1976.03.22:日本,東京,日本武道館

<セットリスト>

① Introduction / Bohemian Rhapsody (Opera Part) / Ogre Battle
② Sweet Lady
③ White Queen (As It Begin)
④ Flick Of The Wrist / Brighton Rock (Ending)
⑤ Medley
  ;Bohemian Rhapsody(Ballad Part)
  ;Killer Queen
  ;The March Of The Black Queen
  ;Bohemian Rhapsody(Finale)
  ;Bring Back That Leroy Brown
⑥ Brighton Rock / Guitar Solo (Inc. Fr re Jacques/ Son & Daughter (Ending)
⑦ The Prophet’s Song / Stone Cold Crazy
⑧ Doing All Right
⑨ Lazing On A Sunday Afternoon
⑩ Keep Yourself Alive
⑪ Liar
⑫ In The Lap Of The Gods . . . Revisited
⑬ Now I’m Here
⑭ Big Spender / Jailhouse Rock
⑮ God Save The Queen

<マテリアル情報>

1.音源:AUD録音
2.音質:(^^)/(少々ノイズも聞こえるが、会場で聞いているような臨場感ある音)
3.収録:完全収録 (⑫のイントロが若干欠落)

<レビュー>

今回のレビュー対象はQueenにとって二度目の来日となった1976年の日本公演初日、3月22日日本武道館公演である。

この日のライヴを収録した音源は2011年まで一切流通していなかったが、TARANTURAレーベルより突如登場した。

しかも、会場内で聞いているような臨場感ある音質でのリリースである。

しかしながら、それ以上に特筆すべきことは、フレディの調子がとても良いということである。

正直、この二度目の来日公演はフレディの不調ぶりが顕著であるので、この日は初日ということもあり、「まぁ、きびしいかな」と思っていた。

ところが聞いてみたらこの来日公演中、もっともフレディのヴォーカルが安定して出ていることが判明した。

パフォーマンスの水準としては、前年のクリスマスコンサートより明らかに上だし、Dan Lampinski録音による同年1月30日のBoston公演と比べてもパフォーマンス水準は上だ。

セットリストは標準的なもので、珍しい曲をやっているわけではないが、この二度目の来日公演を語る上で欠かすことの出来ない非常に重要な音源といえる。

では、演奏のレビューに移ることにする。

この音源ではNight At The Opera TourではおなじみのOrchestra Tuningからナレーションを挟んで、Bohemian RhapsodyのOpera Partのテープが流れるという一連の流れを完全収録している。

Bohemian Rhapsodyでのフレディの第一声「So you think you can stone me~」はほぼオリジナルのキーで歌われており、フレディが好調であることが分かる。

この冒頭部分、「And leave me to die~」の「to die~」のキーが下がるくらいで、後はほとんどオリジナル通りのキーで歌っている。

続くOgre Battleでもフレディは絶好調といってよく、よくキーを下げて歌う「Ogre Battle lives for evermore~」の部分でもキーを下げずに歌っている。

Ogre Battleが終了すると、初めてMCが入る。

フレディが「Thank you ! Good evening~everybody~」と英語でMCをした後、久々の日本語MC登場・・・なのだが・・・

「ワタシタチハ、ニッポンニモ・・・・・・ニッポンニマタキテ、トテモシアワセデス!」とフレディが噛んでしまう。

とはいえ、そんな事とは関係なしに日本武道館内は約1年ぶりに日本のファンの前に姿を現したQueenに大興奮状態で、あちこちからメンバーの名前を叫ぶ声が聞こえる。

② Sweet Ladyでもフレディが冒頭から高いキーを安定して出していて、本当にこの日は調子が良いんだなぁ、と感じる。

この曲のコーダで挿入されるアドリヴでもフレディは高いキーを出している。

と、この曲が終わったところで、「カンパイ」のMCが入っている。

③ White Queen (As It Began)のイントロが鳴ると、録音機近くの女性が、「キャ~!!!この曲~!!!フレディ~!!!」と絶叫している。

この曲では、「So sad my eyes~」のあたりから、ギターの音がおかしくなり、ブライアンが必死にチューニングしている様子が聴ける。

次の④ Flick Of The Wristでは、フレディがドスを効かせたヴォーカルで曲の歌詞をよりいっそう強調するかのようなパフォーマンスを披露。

ちなみに、一回目と三回目の「It’s a rip-off」はカットされている。

⑤のMedleyは、まず一曲目のBohemian Rhapsodyでフレディが途中まではオリジナルのキーに忠実に歌っており、よくキーが下がる「Mama, life had just begun~」もオリジナル。

ただし、「If I’m not back again this time tomorrow~」の「tomorrow」や「Carry on, carry on~」 はキーを下げている。

と、この曲のギター・ソロでまたもやギターのチューニングが狂い、音が合わないままKiller Queenに突入。

あろうことか、冒頭のピアノ・イントロのバックでギターのチューニング音が聞こえる。

おかげで、この曲のギター・ソロはなんとか音程を外すことなく乗り切っているが・・・

なお、この録音ではジョンのトライアングルの音が良く聞こえる。

会場からも、一瞬歓声が上がっている。

間髪入れず始まるThe March Of The Black Queenでは、珍しくロジャーが「My life is in your hands~」をいう合いの手を入れる部分で入り損ねており、一瞬妙な間が空いてしまっている。

Bohemian RhapsodyのRepriseではすべてオリジナルのキーで歌っている。

この日のフレディは本当に絶好調だ。

Bring Back That Leroy Brownでのフレディによるピアノもどことなくご機嫌に聞こえる。

Medleyが終わった後、またもやギターのチューニングがおかしくなったのか、⑥ Brighton Rock前のフレディのMC中ずっと、ブライアンはチューニングをしている。

チューニングとフレディのMCがほぼ同時に終了し、演奏が始まるが、幸いにもチューニングがうまくいったようで、ブライアンはここまでの鬱憤を晴らすかのような見事な弾きっぷりである。

Guitar Soloに突入すると、「ブライア~ン、こっち向いて~!!」という叫び声が聞こえる。

ちなみに、この日はFr re Jacquesのみの登場。

この曲が終わると、Night At The Opera Tourの目玉、⑦ The Prophet’s Song・Stone Cold CrazyのMedleyへ突入。

イントロでは「ブライア~ン!!ロジャ~!!」という叫び声があがる。

The Prophet’s Songでは、「He told of death as a bone white haze~ (中略) ~Listen to the good plan~」はカットされているが、「Oh, people can you hear me~」から始まるフレディの一人多重アカペラ部分が終了した後のRepriseでは、あちこち歌詞が飛んだり、アドリヴの歌詞を入れている。

なお、この日の一人多重アカペラ部分には特に他の曲は挿入されていない。

The Prophet’s SongからStone Cold Crazyに移ると、すさまじい勢いの演奏が展開される。

このあたりの静と動の対比は初期Queenならではだろう。

⑧ Doing All Right前にはフレディによるMCが入っている。

この曲でのフレディは、「I Should be doing all right~」で多少息切れするものの、その他のところでは声の伸びがすばらしく、間奏部分などでもご機嫌でアドリヴを挟んでいる。

ちなみに、最初の間奏後に歌われる歌詞は「Yesterday my life~ (中略) ~God knows what~ (中略) ~I should be doing all right~」ではなく、「Yesterday my life~ (中略) ~Get a feeling I should be~」の方で歌われ、2回目の間奏後には、「Doing all~right!!」とのみ歌われている。

この曲が終わると、フレディによる「Thank you very much!!アリガトー!!」という英日入り乱れたMCが入っている。

⑨ Lazing On A Sunday Afternoonのイントロの演奏にかぶせてフレディがMCをしているが、この間「次はあの曲だよね」などというオーディエンスの会話も聞こえる。

なお、冒頭のピアノ・イントロでは、フレディがやはりミス。

一方で、いつもなら「I’ll be lazing on a Sunday afternoon~」の「afternoon~」のキーを下げるのだが、この日はオリジナルのキーで歌っている。と、冒頭のピアノ・イントロを除けば、ベスト・テイクか、と思っていたのだが、最後の「Lazing on a Sunday afternoon~」の「Afternoon~」はキーを下げているし、最後の最後、コーダのギターの音が外れている。

⑩ Keep Yourself Aliveでは、サビはいつも通り「Keep yourself alive, keep yourself alive All you people keep yourself alive」で統一されている。

ただ、この日は間奏部分にいつもより多くフレディがアドリヴを挟んでいる。

それから、ドラム・ソロではあちこちから「ロジャ~!!」という歓声が。

あまり間を置かず始まる⑪ Liarでは、「Liar」を連呼するパートや「All day long」を連呼するパートで、会場から「Liar!」、「All day long!」というコーラスが自然発生している。

この曲が終了してすぐテープが切れており、⑫ In The Lap Of The Gods . . . Revisitedの曲紹介と若干ではあるがピアノ・イントロが欠落している。

イントロのメロディーはRevisitedではない方のIn The Lap Of The Gods冒頭のメロディーが付いている。

この日のフレディの好調さを反映しているかの如く、この曲でもフレディは全体的に高いキーを出して歌っており、非常に感動的である。

この日のアンコールは、⑬ Now I’m Hereと⑭ Big Spender・Jailhouse Rockという標準的なもの。

まず、⑬ Now I’m Hereではあちこちから「フレディ~!!!」、「キャ~!!」などという叫声があがっており、演奏の方も全編に渡って会場中のオーディエンスによる手拍子付きになっている。

二回目のアンコール・ブレイクを挟み、ロジャーのMCからBig Spenderが始まると、会場から「ロジャ~!!」という歓声が。

この曲でもフレディはご機嫌なのだが、Jailhouse Rockに入ると、フレディはいっそうご機嫌で、途中「Yeah!!Yeah!!OK!!All right!!」などとオーディエンスとコール&レスポンスしている。

ただ、この日は初日ということだからか、特に他の曲は挿入していない。

この曲が終了すると、フレディが「Thank you!!サヨナラ!!Good-bye, everybody!!」とMCをしてこの日のライヴは終了。

会場には⑮ God Save The Queenが荘重に流れだす。

こうして、二度目の来日公演の初日を無事終えたQueenは休みを挟まず名古屋へ移動し、名古屋公演を行う。

しかしながら、名古屋公演におけるフレディは、この日とはうって変わって、声がいたるところでかすれたり、よれたりしており、絶不調といってよいパフォーマンス。

この初日に頑張りすぎたのか、はたまた別の原因があったのか・・・真相は・・・
最終更新:2011年06月23日 16:42