9.古都イスファハンから聖地ゴムへ
これまたラッキーでしたが、しばらく滞在する間に、彼がテヘランへ行くことになりその車に同乗させてもらえる事になったのです。イスファハンからテヘランは600キロほど、来た時に機上から見えた土漠地帯を今度は車で通って行くのです。舗装状態の良くない道を彼のピックアップトラックは100キロ以上でぶっ飛ばします。2車線の狭い道路を大型トラックがノンブレーキで行き違い、傍らには仰向けになった車が化石のように
転がっていました。最初はひやひやしましたが、そのうちに適度な揺れがもたらすのか激しい眠気が襲って
きました。運転している彼に申し訳なく、かなり我慢していたのですが、ついついうとうとしてしまいました。
転がっていました。最初はひやひやしましたが、そのうちに適度な揺れがもたらすのか激しい眠気が襲って
きました。運転している彼に申し訳なく、かなり我慢していたのですが、ついついうとうとしてしまいました。
夢心地で、昔のキャラバンの絨毯商たちもラクダの背に揺られ砂漠の中を何日も何日もかけて旅したのだろうなどと想像していると、分かれ道の傍らにロバを連れたおじいさんがヒッチハイクしていました。少し過ぎてから彼は止まり、猛スピードでバックしておじいさんと何か話しました。行く方向が一致したのか車をとめてロバを荷台に乗せ、おじいさんが座席に乗ってきました。おそらく地元の遊牧民か、小さな村で伝統的な生活を送ってきた人なのでしょう。しばらく彼と話をしていましたが私が日本から来たという事も途中の会話で想像することが出来ました。そのときにチラッとこちらを見ましたが、何も聞かなかったかのように透き通った目で遠くを見つめていました。その瞳の奥を見ていると、なんだかタイムスリップしてラクダを連れたキャラバンの商隊に出会ったように感覚がしてきました。
イランで感じたことのひとつに、この国の人達が良い意味でとてもマイペースで、何事にも変わらないということです。当時のわたしは、少し何かあるとすぐに動揺してしまい、どちらに進んだら良いのか、わからなくなってしまう事がよくありました。
今でもそうですが・・・。
とくにそのときの旅では言葉も土地感もなく戸惑うことの連続でした。どうして彼らが、このような戦火のなか平常心でいられるのかいつも不思議に思っていました。小さいころから、厳しい環境のなかでたくましく生きてきたこともその一つかもしれませんがそれだけはない生命力と生活力を感じていました。
しばらく後のことですが、シラーズ行きの飛行機に乗り遅れ飛行場で大変な思いをし、その帰りシラーズから
の飛行機が遅れ、さらに預けた荷物が出てこなくて、マシュハド行きの乗り継ぎに間に合わなくなりそうな時がありました。心臓がバクバク、のどはカラカラ、冷や汗が止まらずパニックになりそうになったことがありました。その時に、ふともういいか、なるときはなるし駄目なら駄目でもしょうがないという気持ちになりました。そのとたん、肩から力が抜け気持ちも落ち着き、とても楽な気分になりました。そして間もなくゴンドラから荷物が出てきて、飛行機にも間に合う事ができたのです。
の飛行機が遅れ、さらに預けた荷物が出てこなくて、マシュハド行きの乗り継ぎに間に合わなくなりそうな時がありました。心臓がバクバク、のどはカラカラ、冷や汗が止まらずパニックになりそうになったことがありました。その時に、ふともういいか、なるときはなるし駄目なら駄目でもしょうがないという気持ちになりました。そのとたん、肩から力が抜け気持ちも落ち着き、とても楽な気分になりました。そして間もなくゴンドラから荷物が出てきて、飛行機にも間に合う事ができたのです。
後からこれがこの地域の人々が良く口にする『インシャラー』ということに近いのかなあなどと思いました・・・。
あまり自分の意志を強く通そうとしたり,自己を主張しようとすると、壁につきあたったり対立したりする場合が多いようです。感謝の心で、消極的でない受身の気持ちをもつのは意外と気が楽になると感じたのです。
そのおじいさんは30分ほどのところで車から降りて行きました。キャリミザデ氏の優しさも感じ、見飽きた砂漠から吹いて来る、乾いた風を心地良く感じるようになりました。暗くなりかけたころ,車はゴムの町に入りました。写真で見たことはありましたが、夕日に輝くゴムの黄金モスクはなんとも言えず美しかったです。憶えたてのペルシア語で「カシャンゲ=美しい」と繰り返したのですが、その時に本物の美しさが、どういうことなのかが解ったように感じました。
ホテルというよりは小さな宿屋のようなところに、車を止め、そこで食事をとりました。欲をいえば少々町を歩きたかったのですが、外国人=異教徒はコムの町では目立つのでやめたほうが良いとう忠告であきらめました。彼は昼間のハードな運転が疲れたのか程なく眠ってしまいました。明け方のアザーンの響きで目を覚まし、朝早くテヘランに向かいました。
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