減衰振動と三つの解(減衰・過減衰・臨界)

減衰振動(damped vibration) とは、振幅が次第に小さくなっていく振動のことをさす。以下では特に、自由減衰振動(damped free vibration) について説明する。

自由減衰振動

自由減衰振動とは、強制振動の項をもたない、変位xに関する二階常微分方程式で表される振動のことをいう。

原点Oからlの自然長をもつバネを考える。バネ定数をkとし、右方向をx軸正方向とする。
単振動のときと異なり、ここに粘性抵抗と呼ばれる、速度に比例する抵抗(ダンパー)を考え、

F=-kx-b \dot x

の力がかかるとする。ここで、運動方程式 F = m\ddot x より

\ddot x =- 2\gamma \dot x - \omega_0^2 x     (\omega_0 \equiv \frac{k}{m} , \gamma \equiv \frac{b}{2m})

が成立する。ここで、解を

x=Ae^{\lambda t}

と仮定してxに代入すると、

\lambda^2 + 2\gamma \lambda + \omega_0^2 = 0

すなわち

\lambda = -\gamma \pm j\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2} = -\gamma \pm j\omega_d         ------ [1]

となる。ここで

\omega_d = \sqrt{\omega_0^2-\gamma^2}

は自由減衰振動における固有角周波数である。この一般解は

x=e^{-\lambda t}(A_1e^{j\omega_dt} + A_2e^{-j\omega_dt})

となり、特にこの解の実数部は

Re[x]=Ae^{-\lambda t}cos(\omega_dt+\theta)

というように書くことができる。単振動の場合と同様に、他の表し方も存在する。
ここで今一度[1]式について考えると、\gammaの値によって3つの振動の様態が存在することが分かる。

3つの振動の様態

不足振動
\gamma < \omega_0のとき、振動しながら減衰し、次第に静止する。これを不足振動という。
過制振動
\gamma > \omega_0のとき、もはやその系は振動することなく減衰してゆく。これを過制振動という。
臨界振動
\gamma = \omega_0のとき、振動と非振動の分かれ目となり、このとき最も早く減衰する。これを臨界振動という。

減衰の評価

減衰の度合いを表すパラメータとして、減衰時間(寿命、緩和時間)がある。

\tau = \frac{1}{\gamma} = \frac{2m}{b} \hspace{4} [s]

これは、振幅がその初期値x_0の1/eになる時間で、減衰の一つの目安となるものである。

また、バネの力と減衰力を比較する指標として、しばしばQ値が用いられる。

Q=\frac{\omega_0}{2\gamma}

参考文献

  • 楽器の物理学 (N.H.フレッチャー/T.D.ロッシング)
  • Vibrations and Waves in Physics (lain G.Main)

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最終更新:2009年01月21日 07:37
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