頑張る女達/師匠と弟子/盟友の誓い ◆C1mr6cZSoU



「………つまり、近藤さんや土方さんが私を殺した後に、私の屍を用いて藤堂君と毛内君と服部君を殺したと」
「間違い無いです。私も油小路の事件は本で読みましたから」

伊東と珠姫は適当な店前に置かれている椅子に座りながら話していた。
二人は知っていた。
互いの情報交換の末に、別の時代から呼び出されたことを。
珠姫が理解するのはそれほど難しくなかった。
元よりアニメなどでSFに関する知識が豊富な為、受け入れ難くも何とか理解は出来る。
問題は伊東だ。
SFやノンフィクションに関する知識が無いため、すぐには受け入れられない。
だが、実際に死んだはずの自分がここに居る。
生きる時代がまるで違う過去の剣豪の名も人別帳を見れば記されていた。
それに目の前の川添珠姫は部外者では知りえない幾つもの情報を持っていた。
それでは流石に伊東も信じざるを得ない。

「そうですか。では私が篠原君達の言葉を信じなかったせいで………毛内君達には悪い事をしました。服部君だけ
ここにいるようですが……私のように生き返ってここにいるのでしょうか」
「分かりません。だけど……多分」
「………」

伊東は珠姫の問いに神妙な表情を浮かべている。

(私のせいで……やはり近藤と土方を信じた私が間違っていたのだろうか。しかしあの夜の近藤の言葉には嘘は……
私が甘いのか。だがそれでも………)

伊東は迷っていた。
自身の考えを通した結果、自分だけでなく、友の命まで奪ってしまった。
武士のプライドを守るのなら、近藤と土方には仇討ちをすべきだろう。
しかし、それが私を慕った仲間への信の意味での弔いとなるのか。
それで喜んでくれるだろうか。
答えの出ない自問自答を伊東は繰り返していた。

「………」

川添珠姫も次の言葉に迷っていた。
伊東の表情からは、推し量れない苦悩が伝わってくるからだ。
武士の武士としての苦悩。
女である珠姫には口出す事さえ躊躇われた。

しかし、そのような時間は長くは続かない。
二人の前にある男が現れた。

「ほう、若い男女二人連れか」

渋く低い声だ。
その声に二人は同時に振り向く。

「………始めまして。伊東甲子太郎と申します。こちらの女性は川添珠姫。それで私達に何か御用でしょうか」

伊東は椅子から立ち上がり、丁寧に挨拶をする。
まだ自らの今後に答えは出てはいないが、目上の人物に対して礼節を失わないぐらいの余裕はまだ持っていたのだ。

「ふふふ。そう丁寧に名乗られてはこちらも名乗らないわけにはいかぬな。ワシは塚原卜伝。さて伊東甲子太郎とやら。
俺の相手をしてもらおうか」

木太刀を抜くと伊東に突きつけ、卜伝は静かに告げる。
決闘の挨拶である。

「…………ご老人。あなたもこの殺し合いに乗っているのですね」
「当たり前だ。まだまだワシは若い者に後れを取るつもりは無い。ましてや貴様のような頭でばかりものを考え、
延々と悩み続けるように奴にはな」
「ぐっ!」
「図星か。貴様の顔はまだ悩みが消えていない顔だ。つまり貴様はワシには勝てない。なぜなら俺は悩み等には無縁
の男だからな」

卜伝は瞬く間に伊東との間合をつめる。
速さ自体は決して速いわけではない。
ただ、卜伝は一寸の隙も見せず、自身の間合いにまで入っていた。

「ぐっ」

伊東は咄嗟に後ろに飛びながら、木太刀の直撃を避けつつ刀に手を伸ばす。
しかし――

「遅いっ!!」

標的まで最短の軌道を描きながら、卜伝の一撃が繰り出された。





一方その頃。

坂本龍馬と外薗綸花は帆山城内天守閣から階下にまで降りている。
綸花は坂本龍馬の名に違和感は覚えていたが、顔は写真とほぼ同じ。
それにあの場には明らかに現代人とは違う風貌の人間がたくさんいた。
第一自分の街にも、普通とは違う現象など日常茶飯事なのだ。
死んだ姉が幽霊になって現れる。偽ギフトを使い、ミイラ男や吸血鬼を相手に修行を行う。
得体の知れない化け物と戦う……etc。
それだけの出来事を経験したのだから、集団タイムスリップが起こらないとも言い切れない。
綸花は既に現実を受け止めて、次の行動に移っていた。

「ヘイガール!一体何を探しとるんじゃ?もうナイトも深いんじゃから、スリープして城内探検はアフターモーニングでは
ノーグッドなのか?」

相変わらずの英語と方言ごちゃ混ぜの言葉使いの龍馬を背に、綸花は城内を探索していた。

「なあ、ワシもそろそろスリーププリーズなんじゃが……」
「はい。それは分かりますが、一応城の中も調べておいた方がいいと思います。万が一、夜に敵が襲ってきた場合、
城の間取りを把握しておかなければ、すぐに追い詰められてしまいます。応戦するにしても撤退するにしても、城の
間取りを把握していなければ危険すぎる。それに、天守閣に何時までも留まるのも得策ではない。入り口が一つだけ
でしたので、複数で囲まれた場合袋小路に陥ってしまう」

綸花は龍馬の苦情を遮るように、丁寧に説明する。
しかし、龍馬はそれを聞いていない。

「クレバーな女子じゃな。しかしそんな心配は要らないぜよ。ワシがいるんじゃなからビッグシップにライドオンした
つもりでノンビリしてたらいいんぜよ」
「は、はあ」

綸花はそんな龍馬のゆとりを持った態度に少々の不安を覚えてしまう。
だが綸花は

(……私がしっかりしなければ)

と自身を強く持ち、更に下へと下っていく。
龍馬もその綸花の後を追いながら、階段を下っていく。
そして二人はしばらくして一番下まで降りる。

「どうじゃ、一通りルッキンコンプリートしたんじゃないんか?……おっ、キッチン、何かデリシャスな物は……」
「あっ、待ってください。一通り見ましたけど、まだ出口の数の確認を………えっ!?」

綸花は台所へと消える龍馬を目で追いながらも、城の入り口まで顔を出す。
そして、前の方へ目を向けると表情が凍るような感覚を覚える。
目の前に、一人のやせ細った老人が立っていたのだ。

「あの………大丈夫でしょうか」

綸花は少々違和感を覚えつつも、思わず老人に右手を差し出す。
目の前の老人は剣を持ってはいるが、足元はふらつき、すぐに適切な治療を施さないと危険なのは火を見るより明らかだ。

「さあ、私の手を…えっ!?」

綸花を手を差し出すが、その直後、老人の紅い双眸が見開かれ、綸花の右手首より先は無くなっていた。

「おっ、おっ……おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「はっ!?くっ」

綸花は衝撃に呆けているが、老人が大声で叫びながら刀を振りかぶっているのを確認し、すぐに飛び退く。
そしてその直後、鋭い斬撃が綸花の寸前まで立っていた場所に振り下ろされた。

「わっ、私の手は!?」

綸花は体勢を立て直しながら、斬り落とされた右手の状態を確認すべく、左手で右手首を触る。
すると、意外な感触が返ってくる。

「えっ!?」

右手は傷一つ無く、綺麗なまま綸花の腕と繋がっている。

「どうして?」

綸花は思わず困惑気味な表情を浮かべる。
だが理由は簡単である。
眼前の老人は師岡一羽。
卜伝の弟子にして一羽流の開祖である剣の達人。
その剣気は病床の身でなお、油断しきっている状態の綸花に幻覚を見せるぐらいの力強さがあった。

「勝つ!俺は勝つ!!俺は、俺はあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
「くっ!!」

一羽からは強烈な剣気が溢れ出る。
既に身体は禄に動かず、純粋な剣の腕ではこの殺し合いに参加した誰よりも劣っているであろう一羽が、
この場に選ばれた理由はただ一つ。
純粋で、尚且つ狂気とも言える、強大すぎる剣気だった。
その剣気の前に更に綸花は数歩後ろへと後退する。

「オー!マイガール綸花。一体何をしてるぜよ!出口の確認ばかりはノーバッド!今夜はエキサイティングナイトを
楽しむんだぜ!!」

そしてその綸花の耳に、まずありえないノリの言葉が入る。
つい先ほど台所へと消えていた坂本龍馬である。
彼は綸花の傍まで来ると、そこでようやく、目の前の男に気付く。

「オー!モンスター!!まさか人間以外が居るとはベリーサプライズ」
「言ってる場合じゃありませんよ。どうやらこの人………とても強い」

能天気な龍馬に注意を促す。
だが龍馬はそれを無視し、綸花の前に立ち、刀を抜く。

「俺は………俺は!!!」
「どうやら……本気を出さんといかんようだ。ちょいと綸花は後ろにおれ。手は出さんでいい」

龍馬は今までと違う声色で綸花に背中を見せ、目の前の男を見据えると、刀を構え眼光鋭く睨み付ける。
それを見ると、一羽も真紅の双眸も一際強く輝く。
一日の大半を床に伏せる脆弱な身とは思えぬ、強烈な殺気が一羽には漲っていた。

「俺はお前を殺す!!俺は自分の最期は勝利で飾る!!!貴様には負けん」
「うるさい奴だ、病人はさっさと寝ていろ!!」

一羽と龍馬は同時に駆け、間合いに入ったと同時に二つの剣が交差する。
鳴り響くは真剣の響きあう音。
甲高い高音と共に、場を落ち着けるように二人は一度距離をとる。

「やりやがんな。どうやら、舐め取ったらやばいっちゃね」
「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

だが龍馬の意とは反対に一羽は休む気は無い。
否、休めないのだ。
一度でも動きをやめれば、立ち上がれない。
そんな予感がする一羽はひたすらに、前へ、前へと走り続ける。

(勝つんだ。俺は勝つんだ!!こんな男に負けられるか!!絶対に、絶対に!!)

一羽は何度も自身を鼓舞し、刀を振りぬく。
鋭い一撃が龍馬を襲う。

「くっ、やばいぜ。この野郎!!」

龍馬はその一撃を捌くが、一羽の攻撃は一撃では終わらない。
複数に見えるような早すぎる連撃に徐々に龍馬は押され始める。

「がああああああぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!」

凄まじい叫びと共に、一羽は速さ重視の連撃から重さに重点をシフトした一撃が繰り出される。
その急なリズムの変化はフェイントとなり、龍馬の胸部に迫る。

「ぐっ!」

龍馬はそれを咄嗟に刀の鍔で受け止め、なおかつ後ろに飛ぶ事で衝撃を逃がす。
だが、完全に衝撃を逃がしきれず、バランスを崩しながら後ろに倒れてしまう。

「勝った、勝ったぞ、俺はっ!!!」
「ちっ、やべー、………おい綸花!!逃げろ!!!ハリーアップ!!!!!!」

一羽は龍馬にトドメを刺すべく迫り来る。
龍馬は着地の際に足を少し捻ったのか、立ち上がるのが遅れる。
そして、何かを察したのか、いつものような英語交じりで綸花に逃げろと告げる。
だが、その言葉が耳に入ると、綸花は逃げる事が出来なかった。

「出来ません。龍馬さん。私が………やります!!」

綸花は龍馬と一羽の間に入り、居合いの構えを取ると身体に力をこめる。

「何するんじゃ。綸花っ、そんな死にたいのか!!」
「黙ってください。ここは私が………」
「邪魔をするのか!!だが関係ない、二人纏めて殺す!!」

強烈な殺気を纏った一羽が迫り来る。
歩みは決して速くないが、一切の隙が無い。
並の者であれば失神してしまいかねない殺気が近づいてくる。
そしてそれを前に、間合いに入る約三メートル手前。
綸花は刀の柄を強く握り締める。

「はあっ!!!」

そして風のごとき速さで抜刀。
綸花必殺の奥義、七つ胴落としである。
強烈な一筋のカマイタチを起こし、その威力は一列に並ぶ七人の人間の胴を両断するとまで言われ、
凰爪流の後継者のみに伝えられる最強の無比の奥義である。
それを綸花は生涯初めて、人間に対し放った。

(……私が…………私がやらなければ龍馬さんも私も死んでいた。仕方が無かった。相手は……
私達を本気で殺す気だったんだから)

人を殺めた事実を必死で自分に言い訳しながらも、自身がやった事に目を背けないように、目を閉じず前を見据える。
だが、一羽は倒れずに踏ん張っていた。
胸部に赤い線が走り激しく出血を起こしている。
左手の三本しかない指も二本が吹き飛び、親指一本を残すのみだ。
しかし、それでも一羽は倒れていない。

「がっ、ぎっ、おっ、おっ、おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

一際大きな咆哮と共に、一羽は綸花を、その後ろに居る龍馬をにらみつける。
一羽は既に半ば正気を失っていた。
勝つ。
この言葉のみを頼りに、痛みと苦しみを全て凌駕して、純粋武士としての闘争本能のみが一羽を突き動かしている。
そしてその闘争本能は、七つ胴落としの衝撃に自身の刀を正確に重ね合わせ、衝撃を大幅に緩和してしまったのだ。
その結果、本来起こるはずの惨劇は、既に使い物になっていなかった指二本と胸前面への切り傷のみに留まる。

「バカなっ!?」

綸花はあまりのショックですぐに反応出来ない。
そこを一羽は逃さない。

「ぐおおぉぉぉぉぉっっ!!」

打ち下ろすような斬撃。
それを前に、ようやく綸花は意識を戻すが、完全に出遅れていた。

(しまった!)

思うが身体は体勢的に避けるのは間に合わない。
完全に一羽の剣が綸花を捉えている。
だが、

「りんかぁっ!」

その叫びと共に、綸花は襟首から後ろに引っ張られる。
首が一瞬絞まり、息苦しさを感じるが、それと引き換えに紙一重で一羽の剣は空を切る。
そしてそのまま刀が床にめり込むのを見ながら、綸花は床に尻餅をつく。

「ギリセーフじゃ。傷はナッシングじゃな綸花」
「えっ……は、はい」

綸花は顔に触れて出血が無いのを確認してから答える。
そして龍馬は綸花と共に立ち上がる。
だが、それとほぼ同時に、一羽も刀を床から引き抜いて構える。

「どうやらここは戦線離脱がベストじゃ、逃げるぞ」
「でも……」

龍馬の言葉を聞いてから、綸花は一羽を見る。
既に刀を構え、殺気を迸らせながら近づいている。
背中を見せれば確実に斬られる。
そんな確信じみた予感があった。

「こんな時の為にさっき台所から拝借しといたんじゃ」
「えっ、それって」
「バケモンはこれでも喰らっとけ!イッツァソルトアタック!!」

龍馬はそう叫ぶと、塩が入った包み紙を一羽へと投げつける。
それを一羽は超高速の一太刀で両断し、結果的に塩が両目へと降り注ぐ。

「あっ、がああああああああっ!?」

突然視界がふさがり、思わず右手の腕で目をぬぐう。
その隙を龍馬は逃さない。

「綸花、逃げるんじゃっ!」
「はいっ」

龍馬は綸花と共に全速力で走り出す。
もっとも龍馬は先ほど足を捻ったのがあり、足から痛みが走る
しかし、その痛みをこらえ、綸花に悟られないように走る。
背後からは一羽が視力を取り戻し、追ってくる気配がある。
しかし初動で大きなリードを取ったのと、一羽の足が決して速くないのがあり、プレッシャーは決して感じない。
むしろ距離はドンドン離れていく。

「よしっ、城を出たぞ。このまま逃げ切るんじゃ!」
「はいっ!」

龍馬と綸花は出口から脱出し、このまま逃げ切る。
そのはずだった。

「なんじゃっ!」
「くっ、敵!?」

出口にさしかかったところで、歩みを止める。
外からこちら側へと、接近する気配を感じ取ったのだ。
二人は刀を構えて、近づいてくる気配に備える。
するとそこから姿を現したのは――――





場所は城下町の一角に戻る。

男と男の熱い死闘がそこでは繰り広げられていた。
いや、既に大勢は決している。
塚原卜伝のキレと力強さを併せ持った攻撃を前に、既に伊東甲子太郎は敗勢間違い無しの域まで来ている。

「どうした?若いだけがとりえか?その程度でワシに勝つつもりか!」
「っ!」

卜伝の突きを、咄嗟に受け流すも威力を殺しきれず浅くも強い一撃が左胸を突く。
余りの衝撃に伊東は後退しつつも倒れこんでしまう。

「ぐっ」

伊東は激痛に顔をしかめている。
その上既に伊東は胸と両腕に幾つもの打撲を受けている。
既に伊東と卜伝では技量での力差は明らかだった。
その上、伊東はまだ心のどこかで雑念が残り、全力を出し切れずにいた。
これでまだ五体満足でいられるのは、自身が太刀で相手が木刀。
この武器の差でしかなかった。
刀身をぶつけ合えば、卜伝の木刀は両断される。
その為に卜伝は刀身同士の接触をさけつつの攻撃を余儀なくされる。
その為に、これだけの長時間の戦闘を続けられる事が出来た。
でも、その長い死闘も終止符を迎えようとしていた。

「つまらないぜ若いの。ワシを相手にまるで魂が感じられない。その程度でよく天下一を掛ける戦いに参加出来たな」

卜伝は勝利を確信した表情で近寄る。
そしてそれを、今の今まで珠姫は黙ってみていた。
男と男の勝負を邪魔してはいけない。
その考えから手出しせずにただ見守っていた。
だが、それもガマンの限界だった。

(駄目だ。このままでは伊東さんは殺される。確実に殺される。もう………黙って見てはいられません。………お父さん。
珠姫は……………やります!!!)

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!!!!!」
「んっ?」
「珠姫さんっ!?」

珠姫は決死の決意と共に、自分を鼓舞する熱き咆哮を叫びながら木刀を構える。
それに卜伝と伊東の注意も向く。

「でやあああぁぁぁっっっ!!!」

しかし珠姫は構わず卜伝に向かい走り出す。
だがそれを前に卜伝は怒りの表情を見せる。

「けっ、女が土俵に上がるとは舐めてんのか!」

卜伝は感情的な言葉と共に、木刀を珠姫に向けなおし、下から弾き上げるべく下段に構える。
そしてそこに珠姫は得意の一撃を繰り出す。
おおよそ卜伝の想定を大幅に超過する速さで……。

「突きいいいいいぃぃぃぃぃっっっ!!!」
「っ!!?」

卜伝の喉に綺麗に突きが決まる。
そしてこれには卜伝らしからぬ油断があった。
伊東との戦闘での疲労ではない。
一対一で勝利を確信し、それに割り込んだのは小柄な女。
卜伝の認識は『想い人を殺されそうになった女が感情的に殴りかかってきた』という程度の物だった。
その為に構えるタイミングが遅れ、結果は真剣であれば即死となる突きの直撃を許したのだ。
………真剣であれば。

「なっ!?」
「………ほう、確かにいい突きだ。ワシがこれまで戦った相手でもこれほどまでに魂を込めた一撃を繰り出す者は
数えるほどしかいない。だが……」

卜伝は珠姫の木刀を握りながら、ゆっくりと呟く。
珠姫の一撃は卜伝の全身を覆う鋼の筋肉により、重傷を完全に避けたのだ。
そしてしばし間を空け、その後一息に大声を出す。

「所詮女の突きでワシを殺せると思うなっ!貴様はあの優男を殺した後でワシの子を孕ませてやるのだから、
そこで静かにしていろ!」

その一言と共に、卜伝は珠姫を突き飛ばす。
そして伊東のほうへと向き直る。
伊東は既に立ち上がり、刀を構えている。

(珠姫さんが頑張っているのに、私は何をやっている!悩むな。今はただ、あの男を倒す事のみに集中しろ!!
それが出来なければ、私は男ではない!だが、私は紛れも無い男なのだから、出来るはずだ!!!!!!)

伊東は珠姫の頑張りに奮起し、自らの目を強い決意へと変える。

「………ご老人。あなたのような女性を手篭めにしてしまう様な人には私は負けるわけにはいきません………
もう手加減はしません!!!全力で勝つ!!!!!!」
「やっと本気か。いい目だ。それでこそ殺し甲斐があるってもんだ!!!それにお前を殺した後で、ショックで
放心状態の女を抱くのもまた一興だ!」
「この下衆がっ!!」

伊東は卜伝の側頭部へ横薙ぎで斬りかかる。
しかしそれは若干大振りすぎる。
卜伝は全てを見透かし、逆にカウンターで両腕を粉砕すべく狙いを定める。
しかし、そこで奇跡が起こった。

「ぐっ!?なっ??」

卜伝は急に息苦しさを覚え、思わず手で喉を押える。
先ほどの珠姫の突きの影響は、実は死んでなどなく、確実に蓄積していた。
それは少し遅れてようやく卜伝の脳に伝達されたのだ。
そして一瞬の無防備と、伊東の一撃が重なり合い、卜伝は左側頭部に物凄い衝撃を感じる。

「がっ!!」

卜伝はその直撃を浴び、崩れるように倒れる。
伊東は卜伝が倒れるのを確認してから、安心したように膝を付く。

「はあっ、はあっ、はあっ」

肩で息をしながら、伊東は刀を鞘に納め、珠姫の方へ振り返る。
すると珠姫は伊東のほうへ駆け寄っていた。

「大丈夫ですか?」
「ええ、少し疲れましたし、やはり木刀とはいえ、何度も浴びたのでかなり痛いですが、しばらく
休めばすぐに治ります」
「そうですか。ところで………あの人は」

珠姫は少し間を置いてから、躊躇いつつ倒れている卜伝に振り向く。
頭からも血を流しているので死んでいるように見える。

「大丈夫ですよ。峰の方でですので致命傷にはなっていません。ただ、しばらくは動けないでしょうから今のうちに
紐か何かで縛って動けないようにしないと」
「じゃあ、死んでないんですね」
「ええ、決心しましたから。やはり私は私のやり方を貫くと。もう悩みません。あなたは最後まで守り通すのは変わりませんし、
近藤さんや土方さんも殺さずに拘束し、その上で罪を償ってもらいます。私の主義を曲げてはそれこそ藤堂君達に申し訳が無い。
たとえどのような者でも殺さずに拘束によって場を収めて見せます」
「決めたんですね」
「はい、ようやくですがね」

伊東は悩みが取れたすがすがしい表情で珠姫に答える。
ようやく心のつっかえが取れたのだ。
しかし、その二人の時間もすぐに終わる。

「殺さない?拘束?………笑止!そのような甘い考えでこの卜伝を制したつもりか!!」
「「なっ!?」」

卜伝は倒れたまましゃべり出すと突然勢い良く立ち上がる。

「………峰打ち。甘いな。このワシを殺す唯一の好機を峰で逃すとは………いや、甘いを通り越して愚か者か」
「…………ならもう一度、いえ二度でも三度でも、あなたが完全に気を失うまであなたに峰打ちを続けましょうか」

卜伝は木刀を構え、伊東も居合いの構えで備える。
だが、卜伝は一向に動く気配が無い。

「どうしました?先ほどのようにそちらからは仕掛けま………んっ!?」

伊東は言いかけて止まる。
気付いてしまったのだ。卜伝の背後の建物の物陰から、こちら側を凝視している一つの視線に。

(何だあれは?まさか私とご老人が戦って勝者を闇討ちにするつもりか?………不味いな。流石にこのご老人に勝ち切る
ことは不可能ではないが、あの物陰の男が乱入しては危険すぎる。ここは………)

伊東は冷静に状況を思案し、少しずつ後退し、卜伝の死角に入る寸前の位置まで移動する。
そして、一度大きく息を吸って、少し張った声を出す。

「あなたを後ろから狙っている刺客がいます!!」
「!!??」

伊東の言葉に卜伝は真後ろの気配を感じ取るべく、視線を伊東に向けながらも意識を背後へと向ける。
その様子を見逃さず、伊東はすぐに珠姫の手を握ると走り出す。

「逃げますよ。走って!!」
「えっ、どうして?」
「彼の背後から気配があります。敵かもしれません、早くっ!!」
「んっ、は、はい!」

最初は珠姫も戸惑うが、伊東の早口の説明で何とか納得し、珠姫は伊東に引かれながら城下町を疾走する。
そしてそれを察知した卜伝も当然逃さない。

「謀ったか!だが逃がさんぞ!若いのがっ!!」

卜伝も出だしが遅れるも、急いで走り出す。
しかし、伊東が巧みに曲がり角を利用しながら距離をつけるので、卜伝も中々間合いを詰められず、
見失わないまでも、徐々に距離が離されてしまう。






そして舞台は城へと戻る。

「甲子太郎!?」
「龍馬殿!?」

城に逃げ込もうとした伊東と珠姫、そして城から脱出しようとした龍馬ろ綸花。
この四人は、出会い頭の突然の再会や出会いに驚いていた。

「龍馬殿も生き返っていたのですか?」
「生き返る?甲子太郎もファンタジーなこと言うなや。わいがウィザードに見えるか?だがワシはマジックは使えんぞ」
「いや、生き返ってないのならいいのですが……いえ、こんな無駄話をしている暇は無い。早く中へ隠れないと」
「ノーグッドじゃ。ワシとこの綸花も城内のモンスター紛いの爺さんから逃げとる所じゃ。マジで戻るのは無理じゃ」
「そうですか。こちらもかなり強い老人と正体不明の男の二人から逃げているのですが……」

男性二人は情報を交換し、非常に不味い状況に暗雲が立ち込めようとしていた。
しかし龍馬はそれをすぐに解決へと導く。

「それならベリーイージーぜよ。なら向こうからマウンテンの方へ逃げるんじゃ。それならどっちも振り切れる」
「なるほど。確かに城下町からは離れるが、この場では仕方ない。行きましょう」
「レッツゴーじゃ。綸花とそのキュートガールもカモンぜよ」
「えっ、……私?」

珠姫は龍馬の予想外なテンションに飲まれつつも、綸花と共に四人で北へと向かう。
だが、城の敷地から抜け出そうというところで、ようやく卜伝が追いつく。
四人を纏めて逃がすつもりなどまるで無かった。

「追いついたぞ!どうやら数が増えているようだが……逃がさん!」

卜伝は木刀を構えいつでも攻撃に移る構えを取る。
その動きから既に先ほどの喉と側頭部を強打したダメージはほとんど薄れているのが分かる。

「くそっ、………ここは私が食い止めますから皆さんは……龍馬殿!?」

伊東が苦虫を噛むような表情を見せながらも、意を決し前へ出ようとした時。
坂本龍馬が先に前へと出て刀を抜く。

「龍馬殿。私が戦う。あなたはこの二人を」
「いや、甲子太郎こそ二人を任せるぜよ。それにお前は死ぬ気だろ。ワシは死なんから。適当に逃げ切るまでの時間を
稼いだらワシもバイバイするんじゃから、任しとけ」
「……本当ですね。絶対に、死にませんね!!」
「嘘付かんて。甲子太郎こそ女二人守り通さんとワシが後でただじゃすまさんで」
「承知です。この命に代えても守り通します」
「了解じゃ。じゃ……」
「待ってください!」
「ん?」

ここで綸花が伊東と龍馬の会話に割ってはいる。
勝手に進んでいく話にどうしても一度言いたいことがあったのだ。

「私も戦います。私なら……何とか」
「いや、遠慮するぜよ。それに綸花……人を斬った事無いだろ」
「えっ?」
「雰囲気で分かるぜよ。それに女子は守るものぜよ。ワシはこれでもサムライじゃから……ここは男に
カッコつけさせてくれ。そして後でワシとティータイムプリーズじゃ。なっ」
「……………お茶だけなら………」
「じゃ早く逃げるぜよ。それと甲子太郎………」
「分かってますよ。守り通しますから」
「グッドラック」
「えっ?」
「グッドラックじゃ甲子太郎!!」
「こっちこそグッドラック龍馬!!絶対に死ぬな!」
「当たり前じゃ」

この言葉と共に、二人は拳をコツンと重ねて後、伊東は珠姫、綸花と共に、城の敷地を抜けて北へと走り出した。
そしてここには坂本龍馬と塚原卜伝の二人のみが残されている。

「一人でワシと戦うか。やはり若い者は多少無鉄砲なほうがいいが……お前はワシを相手に時間稼ぎ出来ると思うか?
……残念だが無理だ。ワシは強い。一瞬で終わらせてあの優男も殺し、女は二人ともワシが手篭めにしよう」
「くくく。愉快な爺さんじゃ。だがあんた………嘘じゃな。女を手篭めになどする気は無いぜよ。ワシを激昂させて、
冷静でなくなった所を殺す気ぜよね。全く喰えん爺さんぜよ。まあこのナイトはやけに爺さんに縁があるぜよがね。
それもモンスター爺さんの後は全身筋肉のハッスル爺さん……少し笑える気分じゃけど……ワシは強いぜ。
長生きが希望なら撤退を進めるぜよ」
「ふふふ。面白い奴だ。だがどうしてワシの言葉が虚言と思った」
「態度じゃ。あんたはこんないつ敵が襲うか知れん戦場で呑気に女を抱く愚物とは思えねーんじゃからな。
抱く暇があればあんたは斬るんじゃろ。そもそも二人とも……助べえ爺さんのあんた好みのスタイルとは違うぜ」
「………はっはっは。面白い。確かにあの伊東と一緒にいた女はワシの好みではない。あのような貧弱な身体、ワシは
幼女趣味ではないからな。だが……お前と一緒にいた女はどうかな。中々にいい身体と見受けた。お前を切った後は、
あの女で一時快楽に溺れるのも悪くは無い。そもそも戦場というが、ワシからすれば人生は全てが戦場だ。つまり、
ワシは戦場だからといって己の快楽を犠牲にはしない。この場でこそ快楽を楽しむ余裕が無くては、侍など務まるか」」
「なるほど。思ったよりも大物ぜよね。ちょいとワシもフルパワーフルスロットルでいかねーとやばいぜね」
「ふふ、何を言ってるか分からぬが、小細工は無駄だ。お前はここで死ぬ。そしてワシに歯向かった事をあの世で後悔しろ!!」

卜伝は不意に叫びと共に、全速力で龍馬との間合いを詰める。
そして脅威の一撃を繰り出す。

「うおっ、アブねー」

だが、龍馬はそれをすぐに右側へと避ける。
そして卜伝の木刀をたたっ斬ろうと白刃が卜伝の刀身を狙う。
卜伝はそれよりも一瞬早く木刀を引いて、かわす。
そのまま龍馬の刀を握る手に蹴りを入れる。

「甘いぞ!!」
「はあっ!!

卜伝の右足での鋭い蹴り。
龍馬はそれを刀の柄で受け止めていた。

「こしゃくな!!」
「爺さんはさっさとスリープするんじゃ!!」

柄で卜伝の足を跳ね上げ、体勢を崩したところに龍馬はタックルを繰り出す。
卜伝はバランスを完全に崩し倒れる。
しかし

「お主は甘い!」
「なっ!?」

卜伝は咄嗟の判断で木刀から手を話し、残った左足で踏ん張りながら龍馬を投げ飛ばす。
巴投げの応用のような技だ。

「がっ」

龍馬は背中から倒れる。
一瞬息が出来ず、かなりの苦しさを感じる。

「ぐっ、ジジイが……くっ」

龍馬は何とか立ち上がろうとするが、身体が軽い麻痺を起こしたようですぐには動けない。
その様子を見ながら、卜伝は右足を引きずりつつも近寄ってくる。

「お前もかなりやるが……ワシには勝てんな。安心しろ。一瞬で楽にしてやる」

卜伝はゆっくりと近づいてくる。
先ほどの蹴りを柄で受け止められたために右足甲に痛みが残り思うようには動けないが、今の龍馬を殺すには
充分な余裕はまだ残っている。

「ちっ、マジでピンチぜよね。………甲子太郎の奴怒るじゃろうな」

龍馬も半ば覚悟しつつも、自身を殺すであろう卜伝から目を離さない。
少しでも隙があれば、こちらから殺す。
最後の意地と、生への渇望はまだ完全には消え去ってはいない。

そしてここで意外な人物が現れた。


「逃げるか!!だが俺はっ!俺はっ!!俺はああぁぁっっ!!!」

地獄から聞こえるかのような咆哮と共に現れたのは師岡一羽。
先ほどの龍馬と綸花との戦いで手傷を負いながらも、狂気とも言える執念が一羽を戦場へと突き動かす。
だが、それも既に限界に近づいていた。
元より立って動く事自体が奇跡に近い。
その一羽が剣を振るえば、命の灯火は急速に消えてゆくのみだ。
そしてその一羽の姿を見た瞬間。
卜伝の表情から、侍の目が無くなっていた。

「………一羽君?一羽君なのかっ!?」
「……………………………えっ?」

卜伝は叫んだ。姿かたちが変わろうとも、弟子を人目で見抜けぬような男ではない。
ただ余りの変わり果てた姿に卜伝は力いっぱい叫び、その叫びにより一羽には正気が戻る。
それと共に、身体からは力が抜け落ち、刀を杖代わりにして立つのが精一杯となってしまう。

「一羽君なのか?どうして………その身体はどうしたっ!?」

卜伝はわけがわからなかった。
一羽の年齢は卜伝より遥かに若く、目の前の龍馬とさほど代わらないはずだった。
その一羽が自分とあまり代わらぬ年齢まで年老い、しかも立つのも怪しいぐらいにまで肉体は衰えていた。

「しっ、師匠………実は…………癩風を」
「くっ!一羽君ともあろうものが、病など……病など剣気で吹き飛ばせと言っただろう!!」
「申し訳……ありません」
「くそっ、もういい」

卜伝は龍馬を無視するようにして、一羽のほうへと歩き出す。
近づけば近づくほど、優秀な弟子であった力強い一羽の面影が遠くに感じられる。

「刀を貸せっ!」
「あっ!!」

卜伝は一羽から刀を奪うと変わりに木刀を杖代わりに持たせる。
そして、卜伝は真剣を上段に構えると、静かに一言を注げた。

「我が弟子諸岡一羽!ワシが師としてしてやれるのはこれぐらいだ………せめて武士として散れ!!!」
「……はい………師匠」

一羽は最後の力を振り絞って、木刀を杖でなく剣として構える。
試合を意味する立ちあいである。
そして卜伝が静かに刀を振り下ろす。

「さらばだ!我が弟子一羽!!」

その最後の一言が一羽に届いただろうと同時。一羽は心臓に届くまで深くまで袈裟に斬られ、絶命した。
崩れ落ちるように倒れる一羽を見つめながら、卜伝はただただ立ち尽くす。
男は泣いてはいけない。
だから卜伝は心の中で泣いていた。
目を閉じ思い返すは、弟子入りして我が新当流を極め、自身の流派を作るまで成長した長い時間。
ずっと一緒では無かったが、見守っていた。
その弟子を殺めるとは思っても見なかった。

「………一羽君。安らかに眠れ」

静かに、そして優しく一羽の亡骸に語りかける。
そして、ずっとそれを見ていた龍馬に告げる。

「………若いの、去れ。今はお前の相手をする気分ではない」
「そうかい。じゃあワシはエスケイプさせてもらうわ…………師匠なら弟子はちゃんと葬ってやれよ」
「お前に言われんまでもない」
「じゃあバイバイじゃ!」

既に麻痺が薄れ復調していた龍馬は卜伝から素早く走り去り、その場には卜伝が一人残る。

「一羽君………埋葬は出来んが……せめてな」

卜伝は城から適当な毛布を一枚取ってきて、一羽の亡骸に被せる。
そしてしばらくしてから歩きだす。

「……一羽君。君はいい弟子だったよ。あの世でも剣を極めてくれ」

その一言を残し、卜伝も歩きだす。

(得物を逃がすとは……ワシらしくないか………だが、次は戦おう。今は……少しだけ休憩だ)




そしてそれを物陰から覗いていた一つの人影がある。

(なるほど。ようやく見れたぜあんたの太刀筋はよ。だが、……まだだ。もう少しだけじっくりとあんたの
太刀筋を見せてもらうぜ。あんたは俺が殺すんだからよ)

宮本武蔵は全てを見ていた。
卜伝の全てをだ。
あの優男の伊東と、少し可愛い顔の珠姫が卜伝を相手に奮闘していたのを。
卜伝がどう戦い、どのような動きを見せたのか。その全てを。

(あのもう一人の爺さんを殺した後に変に何かしてやがったが……まあいいや。俺が絶対に殺してやるぜ。覚悟しろよ)

宮本武蔵。
最強の追跡者が、塚原卜伝の命を狙っている。
しかし、卜伝はその事実を知る由は無い。




そして一方逃げた龍馬であるが……

「ホワット!?何で森があるんじゃ?地図じゃ森は無いはずじゃが……」

方向を間違えてしまい迷っていた。
まっすぐ北に向かったつもりだったのだが、西の方に来てしまっていたのだ。

「どうなってるんじゃ。このマップ、ブレイクしてるんか?」

龍馬は地図とにらめっこを続けている。
彼が伊東に追いつけるかは……神のみぞ知る。





そしてその頃、伊東、珠姫、綸花は………

「大丈夫でしょうか?龍馬さん一人で……」
「伊東さん。やはり一度戻りませんか?あの人一人では……」
「いいえ、大丈夫ですよ。彼は嘘は付かない。それに彼は何だかんだで機転が利く。下手に救援に向かう方が危険です。
それに……」

伊東は先ほど龍馬と重ねた右拳を見つめる。
そして、独り言のように呟く。

「この誓いをした以上、彼は死ぬ事は絶対にない」

何か確信を持ったような言葉が珠姫と綸花の耳にも届いた。

「………では、行きましょう。距離は出来るだけ長く取った方が良い」
「「はい」」

二人は伊東の言葉に納得し、北へと駆け出してゆく。


【師岡一羽@史実 死亡】
【残り七十七名】
【備考】
ほの参の城周辺に毛布を被せられた師岡一羽の遺体と木刀があります。


【ほノ参 城周辺 一日目 黎明】

【塚原卜伝@史実】
【状態】左側頭部と喉に強い打撲
【装備】七丁念仏@シグルイ
【所持品】支給品一式
【思考】
1:すぐに気持ちを立て直す
2:もう一度城下町に戻り、相手を探す
3:この兵法勝負で己の強さを示す
4:勝つためにはどんな手も使う
【備考】
※人別帖を見ていません。

【宮本武蔵@史実】
【状態】健康、塚原卜伝を追跡中
【装備】打刀
【所持品】不明
【思考】
最強を示す
1:老人(塚原卜伝)を倒す
2:その為に、老人(塚原卜伝)を追跡し、 太刀筋を見切る。
【備考】
※人別帖を見ていません。


【ほノ弐 森の手前 一日目 黎明】

【坂本龍馬@史実】
【状態】健康 方角を勘違い中
【装備】日本刀(銘柄不明) @史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いで得る天下一に興味は無い
一:なんで森があるんじゃ? 地図は間違いか?
二:急いで綸花達に追いつく
【備考】
登場時期は暗殺される数日前。
名簿を見ていません



【にノ参 南部 一日目 黎明】

【川添珠姫@BAMBOOBLADE(バンブーブレード)】
【状態】若干の疲労 首にかすり傷
【装備】木刀
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いには乗らない 現在北へ移動中
一:伊東さん、綸花さんと一緒に行動する
二:どうにかして脱出の方法を探したい
【備考】
登場時期は少なくとも部員全員が入部して以降
歴史上の人物が全員本物と認識

【伊東甲子太郎@史実】
【状態】上半身数個所に軽度の打撲
【装備】太刀銘則重@史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いを止める
一:珠姫さんと綸花さんを守る
二:同士を集めこの殺し合いを止める手段を思案する
三:殺し合いに乗った人物は殺さずに拘束する
四:服部武雄と合流
【備考】
※死後からの参戦です。殺された際の傷などは完治しています。

【外薗綸花@Gift-ギフト-】
【状態】健康 軽度の疲労
【装備】雷切@史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:人は斬らない。でももし襲われたら……
一:珠姫さん、伊東さんと共に北へ向かう
二:龍馬さんが心配
【備考】
登場時期は綸花ルートでナラカを倒した後。
名簿を見ていません。


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邂逅 塚原卜伝 焦燥の中で
邂逅 宮本武蔵 焦燥の中で
高い城の男と女 坂本龍馬 一人脱落、一人参戦
高い城の男と女 外薗綸花 迷いの剣
人斬りと女子高生、そして…… 川添珠姫 迷いの剣
人斬りと女子高生、そして…… 伊東甲子太郎 迷いの剣
腐剣鬼抄 師岡一羽 【死亡】

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最終更新:2010年05月31日 00:23