

497 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 14:55:11.71 ID:G4NxBEUe
以前、俺妹×とあるのクロスものを見たことがある。
だが、内容はひどいものであった。まず、作者は確実に桐乃アンチであり、アンチ感が強すぎる。
また、キャラが崩壊しまくり非常に駄作であった。読む価値なし。

498 名前: 忍法帖【Lv=21,xxxPT】 :2011/07/13(水) 17:15:44.43 ID:/8xDeUwe
クロスものでも良作はあるよ
ただ上手く扱えない人が多いだけさ

499 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 17:23:15.02 ID:Yc/kYWWQ
たとえば他作品の主人公が乗り込んできて俺妹の女性陣に手当たり次第に手を出すとか

500 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 18:02:27.35 ID:ebOGfB7L
とあるとめだかボックスのクロスはおもしろかった
クロスだからこそ、キャラらしさとか互いの作品を尊重しあうとかが必要なんだと思った

製作速報VIPが落ちてて毎日楽しみにしている安価SSが見れない・・・



501 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 18:10:36.96 ID:XJxIVZu1
製速でSS書いてる馬鹿がいんのかよ

502 名前: 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2011/07/13(水) 18:15:54.71 ID:nVZTLwlU
なんでバカにするのか理解できん
どこで書こうと個人の勝手だろう

503 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 23:06:43.50 ID:qUI87DA9
>>499
そんなもの誰も望まん!!

504 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/13(水) 23:57:38.11 ID:MelJxNeq
そしてオチは誠死ね

505 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 01:31:02.06 ID:WJpmVK+n
たった一人の書き手が不在なだけで、
こうも糞スレになってしまうとわ・・・・・

506 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 01:40:27.63 ID:Oqch8hde
そのたった一人の書き手とやらがさんざん引っ掻き回した結果がこの廃墟だがな‥‥

507 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 01:42:04.24 ID:H2JTEfpT
じゃあ俺が書いてやるよ
3日で書いたる
首を長くして待っとけ

508 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 02:41:08.11 ID:jqpOBrB4
8巻出てモチベ保てなくなったってのもあるだろ

509 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 04:43:10.89 ID:to4GF03v
8巻で京介が事実上の賢者化宣言しちゃったから、あまり原作意識しすぎると
桐乃以外のキャラと、どう絡めていいかわからないってのは、ある
二次創作と割り切って、原作のことを忘れれば良いのだけど

510 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 06:24:27.99 ID:2nmDJKvC
SSVIPまだ見れない…

511 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 06:46:12.17 ID:h9h1dZ28
鯖代未納で止められるのはあそこではよくあること

512 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 06:58:31.17 ID:uVwiZoGa
製作速報なんかで書いてるアホのはどうでもいいけど、
SS速報も同じ鯖なんだよな。ここ落ちるとなげーから困る。

513 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 07:10:02.34 ID:mizAP8lG
>>509
ふるいにかけられた感じ
好きだ→付き合おう
って小ネタレベルの安易な展開が使えず、原作を表現しようとするならより微妙な距離感の描写が求められる。


514 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 09:59:54.48 ID:6IYlG79m
悪貨は良貨を駆逐するとはよく言ったものだ

早くSS速報直らんかな…

515 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 11:34:53.56 ID:jqpOBrB4
>>513
きりりん以外は止められちゃったからな
スレも妄想爆発してるのきりりんスレぐらいだし後はお葬式ムードか

516 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 11:45:39.48 ID:eoYOMTSi
なし崩し的に〜というパターンだと、それこそ桐乃が最有力だしなぁ。
無理なく状況を変化させようと思うなら、相当切り込んだイベントが必要だ。

状況を変化させないまま、いろんなものに縛られつつもなんとなく心が触れ合っている図なら書けるかもわからんが
それはそれで需要はあるんだろうが、ここの空気じゃないな。

517 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 15:42:48.40 ID:eal7TcCg
Vip・・・

518 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 22:26:19.91 ID:eoptj8BU
保管庫にある、俺の妹がこんなにエロ可愛いわけがないってもうあのあとは投稿なかったんでしょうか?

519 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 22:36:21.60 ID:9WMXMAjp
エロパロで未完はよくあること

520 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 22:51:42.94 ID:90wkXXSJ
思いつき短編投下します。
・18レス
・ギャグ、ややエロ
・桐乃視点
・京介×黒猫(の姿をした桐乃)
・キャラ崩壊、ヤンデレ注意

521 名前:マインドスワップ 1/18:2011/07/14(木) 22:54:04.30 ID:90wkXXSJ
 ひなちゃんもたまちゃんも姉の急変に戸惑いを見せたけど、それははじめのうちだけで、二
三日も経つとなじんでしまった。あいつの両親も、そんなに訝りはしなかった。ひなちゃんが
手にした妹空とあいつの姿をしたあたしとを見比べて、「またなんだ……」とため息を吐いて
いた。この家では長女の乱心は珍しくないのだろう。夏休みのおかげで学校でへまをやらかす
心配もなかった。ときどき携帯のほうに、せなちーから「部活に来てください!」とメールや
電話が来たくらいで、それも体調不良を装って対処できた。
 高坂桐乃――あたしの元の体には、やはりというべきか、あいつの心が入っていた。なぜそ
れを知ったかというと、体が入れ替わった当日、あいつに呼び出されたからだ。


 ひとけのない公園の真ん中で、自分は黒猫だ、朝目ざめたら高坂桐乃になっていた、そう告
白する高坂桐乃に向かってあたしは、
「何を寝ぼけているのかしら? とうとうビッチ菌に脳をやられてしまったのではなくて? 
まあたしかに、スイーツな脳髄には虫がたかりやすいものね」
 そう言って、あいつ自身のものまねで誤魔化した。
 あいつはあたしの顔で青ざめ、消え入るようにうなだれると、
「そう。すまなかったわね……ううん。ごめん、黒猫」とわざわざあたしの口調で言い直し、
「あたし、なんだか頭痛が痛いから、今日は帰るね」
「そう……お大事に」
 公園の門に隠れて、あいつの背が見えなくなった。とたんに足が震えだした。がくがくと止
まらず、立っていられなくなった。
 あたしは、こんなことができてしまう。できて、しまったのだ。

 ベンチに腰掛けて震えの静まるのを待っていると携帯が鳴った。メールのタイトルは“桐乃
のことなんだが……”で、そして差出人は“高坂京介”――
 “黒猫”の恋人で、“あたし”の兄貴――
 ――ううん、それは違う。兄貴はもう、あいつの恋人なんかじゃない。
 “京介”は今、“あたしの恋人”なのだから……


 そうして、あたしとあいつが入れ替わって、一週間が過ぎていた。


522 名前:マインドスワップ 2/18:2011/07/14(木) 22:55:22.03 ID:90wkXXSJ
「好きっ! 好きなのっ! 好きなの京介っ!」
 濡れそぼった京介の首筋に顔を埋めながら、あたしは切れ切れに叫ぶ。
「あなたのことがっ、誰よりも何よりもっ! 京介――!」
 なんどもなんどもキスをする。首筋、顎、鎖骨、肩、唇と、キスの雨を降らす。――痕にな
るように、あたしの証をつけるように。
「好き。好きよ。あなたのことが、好き……あたし、あんたのことが好き」
 なんどもなんどもかきむしる。背の皮が擦りむけ、爪が欠け、指先に鮮血を絡ませて、かき
抱き、突き立て、引っ掻く。――猫が毛玉をいたぶるように、あたしの想いを刻むように。
「もう誰にも渡さない――誰のものにもならないでよ! もういなくなっちゃやなの! ずっ
とそばにいてよ! 私だけのものでいてよ! あたしもあんただけのものになるから!」
 もう汗なのか唾液なのかも、どちらが組み敷き組み敷かれているかさえもわからない。あた
しと京介は、からだじゅうどろどろにしてむさぼり合う。からだの芯はとっくのむかしに開い
てしまい、さんざんにかき回されかき出され、蕩けきっている。ばかになってる。なかで絶え
ずぐねぐねと形を変えるものが、あたしなのか京介なのか区別つかない。
 肌の打ち付くたびにほのかな温もりが広がり、時折一瞬、背筋を駆け上がる途方もない寒気
に打ち消され、再びはじめからやり直される。胸の奥がひどく切なかった。灼けつくようだっ
た。
 京介の肌は火照りでばら色に変わり、汗ばんだ額には乱れた前が張り付いていた。唾にまみ
れた唇は、汗の筋と一緒にてらてらと光っていた。
「好きって言って。ねえ京介好きって言ってよねえ! 私のことが好きだって、ん……キス、
するの……」
 唇がきらきらと橋を渡しながらはなれると、あたしは兄貴の鎖骨に頬をすり寄せて、湿った
肌の香を肺いっぱいに吸い込んだ。思わず頭がくらりとする。ぱんつなんかとは比べものにな
らない、なまのにおいだ。
「好き……だ」
 荒い息をしながら、京介が言った。
「俺も好きだ。好きなんだ。愛してる。黒ね――」
 好きだと言ってもらえただけでよかった。あたしは京介の口に指を差し入れていた。
「ふろへほ?」
 と、あっけにとられた京介をよそに、あたしは開いている方の手で京介の手をつかみ、自分
の口にもっていく。


523 名前:マインドスワップ 3/18:2011/07/14(木) 22:57:25.11 ID:90wkXXSJ
 そしていつも京介自身にしているように、京介の指先をちろりと舌先で撫でてから、口をす
ぼめ、丸めた舌で包み込むようにして吸い込んだ。
 ちゅっぱちゅっぱという水音がしだいに、じゅぼじゅぼという下卑た音に変わる。唇の端か
ら唾液が伝い降りているのが自分でもわかる。あたしは今、ひどくみだらな真似をしている。
人間の分際で、猫よりも卑しかった。
 京介はあたしの意図を察したのか、くすぐったそうにしつつも、いたずらっ子みたくにやり
と笑った。それからあたしの差し出したままの手首をがっちりつかんで口を離し、赤黒く染ま
った私の爪の隙間を、舌先でこじ開けようとするように舐めはじめた。京介は舌だけで血と皮
の塊をこそげ落とし、落ちない塊は地道に唾液で溶かしながら、私の指を一本一本、丹念に洗
っていく。
 思ったよりくすぐったいけど、手首の震えを負けん気でこらえているうちに、だんだんとむ
ず痒いのが病み付いてくる。のみならず、京介の指のほうも私の口内を辱めているように感じ
られてくる。
 これは、もうひとつの交合だった。あたしと京介は、下と上の両方で、交わっていた。
 いつしかあたしたちはお互いの手首から手をはなし、させるがまま、なすがままになってい
った。あらかた舐めて口から離すと、もう一方の手を差し出し合い、また同じように指の交合
を再開させる。
 あたしはきれいにしてもらった手を京介の背中に回し、京介もあたしの唾でふやけた手で、
私の腰を抱き寄せた。胸がこすれて、新たな刺激が加わった。京介の腰がかすかに震える。あ
たしがみだらなせいだった。
 私のほうがハミガキするように口腔全体で指をしゃぶるのにたいして、京介はというとぴち
ゃぴちゃと音を立てて舐め回す。ちょっとおもしろい対照といえた。これでは、どっちが猫だ
というのだろう。
――いや、それは違う。
 と、どこかで冷たい声が響き渡った。
――“あたし”は“私”じゃない。“あたし”は、“あたし”なのだ。
 聞きたくはなかった。聞こえないふりをした。
「ひょうふへ」
 恋人の名を呼びながら、私は顔を近寄せた。唇と唇で指を押し挟み、舌と指をぐちゃぐちゃ
に絡ませた。絡んだまま、互いのどこに舌を這わせているのかわからないまま、顔を寄せ合い、
ぴんと伸びた舌先を踊らせる。


524 名前:マインドスワップ 4/18:2011/07/14(木) 22:58:57.16 ID:90wkXXSJ
 私はそのうち、指を押し退けて京介の舌に吸い付いていた。それはもはやキスとも呼べない
しろもので、格好も気配りも忘れ去り、まるで渇きを癒やそうとするかのようにじゅるじゅる
と音を鳴らして唾をすすり、鼻を幾度もぶつけ合い、相手の舌を飲み込んでしまおうとしてい
る。濡れた指先がすうすうした。それ以外の感覚はなくなっていた。口づけし、ひとつになっ
ていることこそが自然な状態だった。感覚のないのがなくなるのがいやだった。

 けれど京介は残酷だった。腰の律動を再開したのもつかの間、京介は血走った目で私から彼
自身を引き抜き、私の体をうつむけにした。そして、後ろから一息に貫いた。
「か、はっ……!」
 鈍痛とともに襲い来る戦慄で、私はひどくだらしない顔になっていたと思う。無声の悲鳴で
口をぱくつかせたと思えば、顰めた眉は一瞬で弛みきり、犬のように舌を垂らして、からだじ
ゅうぐったりとなってしまった。
 京介はそんな私の腰を押さえこんで容赦なく前後に動き出す。私は目を見開いて、ベッドに
手足を投げ出したまま、人形のようにがくがくと揺れる。
 まばたきできずに涙があふれる。息もできない。意識がどんどん霞んでいく。
 そしてぼんやりと――
「……猫……黒猫……黒猫っ!」
 そんな声が聞こえた気がして、
「嫌ぁ!」
 あたしは叫んでいた。
 気がつけば、垂れた黒髪が視界を覆っている。京介が背後から手首を引っ張り、あたしは無
理に上半身を反らされていた。つつましやかな乳房が宙づりで揺れているのがわかった。深く
深くからだを串刺しにされる都度、意識が飛んでしまいそうになる。
 意識は途切れ途切れでも、あたしのからだは叫ばずにはいられなかった。
「嫌! 嫌なの! 嫌、嫌ぁっ!」
「なにが嫌なんだっ! 黒猫っ! なにが嫌なのか言って見ろよ!」
「嫌っ……イヤイヤイヤ。違うの……違うのぉ!」
「どこが違うんだ! こんなにアヘっといてなにが違うってんだ黒猫っ!」
「そうじゃ……イヤぁあっ――!」
「黒猫っ黒猫っ黒猫っ黒猫っ……」
 ――あたしはあいつじゃない。
 その言葉が、どうしても言えなかった。もう声すら出ない。意識が途絶える。


525 名前:マインドスワップ 5/18:2011/07/14(木) 23:00:50.72 ID:90wkXXSJ
「ひっ……!」
 あたしの腰を抱えたまま、兄貴が立ちあがっていた。私の体はさらなる重力を引き受けるこ
とになり、より強く、より深く貫かれる。
「好きだ黒猫! 最高だ黒猫! もうぜったいに離しゃしねぇ!」
 ――京介はもう離さないと言ってくれた。
 前のめりで髪を揺らすあたしの耳元で、そうだれかがささやいた。
 不意に髪がかき上げられる。
「このきれいな黒髪ロングもっ! ここのしまりもっ! おっぱいだってっ……最高だ!」
 京介は膝をつき、最奥ばかりを執拗につつきながら、両手であたしの胸を揉みくちゃにした。
 ささやきは続く。
 ――“私”は最高だと、京介は言ってくれる。
「あやせもっ! 麻奈実もっ! 沙織もいらないっ! おまえだけが……俺にはおまえだけい
てくれれば……! それでっ、いいっ!」
 ――そう。“私”だけいれば、京介は仕合わせなんだ。だから――
「黒猫……黒猫ぉおおおお!」
 ――“あたし”が“私”になればいい。

 ぞくぞくと快感が走り抜ける。ひときわ大きな快楽の波がすべてを押し流す。迷いも、慎み
も、遺恨も、後ろめたさも、あたしの残滓も、その一切を洗い清めた。
 そうして絶頂の間際、引き抜かれる感覚を手繰り寄せ、
「く、黒猫?」
 私はすかさず回した足で彼の腰を挟んだ。“私”の体は柔らかいのだから、このくらいは容
易いものだ。
「出して」
「お、おい」
「そのまま出してちょうだい」
「で、でも俺たちまだ……」
「大丈夫よ。大丈夫だから。それに――」
 私は振り向いて、彼のかたちを確かめるように、下腹を撫でた。
「あなたの子なら、産んでもいいわ」
「は、は……」
 京介の表情が変わる。やけっぱちめいた半笑いを浮かべたのは一瞬で、瞬く間に彼自身が押
し入った。
「くろねこ、くろねこ、くろね……」
 もはや声にならない。京介は理性の残り滓すらかなぐり捨てて、一心不乱に私を苛む。
「そう! そうよ! そのまま孕ませて! 子宮にザーメン味覚えさせてぇ!」
「はぁっははぁ! 孕め、孕めよこの! 孕め黒猫! 特濃チンポミルク種付けすっから! 
もう学校行けなくしてやっからな! この、このこのこのこの! 黒猫っ、黒猫! 黒猫ぉお
っ……あつっ――」
「あ、は……!? 出てる……? 出てるの……? ああ、これが、膣内、射……精……」


526 名前:マインドスワップ 6/18:2011/07/14(木) 23:03:07.82 ID:90wkXXSJ
 幾重もの絶頂で薄れ行く意識のなか――
「きり、の……」
 京介の声で幻聴が聞こえた。おそらくそれは、“私”による“あたし”への惜別の言葉だっ
たのだろう。


 京介の寝言で目がさめた。
「うぅ……違う、違うんだ……桐乃……」
 夢のなかでも妹に悩まされているらしい。私は少々忌々しくなって彼の頬をつねった。
「……ご、誤解だ。黒猫……おまえは俺の……」
 起きてはくれなかったけど、夢の内容は変えられた。
 ベッドから降りると、足の間から冷たいものが伝い降りた。まだなにか挟まっているような
心地で歩きにくい。私は用意してあった絆創膏で蓋をしてから、ティッシュで股を拭った。脱
ぎ散らかされた服のなかから下着と白のワンピースをとり、それからついでにトランクスにも
手を伸ばす。
「っふ……これであと十年は戦えるわね」
 なんて独り言をつぶやきながら、きちんと畳んでジップロックにしまう。
 ワンピースが汚れなくてよかった。これが着られなくなってしまったら、残るは黒いドレス
だけなのだから。白いドレスもあるにはあるのだけれど、あれはこの前、京介ががんばりすぎ
て翼が外れてしまい、未だに直せていないのだ。
 髪をかき分けながら京介の耳に口元を寄せ、
「また明日ね、京介」
 うなされる彼の頬に接吻してから部屋を出た。


 壁の薄いことは、誰よりもよく知っている。京介の部屋のドアを閉めてすぐ、私はとなりの
ドアノブに手をかけた。
 鍵はかかっていなかった。高坂桐乃の部屋には誰もいなかった。
 階段のところで立ちくらみがした。私は桐乃と違って体力がないのだった。壁に寄りかかっ
て下腹に触れる。
 あれからなんど出されたのだろう。三度目からあとは覚えていない。新たな生命が胎動して
いるようにさえ錯覚された。私が私の意志で育んだこれは、まぎれもなく私と京介のものなの
だ。
 私はもう、一人じゃない。
 だから私は、あいつと対面することだってできる。

 案の定、高坂桐乃は一階のリビングに居た。カーテンを閉め切って部屋じゅう暗いなかで、
テレビのまえにちょこなんと正座し、大画面に映したメルルに見入っていた。いや、ただもう
見るともなく見ているだけだった。私が扉を開けた瞬間、びくっと肩が跳ねたのだから。
「帰ってきていたのね。けれど、なぜあなたはいつも顔を出さないのかしら。らしくないわ」


527 名前:マインドスワップ 7/18:2011/07/14(木) 23:06:29.92 ID:90wkXXSJ
 私がそう言い放ったとたん、桐乃がすさまじい形相で振り向いた。薄暗くなければ正視に耐
えないほどすごかった。化粧をしていなくとも十二分に美しい顔だちが、これほどまでに変貌
する。それだけの仕打ちを、五更瑠璃は高坂桐乃にしたのだった。していたのだった。
 そう、だからこそ、私は言葉を継ぐことができる。
「いっしょに遊べばいいのに……私たち、友達でしょう?」
「とも……だち……?」
「ええ、そうよ。ぼっちの私には、あなたと沙織くらいしか、ちゃんとした友達がいないのよ」
 桐乃は私の言葉に何か思うところがあったのか、表情をいくぶんか和らげて、そっぽを向い
た。
 そして、本来の高坂桐乃の調子でぼやき始めた。
「と、友達が妙な男に引っかかってるんだから、さすがのあたしもどん引きするっつーの。ぶ
っちゃけるとさ、キモいからもう学校で話しかけんなって感じ?」
「京介は妙な男じゃないわ」
「はぁ? あいつってちょー変態じゃん。ちょっと聞いてよ。こないだなんかあのシスコン、
あ、あたしにね、『おっぱいもませろ』とか言ってきたんだよ? まじやばくない? 妹にセ
クハラするなんて、キモすぎ。あいつの変態顔なんか、もう二度と見たくないし」
「京介はそんなこと言わない」
「うっそだー。そんなこと言ってあんたもあいつにセクハラされてんでしょ? 会うたんびに
眼鏡かけろとか脅されてるんでしょ?」
「眼鏡なんて、絶対にかけないわ。彼は、ありのままの私でいいと言ってくれるもの」
「のろけ乙。あーキモキモ。まじキモ。てゆーかあいつの地味顔自体がもう変態ってか犯罪者
予備軍って感じだよねー。普通さ、あの顔であんなこと言われたらどん引きするっつーの」
「だから、あなたの言うあんなこともこんなことも、京介は言わないわ。あなたこそ、妹ゲー
のやり過ぎで脳が腐ってしまったのではないかしら。大丈夫? 二次元と三次元の区別はつく?」
「うわうっざ。あんた最近だんだん信者じみてない? 京介教に染まっちゃってない?」
「私は彼の恋人だもの。彼の良いところも悪いところも、彼の本質はあなたより何倍も何十倍
も深く、多く知っているわ。あなたこそ、外野の分際でうだうだとわめかないでくれるかしら」
「はいはい。触らぬヤンデレ祟りなしってわけね」


528 名前:マインドスワップ 8/18:2011/07/14(木) 23:08:25.48 ID:90wkXXSJ
 桐乃はあきれたように言いながら、手をひらひらと振ってテレビに向き直り、リモコンをい
じりだした。
「さよなら。桐乃」
 私は別れを告げて家を出た。


 帰る途中、あやせに出くわした。
「あ、あなたはっ……!」
 歯ぎしりというものは、実際に聞こえてくるものらしい。ぎぎぎ……と、弓を引き絞るよう
ですごかった。今日見た桐乃もすさまじいが、あやせの顔はよりいっそうものすごい。超怖い
ってものじゃない。視線で射殺すというレベルすら超越している。思わず彼女の手に目が行っ
た。運のいいことに、ナイフは手にしていないようだ。
「あなたのせいで……! 桐乃と、お兄さんは……!」
 私とはちゃんとした面識がないはずなのに、あやせはありったけの憎悪を私にあびせてくる。
どこで私の顔を見知ったのかは、まああのあやせならいくらでもやりようがあるだろう。けれ
ど、そもそもその敵意自体がどうも理不尽なように思われた。
 あやせの望みは桐乃から京介を引き離すことなのだから、京介の恋人である私に殺意を向け
るのは筋違いだ。むしろ応援してもらいたい。よって、私が真正面から相手をしてやる必要も
ない。
「あなた……誰?」
「くぅっ」
 さすがのあやせにも辻斬りめいた行為をためらうだけの分別はあるらしい。悔しげに「ぐぬ
ぬ……」と歯噛みし、
「お、覚えておきなさい! いつかきっと桐乃を元に戻して、お兄さんを取り返しますからね!」
 捨て台詞を吐いて駆け去った。わけがわからない。第三者が見れば、ほとんど変質者みたい
なものだろう。あやせは夏の暑さにやられてしまったのかもしれない。私もただでさえ肌が白
いのだから、日光には気をつけようと思う。



 花火大会の日がやってきた。
 私の浴衣姿を、京介は「かぐや姫みたいだ」と言ってほめてくれた。照れくさかったけど、
すこし縁起が悪いような気もした。私はかぐや姫みたいにいなくなったりしない。夏休みが終
わっても、このままずっと、ずっと京介といっしょなのだから。


529 名前:マインドスワップ 9/18:2011/07/14(木) 23:12:15.43 ID:90wkXXSJ
 花火大会の行なわれる港は、いつになく賑わっていた。地方の大きな花火大会にもなるとコ
ミケクラスの民族大移動になるそうだけど、私たちの行った花火大会ではある程度の風流が残
されてあった。展望台のほうは無理そうでも、海辺に面した芝生なら、場所取りをする必要は
ない。私はついついひとけのなさそうなところを目で探ってしまった。あさましいにちがいな
いけれど、そうしたのは京介なのだから、花火大会が終わったら、ぜひ責任をとってほしいと
思う。
 私と京介は花火が始まるまでの間、出店のあたりをぶらつくことにした。いつものデートの
ときと同じように、京介がおごってくれた。
 最初に訪れた出店では、メルルのわたあめをふたつ買った。ひとつはたまちゃんへのおみや
げで、もうひとつは、ふたりで食べるためだ。注文のとき的屋のおじさんが、
「よし来た。嬢ちゃんにはおまけ、兄ちゃんには爆発する権利をやろう」
 と、私たちを茶化して見せた。京介は「ひでーなおっちゃん!」と突っ込んでいたけど、私
はうれしくてしかたない。今の私と京介は、誰が見ても、ちゃんと恋人同士に見えるのだ。
 わたあめを買ったついでに、となりの出店でマスケラとメルルのお面を買った。これで私た
ちはヒーローとヒロインに……まあ、夢の共演ということで、そう見えなくもないだろう。
 ぱんぱんのわたあめはおみやげにして、私たちは通常サイズのわたあめを食べさせ合った。
京介の食べた箇所に私が口をつけると、彼はおもしろいくらいに狼狽した。いつもいつもあん
なことをしてるくせに、妙なところで照れ屋なのだ。
 ヨーヨー釣りもした。私は五千円札入りの風船を狙って駄目だった。でも、京介は私のぶん
のヨーヨーも釣り上げてくれた。京介ってあんがい小器用なところがあるのかもしれない。
 射的屋に寄った。メルルのキーホルダーには掠っただけだった。京介から弾を分けてもらっ
ても、撃ち落とせなかった。ひどい店だ。照準器が狂っているんじゃ、絶対に落とせるはずが
ない。
 射的屋を離れて歩き出すと京介が言った。
「なんつーか、意外だな」
「なにが?」
「いや、おまえはこういうの得意そうだなーなんてさ。まあ俺が勝手に思いこんでいただけな
んだけどさ」
 京介はなんの気無しに言葉を続ける。
「ヨーヨーんときもそうだけど、なんていえばいいのかな。桐乃みたいっつーか」
 私は立ち止まった。

530 名前:マインドスワップ 10/18:2011/07/14(木) 23:15:36.51 ID:90wkXXSJ
「おまえと桐乃は親友だからな、やっぱ似たもの……って、どうした?」
「……京介。キスを、しましょう」
「は、はぁ!? なに言ってんだおま、こんなとこ――」
 私は彼の唇を塞いだ。両手で顔をがっちりと押さえて、口内に舌を滑り込ませた。舌の先で
歯の裏側をなぞり、音を立ててすすり上げる。
 それも数秒のことだった。
 京介は我に返るや否や、私の肩を掴んで力尽くで引きはがした。
「ばっ、止めろって! 人に見られたらどうすんだよ!」
 口元を拭いながら、京介があたりを見渡す。どうせだれも見ていない。ほんの数秒のことだ
し、花火の時間も近づいているから、バカップルにかまう人などいやしない。それに、あんま
り私以外の人に目を向けてほしくなかった。
 京介は私の背後に目をこらそうと乗り出したけど、私はすぐに真正面に立って、彼の視線を
遮った。
「桐乃は、こんなことしてくれないでしょう?」
 流し目に彼を見つめながら、唇の端を指で拭うと、その濡れた指をゆっくりとくわえ込む。
私と京介が混ざり合ったそれは、わたあめの名残で蕩けるように甘かった。
「だ、だからなぁっ……!」
 先日の行為が思い出されたのか、京介は耳を赤くして口ごもる。
「そろそろ行きましょう。花火が始まってしまうわ」
 そう言って、京介の腕をぎゅっと抱きしめる。浴衣なので下着は着けていなかった。生地越
しにこわばった突起を押しつけながら、私は耳打つ。
「いいのよ。私を、あなたの妹の代わりにしても……」
「黒……猫……?」
 京介が目を見開いて硬直した。
「おまえ……」
 彼の様子を見て、私はあのときのようにリビドーを刺激してしまったのかもしれないと思っ
た。発散はあとでたっぷりしてもらうとして、今は花火の花火のほうが先決だ。私は彼の腕を
引き、
「行きましょうか、兄さん」
 歩きだそうとした――そのときだった。
「っ……!」
 京介が息を飲んだ。
「兄さん?」
 見ると、彼の上着が不自然な形に突っ張っている。背後からパーカーを引っ張られて、足を
踏み出そうとした格好で、固まっていた。
 私と京介は、ほとんど同時に振り返った。

 夜空が明るんだ。一拍おいて、ドン、と、花火の弾ける音がした。胎内まで響き渡るような、
大きく、重い音だった。


531 名前:マインドスワップ 11/18:2011/07/14(木) 23:19:23.80 ID:90wkXXSJ
 砂の流れるのに似た音が後に続き、そして――空に照らされ、栗色の髪が色とりどりに輝い
た。

 ――“あたし”がそこに立っていた。

「きり、の……」
 いつか聞いた幻聴が、彼自身の口で繰り返された。



「いかないで」
 ただ、それだけだった。
 桐乃が口にしたのは――たった一言、それだけだった。
 でも、それだけで、“私”はもう、なにも言えなくなってしまった。

 桐乃は中学のジャージを着ていた。髪留めはなく、垂れた前髪が表情を隠していた。項垂れ
て、力なく伸ばした手で、京介のパーカーの裾を握っていた。その手が心細げに小さく震えた。
 再び花火が打ち上がった。前髪越しに、きらりと光るものが覗いた。はっきりと、見えてし
まった。
 あたり一面が明滅し、ドン、ドンドンドンドン、と、重い大気が激しく鼓膜を打ち叩く。連
発花火の容赦ない喧噪のなかで、桐乃の唇だけが、かすかに動いていた。
 まもなくしんとなって、夕闇がたちこめる。京介の腕がするりと抜けていった。あっけなか
った。“私”の手は、もう言うことを聞いてくれなかった。
 シャツをつかむ桐乃の手に、京介の手が重なった。桐乃の肩がびくんと跳ねた。京介は桐乃
の強ばった指を、壊れ物を扱うように繊細な手つきで一本一本裾から外してゆき、それから、
あらためて桐乃に向き直った。
「桐乃」
 と、京介は言った。そして、肩をすぼめた桐乃の頭に、ぽんと軽く手を乗せる。
「ばかだな、おまえ。こんなカッコして、こんなとこにくるなんて……ほんと、ばかだよ」
 京介が桐乃を撫でている。桐乃は涙ぐんだ目を猫のように細めている。
 ――やめて。そいつはあんたの妹なんかじゃない。
 あたしの叫びは声にはならず、私は呼吸を荒げるだけだった。
「でもな……俺は、もっとばかだ。大ばかだ」
 そのさきは、聞きたくない。けれど私の全身は微動だにしない。京介の選択を最後まで見と
どけるよう、あたしに強いる。
「あのときの俺を、ぶん殴ってやりたい……」
 いいかげんに吹かれた笛のような音が、天空高く伸びていく。京介が振り向いた。
「……ごめん。黒猫」
 ドン、と、心臓を横殴りに響きわたった。
「……俺、わかっちまったんだ」
 光の雨に打たれる兄貴の顔は格好良かった。


532 名前:マインドスワップ 12/18:2011/07/14(木) 23:23:54.30 ID:90wkXXSJ
「おまえと過ごした今年の夏は、楽しかった。きっと一生忘れないと思う。……だけどさ」
 例のふやけた音が、幾筋も幾筋も金魚のふんみたいに纏わり付いて立ちのぼる。うらぶれた
火球のぱらぱらという嘆息に、厚かましく被さった。
「…………じゃ、駄目だと思っ…………こいつに自分勝手な気持を……いて、自分はちゃっか
り…………後ろめたくて、ずっと躊躇してい……」
 ドンドンドンドン……ああもう、やかましい。京介の声が聞けないじゃないの。近所迷惑く
らい考えろっての。だいたいこんなんのどこがいいワケ? くっさい火の玉で空をギランギラ
ンに飾り立ててせっかくの星空が台なしなんですケド。ぐっちゃぐっちゃの光り物見てわーき
れーっておめーらカラスかっつーの。
「……本当の気……を、ようやく……」
 美しく咲き乱れるだとか儚くて感動するだとかなんとかじゃあ夜空に残った染みみたいな煙
の塊はなに? そいつのうんち? あーもーほんっとウザっ下痢ピー打ち上げてどや顔でスタ
ーマインでございっとかニコ動の〜してみたと同じくらいウザいしベスビオス級とか厨二セン
ス極まりない。
「……俺はこいつの兄貴なんだ。どうしようもないシスコンなんだ」
 やっとウザいのが止んだ。せいせいした。これでようやく京介の声を――
「――だから、別れよう」
 聞いてあたしは発狂した。


 わたあめの袋は投げ出され、メルルの顔が土にまみれている。ヨーヨーは下駄の歯で破裂し、
地面がぬらぬらと光沢を帯びている。浴衣の帯が緩んで肩はむき出しになっている。三尺玉の
空いっぱいに咲き散る金光を背にし、胸のはだけるのもかまわず、あたしは京介にむしゃぶり
ついていた。
「――どうしてねえどうしてウソよウソだって言ってよ京介お願い別れるなんてウソだよねあ
たしたちずっといっしょにいようっていったじゃない約束したじゃない愛しあったじゃない桐
乃は妹なんだよ結ばれちゃだめなんだよ親不孝なんだよ私じゃないと結婚できないんだよどう
してそんなことを言うの私たち愛しあってるのにどうして別れなきゃいけないの妹なんて大嫌
いなんでしょあなたそう言ってたでしょう嫌いだ嫌いだってあんた言ってたでしょあのときあ
んな顔してたでしょうだから私は、あたしはっ……!」
「くろ……ねこ? おまえ、いったい……」
 京介はどうしてこんな顔をするんだろう。けど、その理由はすぐにわかった。


533 名前:マインドスワップ 13/18:2011/07/14(木) 23:26:24.53 ID:90wkXXSJ
「ああ、そっか。そうかそうかそうかそうかぁ――あたしの愛し方が足りなかったんだ」
 すぐさま足払いをかけて押し倒す。京介は尻餅をついて苦しそうに呻いたけど、そんなのも
う関係ない。あたしがどれほどあんたを愛しているのか、思い知らせてあげないといけないの
だ。
「お、おい! ちょ、待てよ!」
 ベルトのバックルに片手を伸ばしつつ、もう片手でその下をさする。
「や、やめろ黒猫……俺にはもう……それに、こんなところで……」
 一昨日なんか「エターナルフォースブリザーメン! 相手は孕むッ!」ってシテたくせに、
今さらなぜ抵抗するのだろう。理解に苦しむ。
「私は――黒猫は、京介のためならなんだってする。してみせるわ。京介がもはや私と付き合
えないというのなら、超すごい私の愛を見せつけてやるだけのことよ」
 そうまくし立てながらファスナーの引き手を摘んだとき、

「――黒猫はそんなこと言わない」
 横合いから、そんな声が割り込んだ。

「黒猫はそんなこと言わない。大事なことだから、二度言ったわ」
 見上げると、桐乃の目とかち合った。人形めいた瞳が私を見下ろしていた。あたしを射貫く
ように、そして哀れむように、たった一言、吐き捨てた。
「無様ね」
 あたしは京介を見た。怯えていた。それであたしは、自分が振舞いが常軌を逸していたのに、
やっと気がついた。あたしは発作的に飛び退いた。
「やめてよ……そんな目で見ないで。哀れまないでよ!」
 髪を振り乱して絶叫する。
「好きになって欲しかったの! 女として愛して欲しかった! あたしを、あたしだけを見て
欲しかった! なのにどうしてみんな邪魔をするの! 地味子も沙織もあやせもあんたも、京
介も! どうしていつもいつも……」
「そうやって、いつも誰かのせいにして誤魔化すのね」
 その言葉にあたしは戦慄し、心臓をわしづかみされたように、固まってしまった。息ができ
ず、目をそらすことすらできない。桐乃の瞳のなかに、黒猫の無様な泣き顔が映っていた。
「まあ、別にそのままでもかまわないわ。決着は、もうついたのだから」
 “桐乃”が薄笑いを浮かべ、あたしに顔を近寄せて言った。
「“あたし”は京介に彼女ができるなんて絶対イヤ。だから京介も、彼女をつくらない」

534 名前:マインドスワップ 14/18:2011/07/14(木) 23:29:25.07 ID:90wkXXSJ
 桐乃は怪訝顔の京介をちらりと見やって向き直ると、私だけに聞こえるような声量で続けた。
「あんたは京介にふられちゃったけど、もう恋人でもなんでもないけど……安心しなよ。これ
からもさ、アキバ行ったり同人誌つくったりして、いっしょに遊ぼう? ……だってあたした
ち、友達でしょ? 遠慮しなくていいよ。こんなことになっちゃったけど、“あたしたち兄妹”
は、“あんた”の友達やめたりしないから」
 ――そうだ。私はもう京介の恋人じゃない。妹でもない。ただの、友達に過ぎない。
 あたしたちは、桐乃と黒猫はある日突然――本当に突然、体が入れ替わった。まさしく出来
の悪い小説みたいにいいかげんな展開だった。そしてその原因は今なおまったく見当がつかな
い。原因がわからない以上、元に戻る術も、保証もない。京介の恋人になれたことで舞い上が
っていたあたしは、そんな単純な事実を失念していた。
「これからも、あたしたちずっと友達でいようね」
 瞳のなかの黒猫がにやりと笑った気がした。あたしは気絶した。




 見慣れた天井だった。エアコンの効いた部屋で目ざめると、からだじゅう冷え切っているよ
うに感じられた。
「ジャスト二週間ね。いい夢は見れたかしら?」
 と、“黒猫”の声が聞こえた。ベッドの脇を見れば、ジャージ姿の黒猫があたしの椅子にち
ょこなんと腰掛けて、漫画に目を落としている。
「これが……いい夢でたまるか、よ」
「沙織のような返しをするのね」
 それにしても、長い夢をみていたような気がする。いやーほんと、それはそれは長い夢だっ
たなぁ。きりりん思わず寝ぼけちゃったよ。夢の内容? あははは、覚えているわけがない!
「起き抜け早々現実逃避とは……いいご身分だこと」
「ぐぬっ……」
「それよりもまず、あなたは、私に言うべきことがあるのではないかしら」
 うん。わかってる。
 あたしは黒猫に、ひどいことをした。黒猫の体で、すごいこともした。
「黒猫、あたし――」
「なんて、ね」
 素直に謝ろうとしたとたんにさえぎられた。
「今さらだもの。謝罪も賠償も無粋だわ。それに、私だってなにもしていないといえば嘘にな
るから」
 聞き捨てならないことを言いおる。
「ま、まさかあんた、あのときの嫌み、本気だったんじゃ……」
 人を見下すのが超好きなクソ猫のことだ。あたしに成り代わって第二のリア充人生を送ろう
と企みかねない。


535 名前:マインドスワップ 15/18:2011/07/14(木) 23:32:01.68 ID:90wkXXSJ
「さて、どうかしらね。けれど、大変だったのよ、あの後。あなたが突然倒れたものだから―
―あの場にたまたま医者が居合わせたから大騒ぎにはならなかったものの、タクシーを呼んだ
りして、気を失ったあなたを京介と二人でここまで運ぶのに、ずいぶん手こずったわ」
「ふーん……あれ? なにかおかしくない? 気絶したのは“あたし”でしょ?」
 “あたし”と言ったところで黒猫を指さした。
「直前で戻ったのよ。ファビョったあなたに、“私”が勝利宣言をした、あのときだわ――本
当に突然だったの。負け犬がどんなリアクションをするか観察していたら、いきなり目のまえ
が真っ暗になったわ。それもほんの一瞬のあいだよ? 気づくと私は大股おっぴろげたはした
ない格好で地面に尻餅をついていて、目のまえには白目を向いたあなたがいる。立ったままび
っくんびっくんと痙攣し、蟹のように泡を吹いている……まるでゾンビ映画みたいだった。あ
まりのキモさに私は慟哭してしまったわ」
 あたしは、もうお嫁に行けないかもしれない。それなのにこの黒いのは、やけに嬉嬉ととし
てあのときのことを物語る。
「京介もどん引きよ」
 ほんといらんことを言う。
「けれどまあ、これにて一件落着ということね。過程はどうあれ、私たちはもとの体に戻れた」
「一件、落着……」
 たしかにそうだけど、やっぱりどうも納得できない。結局、なにもかもうやむやのままなん
だから。
「不服そうな顔ね? でも、現実なんて、結局そんなものよ。劇的な解決もカタルシスもあり
はしない。なるべくしてなるというのはむしろまれなことで、物事の解決というのはたいてい、
時か、事件によってなされるもの。あなたの好きなエロゲーなんかと違ってね。お兄ちゃんが
性的な意味で大好きな妹は、思春期を過ぎれば他の誰かになびくものだし、夢破れた芸術家も、
リストラされたとなれば日々の糧を得るのに精一杯で、傷心も夢の名残も、慌ただしい日常の
なかで埋没して行く。そう。これっぽっちも美しくはないわ。だから現実はクソなのよ」
 黒猫は中二病患者らしく、一人で盛り上がっている。永遠の十四歳、といってあげればある
意味聞こえはいいかもしれないけど、こんなんだからこいつってぼっちなのよね。


536 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 23:32:12.09 ID:o2PMNIwh
支援

537 名前:マインドスワップ 16/18:2011/07/14(木) 23:34:35.13 ID:90wkXXSJ
「今回の件は、唐突に始まって、唐突に終わった――ただ、それだけのことだわ」
 こいつは一人で勝手に締めくくろうとしてるみたいだ。でも、そうはさせない。あたしには
まだまだ聞いておかなくちゃいけないことが山ほどあるのだ。
「で、黒猫。――京介は?」
 本題を持ち出すと、黒猫は一瞬だけ露骨に嫌な顔をしてから、「っふ……」といつものよう
な邪気眼電波顔を浮かべた。
「彼は今、一階でご両親に絞られているわ。“かわいいかわいい兄さんの妹”をほったらかし
にしたのみならず、結果的に、こんな目にあわせてしまったのだから、当然の成り行きね」
 その妹とやらがいったい誰を指しているのか考えると無性にこいつの首を絞めたくなるが、
しかしきりりんさんの自制心には定評がある。高坂桐乃はあやせより加奈子より我慢強い女の
子なのだ。あたしは話の続きを待った。
「……ともあれ、安心なさい。兄さんは、あなたが私であったことを知らないわ」
「そっか……」
 なんともいえない心地だった。醜態をさらしたのがあたしだと思われていないことにほっと
する反面、結局あいつには、あたしの気持ちは伝わっていないのだ。
「ク……ふふふふ……! ……私は淫乱ヤンデレキャラとして定着してしまったのだけれどね」
「それはほんとごめん」
 本当にすまないと思っている。
「……ま、まあかまわないわ。これから私は、宿望を果たすことができるもの」
「しゅくぼう?」
 なにをするつもりだろう。黒猫が立ちあがり、あたしは思わず身構えた。
 ベッドのあたしを見下ろして、黒猫はあのときのようににやりと笑った。
「ねぇ、いまどんな気持ち?」
「はぁ?」
「ねぇねぇ、大好きなお兄さんを二度も寝取られて、いまどんな気持ち?」
「へ?」
 ほんの数秒、意味が飲み込めなかった。
「京介は私と付き合うと言ってくれたわ。そして、“私”のために黒猫と別れると、そうも言
ってくれたわ」

 ああ、こいつは――
――言ってはいけないことを、言ってしまったのか。

「……ぎぐががががががが……」
「今、どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち? 参考までに聞かせてもらえないかしら? 二
度も振られて、二度も寝取られてしまった淫乱ビッチさん」
「……っ殺す! このクソ猫絶対殺すっ……!」
 殺意が頂点に達したところで、やにわにこんな言葉が頭に浮かんだ。


538 名前:マインドスワップ 17/18:2011/07/14(木) 23:39:15.05 ID:90wkXXSJ
 ――だがちょっと待って欲しい。結果だけみれば、きりりん大勝利ということではないだろ
うか?
 手頃な得物を求めて枕元をさまよっていた手が止まる。
「そういえばさ、今のあたしは桐乃で、今のあんたは黒猫なんだよね?」
「……それがどうかしたのかしら」
「あんた振られっぱなしじゃない? 結局あたしの優位かわってなくない?」
 黒猫の表情が消えた。図星のようだ。
 あたしがお返しとばかりににやにやしてやると、黒猫が抑揚なくつぶやいた。
「あなたって、本当に最低の屑だわ」
「……ごめん。マジで」
 あたしって最低だ……でもさ、これって正直ヤバくない? だって京介って、妹のために恋
人と別れてくれたんだよね? どんだけシスコンだっつーの。それじゃあ妹離れなんて永遠に
できなくない? あーキモキモ。ちょーキモーい……ていうかヤバ。まじヤバ。ヨスガ一直線
間違いなし。しかも今やあたし、体は乙女頭脳はオトナな超ハイスペックシスターでしょ? 
京介なんか百パー溺れちゃう。受験生なのに、あたしにハマって勉強しなくなっちゃう。
 ――なんて馬鹿なことを考えていると、
「そろそろ私はお暇させてもらうわ。あなたも目ざめたことだし、あまり長居すると、京介が
戻って来てしまうから」
「あっ――」
 ――そっか。そうよね。“黒猫”は、京介にあんな醜態を見せてしまったんだから、顔を合
わせづらいにちがいない。気絶したあたしを連れてくるときはいっぱいいっぱいでそんな余裕
はなかったけど、あたしの容態が落ち着いた今、別れた恋人同士は、どんな顔をして話せばい
いのだろう。
「心配は無用よ。ここへ来る道すがら京介に説明したわ。あのことは――闇の力(ダーク・フ
ォース)の反作用体として生じた新たな人格、“闇猫”がしたことなのだと。京介もちゃんと
納得してくれた。そして、ひどく青ざめた顔で私を気遣ってくれたわ」
 邪気眼キャラって超便利。便利すぎてガチでびびられてる。
「ま、まあさ。あいつにはあたしからもフォロー入れておくね。うん」
「ええ、頼むわ……」と黒猫はわりと切実そうに告げてドアに向かい、そしてドアノブをつか
んだところで、
「そうそう、ひとつ、報告し忘れていたことがあったわ」
 と、目だけをあたしに振り向けて言った。


539 名前:マインドスワップ 18/18:2011/07/14(木) 23:42:16.98 ID:90wkXXSJ
「あなたもう処女じゃないから」
「はあっ!?」
 こ、このエロ猫、今なんて言った?
「先ほど言ったはずよ。『私だってなにもしていないといえば嘘になるから』と」
 クソ猫のとんでもない報告に、あたしは口をあんぐり開けて固まってしまう。
「安心なさい。兄さんは、すごく悦んでくれたわ。それに私も貴重な体験ができたから――ま
さか一生で二度も破瓜の痛みを味わうなんて、なかなか興味深い感覚だったわね」
 ぱたん、とドアが閉まった。
「あははっ……」
 思わず足の間に手を入れて、あたしは乾いた笑いを上げる。
「冗談だよね……今の、冗談なんだよね……」

 そこに京介がやってきた。
「やったぜ……桐乃」
 と、青あざのついた顔で京介は言った。見れば全身ぼろぼろで、お父さんに脱臼させられた
のか、肩を押さえて、よろよろと倒れ込むように歩み寄る。
「俺とおまえの仲を、親父たちに認めさせてやった。お袋はまだ下で泣いてっけど、俺たち兄
妹はこれで……って、桐乃?」
 京介は呆然としてあたしの顔をのぞき込む。あたしたちは二人とも呆然とした間抜け顔で向
かい合った。
「お、おまえ、本当に桐乃か?」
 あたしはこくんとうなずいた。
「本当かー? 本当に桐乃かー?」
 もいちどこくんとうなずいた。
 けど京介はやおら天井を仰いで、
「嘘だ! 俺の妹がこんなに可愛くないわけがない! 兄さん好き好きけなげオーラが欠片も
ねーじゃねえか! ハっ……さては悪魔(あやせ)が化けてんだな!? またかよオイ! あ
やせテメェっ、俺はおまえの彼氏にゃならねぇってなんど言えばわかるんだ!? 体は許して
も心は許さないからな! この逆レイパー!」
「し……ししっし、しっししししし……」
「黄金水か!? 黄金水なんだな!? だが断る! もはや俺がそれを飲み干すのはただ一人! 
すなわち! ラブリーマイシスターきり――」
「――死ねえええええええええ!」




おしまい

540 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 23:43:37.10 ID:90wkXXSJ
以上です。

541 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 23:47:28.50 ID:H2JTEfpT

おもしろかったよ

ただ改行たのむ
読みにくくてしゃーない

542 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 23:49:49.82 ID:to4GF03v
偽8巻の人かな?

543 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 23:50:26.68 ID:o2PMNIwh
>>540
GJでした。こういうのも面白いな。

>>541
これ以上なく改行されてたと思うんだが。むしろ抜群に読みやすかった。

544 名前: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/07/14(木) 23:56:39.55 ID:m6DGYC76
>>540
乙です
面白かった!
けど、胃がきりりんしてしまったぜ・・・・・・
特定のキャラに入れ込みすぎるとこういうとき損だなぁと思う今日この頃
というか京介、お前知らない間に何人手を出して云々

545 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/14(木) 23:59:05.90 ID:to4GF03v
正直、もっと警告入れても良い内容だったとは思う

546 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 00:03:40.16 ID:1NsfYIJ1
言い方間違った

行間空けた方が読みやすかったんじゃないっていう話
一文長いから、むしろ右揃えして改行するとブロック化されて読みにくいって感じたのかも
批判じゃなくて意見要望だからまァ気にしなくてもいいので考えてみてください
内容は面白かったと思うよ

547 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 02:38:00.83 ID:gyBbs5IB
良貨マダー?

548 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 02:40:03.41 ID:0ixV5P6o
たった今、投下されたろ。この感じは、多分8巻予想の人だな
相変わらずクォリティ高くて、ずいずい引き込ませる内容で、なおかつ胸糞の悪いSSを華麗に書く人だ

549 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 05:40:55.07 ID:LuuFJB2E
>>539
超面白かった
桐乃(黒猫)とのプレイとあやせの逆レイプも見たいんだぜ!

550 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 06:19:23.09 ID:PI4EOe5M
勝手に決めつけてるけど、違ったらどうすんの?
大抵の人はめちゃくちゃ不快な気分になると思うぞ

551 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 07:39:22.53 ID:O3fPt9U9
>>548
いや、それはないな。
氏の設定も活かされてないし、なにより説得力がまるで違う

552 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 09:54:15.06 ID:Bzit5xPq
>>540
おつー
黒猫視点も読んでみたいな。

553 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 13:28:06.53 ID:4FIW607u
ここからさらに黒猫が妊娠して三度寝取られたりしそう

554 名前: 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/07/15(金) 13:34:08.90 ID:YBGTYetW
考えないようにしてたのに言わないでくれ……

555 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 15:42:07.32 ID:1UK/r/Ce
そこでダブル妊娠トライアングラー
二人が俺の翼だエンドですねわかりますん

556 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 16:34:04.07 ID:WD9kK3wa
なんか京介の性格がへんだな
誰これ?って感じ

正直、俺妹じゃなくても良さげだよねコレ

557 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 16:37:24.43 ID:5GdqawAc
そんなのSS全般に言えること

558 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 18:59:02.52 ID:N8xzBMWG
よくわからんのだが、京介は桐乃の中身の黒猫が可愛すぎて抱いちゃって、で、桐乃が入ってる黒猫を振って近親恋愛に走ろうとしてボコボコにされたってわけ?
しかも黒猫は桐乃が黒猫の体に入ってること知らなくて、桐乃として抱かれて
もうわけわからんw

559 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/15(金) 22:16:10.62 ID:g3ZnjpBK
内緒だけど沙織はオワコン

560 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/16(土) 00:07:13.42 ID:hT8Z0beh
>>553
良いね、それ。別の意図を込めたであろう書き手には悪いけど、俺の中ではそう言う未来で確定したわ

561 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 00:34:32.84 ID:9g3IOMTS
>>539
遅くなったけど乙でした。
面白かった。次回作にも期待してる。

562 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 02:00:22.99 ID:LP5CtgmR
低能アンチの自演で埋まるか

563 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 02:07:05.16 ID:ArzxtUdI
アンチ(何に対しての?)とやらも、自演と言えるほどの、そもそもレスのやり取り自体も見かけんのだが・・・
誤爆か?

564 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 09:36:03.44 ID:YjvtR7SB
素晴らしい
正直こんなスレに投下するのはもったい出来だと思ったわ
エロありだからここしかないのがあまりに惜しい

565 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 14:23:30.85 ID:mr9Ilbur
>>556みたいな奴ってきもい
なんか死んでほしいなぁって思う

566 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 14:42:35.38 ID:23pGKISv
>>548
いや別人だろ
文章の書き方も再現度も違うし
何より改行の仕方が違う

567 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 14:45:06.76 ID:gkV+P4k2
やっちゃえ〜

568 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/17(日) 14:51:36.42 ID:yp8WaJck
可愛くない? メガネとか
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14923835
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14923866
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14923781

569 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 01:05:24.90 ID:Ka5JKzDx
>>568
糞なURL貼るな

570 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 03:14:29.13 ID:vpHmcu8J
ずいずい引き込ませるSLさんの作品の続きが早く読みたい…

571 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 09:28:14.31 ID:vSWYvQ8e
乱交物で二穴・三穴物が見たいェ…

572 名前:風(後編) 18/63 SL66 ◆Fy08o57TSs :2011/07/18(月) 09:55:35.68 ID:8mgfk2k0
*  *  *
 ついに野点が開催される土曜日がやってきた。
 いつものように教室のやや後ろに座っていた俺は、二限目の講義が終わったので、教科書やノートを
バッグに仕舞い、うつむき加減で立ち上がろうとした。だが、

「高坂さん、いよいよ本日です。あやせさんとご一緒に午後二時半よりも少々早く拙宅へお出でいただけれ
ば幸いです」

 鈴を転がすような優しげな声がしたので、おもてを上げると、俺の眼前に保科さんが笑みを浮かべて立っ
ていた。いつの間に……。
 超絶美人のご令嬢と、名もなきよそ者。誰がどう見ても不釣り合いな組み合わせに反応してか、教室の
ざわめきが一気に拡大した。
 「なにあれ?」、「保科さんと、あのさえない野郎ってどういう関係?」、「拙宅って、保科さんの邸宅
か?」といった驚愕と猜疑と嫉妬が込められた囁きがいやらしい。

 なんてこった! 保科さんとの野点の件は、学内では、悪意のなさそうな陶山や川原さん以外の者には
内緒にしておきたかったし、保科さんとの関係も、今回の野点だけでお仕舞いだろうと思っていたのに……。
 よりにもよって、教室に学生がわんさか居る状態で、俺との関係を匂わせるようなことを言うのだから
たまらない。
 
 これも保科さんが恐るべきド天然だからか?
 それはともかく、

「え、ええ、了解致しました」

 とだけ、手短に答えて、俺はそそくさと席を立ち、半ば駆け足で逃げるように教室をあとにした。
 何だよ、畜生! 俺が望まない方向に、事態がどんどん悪化していきやがる。
 クラスで変に目立ちたくなんかない。俺は無難に単位を取って、ここでの四年間を無事に過ごしたいだけ
なんだ。
 週明けに大学へ行くのが、憂鬱になっちまったじゃね〜か。保科さんよ。
 これからその保科さんの邸宅で野点だが、のっけから波乱を予感させやがる。どうなっちまうんだろうね。

 ガタゴトと路面電車に揺られながら、俺は車窓から流れゆく街並みを見やった。
 ノスタルジーを感じさせる雰囲気は嫌いじゃないが、所詮は四年間だけの仮の居場所なのだ。

「だが、無事に四年間を過ごしたとして、俺はいったいどこへ行く?」

 桐乃が留学だか結婚とかで実家を出てくれない限り、俺が実家に戻れる可能性はほぼないだろう。
 親父は俺の理解者ではあるが、結局はお袋に頭が上がらないことが、俺と桐乃をどうするかという家族
会議で証明されてしまった。
 そのお袋は、もはや俺のことは眼中にないようで、桐乃に全てを賭けている。桐乃には、高校でも陸上で
頑張ってもらい、大学はT大に合格してもらう心づもりであるらしい。
 もう、実家に俺の居場所はないのだ。

『だったら、こっちでずっと暮らすんですか?』

 あやせにはそう詰め寄られたが、もしかしたら、否が応でもそうなっちまうかも知れねぇな。だからこそ、
変に目立つのはまずいんだ。
 それだけに、先ほどの保科さんの大学での振る舞いは迷惑千万であるし、そもそも野点に招待されたこと
自体が今となっては災難でしかない。

 げんなりした気分で下宿に帰着すると、そこの女主人であるお婆さんが、珍しく妙にうきうきとしていや
がった。


573 名前:SL66 ◆Fy08o57TSs :2011/07/18(月) 09:56:37.33 ID:8mgfk2k0
おお、ようやく規制が解除

では、引き続き『風』の残りを投下!!

574 名前:風(後編) 19/63:2011/07/18(月) 09:57:41.69 ID:8mgfk2k0
「高坂さん。今しがた、あやせさんから電話がありましたけど、今はタクシーでこっちに向かっているそう
ですよ。到着したらすぐに着物の着付けをするとかで……。私も着付けのお手伝いをしますけど、大忙しで
すね」

「そ、そうですか……」

 招待状を保科さんから受け取った翌日に、件の招待状を見せた時のお婆さんの驚きときたら、まるで別人
の様だったからな。それだけで、保科さん一族のこの街でのステータスが分かろうかというものだ。

「はぁ……、ため息しか出ねえや……」

 単純な奴なら有頂天になるのかも知れないが、俺は到底そんな気分になれなかった。
 野点に招待されているのは、俺とあやせを除けば、相応な地位の者ばかりだろう。
 そんな中に、この地方の出身者ですらない只の学生が紛れ込んでいいはずがない。

「高坂さんも早く支度を……。その前に、手早く食べられるように、おむすびを作っておきましたよ」

 見れば、ちゃぶ台の上には、ラップが掛けられた握り飯が六個ほど置かれている。俺とあやせとで三個
ずつということらしい。そういや昼飯時だってのを忘れていたな。
 緊張感からか食欲はなかったが、腹が減っては戦ができぬ。俺は三個の握り飯を喉に押し込むようにして
食い、白味噌を使った味噌汁をすすり、お茶で喉をうるおした。

 握り飯を食い終えた頃、下宿の前に車が止まる音がした。そして、

「ごめんください」

 という、あやせの声が玄関から聞こえてきた。

「まぁ、まぁ、まぁ!」

 妙にはしゃいでいるお婆さんとともに玄関へ急ぐと、前回よりもさらに大きい特大のキャリーバッグを
引いた新垣あやせが笑顔で佇んでいた。

「今回もお世話になります」

「遠いところをようこそ……。あやせさん、お昼は食べました? もしよかったら、おむすびでも……」

「せっかくですけど時間が惜しいので、お昼は新幹線の中で済ませました。これから着物の着付けを致しま
すので、済みませんが宜しくお願い致します」

「まぁ、段取りが宜しいですね。では、早速、始めましょうか」

 お婆さんがあやせを伴って、一階の奥の方にある、俺も立ち入ったことのない部屋に向かって行った。
 俺の前を通り過ぎる際に、あやせが大きな瞳で、俺をじろりと睨んだような気がした。

『いよいよ正念場です。気を引き締めてください』

 とでも言いたげだったな。

「俺もそろそろ着替えないとな……」

 自室に入り、箪笥からスーツ一式を引っ張り出した。これに袖を通すのは入学式以来じゃねぇか。
 はっきり言って安物だが、ダークグレーの無難な色合いが幸いしてか、それほど見苦しくはない。
 ネクタイを黒にグレーのストライプのものでシックに決めれば、今回の野点のようなあらたまった席でも
大丈夫だろう。


575 名前:風(後編) 20/63:2011/07/18(月) 09:58:43.72 ID:8mgfk2k0
「頭はどうするかな……」

 いつぞや加奈子のマネージャーを装った時のように、オールバックにしようかと思ったが、やめておいた。
妙に大人ぶるよりも、年齢相応な姿の方が変に目立たなくて済むだろう。
 それよりも、清潔感が大事だ。髪は、今朝方シャンプーしたから、その点は大丈夫かも知れない。
 ついでに、靴下も下着も、真新しい物に替えた。

「さてと……」

 和服に比べれば、スーツの着替えなんて一瞬みたいなもんだ。ネクタイだって、高校の制服で結び慣れて
いるから、一発で、大剣と小剣の位置がぴったりと合った。

 俺は自分の両肩、腹部、脚部に目をやり、スーツ姿の自分を確かめた。安物の既製服だが、俺の身体に
ぴったりと合っており、雰囲気は悪くない。むしろ、ブランド品であっても、体型に合ってない物の方が
安っぽく見えるだろう。
 ただ、昨今の若者向けの流行なのか、ズボンが細身にできており、若干だが圧迫感を覚えなくもない。

 時計を見ると午後一時過ぎだ。あやせの支度はどれ位かかるのだろうか。
 俺はズボンにシワが寄らないように脚を伸ばして座布団の上に座ると、気象庁のホームページでこの地方
の時系列天気予報を確認した。

「曇り時々晴れ……。気温も十五度から二十度弱といったところか」

 スーツ姿にはちょうどいい陽気だろう。しかし、振袖姿では少々暑いかも知れない。
 時刻が午後一時半になろうとする頃、階下から俺を呼ばわるお婆さんの声がした。あやせの着付けが終
わったらしい。予想外に早かったな。

 階下に降りてみると、八畳間には、長い髪をきれいにまとめ、空色を基調とし、芙蓉らしい花模様が控え
めにあしらわれた振袖姿のあやせが立っていた。

「おお……、さすがに似合うなぁ」

 月並みな感想だが、実際にそうとしか表現できないんだから仕方ねぇな。
 あやせも、スーツ姿の俺を見て、

「お兄さんも似合ってますよ。特に、そのネクタイ、なかなかいいですね」

 と言ってくれたじゃねぇか。外交辞令かも知れないけどよ。

「そうですね、高坂さんのスーツ姿もなかなかです。でも、あやせさんには本当にびっくりです」

「妹がどうかしましたか?」

「いえ、こんなにお若いのに、着物の着付けの心得があって、このような方は、今では本当に珍しいですね」

 そりゃそうだ。高校一年生とはいえ、和服も着こなす現役のモデルだからな。お婆さんが驚くのも無理は
ない。

「それはそうと、お兄さん急ぎましょう」

 和服に合わせたポーチを手にしたあやせが俺を急かしている。だがな、

「保科さんは二時半の少し前頃に来いとかって言ってたぞ。今出発したんじゃ、だいぶ早く着いちまう」

「お兄さん。わたしが振袖姿だってのを気遣ってください。わたしはスーツ姿のお兄さんほど機敏には動け

576 名前:風(後編) 21/63:2011/07/18(月) 09:59:47.31 ID:8mgfk2k0
ませんから、早め早めの行動を心掛けたいんです」

 もっともらしい理屈だったが、“敵状視察”のために早く出発したいんだな。

「じゃぁ、タクシーを呼びましょうか?」

 お婆さんの申し出に、あやせは「宜しくお願い致します」と即答した。
 俺は俺で、もう一度自室に戻り、財布や学生証の入った定期入れをスーツの内ポケットに入れた。
 取り敢えず学生証を見せれば、保科さんの同級生であることは主張できるだろう。
 それと、保科さんから受け取った招待状も、封筒ごとスーツの内ポケットに収めた。

「お兄さん早く! タクシーが来ましたよ」

 呼んだらすぐ来たのか。どうやら、タクシーの営業所が下宿屋の近くにあるらしい。
 玄関に行くと、玄関先に止まっているタクシーにあやせが乗り込もうとしているところだった。

「おい、おい、俺が靴を履くまでは待っていてくれよ」

「お兄さんがグズっているからです。もう、早くしてください」

 相変わらず容赦がねぇな。まぁ、これでこそ、あやせたんだ。

「どちらへ参りますかね?」

 俺が乗り込むなり、そう言った初老の運転手に、俺は保科さんの住所を告げた。

「おや、保科さんのお屋敷ですかな?」

「分かりますか?」

「あの辺りは、保科さんのお屋敷ぐらいしかめぼしいものがありませんからなぁ。すぐに分かりますよ」

 俺とあやせは思わず顔を見合わせた。どういうことだろう。
 タクシーは、土地勘のない俺たちを乗せて走り出した。どうやら、北の方に向かっているらしい。
 タクシーは二十分ほど走り続け、人家が途絶え、木立が目立つようになった頃、

「こちらです……」

 運転手は、そう言ってタクシーを止めた。

「ここ、ここが保科邸……」

 寺の山門にも似た重厚な門があり、その門の左右には、白壁に瓦の屋根が葺かれた塀がつながっていた。
白壁の塀は高く、中の様子はさっぱり窺えない。
 屋敷の背後には山々が迫っているようで、その山々は鬱蒼とした森で覆われている。

「たしかに周辺にめぼしい建物はねぇな……」

 おそらくは、背後の山々も含めて、屋敷周辺の土地は、すべて保科家のものなんだろう。
 土地だけで資産価値はどれだけになるのか見当もつかない。

「では、一千八百六十円をいただきます」

 運転手に告げられた料金を支払って、さて下りようかという時に、

「待ってください!」


577 名前:風(後編) 22/63:2011/07/18(月) 10:00:50.41 ID:8mgfk2k0

 あやせが、ポケットから財布を取り出そうとした俺を制止した。

「何だよ、いきなり」

「このまま下りて門をくぐったら、保科邸の規模がよく分からないかも知れません。ですから、タクシーに
乗ったまま、保科邸の周辺を見てみましょう」

 敵状視察というわけか。幸い時刻は二時過ぎだった。
 それに、言い出したら聞かないあやせに、敢えて逆らっても不毛だしな。
 俺が、無言で頷き、財布を内ポケットに入れ直すと、あやせは運転手に、

「では、お願いします。保科邸の周辺をちょっと一回りしてください」

「宜しいですが、保科さんのお屋敷は、背後が山で、左右は森で塞がれています。そっちの方に道はござい
ません。ですから、お屋敷の前の方にある道路を行ったり来たりするだけになりますが……」

「それで結構です」

 運転手は、「承知致しました」と呟くように言って、タクシーをゆっくりと走らせた。
 門から右手方向、おそらくは東の方に二百メートルほど行っただろうか。白壁の塀は、そこまで続き、
そこから先は背後の山と同じく、鬱蒼とした森になっていた。

「こちら側は、ここまでですね」

「では、引き返して、門から左手方向も行ってください」

 門から左手方向も、右手方向とほぼ同様で、門から二百メートルほど離れたところで、白壁の塀は途切れ、
あとは鬱蒼とした森だった。
 ただ、自動車が出入りするためらしいゲートが白壁を穿つように設けられている点だけが違っていた。

「ここまでですね……」

「……分かりました。これで結構です。車を門前に戻してください」

 結局、保科さんの邸宅が、やたらと大きいということしか分からなかった。
 あまり意味のある行動ではなかったかもな。

「では、これでお願いします」

 タクシーが門前に止まるや否や、あやせは運転手に一万円札を差し出していた。

「おい、おい、そんなもん、俺が払うよ……」

「いいえ、保科邸の周囲を走ってくださいっていう余計なお願いをして、支払うべき料金を高くしたのは
わたしですから、おかまいなく」

 強情だからな、こいつは。言い出したら聞きゃしない。
 俺は支払いはあやせに任せることにして、先にタクシーから下り立った。

「伏魔殿、っていう感じじゃないですか」

 タクシーを下りて、俺に寄り添ったあやせが、心持ち眉をひそめて言い放った。

「せめて、威風堂々って言ってやれよ」



578 名前:風(後編) 23/63:2011/07/18(月) 10:02:14.47 ID:8mgfk2k0
 かく言う俺自身も、あやせの家を伏魔殿と表現したこともあったな。お互い様か。

 門構えは、保科さんと出会った禅寺にも引けを取らない。いや、あの禅寺以上の規模だろう。白壁の塀の
高さは三メートル近くあり、侵入者を阻むのみならず、屋敷の中の様子を完全に隠蔽している。
 あやせの言う通り、これこそが、本当の伏魔殿なんだろうな。

「でも、古くさいですね。防犯装置とかはどうなっているんでしょうか?」

 保科さん憎けりゃ、門まで憎いってか。あくまでケチをつけたいらしい。
 先日川原さんから教えてもらった鬼女伝説とか、保科家の婿が早世する噂を、あやせが知ったら大変だな。
 そんなあやせにちょっとうんざりした俺は、指を差さずに、顎を門の軒の方にしゃくってみせた。

「あれを見ろよ」

 よく見ればそこには、灰色の小さなドーム状の装置が取り付けられていた。

「カメラ……、ですか?」

「多分な。これ以外にも、あちこちにあるんだろう。俺たちが到着したことは、屋敷の中には筒抜けさ」

 そうなると、屋敷の前をタクシーで右往左往したのはまずかったな。警備責任者だか何だかには、不審者
と映ったかも知れねぇ。
 だが、ここまで来て引き返すのは癪だし、門前払いはもっと腹が立つ。
 俺は、ごくり、と固唾を飲み込むと、門にしつらえてある呼び鈴のボタンを押した。

『はい、どちら様でしょうか』

 落ち着いた中年女性の声がインターホンから聞こえてきた。保科さんの家の女中頭といったところだろうか。
 俺は、落ち着くつもりで軽く咳払いをしてからインターホンのマイク部分に近づいた。

「あの〜、本日こちらで開催される野点のご招待に預かりました、高坂京介と、高坂あやせと申します……」

 それから先はどう言うべきか正直迷った。『だから門を開けてくれ』というのでは、ちょっと図々しい
だろう。結局、

「……本日は宜しくお願い致します」

 と無難に締めくくった。
 だが、インターホンの相手は、

『かしこまりました』

 とだけ告げて、インターホンをプツンと切っちまったじゃねぇか。
 当意即妙でこっちのことを認識してくれたのなら幸いだが、それにしてはあまりにもそっけなさ過ぎる。

「ここで待て、ってことですか?」

「そういうことになるんだろうな……」

 かしこまりました、ってんだから少なくとも門前払いではないだろうが、やはり俺たちは保科さんの野点
では場違いな存在だな。
 俺たち以外の招待客は、この地方の名士ばかりなんだろうから、タクシーではなく、運転手付きの車で
やって来るに違いない。そうなると、さっきタクシーで走り回っている時に目にした自動車専用のゲート
みたいなところから保科邸に入っていくのだろう。


579 名前:風(後編) 24/63:2011/07/18(月) 10:04:31.06 ID:8mgfk2k0
 この門を徒歩でくぐる招待客なんて、俺たちぐらいなもんだ。

 てなことを、うだうだと思っていた矢先、門の脇にあった人一人が身を屈めて通れるだけの小さな木戸が
軋むような音とともに開いた。

「まぁ、まぁ、ようこそお出でくださいました」

 木戸から現れたのは、鴇色っていうんだろうか、わずかにくすんだ感じがする淡紅色の振袖をまとった
禅寺の君だった。

「ほ、保科さん?!」

 てっきりお手伝いさんとか、執事とか、悪くすると警備責任者とかが出てくるんじゃないかって思って
いたんだがな。まさか、振袖をまとったお嬢様じきじきのお出ましとは驚きだ。

「何をそんなに驚いてらっしゃるんです? ここは、わたくしの家ですし、そのわたくしのお客様がお出で
になったのですから、こうしてお迎えに参った次第です」

「え、ええ、そりゃ、そうですね。は、ははは……」

「そうですとも!」

 そうきっぱりと言いながら、保科さんは端正な瓜実顔を、俺の方へ押し出すように向けてきた。
 ヤバイ。間近で見ると、その美しさにめまいを覚えそうだ。あやせも可愛いし、このところ一緒に昼飯を
食う機会が増えた川原さんも結構な美人だが、保科さんには到底及ばない。

「……お兄さん。何、鼻の下をデレっと伸ばしているんですか。この変態」

 呟くようではあったが、場の雰囲気に似つかわしくない罵声で、あやせが一緒であることを思い出した。
 その自称俺の妹様は、双眸を半眼にして、恨めしげに俺の顔を睨みつけている。

「お前なぁ……。これからあらたまった席だってのに、なんてこと言いやがる。野点の最中にそんなことを
口走ろうもんなら、大ひんしゅくだぞ」

「高坂さん。そんなに目くじらを立てなくても宜しいじゃありませんか。こんな風に言い合えるなんて、
本当にお二人は仲がいいんですね。わたくしは兄弟がおりませんから、あやせさんのことがうらやましいです」

「い、いえ、でも、まぁ、そうですか……」

 要領を得ないことを口走ってしまったが、保科さんは、微笑しながら軽く頷いている。
 どっかの自称俺の妹様のように、人の揚げ足を取るなんてことはしないんだろう。そうした品格が、目に
見える形で美貌にも反映されているのかも知れない。
 午前中の講義後、学生でごった返していた教室で、保科さんは俺を呼び止め、野点が本日であることを
他の学生にも聞こえるような声で告げたが、それは保科さんがド天然だからだ。
 人のことを悪し様に言うことなどあり得そうにない保科さんにとって、単に俺が野点にちゃんと来るか否
かを確認しておきたかっただけであり、他意はないのだろう。

「では、狭いですけど、こちらからお入りください」

 保科さんは、舞うような足取りで門脇の木戸をするりとくぐり抜けていく。俺たちも、それに続けという
ことなのだろう。

「こんな狭いところをくぐるんですか?」

「みたいだな……」


580 名前:風(後編) 25/63:2011/07/18(月) 10:16:24.66 ID:8mgfk2k0

「もう! 晴れ着を変なところに引っ掛けたら、大変じゃないですかっ!!」

 あやせの振袖だって結構な品なんだろう。それだけに、彼女の当惑というか、不満はごもっともだ。

「でも、保科さんがやったようにすれば、大丈夫なんじゃねぇの?」

 郷に入っては郷に従うのがルールだ。俺は、むずかるあやせの手を引いて、ゆっくりと木戸をくぐって
いった。 
 木戸は、思ったよりも間口や高さがあり、俺もあやせも無難にくぐり抜けることができた。屈めていた身
を伸ばして周囲に目をやると、大きな門の袂に俺たち二人は立っており、俺たちの目の前には、ちょっと
悪戯っぽく笑っている保科さんが居た。

「いきなりでびっくりされたでしょうが、この木戸は、極々近しい者しかくぐらないんですよ。お二人は、
今回、特別なお客様ですから、門ではなくて、こちらの木戸を通っていただいたんです」

「そ、そうですか……」

 俺は、口ごもりながら笑顔の保科さんをチラ見した。こんな風にも笑うんだ。こういうときは、どっかの
お嬢様っていうよりも、普通の女の子っぽくていい。
 さっきの木戸を保科家の極々近しい人だけが通るというのが本当だとしたら、保科さんをはじめとする
保科家の人々は、徒歩で出掛ける時、この木戸を通るんだろう。そう思うと、束の間の窮屈な思いも悪くは
ない。

「では、参りましょうか……」

 保科さんが先に立って歩き出した。俺たちもその保科さんについていく。大小不揃いな石を組み合わせた
石畳の通路が、門から母屋の方へ伸びていた。だが、保科さんは、そっちの方ではなく、石畳から分岐して
点々と続いている玉石の上を進んで行く。

「保科さん。そっちは建物じゃなくて庭ですけど……」

「大丈夫です。こちらに、お茶の作法をお教えする場所がございますから……」

 保科さんは振り返りもせずにそう告げた。
 俺とあやせは、当惑して顔を合わせた。
 しかも、あやせの奴は、口をへの字に曲げて、首を左右に振りやがった。
 保科さんは当惑する俺たちには構わず、玉石の上をしずしずと進んでいく。玉石の周囲には枯山水で使わ
れるような白い砂利が敷かれていて、玉石ともども白っぽい帯となって庭の奥へと続いている。その白っぽ
い砂利の帯から外は、しっとりとした緑色の苔が絨毯のように地面を覆っていた。

「今は、お花があまりありませんけど、春には背後の山の桜がきれいなんです。それに、もうしばらくすれ
ば、夏の花が色々と咲くんですよ」

 いや、花なんかなくても、白い砂利と緑の苔のコントラストが美しい。
 見る目がなければ、単に苔が生えた地面に石と庭木が不規則に並べられているようにしか感じないだろう。
だが、保科さんと出会った禅寺の庭園もそうだったが、石と苔と緑の庭木が織り成す空間は、ある種の荘厳
さに満ちていて、自ずと背筋が伸びるような気がした。
 計算し尽くされた不規則性が、保科さんの家の庭園にはあるのだ。

「こちらです……」

 俺たちは、庭園のどん詰まり、保科邸の背後の山々の木々が間近に迫る場所に来ていた。
 そこには、草葺の小さな庵が、背後の木立と庭の植え込みで隠れるように、ぽつねんと建っていた。
 それが茶室の庵であることは、俺にも分かった。だが……、


581 名前:風(後編) 26/63:2011/07/18(月) 10:17:29.61 ID:8mgfk2k0

「入り口は、ここなんですけど……」

「こ、ここって……」

 俺とあやせは思わず顔を見合わせたね。
 だって、保科さんが言う入り口ってのは、戸棚か何かの引き戸かと思うほど小さかった。

「ここは、さっきの木戸よりもさらに狭いですから注意してくださいね」

 言うなり、保科さんはその引き戸を開け、身を精一杯に屈めて、滑るように茶室の中へと入っていった。

「では、高坂さんにあやせさんも入ってください」

 気は進まなかったが、仰せの通りにした。
 先ほどの木戸とは比較にならないほど狭かったが、それでも、しっかりと身を屈めると、肘や背中をどこ
にも擦らずに中へ滑るように入ることができた。
 今にして思えば、さっきの木戸は、ここをくぐり抜けるための予行演習みたいなもんだったのかもな。

「これが本物の茶室か……」

 何かの書籍で写真を見たことはあったが、実際に目にし、その中に入ったのはこれが初めてだ。
 写真でも草庵風の茶室というものは、狭いという印象だったが、この茶室も、たしかに狭い。何かの書が
掛けられている床の間のような部分を別にすれば、広さは四畳半程度だろうか。俺が住んでいる下宿の方が
格段に広く感じる。

「本物だなんて……。茶室の作りに厳格な様式はありませんから、流派によってまちまちですし、各流派も
茶室の様式にそんなに神経質ではありません。要は、世俗から切り離された空間で、お茶をいただけるもの
であれば、どのような様式でもよいのです」

 保科さんは笑顔でそう言い、座るよう、俺たちを促した。

「でも、座布団がないじゃありませんか!」

 あやせが不平丸出しの刺のある口調で保科さんに噛みついている。たしかに、座布団なしで畳の上に正座
はきついな。

「茶の湯で座布団は使いません。座布団というものは、茶事のような正式な席で使うべきものではありませ
んからね」

「座布団は下品だってことですか?」

「う〜ん、下品とまでは申しませんが、決して上品なものではありませんね」

 そうなんだ。知らなかった。
 あやせも、座布団が上品な代物ではないことを保科さんから指摘されたら、未だに不服そうではあったが、
押し黙った。
 保科さんは、嫌味な言い方だが、上流階級としての躾をちゃんと受けている。
 その彼女が上品ではないと言うのであれば、それはそうなのだろう。

「では、お言葉に甘えて、失礼致します」

 俺は保科さんに近い方に座ろうとしたが、それはあやせに止められた。

「お兄さんは保科さんを意識し過ぎです。ですので、保科さんの間近に座らせるわけにはいきません」


582 名前:風(後編) 27/63:2011/07/18(月) 10:19:03.03 ID:8mgfk2k0
「て、おい、おい……」

 とんだ、おてんばだな。こんなんで野点で粗相でもされたら、たまんねぇ。
 だが、保科さんは、そんなあやせを微笑ましくさえ思うのか、涼やかな笑みを微かに浮かべながら炉が設
けられた一角に座り、炉の上で湯気を立てている茶釜の蓋を取り上げている。

「お湯を沸かしておいたんですか?」

「ええ、最近は炭火ではなく電気の炉ですから、準備も簡単なんです」

 にしても用意周到だな。
 保科さんも大学から戻って着替えとかが必要だったろうから、茶室で湯を沸かしていたのは、お手伝い
さんとかなんだろうか。
 おっと、余計なことを考えている場合じゃない。

「では、本当に短時間ですが、これからお二人に茶の湯の一連の所作について簡単にお教えできればと思い
ます」

「よ、宜しくお願いいたします」

 かしこまった保科さんの居住まいで、場の空気が一段と引き締まってきたような気がした。
 茶室という狭い空間は、こうした緊張感を演出するためのものでもあるらしい。

「でも、今日の茶会は野点ですから、そんなに緊張されなくても大丈夫です」

「は、はぁ……」

「野点には、特別にこれといった作法はございません。ただ、全く気楽なものかといいますと、そうでも
ありません。昔から野点というものは、『定法なきがゆえに定法あり』と言われておりまして、様式や作法
がないということが、野点の易しさでもあり、難しさでもありましょうか」

 う〜ん、定型がないものほど難しいってのは、何となく分かるな。それでも、手本となるべき所作はある
んだろう……。

「要は、マナーや常識を心得た自然な振る舞いができればいいのです」

「自然な振る舞いですか……」

「ええ、ただ自然に振舞うには、俗なところが無く悟った境地にある者でないと難しいという茶人もおりま
す。しかし、わたくしどものような世俗の者は、そこまでの境地に至ることは難しいでしょうから、先ほど
も申しましたように、マナーや常識を心得た自然な振る舞いであれば、十分でしょう」

 そう言うと、保科さんは、黒漆塗りで掌に乗るほどの大きさの器の蓋を開けた。その中にはモスグリーン
の粉が入ってた。その器は、名前だけは俺も耳にしたことがある棗とかいう、抹茶を入れるものらしい。

「今回の野点では、濃い目のお茶を点てますから、この練習でも、ちょっと濃い目に点てますね……」

 保科さんは、竹製のへらのようなもので棗から抹茶を掬うと、それを茶碗に入れ、柄杓で湯を注ぎ、茶筅
を使って点て始めた。
 茶を点てているときの保科さんは、先ほどとは別人のように真剣だった。そのぴりぴりする空気に、俺は
もちろん、あやせも圧倒されて、居住まいをあらためるように、背筋を伸ばしてかしこまった。
 保科さんは、茶碗の中で茶筅をゆっくりと優雅に巡らせると、その茶筅を漆塗りの盆の上に戻し、茶を点
て終わった。

「では、あやせさんからどうぞ、と申し上げたいのですが、その前に一つだけ確認をさせていただきたい

583 名前:風(後編) 28/63:2011/07/18(月) 10:20:06.16 ID:8mgfk2k0
ことがございます」

「何でしょうか?」

 勿体をつけられて不服なのか、あやせの奴がまなじりを吊り上げていた。
 本当に、保科さんに対してはガキ丸出しだな。

「拙宅の野点は、茶事の様式で行われます。ご存知かも知れませんが、茶事とは少人数のあらかじめ招待
された方々で行う密接な茶会であり、一つの椀で同じ濃茶を回して飲んでゆくものです。ですから、あやせ
さんは、出されたお茶を軽く含むだけにして、茶碗を高坂さんに渡すようにしてください」

 『一つの椀で同じ濃茶を回して飲んでゆく』を聞いたあやせが目を剥いた。

「そ、それって、か、か、か、か、間接キスじゃないですかぁ?!」

 た、たしかにそうだわな。でも、うろたえるこたぁねぇだろうが。一回だけだけど、特濃ディープキスを
やってるんだからさ。

「う〜ん、そのようなことは、わたくし考えたこともございませんが……。あやせさんは潔癖症のようです
から、気にされるんでしょうか……」

「気にならない方が、余程どうかしていると思います。第一、不衛生じゃないですか」

 おい、おい、それってなにげに失礼な発言だぞ。
 捉えようによっては、自分以外の者は病原菌を持っていると言ってるようなもんじゃねぇか。

「不衛生って言われればそうかも知れませんね……。しかし、気休めですが、飲み終えた方は、椀の飲み口
を懐紙で拭ってから次の方に椀を渡すことになっています」

「で、でも……」

「おい、もう、その辺にしておけ」

 俺は肘であやせの脇腹を小突き、彼女をたしなめた。これ以上無作法な真似をされては敵わない。
 だが、あやせは、小突いた俺をムッとして睨み返し、なおも保科さんに食らい付いていやがる。

「こ、今回の野点の席順は、もう決まっているんですか?」

 もう、厳かな雰囲気が台無しだ。何をやってるんだろうね、本当に。
 それに引き替え保科さんは泰然としたもんだ。
 
「ええ、お茶を点てる先生の側から、他の招待客の皆様が並ばれて、その後にわたくし、それから高坂さん、
最後にあやせさんが座ることになっています」

「じょ、冗談じゃありません!」

「どうしてですか? わたくしは、今回お茶は点てませんから、末席の方に控えるべきですし、高坂さんや
あやせさんは、他のお客様とは面識がありません。ですから、間にわたくしが居た方が、お二方もお気が楽
になるのではないかと思いまして……」

「そ、それはそうですが、その席順では、あ、兄が……」

「高坂さんが、どうかなされるんですか?」

「ど、どうって、言いましても……」


584 名前:風(後編) 29/63:2011/07/18(月) 10:21:16.76 ID:8mgfk2k0
 保科さんに食らい付いたはいいが、保科さんの論が至極妥当だからか、気の強いあやせが口ごもってし
まった。
 こいつ、保科さんと俺とが間接キスするのが嫌だったんだな。不衛生云々は、単なる口実だったのか。

「困りましたねぇ……。一つの椀で同じ濃茶を回して飲んでゆくのは、茶事における鉄則とも言うべきもの
なのですが……」

 ぶーたれている、あやせに対しても、保科さんはあくまでも笑顔だった。

「……では、茶事様式が苦手なあやせさんは、野点が終わるまで拙宅のどこかで控えていただき、野点には
高坂さんだけが参加されるということに致しましょうか」

「そ、それは困ります!」

「では、あやせさんも、茶事の様式を守っていただき、席順も先ほど申し上げた通りでお願い致します」

「は、はい……」

 一応、頷きはしたが、あやせには不満の火種がくすぶっていやがる。
 唇を悔しそうに引き結び、眉をひそめているからな。今日の野点、本当に気が抜けないぜ。

「では、仕切り直しです。それはそうと、お二人は懐紙はお持ちですか?」

「いえ、持っておりません……」

 不勉強過ぎたよな。同じ茶碗で回し飲みすることも知らなかったし、茶事に懐紙が必要なことも知らな
かった。

「では、この袱紗挟みをお使いください」

 保科さんが、布製の四角い物入れをどこからか取り出し、それを俺たち二人に手渡した。

「その中に懐紙が入っています。和服姿のあやせさんは、その袱紗挟みを懐に入れて、野点の席に着いて
ください。スーツ姿の高坂さんは、その袱紗挟みを手にして席に着いていただければ結構です」

「は、はい……。開けてみてもいいでしょうか?」

「どうぞ、と申すよりも、この練習でも使いますから、そのままお膝元に置いていただいて構いません」

 袱紗挟みには、高級そうな和紙でできた懐紙が十枚ほど入っていた。袱紗挟み自体は木綿かと思ったが、
微妙に風合いが違う。どうやら、紬でできているらしい。

「では、遅くなりましたが、あやせさん、お受け取りください」

 保科さんは、やりこめられて凹んだままのあやせに茶碗をそっと手渡した。
 それを両手で不器用に持ったまま、あやせは固まってしまっている。

「こ、この後は、どうすればいいんでしょう……」

「この前、お寺さんでお抹茶をいただいた時と同じようでいいのです。型に嵌った所作は、かえって無粋で
す。先ほども申しましたように、自然な振る舞いが第一ですよ」

「は、はい……」

 自然な振る舞いねぇ……。気持ちが昂っている今のあやせには、かなりきつい要求だな。
 それでも、あやせは頑張って、どうにかこうにか自然そうに振る舞うことができたようだ。


585 名前:風(後編) 30/63:2011/07/18(月) 10:22:38.60 ID:8mgfk2k0
「あやせさんは、椀のお茶を半分ほど飲んだら、椀の飲み口を懐紙で拭い、その椀を高坂さんにお渡しくだ
さい」

 あやせが、言われた通りに飲み口を懐紙で拭い、それを俺の方にそっと差し出してきた。
 あやせから受け取った茶碗には、細かい泡が微かに残ったお茶が、椀の底の方に溜まっていた。

「高坂さんは最後の方ですから、残ったお茶をゆっくりでいいですから、全部飲んでください。飲み終えた
ら、わたくしがその茶碗を引き取りに伺います」

「分かりました」

 俺は保科さんが点ててくれたお茶をゆっくりと味わった。なるほど。濃い茶というだけあって、先日、
禅寺で飲んだものよりも格段に濃厚な味わいだ。しかし、変な苦味は全くない。おそらく最上級の抹茶を
使い、かつ保科さんの点て方が上手なのだろう。

「では、椀は、わたくしにお返しください」

 俺の前にやってきた保科さんに空になった茶碗を差し出した。
 茶椀を受け取った保科さんは、炉の前に座り直し、懐紙で茶碗を丁寧に拭っている。

「ひとまずは、これでよいでしょう。後片付けは、野点が無事に終わってからですね」

 それから保科さんは、「え〜と、炉の電源は……」と呟きながら、何かのスイッチを切ると、正座して
いた俺たちに、茶室を出るように促した。
 練習はこれでお仕舞いらしい。時計を見ると、午後三時十分前だ。時間的にも頃合いだな。
 この練習がなかったら、とんでもないことになるところだった。そもそも、一つの椀で回し飲みすること
すら認識していなかったんだから、ぶっつけ本番だったら、あやせがパニックになったかも知れない。

「では、お兄さん。先に参ります」

 そのあやせが、つと立ち上がって、茶室の出入り口に向かっていく。俺も、立ち上がって、あやせの後に
続こうとした。だが、

「……?!」

 立ち上がることはできたが、両足に違和感を覚え、俺は不覚にもよろめいてしまった。

「高坂さん、どうかなさいましたか?」

 保科さんが心配そうに見詰めている。

「な、何でもありません。ちょっと、足がもつれただけです」

 取り敢えずは、そう言い繕った。しかし、何なんだ、この唐突に感じた足の異常な痺れは。
 こっちに来てからというものの、下宿は座り机だったから、正座には慣れているはずだった。実際、時折、
膝を崩すときはあったが、何時間でも座っていられた。それなのに……。

「高坂さん、もしかしたら、ズボンがきついんじゃありませんか?」

「え?」

 そうかも知れなかった。今風のスリムなシルエットが仇になったようだ。椅子に座る程度では何も問題は
ないが、正座では膝を目一杯曲げるから、細身のズボンだと生地で血管を無用に締めつけてしまうんだろう。

「今は、そうしたスリムなスーツが多いですから仕方がないのでしょうけど、困りましたね……。

586 名前:風(後編) 31/63:2011/07/18(月) 10:23:46.03 ID:8mgfk2k0
拙宅に高坂さんも着用できそうな着物がありますが、それに着替えられてはどうでしょうか?」

「せっかくですが、もう時間が……」

 時計を見ると、野点の時間まで、あと八分程しかない。

「お兄さん、何をぐずぐずしているんですか!」

 いち早く茶室の外に出ていたあやせが、俺と保科さんが未だに出てこないのでヒスを起こしていた。

「そうですか、でも、ご無理なさらないように。もし、足に違和感があったら、遠慮なく仰ってください。
健康上の理由で茶事を中座しても、それは非礼にはあたりません」

「は、はい……」

「とにかく、あやせさんも痺れを切らしているようなので、ここを早く出ましょうか」

 そう言って、保科さんは悪戯っぽく笑った。
 俺の足の痺れと、あやせがヒスを起こしていることを洒落ているのだ。
 俺は保科さんに促されて、茶室の出入り口をくぐり、外に出た。次いで、保科さんが優雅な振る舞いで、
滑るように茶室の外に出てきて、俺の傍らに並んだ。

「お兄さん、本当に、何をやっているんですか。んもう、時間がないんですよ!」

 時間云々は見え透いた口実で、束の間であれ、茶室という密室に、保科さんと二人きりだったのが気に
食わないだけだ。
 俺のことを気遣ってくれた保科さんに比べて、やっぱガキだな。

「まぁ、まぁ、あやせさん。そんなに不機嫌ですと、せっかくの美人さんが台無しですよ」

 保科さんにたしなめられて、あやせはその形相をいっそう歪めた。
 こうなると、もはや般若の面とどっこいどっこいだな。
 保科さん一族が鬼女の末裔とかいう伝説があるようだが、こいつの方がよっぽど鬼女らしい。

「保科さん、そろそろ……」

 時刻は午後三時五分前だった。野点の開始に間に合うのかどうか不安が募る。第一、当の野点が保科邸の
どこで行われるのかさえ、俺とあやせは把握していないし、この広い保科邸のどこに何があるのかも分から
ないのだ。

「こちらです。お二人とも、わたくしの後についてきてください」

 やや小走りに歩き出した保科さんに従って、俺たちも道を急いだ。その保科さんは、来た道とは別の方角
に伸びている丸石が敷かれた小径をずんずん進んでゆく。

「あの離れの角を右に回り込めば、野点が行われる中庭に着きます」

 言われたとおりに、その角を回ると、母屋と離れに囲まれた中庭に飛び出した。その中庭は、俺たちから
見て、右手方向が枯山水になっていて、屹立する岩山をイメージさせるいくつかの庭石の間には白い砂が敷
かれていた。その白砂には水が流れる様を表現した箒目が付けられている。

「あそこが、野点の会場です」

 保科さんの目線を追うまでもなく、中庭の左手方向には、赤い絨毯のような緋毛氈が敷かれ、朱色の大き
な傘が立てられているのが目に付いた。
 その大きな傘の下には炉が据えられ、その上の茶釜からは湯気が湧き出していた。


587 名前:風(後編) 32/63:2011/07/18(月) 10:24:51.34 ID:8mgfk2k0

「急ぎましょう」

 既に俺たちを除く他の招待客は席に着いていて、炉から離れた末席とでも言うべき場所に、都合三人が座
れそうな場所が空いていた。

「お嬢様。お待ちしておりましたぞ」

 保科さんが緋毛氈に座っている来客たちに近づいていくと、そのような声がそこかしこから聞こえてきた。

「いえ、お嬢様だなんて……。それに本日は未熟者のわたくしではなく、先生にお茶を点てていただきます
ので、わたくしはこちらの方で目立たぬように控えさせていただきます」

 いなし方も堂に入ったもんだ。一歩間違えれば嫌味になっちまうのに、保科さんが言うと、全然そうじゃ
ないからな。

「しかし、本日は、おのこを連れてですかな。嬢様もすみには置けませぬなぁ」

 招待客のうち、禿頭で暗褐色の地味な着物を着た、おそらくは喜寿ぐらいになりそうな老人が笑いながら、
そう言ってきた。

「和尚様、そのようなことを仰られると、檀家の皆様から、生臭ナントカと言われてしまいますよ」

「はははは……、これは参った。嬢様には敵いませぬなぁ」

 和尚様と呼ばれた老人は、年に似つかわしくなさそうな張りのある声で、からからと笑っている。

 この爺さん、俺と保科さんが出会った禅寺の住職か何かだろうか。
 それにしても小柄で細身のくせに、よく通る声だな。少なくとも、ただ者じゃなさそうだ。
 その爺さんと俺の視線が交錯した。彫りの深い面立ちに柔和そうな目だった。だが、その目が一瞬だけ、
かっと、見開かれ、俺をたじろがせた。俺が何者であるのか、その眼光をもって吟味したのだろうか。
 だが、それだけだった。爺さんは、もう俺には目もくれず、俺の後ろに控えているあやせの方を向いている。

「おのこだけでなく、嬢様に勝るとも劣らない別嬪さんもお越しとは、愚僧、長生きはするもんですな」

「和尚様、それぐらいにしてください。いくら野点は格式張らないとは申しましても、和尚様の悪ふざけは
度を越しております」

「おお、嬢様の突っ込みはいつもこうじゃ。こわいこわい……」

 保科さんと比較されるという微妙な褒め方だったからか、あやせが『何なのこの爺さん』と言いたげに、
「こわいこわい」と呟きながらも笑っている和尚を、半眼で睨んでいる。
 実際、変なジジイだよな。さっき一瞬だけ、眼光が鋭いように感じたのも錯覚だったのもかも知れねぇ。
 しかも、

「そこな青年、嬢様のような美しいめのこは、こんな風に怖いものじゃ。十分に気をつけられよ、嫁にする
と、後々、尻に敷かれるでな」

 うわぁ、保科さんに釘を刺されても全然堪えてねぇや、このジジイ。しかも、よりにもよって、保科さん
みたいな人を俺の嫁にってのは何だよ。そんなことを考えただけで、我が身がどうなるか分かったもんじゃ
ねぇ。

「……お兄さん……」

 その最大の危険要素が、今、俺の傍らにいやがる。万が一にもあり得ないが、俺が保科さんと付き合いだ

588 名前:風(後編) 33/63:2011/07/18(月) 10:25:52.59 ID:8mgfk2k0
したら、俺はこいつに速攻でブチ殺されちまう。

「和尚様、これ以上、わたくしのお客様を困らせないでください。こちらの殿方は、わたくしの同級生であ
る高坂京介さん、そしてそのお隣の可愛らしいお嬢さんは、高坂さんの妹さんの高坂あやせさんです」

「お嬢様のご学友でしたか……。そうすると、優秀な方なんですね」

 和服姿の品のよさそうな老婦人がにこやかに頷きながら、そう言ってくれた。
 優秀ね……。今の大学に合格できたのは、ほとんどまぐれと言ってよい。大学受験だけに限れば、運がよ
かったというだけのことだ。それでも、

「ありがとうございます。今の大学に合格できて、この街で暮らせるのは、本当にありがたいことだと思い
ます」

 無難な言い回しでその老婦人には応えておいた。もうガキじゃねぇんだ。場をわきまえないといけない。
 それに、俺とあやせ以外の招待客は、みんな目上の人ばかりだ。さっきのジジイみたいな変なのもいるが、
一応は長幼の序ってもんがあるからな。
 
「それでは、高坂さん、あやせさん。こうして立っていたのでは、野点を始められませんから、わたくし
たちも座りましょう」

 保科さんに促されて、俺とあやせは、先ほど茶室で保科さんに教えてもらった通りの席順で、緋毛氈の上
に正座した。つまり、茶釜のある方、上手とでも言うのだろうか、そちら側から保科さん、俺、あやせの順だ。
 
『意外にクッションはあるんだな』

 座布団なしってのを覚悟していたが、それほどひどいものではなかった。どうやら、緋毛氈の下に砂か何
かが敷いてあるらしい。

 保科さんや俺たちが正座すると、それが野点開始の合図であったかのように、一番上手の釜の前に座って
いた、おそらくは保科さんが言うお茶の先生らしき初老の男性が深々と一礼した。
 それに応えて、保科さんも招待客たちもお辞儀をしている。俺もあやせも、ワンテンポずれたような感じ
は否めなかったが、どうにか礼をした。

「始まりました。もし、足が痺れたようなら、遠慮なさらずに、わたくしにお知らせください」

 保科さんが、あやせにも聞こえないように、そっと耳打ちした。
 本当に気配りの人だなぁ。保科さんの温情はありがたいが、そうした特別扱いは俺にとっては恥だ。
 保科さんには悪いが、保科さんの善意をあてにせず、何とかこの野点を最後まで乗り切ってやる。
 覚悟とか決意とかがあれば、どうにかなるもんだ。

「お菓子が配られますから、懐紙を出して、それでお菓子を受け取ってください」

 和服を着た二十代後半くらいの年頃の女性が、野点の客の各々に角ばった白い菓子を配っていた。女性は、
保科家のメイドさんというか、お手伝いさんのようだ。菓子は、おそらく落雁だろう。

 菓子を配る女性が俺とあやせの前にも来た。保科さんに言われ、ついさっき彼女がやったように、懐紙を
掌の上で広げて持ち、そこに菓子を置いてもらった。

「……お兄さん。何ですか、このお菓子は……」

 あやせが出された菓子を怪訝そうに見詰めている。

「落雁だよ。蒸して乾燥させた米を粉にして、それに水飴や砂糖を加えて固めたもんだ」


589 名前:風(後編) 34/63:2011/07/18(月) 10:26:54.53 ID:8mgfk2k0

「高坂さん、よくご存知ですね」

「いえ、たまたま知っていただけですよ」

 あやせが「へぇ〜」と応答する前に、間髪いれず保科さんが突っ込んできた。麻奈実の実家でも作って
いたから知っていただけなんだよな。これで、保科さんの俺への心証はア〜ップ! 保科さんは俺とは住む
世界が全く違う人だが、それでも心証は悪くなるよりよくなった方がいいからな。

 しかし、出鼻をくじかれたあやせは、これで保科さんへの敵意を一段と増したに違いない。恐る恐る横目
で伺うと、眉をひそめて俺を睨んでいやがった!
 どうやら、保科さんとは正面切って戦うことはできそうもないから、腹いせも兼ねて、まずは俺を叩こう
ということか。

「先生のお点前を見てください」

 あやせの怒気にビビリ気味だった俺は、保科さんに言われて、視線を上席の方に向けた。
 野点とはいえ、茶事に出られるのは、俺の人生でこれが最初で最後かも知れねぇからな。所作とか作法
とかは皆目分からないが、どういうものだったかを後々まで思い出にできるようにしておきたい。

 釜の前では、茶の湯の先生が、茶碗の中で茶筅を振るっていた。
 上体がぶれず、あたかも茶筅だけが動いているような安定感が、無知な俺にも分かった。
 シンプルな動作だが、こうした域に達するのは、相当な修練を積まねばならないのだろう。

 茶事の客は、俺とあやせと保科さんを含めて八人だったから、茶碗もかなり大ぶりな感じだ。その茶碗が
一番目の客、つまりは一番の上席に座っている客に手渡された。
 その客は、彫りの深い品格ある面立ちの初老の男性だが、どっかで見たような感じがした。

『大学の学長じゃねぇし……、教授でもねぇし……。誰だったかな?』

 俺がこの街で見かけた品格がありそうな初老の男性っていうと、大学の先生ぐらいしかねぇからなぁ。
 しかし、そうじゃないとなると、誰なんだ。

「今、茶碗を受け取られたのは、この街の市長さんですよ」

 俺の気持ちを見透かしたかのように、保科さんがそっと教えてくれた。
 そうだよな、保科家が、この地方屈指の名家であることを忘れてたぜ。
 それに、当意即妙な保科さんにも驚きだ。ド天然かと思っていたが、あやせ同様に無駄に勘が鋭いみたい
だな。
 そう思った瞬間、あやせが、じろりと睨んできた。

「……お兄さん。なにげに失礼なことを考えていませんでしたか?」

「気のせいだ……。それよりも、この茶事の進行をしっかり見ておいた方がよくないか?」

 これだからな。勘の鋭い奴ってのは油断できねぇ。
 時折、あやせの奴は、テレパシーか何かで俺の心を読んでいるんじゃねぇかって思いたくなる。
 こいつの前での下手な企みごとは、墓穴を掘るだけだな。
 
「お二人とも、お客様からお客様への茶碗の受け渡しをよく見ておいてください」

 茶道の心得が皆無の俺とあやせは、他の招待客の所作を真似るのが手っ取り早い。
 俺は、この街の市長であるという初老の男性の振る舞いに注目した。
 その初老の男性は既に茶を飲んだ後で、茶碗に口をつけた部分を懐紙で拭い、茶碗を掌の上でちょっと
だけ回した。次の客に自分の口が触れた場所をあてがわないためのものらしい。


590 名前:風(後編) 35/63:2011/07/18(月) 10:28:03.85 ID:8mgfk2k0
 その茶碗は、市長の夫人らしい初老の女性に手渡された。二人は一言も言葉を交わさずに、茶碗を受け渡
し、初老の男性と女性は、軽く頷き合うかのように礼をした。

 控え目な動作の中に、空気そのものを重く高密度にするような緊張があり、何も分かってない若造の俺も
背筋を伸ばし、居住まいを改めた。

 茶の湯って、やっぱすげぇな。
 怠惰な俺の日常とは正反対の世界だぜ。

 その女性は、ゆったりとした自然な動作で茶碗を傾けて濃い目に点てられているであろう茶を一服すると、
先ほどの男性と同じように、懐紙で茶碗を拭い、その茶碗を掌の上で少しだけ回していた。

 後は、その繰り返しだった。どうすればいいのか、俺にも分かった。多分、あやせも分かっているだろう。
 要は、相手に敬意を抱いて茶碗を受け取り、又は受け渡す。受け取った茶碗の茶は、後の人のことを慮っ
て、一口だけ味わう。飲み終えたら、自分の唇が触れた箇所は懐紙で綺麗にして、その部分が相手の手元に
来ないように、茶碗を心持ち回すということだ。

『何てことはないはずなんだが……』

 この重い緊張に包まれた中、自然な振る舞いができるだろうか。俺は少々心許ない。
 ふと見れば、あやせの奴も表情を強張らせている。モデルの仕事で、ステージとかに上がるのは場慣れし
ているんじゃないかと思うが、茶事はそれ以上に緊張するものらしい。

 茶碗はその女性から、先ほど俺と保科さんを揶揄したどっかの寺の住職に手渡された。その住職も、先ほ
どの剽軽な振る舞いなどは微塵も感じられない引き締まった表情で茶碗を受け取り、その茶碗から一口、茶
を味わっている。

「大丈夫ですよ……。雰囲気は厳かですけど、いつもの高坂さんらしく、自然体で振る舞ってくださいな」

 俺の緊張感が最大値に達しそうなのが分かるらしい。もう、座布団なしで緋毛氈の上に座っていることも
気にならなかった。
 ただただ、ぴーんと張り詰めた空気の中に俺が居て、その空気の中でつつがなく所作を行う、それだけで
頭が一杯だ。

 どれくらいの時間が経ったのか、茶碗が保科さんのところまで回ってきた。
 保科さんは優雅な振る舞いで茶碗のお茶を一服すると、招待客と同様の手順を踏んで、俺に茶碗を渡して
くれた。

「リラックスしていいんですよ……」

 か細い、囁くような声で、保科さんが俺を励ました。その励ましがあったからってわけじゃねぇが、俺も
どうにか無難に所作をこなせたらしい。
 俺は、最後に控えているあやせのために、ほんの一口だけ茶を残し、これも保科さんがそうやったように
茶碗を拭ってあやせに手渡した。

「……お兄さん……」

 あやせは何かを言いかけたが、それだけだった。場の雰囲気からして私語は慎むべきと思ったのかも知れ
ない。
 そのあやせも、俺同様ガチガチに緊張しているようだったが、無難に所作をこなし、茶を飲み終えた。

「結構なお手前で」

 そんな声が、どこからか聞こえてきた。
 その声で、俺は、緊張感に満ちた茶事の核心部が滞りなく進行したらしいことを感じ取った。


591 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 10:29:06.80 ID:U7jOP5Ji
ここじゃねえだろ。お前は隔離スレに行ってろ

592 名前:風(後編) 36/63:2011/07/18(月) 10:29:14.29 ID:8mgfk2k0
 だが……、緊張が解けたら、足の痺れが一気にきやがった。

「高坂さん、大丈夫ですか?」

 傍目にもヤバイ状況なんだろうな。
 さっきまでは全然気にならなかったのに、今は膝から下が石みたいにコチコチで、全然感覚がねぇ。

 砂の上に緋毛氈が敷いてあったから意外にクッションがある感じだったが、その砂に膝頭が妙にめり込ん
で、かえって脚の血行を損ねたらしい。
 何よりも、保科さんに指摘された細身のズボンが仇になった。

「もう少しの辛抱ですから……」

 茶事はもう終わり、招待客たちは保科邸の中庭をめでながら四方山話をしている。
 その話題も、市の行政のこととか、寺での行事のこととか、聖俗ごちゃまぜでとりとめがない。
 取り敢えずは、俺にもあやせにも関係のない話題だから、もっぱら聞き役に徹することにした。というか、
全然話題についていけないし、何よりも足の具合が相当にヤバくて、じっと黙っているしかなかった。

「お兄さん……、お菓子でも食べれば、少しは気が紛れるんじゃ……」

「……そうだな、未だ落雁を食べていない」

 俺の状態が洒落にならないくらい宜しくないことが、あやせにも分かったようだ。
 そういや、こいつがこんな気遣いを見せるのは、これが初めてかも知れねぇな。

 そんなことを思いつつ、俺は懐紙で包んでおいた落雁を一口かじった。嫌味のないまったりとした甘さが
あって、今まで食べたどの落雁よりも、つまりは麻奈実の実家である田村屋のものよりも旨い。
 どうやら、普通の白砂糖ではなく、和三盆あたりの超高級なものを使っているようだ。

「この落雁、結構美味しいものなんですね」

 普段のあやせだったら、もはや宿敵の一人であろう保科さんを前にして、こんなことは言わなかっただろ
う。一応は、俺の気を紛らわせようということか。

「甘さが上品なのに加えて、粉っぽい感じがしない。相当な高級品だな」

 俺もあやせに相槌を打った。
 実際、あやせと何かしらの会話があると、束の間だが、石の様になっちまった自分の足のことを忘れられる。 
 そのあやせは、ちょっと保科さんの方を窺っていた。
 そして、今は彼女が招待客たちとの談笑に気を取られていることを確認すると、俺の耳元で囁いた。

「来てよかったですか……」

「……今はピンチだが、こうした茶事に出られるのは、一生のうちでそうそうないだろう。だから、来てよ
かった……」

「そうですね……。わたしも、ちょっとだけそんな風に思いました」

「……そうか、それなら救いがある……」

 空はうす曇で、暑くなく寒くなく、絶好の野点日和だった。
 気をしっかり保つために、俺は中庭の枯山水をじっと見た。実のところは、高さが子供の背丈にも満たな
い庭石がいくつかと、その庭石の間に白砂が敷かれているだけなのだが、箒目で水の流れを表現した白砂を
凝視していると、本当にそこに水流があるような気がしてきた。


593 名前:風(後編) 37/63:2011/07/18(月) 10:30:41.99 ID:8mgfk2k0
「でも、お兄さん。顔色が……」

「何、大丈夫だ」

 あやせにそう言われるとは、本当に状態が悪いんだな。
 枯山水を本物の水流と感じたのも、苦痛で錯乱しかけているためなのかも知れない。
 そろそろ、この野点が終わってくれないと、足どころか、頭もどうにかなってしまいそうだ。

「では、名残惜しいですけど、そろそろお開きに致しましょうか」

 唐突に響いた保科さんのその声で、俺は心底助かったと思った。
 時計を見ると、午後四時きっかりだ。招待状に書いてあった通りの時間で野点を終えたらしい。
 保科さんも俺の具合がかなり悪いことは知っているが、接待する側の手前、他の招待客を無視して野点を
早めに切り上げるなんてのはできないからな。

「母屋の一室にお酒と簡単なお料理を用意しております。宜しければ、そちらで暫しおくつろぎください」

 先ほど落雁を配ってくれた女性がそう言って招待客たちを母屋へと案内している。
 まず、お茶の先生が先に立ち、続いて市長、市長の夫人、坊さんといった具合に、各々が席を立って母屋
の一室とやらへ向かっていった。

 後に残るは、保科さんと俺とあやせだけだ。

「高坂さん、もう脚を伸ばしても大丈夫ですよ」

 そう言われても、感覚が失せた俺の下肢は、膝から下が石みたいだ。俺は、いざるように身じろぎして、
足の痺れをごまかそうとした。

「お兄さん、何を貧乏ゆすりしているんですか!」

 我ながら相当にみっともないことは自覚しているが、こんな風にしか動けないんだからどうしようもない。
 それでも俺は、どうにかして立ち上がろうと、恐る恐る腰を浮かせた。
 その瞬間、痺れを通り越した激痛が膝下からつま先まで襲ってきて、俺は堪えるために目をつぶった。

「もう〜、じれったい!」

 そんな状況で、あやせが俺の背中を両掌でどやしつけたからたまらない。

「バカ! いきなり何しやがる」

 俺はバランスを崩し、つんのめった。

「!!!!!」

 いきなり、ぐにょんとした弾力を顔面に感じ、ほんのりとした香りが俺の鼻腔をくすぐった。
 驚いて目を開けると、鴇色の着物と白い襦袢の重なりがあって、その隙間からは白い柔肌が……。

「あぅ! こ、高坂さん、い、いけませんわ、こんなことなんて……」

 ちょっと上ずった感じの保科さんの声が、すぐ上から聞こえてきた。
 あろうことか、あやせに背中を突き飛ばされた俺は、保科さんの胸元に顔面をダイブさせていたのだ。

「う、うわぁ! す、すいません」

 慌てて俺は保科さんの身体から離れようとした。だが、悲しいかな、膝から下の感覚が定かでない状態で
は、立つことすらおぼつかず、俺の頭は、そのままずるずると保科さんの胸元から腹部をなぞるように落ち

594 名前:風(後編) 38/63:2011/07/18(月) 10:31:57.10 ID:8mgfk2k0
ていき、ついには彼女の太腿の上へと滑り落ちてしまった。

「な、な、な、何をやってるんですかぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 背中越しにあやせの罵声が聞こえる。
 俺はというと、顔面を保科さんの股間の辺りにめり込ませるようにして、もがいていた。
 もがきながらも、『この鴇色の振袖と襦袢の下には、お嬢様の秘密の花園がある。お、思わず匂いを
……』とか一瞬思ってしまうのだから、我ながら浅ましい。だが、そんな場合じゃねぇよな。

「あ、あやせぇ、な、何とかしてくれぇ!」

 自分の脚が言うことを聞いてくれない俺は、恥も外聞もなく、自称俺の妹様に助けを求めた。

「もぅ、ふざけないでください。お兄さんは変態だから、わざとそんなことをしてるんでしょ?!」

「バカ、こうなったのは、お前が突き飛ばしたからだろうが! それに本当に脚が動かないんだよ! 
だから、早く何とかしてくれぇ!!」

 保科さんに対して、故意にこんな狼藉を働けるわけがない。
 彼女は、俺たちとは住む世界が違う、アンタッチャブルな存在なんだからな。

「本当に、もう、バカで変態で、世話が焼けるんだから……」

 襟首がぐいとばかりに引っ掴まれた。
 いてぇ! あやせの奴、どさくさ紛れに俺のうなじに爪を立てやがった。腹は立つけど、この状況から
脱するのが先決だからしょうがない。
 だが、あやせの奴は、俺の襟首を引っ掴んではいるものの、いっこうに持ち上げようとしないじゃないか。
 何事かと思い、横目でそっと窺うと、俺の襟首を掴んでいるあやせの手には、保科さんの手が添えられて
いた。

「あやせさん、そのように乱暴なのはいけません」

「で、でも、これは兄がわたしにそうしろと命じたから、その通りにしているだけです。何よりも、
このまま兄の失礼な振る舞いをほっとくわけにもいきませんから」

「そうかも知れませんが、高坂さんは足にかなりのダメージを負っています。無理に動かすのは宜しくあり
ません。ですから、このまま、わたくしの膝枕でゆっくり休んでいただくことに致しましょう」

「で、でも、それじゃ、保科さんにご迷惑がかかります。それに、これ以上、兄を甘やかすのは問題です。
兄は変態ですから、保科さんに膝枕をしてもらっている間に、エ、エッチなことを考えるし、も、もしかし
たら、保科さんによからぬことをするかも知れません」

 毎度のことだけど、ひでぇ言われようだな。少しでも俺に対する保科さんの印象を悪くしようって魂胆か。
今となっては、これ以下ってのはないぐらい、落ちるところまで落ちた感じだけどな。
 だが、さすがはド天然恐るべし。

「ほほほほ……、よいではありませんか。それでこそ殿方でしょう? それにわたくし自身が、高坂さんに
膝枕をしてあげたいのです。それなら何も問題はありません」

「そ、そのようなことをしていただく謂れはありません!」

「あやせさんにはなくても、わたくしにはあります。何よりも、高坂さんは足の痺れがひどくて、動けない
のですから、今しばらく、楽な姿勢で休ませてあげなくてはいけません」

「で、でも……」


595 名前:風(後編) 39/63:2011/07/18(月) 10:33:04.23 ID:8mgfk2k0
 やんわりとした口調だったが、あの強情なあやせが押し黙った。
 俺にも分かるが、保科さんの笑顔には、抗いがたい何かがあるんだよな。

「高坂さん……。宜しければわたくしの膝枕で暫しお休みください。でも、まずは、そのままお顔をちょっ
と、右に向けていただきますか? そのままだと、わたくしもちょっと恥ずかしいです」

 そういえば、俺って、保科さんの股間の辺りに顔面を埋めたままだったんだよな。なんてぇ醜態だろうね。
 俺は腕立て伏せをするようにして上体を持ち上げ、寝返りを打つようにして、うつ伏せから仰向けになった。

「取り敢えず、仰向けになりました。でも、これ以上、足が思うようには動いてくれません……」

 仰向けになった俺の後頭部は、保科さんの股間辺りにめり込んでいる。顔面がめり込んでいるよりもマシ
だが、依然として芳しい状況ではない。
 だから、保科さんが横にずれて、俺の頭を大腿部に乗せるようにして欲しかった。だが、保科さんは艶然
として、俺を見詰めていた。

「このままで宜しいではありませんか。こうした方が、高坂さんのお顔がよく見えます。それに、
わたくしも……」

 そう言いかけて、保科さんは、白魚のような指を俺の額に伸ばし、浮き出ていた脂汗を拭うように撫で回
した。

「あ、あの……」

「こうして、高坂さんのお世話をさせていただけるのは、正直うれしゅうございます」

 憂いを帯びた瞳が、俺をじっと見守っていた。その眼差しは、あくまでも優しく、柔和だった。

「保科さん……」

「高坂さんは、このまま楽にしていてください。何も考えず、何も思い悩まず、ただただ、緊張を解いて、
わたくしに御身を委ねてくださればよいのです」

「は、はい……?」

 そう言われても、襦袢と振袖の着物越しに、保科さんの温もりが伝わってくるじゃねぇか。しかも、その
温もりって、保科さんのオマタと太腿からのものなんだぜ。こ、これはヤバイ……。

「……お兄さん……」

 自称俺の妹様が、保科さんに身を任せている俺を、恐ろしい形相で睨んでいた。そんな剣呑な状況だって
のに、俺の股間のハイパー兵器は、保科さんからの温もりを受けて、ムクムクと怒張していく。
 その様は、あやせは勿論、保科さんからも丸見えだった。

「ま、まぁ!」

 保科さんが、頬を朱に染めて、驚いている。
 済みませんねぇ。おいらのハイパー兵器は、往々にして制御不能なんすよ。

「それ見たことですか! あ、兄はこのように変態なんです。その兄に膝枕だなんて、じょ、常軌を逸して
います」

 しかし、保科さんは、頬をうっすらと朱に染めていたものの、泰然としたものだ。

「よいではありませんか。殿方とは、このようであると、わたくしも伺っております。それに、高坂さんが

596 名前:風(後編) 40/63:2011/07/18(月) 10:34:03.64 ID:8mgfk2k0
わたくしを女として意識されて、かようなことになったとすれば、女冥利に尽きると申しますか、むしろ
光栄です……」

「ほ、保科さん……」

 仰天発言だった。てっきり俺を変態扱いするのかと思ったが、『女冥利に尽きる』とか、『光栄』とか、
エロ過ぎて、ヤバ過ぎる。
 そして、別の意味でヤバイのが俺の傍らに居た。

「う、ううううっ〜〜〜〜〜〜〜」

 自称俺の妹様が、目を吊り上げて、猛獣のように唸っている。もう、完全に怒り心頭。
 あやせからは、俺や保科さんへの怒りや敵意が、致死線量のガンマ線の如く放射されていた。

「あら、あやせさん……。どうかなさいましたか?」

 ド天然の保科さんは、磊落というか呑気なものだ。
 怒りで歪んだ面相を、ゆでだこのように真っ赤にさせているあやせにも、艶然とした笑みを向けている。

「あら、じゃありません! あ、兄が、こ、このような醜態を晒し続けるのは、妹として、が、我慢できま
せん。も、もう、膝枕はやめてください!!」

 そう言い放ったあやせの目が潤んでいた。こいつ、涙目で怒ってやがる。

「困りましたねぇ……。高坂さんは未だ動けるような状態ではなさそうですし……」

「あ、兄は、保科さんに甘えているだけです。これ以上、兄を甘やかされては、妹として保科さんに申し訳
ありませんし、あ、兄のためにもなりません」

「では、あやせさんは、高坂さんをどのようにすれば宜しいのですか?」

「そ、それは……。わ、わたしが……」

 あやせは、何かを言いかけたが、それを打ち消すように、瞑目して首を左右にブンブンと振った。

「……?」

 保科さんが、そんなあやせの反応を、笑顔ながら、小首を微かに傾げて怪訝そうに窺っている。

「と、とにかく、変態な兄に、保科さんの膝枕なんてのは、過分です。横になるのであれば、緋毛氈の上に
でも転がしておけばいいでしょう。がさつな兄は、そんな扱いで十分です」

 ひでぇ……。何なんだよ、この粗大ゴミ一歩手前の扱われ方は……。

「あやせさん……。足を痛めている高坂さんを、そのように扱ってはいけません。今の高坂さんに必要なの
は、いたわりと癒しです。あやせさんが高坂さんを緋毛氈の上に転がしておけばいいなんて思っているので
あれば、なおのこと、わたくしは高坂さんに膝枕をさせていただきます」

「うっ……」

 気丈なあやせが、餅を喉に詰まらせた時のように、苦しげに言葉を詰まらせた。
 言葉遣いこそ丁寧だったが、保科さんには有無をも言わせぬような威圧感がみなぎっていたからな。

「もっと素直になられたらいかがです? 高坂さんに対するあやせさんの刺々しい振る舞いは、あやせさん
が何か意固地になっているせいだと思われます」


597 名前:風(後編) 41/63:2011/07/18(月) 10:35:02.97 ID:8mgfk2k0
「そ、そんなことは、ありません!!」

「そうですか。そう仰せであれば、わたくしも、このまま暫し、高坂さんに膝枕をさせていただきます。
自分の気持ちに正直ではない人に、高坂さんを委ねるわけには参りません」

 恐る恐る、上目遣いで窺うと、保科さんは、相変わらず笑顔ではあったが、大きな瞳であやせの白い面相
を凝視している。
 あやせも、その保科さんからの視線を真正面から受け止めるかのように、鬼女顔負けの物凄い形相で睨み
返していた。

「あ、あの……」

 息苦しさに耐えかねて、俺は言葉を紡ぎかけたが、保科さんは俺の口元に白魚のような指をあてがい、
そっと撫で回した。
 『高坂さんは、口出し無用です』ということなんだろう。
 だが、保科さんの一連の行為は、対峙しているあやせにも丸見えだった。

「な、何をしているんですかぁ!! ほ、保科さんが、これ以上、兄をいいように扱うのを黙って見ている
ことはできません」

 いきり立ったあやせの絶叫が、中庭に響き渡った。その声で、何事か? とばかりに、様子を窺う人影が
母屋に認められた。
 それも、さっきの生臭坊主じゃねぇか!

「お、おい、みっともないから、そんな大きな声で喚くんじゃない」

「お兄さんは、黙っていてください!」

 うわ、だめだ。こうなると、あやせの暴走は止まらない。
 保科さんも保科さんだ。何でこんなにも意地を張るんだろう。
 二人の諍いが丸く治まるのなら、俺は緋毛氈どころか、地べたに転がされてもいい。
 だが、そんな風に自虐的なことを思っていたのがいけなかったのだろうか。
 あやせは、なおも保科さんと睨み合っていたが、やにわに俺の右足首を掴んできた。

「うわっ! い、痛いじゃないか」

 血の巡りが戻りつつある箇所を思い切り握られたんだから、たまったもんじゃない。電撃にも似た激痛に、
俺は身を捩じらせた。

「あやせさん! ダメージを受けている高坂さんの足を掴むなんて、非常識過ぎます」

 淑やかな保科さんも、堪りかねたのか、声を荒げた。
 その声で、あやせは、はっとしたように驚いて、そろそろと、俺の足から手を離した。

「い、今のは、兄に対して、申し訳ありませんでした。つい、感情的になって、考えなしに……」

「そうですか……。気持ちが昂ぶって見境がなくなるのは宜しくありませんが、それは誰にでもあり得る
ことでしょう。もしかしたら、わたくしにだってあるかも知れません……」

 これが大人の余裕ってやつなのか。ガキ丸出しのあやせとは大違いだ。
 だが、ガキ丸出しになったことで、あやせは開き直っちまったらしい。
 鼻息荒く保科さんを睨みつけ、あろうことか、保科さんの顔に人差し指を突きつけた。

「見境がなくなったという御指摘は、正直不愉快です。でも、これでわたしも吹っ切れました。兄を返して
ください。兄はわたしのものです! あなたになんか絶対に渡しません!!」


598 名前:風(後編) 42/63:2011/07/18(月) 10:35:45.04 ID:8mgfk2k0

 うひゃあ! 俺って、あやせの所有物なのか?
 もう、下宿近くの神社で強引にキスされたのが、年貢の納め時だったらしい。
 しかし、妹であるはずのあやせが、『兄はわたしのもの』なんて言うのを保科さんが聞いたらどう思うだ
ろうか。
 あやせのことを度し難いブラザーコンプレックスの持ち主と思うか、それとも……。

「………………」

 その保科さんは、能面のような硬い表情で、あやせと向き合っていた。こんな表情の保科さんは、初めて
だな。
 今まで以上に気詰まりな雰囲気が、保科邸の中庭に充満していた。
 もう、だめだ……。俺はいざってでも、この場を逃れたくなった。しかし、痺れが失せず、満足に動き
そうもない自分の両足がうらめしい。

「…………そうですか……」

 気詰まりな沈黙は、ため息交じりの保科さんの一言で打ち破られた。

「何が、そうですか、なんですか?!」

 相変わらず般若のように面相を歪めているあやせと違って、保科さんは、いつもの落ち着いた表情を取り
戻していた。

「高坂さんの肉親であるあやせさんが、高坂さんをいとおしく想っておられるのであれば、今は他人である
わたくしの出る幕ではありません。高坂さんはお返し致します」

「だったら、早く兄を返してください!」

 あやせは、保科さんに一歩近づき、彼女の前に立った。握り締めた両の拳が、ぶるぶると震えている。
 これじゃ、仁王立ちして武者震いをしている巴御前か何かだぜ。

「まずは、落ち着いてください。高坂さんはあやせさんに委ねますが、緋毛氈に転がすような粗略な扱いは
絶対にやめていただきたいと思います。その点は、宜しいですね?」

「も、もちろん、そ、そんなことはしません!!」

「では、まずは、わたくしのすぐ隣にお座りください。そうして、わたくしの膝の上から、あやせさんの膝
の上に、高坂さんを移します」

 あやせは、渋々といった感じで、保科さんの右隣に座った。

「こ、これでいいでしょうか?」

 苦手な保科さんに必要以上に接近したくないのか、保科さんとの間には握り拳分だけの隙間があり、なお
かつ、あやせは上体を右に反らせて硬直している。

「もっと、わたくしにぴったりとくっつくようにしてください。そうでないと、高坂さんをあやせさんの膝の上に移せません」

「い、いや、お、俺が動きますよ……」

 足は未だに不自由だったが、上体を起こすことはできる。それに、保科さんに近づきたくないあやせの
ことを、多少は慮ってやらないとな。あやせがヒスを起こすのを、もう見たくねぇ。

「無理はなさらないでくださいね……」


599 名前:風(後編) 43/63:2011/07/18(月) 10:36:36.98 ID:8mgfk2k0

 起き上がった俺の上体を、保科さんは両手で支え、右脇に控えているあやせの膝上に誘導した。

「あ、そ、そこは……」

 保科さんの股間の上に代わって、あやせの股間の上へ、俺の後頭部は納まった。

「わたくしと同じように、高坂さんを膝枕で休ませてあげてください」

「で、でも、膝枕って、こんなんじゃなくて、お兄さんの頭が、わ、わたしの膝に対して、よ、横向きに
なるんじゃないんですか?!」

 頬を染めているあやせに、保科さんは艶然と微笑んでいる。

「この方が、高坂さんの頭が安定します。それに、先ほどまで、わたくしもこの体勢で高坂さんを支えて
いたのです。わたくしにできたことは、あやせさんもおできになるはずですよね?」

「……は、はい……」

 声を震わせながら微かに頷いたあやせを認めてから、保科さんは、やおら立ち上がった。

「ほ、保科さん。どちらに?」

 俺の問い掛けに、保科さんは、一瞬だが、笑みが失せた憂いに満ちた表情を覗かせたような気がした。 

「ちょっと、母屋の方へ参ります。他のお客様のお世話をしなければなりませんから。今回は、和尚様の
ような、個性のある方がお出でなので、それなりの注意が必要です」

 母屋から、例の生臭坊主がこっちの様子を窺っていたことを、やはり御存知だったらしい。
 ド天然でも、女ってのは本当に勘が鋭いよな。
 それに、『それなりの注意が必要』ってことは、あの坊主に釘でも刺しておくのかも知れねぇ。

「では、わたくしは、暫しここを離れます。では、あやせさん、高坂さんのことを宜しくお願い致します」

 それだけ言い添えると、保科さんは、舞うような足取りで、母屋へと向かって行った。 
 これで中庭には、俺とあやせの二人きりだ。
 俺は、頭の座りを正すつもりで、首をちょっとだけ左右に振ってみた。

「あ、あうっ……。う、動かないでください……。そ、そこは……、だ、だめですぅ」

「あ、あやせっ!?」

 俺の頭は、あやせの股座をぴったりと塞ぐように置かれていることを思い出した。

「お、お兄さんの、あ、頭が、……に当たっているんです……」

 切なそうな声を上げて、あやせが身悶えていた。
 いつもなら、『ブチ殺します』とか何とか言っている口が、妙に艶っぽいことを吐き出していやがる。

 でも、俺も興奮ものだよな。布地越しとは言え、俺の脳天はあやせの恥骨のちょっと上辺りを押さえてい
て、後頭部は、あやせの秘密の花園に、ずっぽし埋まっているんだぜ。
 そんなことを考えていると、股間のハイパー兵器にエネルギーがチャージされ続けちまうんだがな。
 俺とは別の生き物のように、むくむくと持ち上がるそれをごまかそうと、俺は未だに痺れが失せない足を
だましだまし動かして両膝を持ち上げ、できるだけ内股になった。だが、

「……お兄さん。また、おっきくなってるじゃないですか。この、変態……」


600 名前:風(後編) 44/63:2011/07/18(月) 10:37:34.12 ID:8mgfk2k0

 自称俺の妹様の目は欺けなかった。

「し、しかたないだろ。こんな体勢で……」

 そう言うあやせだって、目を潤ませて、自分の胸元を揉むように押さえているじゃねぇか。
 布地越しには秘密の花園、そして、妙にエロいあやせの表情やしぐさを見せつけられたんじゃ、ペニスを
大きくするなってのが酷な話だ。
 それに、俺にも言い分はある。

「変態とか何とか、俺を罵っていながら、お前だって、いやらしいことを考えているんだろ? 態度で丸分
かりだぞ」

 途端に、俺を見下ろしているあやせの表情が、『心外です!』と言わんばかりに険しくなった。

「お兄さんがそうだから、わたしも同様だと思うのは、それこそ失礼じゃありませんか!」

「でもよ、お前って、さっきから、俺のズボンの膨らみをガン見して……、うぉ! 
い、いてぇじゃねぇか!」

 言い終わらないうちに、俺は脇腹を思いっきりつねられた。

「ガン見なんかしてません! いやでも目に入っちゃうから、困るんです」

「じゃぁ、目をつぶってろよ」

「いやです。私が目をつぶっている隙に、変態なお兄さんは、わ、わたしに、よ、よからぬことをするに
違いありません。ええ、きっとそうです」

 俺は、呆れて思わずため息を吐いた。

「じゃ、どうしようもないじゃねぇか……」

「そうですね……。でも……」

 ふと、あやせは、俺から視線を外し、顎を上げた。あやせの喉元が、初夏の淡い光を受けて白く輝いている。

「何やってんだ? お前……」

「空とお屋敷の後ろにある森を見ているんです。雲の切れ間から射し込む光が、森の緑を際立たせていますね」

 そう言われて、俺も目線を空に向けてみた。

「ほんとだ。薄雲の一部が切れて、そこから日の光が射し込んでやがる」

 夕方近くになって、いくぶん赤みを帯びた日の光が、灰色の雲の隙間から光の筋となって降り注いでいた。
 どっかで見たような構図だな、と思ったら、先週、黒猫や沙織と一緒にお茶を飲んだホテルの天井にあっ
たフレスコ画に似ている。

「あらためて見ると、お屋敷の背後にある森も結構な規模ですね」

「そうだな。保科さんの屋敷以外に人工的なものは全然ない」

 こんな光景、千葉市内には絶対にないだろう。


601 名前:風(後編) 45/63:2011/07/18(月) 10:38:28.12 ID:8mgfk2k0
 この森も保科家の私有地で、そのために乱開発を免れてきたに違いない。

「……綺麗ですね。なんてことはない雑木林なのに」

「新緑っていう時期はちょっと過ぎちまったみたいだが、それでも十分に美しいな。きっと、秋になったら、
紅葉が見事だろう」

 こんな自然に囲まれて、保科さんは生まれ育ってきたんだな。
 せせこましい街中で暮らしてきた俺やあやせとは、価値観やものの捉え方が違うのは当然のことなんだ。

「でも、もう、ここを訪れることはないでしょう……。少なくともわたしは……」

「そりゃそうだ。今回、俺たちがここに呼ばれたのは、何かの間違いなんだよ」

「そうでしょうか? 保科さんは、お兄さんに興味があるから、わたしたちを招待したんです。あの人は、
本当に油断がならない女です」

 保科さんを、俺にちょっかいを出す“悪い虫”と決めつけてやがる。
 常識的には、保科さんのようなお嬢様が、俺のようなどこの馬の骨とも知れない野郎を相手にするとは思
えないんだがな。それに……、

「さっき俺は保科さんの胸に顔面ダイブして、あまっさえ、彼女の股間に顔を突っ込んだんだぜ。こんな
無礼なことをやっちまったんじゃ、もうお仕舞いだろうさ……」

「……本当にお兄さんって、真性のバカですか?」

「また、バカ扱いか……」

「わたしは、その時の彼女の様子を一部始終見てましたけど、お兄さんがやったことは、彼女にとって
“ご褒美”って感じでした」

「嘘だろ……。あり得ねぇ」

「保科さんの胸元と股座に顔を突っ込んでいたお兄さんには、その時の様子は全然見えていなかったじゃ
ないですか」

「だが、彼女にとって“ご褒美”ってのは嘘くさい。お前が見た保科さんの様子はどうだったんだよ」

 空を見上げていたあやせが、膨れっ面で、俺の顔を睨みつけてきた。

「……それをわたしに言えと?」

 虹彩が失せた冷たい瞳が、俺を見下ろしていた。

「あ、ああ、いや、話したくないなら、別段無理に話さなくてもいいからさ、と、とにかく、落ち着こうぜ」

 あやせたん、マジこぇ〜。

「……そうですね。わたしは、あの女のことを考えただけでムカムカするんです。その辺は、お兄さんも察
してください」

「……そ、そうだな……」

 こりゃ、あやせと保科さんが和解するってことは絶対になさそうだな。保科さんにあやせに対する敵意は
窺えないが、あやせときたら、保科さんを親の仇ばりに嫌悪してやがる。


602 名前:風(後編) 46/63:2011/07/18(月) 10:39:26.68 ID:8mgfk2k0
 黒猫との関係もそうだが、こいつは本当に業が深いなぁ……。

「……うふふ……」

 そのあやせが、唐突に含み笑いをしてやがる。

「何だよ、変に笑いやがって、気持ち悪いな」

「だって、お兄さんの怯えた表情が可愛らしくって……」

「お、おい……」

 あやせは、細い指先を俺の額に当て、そのまま鼻筋をなぞり、俺の口元にその指を添えた。

「そのお兄さんは、わたしの膝の上で、わたしのなすがまま……。膝枕って、ちょっと恥ずかしいけど、
こうしてお兄さんと一緒に居られるのは、悪くないですね……」

「そ、そうなのか?」

 ビビリ気味な俺がおかしかったのか、あやせは一瞬、くすりと笑い。目をつぶった。

「目はつぶらないんじゃなかったのか?」

「……気が変わりました。それに、目をつぶっていると、風の音が聞こえるんですよ」

「風の音? 風なんか大して吹いてないぜ」

「お兄さんも目をつぶってみれば分かります……」

 暗に促されて、俺も瞑目してみた。
 目をつぶり、耳を澄ませていると、たしかに、風に揺れる木々のざわめきが感じられた。

「まるで、潮騒のようだな……」

「ええ……、不思議と落ち着きますね、この音は」

「こういうのも悪くないな」

「そうですね……。でも、お兄さん、足の具合はどうですか?」

 そうだった。保科さんとあやせの膝の上で、だいぶ長いこと寝っ転がっていたからな。
 俺は、両足の足首と膝を交互に動かしてみて、不快な痺れが残っていないことを確認した。

「おかげさまで、よくなったよ。もう、膝枕は要らないな」

 俺は、目を開けて、ゆっくりと起き上がろうとしたが、俺の両肩にはあやせの手がそっと添えられた。

「ど、どうしたんだ?」

「せっかくですから、もうしばらく、お兄さんに膝枕をさせてください」

 瞑目したままのあやせは、先刻のような膨れっ面ではなく、菩薩のような穏やかな表情を浮かべていた。

「い、いいのか? お前だって重いし、そろそろしんどくないか?」

「こんな機会は滅多にないでしょうから、わたしはもうちょっとこのままで居たいんです。だから、
お兄さんも目をつぶって、楽にしていてくださいね」


603 名前:風(後編) 47/63:2011/07/18(月) 10:40:11.04 ID:8mgfk2k0

「そういうことなら……」

 俺は再び瞑目した。木々の微かなざわめきが、潮騒のように聞こえてくる。


*  *  *
「お二方、そろそろ目を覚ましていただけないでしょうか?」

 鈴を転がすような優美な声で、俺とあやせは目を開けて、はっとした。

「あ、あれ?!」

 いつの間にか、俺もあやせも寝入ってしまったらしい。
 しかも、寝入ったあやせは、俺の身体に覆い被さるようになっていて、俺の鼻先にはあやせの下腹部が
あった。
 そして、あやせも俺と似たような有様だ。

「きゃっ! な、何で、お兄さんのお腹が、わたしの目の前にあるんですかぁ?!」

「知るか! そんなこと」

 “シックス・ナイン”ってこんな体勢なんだろうな。
 そんな有様を保科さんに見られちまったなんて、恥の上塗りもいいところだ。だが、

「今日は陽気が宜しいので、お二方とも、本当に気持ちよさそうにお休みでした。無理に起こすのも無粋と
思いましたが、もう、夕暮れ間近ですので……」

 ヤバイ状態で寝っ転がっていたことは突っ込まない。これも育ちのよさの賜物だろうか。

「うわ、もう、こんな時間?!」

 腕時計を見たあやせが、素っ頓狂な声を上げた。時刻は午後六時を過ぎていたのだ。

「そうですね、かれこれ、一時間半はお休みになっていたでしょうか」

「そ、そんなに長く……」

 あやせが絶句するのも無理はねぇな。俺もぐっすり眠っちまっていたのか、少なくとも一時間ほどの記憶
がまるでない。
 俺は、上体を起こして、辺りを窺った。
 薄暗くなった中庭に居るのは、俺とあやせと保科さんだけだ。
 母屋の方も静まり返っている。

『何だか、静か過ぎて、気味が悪いです……』

 あやせが、保科さんに聞こえないよう、俺にそっと耳打ちした。
 たしかにな。失礼ながら、その点に関しては、俺も同感だ。人の気配が全くないわけじゃないが、妙に静
か過ぎる。

「他の招待客の皆様は、どうされたんですか?」

「先ほど、皆様お帰りになられました」

「そ、そうですか……」


604 名前:編) 48/63:2011/07/18(月) 10:41:22.24 ID:8mgfk2k0
 そうだとしても、どうも納得がいかない。
 宴が終わったとしても、あれだけの人数分のもてなしをしたのであれば、その後片付けで多少はドタバタ
するはずだ。なのに、その気配がない。

『狐につままれたような気分だぜ』

 俺の囁きに、あやせは微かに頷いた。
 時刻は、ちょうど“誰そ彼時”。高校の時、古文の教師が、『妖怪変化が蠢き出す』と言っていた頃合いだ。

 不意に、保科家の祖先が鬼女の一族であることと、保科家の婿が早逝するという噂を思い出し、
俺は思わず身震いした。

「宜しければ、母屋に上がられて、あらためてお茶でもいかがですか?」

 俺とあやせは互いに顔を見合わせ、意見の一致をみた。

「せっかくだけど、そろそろおいとま致します。ちょっと長居し過ぎましたから……」

「そうですか。それでしたら、お車を用意致しますので、それに乗ってお帰りください」

「そこまでしていただかなくても、結構です」

「いいえ、お二方は、この街に不案内でしょうし、拙宅の周辺に人家はほとんどありません。最寄りのバス
停まで距離がありますし、バスの本数も限られております。もし、帰路、道に迷われたりしたら申し訳あり
ませんから、なにとぞ、拙宅の車でお帰りくださいませ」

 う〜ん、保科さんの言うことはごもっともだ。
 明るいうちなら、俺たち二人だけで何とかなったが、暗くなってくると、だいぶ勝手が違う。

「では、お言葉に甘えて、宜しくお願い致します」

 保科さんに借りを作りたくないであろうあやせも、これには何も言わなかった。
 何せ、保科邸が、この街のどこいら辺にあるのかすら分からないんだから、正直、どうやって帰っていい
のか見当もつかなかったからな。

「では、履物を履いて、わたくしについて来てください」

 保科さんに促されるまま、俺たちは歩いて行った。
 既に辺りは薄暗く、さらには保科邸の様子に疎いということともあって、俺もあやせもどこをどう通った
のかよく分からないまま、保科邸の駐車場らしい広場に着いた。

「あの車にお乗りください」

 広場には、既にエンジンがかかっている国産の中型セダンが停まっていた。
 ベンツとかBMWとかじゃないのが、かえってセンスがいい。やたら高級外車にこだわる成金とは違うの
だろう。だが、それにしても……、

『妙に手際がよすぎませんか? やっぱり変です……』

 あやせが眉をひそめて、俺に囁いた。
 全くだ。こうまで手際がよすぎると、たしかに気味が少々悪い。それに、俺は川原さんから、保科家の噂
を聞いていたから、なおさらだ。

 保科さんは、俺たちがそんなことを囁いていることを知らずに、すたすたと件の車に歩み寄っていった。


605 名前:風(後編) 49/63:2011/07/18(月) 10:42:24.70 ID:8mgfk2k0
「お嬢様。すぐにでも出発できます」

 運転席からスーツ姿の初老の運転手が現れ、保科さんにお辞儀をした。

「ご苦労様です。では、あちらにいらっしゃる二名のお客様を、ご自宅まで宜しくお願い致します」

「かしこまりました」

 運転手は保科さんにもう一度お辞儀をすると、後部座席のドアに廻り、そのドアを開けた。

「どうぞ、お乗りください」

 まずは俺が、次いであやせが、保科家の自家用車に乗り込んだ。

「これ……、特別仕様車でしょうか?」

「たぶん、そうなんだろうな」

 シートはベージュの総革張りで、ピラーやダッシュボードは、高級バイオリンを思わせるような、ニス塗
りの木でできていた。
 ベース車両は国産の中型車だが、すさまじく金をかけているようだ。
 そんなことに気を取られていた俺は、窓ガラスを軽くノックする音で、はっとした。
 俺が座っている側のすぐ傍に保科さんが立っていたのだ。
 運転手が気を利かせて、保科さんが立っている側の窓ガラスを開けてくれた。

「では、運転席の者に、行き先を伝えてください。そちらまでお送り致しますので……」

「分かりました」

 俺は、運転手に下宿の住所を告げた。
 運転手は、「かしこまりました」と頷きながら、何かを帳面に書き付けている。
 業務日報のようなものだろうか。それはともかく、

「何から何まで済みません。色々とありがとうございました」

 運転手に行き先を告げた俺は、笑顔で佇んでいる保科さんに軽く会釈した。隣のあやせも、申し訳程度と
いう感じではあったが、お辞儀をしている。

「いえいえ、わたくしもお二方とご一緒できて、楽しゅうございました。では、高坂さんにあやせさん、お気を付けてお帰りください」

 保科さんが見守る中、車は動き出し、ここへ来たときにタクシーの車中から見たものらしいゲートに差し
掛かった。
 そのゲートは完全に自動制御なのか、俺たちを乗せた車が近づくと、ゆっくりと扉が跳ね上がるようにし
て開いていった。

「何もかもが、あらかじめお膳立てされていたんでしょうか? 変な気分です……」

「段取りがものすごくいいんだろう……」

 保科家の関係者である運転手が居る手前、滅多なことは言うもんじゃないから、俺は、当たり障りのない
コメントで、お茶を濁した。
 だが、保科家の運転手は、後部座席の俺たちには委細構わず、夕闇が迫る中、車を走らせていた。




606 名前:風(後編) 50/63:2011/07/18(月) 10:43:53.74 ID:8mgfk2k0
*  *  *
 風呂から上がって自室に戻ると、二組の布団が敷いてあった。
 もちろん、一つは俺が寝る布団であり、もう一つはあやせが寝る布団だ。
 前回もそうだったんだろうが、俺が風呂に入っているうちに、あやせが勝手に敷いたんだろう。
 はじめから分かっちゃいたが、あいつは今晩はここに一泊するつもりでいる。

「だけどよ、年頃の男女が同じ部屋で寝起きするってのは、まずいだろ……」

 だが、自称俺の妹様が、そんな俺の懸念を慮るわけがない。
 年下の小娘のくせに、色香で俺を翻弄しようっていうことなんだろうか。
 あの女の考えていることは、どうにもよく分からない。

 俺は、いつも使い慣れている方の布団の上にごろりを仰向けになった。

「それにしても、保科さんってのは、何なんだろうな……」

 俺は保科邸に到着してから辞去するまでの一連の出来事を思い出せる範囲で反芻してみた。
 茶室での作法の手ほどきから、野点の本番、俺の足の痺れ、その後の保科さんとあやせによる介護、さら
には俺とあやせが、野点の会場でうたた寝したこと等々……、結局は、すべてが保科さんのシナリオ通りに
進行していたように思えてならない。
 俺の足が痺れるであろうことも、彼女には分かっていたはずだ。
 あの禅寺で野点の招待を受けた時、保科さんは、

『殿方はスーツで結構です』

 と言ったのではなかったか。
 長時間正座する茶事では、男性も和服が基本であり、洋服の場合であっても、流行遅れのだぶだぶした
ズボンでなければ宜しくないことは、茶事におそらくは数え切れないほど参加してきた保科さんなら当然に
分かっていたはずだ。

「それに、今の若者向けのスーツは、みんな細身なのを知らないはずがねぇよな……」

 にもかかわらず、何故に彼女は、俺にスーツを着るように指示したのか。足を痺れさせて膝枕をするため
か、それとも、俺を和服に着替えさせたかったのか。彼女の狙いは皆目分からない。しかし、入念な計画に
基づくものであるような雰囲気がぷんぷんする。
 保科さんの胸のダイブして、彼女の股間に顔面をめり込ませるというハプニングも、何だか彼女の
シナリオ通りな気さえしてきた。

「あやせといい、保科さんといい、訳が分からないぜ……」

 男にとって女ってのは、基本的に理解不能で面倒くさい生き物だ。

「明日は明日で、保科さんやあやせ以外の面倒くさい生き物と面と向かわにゃならねぇ……」

 明日の午前十時には黒猫と沙織がこの街に再びやってくる。
 何とも後味の悪い別れ方をした先週日曜日の仕切り直しのためだ。
 
「問題はあやせだ……」

 黒猫と沙織との面談というか、ネゴシエーションというか、洒落にならない雰囲気の話し合いに、あやせ
まで参戦されたのでは、たまったもんじゃない。
 明日の午前中は、大学の図書館で調べ物をするということにして、互いに別行動にしよう。
 要は、あやせを謀るってことだ。

「嘘も方便。もう、大嘘吐きでも何でもいいや……」

607 名前:風(後編) 51/63:2011/07/18(月) 10:45:05.79 ID:8mgfk2k0

 この街で、あやせと黒猫のガチバトルなんか願い下げだからな。
 
 俺は、布団の上に仰向けになったままで、瞑目した。
 保科邸での野点は緊張の連続だった。それのみならず、足が極度に痺れて身動きができなくなるという
アクシデントもあった。そのためか、俺はぐったりと疲れきっていた。
 大学の教室で保科さんに呼び止められ、同級生たちに変に注目されたのも結構なストレスだった。

「もぅ、身体がだるいし、眠くてかなわねぇ……」

 目を閉じていると、意識が朦朧としてきて、ふわふわと夢の中にさ迷い込んでしまいそうになる。
 野点の後、不覚にもあやせ共々、緋毛氈の上で居眠りしたが、中途半端な睡眠はかえって眠気を催させる
ものらしい。

 不意に誰かが頬を撫でてくれているような気がした。
 この柔らかな感触は、膝枕をしてくれた保科さんのものだろうか。
 果たせるかな、振袖姿の保科さんが、艶然とした笑みを浮かべて、俺の顔を覗き込んでいるような気がした。
 だが、突然、彼女の面相に憂いにも似た翳が浮かび、ためらいがちに顔をそむけて、視線を俺から逸らせ
てしまった。
 
「ほ、保科さん!」

 待ってください! あなたは、何で俺を、俺たちを野点に誘ったんです?
 あなたは、どうして、俺みたいな平凡な男にちょっかいを出すんですか?
 そして、あなたは、最終的には、俺をどうしたいんですか?

 呼び止めて、そう尋ねたかった。今、今なら、彼女に訊くことができるような気がした。

 だが……、

「何が、『保科さん』ですかぁ! ブチ殺しますよ!!」

 耳をつんざくような罵声と、頬に感じた痛みで、俺は我に返った。
 恐る恐る目を開けると、水色のパジャマ姿の自称俺の妹様が、恐ろしい形相で俺を睨んでいた。

「あ、あやせ……」

 しっとりとした髪からはシャンプーの香りが漂い、身体からは石鹸のものらしい清潔そうな匂いが漂って
きそうだった。
 だが、

「お、お前! 俺の身体の上に、馬乗りになってるんじゃねぇ!!」

 自称俺の妹様は、股で俺の胴体を挟むようにして、俺の臍の辺りにまたがっていたのだ。

「こうでもしないと、お兄さんにビンタできませんから。やむを得ません」

 こいつ、俺の寝言を聞きつけて、馬乗りになったのか。
 しかし、それにしても……、

「いきなりビンタってのは、ひでぇじゃねぇか。それに、この体勢だと、あやせが俺をレイプしているみたいだよな」

「レイプだなんて、破廉恥な! これはお仕置きです」

608 名前:風(後編) 52/63:2011/07/18(月) 10:46:19.67 ID:8mgfk2k0

 言うなり、怒りで形相を般若のように歪ませたあやせは、俺のスウェットの襟元を引っ掴んだ。
 『レイプ』の一言で、俺の身体から離れると思ったんだがな。
 自称俺の妹様はそんなうぶな輩じゃないらしい。
 それどころか、あやせは、俺の首を、スウェットの上から無慈悲にも締め上げた。

「うわ、いてててっ! ら、乱暴はよせ、麻奈実や保科さんは、ぜ、絶対に、こんなことはしねぇぞ!」

「あの女の名前を言うなって、何度言ったら分かるんですかぁ!!」

 あやせは涙目で、俺の首を、がくんがくんと、五、六回乱暴に揺さぶって、おもむろに手を放した。

「げ、げほ……、ごほ……、げほ……」

 俺はというと、仰向けに引っくり返ったまま、喘息持ちの爺様のように、ひとしきり咳き込んで悶絶した。
 いつもながら、こいつの暴力は、本当に洒落にならんなぁ。

「いつまで咳き込んでいるんですか、この変態……」

 咳が治まりかけて、薄目を開けると、相変わらず自称俺の妹様が俺の腹の上に馬乗りになったままだった。

「お前なぁ……。前にも言ったけど、これって傷害罪一歩手前の行為だぞ。それに、いい加減、どいてくれ
よ……」

 だが、あやせは意固地になったのか、股間を俺の腹部に強く押し付け、太腿で俺の胴体を締め付けてきた。

「うわぁ! いてててっ……」

 あやせの太腿で締め上げられ、内臓全部がでんぐり返りそうな苦しさだった。
 だが、あやせの股間が、あ、あそこが、俺の腹の上に密着し、あまっさえ、ぐりぐりと擦り付けられてい
る。こ、これはこれで、いい……、かな?
 てか、そんなことでプチ喜んでいる場合じゃない。
 自称俺の妹様は、怒りで歪めた面相を、だらしなく仰向けになっている俺の顔面に近づけてきた。

「明日のことで、お兄さんに確認をしておきたいことがあります。明日、お兄さんは何をするつもりです
か?」

 そらきた。こいつは、俺を監視するために俺につきまとう気でいる。だが、あいにくと、そうはさせねぇ。

「あ、明日は、午前中、大学の図書館に行って、判例の調べものだ。だから、明日の午前中は、あやせとは
別行動だな」

「図書館へは私も同行します。お兄さんの単独行動なんて許しません!」

 そうくると思った。だがな、俺が通う大学の図書館は、そうはいかねぇんだよ。

「お前、大学の図書館ってのは、県立や市立の図書館とは訳が違うんだぞ。その大学の学生や教職員じゃな
いと、利用できねぇんだよ」

「そんなもの、大学生の振りをしてれば大丈夫です。わたしは、これでも結構大人っぽい方ですから」

 自信たっぷりに言い切りやがった。たしかに、モデル業で揉まれてきただけに、高校一年生にしては、
多少は大人びているな。だが、大学生の振りをするのは、どう考えても無理がある。
 所詮はガキだ。いろんな意味で。それに、

「お前、大学の図書館が見た目だけで判断すると思うのか? そんなことをしたら、大学生じゃない浪人生

609 名前:風(後編) 53/63:2011/07/18(月) 10:47:33.28 ID:8mgfk2k0
や、下手すればホームレスとかが入り込んでくるじゃねぇか」

「うっ……」

 痛いところを突かれたのか、般若顔のあやせが息を詰まらせたような気がした。

「入り口で学生証の提示を求められるんだよ。で、学生証がなかったら、館内に立ち入ることもできねぇ。
少なくとも、俺の大学の図書館はそうしたところだ」

 授業料を払っていない者に大学の施設を利用させるのは衡平ではない。それ以前に、セキュリティの関係
上、身分が特定できない奴の入館を許すはずがないだろ? 社会の道理をよく分かっていないところが、
本当にガキだな。

「そうですか、なら仕方がありませんね。わたしは、大学近くの喫茶店かどこかで、お兄さんの調べものが
終わるまで待つことにします」

「何もそこまでしてくれなくていいぞ。お前も大変だろうから、下宿で待つなり何なりしてくれれば……」

「いいえ、お兄さんを護るために、わたしははるばる千葉から来たんです。そうであれば、明日はお兄さん
と一緒に下宿を出て、大学の図書館にお兄さんが入っていくのを確認した上で、わたしは近くの喫茶店か、
ファストフード店で本でも読んで待っています」

 しつこいな……。まさかとは思うが、明日の午前中に黒猫と沙織に会うってことを把握してやがるのか?
 いや、それはないか……。
 俺が嘘を吐いていることを知っていたら、もっと過激な手段で俺を責め立てるはずだからな。
 だったら……、

「いいだろう。俺は図書館の中で調べものをしているから、その間、お前は、喫茶店とはいわずに、学内の
どっかで待ってろ。俺の大学は建物はボロだが、敷地だけは公園並みに広いからな」

 このまま嘘を吐き通してやる。毒を食らわば皿までも、だ……。図書館に入ったら、裏口から抜け出て、
沙織たちとの待ち合わせ場所である中央駅前までタクシーですっ飛ばす。これで、あやせの目を欺いてやる。
 だが、

「……調べものは判例ですか?」

 あやせの奴が、じっとりとした疑惑の眼差しで俺を凝視している。何かヤバイな、しかし、ここまで来て
嘘を認めるわけにはいかねぇ。

「ああ、判例集が図書館にあるから、そいつでちょっと調べたい事件があるのさ」

 あやせの奴が、にやりと笑ったような気がして、俺は嫌な予感に襲われた。

「判例は……」

 俺に馬乗りになったままで、あやせは座り机の上のパソコンを指差した。

「あれを使ってインターネットで検索できるんじゃなかったんですか?」

 しまった。インターネットで判例を検索できることは、この前、俺自身がこいつに教えたんじゃねぇか!
 自ら墓穴を掘ってどうすんだ。

「い、いや……。インターネットでは公開されてない判例もあってだな、そ、それで図書館で調べなきゃな
らねぇんだ……」

 我ながら悪あがきっぽいが、一応は事実だ。実際、マイナーな判例や、古い判例は、裁判所の

610 名前:風(後編) 54/63:2011/07/18(月) 10:48:50.27 ID:8mgfk2k0
ホームページには出ていないことがあるからな。これであやせの追及を振り切っちまおう。

「そうですか……、でも、お兄さんの大学の図書館って、明日は休館日みたいなんですけどぉ……」

 いつの間にか、あやせの手にはスマホが握られていて、その画面には大学の付属図書館の予定が記された
カレンダーが表示されていた。

「げっ!」

「ここに、明日の日曜日は、空調設備の点検のため休館って書いてあるんですけど、お兄さんが明日利用
する大学の図書館って、どこの世界の図書館なんでしょうか、ね!」

 最後の『ね』にアクセントをつけたあやせは、今度は、襟ではなく、俺の首をダイレクトに締め上げてきた。

「ぐ、ぐるじぃ、じ、じんじばう……」

「大嘘吐きのお兄さんには、これぐらいの苦しみじゃ足りないくらいです! お兄さんは、明日、黒猫とか
いう痛い女や、沙織とかいうデカブツとデートするんでしょ? それもわたしに内緒でこっそりと!」

「う〜〜、う〜〜〜、う〜〜〜……、いぎが、で、でぎ、なび……」

 これが女子高校生の力かと思うほど、あやせの締めは激しかった。それこそ、鬼の形相で俺の喉を
思いっきり締め上げていやがる。

「わたしだって、黒猫とかいうあの女は要注意人物だから、その動向には常に気を配っているんです。
だから、明日、あの女がお兄さんに会いにやって来ることも、とっくの昔にお見通しだったんですよ!!」

 畜生。あやせの奴は、俺の嘘が破綻するように、俺を追い込んでいたんじゃねぇか。それに気付かず、
あやせをガキだと侮ってドツボに嵌った俺って、何てバカなんだ。
 俺は、苦し紛れに両手を虚空に伸ばした。溺れる者は藁をも掴むっていう喩えが身にしみて理解できたぜ。

「きゃっ! 何てとこ触ってるんですかぁ、この変態!!」

 俺の両手は、マシュマロのように弾力がある二個の物体を、むんずとばかりに捉えていた。他でもない、
あやせの左右の乳房だった。
 左手は右の乳房を、右手は左の乳房をそれぞれ鷲掴みにしていた。そして、掌には、ぷっくりとした
あやせの乳首が感じられた。
 こいつ、ノーブラじゃねぇか!

「わ、わたしの、む、胸なんか、も、揉まないでください。ブ、ブ、ブ、ブチ殺しますよ!!」

 あやせが一段と強く俺の首を絞めてきた。もう、本気で俺をブチ殺すつもりだ。
 こうなったら、俺だって必死だ。絶対にこの手を離すもんか!
 死ぬ寸前まで、あやせの胸を揉みまくってやる。これが末期のセクハラってもんだ。

 俺は、パジャマの上からあやせの乳首を摘み、それを引っ張ったり、乳房の中に押し込むようにして弄んだ。

「や、やめて、く、ください。そ、そこは、び、敏感なんです……」

 乳首を刺激するたびに、あやせは弓なりに背を反らせて身震いしやがる。
 まさかとは思ったが、エロゲのヒロインと似たり寄ったりの反応を示すんだな。
 それに、乳首をいじられると脱力するのか、俺への締めが手ぬるくなった。

「こうなりゃ、一石二鳥だぜ!」


611 名前:風(後編) 55/63:2011/07/18(月) 10:50:12.43 ID:8mgfk2k0

 あやせの胸を揉んで末期のセクハラに興じるのみならず、あやせにブチ殺されるのを免れることができる
かも知れねぇ。
 俺はあやせの乳を揉みながら彼女のパジャマの前立てをまさぐってボタンを外し、あやせの胸元に両手を
突っ込んだ。

「じ、直に触らないでください、わ、わたし、もう……」

 そう言いながらもあやせの奴は、股間を俺の腹に擦り付けるように、腰を前後に妖しくゆすっているじゃ
ねぇか。
 それでも、俺の首には、申し訳程度といった感じながら、あやせの両手が首かせのように嵌っていた。

「こ、これならどうだ!」

 俺はあやせのパジャマの前立てを左右に無理やり引っ張った。外していないボタンが一つ、二つ弾け飛び、
あやせの乳房が顕わになった。
 こ、これが、あやせの乳房か……。触ってみて大体は分かっていたが、控え目ながら、ちゃんと出るとこ
は出てるんだな。
 乳房が控え目なくせに乳輪は大きめだろうか。だが、そこがエロくて俺好みだ。

「お、おっぱい、見ちゃだめぇ〜〜〜!!」

 あやせは自分の胸を隠そうとしたのか、はたまた俺の目を塞ごうとしたのか、俺の首から両手を離した。

『今だ!』

 俺は、両腕をあやせの背に伸ばして彼女に抱き付き、ぶらぶら揺れる左の乳房の先端をぱっくりくわえ、
すすってやった。

「あ、あうう……。す、吸わないで、す、吸わないでぇ〜〜〜」

 あやせは身を捩じらせて抵抗したが、俺がベージュがかったピンク色の乳首を吸い続けると、ついには
「あぅ、あぅ」といううわ言のような声を出しながら、だらしなく涎を垂らし始めた。

「今度は右だ」

 こりこりに勃起した右の乳首を舌先で弄び、強く吸ってやる。

「あふ、あふぅ〜〜〜〜〜」

 もう、俺をブチ殺すどころの話じゃない。
 あやせの奴は、俺の後頭部を両手で支え、自分から俺に胸を突き出すようにしている。
 女って、あやせみたいなエロが嫌いな奴でも、乳首吸われるとエロゲのキャラみたいにおかしくなるんだ
な。エロゲやっといてよかったぜ。こればっかりは桐乃に感謝だ。

 てなことを思いながら、俺は両の乳首を交互に吸い、さらには軽く噛んでみた。

「あう、お、お兄さんやめてください。お、おかしくなっちゃうぅ〜〜〜」

「もう、十分におかしくなってるぜ」

 あやせは俺の軽口には反応せず、虚ろな目のまま、だらしなく口をぽかんと開けている。
 そろそろとどめを刺すとするか。
 俺は、あやせの乳房をすすりながら、右手をあやせの股間に伸ばしていった。

「あ、ああああっ! そ、そこはいじっちゃだめです」

612 名前:風(後編) 56/63:2011/07/18(月) 10:51:19.26 ID:8mgfk2k0

 布地越しにあやせの秘所の温もりが感じられた。
 パジャマも下着も薄手のものらしく、俺の腹の上でぱっくり広がっているあやせの割れ目が、はっきりと
分かる。
 割れ目をなぞると、布地越しにねっとりとした湿り気が伝わってきた。

「ぬ、濡れてるじゃねぇか……」

 女の身体に初めて触れた俺みたいな奴の不器用な愛撫でもこんなに乱れるなんて、あやせって根はすごい
スケベなのかもな。
 俺はぬるぬるした割れ目の端に、こりこりした突起を指で探り当てた。これがクリトリスなんだろう。
そいつを指先でぐりぐりと擦るように弄んだ。

「あ〜〜、う〜〜〜、そ、そこはらめれすぅ〜〜〜〜。ら、らめぇ、らめぇ〜〜〜」

 あやせは完全にぶっ壊れる寸前といった感じで、呂律も怪しくなってきた。やっぱクリトリスって、女の
身体で一番敏感だってのは本当なんだな。
 俺は、その突起を摘んで、こよりを撚るように軽く捻ってやった。
 同時に、乳首を吸いながら軽く噛んで引っ張ってやる。

「う、う、うっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 あやせは苦悶に耐える呻き声にも似た叫びを歯を食いしばるようにして絞り出し、背を反らせて全身を
ビクビクと痙攣させた。
 痙攣はひとしきり続き、それが治まると、あやせは俺の身体にもたれかかって、ぐったりとなった。

「ふぅ……」

 のしかかっているあやせをごろりと布団の上に転がすと、俺は自分の首を押さえてため息を吐いた。

「あやせの奴、イッたみたいだな……」

 布団の上に転がされたあやせは、快楽の余韻で頬を上気させ、はだけた胸元からは勃起したままの乳首を覗かせていた。

「こ、これで、終わりなんですか……?」

 エクスタシーに達したあやせの身体からは、甘酸っぱいような感じの女の匂いが、むせ返るほどにあふれ
ていた。
 そして、俺のリヴァイアサンは、かつて経験したことがないほどに大きく固く怒張している。

 これは、“据え膳食わぬは男の恥”って状況なのか?
 今のあやせだったら、このまま俺のリヴァイアサンをぶち込むのは楽勝だろう。
 だが……、

「……そうだな……、これでセクハラはお仕舞いだ……」

 さっきまで俺をブチ殺す気満々だった奴とセックスなんかできねぇよ。これって強がりみたいなもんだけ
どさ。

「……ひどいです、ひどいです、お兄さん……」

 あやせは、パジャマの前をはだけたまま、さめざめと泣き出した。
 あやせが俺をブチ殺そうとしたとはいえ、俺のやったことはセクハラどころかレイプ寸前の行為だったか
らな。気丈なこいつが泣くのも無理はねぇ。


613 名前:風(後編) 57/63:2011/07/18(月) 10:52:20.38 ID:8mgfk2k0
「あやせにひどいことをしたのは認めるよ。でも、お前だって、俺を殺す気だったんだし、お互い様だろう」

「……お兄さんを殺す気なんかありませんでした……」

 嘘つけ! さっきの首の締め方には殺意がみなぎっていたじゃねぇか、と言いたかったが、我慢した。

「そうかい……、俺もあやせを犯すつもりはなかったよ」

「……お兄さんなんか、大っ嫌いです……」

 あやせとは脈があったように思ったんだが、これで終わりかもな。男女の仲なんて、ちょっとした事件で
簡単にぶっ壊れちまうもんなんだ。

「さっきのセクハラと、黒猫のことを黙っていたのは、あらためて謝るよ。これは本当に済まなかった」

「い、今さら謝っても、お兄さんが嘘吐きな変態だってことに変わりはありません……」

「何とでも言え……。否定はしねぇよ」

「……嘘吐き」

 強がってはみたものの、今度ばかりはあやせの『嘘吐き』ってのが胸に痛い。
 だが、ここで挫けちゃいけねぇぜ。

「嘘吐きでも何でもいいさ。で、明日のことなんだが……」

「……嘘吐きお兄さんは、わたしのことなんか放っておいて、黒猫とかいう痛い女とデートなんでしょう……」

「違う。明日、黒猫に会うのは本当だが、何をあいつに告げるかはもう心に決めているんだ。友達ではある
が、もう恋愛感情はない。それをそれをはっきりさせてくるだけだ」

「……し、信じられません……」

「俺の言うことが信じられないようなら、明日、お前も俺と黒猫のやりとりを遠くから見ていればいいだろ
う。その時に、俺の言っていることが嘘じゃないってのがお前にも理解できるさ」

「……………」

 黒猫や沙織との面談をあやせにも見せるのはリスキーこの上ない。下手すれば、面談の場にあやせが乱入
して、黒猫と大乱闘になりかねないからな。何らかの策が必要だろう。

「ただし、俺と黒猫や沙織との面談をお前が監視するのには条件を付けさせてもらう。第一に、目立たない
格好で遠くから監視すること。第二に、面談の場に絶対に介入しないこと……」

「遠くから見ているだけなんて嫌です……。面談の風向きがおかしくなったら、お兄さんを護るために、
わたしも介入しなくちゃいけません……」

 そうくると思った。
 俺は、舌打ちしながら机の上に置いてあった携帯電話を手に取り、あるところに電話した。

「もしもし、高坂だ」

『おお、どうだった? 保科さんとこの野点は』


614 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 10:54:56.28 ID:Sxk1gObR
専用スレ池

615 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 10:56:36.28 ID:a4TDYKXs
SL専用スレがあるんだからそっちでやれば誰も嫌な思いしないだろ

616 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:00:46.36 ID:1JNXEVDu
隔離スレにいけ

617 名前:風(後編) 58/63:2011/07/18(月) 11:03:59.02 ID:8mgfk2k0
 電話の相手は、イケメン眼鏡の陶山だ。

「なかなかに大変だったよ。そいつについては、明日にでも話せるだろう』

『明日か……。大学は休みだぞ』

 そりゃそうだ。日曜日なんだからな。だが、頭のいい陶山のことだ、俺が会いたいってニュアンスを感じ
取っているに違いない。 

「まぁ、ぶっちゃけ、明日はお前と川原さんに助けてもらいたいんだ。実は、妹が来ているんだが、俺は俺
で、千葉から来る友人の相手をしなくちゃならねぇ。それで、俺が友人と居る間に、ちょっと妹の面倒を見
て欲しいのさ」

 友人になって日が浅い陶山に頼むなんて、我ながら非常識だよな。
 案の定、陶山は困惑しているらしく、『え〜〜?』と絶句している。
 だが、

『えっ? 何、何? 高坂くんの妹さん?』

 川原さんらしい、素っ頓狂な女の声がスピーカーから轟いた。

『きゃっ! 高坂くんの妹さんが来てるんだって?! で、その子の世話をさせてくれるのぉ? やる、
やる、絶対にやる。いいえ、や、やらせてください!!』

『……お、おい……。安請け合いはするなよ……』

 川原さんをたしなめる陶山の声がしたが、川原さんは、

『うっさいわねぇ! あたしがやるっていったら、やるの! あんたは黙ってなさい』

 と、陶山を一喝していた。女って、怖いな。
 それはともかく……、川原さんは何で陶山とこんな時間に一緒なんだろ。大体想像はつくが、追及するの
は野暮ってもんか……。

『ごめんなさ〜〜い、亮一のバカが気が利かなくって。でも、あたしがOKなんだから、もう、こいつには
四の五の言わせなぁ〜〜い。だから、明日は、是非是非、高坂くんの妹さんを宜しくお願いしまぁ〜〜す!!」

「あ、ああ……、こ、こちらの方こそ、よ、宜しくお願い、し、します……」

 なんだい……。川原さんのハイテンションぶりに思わず敬語っぽく話しちまったじゃねぇか。
 でも、これで、明日は何とかなりそうだ。

『で、待ち合わせとかはどうするのぉ?』

 俺たちは、午前9時に大学の正門前で落ち合うことにした。

「まだ説明しておきたい事柄があるけど、電話では何だから、明日、会った時に話すよ。いいかな?」

『うん、うん、全然オッケイ! じゃぁ、明日は楽しみにしているからね〜〜』

「こちらこそ。あと、陶山にも宜しく」

 そう言って、俺は通話終了のボタンを押した。

「ふう……」


618 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:04:53.58 ID:gOfgEBXS
善意を無駄にすんなよ

619 名前:風(後編) 59/63:2011/07/18(月) 11:05:19.28 ID:8mgfk2k0

 通話を終えて、安堵のため息を吐いた俺を、胸をはだけたままのあやせが、泣きべそ顔でじっと見ていた。

「まぁ、聞いての通りだ。明日は、俺の大学の友人で、陶山っていう奴と、その彼女である川原さんって人
を、お前のお目付け役にする」

「お、お兄さんのお友達なんて、信用できません……。きっと、お兄さんとどっこいどっこいの変態で嘘吐
きなんでしょ?」

 俺は、陶山と川原さんを悪し様に言うあやせに少々ムカついたが、あやせの言い分にも一理ある。
 全く面識のない奴をお目付け役だって言われても、警戒心しか湧かないよな。

「陶山ってのは、医学部の学生で、ものすごく頭のいい奴だ。川原さんは陶山の同級生で、やはり医学部の
学生だ。二人とも正直で、気のいい連中だぜ。明日、本人たちに会ってみれば、お前だって納得するだろう」

「……もう、それしかない、って言うことですか?」

 俺は、恨めしげなあやせに無言で頷いた。こうでもしなきゃ、危なくって仕様がない。

「だったら、そ、それでいいです……。でも、お兄さん……」

「今度は何だよ……」

 いつになく哀れっぽい口調が気になったが、俺はそっけなく振る舞った。あやせには油断がならないから
な。色々と……。

「……あ、あの……、わ、わたし……、お、お兄さんに……」

「俺に何だって?!」

 先刻、いきなり首を締められたから、かなりきつい口調で言い返しちまったな。
 その俺の一言で、あやせが、びくっ、と身を震わせたようだった。

「……あ、あの……」

「だからどうした?」

 この口調もきつかったかな。どうも、さっき殺されかけたってんで、語気が荒くなっちまう。

「い、いえ……。何でもありません……。も、もう……、いいです……」

「そうかい……」

 そう言って、俺はすっくと立ち上がった。

「ど、どこへ?」

「隣の部屋だ。さっきみたいなことがあったんじゃ、おちおち眠れないからな。俺は隣の部屋で寝ることに
するよ」

 あやせに殺されるのが怖い、というのは自分でもよく分からないが、多分本当じゃない。
 あやせと同室で寝たら、きっと彼女を犯してしまうだろ。性的な衝動を抑え切れない自分が怖かった。
 頭では自分を殺そうとした女を抱けないと思っても、本能は違う。
 事実、俺のリヴァイアサンは、はち切れんばかりに怒張したままじゃないか。


620 名前:風(後編) 60/63:2011/07/18(月) 11:06:22.50 ID:8mgfk2k0
「あ、あの……」

 あやせが何かを言いかけたようだったが、俺は彼女に背を向けて自室から出た。廊下に出て、階段を下り、
洗面所で顔を洗った。

「……高坂さん……。何かあったんですか? ちょっと騒々しいようでしたけど……」

 洗顔を終えて階段を上がろうとしたところを、下宿の女主人に呼び止められた。
 あれだけの騒ぎだ。昔ながらの重厚な造りの下宿屋であっても、何らかの物音は伝わる。

「ああ、どうもすいません。妹と格闘系のゲームをやっていたものですから、ついつい熱が入って、俺も妹
も荒っぽい言葉遣いになっていたようです。ちょっと反省してます」

「ああ、そうですか。それなら結構です」

 下宿の女主人は、安堵したのか、表情を和らげた。兄と(自称)妹との禁断の愛の営みが展開されている
と思ったんだろう。実際は、もっとヤバイ状況だったんですけどね……。

「それと、妹の奴は、俺の部屋で寝たいんだそうです。ですので、俺が自室の隣の部屋で寝てもいですか?」

「ええ、いいですよ。お布団は、お部屋の押入れに入っているものを自由に使ってください」

「はい、ありがとうございます」

 許可を得た俺は、自室の隣部屋に入り、布団を敷いて横になった。
 長いこと仕舞ったままだったせいか、何となくカビ臭いが、これぐらいなら我慢できる。

「しかし、疲れているのに、寝付けねぇな……」

 あやせが馬乗りになるまでは、眠くってしょうがなかったのに、今はあやせの乳房と秘所の感触を思い出
すと、気持ちが昂ってなかなか眠れない。

 それでも、ようやく夢うつつになった頃、自室の襖が開く音と、あやせのものらしい足音が聞こえてきた。
 俺ははっとして身構えたが、足音はそのまま俺が居る部屋の前を素通りし、階下へと向かって行った。

「何だ、トイレかよ……」

 しばらく経ってから、階下から水を流す音が聞こえてきた。

「ずいぶんと長いトイレだな……」

 そんなことを呟きながら、俺はいつしか泥の様な深い眠りに落ちていった。


*  *  *
 翌朝、膨れっ面というか、まぶたを腫らしたあやせを伴って、俺は大学の正門前に向かった。

「やっほぉ〜〜!! 高坂くん、こっちこっちぃ〜〜〜!」

 正門前には既に川原さんと陶山が待っていた。
 川原さんは、いつもは一本のお下げにしている長い髪に軽くウェーブをかけて、腰の辺りまで伸ばしていた。
 ファッションは、普段パンツルックがほとんどだってのに、今日に限って白いゆったりとしたスカート、
ノースリーブの黒っぽいカットソーにベージュ色した薄手のカーディガンを羽織り、鍔が大きな白い帽子で
キメ、襟元にはダイヤらしい宝石がちりばめられたネックレスが輝いていやがる。


621 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:06:47.80 ID:AIRKZsxF
どうしてこっちに来るの?
また荒らしたいのかよ。

622 名前:風(後編) 61/63:2011/07/18(月) 11:07:26.51 ID:8mgfk2k0
 う〜〜ん、そういや、川原さんだって、開業医の娘なんだよな。スケールは、保科さんや沙織とかに比べ
ればささやかかも知れないが、やっぱお嬢様なんだと今さらながら実感しちまったぜ。
 相方の陶山は、ダークグレーのスタンドカラーシャツにカーキ色というかオリーブ色に近い腰丈の
ジャケットを羽織り、黒いデニムを穿き、八ピースの丸っこいハンチングを被っている。

 対する俺たちはというと、俺は普段と代わり映えのしない長袖のダンガリーシャツにジーンズで、あやせ
はチャコールグレーのコットンパンツ、白黒の市松模様の長袖ブラウス、それにいつぞや加奈子が出た
メルルのイベントで桐乃の目を欺くために着用したキャスケットを目深に被っている。

「済まねぇ。ちょっと遅れちまったみたいだな」

「いや、今がちょうど九時だ。こいつに急かされて、俺たちはだいぶ早く着いちまったのさ……」

 陶山は自分の腕時計をチラ見してから、相方の川原さんに向けて顎をしゃくった。
 その川原さんは、喜色満面で、時折、「うほほぉ〜〜い!」とか訳の分からないことを口走っている。
 こりゃ、桐乃以上にヤバイかも知れねぇ。
 あやせはハイテンションな川原さんを警戒してか、俺の後ろの方で緊張して縮こまっていた。

「もう分かるよな? あのお姉さんが川原さん、で、眼鏡を掛けているのが、川原さんの同級生で陶山だ」

「よろしくぅ〜〜〜。川原瑛美でぇ〜〜す」

「俺は陶山亮一。高坂とはいつも一緒に昼飯を食う仲なんだ。今日はよろしく……」

 陶山は警戒しているあやせを気遣っているのか、できるだけさりげなく振る舞うように心掛けていること
が何となく分かった。
 本人が『気遣いの陶山』を自認していたが、俺も、たしかにそうだと思うな。

「で、その子が、高坂くんの妹さん? どれどどれ……。うっひゃ〜〜〜、かわいい〜〜〜」

 気遣いの陶山に対して、川原さんは自分の欲望に忠実なタイプらしい。ずぃ! とばかりにあやせの前に
歩み寄り、帽子で顔を隠そうとしているあやせを舐め回すようにガン見している。
 相方の陶山が、「おい、大概にしろ……」という小言とともに、カーディガンの裾を引っ張ったが、当の
川原さんはお構いなしだ。

「は、初めまして、こ、高坂あやせです。あ、あやせって呼んでください……」

 その瞬間、川原さんが「ん?」と呟き、帽子を目深に被っているあやせの顔を凝視し直した。

「……あ、あやせちゃん?」

「は、はい……、あ、あやせと申します……」

 おずおずと言いかけたあやせも、川原さんと目が合った瞬間、「えっ?!」と短く叫んで身を強張らせている。

「ど、どうしたんだよ?」

「………………」

 俺の問い掛けにあやせは押し黙ったままだ。

 陶山は川原さんに、「ひょっとして、知り合いか?」と尋ねている。俺から見てもそんな感じだったよな。
 だが川原さんは、

「知り合いっていうか、何ていうか……。ど、どう説明したらいいのかな……」


623 名前:風(後編) 62/63:2011/07/18(月) 11:08:30.41 ID:8mgfk2k0

 と、言い淀んでいる。俺と陶山は顔を見合わせた。本当に何なんだろうね。
 言い難そうな事情がありそうなところが、かえって気になるよな。だが、それよりも……、

「それはそうと、俺と瑛美は、千葉から来るっていうお前の友人とお前が一緒の時、お前の妹さんの面倒を
見なきゃならん理由を未だ聞いてない……」

 こっちが先決だ。昨夜の電話でも、『会った時に話す』と約束したからな。
 俺は、千葉から来る友人は(沙織は神奈川からだが……)世に言うオタクで、あやせとは趣味が合わない
から一緒にはさせたくないことをまずは手短に話した。

「なるほど……。それで妹さんを隔離する訳か……」

「うん……、できれば隔離したいんだが、こいつは俺と俺の友人が何を話すのかが気になるらしく、目立た
ない様に監視したいそうだ。しかし、あやせ一人だとちょっと不安だから、二人にお目付け役を頼みたいん
だよ」

 言い終えて気付いたが、これってあやせを子供扱いしてるよな。案の定、誇り高き自称俺の妹様は、
膨れっ面で会話に割り込んできた。

「あ、兄は、オタクな連中と付き合っちゃいけないと思います。わ、わたしは兄のことが心配で……」

「“お兄さん”思いなのね」

 すかさず川原さんの突っ込みが入った。
 だが、川原さんは、『お兄さん』の部分をことさら強調したような気がしたが、まぁいいか……。

「おっと、メールが来たか……」

 俺は鳴動している携帯電話の画面を確かめた。沙織からのメールだった。

『京介氏
 本日は宜しくでござる
 しかしながら、待ち合わせの場所を変更致したく候
 中央駅ではなく、中央駅の南口にある喫茶店にて落ち合いましょうぞ
 しからば、御免』

 という文面とともに、店の所在を示すURLが張ってあった。
 しかし、俺は駅の南側には一回も行ったことがないから、沙織が指示した喫茶店にはまるで心当たりがない。

「知ってるか? この店……」

 俺は陶山と川原さんに沙織からのメールを見せた。こういう時に頼りになるのは地元の人間だな。

「ああ、ここね。ものすごくおっきな喫茶店よ。ワンフロアが、うちの大学の学食ぐらいありそうな……」

「そんなにでかいのか……」

 それはかえって好都合だな。あやせが、他の客に紛れて、俺と黒猫と沙織のやりとりを監視し易くなる。

「場所も中央駅のすぐそばだから、地下鉄で行くのがいいだろうな」

 幸先よし……。俺は、 黒猫や沙織とのシビアになりそうな話し合いと、それをあやせが監視するという
厄介なミッションの成功を半ば確信した。これなら、万事うまくいくだろう。
 俺とあやせとの関係修復を除いて……。


624 名前:風(後編) 63/63:2011/07/18(月) 11:09:25.12 ID:8mgfk2k0

 地下鉄に乗って俺たちは移動し、目指す店の前にたどり着いた。

「なるほど。たしかにでかいな……」

 都内にもこれだけの規模の喫茶店は少ないだろう。いや、違うか。東京は、あちこちに喫茶店があるから、
大規模なものはそうそう必要ないんだろうな。
 都内に比べて鄙びたところがあるこの街では、喫茶店の数が少ない代わりに、こうした大規模なもので
カバーしているということか。

「高坂から先に入った方がいいだろうな。そうすれば高坂の友人たちの目は高坂に集中する。その隙に、
俺と瑛美があやせちゃんを後ろに隠して入店するよ」

「だな……。そうしてくれると助かるよ」

 陶山も川原さんも背が高いから、あやせの姿をカムフラージュしてくれるだろう。

 俺は三人に「じゃあ、先に行くぞ」と告げて、自動ドアではない扉を押し開けた。
 店内は思った以上に広く、ざわめいていた。これじゃ黒猫や沙織がどこに居るのかさっぱり分からねぇ。

 だが、店内中央辺りのコンパートメントから、さっと右手を挙げる奴が居た。バンダナに眼鏡姿の沙織
だった。そのコンパートメントは、入り口からは太い柱で一部分が遮られていやがる。これじゃ、沙織が
挙手してくれなかったら分からなかったな。

「やれやれ……」

 これから始まる話し合いのシビアさを思うと気を引き締めなきゃならないんだが、ようやく沙織を見つけ
られたってんで、ちょっと安堵しちまった。油断は禁物だってのによ。

 沙織が居るコンパートメントを遮っている太い柱を回り込むようして歩いていくと、いつもながらのゴス
ロリファッションでキメている黒猫の姿が見えてきた。そして、黒猫の隣りには……、

「な、なんで、お前がここに居る!!」

 オレンジ色のタンクトップの上にダークブラウンのレザーっぽい腰丈よりも短いジャケットを羽織り、
下はマイクロミニスカートにブーツのあいつが、俺の目の前に居やがった。

 そいつは、大きな瞳でぎょろりと俺を睨みつけ、呪いの言葉を肺腑から絞り出した。

「………アンタ。逃げるなんて許さない………」

(以降、『火』(Kwa)に続く)


625 名前:SL66 ◆Fy08o57TSs :2011/07/18(月) 11:11:38.73 ID:8mgfk2k0
以上で『風』は終わりです。

それにしても、単発レスのジャミングが連投規制よけになりました。
IDを変えて単発レスするしか能のない輩も多少は役に立つんですね。

一応は礼を言っときますか。

626 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:14:32.15 ID:AIRKZsxF
どうしてアンタ、いつも煽るの?
普通に迷惑なんだけど。

627 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:14:51.38 ID:pD4R1rvn
荒らせて満足したならとっとと首でも括って死ねよクズ
駄文過ぎて毛ほども引き込まれねえよ

628 名前: 忍法帖【Lv=13,xxxPT】 :2011/07/18(月) 11:20:10.16 ID:sMmv/I8r
そうやって余計な煽りを入れるなよ
全部台無しじゃん
投下するならするで余計なこと言わなければいいのに……

629 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:25:20.57 ID:P2ZAuKZZ
触れるな。そして喧嘩腰になるな。前スレの二の舞にしたいのか。

630 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:27:47.03 ID:BQyQ5rrP
誰かSS投下してこの嫌な空気を換気してくれ

631 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:29:12.19 ID:Sxk1gObR
一応誘導貼っとくわ
以後この話題は専用スレで
【SL66専用】伏見つかさ総合【俺妹】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1308717152/

632 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:29:58.88 ID:oFS8uKTF
ずっと前に予告してた黒猫エロものできました

・「もしも京介と黒猫が円満な恋人生活を営んでいたら」
・言うまでもなく京介×黒猫
・エロ描写有
・黒猫は転校していない設定

投下してもおkでしょうか?

633 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:34:21.67 ID:AIRKZsxF
投下していいよ。

634 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:37:13.58 ID:oFS8uKTF
IFストーリー『もしも京介と黒猫が円満な恋人生活を営んでいたら』
30レス程度です


残暑も遠退く中秋の候、俺はとある平屋の一軒家を訪ねていた。
ピンポーン、とチャイムを押して待つこと数秒。

「はいはいは〜〜〜〜いっ。京介くんですかっ?京介くんだよねっ?」
「おねぇちゃん、わたしも、わたしもおにぃちゃんとお話する」
「ほら、やっぱり京介くんだ!今行くから待っててね!逃げちゃダメだからね!
 ほらほらっ、珠希も行くよ、愛しのおにぃちゃんに会えるよ〜」
「あっ、待って、おねぇちゃん」

ガチャ、ツー、ツー。
口角泡の飛沫を錯覚し、思わず顔に触れていた。
喧噪の坩堝とは、五更家のインターホンのことを言うのではなかろうか。
ドタドタと床を踏みならす音が、家の外まで聞こえて来て、がらりと引き戸が開く。

「いらっしゃーい、京介くぅんっ!
 もーっ、来るの遅いよぉ〜〜〜。
 京介くんが来るの、ずっと待ってたんだからぁ〜〜〜〜」

おさげを犬の尻尾のように揺らし、
つっかけに爪先を通すことさえもどかしそうにして、日向がこちらに駆け寄ってくる。
彼我の距離が5メートルに縮まったところで、盛大にジャンプ。
イヤな予感、というよりは経験則が、俺の手足を動かした。

「あははっ、やっぱりちゃんと受け止めてくれるねっ!」
「お前な……怪我したらどうしよう、とか考えないのか?」

下手すりゃ、俺の代わりに大地と抱き合ってたところだぞ。
日向はぐりぐりと顔を俺の胸に押しつけつつ、

「ぜーんぜんっ!京介くんのこと信じてるから!
 それにィーこうしないと京介くん、あたしのこと抱き締めてくれないじゃ〜ん?」

635 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:37:59.50 ID:oFS8uKTF
いい歳した男が他所様の女子小学生と抱き合ってたら、色々と問題があるんだよ。

「ヨソサマなんてひっどぉ〜〜〜〜〜いっ!
 京介くんはルリ姉の未来の夫でー、あたしはルリ姉の妹でー、
 てことは、あたしと京介くんは血の繋がらない兄妹ってことでしょ〜?」

はいはい、分かったからいい加減に俺から離れろ。
通りすがりのおばさんが物凄い形相で俺たちのこと見てたぞ。

「え〜やだぁ〜」

と甘えた声を出し、なおも離れまいとする日向を無理矢理引き剥がそうとしたところで、

「おにぃちゃんっ」

微かな衝撃が下半身を襲う。
視線を下げれば、黒のつむじが見て取れた。

「珠希か。元気にしてたか」
「たまきは、おにぃちゃんにすごく会いたかったです!」

ぎゅうう、と太股を抱き締めてくる。
一度こうした珠希は、滅多なことでは離れようとしない。
傍から見るとますます誤解を招く図柄になっているらしく、
通りすがりの女子高生が、チラチラとこちらを盗み見ながら、携帯を弄っていた。
通報されてないことを祈るしかねえ。

「日向、珠希」

涼やかな声が聞こえてきたのは、
俺がいよいよ身動きが取れなくなり、助けを乞おうとしていた折だった。

636 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:38:36.61 ID:oFS8uKTF
「再会の喜びには、家の中で浸りなさいな。
 いらっしゃい、京介。妹たちが迷惑をかけて悪いわね」
「いいさ、もう慣れっこだ」

瑠璃が歩み寄ってくると、まるで磁力を失ったかのように下の妹二人が離れる。
流石の威厳だな。同じ妹を持つ身として尊敬するよ。

「これも躾の賜よ」

ふふん、と胸を反らせる瑠璃を見て、日向と珠希が噴き出した。

「何がおかしいのかしら?」
「あたしと珠希は、ルリ姉が嫉妬しないように気を遣ってあげてるだけだしィー。
 ねーねー知ってる、京介くん?
 ルリ姉はねぇ〜〜〜、あたしや珠希に京介くんを取られるんじゃないかって、本気で心配してるんだぁ〜〜〜」
「ばっ、馬鹿も休み休み言いなさい」
「だってホントのことじゃん?
 この前なんかさぁ、京介くんが帰った後に、『京介が迷惑だから見境無く抱きついてはダメよ』とか、
 『京介はあなたたちの遊び相手である前に、わたしの彼氏なのよ』とか、いちいち説教してくるんだもん。
 他の女の子が相手なら分かるけどさぁ、妹にまで嫉妬するとか、ルリ姉ってば大人気なさすぎィ――あいたッ」

ぺしこーん、といい音が鳴った。

「そこまでにしておくことね。
 さもなければ"薄氷の衝撃"の上位魔法、"死の鉄槌"を使わざるを得ないわ」

一応解説しておくと、前者は平手、後者は拳骨の厨二病的解釈である。

「助けて京介く〜ん、ルリ姉が虐める〜〜」

叩かれた頭を押さえつつ、俺の背後に隠れる日向。
こらこら俺を盾にするな。瑠璃も勘弁してやれ。
意外にも日向に助け船を出したのは、それまでジーッと瑠璃を観察していた珠希だった。

637 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:39:32.44 ID:oFS8uKTF
「お顔が真っ赤ですよ、姉さま?」
「なっ」
「そうだよルリ姉、ただの冗談だったのに、必死すぎ〜」

さすがに末っ子に手を上げるのには、母性が呵責したのだろう。
歯軋りする瑠璃、俺を盾に煽る日向、無垢な笑顔で長女の顔色を質す珠希、という膠着状態が続くこと十秒。
俺は訪問者として、至極まっとうな意見を口にした。

「……いい加減、家の中に入れてくれないか?」

瑠璃と付き合いだしてから、早二ヶ月。
『運命の記述(ディスティニー・レコード)』に指定された儀式を一通り済ませた俺と瑠璃は、
予言書の背表紙の外側にある、自由気儘な恋人生活を送っていた。
夏休みが終わった後は、週末に五更家を訪れることが恒例化し、今日がその日というわけだ。
初見の頃から馴れ馴れしかった日向も、初めは大人しく控え目だった珠希も、
今や、扱いに困るほど俺に懐いてくれている。
ちゃん付けが呼び捨てに変わったのは最近のことで、二人にリクエストされたことが切欠だった。

『鎮まれ、俺の右腕よ、鎮まれ――!』
『ククク、真夜よ。やはりお前一人では、異形の血を制御できないようだな』
『それはどうかしら、ルシファー。
 真祖の名において命ずる。彼の者に宵闇の加護を授けたまえ!』
『夜魔の女王!?
 真夜――、貴様、闇の眷属に魂を売り渡したというのか!?』

昼過ぎの長閑な空気に、厨二病患者たちの応酬が木霊する。
マスケラ二期のDVDを観ましょう、と言い出したのはもちろん瑠璃で、
その目的は日向の教育(という名の洗脳)らしいのだが、
当の日向は画面には目もくれず、メルルのお絵描きに勤しんでいる。

638 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:40:17.90 ID:oFS8uKTF
そして俺はと言えば、

「こんな問題解くための公式、まだ習ってないんだけど」
「よく図形を見てみろ。
 とりあえず全体の面積を出してから、斜線部以外の面積を引けばいいんだよ。
 長方形とか三角とか丸とかの面積の出し方は習っただろ?」
「へぇ〜〜〜〜っ、そーいうことかー。頭いいねっ、京介くん!」

絶賛、日向の家庭教師役を務め中である。
日向が問題を解いている間、何気なく瑠璃のほうを見ると、阿吽の呼吸で目が合った。

「…………」

瑠璃が何を考えているのか、何を望んでいるのかは、手に取るように分かった。
が、まだ少し早いんじゃないか、と視線を逸らした矢先、
畳の上に伸ばした足の裏に、柔く冷ややかな感触が走る。
俺のふくらはぎ、膝裏、内股を伝い、股間を圧迫するそれは、瑠璃の爪先以外には有り得ない。

「………っふ」

いや、「………っふ」じゃねえし。
いくら卓袱台の下の出来事だからって、すぐ近くに日向や珠希がいるんだぞ。
バレたら何て説明するつもりだ、と非難の視線を向ける余裕は、瑠璃の足捌きで刈り取られた。

「お前な………」

負けじと俺も爪先を伸ばし、瑠璃のワンピースのスカート部分に差し入れる。
足指に、滑らかな布地の感触。
だいたいの見当を付けて関節を曲げると、

「……っ……ぁ……」

瑠璃は期待どおりの反応を示した。

639 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:41:01.85 ID:oFS8uKTF
きゅっと下唇を噛み締め、声は押さえているものの、表情の変化は隠せない。
堪える仕草に嗜虐心をそそられ、もう一度足指の関節を曲げようとしたその時、

「できました!」
「できたっ!」

日向と珠希が快哉を叫んだ。

「おにぃちゃん、これ、なんだか分かりますか?」
「ん……あぁ、アルファ・オメガか。
 ダークうぃっちモードのセカンド・フォルムだよな。よく描けてる」
「せいかいですっ!」
「京介くん、京介くんっ、答え合わせして!
 これ、近年稀に見るあたしの自信作だからっ!」
「いや、裏に解答載ってるだろ……おっ、正解だ。やればできるじゃねーか」

妹にしてやるノリで、お絵描きと宿題を達成した二人の頭を撫でてやる。

「……………」

あのー、瑠璃さん?
欲求不満な視線で俺を射貫くの、やめてもらえませんかね?
マスケラ見ろよマスケラ、ちょうど今作画ぬるぬるの戦闘シーンだぜ。

「もう見飽きてしまったわ。
 目を瞑っていても、真夜とルシファーの一挙手一投足を想像できるくらい」

言いつつ、瑠璃は足先に力を込める。
このエロ猫め、相当焦れてやがるな。
俺は仕置きの意を込めて、卓袱台の下に手を差し込み、悪さをする足の裏をくすぐってやった。

640 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:41:07.08 ID:sn/MbZeu
何でこっちに書いてるの?

641 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:41:44.14 ID:oFS8uKTF
「ひゃんっ!」
「どっ、どうしたんですか、姉さま?」
「ちょっとぉー、いきなり大きな声出さないでよね、ルリ姉」

妹二人からの非難を浴びて、恨めしげに睨み付けてくる瑠璃。
俺に足裏をくすぐられた、と言えば、なぜそんな場所に足を置いていたのか、と訊かれるのは必定で、
まさか隠れてえっちぃことしてました、と告白できるはずもなく、瑠璃が返答に窮していると、

「ただいまー」

玄関より福音来たる。

「おかえりなさぁい」と日向。
「おかぁさん、おにぃちゃんが来てますよ」と珠希。

襖が開いて現れたのは、瑠璃が大人になったらこんな風になるのだろうか、と思わせられる、
妙齢の和風美人こと、五更家三姉妹の母君である。
パートの仕事をされていて、今日は午前のみのシフトだったようだ。

「こんちわ、お邪魔してます」
「あら、いらっしゃい京介くん。
 お昼ご飯はもう食べた?瑠璃に作ってもらったのかしら?」
「いえ、家で食ってきました」
「そう。今日は、これからどこかに出かけるの?」

俺と瑠璃は顔を見合わせ、首を横に振る。
するとおばさんはニッコリ笑って、

「じゃあ、日向と珠希は邪魔ね。
 二人とも、お母さんと一緒に買い物に行きましょう?」

642 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:42:29.27 ID:oFS8uKTF
「えー、やだぁ〜〜。せっかく京介くんが来てるのに〜〜」
「おにぃちゃんも、いっしょに買い物に行きます?」
「お姉ちゃんとお兄ちゃんはお留守番。
 お菓子買ってきてあげるから、お母さんの荷物持ち手伝って?」

珠希は俺と母親の顔を何度も見比べていたが、
甘味の誘惑には抗えなかったようで、クレヨンを置いて立ち上がった。
意外だったのは日向の反応で、

「あたしィー、前から欲しかったシャーペンがあるんだけどぉー、
 それ買ってくれるなら、荷物持ちしてあげてもいいよ?
 どーせ珠希は重いもの持てないし、あたしがいないと困るでしょっ?」
「……仕方ないわね、一つだけよ」
「やったっ」

交渉は成立した模様。
お菓子や文房具で釣られるとは、やっぱガキだなコイツら。
……べっ、別に拗ねてるわけじゃないんだからね!

「京介くん、晩ご飯食べてくでしょ?何か食べたいものとかある?」
「日向ちゃんや珠希ちゃんの好きな物にしてあげてください」
「もう、遠慮しなくていいのに」
「ハイハーイ、あたしオムライスが食べたいな〜〜〜っ」
「たまきはカレーライスがたべたい、です」
「どっちもなんて無理よ。二人で相談して一つに決めなさい。
 それじゃあ、瑠璃、京介くん、お留守番頼むわね?」
「ええ」
「了解っす」

643 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:43:26.05 ID:oFS8uKTF
まず最初におばさんが玄関を出て、
オムライスがいい、カレーライスがいい、と舌鋒鋭く言い合いつつ、日向と珠希が後に続いた。
家は俄に静かになった――かと言えばそうでもなく、居間のTV画面の中では依然として、
マスケラの登場人物がスワヒリ語もかくやの難解極まる必殺技名を叫んでいる。
だが雑音の有無は大した問題ではなく、焦点はむしろ、
この家に俺と瑠璃以外の人間が存在しているか否か、にあった。

「瑠璃」
「京介」

俺たちはどちらからともなく唇を合わせた。
優しく触れあうような上品なキスは程なくして、激しく貪りあうような獣の接吻へ。

「京介っ………」

喘ぎながらも俺の名を呼ぶ姿がいじらしい。
瑠璃の体を壁に押しつけ、覆い被さるように抱き竦める。
ワンピースのスカート部分を捲り上げ、閉じられた瑠璃の股に、右足を差し入れる。
瑠璃の下腹部は、既に熱を持っていた。
薄い布越しに秘核を撫でると、瑠璃の体がぴくんと跳ねた。
俺は邪魔な下着を脱がしにかかった。その時だった。

「だ……だめっ……」

トン、と胸を突かれ、後じさる。
唇を繋ぐ銀の糸が断たれたのと同時に、俺は我に返った。

「……何がダメなんだよ?」

644 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:44:46.89 ID:oFS8uKTF
瑠璃は息を整えながら、責めるような声で言った。

「はぁっ……はぁ……こんなところで……来客があったら……どうするつもりなの……?」
「見せつけてやりゃあいい。取り込み中だと分かったら帰るだろ」
「ば、莫迦……本気で言っているなら、正気を疑うわよ」

それなら、と俺は訊いた。

「どこでならOKなんだ?」

瑠璃は顔を背けて「着いてきて」と言い、早足で歩き出した。
白いワンピースが、幻惑するように翻る。
行き先は瑠璃の部屋と相場が決まっていた。
俺はさながら獲物を追い詰める肉食動物のように、瑠璃の後を追いかけたのだが……しかし。

「おい、開けてくれよ」
「不可能よ。あなたが真名を取り戻すまで、真理の扉が開かれることはないわ」

ぴしゃりと閉め切られた襖の向こうから、瑠璃の低い声が聞こえてくる。

「真名?俺の名前は京介だろうが」
「いいえ、あなたはルシファーに裏切られたショックで、一時的に記憶を失っているだけ」

先ほどまでのエロ猫モードからは一転、
果たして何の気紛れか、瑠璃は黒猫モードに入っているらしかった。
だが、まあいい。天然の焦らしプレイには慣れている。少しくらいは付き合ってやるさ。

「近くに、あなたが記憶を取り戻すのに必要な魔導具が落ちているはずよ」

足下に視線を転じると、いつかコスプレ撮影会をした時に着た衣装と、文庫本くらいの厚さの小冊子が置かれていた。

645 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:45:34.17 ID:oFS8uKTF
「魔導具は見つかったかしら」
「……ああ、見つかった」
「よろしい。では、まず闇の渦と交信なさい。
 変身の仕方くらいは覚えているでしょう?」

俺は『変身』を『着替え』に脳内変換し、着衣を交換していく。
泣けることに、玄関先で元気にはしゃいでいた俺のリヴァイアサンは、
今や、真夏のアスファルトに投げ出されたミミズのように萎縮していた。

「……変身したぞ」
「上出来よ。次に、"月夕の教典(ムーンライト・ダイアログ)"の113ページを開きなさい」

なんちゃらの教典とやらは、この荒い装丁の小冊子のことを指すのだろうか。
数ヶ月前にも"運命の記述(ディスティニー・レコード)"に振り回された記憶があるが、
よもやあの時の焼き直しをするんじゃあるまいな。
恐る恐る指定された113ページを開く。それは一言で表すなら――。

「マスケラのト書きか、これ?」
「な、何をわけの分からないことを言っているのかしら。
 世迷い言を喋る暇があるなら、早くそこから166ページまでを暗記なさい」

厨二病全開のセリフと情景描写の約50ページ分を、今ここで暗記しろと?
冗談じゃねえ。三日掛けても無理だ。

「せめて、軽く目を通して」

切実な声に、渋々と肯く俺。
ざっとページを捲るが、ほとんど地の文のみで、真面目に読む気はさらさら無かった。
冒頭の会話から推察するに、かなり前に五更家の居間のテレビで見た、
主人公・真夜と旧敵・夜魔の女王が契約を結ぶシーンのようだが……。

646 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:46:19.85 ID:oFS8uKTF
「目を通したぞ」
「早いわね。それじゃあ冒頭の一文を読み上げて頂戴」
「えーっと……"真名を思い出した真夜は、夜魔の女王と再会を果たすべく、精神世界に没入(ダイブ)した"」
「違うわ。冒頭の真夜の『セリフ』よ」

なら初めからきちんとそう言えや。

「"これが真理の門……ここを通れば、俺はこれまで封滅した能力者たちと、再び相見えることになる……"」

うおお、鳥肌が立ってきた。
ただコスプレをするのみならず、セリフも言うとなると相当の苦行だな、こりゃ。
瑠璃はナレーター風に地の文を読み上げる。

「"長い葛藤の末、真夜はゆっくりと門に手を当て、押し開いた"」
「…………」
「"押し開いた"」
「…………」
「聞こえなかったかしら?"真夜が門を押し開いた"と言っているのよ」
「俺は今からナレーター……お前の言う通りに動かなくちゃならないのか」
「そうよ」
「俺の目の前にあるのは襖で、押し開くこともできないんだが」
「融通の利かない雄ね。これ以上わたしを失望させないで頂戴」

瑠璃はコホン、と空咳をひとつ、

「"長い葛藤の末、真夜はゆっくりと門に手を当て、押し開いた"」

俺はハァ、と溜息をひとつ、真理の門もとい襖を横に引いた。
内装は以前入ったときと特に変わりはない。
ただ、瑠璃の姿がどこにも見当たらなかった。

647 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:47:11.50 ID:oFS8uKTF
「"門の先に広がっていたのは、荒漠たる常夜の世界。
  これまでに屠ったディアブロの想念を一身に浴びながら、
  真夜はただひたすらに、夜魔の女王の気配を探し求めた"」

声は明らかに押し入れの中から聞こえているのだが、
突っこんでも余計な怒りを買うだけだと思い、

「"クイーン、お前の力が借りたい"」
「"真夜の心象世界に、彼の声は虚しく響き渡った。
  負の思念は刻一刻と強くなっていく。長居は彼の肉体の所有権を、思念に奪われるも同義だった"」
「"出てこい、クイーン!俺の体が欲しくないのか!"」
「"真夜の精神体が限界を迎えかけたそのとき、紅蓮の炎が彼を取り囲んだ。
それは彼に害なす思念を灰燼に帰し、常夜の闇を嚇耀と照らしだした"」

ガラリ、と勢いよく押し入れの襖が開き、
二階部分から、新衣装を身に纏った瑠璃が現れる。
転倒を危ぶみ手を差し伸べると、ペシリ、と払い除けられた。
旧敵の助けは無用らしい。

「"クックック……無様ね、漆黒……いえ、今は真夜と呼ぶべきかしら。
姿形は能力者でも、肝心の力が使えないようでは、何の意味もないものね"」

瑠璃は横木に頭を打たないよう、姿勢を低くしながら押し入れから飛び出した。
お披露目をするように、クルリと畳の上でターンする。
そして上目遣いに俺を見つめ、

「どうかしら……おかしくない……?」

お前はいいよな。好き勝手に素に戻れて。

648 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:48:14.71 ID:oFS8uKTF
俺は上から下に瑠璃を眺め、忌憚なき感想を言ってやった。

「すげー似合ってるよ」
「……あ、ありがとう」

瑠璃が着ているのは、マスケラ二期の夜魔の女王の新コスチュームだった。
一期のロングドレス風とはうってかわって、上はスリーブレス、下はミニのフレアスカートと、
全体的に露出度の高い、要するにエロっちいテイストに仕上がっている。
おかげで俺のリヴァイアサンも僅かに復活し、

「また裁縫の腕上げたんじゃないか?
 ほら、こんな細かいところも――」

さり気なく触れようとしたところで、ひらりと身を躱される。

「"あなたがここに現れた理由は、全て分かっているわ"」

幕間はこれにて終了らしい。

「"ルシファーの裏切りに遭い、あなたは能力を失った。
  他の能力者と戦うためには、新たなディアブロと契約を結ぶ必要がある。
  けど、この私――夜魔の女王――が、そう易々と闇の力を譲り渡すと思って?"」

俺は冊子を構え直して言った。

「"どうすれば、俺と契約を結んでくれる?"」
「"あなたは一度私を滅ぼした仇敵。代償は大きいわよ"」
「"早く言え"」

初めて俺と真夜の気持ちが一致した瞬間である。

649 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:49:05.51 ID:oFS8uKTF
「"そうね……良いことを思いついたわ。
  あなた、未来永劫、このわたしに傅くと誓いなさいな"」
「"ふざけるな。俺はお前の言いなりになんてならない。
  交渉条件はイーブンだ。俺はお前と契約しなければ戦えない。
  お前は俺と契約しなければ、俺が死ぬまで、この墓場のようなところで過ごすことになる"」
「"っふ、それはどうかしらね。わたしが存外、この場所を気に入っているとしたら?"」
「"……くっ"」
「"冗談よ。わたしとて、いつまでもこんな場所に引き籠もっているのはご免よ。
  けど……、契約の前に、ひとつ約束して頂戴。
  戦いが終わったその時は、わたしを闇の渦に返すと"」
「"分かった"」

瑠璃はナレーター役に転じ、

「"炎の円環の中、真夜とクイーンの距離は徐々に狭まっていく。
  熱気と殺気に入り交じり、一刹那、肉欲の香が匂い立った"」

と言いながら、現実でも距離を詰めてきた。
なにしろ部屋が狭いので、移動は一瞬で終わった。

「"――これより、契約の儀を執り行う"」

瑠璃は厳かに言い……、前触れ無く、キスを仕掛けてきた。
応えようとしたところを、目線で制される。
されるがままでいろ、ということだろうか。
瑠璃の舌先が俺の唇を割り、まるで探し物を探すかのように、口内を満遍なく刺激する。
唾液の嚥下さえ許されない状況で、瑠璃は手際よく、俺の上着を脱がしていった。
瑠璃のひんやりした手が、俺の胸板に触れ、乳首を撫でさする。

650 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:49:43.79 ID:oFS8uKTF
「っ……く……」

変な声を上げそうになるのを必至に堪えながら、
俺は今の状況に纏わる、ある事実を思い出していた。
マスケラ二期の契約シーンは、その過激さから放送倫理に引っかかり、放映時に大幅な改変を余儀なくされたこと。
そして改変前の台本が制作関係者によりインターネット上に流出したと、掲示板で噂になっていたこと。
つまり、さっきの小冊子は……。

「……ん……む……っ……」

執拗に口蓋を侵され、思考を中断される。
復活した俺のリヴァイアサンに、瑠璃は右手で、衣装越しに触れてきた。
裏筋のあたりを爪先でなぞり、掌で玉袋の辺りを圧迫する。
情けない男の声が聞こえたと思ったら、それは俺自身の声だった。

「"契約には心身の同調が必要不可欠よ"」

夜魔の女王になりきった瑠璃が、耳許で囁く。

「"あなたはただ、わたしに身を委ねていればいい"」

耳穴が、温かく湿った何かに蹂躙される。
首筋を撫でられ、耳たぶを甘噛みされるごとに、背筋を快楽の電流が走った。
服越しの刺激だけで、射精してしまいそうな感覚があった。

「"フフ、出してしまいなさい、真夜。きっと、ものすごく気持ちよくなれるわ"」

瑠璃は俺の頭を抱え、止めとばかりに舌を絡めてくる。
股間を摩擦する瑠璃の手が速まり、重く、怠い感覚が腰を包み込む。

「ああっ、ダメだ……俺……もうっ……!」

651 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:51:01.34 ID:oFS8uKTF
勝ち誇った笑みを浮かべて、瑠璃は俺を見つめた。
俺も満面の笑顔で瑠璃を見つめ返してやった。

「"我慢できねぇ……なーんて言うと思ったか、夜魔の女王"」
「え?」

呆気に取られた瑠璃の頬を両手で挟み、今度はこちらから唇を押しつける。
玄関先でしたものと比較にならないほど濃厚なキスをしてやると、
瑠璃は腰が抜けたように座り込み、潤んだ瞳で俺を見上げた。
ささやかな背徳感が脳裏を過ぎる。

「"け、契約の儀はわたしが――"」
「"俺がしてやられてばかりだと思うなよ"」

攻守反転。
瑠璃の体に体重をかけ、畳の上に組み敷く。
手製の衣装を傷つけないよう、優しく上の着衣を脱がせると、
先ほどまでの威厳はどこへやら、瑠璃はイヤイヤをするように首を振った。
裸を見せ合った回数は既に十を超えているが、未だに羞恥は消えないようだ。
無論、俺としてもその方がそそるが。

「"契約を結ぶには、心身を同調させる必要があるんだろ?
  なら、俺もお前を気持ちよくしてやらないとな"」
「そんなセリフ……どこにも……や……んっ」

固く尖った乳首を口に含み、舌先でつつき、歯を立てる。
艶っぽい嬌声を聞きながら、瑠璃の秘所へと手を伸ばす。
サテン地のスカートを捲り上げると、ワンピースを着ていた時と違う黒の下着が覗いた。
おそらく、このコスプレのためにわざわざ履き替えたのだろう。
その役者魂には怖れ入るが……この分だと、また履き替える必要がありそうだ。

652 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:51:58.28 ID:oFS8uKTF
「"大洪水じゃねえか、夜魔の女王。
 俺を責めてる時からこんなにしてたのか?とんだ変態だな"」
「ち、違っ……」
「……何が違うんだ?言ってみろよ」

言葉で嬲りつつ、俺は瑠璃の下着のクロッチ部分を脇にずらし、
濡れそぼった茂みに中指を埋没させていった。
股を閉じて抵抗しても、遅い。
親指の腹で充血した秘核を摩擦しながら、根本まで埋まった中指を、指先で円を描くように動かしてやると、

「っ……はぁっ……」

切なげな吐息を漏らし、身悶えする瑠璃。
しばし手淫を楽しんだ後、俺はお約束として、引き抜いた指を瑠璃の目の前に持って行き、

「"夜魔の女王も、所詮は女だな。いや、厭らしい雌か。
  ぐしょぐしょに股ぐらを濡らして、ずっと男が欲しかったんだろう?あん?"」

あれ、真夜ってこんなキャラだったっけ。
自信は無いが、瑠璃の反応を見る限り、台詞選びは悪くなかったようだ。

「"そんなに意地悪……しないで頂戴……"」

白皙の肌を朱色に染めて、懇願するような眼差しを注いでくる。
ただそれだけの仕草で、俺のリヴァイアサンの硬度は三割増である。
俺は下の衣装を脱いで一物を取り出し、物欲しそうにひくつく割れ目に宛がった。
が、すぐには突き入れずに、瑠璃の耳許で囁く。

「"契約が完了すれば、俺とお前は対等の関係になるのかもしれない"」
「"…………"」
「"でも今だけは、俺がお前の主だ。
  いいか、夜魔の女王。お前はこれから、ただの人間の男に、犯されるんだ"」

653 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:53:16.02 ID:oFS8uKTF
言い終えると同時に、一息に腰を沈ませる。
肉壺はこれまでにない熱さと湿り気で、俺の一物を包み込んだ。

「―――ッ」

背筋を弓形に反らせ、呼吸さえ忘れて快感に溺れる瑠璃。
性行時の快楽の度合いは、女の場合、精神状態が大きく影響するという。
その理論を信じるなら、夜魔の女王のコスプレをして、同じく仇敵・真夜のコスプレをした男に犯されているという状況は、
瑠璃に最高の快楽をもたらしているに違いなかった。
彼氏彼女のエッチよりも気持ちいい、と言外に言われたようで、悔しくないと言えば嘘になるが、
まあ仕方ないか、と諦めている自分がいるのも事実だ。
実際、普段よりずっと瑠璃の中の具合がいいしな。

「"もっとだ、もっと俺を満足させろ、夜魔の女王"」

小ぶりなお尻を抱え上げ、性欲処理機を相手にしているかのように、乱暴に腰を打ち付ける。
瑠璃は息を弾ませながら、

「"はぁっ……あっ……ふっ……あなた……真夜ではないわね……"」

役から外れすぎたか、と一瞬ドキリとしたが、

「"あっ……んっ……真夜の中の異形の血が……っ……本能の解放と共に目覚めたというの……"」

流石は瑠璃、脳内補正バッチリである。
コレ幸いと俺も追加設定に乗っかり、

「"ああ、そうだ。今の俺は真夜でも漆黒でもない、お前を犯し尽くすために生まれた人格だ"」

なるたけ低い声色で言い、根本まで一物を突きいれる。

654 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:54:49.09 ID:oFS8uKTF
最初の三回までは試行錯誤の連続だったものの、
今や瑠璃の体の悦ばせ方は、本人の次に知悉している自負が俺にはあった。
一物のカリ首を使い、秘核の裏側にあたる部分を、孫の手の要領で刺激すると、
「ああぁっ」と甲高い悲鳴を上げ、瑠璃はあっさりと絶頂に達した。
が、そこでストロークを加減してやるほど、俺が演じている役は優しくない。

「"もう……っ……ダメ……許して……お願い……"」
「"お前は黙って契約に集中しろ。
  それともイキ癖がついて、契約に集中できなくなったか?"」

瑠璃は息も絶え絶えの様子で、首を横に振る。

「"はぁ……あぁっ……もう少しで……んっ……契約は、完了よ……"」
「"いいだろう。完了と同時に、俺もお前の中に、たっぷりと子種を注ぎ込んでやる。
  どんなガキを孕むか楽しみだな"」
「"だ、ダメっ……それだけは……そんなことをされたら……わたしっ……"」

言葉とは裏腹に、瑠璃の中はキツさを増していった。
無数の襞が、ひとつひとつ別個の生き物のように絡みつき、
全体としての肉壁が、精を絞り尽くさんと蠕動する。
瑠璃に弄ばれていた時と違う、本物の射精感が込み上げてくる。
無論、さっきの台詞は演技で、俺は射精寸前で一物を引き抜き、瑠璃の真っ白なお腹の上で果てるつもりだった。
が、いざその時が来ると、一定以上腰を引くことができない。
理由は単純、瑠璃の両腕が俺の背中に、瑠璃の両足が俺の腰に絡みついているからである。

「お、おま……」
「大丈夫……っはぁ……今日は……安全な日……っ……だからぁ……」

ええい、ままよ。ここまで来たら、その言葉を信じるしかない。
俺は瑠璃の背中を浮かせるようにして、斜め下から一際強く、瑠璃の体を刺し貫いた。

「"イくぞ、夜魔の女王っ!"」
「"あぁぁあぁぁぁっ!"」

一体感に脳髄が痺れ、電流が脊髄を駆け抜ける。
溜まりに溜まった熱い塊を吐き出すように、俺は瑠璃の最奥で射精した。

655 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:55:54.87 ID:oFS8uKTF
「本当に大丈夫な日だったんだろうな」

畳の上に寝っ転がりながら、俺は隣の瑠璃に訊いた。

「……嘘はついていないわ」

危険日に中出しした場合、妊娠する確率は約10パーセントらしいが、
果たして安全日に中出しした場合は何パーセントなのだろうか……。
ああ、こんなことなら、もっと学友の猥談の輪に入っていれば良かったぜ。

「なあ……」

隣を見れば、瑠璃は未だ恍惚醒めやらぬ、と言った様子で、ぼうっと天井を見つめている。

「はは、よっぽどコスプレエッチが気に入ったか」
「な――わたしは本来、アニメに忠実な契約シーンの再現をするつもりだったのよ。
 それをあなたが暴走して……」
「言い訳すんな。お前は最初から、俺を焦らして、暴走させるつもりだったんだろ。
 そうすりゃ、俺に無理矢理コスプレエッチをさせられたって言い訳ができるからな」

きゅ、と下唇を噛む瑠璃。言い返せないってことは、図星だってことだ。
俺はそんな彼女の髪を、手櫛で梳いてやりながら、

「なら、最初から正直に言えっての。俺が嫌がると思ってたのか?」
「そんなこと……面と向かって、言えるわけがないじゃない」

それもそうか、と納得する。
俺だって瑠璃に『エッチの時俺のことをお兄ちゃんって呼んでくれ!』なんて死んでも言えねえ。
や、勘違いすんなよ、そんな願望はこれっぽっちもねえからな。

656 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:57:46.80 ID:oFS8uKTF
「これからは、好みの場面が出て来たら、遠慮なく言え。
 俺も出来る限りの範囲で、役を演じてやるからよ」
「ええ……分かったわ。わたしは最早遠慮しない。
 でも、当分の間は、二期の契約シーンに勝るシチュエーションは出てこないでしょうね」

やれやれ、そんなに真夜×夜魔の女王がお気に入りか。
真夜×ルシファーの健気責めツンデレ受け以外認めませんッ、という瀬菜の声が聞こえた気がしたが、無視した。

「けどな、瑠璃。コスプレエッチに協力するにあたって、一つ、条件があるぜ」
「何かしら?」

髪を撫でられるのが心地よいのか、蕩けた瞳で瑠璃がこちらを見る。

「コスプレエッチの後は、恋人同士のフツーのエッチもする。それが条件だ」
「ふふっ……」

と瑠璃は妖艶に笑い、獲物の反応を伺う蛇のように目を細めた。

「あなたは、真夜に妬いているのかしら?
 それとも自分の代わりがいるのではないかと、不安になったのかしら?」

ああ、そうだ。その通りだ。
俺はお前の望み通りの役柄を演じながら、一種の寂しさを感じていた。
瑠璃の目に映っているのは、俺ではなく、マスケラの主人公・真夜そのものなのではないか?
俺でなくとも、真夜を演じることができる男なら、瑠璃は誰でも良いのではないか?
なーんてことを考えていたのさ。

「本当に、莫迦な雄ね」

瑠璃はくつくつと喉を鳴らし、身を起こして、俺の体にすり寄ってきた。

657 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:58:48.92 ID:oFS8uKTF
「わたしにとって、あなたは唯一無二の存在よ。
 代わりなんていない。いるわけがない。
 あなたがいなくなれば……、きっとわたしは死んでしまう」
「瑠璃……」
「さあ、今度は闇の契約ではなく……恋人の契りを交わしましょう?」

瑠璃が俺の上に跨がり、すっかり固さを取り戻した一物を、優しく手に取り、自身の秘裂に導く。
涎のように垂れる白濁液が、たまらなく淫靡だった。

「んっ……はぁぁ……」

一物が完全に呑み込まれる。
俺は瑠璃の体を引き寄せ、ぴたりと上半身を密着させながら、騎乗位で突き上げた。

「京介……あぁっ……好きぃっ……」
「俺もだ……大好きだぞ……瑠璃………」

コスプレエッチもいいが、やはり俺は、こっちの方が好みだ。
それから買い物に出かけた"二人"が帰宅する直前まで、俺たちは深く愛し合った。


さて、この話には少し続きがある。
五更家で晩ご飯――カレーライス――をご馳走になった俺は、
今、下の妹二人と一緒に、居間でテレビを眺めていた。
台所ではおばさんと瑠璃が洗い物をしている。
親父さんは家から遠く離れた仕事場で、泊まり込みでお仕事……らしい。
何度か顔を合わせたことがあるが、外見内面ともに穏やかな、優しい人だった。
壁時計が八時の鐘を鳴らすのと同時に、珠希が小さな欠伸をした。

「ん、珠希、もうおねむ?今日は早いね」
「買い物に行ったせいで、疲れたのかもな」

658 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 11:59:35.75 ID:oFS8uKTF
日向は普通のお姉ちゃんらしく、優しい口調で尋ねた。

「どうする?今日はお風呂入らないで、お布団入る?」
「……お風呂、入りたいです」

この歳でも女の子か。

「便所ついでに、風呂の準備してくる。寝入るなよ、珠希」

俺は珠希の頭を撫でて、立ち上がった。
五更家の勝手は知ったるもので、俺はさして迷うことなく、縁側の廊下を進んでいった。

「待って待って、京介くんっ!」

トットットット、と小気味良い八拍子が聞こえ、背中に何かが激突したかと思えば、日向だった。

「あたしもお風呂入れるの、手伝うよ」
「一人で出来る。つーか、手伝うって何を手伝うんだ」
「ねーねー、京介くんは今日お泊まりするの?」

人の話聞いてねえな、コイツ。

「しねえよ」
「え〜〜〜〜っ!なんでなんで?
 今日はお父さんも仕事でいないしィ、あたしと一晩中ラブラブする絶好のチャンスじゃん?」
「黙れマセガキ。お前とラブラブしてどうすんだ」
「京介くんひっどぉ〜〜〜〜い!今あたし超傷ついたんだからね!」

659 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:00:30.67 ID:oFS8uKTF
ぷくーと頬を膨らませ、睨み付けてくる日向。
……良い機会だ。ここらで灸を据えてやるとするか。
俺は屈み込み、日向と視線の高さを合わせて、

「お前、ラブラブの意味分かって言ってんのか?」
「えっ」
「ラブラブするってのが何をすることか、具体的に言えるか?」
「えっと、それは……」

日向は顔を真っ赤にさせて言った。

「し、知らないっ!」
「ウソつけ」
「ウソなんかついてないもん!」
「見たままを言えばいいんだ、できるだろ」

日向の顔色が、赤→白→青→赤と目まぐるしく変化する。

「お前なあ……覗きがバレてないとでも思ってたのか」
「……なんで」
「足音とか……なんつーか、気配?」
「ル、ルリ姉も知ってるの?」
「いいや、あいつは気づいてないみたいだ。
 気づいてたら、何かしらお前に言ってただろうしな」

660 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:02:21.94 ID:oFS8uKTF
日向が俺とルリの秘め事を覗き見していることには、結構前から気づいていた。
今日、日向が母親の買い物に着いていった時も、
晩飯をオムライスとカレーライスのどちらするか珠希と揉めていたが、
結局出て来たのは珠希が希望したカレーライス、
日向が折れたのか、とおばさんに聞いてみたところ、
道中、突然日向が「友達を見つけたから喋ってくる!」と言って、お手伝いを放棄したからだそうで、
しかし日向の行き先は十中八九、俺と瑠璃が愛し合う自宅だったに違いない。
一部始終を盗み見た日向は、おばさんや珠希が帰ってくる頃を見計らい、
一度家を出た後で、友達と遊んできた風を装い、遅れて帰宅したのだろう。あくまで推測だが。

「京介くん、エスパー?」

当たってたのかよ。俺は溜息を吐いて言った。

「性に興味があることを、責める気はねえ。
 でもな、そういうのは、保健体育の教科書見て満足しとけ」
「小学校で……そういうの、教えてくれないし」
「そりゃあ、お前くらいの年で、んな知識はまだ必要ねえからな。実技の観察なんて尚更だ」

踵を返して風呂場に向かうと、日向は俺の行く手に回り込み、腰の辺りに抱きついてきた。

「京介くんは、勘違いしてる。
 あたしが京介くんとルリ姉が、エッチなことしてるの見てたのは……悔しかったから。
 ルリ姉ばっかり、ずるい。あたしだって、京介くんのこと大好きなのに」

声には湿り気が混じり、本気の度合いが伝わってきた。

「……ルリ姉にしてるのと同じこと、あたしにもしてよ」

661 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:03:12.24 ID:oFS8uKTF

頭痛と目眩と顔の火照りが、いっぺんに俺を襲う。
オー、ジーザス。
なぜ神はかような試練を、無垢なる羊に与えたもうたのか。
どうすればいい。どうすれば、この場を丸く収められる?
どう答えれば、日向を傷つけずにすむ?

「なあ、日向。顔を上げてくれ」
「……うん」

結局、俺は先人の知恵に頼ることにした。
彼女の妹に惚れられたが、その子の幼さ故に、慕情を退けざるを得ない、
そんなエロゲ的展開を乗り切れるのは、同じくエロゲ主人公のみである。
ありがとう桐乃。俺、マジで妹ゲーやっといて良かったわ。

「俺がお前に、瑠璃にしたみたいなことをしたら、色々と問題があるんだよ。
 それくらいは分かるよな?」
「うん……犯罪になっちゃうんだよね?」
「そうだ。それに何より、お前の体が、まだ完全に男を受け入れられるように出来てない。
 お前も最初に覗いたときは、怖かったんじゃないか?」

コクコク、と日向は頷き、

「でもね、ルリ姉も最初の頃はすっごく痛がってたけど、
 三回目くらいからかなぁ、今度はすっごく気持ち良さそうに――」
「あーあー皆まで言うな。とにかく、だ。
 お前が俺とそういうことをするには、まだ五年も六年も早い。
 いっぱい飯食って、いっぱい成長して、出るとこ出してから出直してこい」

662 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:04:10.14 ID:oFS8uKTF
俺は冗談交じりに言って、日向の胸を突いてやった。
きゃ、と可愛らしい悲鳴を上げて、日向は無い胸を隠す素振りをする。

「京介くんのエッチ……でも、期待してもいいんだよね」
「おう」

中学生、高校生に上がれば、日向も人並みに恋をするだろう。
そうすれば数年後には、この日の約束は、恥ずかしい思い出として風化しているはずだ。
俺はそう高をくくっていた。

「あたし、一途だよ。京介くんが思ってるより、ずっと」

ちゅ、と懐かしい響きが聞こえた。

「呪い、かけたから。ルリ姉がかけたのと、同じくらい強力なヤツ」

はにかみ笑いを浮かべた日向が、ステップを刻んで距離を取る。
唇に残る、熱く湿ったキスの痕。頬にされるのとは訳が違う。
しかも呪いって……お前は五更家の反厨二病勢力筆頭じゃなかったのかよ。
狼狽える俺を余所に、日向の体がピタリと静止した。

「どうしたんだ……?」
「…………」

日向は一点を凝視したまま、一言も喋らない。
俺は妙な胸騒ぎを感じて振り返った。


――夜魔の女王がそこにいた。

663 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:04:57.90 ID:oFS8uKTF
「そう。そういうことだったのね。
 これまで考えすぎだと、有り得ないと、自分に言い聞かせてきたけれど……。
 やっぱり、わたしが甘かったみたい。
 あなたがここまで節操のない雄だと、見極め切れていなかったのだから」
「瑠璃、少しでいい。少しでいいから俺の話を、」
「言い訳無用。あなたの罪は極刑……いえ、万死に値するわ」
「ル、ルリ姉、京介くんは悪くないよ」
「黙りなさい」
「ひうっ」

ああ、今日は世にも珍しい日だ。
黒猫、白猫、エロ猫、そして闇猫。瑠璃の四変化を見られるなんてな。
どこから持ってきたのだろうか、彼女の手には、鋭利なGペンが握られていた。
あれで刺されたらさぞかし痛いことだろう。

「死になさい」

ああ、いったい俺は、どこで選択肢を間違えちまったんだ?
凄艶な笑顔が、鬼の形相に変わった。
俺は土下座作戦を中止し、裸足で庭に逃げ出した。


おしまい!

664 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:08:24.02 ID:BQyQ5rrP
よくやってくれた

665 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:12:51.34 ID:AIRKZsxF
GJ。地文とエロさと台詞のギャップが面白かったです。
安全な日だからとのたまう夜魔の女王様が可愛い。

666 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:14:19.21 ID:pD4R1rvn
GJ
こういうのが読みたかったんだよ

667 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:17:23.69 ID:pTIZUXZF
>>625
相変わらず面白くないな
純粋に話作りの才能がまるでない
こういう本格的な話が書きたいならまずは本を散々読んでからにしたほうが良い
恥さらし過ぎ

668 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:20:48.38 ID:HgCzM6j4
煽るなら尚更専スレ行けよ
荒らし行為は歓迎しないわ

669 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:22:56.42 ID:jNIIFPOG
>>633
GJ!


ところで専用スレの意味がない件

670 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 12:50:18.82 ID:BF789LiY
クソみたいなSSの後にお手本のような良SS
三姉妹も上手く書けてたしエロくて良かった

671 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 13:51:27.05 ID:QrypJqV/
ふう、和むぜ
いや、和んでもいられないオチのような気もするがw
しかし、旧五更家にインターホンなどと言うハイカラな物はあるのだろうか

ところでマスケラのDVD見てるシーン、多分、お絵かきしてる珠希の名前が日向になってますね
あと、瀬菜の一押しカプは、真×ルシじゃなくてルシ×真。追憶の台詞とか見ても、ルシファーの方が健気キャラらしい

672 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 14:06:30.90 ID:GjDT2m0Q
>>625
ちゃんと話に区切りがつくかと期待していたのになあ。
ちょっと失望しました。


673 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 15:33:40.59 ID:oOZEXLvI
やたら伸びてると思ったら専用スレがあるのにこっちに
投下する荒らしが沸いたのか

>>663
そんななか乙

674 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 15:49:25.83 ID:ynnn9gJu
もうっ、SL氏ったら

675 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 16:40:21.70 ID:sdaX9Uy+
>>625
めちゃめちゃ面白かった。

続きもお願いしますね!

676 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 16:55:07.22 ID:igei/a+H
たまちゃん「おねぇさまたちばかりずるいです」

つまりこういうことだな

677 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 18:04:36.22 ID:E16JIPVV
>>625
まず作品投下乙。今回はエロ描写はいいな。
続いて堂々とこっちに投下した心意気へ乙。一部のガキは気にせずまた読ませてくれ。

さて、今回はオリキャラとあや京の掛け合いだがはっきり言って読む気がしない。
描写なり段階を踏むのは否定しないが極力圧縮してくれることを望む。

最後に黙って投下すれば良い。擁護する人間はいるんだから煽るな。
他の作者に迷惑をかけるやりかたはよくないな。

678 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 18:08:51.68 ID:/kZr3Yzs
>>625
GJ!!!!続きを激しく期待!!!!

679 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 18:57:54.55 ID:JQFGJgI2
S,Lさん自演やめてね

680 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 19:01:11.78 ID:0QCWEKhB
ほっとけー

681 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 19:30:25.17 ID:ClL3gvAB
>>625
>>663
個人的には両方ともすごく楽しめました、GJ!

682 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 19:38:11.82 ID:kZCKUpIf
SLのゴミの後にマトモなのが来てくれて良かったよ。

683 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 19:45:33.01 ID:bNRZ1mzZ
というか、SLの話はもうここら辺までにしとこうぜ。
空気悪くなるし
それよりか誰か日向ちゃんと京介のエロパロ書いてください…
お願いします…

684 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 23:35:13.57 ID:QqUl39I+
SLさんも香ばしい作品を投下しなきゃここまで嫌われなかっただろうに
読み応えがあるだけに残念だ

685 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 23:37:59.27 ID:H5eVNHr7
いや香ばしいのは作品じゃなくて本人の性格……もうええっちゅーの

686 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/18(月) 23:59:27.60 ID:pD4R1rvn
無駄に長けりゃ読み応えあるんだな
アホくさ

687 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 00:07:23.77 ID:cEgP1GK4
取り合えず専用スレにいこうな、な?

688 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 00:20:36.42 ID:Mhp7wym+
ageレスとその後の数レスは高確率で嵐と誘いレスだから触らないことだな

689 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 00:49:14.26 ID:fT6y2Isn
>>625
つまらなかった。
オリキャラが全然死んでるよ。
あやせも京介もあやせや京介である必然性がゼロ。
やっぱアンタオリジナルで書いたほうがいい。

>>663
うん。まさにこれがSSだね。
キャラクターが原作っぽいし愛もあふれてるのがわかる。
もっと読みたいな。書いておくれよ

690 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 00:49:35.40 ID:V0Lfam0C
SL氏、面白かったですぞな!
そして、連発で新しいSSを書いてくれた人、GJでした!
住み分けとか言う、いじめっ子が良くやる手口や、何でも比べたがる荒しは無視して、
是非とも続きを頑張ってください!
お二方とも応援してます!

691 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 01:16:00.09 ID:6Kx1oY6V
黒猫もかわいいけど日向ちゃんもかわいいわー
一途に思われるなんて京介爆発汁

692 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 01:43:25.41 ID:QzWEksYM
片や、トリを付けオリキャラだらけの駄文を投下し胸くそ悪い捨てゼリフを吐く書き手
片や、原作に忠実かつ構成文章ともに優れた良作を投下し去り際も見事な無名の書き手

俺は後の人がいれば満足
前の人は専用スレでやってくれ

693 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 01:52:49.54 ID:FVVXvWO0
V0Lfam0C必死すぎるだろ

694 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:05:27.11 ID:AehSU2wI
プロ顔負けのSL氏のすぐ後に投下してる
恥知らずでどうしようもない奴がいると聞いて。

SL氏は荒らしに負けず頑張って!
悪く言ってる奴は全部あなたの才能に嫉妬してるワナビですよ。

695 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:10:34.80 ID:2mBc9zCd
内容のことは置くにしてもさ、どうしていつも余計な事を言って去るんだろうな、SL氏は
そして、自分の気に入らない書き込みには噛み付いて捨て台詞残すくせに
一度だって、>>694みたいなのを嗜める発言をしたことはない。それをするだけでも、大分印象が違うのに
それとも、694みたいに言われて、本気でいい気分に浸っているんだろうか? 違うと信じたい

696 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:15:50.89 ID:ia/CNuiq
恥知らずでどうしょうもない奴は誰だって話だな

697 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:21:31.71 ID:xsoNYqqL
>>695
信者も荒らしもSLの中では当価値だから

698 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:29:44.68 ID:r3BpCc3P
SLはエロシーンの描写だけ途端にアホっぽくてワロタ
まあせっかく結構な長文を書いてるんだから余計なことして荒らさず粛々と投下してくれ

699 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:29:49.69 ID:GVItIXHd
大学生ネタばっかでどんだけ未練があるんだよとは思う

700 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:37:35.21 ID:r3BpCc3P
個人的には大学生編やること自体は歓迎なんだけど
本編ではやらないだろう続編てのは二次創作の醍醐味ではある
オリキャラだって構わない
要はなんのためにそれをやるかだけど

≫695
愉快犯もいるけど何割かは本人の自演
過去スレなんか見れば明白

701 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:41:31.75 ID:++YGFnZT
SLの書くssすごい好きなんだけど言動が残念や

702 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:47:19.63 ID:ia/CNuiq
まあ問題はSL本人よりも痛すぎる擁護と他の書き手馬鹿にしてる屑なんですけどね

703 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:54:53.15 ID:r3BpCc3P
なにより本編にまでおかしな爆弾仕込もうとしないかが気がかりだわw
言動や前科(?)からして
そうなると「投下だけしてれば」ということすら言えなくなる

704 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 02:58:29.12 ID:zVT7Aycc
お前ら作者批判する前にもっと作品の批評しろよ
作品に遠慮のない意見をすれば作者は自然に淘汰されていくだろ
稀にゴキブリレベルのヤツもいて困るが

705 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 03:11:39.03 ID:r3BpCc3P
いや別に淘汰しなくてもいいし
俺妹で楽しく二次創作したいってスタンスならハードルは下がったほうがいい
おかしなやつじゃない限り

706 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 03:56:39.65 ID:eu4nDBqE
いや明らかに信楽が100%悪いから
基本を守れないとかカス過ぎw

707 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 03:58:08.08 ID:eu4nDBqE
こりゃ失敬orz

708 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 04:50:28.54 ID:/3lz+I5/
失敬が、失禁に見えた俺は病気orz

709 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 04:53:41.13 ID:fGrCZ98r
ちなみに誰のおもらしが見たいんだい?

710 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 05:13:37.55 ID:K65KLx60
失禁シチュが一番映えるのは潔癖なあやせたん。京介の前で漏らしちゃって羞恥で泣き出すとか可愛い
次点で黒猫。黒猫の場合は京介だけじゃなく、妹達の前でしてしまうってシチュが一番羞恥ダメージ大きそう
あとはブリジットちゃんがイベント後に間に合わなくてってのは鉄板だな

711 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 06:45:14.71 ID:SPJvu96h
>>710

ためしに書いてみようと思うが、ここであげないほうがいいかな?

712 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 07:03:39.94 ID:PyxJkkqc
沙織の輪物見てェ…

ダークでもいいけど
いつものメンバー達との乱交ものでも…
(沙織以外はペニバンとか…)

713 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 07:43:25.59 ID:va574IJM
『信者』とかもまともに書けないアンチって、義務教育受けてんのか?

あ、亡国(あえてこう書く)の民辱学校出身か。納得

714 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 08:02:11.96 ID:V0Lfam0C
>>711
ここで上げても良いんじゃないかな?
変なの居るけど、負けないで上げて欲しいです。

715 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 11:28:56.38 ID:Veu2N3b4
>>711
いやいやいやここに上げるんだ

716 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 12:06:58.45 ID:IKKbqliG
SL66のせいで他の作者の作品みにこれなくなった

717 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 12:13:08.82 ID:/3lz+I5/
>>711
どのキャラでも、加奈子でお願いします

718 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 12:28:09.12 ID:tk+LcCJ+
SLさんは専用スレが立つほど凄い人なんだから、こんなスレに来ていただかなくてもいいよ。

719 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 13:14:58.79 ID:vG1h/GFU
というわけでで感想は専用スレでね

720 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 14:44:27.95 ID:YgiClEdD
ここはNTRもの書くべきだ。そして京介が主人公補正で
奪い返す話を…。もしくはあやせを緑の悪魔風に…。

721 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 14:56:28.45 ID:saRPPWWm
>>625
専用スレにゴー

722 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 15:13:01.02 ID:AAF0faiA
>>632
神おつです

723 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 16:18:14.49 ID:q7MVcc4T
>>632
面白かった
ああ、日向と珠希が黒猫の年子だったら良かったのに

724 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 17:23:47.87 ID:saRPPWWm
小学生と幼稚園児だから萌えるんじゃないか!

725 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 17:50:58.63 ID:7c66Y3rf
普通の恋愛をすることもなく、かといって仲間と連んで馬鹿騒ぎをしたりすることもなく
特に目的もなく生活を送ったためにとても悔いの残る大学生時代であった
講義が終わればそそくさと家に帰り、誰にも呼び止められず、小説に向かう日々が続く
そんな鬱屈した思いが募り、エロパロ板に来ては少しばかり他人より上手い文章ん散らかし
煽り、驕り、荒らし、ちょっとした優越感を手に入れる
自分が振り向かれなかったせいか、とらどらの亜美、俺芋のあやせ等自分を引っ張ってくれそうなキャラを取り上げては
自分の思い通りに動かす。思い通りにしたいから原作とはかけ離れるも気にはしない
他人から指摘されても幾ばくかの自演と信者により聞こえないふりをして
今日も必死に投下作業


そんなワナビに私もなりたい

726 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 18:11:53.01 ID:n8Btofd+
>>725
俺のことか…




俺のことなのかああああぁぁぁぁぁぁ

727 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 19:37:37.44 ID:bnyWzJa3
ID変えつつ粘着否定レスを投下するほどとはよほど恨みが深いのだな
SLさんも専用スレに行けばいいのに、本スレじゃ一般SS作者さんの恨み妬みをかうだけ
専用スレに投下されても読み専は読みに行くよ

728 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 22:05:47.90 ID:46RDzL2F
>>727
正論

729 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 22:25:00.40 ID:cEgP1GK4
だがその話も専用スレでやれ

730 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 22:53:15.00 ID:7c66Y3rf
今日が初めてだから粘着とかは知らないが、書いたこと割と本気
本人も痛いのな。頼むから専用スレにいってくれよ

731 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 23:14:18.82 ID:saRPPWWm
SL


732 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/19(火) 23:17:05.82 ID:bnyWzJa3
割と本気なら相当痛い奴なんだな君って
作者間のイザコザだの、キャラがどうだのなんて読むほうにはどーでもいいことだ
中傷や罵倒で続きが読めなくなるのが一番ダメだ
分かったらさっさとSSを書いて投下しろ

733 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:16:07.29 ID:ofjHpe+w
>>732
痛い奴がID変えて何度も登場だもの
笑っちゃうよね

本当にヒマなんだな

734 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:24:53.19 ID:xSk1AZ7R
自虐しなくてもいいだろ

735 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:31:48.45 ID:ZaMMhsXR
続き読めなくなるのがダメなのはホントだよね。
読み手は出ていけなんて別に思わないよ。
書き手さんたちはなんで仲良くできないのかな。

736 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:33:15.71 ID:ERa4lI+F
日付変わったしやめようかと思ったが
確かに定期的にID変えつつアンチに勤しむやついるのはわかるけど
なんでもかんでも一人でやってると思わんと精神が安定できん病気かなんかなのか

>>734
日本語で
俺はいたって普通に馬鹿騒ぎしつつ楽しく過ごしてるよ

737 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:38:13.23 ID:ofjHpe+w
お前の上から目線も病気だな
何様のつもりだ? SLか?
書き手らしいが、その態度なら、さぞかしいいもの書いてるんだろうな

俺の先入観を裏切るようなことは勘弁な

738 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:39:18.12 ID:ZaMMhsXR
一人でも数人でもケンカはやめたほうがいいよ。
スレはSSで埋めましょう。

739 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 00:50:06.01 ID:xSk1AZ7R
>>736
いや、お前誰だよ。お前にいってねーよ

740 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 01:06:33.03 ID:zXAlWH1h
中〜長編で書けるようなお題を募集してもいいですか
最近アイデアが枯渇気味で困っています

741 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 02:03:21.45 ID:112eIcU4
>>625
GGGGGGGGGGGJ!!!
最高でした!
あなたの文章はエロパロどころか総ての読み手にとって”宝”だと思う
たった一人のアンチは無視してこれからも頑張ってほしい

P.S
物分りのいいファンの振りしてスレを追い出そうとなりすまししてる馬鹿がいます
そうゆうのに引っかかる人ではないとしんじていますが
ご注意を・・・・

742 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 02:15:57.05 ID:LNplvvXm
隔離病棟から出てくんなよ

743 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 02:19:09.67 ID:NHjqGJ75
>>740
きりりんのお漏らしネタで
やっぱ妹と言えばお漏らしだよね!

744 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 02:24:30.42 ID:wbdMZj7V
妹キャラの基本は、物理的な距離が近い事を生かした夜討ち朝駆けだろう

745 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 02:26:03.09 ID:nqDkJj+x
むしろ悶々と前戯だけくりかえして本番の無いやつお願いします

746 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 03:01:50.22 ID:6MY+i5hh
>>740
加奈子が本当に魔女っ子やる話で

747 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 03:42:45.98 ID:8uKVGYph
>>663
GJ!!!

いやあ、これは良かった。なによりキャラに対する愛をひしひしと感じた。
黒猫も京介も妹たちも活き活きとしてるのは書き手がキャラに対して深い思い入れがあるからなんだろうな。

すばらしいものを読ませてくれてありがとう。

748 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 07:45:59.43 ID:CinEHwEj
>>740
京介の忙しさによるご無沙汰シチュエーションとかどうでしょうか?
相手は誰を想定しても良いので、

恋人になって何度か身体を重ねたものの、京介が忙しくなってしばらくご無沙汰。
京介に抱かれる快感を知ってしまった身体を持て余して、一人で耽ってみたり、何とか抱いて貰おうと一生懸命誘惑してみる……

みたいな話。

749 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 08:52:05.80 ID:BJfInf0t
>>740
黒猫と妹たちのほのぼの日常モノで頼む

750 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 12:03:32.38 ID:yysdlKJl
>>740
ヒロインズは程々でいいので格好良い京介メインでお願いします

751 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 14:07:36.98 ID:SvFqUu24
カッコいい京介が五更家三姉妹と日常的にほのぼのSEX?

752 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 14:39:12.81 ID:gZycxyd7
鬼の力に覚醒した京介が三姉妹とにゃんにゃんするんですね

753 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 14:43:29.19 ID:xnlCpvJ9
三女はガチロリだからやめとけよ
次女と背徳感セックスが望ましい

754 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 15:45:06.30 ID:fjCiHsdh
>>753
想像したらおっきした

755 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:39:32.76 ID:zXAlWH1h
・「京介と桐乃の流星観察」
・言うまでもなく京介×桐乃
・原作の一年ほど未来の話
・20レス程度

投下してもおkでしょうか?

756 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:46:53.17 ID:clfG1Mc0
問題ない。是非ともお願い

757 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:48:31.98 ID:zXAlWH1h
「京介と桐乃の流星観察」


八月の初旬。
俺は妹を流星観察に誘った。

「ペルセウス座流星群?」
「ああ、名前くらい聞いたことあるだろ?」
「……知らない」
「そうか?流星群の中じゃ結構有名なんだぜ?」
「だから、知らないって言ってるじゃん。バカにしてんの?」
「バカになんかしてねーよ。とにかく、一緒に見に行かないか?」
「……なんで?」
「あん?」
「なんであたしを誘うの?」
「兄貴が妹を誘うのに、理由がいるかよ」
「大学で気になってる女の子でも誘えばいいじゃん」
「生憎、俺の周りには一緒に星を観に行ってくれるような女がいなくてな」
「ふぅん。それで、妹のあたしを慰み者にするんだ?」
「ネガティブ思考も大概にしとけよ。
 行きたくないならハッキリそう言え」
「だ、誰もそんなこと言ってないじゃん」
「お前、さっきから、のらりくらりと質問かわしてばっかりじゃねーか。
 行くのか?行かないのか?どっちなんだよ」
「あたしは……兄貴がどうしてもあたしと一緒に行きたいって言うなら、行ってあげてもいいケド?」
「はぁ……俺はどうしても、お前と一緒に行きたい。どうだ、これで満足か」
「………………うん」
「日時は明後日の夜。車で迎えに行く。
 着く直前にメール送るから、玄関先で待っててくれ」

758 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:49:08.12 ID:zXAlWH1h
「……あ、あのさ。流星群は、あたしたちだけで観に行くの?」
「そのつもりだ。大所帯で観に行くようなモンでもねえしな。
 なんだ、誰か誘いたいヤツでもいるのか?」
「ううん。あやせも加奈子も、その日は予定があって忙しいって言ってたし……」
「そっか。じゃあ、明日の朝早いから、切るぜ。おやすみ、桐乃」
「うん。……おやすみ、兄貴」

携帯電話を充電器に挿し、ベッドに寝転がる。
耳を澄ませば、隣の部屋から桐乃の声が聞こえるような気がした。
でも、それは錯覚だ。
ここは安普請のアパートの一室。両隣に住まうは赤の他人。
今年の春から、俺は一人暮らしをしている。
大学への通学時間を短縮するため。
自由気儘な独身生活を満喫するため。
理由はいくつか挙げられるが、最後に背中を後押ししたのは、やはり、妹の存在だった。

――『どうして、何も言ってくれなかったの?』――

耳許で蘇る、湿った声。

――『嘘でしょ?ねえ、嘘って言ってよ』――

碧眼が潤み、涙が頬を伝う光景は、今でも瞼の裏に焼き付いている。

――『やだっ、取り消して!無かったことにして!』――

痣が残っているわけでもないのに、叩かれた胸が痛んだ。

759 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:49:43.07 ID:zXAlWH1h
家を出てから、もう四ヶ月が経というとしている。
時の流れを早く感じるのは、充実していた証だろうか。
大学、バイト、一人暮らし。
環境の変化に追われて、慣れることで精一杯だった。だから、過去を顧みる余裕がなかった。
違うだろ、と誰かが心の裡で言った。
順序が逆だ。お前は過去を顧みることを避けていた。だから、忙殺されることを望んだ……。

「……もう、許してくれてるよな」

独りごちて、目を閉じた。
その夜、俺は久しぶりに、ガキの頃の夢を見た。


時は流れ二日後。
バイトを早上がりさせてもらい、俺はその足で実家に向かった。
車は中古のトールワゴン。無数の擦り傷はご愛敬。

『あと五分で着く』

と桐乃にメールを送ると、

『お母さんとお父さんに会ってけば』

と返ってきた。
そこから一度も赤信号に遭わなかったために、返信することなく自宅に到着する。
遠目に見えた三つの人影は、お袋と、親父と、桐乃だった。

760 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:50:34.53 ID:zXAlWH1h
助手席側の窓を開けて、俺は言った。

「一家総出かよ。大げさだな」

お袋が言った。

「あんたねえ、夏休みくらいは顔を見せに帰ってきなさいよ。
 あたしはそうでもないけど、お父さんなんか京介が出てってから、ずっと寂しそうにしてるんだから」
「なっ、でたらめを言うな!」と親父が慌てて否定する。
「ほらね?」

親父は咳払いを一つ、衰え知らずの眼光で俺を射貫くと、

「……京介、学生は学業が本分であることを忘れてはいないだろうな」
「酒にもギャンブルにも溺れてねえよ」

もちろん女にも、な。

「健康には常に気を遣え。体が資本だ、若い内は特にな」
「へいへい」

いい加減、電話で耳にタコができるほど聞かされたセリフだ。
なんだその返事の仕方は、ちゃんと分かっているのか、と憤慨する親父を宥めながら、

「気を付けて行ってらっしゃい」

とお袋が桐乃の肩から手を離した。
コクリ、と肯く桐乃の様子は、まるで借りてきた猫のよう。

761 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:51:01.87 ID:zXAlWH1h
「くれぐれも危険のないようにな」と親父。
「あんたが変なことしちゃダメだからね」とお袋。

「分かってるっつーの。……行ってきます」

桐乃が乗り込んだことを確認し、俺は車を発進させた。
バックミラーに映る親父とお袋の姿が、どんどん小さくなっていく。
今度バイトの休みをもらって、ゆっくり帰省するか……。
そんな思いを巡らせつつ、俺は助手席の寡黙な妹に話しかけた。

「今日は随分とめかし込んでるな」
「……悪い?」
「悪かねーけど、お前、これからどこ行くか、ちゃんと分かってんのか?」
「知らない。ていうか、あんただって教えてくれなかったじゃん」
「星を見るなら、光害の少ない田舎と相場が決まってんだよ」

ファッションセンスを競い合う都会の街角じゃねえぞ。
それに、いくら夏とは言え、あんまり露出度の高い格好は感心しねえな。
大きく胸元が開いたシャツも、ピチピチ丈のミニスカートも、
ちょいと派手な動きしただけで、大事な部分が見えちまうぞ。

「うっさい、エロい目で見んな!
 あたしがどんな服着ようが、あたしの勝手でしょ?
 それよか、あんた、他に言うことがあるんじゃないの?」
「……髪、黒に戻したんだな」
「反応遅すぎ」

762 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:52:24.85 ID:zXAlWH1h
「気づいてなかったわけじゃねえよ。
 お袋からも電話で聞かされてたしな。
 にしても、いったいどういう心境の変化だ。
 俺は茶髪の時より、今の方が断然好みだけどよ?」
「べっ、別に、あんたを喜ばせるために戻したワケじゃないし!
 これからは清純系がウケるってプロデューサーの人に勧められたから、その通りにしただけ」

じゃ、俺はその人に感謝しねえとな。
ついでに清純系の流行が長続きしますように、と祈っておくか。
県道に入るためにハンドルを切ると、ふと、左手の甲に視線を感じた。

「……車の運転、もう慣れたんだ」
「そりゃあ、毎日使ってるからな。
 ついでに言うと、料理の腕もかなり上達したんだぜ」
「ドヤ顔で言うのやめてくんない?」
「毎日自炊してんだ、少しくらい自慢してもいいだろ。
 お前もモデル業に飽きたら、俺みたいにキッチンで働けよ。嫌でも腕が上がるぞ」

その前に客の苦情で辞めさせられなければ、の話だがな。
桐乃が作った料理の不味さは、実兄の極書つきだ。

「モデルの仕事に飽きるとか有り得ないから。
 ていうか、なんでこのあたしが暑苦しい厨房に立たなくちゃならないワケ?
 フツーに考えて、ウェイトレスでしょ?適材適所って言葉知ってる?」
「料理が出来ない女は、いい嫁さんになれねえぞ。
 花嫁修業だと思ってやってみたらどうだ」
「女の子は可愛ければ、結婚できるし。
 それに……料理ができなかったら、料理ができる男捕まえればいいだけじゃん」

763 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:53:37.11 ID:zXAlWH1h
なんつー安直な思考回路だ。
しかし桐乃が中学の頃と比べ、さらにワンランク上の美貌とプロポーションを手に入れているのは事実、
このまま順調に歳を重ねれば、成人する頃には男を侍らす小悪魔系女子になっていること請け合いである。
同じ母親の腹から生まれたってのに、俺とはえらい違いだよな、まったく。
懐かしの劣等感に溜息を吐きつつ、俺は言った。

「高校はどうだ。楽しくやってるか」

料理下手をからかわれたことをまだ根に持っているのか、

「お父さんみたいなこと、訊いてこないでよ」

と桐乃はつれないことを言う。

「妹の学校生活を気に掛けるのは、何も親父だけの特権じゃねえだろ」
「さっきみたいなアバウトな質問が、一番答えにくてウザいの」
「じゃあ、質問を変える。高校生入ってから、何人に告白された?」
「ちょ……いきなり何聞いてきてるワケ!?」
「可愛い妹を持つ兄として、至極まっとうな疑問だろうが。ほら、言ってみ」
「……手紙とかメールとかも合わせたら、十人くらいかな」

俺は堂々のゼロ人だというのに。
ここに顔面偏差値による格差社会の縮図を見た。

「で、返事はどうしたんだ?」
「全部断ったに決まってんじゃん」

764 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:54:07.75 ID:zXAlWH1h
桐乃は声を尖らせて言った。

「前に言ったよね?
 最低でも三つ以上年上の男じゃないと、あたしの眼中には入んないって。
 いきなり告白とかしないで、普通に喋りかけてくる男もいるケド……。
 下心見え見えで、相手にしてらんないっつーの」
「お前な……、その調子じゃいつまで経っても男の友達できねえぞ」
「できなくていい」

即答かよ。

「あの、さ……、仕事場でもそういうの、全然ないから。
 変なのが寄ってきても、先輩が追い払ってくれるし……あたしも隙見せないからね」
「仕事と言えば、この前、御鏡がお前の仕事ぶりを誉めてたぞ」
「御鏡さんと?この前って、いつの話?」
「先週、一緒に飯を食った時の話だ」
「御鏡さん、あたしのことなんて言ってた?」
「んー、そうだな……お前が毎回質の高い仕事して、エタナーブランドの売上に貢献してくれてる、とか、
 これからも良き仕事のパートナーとして、趣味を語り合える友達として、末永く付き合いたい、とか」
「……なんか、照れる」
「お前はどう思ってるんだ、御鏡のこと」
「どうって、すっごくいい人だよ。
 新作できたら、一番にあたしのところに持ってきてくれるし、
 仕事場で趣味を明け透けに話せる、唯一の人だし……」
「それだけか?」
「……言っとくけど、あの時みたいなことは、有り得ないから。
 御鏡さんには好きな人いるし、あたしにもそういう気持ちはない。これっぽっちも」

765 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:54:39.97 ID:zXAlWH1h
車中に微妙な沈黙が立ち込める。
ストレートに探りすぎたか、と後悔したそのとき、桐乃が砕けた調子で言った。

「てか、さっきからあたしが質問されてばっかりじゃん。
 兄貴は、大学どうなの?」
「お前、さっき自分が言ったこともう忘れてるだろ」
「あっ、ごめん。……兄貴は確か、地味子と同じサークルに入ってるんだよね」
「そのこと、お前に話したっけ?」
「お母さんが言ってた」

なるほど。

「でも、正直ありえなくない?サークル、文芸系でしょ?創作とかできんの?
 兄貴は運動系の緩いトコ、地味子は料理同好会にでも入ると思ってたんだケド」
「最初はお互い、そのつもりだったんだけどな、
 それじゃあ余りに接点が無くなるってことで、一緒に無難なところを選んだんだ。
 俺も麻奈実も、サークルじゃ専ら読み手に回ってるよ」
「ふぅん。……兄貴と地味子、学部は別々なんだよね」
「ああ」
「前から聞きたかったんだけど、なんで同じ学部に入らなかったの?」
「それは聞くな」

同じ地元の大学に通う――麻奈実との約束を果たすため、致し方なく取った安全策だ。

「他に、高校から一緒に行った人、いないの?」
「瀬菜の兄貴も一緒だぞ」
「その人の学部は?」
「麻奈実と同じところだ」

766 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:54:54.70 ID:ULskidjG
次女もガチロリだろw

767 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:55:22.86 ID:zXAlWH1h
「……兄貴、その人に地味子取られちゃうかもね」
「ハハ、なにバカなこと言ってんだ」

と笑い飛ばしつつも、それはない、と言い切れないのが苦しいところである。
『どうすれば田村さんの気を引けるんだ?』と赤城に泣きつかたのが先日の話、
なげやりに答えた『和菓子屋巡りでも誘えよ』の一言をあいつが真に受けていれば、
近日中には麻奈実から、『京ちゃんどうしよう、赤城くんからね……』と相談電話がかかってくるはずだ。
高二の時から麻奈実が気になっていた、と赤城に聞かされた時は心底ビックリしたっけ。
おかげで俺は今、恋のキューピッドなんて柄でもない役回りを押しつけられている。

「大学でも、あんたと地味子の関係、周りから誤解されまくりなんじゃない?」
「まあな。でも、その都度、ただの幼馴染みだってちゃんと説明してる。
 それに色眼鏡で見られるのは、中学、高校の時から慣れっこだしよ」
「……兄貴、サークルで、あんまり女の子から話しかけられないでしょ?」
「どうしてそう思う?」
「フツー遠慮するって。彼女じゃなくても、彼女みたいな女があんたの隣にひっついてたら」
「そうかぁ?俺も誤解されないように、ちっとは努力してんだぜ」
「例えば?」
「具体例を挙げるのは難しいな」
「ぷっ……全然努力できてないじゃん」

桐乃は小馬鹿にするように笑い、話題を変えてきた。

「ね、兄貴のバイト先って、大学から少し離れたところにある居酒屋だよね」
「ああ」
「今度、撮影で近くまで行くんだけど……、寄ったら、何かサービスしてくれる?」
「バカ、居酒屋は高校生が来るようなところじゃねーよ。
 そもそも、俺はキッチンで仕事してんだ、お前が来ても分からないと思うぜ」
「大きな声で兄貴の名前を呼んだら、聞こえるんじゃない?」
「恥ずかしいからやめろ」

768 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:56:34.37 ID:zXAlWH1h
「冗談だって。……ね、兄貴が一緒に働いてる人って、どんな人たち?」
「んー、厨房はおっさんと、俺と同い年か、少し上くらいの男ばっかだな。
 ホールは店長の趣味で、若い女の子で固められてる」
「……バイト上がりに、みんなでどこか遊びに行ったりするの?」
「いいや。毎日鬼のように忙しくて、上がる頃にはクタクタで、遊ぶ体力なんて残ってねえよ」
「ホールの子たちと、話したりはしないんだ?」
「事務的な会話ばっかりだ。キッチンの奴らとは、だいぶ打ち解けてるけどな」
「……あんたさぁ、知らない間に何かやらかして、ホールの子たちに嫌われてるんじゃないの?」
「なわけねーだろ。
 店長曰く、俺が入るよりも前から、ホールとキッチンは仲が悪かったんだとよ。
 ホール側からしたら、新人の俺に罪が無くても、キッチン側にいるってだけで、
 話しかけにくいところがあるんじゃねえ?」

と信じたい。

「ふぅん、そうなんだ。
 残念だね、大学でもバイト先でも女の子と話す機会がないとかさぁ」

残念がってくれている割には、声からまったく同情の念が感じ取れないんだが

「一昨日に電話で言ってたコト、嘘じゃなかったんだね」
「なんの話だ?」
「兄貴の周りには、一緒に星を見に行ってくれるような女がいない、って話」
「…………」

実を言えば、新しくできた女の知り合いには、誘えば肯いてくれそうな候補が二人いた。
サークルで、好きな作家が同じで話が盛り上がった同期の子と、バイト先で、帰りが一緒になったホールの子。
が、それを明かせば、桐乃が機嫌を損ねるのは目に見えている。

769 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:57:28.14 ID:zXAlWH1h
「どうしたの?急に黙り込んで」
「別に。運転に集中してただけだ。
 そういやお前、最近は沙織や黒猫と、連絡取ってるのか?」
「沙織は受験勉強で忙しいみたいだから、たまにだけど、黒猫とはほぼ毎日電話で話してるよ」
「ほー、ラブラブだな、お前ら」
「いいじゃん、友達なんだから」

黒猫が松戸市に引っ越して以来、桐乃と黒猫は、互いに素直になることを覚えたようだった。
呼び方も「黒いの」から「黒猫」へ、「ビッチ」から「桐乃」へと変わり、
さっきのように、逡巡無く相手を友達と認めるデレっぷりである。

「兄貴はどうなの?沙織や黒猫と連絡取ってる?」
「や、最近は全然だな。
 沙織はお前も言った通り、受験で忙しそうだから遠慮して、黒猫は……」
「……黒猫は?」
「俺さ、今あいつから着拒食らってんだよ」
「へ?それ初耳……なんで?
 あんた、何か黒猫怒らせるようなことした?」
「さあな。今度電話したときにでも、聞いといてくれよ」
「な、何その言い方。自分で聞かなきゃ意味ないじゃん。
 後であたしの携帯貸すから……」
「いいって」

知らず、語気が尖っていたのか、桐乃が萎縮する気配がした。

「……着拒されてんの、いつから?」
「四月の頭からだ」
「あっ……」

桐乃は少し考え、俺が黒猫から着拒されている理由に思い当たったようだった。

770 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:58:07.71 ID:zXAlWH1h
――『失望したわ。臆病で、懦弱で、弱虫で……なんて、意気地のない雄。
   わたしが拱手傍観を決めた理由を、あなたは何だと思っているのかしら?
   その貧相な頭が答えを出すまで、金輪際、わたしには連絡をしてこないで頂戴』――

最後の電話で浴びせかけられた、辛辣な言葉を思い出した。
車内に、再び居心地の悪い沈黙が降りる。
文字通り空気を入れ換えるべく、俺は運転席側の窓を開けた。桐乃もそれに倣う。
緑と水が豊かな土地のせいだろうか、真夏の夜にしては涼しい風が、肌に心地よかった。
周囲に人工の明かりはなく、道の両脇に広がる梨畑を、月影が静かに照らしていた。
舗装された山道を、安全運転で走ること十分。
小さなログハウスが見えてきた辺りで、俺は言った。

「着いたぞ」
「……看板に休憩所って書いてあったけど、ホントにここで合ってんの?」
「ああ。俺たちの他にも、星を見に来てる奴らがいるはずだ」

駐車場に車を停め、用意してきた荷物を、荷台から引っ張りだしていく。
手持ち無沙汰そうにしている桐乃に、俺は虫除けスプレーを手渡した。

「しっかり吹っ掛けとけよ」

シュッ、と三秒にも満たない噴霧音が聞こえ、

「はい。兄貴もすれば」
「……お前な、香水の匂いが消えるのと、ヤブ蚊に噛まれまくるの、どっちがイヤなんだ?」
「どっちもイヤ」
「ワガママ言うな。じっとしてろ」

俺はスプレー缶を振り、桐乃の無駄に露出した肌に、満遍なく吹きかけていった。
虫取りの前に、夜祭りの前に、花火の前に――今と同じことを、幼い桐乃にもしてやっていたことを思い出した。
自分でやれと言うと嫌がるクセに、俺がしてやると大人しくなるところは、あの頃とちっとも変わっていない。

771 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 17:58:50.37 ID:zXAlWH1h
「かけすぎ。ベタベタして気持ち悪い」
「大げさなくらいが丁度いいんだよ。すぐ乾くから我慢しろ」

俺は自分にも虫除けスプレーをかけ、荷物を抱えてログハウスの裏手に回った。
裏手は斜面が横にせり出した、小さな平地のようになっていて、
既に結構な人数の先客が、流星観察の準備に取りかかっていた。
望遠鏡も星図も持たない俺たちは、ブルーシートを引き、蚊取線香を焚いて、それで準備完了である。
靴を脱いで寝っ転がる。
ややあって、俺から体一つ分を空けて、桐乃が寝転がる気配がした。
息を呑む音が聞こえ、隣を見なくても、桐乃が星空に見入っていることが分かった。

「こんなに綺麗な星空見たの、生まれて初めてかも……」
「いいトコだろ。中々の穴場らしいぜ」
「どうやって知ったの?Beegle?」
「学部に、高校で天文学部だったヤツがいてな。そいつから仕入れた情報だ」
「じゃあ、その人も、ここに来てるワケ?」
「いんや、そいつは別の場所で見るそうだ。ここは初心者向けなんだとよ」
「――あっ」

不意に桐乃が、空の一点を指さして言った。

「流れ星!ねっ、兄貴も見た?今スーッて流れてった!」
「見逃した」

俺はそもそも、夜空を見ちゃいなかった。
星空に魅入る桐乃の横顔を眺めていた。
見逃した理由を明かさずに、俺は言った。

772 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:00:01.82 ID:zXAlWH1h
「流星群は、まだまだこれからだぜ。
 一時間に三十から六十は星が流れるらしいからな。
 運が良けりゃ、一分に一つ見られる計算だ」
「そうなんだ。……じゃあ、お願いし放題だね」
「……くっ」
「なんで笑ってんの?あたし、何か変なこと言った?」
「やっぱり桐乃は、桐乃だと思ってな」
「い、意味わかんない」
「ガキの頃にも、親父に連れられて流れ星見に行ったこと、覚えてるか?」
「覚えてない」
「そっか。あの時のお前、小さかったもんな。
 で、流星観察に行く前から、お前は大はしゃぎしてたんだよ。
 親父にたくさん流れ星が見られるって聞かされて、紙に願いごとを山ほど書いてた」
「……こ、子供の頃の話でしょ。
 流石に今は、流れ星が流れる間に三回願いごとを念じれば、それが叶うなんて話、信じてないし」
「そうか?別に信じてても、俺は笑ったりしねえぞ。
 せっかくなんだし、あの日のリベンジを果たせばいい」
「リベンジ?」
「親父に連れてってもらった時は、結局一回もお願いが成功しなかった、って大泣きしてたんだぜ、お前」
「もうっ、昔の話蒸し返すの、やめてくんない?」

桐乃が八重歯を剥いてこちらを向く。
視線が交錯し、手が触れた。が、それも一瞬のことで、

「…………」

威勢を失った桐乃は、再び夜空に視線を戻す。

773 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:00:39.37 ID:zXAlWH1h
横顔を見ていたことがバレた俺も、夜空に視線を移した。
一口には表現できないほど、素晴らしい情景がそこにはあった。
深い暗黒を背景にした、無数の星の瞬き。
夜空には一筋の雲霞さえ見て取れず、月は主役の座を譲るかのように、端で鳴りを潜めている。
北の空に、黒地のキャンバスにナイフで切れ込みを入れたかのような、白い筋が見えた。
次に星が流れたら、話を切り出そうと決めていた。

「桐乃」
「なに?」
「話があるんだ。そのままの姿勢で聞いてくれるか」
「……その話をすることが、あたしを流星観察に誘った理由?」
「ああ」

四ヶ月ぶりに電話がかってきて、いきなり流星観察に誘われて、戸惑ったよな。
でも、俺はお前の目を見ながら、この話を最後まで話し終える自信が無かったんだ。

「ごめんな、桐乃」
「…………」
「お前に相談もせず、勝手に家を出て、悪かった」
「…………」
「あの時の俺は、お前に――」

告解は、零下の声で遮られた。

「やめてよ」
「桐乃……」

774 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:01:40.80 ID:zXAlWH1h
「なんで兄貴が、あたしに謝るワケ?
 その言い方だと……、まるであたしが、傷ついてたみたいじゃん。
 あたしが兄貴のこと、ずっと恨んでたみたいじゃん」
「…………」
「あたしは……兄貴が出てって、せいせいしてる。
 壁が薄いの、気にしなくて済むし、
 友達だって好きなときに呼べるし、
 楽なカッコしてても、お父さん以外に文句言われないし……それに……」

その言葉が嘘で、強がりだということを、俺は知っている。
桐乃は傷ついていたし、俺のことを恨んでもいた。
なんでそう言い切れるかって?
逆に言わせてもらうが、俺が何年、桐乃の兄貴をやってると思ってる。
それに何より、俺が家を出るときに桐乃が見せた涙が、全てを物語っていた。

――『勝手に行くなっ、バカ兄貴っ!あたしを……あたしを一人にしないでよっ!』――

そうだ。あの時の俺は、本当に勝手で、独り善がりな大バカ野郎だった。
距離を置くことが、妹の兄離れのための、最良の選択だと信じていた。
でも、違ったんだ。やっと分かったんだ。
溢れそうになる思いを押さえて、俺はもう一度言った。

「ごめんな、桐乃」
「だから、やめてってば。
 もう、あたしに気を遣わなくていい。優しくしてくれなくていい。
 兄貴はさ、あたしが近くにいるのが、イヤだったんだよね?
 あたしの気持ちが迷惑で、気持ち悪かったんでしょ?
 あたしと一緒にいるのが堪えられなくて、それで、家を出たんでしょ?」

775 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:02:18.63 ID:zXAlWH1h
脳裏に、桐乃に告白された時の情景が浮かぶ。
大学の合格祝いに、家族で外食に出かけた日の夜。
胸に重みを感じて目を開けると、目の前に桐乃がいた。
暗闇の中、思い詰めた妹の表情を仰ぎ見ながら、
俺は初めて、桐乃が人生相談を持ちかけてきた時のことを思い出していた。
それから長い時間をかけて、桐乃は言葉を紡いでいった。
小さい頃から、俺のことが好きだったこと。
冷戦を隔てて、関係が修復されてからは、兄としてではなく、男として好きになったこと。
思いの丈を語り終えた桐乃に、俺は返す言葉を持たなかった。
沈黙を貫く俺の頬に、一粒の熱い雫を落として、桐乃は部屋を出て行った。
翌日、俺たちは何事も無かったかのように接した。
しかしその日から、俺は一人暮らしのための準備を整え始めた。
桐乃に悟られないよう、こっそりと……。

「あんなこと言うなんて、どうかしてた。
 フツー有り得ないよね、兄妹で……好き、とか
 あたしも後から冷静になって、自己嫌悪で死にそうになってたんだ」
「…………」
「あはっ、あんたからしたら、超キモイよね。
 いくらシスコンでも、ドン引きだよね。
 だからさ、謝らなきゃいけないのは、あたしの方。
 兄貴がいっぱい優しくしてくれて、それを勝手に、
 兄貴もあたしのことを好きなんじゃないかって勘違いした、あたしが……ひくっ……悪かったの……っ……」

俺は言った。

「勘違いじゃねえよ、桐乃」

776 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:03:41.61 ID:zXAlWH1h
「えっ」
「……俺も、お前のことが好きだった。
 お前と仲直りした二年前から、妹じゃなくて、女として、お前のことを見てた」

はっきりと自覚したのは、つい最近のことだ。
俺はずっと、俺は桐乃のことが妹として好きなのだ、と自分に言い聞かせていた。
その自己暗示に、桐乃の告白がヒビを入れた。
漠然と、家を出なければならないと感じた。
自分の臆病さを、桐乃のせいにした。
これ以上桐乃に好かれないために、桐乃から離れなければならないと思った。
でも、実際は違ったんだ。
俺が本当に恐れていたのは……俺が本気で、桐乃を愛してしまうことだった。

「兄貴……」

手が触れ合い、指が絡んだ。
洟を啜って、桐乃は言った。

「あたしね……今でも、兄貴のことが好き」
「そうか。じゃあ、俺たちはめでたく両思いだな」

ぎゅ、と桐乃は俺の手を握りしめながら、

「でも、さ……やっぱり兄妹で恋愛とか、おかしいのかな」
「世間様から見りゃあ、異常だろ。
 でも、二年前、お前に人生相談を受けるまで、俺とお前は他人同然だった。
 そっから仲直りして、ガキの頃みたいな兄妹関係を再開する、っていうのが、土台無理な話だったんだよ」
「あたしが兄貴のことを男として見るようになったのも、仕方ないことだったってコト?」

777 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:08:13.61 ID:zXAlWH1h
「そういうことだ」
「ぷっ……変な慰め方」
「俺の溢れんばかりの魅力のせいだ、なんて言っても馬鹿にするだけだろ、お前」
「馬鹿になんてしない。
 だって、あたしは、あんたが兄貴だったから、兄貴のことを好きになったの。
 趣味を守ってくれて、友達を作るのに協力してくれて……」
「あーあー、それ以上言うな」

真面目に返してくるとは、予想外にも程がある。

「……あたし、これから週末は、兄貴のアパートに行く」
「どうやって?結構な距離があるぞ」
「あんたが車で、あたしを迎えに来るの。当然でしょ?」
「別に構わねえけど、俺の部屋に来て何するんだよ?」
「何って……掃除とか、料理とか?」

料理、という単語に不穏なものを感じつつ、俺は言った。

「なんか通い妻みたいだな。お前って尽くすタイプだったのか」
「う、うるさい」
「それにお前、俺の部屋に来てやることで、大切なことを忘れてるぞ」

桐乃の体が強張る気配があり、

「俺が家を出る時に、お前、こっそり段ボールにエロゲ詰めただろ。
 あれ、忙しくて全然手を付けてなかったんだ。一緒にやろうぜ?」

はぁ、と溜息を吐く音が聞こえた。

「……うん。あと、シスカリの新作、持ってくね。久しぶりに対戦しよ?」
「おう」
「でも、一人暮らしの大学生の部屋に、超可愛い女子高生が通ってたら、変な噂が立っちゃうかも」
「問題ねえよ。表向きは仲の良い兄妹だ」

778 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:11:09.63 ID:zXAlWH1h
俺たちは同時に笑い、

「あっ」

同時に空いている方の手で、夜空の一点を指さした。

「見た?」
「見た」

それからしばらく、夢中になって流れ星を探した。
童心に還って、見つけた流れ星の数を競った。
三十も数えた頃だろうか。

「……できたっ」

と、桐乃が嬉しそうに言った。
何ができたんだ、と尋ねると、

「今、流れ星が消える一瞬の間に、心の中でお願いを言えたの。一回だけ」
「一回だけなら、叶う確率は三分の一だな」
「……あと二回、別の流れ星に一回ずつ祈れば百パーセントになるし」
「どんな願いごとをしたんだ?」
「ひ、秘密」
「いいじゃねえか、隠さないで教えろよ」

隣を見る。
蒼白い星明かりの下、桐乃は顔を真っ赤にして言った。
その声に、今のように夜空を見上げた、幼い桐乃の声が重なった。

「兄貴と、ずっと一緒にいられますように……」
『お兄ちゃんと、ずっといっしょにいられますように……』


おしまい!

779 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:14:09.16 ID:nWhrAXzx
>>778
超GJ!
いいわ〜こういうの
ものすごく好みだわ〜

乙っした!

780 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:19:10.39 ID:clfG1Mc0
>>778
GJでした
こういうちょっと切ないのが読みたかったんだ
やっぱこの兄妹大好きだわ


781 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:28:19.45 ID:SvFqUu24
桐乃スレでやりゃいいような

782 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:30:02.64 ID:zXAlWH1h
桐乃派の俺は、やっぱり桐乃×京介を書いてる時が一番楽しい

>>740にレスを返して下さった方、ありがとうございました
次回のSSを書く際に、参考にさせて頂きます

783 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 18:58:48.09 ID:BJfInf0t
超乙

桐乃派ってことは偽の人?
もうトリつけてよ
あとここに投下した作品示してくれない?読むから

784 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 19:14:37.84 ID:4iuW5G5U
エロ…

785 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 19:32:00.06 ID:xnlCpvJ9
おっけー、その調子で黒猫妹の話も書くんだ

786 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 19:35:33.94 ID:ULskidjG
桐乃すれ?

787 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 20:06:18.64 ID:5ZFyBHei
お疲れ。
何か気になる設定も見え隠れしていていろいろ想像してしまった。
そうなると登場していない人達の動向も気になってしまってひきつけれてしまった。

788 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 20:08:21.20 ID:E0JM+QNK
>>778
読みやすく、すがすがしい読了感だ。情景を文で表現するとは相当な書き手とみえる。
ただ2点ほど注文。黒猫は本当に必要だったのか?
説明不足で意図が読めんし、落としたあとのフォローがない。

あとは京介だな。簡単に落としすぎじゃないか?
家を出て落ち着くまでの葛藤なり、その上での妥協点なんかを入れれば深みが増したんじゃないかと思う

789 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 20:18:03.73 ID:TIcQVsCT
>>778
GJ
欲を言えばエロパロ的ななにかが欲しかったな
そこが桐乃スレでって言う奴の気持ちだろ

790 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 20:21:42.27 ID:ky7O97oA
8巻後の設定なら京介呼びを入れもよかったんじゃないかな
でも乙であります

791 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 20:23:29.04 ID:F1NdDUzT
批評して書き手を追い出す作戦とか何番煎じだよwww

792 名前: ◆Ec95DXH7wk :2011/07/20(水) 20:34:47.72 ID:zXAlWH1h
>>783
このスレでは
「もしも京介が黒猫の告白を断っていたら+続き」
「あやせと京介の夏祭り」
「もしも京介と黒猫が円満な恋人生活を営んでいたら」
「京介と桐乃の流星観察」
の四つ(五つ?)です
トリは結構昔からこれですが、面倒なので外しがちです

>>788
黒猫が京介にキレて着拒したのは
『わたしが桐乃のために身を引いたのに京介が桐乃から逃げてどうする!』的な思惑があって
この話の後、きちんと仲直りの予定です
一人暮らしを始めてからの京介の葛藤については完全に描写が足りず、ごめんなさい
指摘、ありがとうございました

あと、今回は微エロさえなくてすみません……
エロパロなのに雰囲気を優先させすぎました

793 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 20:55:43.99 ID:E0JM+QNK
まさかの続編宣言大いに期待


794 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 21:16:16.12 ID:TIcQVsCT
>>792
「もしも京介が黒猫の告白を断っていたら+続き」
この続きをずっと待ってるんだが。全裸で

795 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 22:10:44.86 ID:BJfInf0t
>>792
サンクス 読むわ

796 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 22:37:29.98 ID:LNplvvXm
すごい
ホントすごい
読んでてジーンときた…
これは名作だ

797 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 22:38:54.53 ID:IFI8p20D
>>792
長いあとがきは邪魔だからやめろ

798 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 22:41:55.21 ID:LNplvvXm
>>792
続き期待してます!
二人はくっついてしまったけど黒猫は巻き返せるのか?w

799 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 23:07:41.96 ID:/FOiTXw5
>>792
まとめ人としては、トリ付けてくれると非常にありがたかったりする。
作品は今から読ませて貰います。とりあえずおつです。

800 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 23:28:15.32 ID:tzCbyDrT
全裸で待っているなんて、せっかくの切ない系の
感動的な話を台無しにすんなよ。糞ったれが。


801 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 23:39:27.43 ID:NiACaA+J
次スレだな

802 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 23:50:36.92 ID:G2jqlVxN
うむ

803 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 23:55:44.91 ID:ZHTuTdKI
やっぱ黒猫はかませ系の役がしっくりするな、>>634のような京介とイチャこくSS読んでも違和感が強くて仕方なかったし

804 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/20(水) 23:59:55.75 ID:IFI8p20D
はよ立てとけよ

805 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/21(木) 00:01:46.93 ID:1pBVnLr5
あんたの中ではな

>>793
こういう切ない系の話は大好物なんでがんがん書いちゃってください
エロは此の際置いといても作品のイメージを優先していいと思う、無理にねじ込むと違和感出るからね

806 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/21(木) 00:16:46.34 ID:5YJ5Cfuk
あーあー痛々しい
こういうのでSLが生み出されていくわけか

807 名前:名無しさん@ピンキー:2011/07/21(木) 00:33:06.58 ID:H8zNco2r
なんでその名前が出てくるの?
無理やり臭が半端ない


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