この騒動が複雑な理由

盗用疑惑のメインストリームはparede@wikiでとても丁寧に書かれてます。
が、このWikiはそこから露見した諸問題の横断と若干スタンスが違っているので、差分を記述しておきます。

  • 理由1 出版社の対応の曖昧さ
33篇中32篇に盗用の疑惑がかかっている。(parede@wiki参照)
活字離れと言われる中、ベストセラーになったが、
発売から約一カ月、2008/04/20に読売で「盗用疑惑」と報道される。
このように大きく報道されるとは、おそらく予想していなかったと思われる。
盗用の疑惑がかかっているエピソードの多くは2ちゃんねるの書き込みであると検証されているが(parede@wiki参照)
先にも書いたように、偶然とは考えづらく、企画発案時からネットからの盗用の意図があったようにも思える。

報道されたきっかけは、著作権者が明確な、しかも新聞に掲載されたエピソードがあったことにある。

このような場合、疑いがかかった時点で、出版社は大抵一旦、回収し、
諸問題をクリアしてから販売しなおすなり、クリアできないようであれば絶版にするというのが通例らしい。

が、出版社であるサンクチュアリ・パブリッシングは、曖昧な態度(やけに長い自社「調査」)をとり続け、
自主回収を宣言したのは5月1日、その後、回収するのは6月までかかる、などとおっしゃっている。
通例に従わないことが違法、というわけではないが、
著作者を守る立場にある出版のプロなわけなので、自社の出版物の著作者を守ることも、
また、他の著作者の権利も尊重するスタンスを求められる業種だと言えよう。

「ほとんどパクリ」な原稿を持ってきても、(出版社がそれをパクリだと知らなかったとしても)
著作権の侵害に当たらないか調べていれば、また、一旦即座に回収を徹底していれば、事情は大きく違っていただろう。

  • 理由2 中村氏の咆哮
この騒動で最も物議をかもしたのは、著者とされる中村氏が,
何故か読売グループ及び、読売新聞読者にいきなり噛みついたことと、その後の言動にあるだろう。
このことにより、中村氏とは一体どのような人物なのか、という追及がなされることになった。
今回の盗用疑惑だけでなく、過去にも様々な逸話がある。
氏が代表取締役を務める「株式会社 外部の専門家」のブログのエントリだけでも突っ込みどころが多数ある。
中村氏の価値観を氏の文章から読み取るのは困難、というよりも理解しがたく、また様々な団体や人物を引き合いに出している。
この騒動を把握する上で、難関の1つと言えよう。

  • 理由3 中村氏を擁護する東村山市民新聞
新聞と銘打たれているが、東村山市議である、朝木直子氏と矢野穂積氏が属する「東村山市民草の根クラブ」の機関紙的な媒体と思われる。
誌面版とWeb版があり、Web版で中村氏を擁護するような記事が掲載され始めた。
この東村山市民草の根クラブも、様々な噂がある。
争点次第だと思うが、東村山市民草の根クラブが中村氏を擁護する理由がよくわからない。
もちろん、擁護自体を非難しないが、擁護する理由がよくわからない。
その為、どのような団体で、中村氏との関係で、何を目的としているのか、という追及がなされることになった。
この騒動を把握する上で、最難関と言えよう。

  • 理由4 2ちゃんねるに登場した通称「滑り子」の存在
滑り子については詳細ページ「滑り子さんとは?」参照のこと。
誰が何のために2ちゃんねるの関連スレッドに登場しているのか、全くわからない。
というのも、書き込み自体は擁護的なのだが、結果をみると騒動を無暗に大きくしたとしか思えない。

  • 理由5 巻き込まれた企業・団体の動向
第一報は読売だったが、報道したのは他紙もほぼ同様で、ことによっては核心に迫る他紙の記事も多々あったのだが、何故か読売に固執している件。
出版社であるサンクチュアリ・パブリッシングに対し、公的に要求を提示した、明確な著作権を持つ社団法人小さな親切運動本部。
東京ディズニーランド・ディズニーシーを運営する、オリエンタルランド(OLC)
ディズニーの商標などを管理しているらしいウォルト・ディズニー・カンパニー・ジャパン。
自主回収を宣言してからも販売を続けた書店。
寄付の受け取りを拒否した日本ユニセフ協会。
回収宣言以降、高値で取引されたネットオークション。
などなど。

  • 理由6 専門知識
問題が多岐にわたるため、その分野の知識や、その分野に関する法的な知識のフォローがないと何が正しいのかよくわからなくなってしまうことがある。
例えば、
理由5に書店を引き合いに出したが、裁判の結果が出ているわけではないので、法的に販売しても問題はない。
が、著作物で商いをするという立場にありながら、著作権利を侵害している疑惑がかかっている書籍を扱うのは、道義的に問題があるという意見もある。
しかし、ベストセラーになっている「売れ筋商品」をわざわざ返品する(自主回収なので書店に返品の義務は発生しない)のは、売上を下げるようなもの。
ただ、回収が宣言されたことも、盗用疑惑自体を知らない人に売ることは、書店の信用問題にも関わる。
また、「手に入るのは今の内」というように、回収を逆手にとって売り込むことは、中村氏の言葉を借りると、コンプライアンス違反と言わざるを得ない。
一方で、またそのような「怪しげなモノ」を好むマニアも存在するのもまた事実。
そういう様々な問題の背景を1つ1つおさえるとなると、かなりの労力を要する。

  • まとめ
問題が山盛りなのだが、厄介なのは「どこに焦点を合わせればよいのかわからなくなる」というところにある。
どこの出版社とは晒さないが、
(ネットから盗用でベストセラーを出せるなんて)「うらやましい、とだれもが思ったはず」
とメルマガに書いた痛々しい出版社もあり、どこまで範囲を広げて捉えるかは、個々によって異なると思う。
東村山の諸々の騒動は何年にも渡っており、現在も進行形である。
社会の暗部の縮図のような様相でもあるだけに、事情がわかってくると、外野であってもかなり興味深い騒動である。
また、諸問題の中には、ネット上で問題視されていても、世間全体からすればかなり認知が低く、
その情報格差を利用している(「理由6」の書店の例など)ものまである。
大きな問題をあれこれ抱えているけれど、認知が低くなってしまうのは、このような事情の複雑にあると思う。

これをきっかけに、少しでも関心を持ってもらえれることを願う。

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最終更新:2009年06月17日 16:41
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