1976.09.18 UK, London, Hyde Park
<セットリスト>
① Intro / Bohemian Rhapsody(Opera Part) / Ogre Battle
② Sweet Lady
③ White Queen (As It Begin)
④ Flick Of The Wrist / Brighton Rock (Ending)
⑤ Medley
;You’re My Best Friend
;Bohemian Rhapsody(Ballad Part)
;Killer Queen
;The March Of The Black Queen
;Bohemian Rhapsody(Finale)
;Bring Back That Leroy Brown
⑥ Brighton Rock / Guitar Solo (Inc. Fr re Jacques)/ Son & Daughter (Ending)
⑦ ‘39
⑧ You Take My Breath Away
⑨ The Prophet’s Song / Stone Cold Crazy
⑩ Keep Yourself Alive (冒頭が一瞬欠落)
⑪ Liar
⑫ In The Lap Of The Gods . . . Revisited
<マテリアル情報>
1.音源:SBD録音
2.音質:(^^)/(一部、音の定位がぶれる箇所などがあるが、全体的にはまあまあ聴きやすい)
3.収録:⑧は冒頭が一瞬欠落
<レビュー>
今回のレビュー対象は、Queenのバンド史上でも有名なライヴの一つ、1976年9月18日LondonのHyde Parkにおけるフリー・コンサートである。
この公演は、これまでのレコード売り上げなどに感謝の意味を込めて、Queen側がファンに対し何かサービスをしたいと考えたのが発端であったらしい。
そもそも、このHyde Parkという場所はthe Rolling Stonesがバンド創設時のメンバーのブライアン・ジョーンズ急逝を受けてフリー・コンサートを開催した経緯があり、フリー・コンサートとしてはそのthe Rolling Stones以来のものとなった。
そして、この日はフレディにとっては特別な日だったはず・・・
6年前のこの日、彼のアイドルが他界している。
そう、Jimi Hendrixである。
1970年9月18日Jimi Hendrixは帰らぬ人となった。
恐らく、そのことも念頭にあって、この日となったのではないか?
およそ15万人以上の観客を集めたと言われるが、当日はあまり会場の地面の状態が良くなかったらしい。
この公演の様子はQueen側により正式に撮影されており、その映像の一部がSomebody To LoveのPVに使われている。今回のレビューはそのQueen側が撮影した映像から音を落とした音源を基に書いている。
したがって、立派なSBD音源であるのだが、近年になるまで音のヨレや揺れ、あるいはノイズなど劣化によると思われる状態の良くないテープからブートレグ化したと思われる音源しか出まわっていなかった。
現在では、ネットを通じてより状態の良い映像が流出したことで、映像・音源ともに格段に状態が向上したアイテムもリリースされている。
また、この公演に関しては、近年になってオーディエンスが録音した音源も流出しており、それについてもいずれレビューを書きたいと考えている。
それでは、演奏のレビューに移ろう。
A-Part(①~⑥)
まず、オープニングはNight At The Opera TourでのOrchestra Tuningをフューチャーしたオープニングではなく、A Day At The RacesでTie Your Mother Down冒頭に付けられたIntroからBohemian Rhapsody(Opera Part)へ移行するという形にマイナーチェンジされている。
ただし、この公演で使用しているのは「I see~」がヨレ声のNight At The Opera Tourで使用していたものと同じ。
PAのトラブルなのか、「So you think~in my eye-」部分でフレディのヴォーカルがよく聞こえない
ただ、フレディの調子があまり良くないのも確かで、Ogre Battleではいまいち声が出にくそうで、いつものようにスムーズに歌えていない。
最後のヴァースではギターにも一瞬乱れが起きていて、②Sweet Ladyの前にブライアンがチューニングを行っている。
その②だが、ここでもフレディが不調気味。
高いキーは出ているのだが、かなり不安定。
バックの演奏について行けず、何度かヴォーカルが落ちそうになっている。曲のコーダでも、「Sweet Lady~」と繰り返す部分がまったく歌えていない。
短いMCを挟んで③White Queenの演奏が始まるが、この曲でもフレディは本当に苦しそうである。
また、この曲でもPAトラブルが生じており、「How did~(中略)~So still I wait」までフレディの声がとても小さくしか聞こえない。
ブライアンもいまいちプレイに安定感が無く、中間部ギター・ソロもかなり危なっかしい。
リズム隊のジョンとロジャーが堅実なプレイをしているのと好対照だ。
④Flick Of The Wristでも、相変わらずフレディとブライアンの調子がおかしく、フレディのヴォーカルはたどたどしいし、ブライアンもギター・ソロで失敗寸前のプレイをしている。
⑤のMedleyは先のEdinburgh公演同様、You’re My Best Friendで幕を開ける。
この日は、スタジオVer.とほぼ同じテンポで演奏されているが、「Whenever~(中略)~Ooo, you make me live」まではごっそりカットされている。
Bohemian Rhapsody (Ballad Part)では、途中に「Singin’」とか「Everybody」とフレディがオーディエンスを煽っているが、当のフレディの声がやはり不安定なまま。
The March Of The Black Queenではギター・ソロが危うい。
本当に、この日はフレディとブライアンの様子がおかしい。
Bohemian Rhapsody (Finale)では、「Anyway the wind blows・・・」の前に、フレディの「Thank you Beautiful」というMCが入っているが、これは「nothing really matters to me」をオーディエンスが大合唱してくれたことへの感謝の意味を込めたものだろう。
なお、なぜかこのMedleyではロジャーのコーラスよりブライアンのコーラスの方が目立っているのだが、これもPAのトラブルのせいだろうか。
⑥のBrighton Rockは、この時期にしては若干ゆっくりめのテンポで演奏が開始されているが、ギター・ソロになると一転して高速で弾きまくっているので、もしかしたらあまり調子が良くないフレディを気遣ってテンポを落としているのか知れない。
実際、「O Rock~(中略)~if you will」部分は完全にキーを下げたまま歌っている。
この日のGuitar SoloにはFr re Jacquesが挿入されている。
Acoustic Part(⑦、⑧)
そして、4人が横一列になって演奏する⑦’39へ。
演奏前にブライアンが、ロンドン・フィルと共演したかったんだけど、来てくれなくてね(意訳)などと冗談を言っている。
Edinburgh公演同様、リード・ヴォーカルはフレディ。
途中のロジャーによる超高音の「Ah~」というコーラスに、フレディも「Hoo~」と小さくコーラスを付けているのが聞こえる。
曲の終盤「~grandchildren knew」の後に、フレディが「Everybody」とオーディエンスを煽ったり、曲のコーダで「Pon, popopon~」などとお遊びのスキャットを入れているのだが、このあたりthe BeatlesのAll Together Nowを連想させる。
A Day At The Racesに収録される⑧You Take My Breath Awayは、この時点では未発表曲。
先のEdinburgh公演同様、冒頭コーラスはカット。
この日もフレディはファルセットを多用しつつ、ヴィヴラートを効かせ、非常に感傷的に歌い上げる。
歌詞に関しては、( )書きの部分はカットされ、「That you just take my breath away~(中略)~Till I find you to. Tell you~」までがカットされ、「When I’ve found you – I love you~」となっている。
B-Part(⑨~⑫)
⑨The Prophet's Songは、やはり叩きつけるような歌い方をしており、少々違和感がある。
この日の一人多重アカペラでは、珍しく「two by two my human zoo」という部分の歌詞を使っている。
また、Death On Two Legsの一節も登場。
Stone Cold Crazyへ移る前のインプロでは、ギターをチューニングしている音が聞こえる。
⑩Keep Yourself Aliveは冒頭が一瞬欠落している。
この曲でもドラム・ソロ後のギター・ソロがおかしい。
ブライアンというかPAの不調は⑪でも続き、冒頭からチューニングがおかしくなっている。
そのため、ギターのアルペッジョ前のドラム・ソロが少し長くなっている。
またこの日の「All day Long」パートでは、「I’m gonna~」3連発のうち2番目の「I’m gonna keep you~」が抜けている。
普段、メイン・セットの締めとして演奏される⑫だが、この日は時間の関係で演奏された最後の曲となってしまった。
というのも、すでに終了の時間を30分以上過ぎていたため、これ以上ライヴを続ければ、逮捕すると警察からお達しが出されたという。
そのようなわけで、⑫In The Lap Of The Gods . . . Revisitedはこの日最後の曲となったわけだが、ここでもPAが不調なのかフレディの声が埋もれがち。
恐らく、フレディも一生懸命歌っているとは思うのだが・・・
ライヴでは2番の歌詞で、フレディはよく、「You say I can’t set you free from me」の部分を「You say I can’t never set you free from me」と変えているのだが、この日は「never」を結構強調して歌っている。
つまり、「あんたは“お前は私から自由にはなれないんだ”と言う」ではなく、「あんたは“お前は私からけっして自由にはなれないんだ”と言う」とさらに強調しているわけなのだが、この後「But that’s not true」と「だけど、それは違う」と否定する歌詞が続く。
このHyde Park公演は、もともと今まで自分たちを支持し続けてくれたファンに対する感謝の気持ちを表したいという想いから企画したもの。
そして、このHyde Park公演の1年前、Queenはトライデントとの契約からやっと自由になれたという事実を考えれば、フレディの胸の内にある種の感慨があったのではないか?
だからこそ、この日「never」を強調したように思えてくる。
このライヴの後、QueenはA Day At The Racesの制作作業に戻る。
A Day At The Racesというアルバムは、初のセルフ・プロデュースということだけでなく、ゴスペルの導入(後年、Made In Heavenに収録される、Let Me LiveはもともとこのA Day At The Racesのセッションで取り上げられた曲)といった“方向性の転換”というキーワードが見え隠れするアルバム。
実際、アルバム・リリースに伴うツアーも北米から開始されている。
そして、ライヴでのセットリストにも変化が。
この公演を最後に、
- Flick Of The Wrist
- Son&Daughter
- The March Of The Black Queen
といった楽曲がセットリストから姿を消すことになり、セットリスト構成自体大幅に変更されることになる。
また、Night At The Opera Tourで演奏されていた楽曲でも、
- Modern Times Rock’n’ Roll
- Father To Son
- Seven Seas Of Rhye
- Lazing On A Sunday Afternoon
- Hangman
といった楽曲が演奏されることはなくなった(Seven Seas Of RhyeはThe Works Tourで復活するが)。
最終更新:2011年05月04日 17:47