1977.02.05 USA, New York, Madison Square Garden

<セットリスト>

① Ogre Battle (終盤のみ)
② White Queen (As It Began)
③ Somebody To Love
④ Medley
 ;Killer Queen
 ;The Millionaire Waltz,
 ;You’re My Best Friend,
 ;Bring Back That Leroy Brown
⑤ Sweet Lady
⑥ Brighton Rock / Guitar Solo (Inc. Fr re Jacque, Son & Daughter)(欠落あり) / Brighton Rock (Reprise)
⑦ ‘39
⑧ You Take My Breath Away
⑨ White Man / The Prophet’s Song (Inc. Death On Two Legs)
⑩ Bohemian Rhapsody
⑪ Stone Cold Crazy (終盤欠落)
⑫ Keep Yourself Alive
⑬ Liar
⑭ In The Lap Of The Gods . . . Revisited
⑮ Now I’m Here
⑯ Big Spender / Jailhouse Rock (欠落あり)
⑰ God Save The Queen (終盤欠落)

<マテリアル情報>

1.音源:AUD録音
2.音質:(^^;)(観客の声などが目立つが、演奏自体ははっきり聞こえる)
3.収録:上記の曲のみ収録

<レビュー>


今回のレビュー対象は、2月5日のNew York公演である。

この日は記念すべき、Queenにとって初のMadison Square Garden公演である。

ロックの聖地の一つであるMadison Square Garden、この会場で公演を行おうと思えば、実力・人気共にトップクラスでなければ不可能である。

つまり、この会場で公演が行えるということイコール北米大陸において超一流のアーティストであると認められたということを意味する。

さらに、このツアーでは3月3、4日とLos Angeles郊外のInglewoodにあるGreat Western Forum公演も行っている。

このGreat Western Forumという場所も、ロックの聖地であり、かのLed Zeppelinも1970年3月27日に初めて公演を行って以来、何度と無く名演を繰り広げてきた場所である。

1974年初夏、ブライアンの体調不良により途中帰国と相成った初の全米ツアー(Mott The Hoopleの前座だったが)から、およそ3年。

Queenにとっても感慨深いものがあったのではないか。

音源に関しては、以前はJailhouse Rock終盤がカットされたものが主に流通していたが、近年になってJailhouse Rock終盤とGod Save The Queenの途中までを収録した音源も登場している。

音質に関しては、オーディエンスの話し声や歓声が目立ち、少々ざらつくところもあるが、演奏自体はしっかり聞き取ることが出来る。さて、それでは演奏のレビューに移ろう。

A-Part (①~⑥)


この音源では、Intro / Tie Your Mother Downが収録されておらず、① Ogre Battleの「The ogre men are going home~」前の間奏部分から録音が始まっている。

フレディは前日のCollege Park公演よりも明らかによく声が出ており、好調そうである。

この曲が終わると、爆竹が会場内で鳴り響いている。

② White Queen (As It Began)では、演奏中でもけっこうおしゃべりが聞こえる。

ただ、この日のこの曲では、中間部のインスト部分がすばらしく、フレディの弾く情熱的なピアノにブライアンの幻想的なギターが重なってくる瞬間など非常にすばらしい。

そんな演奏に、オーディエンス側も耳を奪われているのか、中間部あたりではおしゃべりが聞こえなくなっている。

ちなみに、この日のフレディは、キーをあまり下げずに歌っている。

続いて、フレディが③ Somebody To Loveのアナウンスをすると会場からすさまじい拍手と歓声が起きている。

ただ、この日の演奏はフレディの声に少々伸びが無く、けっこう強引に歌っているように聞こえる部分もある。

「Oh, Lord~」も声が出なかったのか、この日はあまりはっきり聞き取れない。

また、この日は「Someday I’m gonna be free, Lord !」のSomedayをOnedayと歌っている。

「Find me somebody to love~」の繰り返しはこの日も9回。

④ Medleyになるとフレディの喉も暖まってきたのか、力強いヴォーカルを披露している。

The Millionaire Waltzでは、ところどころキーは下げているものの、「Come back to me, oh my love~」などでの声の伸びがすばらしく、ついつい聞き惚れてしまう。

なぜか、この日は間奏が始まって、あまり間を置かずギター・ソロが入ってきている。

④ Medleyが終わると、⑤ Sweet Ladyが演奏されるが、この日はこの曲あたりからフレディのテンションが俄然変わってくる。

この曲では、冒頭から思いっきり声を張り上げており、一部叩きつけるように歌っている。

「(Ooo, you really do)」などでは、「(Ooo, you really, really, really, ・・・・)」とまだまだ歌い足りないとばかりに何度も繰り返し。

そして、コーダの前にいつもよりタメを長く作ってから、力強く「Stay swee~~~t 」とフレディが歌っている。

と、ここでリクエスト・タイムに。

会場からは、Keep Yourself AliveやStone Cold Crazyなどの曲名が。

でも、演奏されるのは⑥ Brighton Rock。

この日のBrighton Rockも相変わらず超高速のアレンジで、会場内も大興奮状態になっている。

ところが、Guitar Soloに移ってすぐに録音が一度終了。

録音が再開されると、いきなりFr re Jacqueパートになっている。

Son&Daughterのリフは、ギターのチューニングが狂ったのか、壮大に音が外れており、まったく別のメロディーになってしまっている。

Acoustic Part (⑦、⑧)


前日のCollege Park公演では、あわや演奏崩壊か、という危機に直面した’39なせいか、この日は少し慎重に演奏が始まっている。

フレディのヴォーカルもスタジオVer.のキーを守って丁寧に歌っている感じである。

そんな中、曲冒頭でロジャーが「Yea~h 」と小さく雄叫びを上げている。

ただ、間奏でのロジャーの「Ah~」という超高音域のコーラスは、声が出にくそうで、あまりよい出来ではない。

ただ、前日に失敗した部分を無事通過したからか、間奏後は演奏に勢いが出てくる。

フレディの「Everybody !」というかけ声も登場し、オーディエンスも非常に盛り上がっている。

曲のコーダでは、演奏の出来に上機嫌となったのか、フレディが「Pon, pon, pon, ponponpon, pon・・・」とスキャットを入れている。

続いて⑧ You Take My Breath Awayが演奏されるが、この日のフレディの調子を考えれば、もっとファルセットを多用してもよいように思うのだが、なぜかあまりファルセットは使っていない。

ただし、ヴィヴラートは多用している。

また、この日は「Stolen my heart~」の歌詞を「Stolen my love~」に変えて歌っている。

B-Part (⑨~⑭)


Acoustic Partが終わると、一転してすさまじくハードなWhite Manが始まる。

特に、この日はフレディのヴォーカルがすさまじく、高音域のキーから低音域のキーまでしっかり声が出ている。

勢いが余っているのか、アドリヴでWhite Manの中の歌詞を間奏部分などに唐突に入れたりするので、この日のこの曲、レビューを書くために歌詞集を見ながら聞いていたのだが、どこの歌詞を歌っているのか追いかけるので精一杯だった。

一人多重アカペラ部分では、途中から生声にヴォコーダーで加工された声が混じってくる。

ちなみに、この日はThe Prophet’s Songに出てくる「Listen to the wise man~」と「Listen to the mad man~」という歌詞を使って、自由にアドリヴを展開している。

⑩ Bohemian Rhapsodyは、所々キーが下がっているがフレディの声自体はよく出ている。

間奏のギター・ソロも情熱的なのだが、コーダの「Nothing really matters~」前のギター・リフは、チューニングが狂ったのか妙なフレーズを連発している。

間髪入れず⑪ Stone Cold Crazyが始まっているが、この曲でもフレディのハイテンションぶりは変わらない。

College Park公演同様、「Wow ! Here men !」は「Look out !」に変更。

ただ、「Here come the deputy. He’s gonna come and getta me~」でヴォコーダーを使用して声を変えていて、せっかくのハードな演奏に水を差したような・・・

また、録音自体も、「They got the sirens loose」あたりでいったん終了しており、コーダは丸々カットになっている。

録音が再開されると、⑫ Keep Yourself Aliveにイントロがすでに始まっている。

この曲でもフレディの勢いは衰えておらず、イントロの最中でもお構いなしにオーディエンスを盛んに煽っている。

なお、今回のレビューを書いていて気が付いたのだが、「Mind you grow a little wiser, a little better every day~」という歌詞は、「How I had to keep on tryin’ and get better everyday~」に変えて歌われているが、これは他の公演でもそうなので、どうやらフレディの癖か、あるいはライヴでの歌いやすさなどを考えてのアレンジである可能性が高い。

⑬ Liarでは、イントロのドラム・ソロ途中でフレディがかまわずMCをしているため、ロジャーが「本当に初めて良いのか?」と思ったのか、一瞬ドラム・ソロ途中で間が空いてしまっている。

とはいえ、演奏自体は非常に充実していて、最後の「All day long~」でギターが音を外さなければ、決まったのだが・・・

⑭ In The Lap Of The Gods . . . Revisitedは、音源としてはDay At The Races Tour初登場。

所々、フレディのヴォーカルが語るように聞こえる部分はあるが、非常に頑張って歌っているのが分かる。

「I can’t set you free from me~」を「I can never set you free from me~」と歌詞を変えるアドリヴも登場。

この曲の最後爆発音とともにQueenはいったんステージから降りている。

Encore Part (⑮~⑰)


アンコール待ちの間、会場では拍手に混じって爆竹が炸裂している。

爆竹といえば、Led Zeppelinの1977年北米ツアーでも、4月30日Pontiac公演などで爆竹の嵐とでも言いたくなるほど、会場ですさまじい量の爆竹が鳴らされているのを確認できる。

この時代の北米では、会場内に爆竹を持ち込めたということは、現在から考えれば信じられないことだが、こういうお祭り騒ぎの場と化しているライヴ会場の雰囲気というのも聞いていてなかなか楽しいものである。

アンコールの1曲め、⑮ Now I’m Hereは、「Down in the city just Hoople’n’me」のcityがNew York Cityを指し示すといわれているので、いわばご当地ソングでもある。

そのためか、会場内は最高に盛り上がっている。

もちろん、演奏も充実の一言。

二度目のアンコール・ブレイクでは、シンバルのような音が鳴り響いているが、オーディエンスが何らかの応援グッズを鳴らしているようである。

先の爆竹同様、この日のMadison Square Gardenは本当にお祭り騒ぎの場と化しているようである。

⑯のBig Spenderは冒頭のドラム・ソロが普段よりもゆっくりしたテンポで始まったため、全体を通して遅めのテンポで重厚に演奏されている。

その一方で、続くJailhouse Rockは普段以上に超高速テンポで演奏されるので、2曲の対比が鮮やかだ。

このJailhouse Rockでは、フレディが他のメンバーを置き去りにするかのように自由自在にアドリヴの歌詞を挿入しており、次にどうなるのか聞いていてまったく予測不可能なテイクになっている。

ただ、残念なことに途中一瞬音飛びが発生している。

⑰ God Save The Queenが鳴り響いている中、またもや爆竹の嵐が聞こえる。

いったい、どれだけの量の爆竹が会場内に持ち込まれたのか。
最終更新:2011年05月15日 17:19