「『風評被害』への違和感」
最終更新:
houdou
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宮崎の口蹄疫騒動は、東京にいると、5月の中旬以降、突然大騒ぎ
になったような感じを受けます。4月20日の発生確認以降、九州では
それなりに報道されていたようですが、東京では、新聞もテレビも
しばらくはあまり報道しませんでした。
になったような感じを受けます。4月20日の発生確認以降、九州では
それなりに報道されていたようですが、東京では、新聞もテレビも
しばらくはあまり報道しませんでした。
理由の一つは、2000年にも宮崎と北海道で口蹄疫が発生したので
すが、計740頭の牛の殺処分という比較的小さな被害ですんだこと
です。人間にうつる病気ではありませんし、今回もきっと、似たような
被害だろうと、様子見に入ったところがあると思います。これは、新聞
作りをした経験からいって、理解できるところがあります。
すが、計740頭の牛の殺処分という比較的小さな被害ですんだこと
です。人間にうつる病気ではありませんし、今回もきっと、似たような
被害だろうと、様子見に入ったところがあると思います。これは、新聞
作りをした経験からいって、理解できるところがあります。
ただ、もう一つの理由も耳にします。風評被害を恐れて慎重になった
というものです。この理由は、首相官邸も、発生確認から2週間、赤
松農水相にまかせて動かなかったことの説明に使っているようです。
というものです。この理由は、首相官邸も、発生確認から2週間、赤
松農水相にまかせて動かなかったことの説明に使っているようです。
私は、こちらには違和感があります。風評被害と事実を伝えることを、
混同しているように思うからです。
混同しているように思うからです。
風評というのは、広辞苑には「世間の評判、うわさ、とりざた、風説」
とあります。つまり根拠のない評判、しっかりした事実に基づかない
評判のことをいいます。風評がなぜ生まれるのかというと、それは
しっかりした事実が伝えられないからです。
とあります。つまり根拠のない評判、しっかりした事実に基づかない
評判のことをいいます。風評がなぜ生まれるのかというと、それは
しっかりした事実が伝えられないからです。
例えば、「トヨタのプリウスのブレーキに問題があってリコールする」と
いうニュースを、「大手自動車メーカーのハイブリッド車のブレーキに
問題があってリコールする」と伝えて、ホンダのインサイトが売れなく
なれば、それがまさに風評被害です。プリウスが売れなくなるのは、
風評被害ではなく、その事実そのものによる被害です。
いうニュースを、「大手自動車メーカーのハイブリッド車のブレーキに
問題があってリコールする」と伝えて、ホンダのインサイトが売れなく
なれば、それがまさに風評被害です。プリウスが売れなくなるのは、
風評被害ではなく、その事実そのものによる被害です。
食品の場合、健康に直結するものですし、選択肢も多いものですから、
自動車などよりも風評被害が起こりやすいとはいえます。ですから、
今回の問題でも、しっかりした事実を伝えた上で、「口蹄疫にかかっ
た牛や豚の肉は市場には出ませんし、仮に食べたとしてもまったく
害はありません」ということを折に触れて付け加えることは必要かと
思います。
自動車などよりも風評被害が起こりやすいとはいえます。ですから、
今回の問題でも、しっかりした事実を伝えた上で、「口蹄疫にかかっ
た牛や豚の肉は市場には出ませんし、仮に食べたとしてもまったく
害はありません」ということを折に触れて付け加えることは必要かと
思います。
ただ、それでも牛肉や豚肉を買わない人がいれば、それは消費者の
自主的な判断ですので、誰が責任を負うものでもないと思います。
自主的な判断ですので、誰が責任を負うものでもないと思います。
私は、しっかりした事実を伝えれば、基本的に風評被害を恐れる必要
はないと思いますが、付け加えれば、その扱い方がそのニュース価
値とあまりにもかけ離れている場合は、批判はあり得ると思います。
はないと思いますが、付け加えれば、その扱い方がそのニュース価
値とあまりにもかけ離れている場合は、批判はあり得ると思います。
ただ、それはまさにプロとしてのニュース判断が問われるもので、
ニュースを小さくしようという方向にいつも働くのでは、プロの仕事では
ないでしょう。
ニュースを小さくしようという方向にいつも働くのでは、プロの仕事では
ないでしょう。
とはいえ、新聞やテレビが、伝える立場として、事実と風評被害との
狭間で悩むこと自体は分かります。その影響力のつかみどころのな
さを感じることが多いからです。私がデスクとして目の前のニュースを
判断する立場なら、やはり悩むかもしれません。
狭間で悩むこと自体は分かります。その影響力のつかみどころのな
さを感じることが多いからです。私がデスクとして目の前のニュースを
判断する立場なら、やはり悩むかもしれません。
しかし、政府までもが「風評被害をおそれて動かなかった」というのは、
解せません。風評被害などというのは、起こるかどうかも分からない
二次的三次的な被害であって、やるべきことは目の前に起こっている
病気の拡大を防ぐことです。そのために必要であれば、事実を積極的
に出し、何としても制圧するという気迫を見せるべきです。
解せません。風評被害などというのは、起こるかどうかも分からない
二次的三次的な被害であって、やるべきことは目の前に起こっている
病気の拡大を防ぐことです。そのために必要であれば、事実を積極的
に出し、何としても制圧するという気迫を見せるべきです。
どうも、「風評被害」という言葉が、責任逃れの言い訳に使われている
ような気がして仕方ありません。
ような気がして仕方ありません。
【一色清さんプロフィール】
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/cast/03.html
http://www.tv-asahi.co.jp/hst/cast/03.html