『ニンテンドーDS「世界樹の迷宮」ポッドキャスト』~第五回


宇田 ポッドキャストで送る『世界樹の迷宮』最新情報。
    広報の宇田と。
新納 新納です。
宇田 ディレクターの新納です。本日はエインシェントの古代さんにお越しいただきました。
古代 古代です。どうぞよろしくお願いします。
    ちょっと風邪気味で喉がやられてますけど(笑)。よろしくお願いします。
宇田 よろしくお願いします。本日、エインシェントさんにお伺いしまして、
    インタビューというかざっくばらんな感じでお願いいたします。
古代 はい。
宇田 早速ですけれど、いくつかの質問とですね、こちら側の……
    ユーザーが聞きたいだろうなというか僕自身が興味がある事とかも聞いて
    いければと思っています。
古代 はい。
宇田 まずですね、世界樹の迷宮というゲームの企画をご覧になった時の
    インプレッションってどんな感じでしたか?
古代 えーとですね、最初は確かイラスト数点と、あと森の絵が出た位の
    バージョンですかね?
新納 そうですね。
古代 動いてはいなかったと思いますけれど、第一印象は
   「DSでこんな綺麗な絵が出るんだ」っていう(笑)。
   当時、まだ僕は買ったばっかりだったんですよね。
   で、あんまりゲームをやっていなかったんですけれど「ああ、なんか凄い
   綺麗だなぁ。こんな3Dがこんな風に表示されるんだ」なんて思いましたね。
宇田 じゃあ、どちらかというとゲーム内容よりも「世界樹ってこういう絵が出るんだ」みたいな?
古代 ああ、そうですね。どちらかというとやっぱりビジュアルの方から入るので、
   曲を作る時も絵とか動きの方からインスピレーションを得るというか
   そういう感じでやってますね。
宇田 じゃあ、あれですね、例えばですけれど、ただ単に新納から投げられたものと
   言うよりも少しずつ上がってくる絵に対してどんどん曲を作るという……。
古代 ああ、そうです。本当にそういう感じで。
宇田 なるほど。じゃあ結構本当に、投げては返ってきて、投げては返ってきてみたいな。
新納 始めの頃とかも「文章とかよりはなるべく早く動画で欲しい」とかってのを
   頂いてですね、サンプルロムを出すまでに時間がかかってしまったのですけれど(笑)
   そういうところを重視されているなぁと思いましたね。
古代 はい。
宇田 じゃあ、本当に……ええと、すみません、失礼になるかもしれませんが……、
   新納がこういう曲でっていう適当な指示を出してみたいな……。
新納 ないない(笑)
宇田 わけじゃあなくて、新納さんと二人三脚という感じで。
古代 はい。
新納 そうですね。
宇田 なるほど。そうなんだ、それは凄いな。
新納 最初、僕が古代さんの曲を聴いていて――当然、古代さんの作っている曲って
   アクション寄りの曲が元もと多かったんで……。
古代 そうですね。
新納 なので、テンポの部分とかも、僕はこういうのが欲しいんです、って話がいった
   時も「いやあ、3Dダンジョンゲームは合わないから出るまで待ってくれ。
   絶対、こっちのがいいから」
   って言われて待ってたらそっちのが良かった(笑)。
   ああ、これでもし、そのままアクションっぽいのだったら疲れただろうな、と思って。
   始め古代さんにも、そういう系だったら長く遊べないゲームになりますよって
   言われたんでじっとみてたんですよ。
宇田 なるほどねえ。
新納 本当にそうだった(笑)
宇田 よかったね、我を通さなくて(笑)。じゃあ、その過程でどんどんコンセプトが
   固まっていったと思うんですけれど、世界樹の迷宮のサウンドコンセプトみたいなもの
   ――古代さん的なものと新納的なものがあると思うんですけれど――はどういった
   ものなのですか?
古代 サウンドのコンセプトですか。
宇田 はい。
古代 そうですねえ、まず私自身こういうオーソドックスなRPGの曲って今まで
   作った事がないんですね。なのでコンセプトというよりも、それをどういう風に
   表現しようかというところから始めたというか……。
   その過程の中でいろいろ新納さんとの話のやりとりが出てきて……例えば新納さん
   がどういうサウンドを必要とされているのかというのも、その中からだんだんと
   見えてきて、だんだんそうやってトークを繰り返しているうちにコンセプトが
   固まっていったなあって感じなんですけれどそのコンセプトというのは、いわゆる
   「昔懐かしいスタイル」(笑)の楽曲っていうことです。
   最初は普通にシンセとか――今でいうソフトシンセ――で曲を作っていたんです
   けれどどうも求められている感じがなかなか得られていないようだったので(笑)
新納 すいません、いろいろ注文して。
古代 いえいえ。で、結構、ボツ曲とかね――今度、ボツ曲集が特典で付きますけど
   ――まぁ、あれを聴いていただけると色んなノリが入っていて
   多分、その間にそういうのが出てきたんだなってのがね(笑)。
   まあそんな中で、じゃあどうすれば昔懐かしい感じが一番出せるか、
   ……話しているうちに曲調とかよりも、ひょっとしたら音源の部分でそういう
   特徴があった方がいいんじゃないかなって思って、当時たまたま別の
   企画でですね、PC88――というかFM音源を使う企画があって、で、たまたま88を
   倉から(笑)倉というか物置から出していたんですよ。
   で、じゃあこれをサンプリングして鳴らしてみましょうっていう話になって、
   試しに幾つかとってお聴かせしたら「あ、この感じです」っていう。
宇田 なるほど。
古代 ああ、やっぱり音源だったんだな、みたいな(笑)
宇田 それってのは新納さん的にはピーンとすぐ来たの?
新納 聴いた瞬間、そうだなって感じは凄いしましたよ。結局、僕らが思っている昔の
   ゲームミュージック、まあ、あんまり昔の昔のって言うつもりはないんだけど、
   好きだった頃のゲームミュージックってわりかし分かりやすいっていうか音色の
   部分も響きが良くて覚えやすくて、でもどこか特徴があるっていうような。
   その頃って、どの音楽を聴いてもゲームミュージックに相当するものが無かった他に。
   そういうものにパッと近づいたなって思ったんで「あ、これはきっとこの音色の
   音源が持っている魅力なのかな」っていうのも。
古代 具体的な音色のご指示とかもあったりして、その中で面白いなと思ったのが、
   よく巷であるRPGで使われている音ってストリングスが主体じゃないですか?
   で、ストリングスの音はあまり使わないで欲しいっていう風に(笑)。
   ストリングスをサンプリングした音は、どうしてもそっちの方向へイメージが
   引きずられてしまうので、そういう話も途中で出てたと思います。
新納 出てましたね。
古代 で、じゃあもうFM音源しかないなっていう確信をしたという。
新納 FF4とかでストリングスアンサンブルのBGMを使うじゃないですか、あれ使うと
   多分、どんな風に曲を作ってもユーザーさんの方から聴くと、もうあの印象の
   延長になっちゃうと思うんですよ。
   だから、そこをまず避けようかなという。で、それを言っておくときっと凄い
   いいものが上がってくるんじゃないかなっていう身勝手なね(笑)
宇田 よかったね、汲んでいただいて、本当に。
新納 ありがとうございます。
古代 あのとき丁度、DSでチルドレン・オブ・マナやっていてかなりハマっていて、
   多分あの曲が凄い脳裏に焼き付いていたんだと思うんですけど、その調子で
   戦闘曲を作っていったら新納さんに「これは違います」って言われて(笑)
新納 すいません(笑)
古代 それも入ってますからね、特典の中に。
新納 聴いていただければ。
宇田 本当に。あー、次の質問が制作過程で苦労したことなんですが、もう今、
   答えていただいた感じです(笑)一連の話で。
   自分もちょっと音楽を作ったりとかするんですけれど、FM音源をPC88から
   サンプリングしてくると結構な作業だったんじゃないかなと思うんですけれど、
   そうでもなかったんですかね?
古代 サンプリングしたのは僕じゃなくて、もう一人の効果音とかを一緒にやっている
   うちの新井っていうのにやってもらったんで。私自身の作業じゃないんで私は
   大変ではなかったんです。
   えーと、音色の選び方なんですけれど88のあるゲームを……。
新納 言っちゃって欲しいですね(笑)
古代 昔懐かしい、……って大丈夫なんですか?
宇田 大丈夫です。
古代 まあ、ぶっちゃけソーサリアンなんですけれどね(笑)
宇田 なるほどなるほど。
古代 それで使われているのと同じ音色セットってのが、っていうか自分のライブラリが
   あって、そこから何番と何番だっけなぁと引っ張り出して
   まぁ、イースとかあの辺とかも被っているんですけれどね。
宇田 なるほど。
古代 で、それをメモって使われている音色を全部サンプリングして、っていう
   流れだったんです。
宇田 あー。
新納 じゃあ、結構選別してから、って感じだったわけですね。
古代 そうですね。際限なくやるとメモリが無くなってしまいますし、どうせなら特徴の
   あるあの音を、ってことで同じものをなるべく使ってっていう事で。
   でも本当に幅が広いんですよね。メガドライブの時代までずっと貯めていたものが
   あって、でやっぱりソーサリアンの頃とメガドラの後期の頃の音色って
   全然違うんであえてその前期の音を持ってきたんですよね。
宇田 なるほど。何か他に苦労したこと、お二方の中でありますか?
新納 始めの頃、どういう曲を僕が求めているのか、僕に音楽の知識がある訳じゃあ
   ないんでなかなか伝えきれなかったし、その分、最初に走り始めるまでっていうの
   が結構かかりましたね?
古代 そうですね。
新納 そこが僕の中で一番の苦労でそこから先は思った通りの曲をいただいていたので全然(笑)
古代 本当に最初だけですよね。
宇田 そのコンセンサスをとる部分が?
新納 そうですね。ただね、自分の中でちょっと変わったのが、多分……こう言うと
   良くないかなと思いますが、昔の古代さんの曲をみたいな雰囲気で始めお話しして
   いて、それっぽいものが
   一回来てたんですけれど、僕はそれもなんだか違う気がしてですね(笑)。
   多分、やられている内に古代さんの方も意識していかれたのかと思いますけれど、
   「今」の古代さんの曲をFM音源で鳴らして下さってたと思うんですよ。
   なので、自分はそっちの方がいいと思ったのでその後、その方向へ何事もなく
   疾走していったっていう感じ。
古代 そうですね。
新納 ただ、ユーザーさんが求められているものには当然、古い曲もあったと思うので
   織り交ぜながら、キャッチな部分に関しては折れないように「すいません、古く
   お願いします」って言いながら他の曲に関しては今の曲でっていう感じで、
   僕としては結果的に一番求めている新しい、今、提示するにふさわしいもので、
   なおかつ古い印象――っていうか僕のかつて好きだった印象がちゃんと入っている
   という曲になったなという感じです。
宇田 それは本当に僕もその通りだと思うんです。聴いた時にオールドライクとかって
   始め謳われていた時は全然僕の印象としてもそういうのは受けなかったんです、逆に。
   今、普通の音楽シーンとかでも昔のシンセサイザーをわざわざ使ったりする
   バンドが沢山あって、それと同じ感覚で聴けた感じがしたんですよ、
   それが凄い楽しかった。
   そういう感じ……なんて言うんですかね? 古いからこそ新しい、また、
   その新しさが格好いいみたいのが感じられて、世界樹の迷宮の音楽はかなり
   いいものになったんじゃないかなと。
新納 なんかね、FM音源からPCM音源への移り変わりも業界の都合みたいなものがあったと
   思うんですよ。音源が変わってPCMなら当然ゲームとしてキャッチーだったから、
   みんなそれに注力しちゃって
   FM音源って意味無く突然バッと切られたって感じたんですよ。だから、
   無くすべきではないくせに無くしちゃったのだったら、もう一回別に呼んでこようみたいな。
   古いとかではなくて、業界の都合でなくなったのなら戻してもいいじゃん、
   みたいな感じで今回は流した部分がかなり多いですね。
古代 それは苦労話という事でそうですね。まだちょっとあるんですけれど、コンバート
   して入れてみたはいいんですけれど、最初の頃はどうも音が薄いという風に仰って
   僕もそう思ってたんですけれど、本当に88でやっていた頃ってのは細かい
   テクニックをいっぱい使って、FM音源のチップの色んなところを細かくいじって
   音を出していたんですよ。
   で、それをやらないで単に音だけサンプリングして組み込んでもあの味って絶対に
   出ないんですよね、むしろ間延びしたような音というか。
   そうなってしまって、何か薄いな、という風に(笑)
宇田 それをどうやって解消したんですか?
古代 それはですね、結局FM音源だけでは厳しいだろうということで、そこでPCM音源を
   少し混ぜたりとかする事で奥行きを出したりとか、あと最初の頃はまだデータを
   細かく詰めていなかったので鳴り方もそんなにきっちり鳴らせていなかったっての
   もあるんですけれど、いったん曲を全部入れ終わった後に細かくチューニングして、
   割と鳴りの悪かった曲も良く聴こえるように直したりとか。
宇田 それはDSのハード的な特性ってのもあった?
新納 まあ、ものが違うじゃないですかFM音源とPCM音源って。だから、その差違を
   どう持ってくるかって事ですよね?
古代 そうですね、はい。
新納 FM音源チップを積めば良かったんだけどね(笑)。アドバンスのスロットにFM音源
   チップを積んでね、専用ユニットを付ければ凄いいい音だったと思うんですよ、
   それはそれで(笑)
宇田 いくらするんですか、それは。
新納 分からない。いまだったらあれでしょ? YAMAHAのチップなんていくらもしない
   でしょ、きっと。
宇田 まぁ、しないと思うんですけど。えーと、あと……新納と仕事をしてみて
   どうでしたか? 新納というクリエイターは?
古代 あー、いや、なんかですねぇ……全部、褒め言葉になってしまうんでわざとらしい
   なぁと思われるといやなんですけれど、正直に思ったのが、今の話の流れでも
   おわかりになると思うんですけど楽曲的にいいと思ってもゲームに合わないと
   思ったら、こうバサッと決断が凄い早いんですよ。やっぱり右往左往されてしまう
   というのが一番、――それは音楽の人だけじゃなくて、どの分野の人もそうだと
   思うんですけれど――上で音頭を執っている方が決断が鈍ってしまうと「どっちを
   作ればいいんだろう」という風に迷ってしまうんですけれど、そういう事が無く
   ですねまた、こちらがいろいろ「これはこういう事ですか?」っていう風に訊くと
   すぐ的確に返ってきますので、それは非常にやりやすかったですね。
   だから、本当に最初だけですよね。
   最初にトークをして方向性を決めてしまってあとはスッと、ええ。
宇田 よかったねえ、評価してもらって(笑)
古代 いえいえ。
新納 ここは俺からも言わせてもらうと、当然、僕の年齢からしてゲーム作りしててです
   ね、古代さんというと雲の上の人なんですよ自分もファンな部分があって
   始めの頃、本当にどうやって喋っていこうって思ったんですけど、古代さんを
   使ってて変なものにしたらね申し訳が立たないと思った、ゲームミュージック好きな人に。
   だから、もうどう思われてもいいからいいものを作ろうって、他の職場でやるより、
   他の事をやるより腹をくくった部分がある。だから、駄目だと思ったら駄目って
   言おうってあるところで決心して切り替えたんですよ。
宇田 なるほど。
新納 それで、もし評価していただけるんだったら……。
古代 それで凄く良かったなあと思いました。それがなければFM音源の話なんて出てこな
   かったと思いますしね。
宇田 では、逆に古代さんと仕事をしてみてどうだった?
新納 俺にそれ訊くんだ(笑)
宇田 そうそう。
新納 あのですねぇ、古代さんが凄いいいなあと思ったのは、どういう方向の話をしても
   結局いいものを作ろうって話しか返ってこなかった、ってところに凄く僕はいい
   なあと思いました。
   特に途中で開発延期してしまってですね、その時に「申し訳ございません」って
   話があった時に「曲がこれで良くなるんだったら、出来ればこっちはいくらでも
   時間が欲しい」みたいな話をいただいてですね、この人は本当に曲を作る人なんだ
   なって思ったんですよ。
   なので曲に関してはお任せしていいなって心の底から思ったみたいな部分がありましたね。
古代 恐縮でございます(笑)
新納 絵描きさんとかでもそうですけど、スケジュールが優先になるってあるじゃない
   ですか、で当然スケジュールが優先になれば落ちてくるんですよクオリティって
   どうしても。
   それはビジネスだからしょうがない部分とかもあるんですけれど、やっぱり今回の
   ものってビジネスというのも大きいですけれど、こういう捨てちゃった人たちに
   対してずっとフォローしてなかった部分をフォローしようっていう意味が
   強いじゃない、このゲームって。その中でクオリティをこだわって貰えないん
   だったらやる意味ってあまり無いと思うんですよ。
   そういう意味でね、ああ、本当に古代さんで良かったなあって思いました。
古代 ありがとうございます。
宇田 じゃあ、ちょっと今、このHP上で質問を沢山いただいているんですけれど、
   質問もあるんですけれど何よりも「よくぞ古代さんでやってくれた」みたいな……
   何て言うんですか、感動メールみたいのが圧倒的に多くってですね、どちらかと
   いうと質問自体がかなりディープなものになってしまうんですけれど。
古代 ああ、もう何でも。
宇田 申し訳ないですけれど、そこをちょっとお答えいただければなと思います。
古代 はい。
宇田 まずですね、一番笑ってしまったのが「FM音源ってそもそも何ですか?」っていう。
   「シンセサイザーからの音を全部FM音源というのでしょうか?」これ女性からの
   メールだったんですけれど。
古代 簡単に言ってしまえば20年くらい前に一世を風靡したYAMAHAのシンセサイザーDX7に
   載っていたチップが元祖で、それで火がついたチップですよね。その後、
   PC88シリーズとか98シリーズに載って――当時、88とか98とかでゲームがいっぱい
   リリースされてたじゃないですか、で、その音源が使われて爆発的に広まったっていう。
宇田 なるほど。
古代 まぁ、音源の説明で「何ですか?」って言われると難しいですけれど。
新納 サンプリングを使わずに色んな音色が作れるようになった音源ってことですね。
古代 そうですね。当時、アナログシンセサイザーが主流だった頃は複雑な音を作るのが
   難しかったんですね。鐘の音とか、ああいう倍音が鋭いというか、ああいう音は
   アナログシンセで出せなかった。
   で、それをFM音源で初めて出せるようになったっていう。
   まぁ、出せない音はないっていうのが売りだったような気がします。
宇田 おー。そんな音を今回は使ったわけですね。
古代 はい。
宇田 あとですね、FM音源つながりが特に多かったんですけれど「某社のSFC用ソフト開発
   時のように新作曲をPC88上で作ったりという事は今回はあったのでしょうか?」みたいな。
古代 あー、それは無いんですよね。ていうのはですね88は起動できるんですけれど、
   5インチディスクが――当時はフロッピーディスクが、しかも5インチであれに記録
   してたんですけれど――
   予備が何枚かあるんですけれど、お仕事できるような、こう……まぁ、洒落で打ち
   込むのだったらいいんですけれど、それでもし何かディスクに致命的なトラブルが
   ね、時間も20年以上経ってますからそういう事故が起きたりとかしたらまずいん
   で、流石に88は使えないなぁと、ということでその後のDSのコンバートの事も
   含めますといったんサンプリングして、使い慣れている現在の環境で作った方が
   いいなあと思って、88は使わずに今の環境でやりました。
宇田 今の質問のお答えにつながるかもしれないんですけれど、今回の制作で5インチの
   フロッピーを漁っていた時にみつけたレアな物とかは特になかったんですか?
新納 なかったですか?
古代 あー、無かったというか……レアな物は殆ど出しちゃいましたからねえ(笑)
宇田 なるほど(笑)。他にFM音原系なんですけれど「古代さん自身は何かFM音源に
   特別な思い入れはあるのでしょうか?」という質問なんですけれど。
古代 そうですね、初めてまともに触ったシンセがFM音源っていうか……私は普通の
   ミュージシャンと違ってシンセとか宅録機材とか買って音楽活動をやってたわけ
   ではなくて……。
宇田 あ、そうなんですか。
古代 単純にゲームが好きで、当時ゲームがいっぱい遊べるハードといったらファミコン
   もなかったので88を買って、その88に付いてきたのがFM音源だと。
   で、音楽もやってたんでその88で曲を作ったりもしてたってだけなんですよね。
   だから、特別それにこだわってたというよりか、それしかなかった。
宇田 オンリーワンだったという訳ですね。
古代 はい。
新納 古代さんのね、ベーマガの見てましたからね。
古代 (笑)
宇田 何、なに?
新納 マイコンBASICマガジンっていうプログラム雑誌――素人のための――があって
   ですね、打ち込むとゲームになったりするみたいのがあったんですけれどその中で
   必ずゲームサウンドの特集があってMMLといって当時の音楽言語で記述すると曲が
   鳴るっていう時に古代さんが当然やられていてですね、ファンが多かったんですよ。
宇田 なるほど。
新納 でも、それくらい知っていて欲しい(笑)
古代 懐かしいですね。
宇田 申し訳ないです。 あと、えーっとですね、これはちょっと更に本来はないよう
   な、ディープなDTM的な観点からの質問なんですけれど「メインの使用機材等を
   教えてください。シーケンサー、サンプラー、シンセサイザーなど」
古代 シーケンサーはNuendoっていう。
宇田 はい。
古代 Nuendo3でサンプラーはHALION。
宇田 僕もHALION使ってるんです。
古代 あ、使ってるんですか(笑)。シンセはですね、結構たくさんあるんですけれ
   ど……世界樹と関係なしにってことですよね?
宇田 はい。
古代 まあ、ヴァイラス。それからV-tynth XT。あと何があったかな……あとQ rackで
   しょ。それから……何かVAシンセばっかりなんですけど(笑)
宇田 そうですね。
古代 あとjd990と、あー、MS2000Rか。その辺のVAものばっかりですけど、
   これはまた別の仕事の時に掻き集めた奴で(笑)。
   本当はソフト中心にやってたんですけど、ハードの音もいいなあって事で、
   最近はハードばっかりで曲を作ってるんで。
宇田 古代さんのmixiのコミュの写真があって、あまりシンセサイザーがあるイメージが
   なかったんで、本当にソフトシンセだけでやっているのかなあとずっと思ってたん
   ですけれど意外とハード好きなんですか?
古代 そうですねぇ、でもそれもここ二、三年くらいですね。
宇田 じゃあ、ずっとソフト系で?
古代 ずっとソフトですね。mixiの写真は知らないんですけれど(笑)。今ちょっと
   スタジオの位置が変わっちゃったんですけれど昔に在ったスタジオ、当時十年
   くらい前かな機材いっぱい詰め込んでいて、シンセオタ的に見ると飛行機の
   コックピットみたいで「お、かっこいい」とかやってたんですけれど、それも飽き
   ちゃって……。
宇田 (笑)
古代 夏場とか暑いんですよ。で、電気代も食うし、なにせ場所が狭くって飽きたら
   こんなのやってられないって事になって全部を売っ払っちゃって。
新納 なるほど。
古代 当時、ソフトシンセがぼちぼち出始めてたんですよね。これからはソフトの時代
   だ、とか思って全部ソフトにしちゃって以来ずっとソフトだったんですけれど
   でもやっぱツマミが触れないのが寂しくて、ある仕事をきっかけに買い戻し始め
   たんですけど、やっぱり実際に触れるのがいいなあと。
宇田 また最近ハード派に戻って置き場に困るんですね。
古代 置き場には困ってますね(笑)
宇田 最後の締めの一言を世界樹の迷宮の音楽を聴いていただくユーザーの皆様にという感じで。
古代 そうですね、特典とかいろいろ付きますし、ポッドキャストでも聴けますけれど、
   あれってどちらかというとですねプロトタイプというかそんなに細かく打ち込んだ
   りしていない音とかもあるんですよ。
   まず、新納さんに聴いていただく音っていうことで、かなり短時間に上げて
   「どうですか?」って聴いていただいた音源とかも中には入っているんで、
   実際にはDSの音って違ったりとかするんですよ印象が。
   さっきもちょっと話しましたけれど、入れてみたら薄かったんで、じゃあどう
   やったら深みが出てくるかなってのをその後に随分やってたんで実際にまずDSで
   聴いてもらいたいなっていうのがありますね。
   結構、自分でもたまに立ち上げてDSでチェックして聴くとニヤってするんですよ
   88の音がしているって(笑)。自分でやっておいてアレなんですけれど、普通の
   よくあるDSのソフトとは違って、その中に88が入ってるって感じですよね。
   88を知らない人には申し訳ないんですけれど、そういう知っている世代には
   懐かしいインパクトが絶対あると思います。
   とはいえ、先ほども仰っていましたけれど、あまり昔ではなくて新しい音も入れ
   つつ新しい感じに仕上がっているかなっていうところですね。
宇田 ありがとうございます、すみません押しかけて色々と面白いお話を聞かせてもらって。
古代 いえいえ。
新納 そうそう、うちの企画やりつつやっているサウンドの男がいてですね、今回、失礼
   ながらポッドキャストのオープニングとかを古代さんをフィーチャーしながら
   作った男なんですけどDSでの鳴りを聴いて「あー、やっぱり古代さんだな」って。
   自分で曲だけ作ってポッとやっちゃう人とか最近多いんですよ、実機に詰めて音を
   鳴らしてくれる感覚って自分が尊敬している時代のサウンドの人だなあって感動してました。
古代 そうですか、ありがとうございます。そう言っていただければ。
   そこは結構、時間をかけたんですよ、ええ。
新納 本当にコンバートまで先方がやっちゃうって事が多いんですよ、だから曲だけ
   作って鳴りはぐだぐだみたいな事が多くてもう。
   小西さんとか嫌がってたんですけれど、やっぱそこを詰めてくれる人がいるのは
   嬉しいなって言ってた。特に携帯ゲーム機ですからね。
古代 そこも任せていただいたのは良かったですね、はい。
新納 良かったです、本当に。

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最終更新:2006年12月23日 08:16