1973.09.13:UK,London,Golders Green Hippodrome

<セットリスト>

① Procession / Father To Son
② Son & Daughter (Inc. Instrumental Improvisation)
③ See What A Fool I’ve Been
④ Ogre Battle
⑤ Liar
⑥ Jailhouse Rock (Inc. Stupid Cupid, Be Bop A Lula)
⑦ Big Spender / Bama Lama Bama Lou

<マテリアル情報>

1.録音:SBD録音
2.音質:(^^)/ (驚愕するほど音に広がりがあり、分離も最高!!!もちろん、音はクリア!)
3.収録:コンサートで演奏した曲を全曲収録

<レビュー>

2011年現在、現存するQueen最古のライヴ音源である。

1973年7月にファースト・アルバムをリリースしたQueenは、英国において賛否両論の評価を受けるが、当時の人気D.J.ジョン・ピールが自分の担当しているBBC Radio Oneの番組にQueenを起用することを決め、Queen側に打診した。

その結果、実現したのが今回のレビューで取り上げるGolders Green Hippodrome公演である。

ラジオ放送用に特別に設定されたライヴなので、当然ながらSBD録音での収録である。

ただし、ライヴで演奏された全曲がラジオ放送されたわけではなく、Father To Sonは編集され、See What A Fool I've Been、Rock'n'Roll Medleyは割愛された。

そのため、アナログLP時代より流通する有名な音源であるにもかかわらず、近年になるまで完全収録音源が流出していなかった。

なお、今回レビューで参考資料としたのは、私自身が耳にしてみて、最も音質が優れていると感じた、2011年になってファンがネットにアップロードした4チャンネルVer.音源を無理矢理2チャンネルVer.に直した音源である。

まず、4チャンネルについて説明をすると、現在のサラウンド・システムの元祖ともいえるもので、再生トラックが前後・左右の4チャンネル存在する。アナログLP時代には、Quadrophonicという名称で結構な数のタイトルがリリースされているらしい。

有名なものでは、the EaglesのOne Of These Nights (邦題:呪われた夜)などがある。

Queenでは、QueenⅠ(邦題:戦慄の女王)の米国プレス盤Quadrophonicが存在する。

このレビューで参考にしている音源は、ファンの一人が作成したQuadrophonic Ver.をネット上で発見し、DLしたものの私の手元に4チャンネル再生装置がなかったので、無理矢理2チャンネルVer.に直してCD化したものである。

とはいえ、音質に関しては、先に記述したようにこれまで聴いた同音源の中では格段によい。

まず、音の広がりがまったく違う。

日本では、Queen Will Be Crownedというタイトルでリリースされたブートレグが有名だが、そのQueen Will Be Crownedがモノラル音源か?と思えるほど、音の広がりがある (もちろん、Queen~はステレオである)。

例えば、②Son & Daughterでは最初の「I want you~!」というコーラスに、フレディが入り損ねていることに、この音源を聴いて初めて気が付いたのだが、この音源を聴いていると、その原因まで発覚したのだ。

その原因については、後に記すことにするが、とにかくD.J.のMCのバックで起こっていることも聞き取れるほど音質が良いのである。

さて、演奏のレビューに移ろう。D.J.のバンド紹介が済むと、すぐにProcessionが鳴り始める。

このProcession、音の定位が微妙にスタジオVer.とは違うような気がするのだが、もしかするとスタジオVer.とは別の録音を使用しているのかもしれない。

そして、QueenⅡの冒頭と同様、Father To Sonが始まる。

どこからが生演奏なのか、ということが気になるが、恐らくロジャーのドラムが鳴ると一瞬音の質感が変化しているので、ロジャーのドラムの音からが生で演奏している音だろう。

このFather To SonはProcessionとともに、QueenⅡに収録される楽曲だが、QueenⅡの録音セッション自体はこの公演より前の8月から開始されているので、演奏されていても何ら不思議ではない。

ただ、よくよく聴いていると歌詞が全く異なるのである。

スタジオVer.では全く出てこない「Long, long, time ago~」といったフレーズがあちこちに出てくるし、バックの演奏部分はともかく、歌詞に関しては構成面でも全く違う。

率直に言って、スタジオVer.と同じ部分は、冒頭部分とサビの一部くらいではないか。

また、間奏部分では、フレディが小さく「I want you to be a woman~」というSon&Daughterの歌詞の一節をアドリヴで歌っているのが確認できる。

なお、最後の「Kings will be crowned~」という前述のブートレグタイトルの元ネタになった部分は、歌っていない。

この曲が終わると、D.J.がMCを挟んでいるのだが、その間フレディはオーディエンスとなにやらやりとりをしているのが聞こえる。

と、唐突に②Son & Daughterの演奏が始まったため、最初の「I~」だけ入り損ねている。

この曲に関しては、間奏部分に入る前の「I want you to be a woman~」で、アドリヴを入れて、「I want you ・・・woo~・・・to be a woman~」と歌っている以外は、間奏部分まではスタジオVer.を踏襲した歌詞で歌っている。

ただし、間奏部分およびGuitar Soloを挟む部分では、スタジオVer.のように「Oh, you better know it when~(中略)~begun, all right」とは歌っていないし、スタジオVer.はそのままフェイド・インしているのに対し、「Now, didn’t you feel~(中略)~to be a woman」という一番の歌詞をくっつけている。

続いて登場するのは、日本では長らく未発表楽曲だった③See What A Fool I've Been。

この曲も、録音されたのはQueenⅡのセッションであったので、先のFather To Sonのように歌詞が大幅に変わっている可能性があると思って聴いてみると・・・

やはり歌詞が大幅に異なっている。

スタジオVer.の歌詞を見ながら聞いていると、どこを歌っているのか分からなくなるくらい歌詞が違う。

中間部のギター・ソロにしても、スタジオVer.よりも音数が多く、ずっと激しい。

また、この曲のスタジオVer.では歌舞伎の女形を連想させるような艶っぽいヴォーカルを披露しているフレディだが、このライヴではもっとストレートに歌っている。

④Ogre Battleは、冒頭の効果音の所にD.J.のMCが重なっており、MCが邪魔である(苦笑)。

この曲のスタジオVer.では冒頭でシュワ~という効果音を破って、突然逆回転のギターやコーラスが炸裂するが、ライヴではブライアン一人によるすさまじく激しいギター・ソロで幕を開けるアレンジになっている。

この曲は、QueenⅠの録音セッション時にはすでに形ができあがっていたそうなので、このライヴでも歌詞はVer.を踏襲したものとなっている。

ただ、中間部のギター・ソロはなんだかメリハリがなく、あまり出来が良くない。

また、間奏後の部分でもこの日のアレンジではテンポが逆に落ちているが、これはどうもフレディが歌い切れていないことに起因しているように聞こえる。

このライヴではスタジオVer.以上にファルセットを多用して歌っているが、少なくとも曲想からすると、スタジオVer.程度にしておく方が良いように感じるし、後年のライヴのようにドスを効かせたヴォーカルの方が、迫力があって良いように感じる。

D.J.によるメンバー紹介を経て演奏されるのは⑤Liar。

歌詞に関しては、「That’s what they keep calling me」という間奏前の部分にアドリヴの歌詞を入れているくらいで、スタジオVer.を踏襲している。

放送ではカットされてしまったRock'n'Roll Medleyだが、実はここからがフレディの本領発揮。

ここまではヴォーカルがオフ気味の録音だったせいで、主役がブライアンという感じだったが、ここに至り、完全に主役はフレディ。

バンドをグイグイ牽引している。

⑥Jailhouse Rock Medleyでは、Elvis PresleyのカバーであるJailhouse Rockを部分的に即興の歌詞で歌っており、この曲を歌い慣れていることがよく分かる。

この曲の間奏が入るところで、急激にギアチェンジをするように、Stupid Cupidを歌い始める瞬間はかなりスリリングである。

と、いつの間にかBe Bop A Lulaに曲が変わり、最後はJailhouse Rockに戻っている。

そして間髪入れず始まる⑦Big Spender / Bama Lama Bama Lou。

Big Spenderは冒頭部分だけを歌っているが、この曲のオリジナルを聴いたことがある人なら、フレディが冒頭しか歌わない理由が分かるはず(苦笑)。

Big Spenderに続いて、Bama Lama Bama Louが演奏されて、この日のライヴは終了。

デビュー・シングルであるKeep Yourself Aliveが演奏されていないし、どちらかというとヴォーカルがオフ気味の録音であるという欠点はあるものの、Queenの初期のライヴをこれだけの高音質で残してくれたBBCには感謝するしかない。
                                          ~2011.04.23 改訂~
最終更新:2011年05月04日 17:22