1977.02.04 USA, College Park, University Of Maryland

<セットリスト>

① Intro / Tie Your Mother Down (フェード・イン)
② Ogre Battle
③ White Queen (As It Began)
④ Somebody To Love
⑤ Medley
  ;Killer Queen
  ;The Millionaire Waltz,
  ;You’re My Best Friend,
  ;Bring Back That Leroy Brown
⑥ Sweet Lady
⑦ Brighton Rock / Guitar Solo (Inc. Fr re Jacque)(Guitar Solo以降欠落)
⑧ ‘39
⑨ You Take My Breath Away
⑩ White Man / The Prophet’s Song (Inc. You Take My Breath Away)
⑪ Bohemian Rhapsody
⑫ Stone Cold Crazy
⑬ Keep Yourself Alive
⑭ Liar

<マテリアル情報>

1.音源:AUD録音
2.音質:(;_;)(ノイズも目立つし、細部がぼやけ気味)
3.収録:上記の曲のみ収録

<レビュー>

今回のレビュー対象は、2月4日College Park公演である。

ここで補足しておくと、この公演が行われたUniversity Of Marylandという場所はWashington D.C.の郊外に位置するCollege Parkという場所に設立されているMaryland州の州立総合大学である。

この大学からは、ノーベル賞受賞者も輩出しているらしい。

したがって、ライヴ序盤でフレディがWashingtonという地名をMCで出しているわけである。

日本公演で言えば、西宮公演なのに「Hello~、Osaka~」と言っているようなものかもしれない。

音質に関しては、あまり良好な音質とはいえない。

ノイズも多いし、細部はぼやけ気味である。

では、演奏のレビューに移ろう。

A-Part (①~⑦)

①のIntroは数秒しか収録されていない。

Tie Your Mother Downは冒頭からフレディが絶好調で、(Oh, no !)をC’monに変えて、オーディエンスを煽りつつ、すばらしいヴォーカルを披露。「Get that big big big・・・」、「All your love tonight~、All your love tonight~・・・」といったアドリヴも登場。

とはいえ、「Take your little brother~(中略)~With a brick」という作曲者のブライアンが嫌ったという曰く付きのフレーズでは、そんな作者の想いを反映したのか、少々とっちらかってしまう。

また、間奏のギター・ソロではミスプレイ寸前のあやうい場面がある。

曲が終わると同時に間髪入れずに② Ogre Battleが始まるが、どうもこの曲や③ White Queen (As It Begin)といったQueenⅡあたりの頃の楽曲で、フレディの声がうわずっているように感じられる。

これら2曲は、Day At The Races Tourを持って、セットリストから外されるが(その後もスペシャル・ナンバーとして演奏された記録はあるが)、もしかするとフレディ自身がこれらの曲をライヴで歌うことに限界を感じたのかもしれない。

② Ogre Battleでは、Cleveland公演と比べれば、「The ogre men are still inside~(中略)~you gotta go south~」部分で高いキーを維持しているものの、とても歌いにくそうである。

なお、この日は録音の性質によるのかロジャーの高音コーラスが目立っている。

③ White Queen (As It Begin)では、先にも書いたようにフレディの声が若干うわずっているように感じられる。

その一方で、音質の性質でこの日はギターよりもピアノの音の方が目立っており、フレディが美しく情熱的なピアノを弾いているのが聞き取れる。

このように、② Ogre Battle、③ White Queen (As It Begin)というQueenⅡを代表する2曲ではあまり調子が良くないヴォーカル・パフォーマンスをしていたフレディだが、新曲の④ Somebody To Loveになると俄然活き活きとしたヴォーカルを聴かせてくれる。

もちろん、オリジナルのキーで歌っているわけではないが、柔らかく歌ったり、シャウトしたり、気持ちよさそうに歌っているように感じられるのだ。Cleveland公演では、「Everyday – everyday I try and I try~」を「I’m gonna pray – everyday I try and I try~」と歌詞を変えて歌ったフレディだったが、この日は「Everybody - 」を歌っていない。

中間部のギター・ソロでは、ブライアンがミスもなく、それでいて非常に情熱的に演奏しており、すばらしいテイクになっている。

ドラム・ソロの後の「Find me somebody to love~」のコーラスはこの日も計9回となっているが、もしかして何回リピートするか、というのもあらかじめ決めているのかも知れない。

また、最後のコーダではフレディとロジャーのヴォーカルで互い違いにアドリヴを入れていくのだが、そこに途中からブライアンがレスペで参戦し、三つ巴になり、ロジャーの雄叫びを合図に曲は終了する。

ブライアンとフレディが交互にMCを交えて⑤ Medleyが開始される。

この日のKiller Queenは冒頭のピアノ・イントロがなぜかつんのめるような感じで弾かれているし、ギター・ソロもミス寸前のあやういプレイをしている。

そして、この曲のギター・ソロ終了の瞬間、唐突にThe Millionaire Waltzのピアノ・イントロが奏でられる。公演数を重ねていることでこなれてきたのか、この曲の中間部はCleveland公演以上に非常にノリの良い楽しい演奏が聞ける。

ただ、Cleveland公演でも思ったが、やはりKiller Queen → The Millionaire Waltzという流れはちょっと強引な気がする。

欧州ツアーからはここにGood Old Fashioned Lover Boyが挿入される。

別に好きな曲だから贔屓するわけではないが、Killer Queen → Good Old Fashioned Lover Boy → The Millionaire Waltz・・・という流れの方が違和感なく聞こえる。

The Millionaire Waltzの「My fine friend~」というところからYou’re My Best Friendにつながる流れは最高なのだが・・・

ちなみにこの日はYou’re My Best Friendの演奏が始まった途端、会場から大絶叫が起きている。

このMedleyが終わるとフレディがメドレーは気に入った?とオーディエンスに確認を入れている。

Queen側も大胆にMedley構成を変えただけに、オーディエンスの反応が気になっていたのかもしれない。

また、ここでシャンパン・タイムが入っている。

続いて始まる⑥ Sweet Ladyは、冒頭「You call me up and tear me up inside」で突如キーが下がるので、一瞬不安になるが、すぐに復活している。

それにしてもすごいのはジョンとロジャーのリズム隊の演奏で、すさまじくハードな演奏のおかげで、スタジオVer.のポップな感じはなく、まさにブリティッシュ・ハード・ロックになっている。

この曲が終わると、フレディがオーディエンスにリクエストを聞いている。

この日は、「Death On Two Legs」という声も挙がっているが、この曲が演奏されるようになるのは欧州ツアーからで、残念ながらこの観客のリクエストが容れられることはなかった。

続いて演奏されるのは、⑦ Brighton Rock。

この日は、冒頭のギター・リフが超高速で、いつも以上に演奏に気合いが入っているように聞こえる。

「I’ll weave my spell」の後のタメがいつもより少し長く、一瞬演奏が止まったように聞こえる。

ただ、別に機材のトラブルなどが起こったわけではなく、気合いが入っているからこそのタメであったように思える。

Guitar Solo挿入前の「O Rock of Ages, ~(中略)~magic if you will~」におけるロジャーのシャウトはすばらしい。

Guitar SoloではFr re Jacqueが挿入されているのが確認できるが、この日はGuitar Soloの途中に欠落があるのに加え、Son&Daughterのリフが登場する直前でこの曲の録音が終了しており、以降は未収録となっている。

Acoustic Part (⑧~⑨)


録音が再開されるのは、⑧‘39。

曲が始まる前に録音が再開されて一安心だが、この日はこの⑧ ’39で事件が勃発してしまう。

ライヴのオープニング、Tie Your Mother Downからなにかとしっくりいかない感じがしていたが、とうとう・・・

最初は、4人の息もぴったり合っていて、フレディの、手拍子というMCに合わせて会場からも手拍子が起き、となかなかすばらしいテイクになるかもと思って聞いていたのだが、「For many a lonely day~」のところで、フレディが堂々と「For so many years ・・・」と間違って歌ってしまう。

しかも、後のリカバリーができず、「Don’t you hear my call~」でようやく復活・・・

なんともよくない展開である。

なんとなく、バンドの空気も重くなったような・・・

そして、このように重くなった空気が、Queenの中で最もプレッシャーに弱い男、ブライアンに悪影響を及ぼさないはずがない

なんとか、間奏部分にたどり着いたのだが、ここで第二の事件が発生

ブライアンによるアコースティック・ギターをバックにロジャーの超高音コーラスが炸裂するはずが、ブライアンが妙なフレーズを奏で出し、ついにはアコースティック・ギターが完全に落ちてしまう。

それにつられて、ロジャーのコーラスも失速し、コーラスが落ちてしまう・・・

ロジャーのコーラスがないので、フレディもコーラスを付けられず・・・

まるでドミノ倒しのように演奏が崩壊・・・

悪いことにオーディエンスもアクシデントがあったことに気付いたようで、手拍子までストップ。

すわ、演奏中断かと思いきや、ここでジョンが一発、ボンとベースを弾いたのを合図にロジャーが復活し、フレディもコーラス参加、ブライアンも復活。

ジョンのこの機転により最悪の危機から脱することができたものの、この日はフレディによる「Everybody !」のかけ声もなし。

Queenにとって悪夢のような瞬間だっただろう。

一方で、ジョンの事故が発生した時の冷静な対応と、堅実な仕事ぶりが印象に残るテイクともなった。

続いて演奏される⑨ You Take My Breath Awayでも、⑧ ‘39での事件が尾を引いているのか、フレディはファルセットも使わず、ヴィヴラートも使わない、無難で安全運転な演奏・・・

B-Part (⑩~⑭)


⑩のWhite Manでは、フレディが部分的に叩きつけるように歌っているのが気になるくらいで、特に大きなトピックもない。

一人多重アカペラでも、あまり無茶をしない、無難なパフォーマンスで、最初の方だけフレディの生声で途中からヴォコーダー使用してることくらいかな、と思って聞いていたところ、突然You Take My Breath Awayの冒頭コーラス部分が一人多重アカペラで登場。

もしかして、トピックがないかもしれないと思って聞いていただけに、フレディがサービス精神を発揮してくれて、助かった(苦笑)

次の⑪ Bohemian Rhapsodyでは高音域のキーが出にくいのか、至る所でフレディがキーを下げて歌っている。

オーディエンスはそんなこととは関係なしに盛り上がっており、Queenがステージを降りている間も、テープ再生されているOpera Partをオーディエンスが大合唱していて良い雰囲気である。

そして、Queenが再登場してさらに盛り上がるはずだったのだが、PAトラブルのせいか、歌えなかったのか分からないが、「So you think you can stone me And spit in」はヴォーカル落ちで、フレディの声は「in my eye」から入っている。

どうにも、この日はしっくりいかない。

もはやQueenもやけくそになっているのか、⑫ Stone Cold Crazyはカウントもなしに演奏開始している。

ところが、そんなやけくそ気分が功を奏したのか、この曲では4人の息がピッタリと合っていてすばらしいテイクになっている。

この曲に関してはミスもPAトラブルもない。

そして、⑬ Keep Yourself Aliveが始まると⑫ Stone Cold Crazyの出来に満足したのか(Cleveland公演でもやっていたことから考えれば、恒例のパフォーマンスなのかもしれない)冒頭のインプロでヴォコーダーを使って遊ぶような余裕がフレディに出てくる。

ところが、1番の歌詞後の間奏で、またもやブライアンにトラブルが。

妙なフレーズを弾いたかと思うと、失速、一瞬ギターが落ちている。

続く⑭ Liarでは、よく言えば丁寧、悪く言えば安全運転といった風情の演奏をしているが、この曲でもブライアンが冒頭のギター・ソロで音を思いっきり外している。

「Liar, I have sailed the seas」あたりから演奏に勢いが増してくるものの、ここまでの内容が内容だけに・・・

それに録音もこの曲のコーダでフェード・アウトしている。
最終更新:2011年05月15日 16:52