1977.01.23 USA, Cleveland, Richfield Coliseum

<セットリスト>

① Intro / Tie Your Mother Down
② Ogre Battle
③ White Queen (As It Begin)
④ Somebody To Love
⑤ Medley
  ;Killer Queen
  ;The Millionaire Waltz,
  ;You’re My Best Friend,
  ;Bring Back That Leroy Brown
⑥ Sweet Lady
⑦ Brighton Rock / Guitar Solo (Inc. Fr re Jacque, Son & Daughter) / Brighton Rock (Reprise)
⑧ ‘39
⑨ You Take My Breath Away
⑩ White Man / The Prophet’s Song (Inc. Death On Two Legs)
⑪ Bohemian Rhapsody
⑫ Keep Yourself Alive
⑬ Stone Cold Crazy
⑭ Liar
⑮ Big Spender / Jailhouse Rock(フェード・アウト)

<マテリアル情報>

1.音源:SBD録音 (と言われている)
2.音質:(;_;)(ノイズは多いし、細部もぼやけ気味・・・)
3.収録:上記の曲のみ収録。⑮はフェード・アウト

<レビュー>

今回のレビュー対象は、A Day At The Racesリリースに伴う北米ツアーから、9公演目にあたる1977年1月23日Cleveland公演である。

これまでQueenは、アルバム・リリースに伴うツアーを英国から開始するのが恒例となっていたが、今回は初めて北米からツアーが開始されている。

また、このツアーではNew YorkのMadison Square GardenとLos AngelesのGreat Western Forumという、2大聖地での公演を行っている。

この北米ツアーでは、サポート・アクトをアイルランドのハード・ロック・バンド、Thin Lizzyが務めていて、ツアー名もQueen Lizzy Tourと銘打たれているが、これは1977年に即位25周年を迎えたエリザベス女王の愛称“Lizzy”にひっかけたもののようだ。

セットリストは、大幅に変更されているが、A Day At The Raceからは
Somebody To Love
The Millionaire Waltz
White man
が新たにセットリスト入りしている。

音質に関しては、一応SBD音源とされているが、テープの保存状態が良くなかったのか、ノイズも目立つし、細部はぼやけ気味。

正直、聴きづらい

では、演奏のレビューに移ることにしよう。

A-Part(①~⑦)

オープニングはA Day At The Races同様、①。

Introはテープ再生で、ブライアンのギター・リフからが生演奏になっている。

序盤から、フレディの声がよく出ていて好調なようだが、まだ慣れていないのか1回目の「Give me all your love tonight」ではコーラスがバラバラになってしまっている。

歌詞に関しては、「Get that big big daddy~」で「big big big・・・」とアドリヴを入れていることや、コーダでスタジオVer.よりも「All your love tonight」のリピート回数を増やしているくらいで、全体を通してスタジオVer.の歌詞に忠実であり、(  )書きで記されている歌詞も歌っている。

この曲から間髪入れずに②が演奏されている。

曲の前半はフレディの声もよく出ていて、タメを作ったり、急加速したり、緩急自在なヴォーカル・パフォーマンスを披露している。

また、録音の性質上、この音源(途中までは)ではロジャーの声がよく聞こえるのだが、そのロジャーのコーラスもすさまじい。

ところが、「The ogre men are~(中略)~you gotta go south」までは、フレディが歌詞の各行末尾でキーを下げて歌っていることが多く、聴いていてもどかしく思える。

この曲が終了したところで、初めてMCが挿入されている。

MCが終わると、QueenⅡのSide-Blackを代表する曲である②に対し、Side-Whiteを代表する曲である③が演奏される。

しかし、この日の③は、いまいちフレディの声に伸びが無く、歌詞の末尾で急に声が減衰する場面が頻出しており、あまり良い出来ではない。

それに対し、ブライアンはギター・ソロで非常に情熱的なプレイをしている。

ニュー・アルバムからの曲という紹介から音源としては初登場となる④が演奏される。

この曲は、この先Queenのステージ用重要レパートリーとなっていくが、冒頭部分のアレンジが時期によってかなり異なっていて、この時期は冒頭のアカペラは割愛し、フレディがいきなりピアノのイントロを弾いて始まるアレンジになっている。

このライヴ・テイク、率直に言ってスタジオVer.とかなり印象が異なる。

スタジオVer.では、フレディのリード・ヴォーカルにまとわりつく重厚かつ華麗なコーラスが、このライヴ・テイクではほとんど聴かれない。

また、この曲のスタジオVer.では超高音域のキーが頻出するが、ライヴではほとんどの部分でキーが下がっている。

スタジオVer.で随所に入っていた合いの手的に挿入されていたコーラス (ex. At the end of the days~など)は、最初の「He works hard」を除き割愛されている。

と、このように書いていると、まるで揚げ足を取っているようだが、この曲をスタジオVer.通りにライヴで演奏することなど、(この曲だけを演奏するのならともかく)恐らく不可能であろう。

これまでのライヴを振り返ってみると、ライヴで演奏される楽曲のアレンジはスタジオVer.を踏襲したものであり、ギター・オーケストラなどもディレイ装置を駆使して、再現を試みていた。

ライヴでの演奏が困難な楽曲に関しては、演奏不可能な部分をカットしてメドレー処理、あるいはそもそも演奏すらされないという対応だった。

Night At The Opera Tourでも、Bohemian Rhapsodyを分割して演奏することにし、スタジオVer.に沿った形で演奏できないOpera Partだけテープという手法で乗り切っていたのだ。

曲の間にGuitar SoloやInstrumental Improvisationを挿入して演奏されていたSon&Daughterにしても、基本となる部分は、スタジオVer.のアレンジを踏襲したものだった。

このことには、ファンも歯がゆい想いをしていたのだろうが、Queen側にしてみればファン以上に歯がゆい想いをしていたはず。

ここからは、管理人の推測ではあるが、そんな状況を打破すべく、スタジオVer.とはまったく異なるアレンジでライヴ演奏するという試みを試したのが、A Day At The Racesリリースに先駆けて、1976年夏に行った英国短期ツアーで初めて演奏された’39だったのではないか?

この’39という曲、スタジオVer.では素人が耳で聞いたところで判別不可能なくらいアコースティック・ギターやコーラスなどがオーバーダビングされており、スタジオVer.のアレンジを踏襲してのライヴ演奏など、到底不可能な楽曲。

ところが、Queenはリード・ヴォーカルをブライアンからフレディに変更し、ブライアンのアコースティック・ギター1本、ジョンのベース、ロジャーのバスドラ&タンバリン、そしてサンプリングを使わない生でのコーラスという編成で、メロディー・ラインはともかく、スタジオVer.とはまったく異なるアレンジで演奏している。

この‘39に限らず、これ以降のQueenのライヴではスタジオVer.とは大胆にアレンジを変えられた数々の楽曲が演奏されていくことになるが、それはスタジオVer.とは全く異なるアレンジでライヴ演奏を試みた’39に対するオーディエンスの反応が良かったことで、Queenが手応えを感じたからではないか。

と、ライヴ・アレンジに関する推測はこの辺でやめておいて、④のレビューに戻ろう。

先に記述したように、フレディはキーを至るところで変えて歌っているのだが、時には声を張り上げて一生懸命歌っている。

最初の「Somebody - somebody」はスタジオVer.と違い、もう一回繰り返している。

また、「Everyday – everyday I try and I try~」の箇所では、最初の「Everyday」を「I’m gonna pray」と歌詞を変えて歌っている。つまり、「毎日 毎日 僕はがんばり続けてるんだ・・・」を「祈っているんだ 毎日 僕はがんばり続けてるんだ・・・」と変えているのだ。コーダへの橋渡しとなるドラム・ソロ後の「Find me somebody to love」というコーラスは、大幅に回数が増え、この日は計9回繰り返している。

曲は、ロジャーによる超高音域の「Yeah~, yeah~・・・」という雄叫びの後、ドラム、ギター、ベースのユニゾンで終了するアレンジとなっている。

演奏が終わると、ブライアンによるMCが入り、大幅に構成が変わった⑤のMedleyへ。

1曲目のKiller Queenはフレディが少々苦しそうで、声に伸びがない。

また、なぜかこの日はコーラスもいまいち決まらず、何カ所か出てくる「Anytime~」のコーラスも、ヨレてしまっている。

ちなみ、ブライアンもギター・ソロで音を外している。

構成に関しては、これまで通り。

そして、この曲のギター・ソロ最後の音が消えないうちにいきなりThe Millionaire Waltz冒頭ピアノ・イントロが入ってくる。

多少、強引な感じもするが、なかなか鮮やかな展開である。

The Millionaire Waltzは、音源的にはこの日が最古のテイク。

ただ、Medleyの一部ということだからか、大幅にカットが施されており、スタジオVer.で(  )書きされている歌詞はすべて割愛、「I want to share it with you」の後「I feel like a millionaire」も歌われず、いきなり最初の間奏が入って、「Come back to me, oh my love」まで飛んでいる。

そして2回目の間奏後に「My fine friend~(中略)~My fine friend」と歌われる。この後に続く「forever – ever - 」はカットで、You‘re My Best Friendへ。細かいことだが、「Won't you come back to me」の「come back」はアドリヴで何度かリピートしている。

さて、You're My Best Friendだが、「I’m happy, happy at home」の後、いきなり「Ooo, you make me live~I’m happy, happy at home~You’re my best friend~」まで歌詞が飛んでいる。

また、恐らくフレディが入り損ねたのだと思うが、最後の「You, you’re my best friend」の前の「Ooo, you make me live~」は歌われていない。

ロジャーのカウントから始まるBring Back That Leroy Brown、しっかり歌われているのは最後の行くらい。

このMedleyが終わったところで、フレディによるリクエスト・タイムが挿入されている。

会場からは、The Prophet’s Songのリクエストがあったのか、フレディが「The Prophet’s Song ?」とオーディエンスに聞き返している。

ただし、演奏されるのは⑥(苦笑)

Night At The Opera Tour時のアレンジより、さらに演奏スピードが上がっていて、あっという間に演奏が終わってしまう。

フレディの声は不調とも言えないが、好調ともいえないような感じで、時折声が掠れたり、ヴォーカルが落ちそうになっている。

また、「Lady, stay sweet~」という歌詞を「C’mon stay sweet~」と変えて歌っていて、間奏部分やコーダではアドリヴで色々歌っている。

Day At The Races Tourに入ってから、Guitar Soloを挟む形ではあるが、単独で演奏されるようになった⑦は、録音の性質上、少々ロジャーの声が聴きにくい。

スタジオVer.と同じく、「~a little people magic if you will~」の後から、Guitar Soloパートへ突入しているが、その「~a little~」の部分、コーラスが上手くかみ合わず、ヨレヨレになっている

この日のGuitar SoloにはFr re Jacqueが登場している。

前回ツアーまでGuitar Soloの後にSon&Daughterが演奏されていた名残か、Guitar Soloパートが終わった瞬間、一瞬間が空いてSon&Daughterのリフをブライアンがかき鳴らしてBrighton Rockの3番の歌詞が始まる構成になっている。

なお、この日は最後の「Woo~、Woo~」コーラス後のギター・ソロで、ブライアンが壮大に音を外している。

そしてライヴは、アコースティック・パートへ。

Acoustic Part(⑧、⑨)

⑧では、ロジャーが絶好調で、「Ah~」という超高音域コーラスがいつも以上にすばらしく高い!!

また、好調ではないもののフレディもご機嫌で最後の「Don’t you hear my call~」の前に「Everybody~」とオーディエンスを煽ったり、曲のコーダで「pon, pon, pon,・・・」とスキャットを入れている。

このあたり、作曲者のブライアンはともかく、フレディはthe BeatlesのAll Together Nowを意識しているように思える。

フレディがピアノの弾き語りで演奏する⑨は、やはり最初のコーラスは割愛。

この日は、声が出ないためかファルセットは使っていないが、その代わりヴィヴラートを駆使し、感傷的に歌い上げている。

歌詞に関しては、Hyde Park公演では歌われた「when I’ve found you」がカットされている。

B-Part(⑩~⑭)

ここで、雰囲気はがらりと変わり⑩。

重々しいギターのリフが鳴り響き始まるA Day At The Racesから新曲White Manは、ライヴ音源としてはこの日が最古のもの。

ただ、全部が歌われているわけではなく、「To Blind~(中略)~gonna hide」はカットされている。

また、なぜか3回目の「White man, white man」の歌詞から始まるヴァースでは、本来の歌詞ではなく、1回目の「White man, white man」から始まるヴァースの歌詞で歌われている。ところが、さきほどカットされた「To blind~」の部分は結局歌われず、その直前の「You took away the sight」から間奏へ突入し、そのまま最後のヴァースの歌詞が歌われ、一人多重アカペラセクションへ移行している。

この一人多重アカペラセクションは、これまでと違いヴォコーダーを通したような機械的な音声に変えられているが、なんだか聴いていてちょっと間抜けに聞こえてしまう。

これなら生声の方が良かったのでは?

ちなみに、この日は一人多重アカペラにDeath On Two Legsの一節が挿入されている。

その後の展開は、Stone Cold Crazyを続けて演奏しなくなったものの、変わりがない。

つまり、Night At The Opera TourにおけるThe Prophet’s Song / Stone Cold Crazyから、一人多重アカペラセクションまでのThe Prophet’s Song部分とStone Cold Crazyを取り除き、一人多重アカペラセクションの前にWhite Manを接続させたという構成になっているのだ。

⑪は、このツアーからはバラバラにされることはなく1曲として演奏されるようになったが、Opera Partはテープ再生である。

この間、メンバーはステージを降り、ステージ・ライト・ショーでオーディエンスを魅了するという手法が取られたわけだが、このOpera Partのテープがちょっと問題なのだ。

というのも、Night At The Opera Tourではライヴのオープニングにテープが流されていたが、そこではテープと思われるのに、フレディの声がヨレていた。

したがって、せっかくの劇的なオープニングなのに、少し締まらない感があった。

で、このツアーでのOpera Partなのだが、声がヨレていた「I see a~」部分がカットされ、ピアノだけになっている・・・声のヨレが気に入らなかったのか、別の理由か・・・それはともかく、一部テープなものの一応単独で演奏されるようになった⑪だが、冒頭アカペラ・コーラスはカット。

また、この日のフレディの調子ではオリジナルのキーで歌うのは無理だったようで、「Mama, ooo, Didn’t~(中略)~As if nothing really matters~」は歌詞の末尾のキーが下がったり、歌い廻しがコロコロ変更される、不調時の歌い方になっている。

⑫は、まずギターが単独でリフをかき鳴らして始まるアレンジになっている。

相変わらず、「Keep yourself alive, keep yourself alive~」というサビのコーラスの後はすべて「All you people keep yourself alive~」になってしまっている。なお、なぜかこの日のロジャーは、「Do you think you’re better everyday~」という合いの手をむちゃくちゃ気合いを入れて歌っている。間髪入れず始まる⑬は、さらにスピードが増しているにも関わらず、フレディがドスを効かせたド迫力のヴォーカルを披露。

しかもこれだけのスピードなのに、歌詞の読み飛ばしなどがないのがすごい。

なお、フレディがよくやっている「Wow ! Here men !」を「Look out !!」と変えるアドリヴはこの日もやっている。

ところが、この曲でがんばりすぎたのか、⑬ではフレディの声がどことなくおとなしい。

「Liar 」を4回繰り返すところも、ちょっと息も絶え絶えといった状態・・・

そんなフレディにつられたのかブライアンもギター・ソロで痛恨のミス!

Encore Part(⑮)

で、目立ったつなぎ目もなくこの音源では⑮が始まっている。

この北米ツアーから流出している音源は、メイン・セットの締めからアンコールを収録している音源が少ないため、In The Lap Of The Gods . . . RevisitedとNow I’m Hereをこの日演奏したのか、現時点では判断尽きかねる。

前者に関してはセットリストから外された可能性の高い公演があるので、外された可能性があるのだが(この日のフレディの調子を考えれば)、Now I’m Hereまで外すかといわれると、首をかしげざるを得ない。

さて、⑮だが、ロジャーがBig Spenderの冒頭ドラム・ソロを一度叩いたのだが、すぐに止めている。

何かあったのかと思って聴いていると、すぐにMCを入れて仕切り直している。この日のBig Spenderは少々テンポが遅め。

その代わり、Jailhouse Rockはテンポが速めとどことなくちぐはぐしている。コール&レスポンスでは、フレディが「もっとやかましく!!!」(意訳)とオーディエンスを煽っている。

その後、どこかで聴いたメロディをブライアンが弾いた後、フレディがJailhouse Rockではない歌詞を歌っているのだが、残念ながら私には曲名が分からなかった。

最後のコーダに突入する直前で録音が終了している。
最終更新:2011年05月04日 02:31