とっておきの唄(後編)



「……んで、これからどうする?一応当面の目的は果たしたみたいだけど」

改めて今後の方針をカフェ内で協議した。今は4時前、もう一遊びできるようななんともいえない時間帯だ。

「そうですね……じゃあウインドウショッピングでもします?」
「お、いいんじゃないか?こりゃ沙織のファッションショーが見れて眼福だな」
「そういう悪さを言うのはこの口ですか?」

沙織はにんまりとしながら俺の両頬をつまんで左右に引っ張る。体の前で組んでいた腕が急にほどけたため、たわわに揺れる胸に俺の視線は釘付けになった。

「いひゃいいひゃい」
「まったく、兄様ったら公共の場ではしたないんですから」

頬が伸びきって手がするりと左右に抜ける。さっき公共の場で腕を絡めながら相合傘してたのは誰だよ、と頬をさすりながら思ったが、流石に俺に非があるので黙っていた。

「すまん、今のは軽口が過ぎた」
「そうですわ。それにそんなことは二人きりで……」
「え?」
「な、なんでもないです。じゃあ行きましょうっ」


俺達は夕暮れの元町をのんびりと歩きながら、時折アパレルやブティックに入ってはお互いに気に入った服を探したり試着してみたりした。
さっきああは言われたものの、やはりこいつは何を着ても映えてしまうから、なかなか粗探しをするのも一苦労であったりする。
贅沢な悩みだと我ながら思うが、画一的なコメントだと沙織も生返事のように受け取れてしまうらしく、機嫌を損ねてしまうからこれでも案外必死なのだ。
そうこうして何着か沙織が気に入った服を買い、俺はそれを受け取って今は彼女のトイレ待ちである。

「ふぅ、結構な時間になったもんだな……ん?」

腰掛けたベンチからの視線の先に面白いものを見つけた。宝石店だ。

「ふうん……これは……」

ショーケース内に飾られている指輪の数々に首をかしげ目を泳がせると、店員とおぼしき女性が話しかけてきた。

「こんにちは。どれか気になるものはございますか?」
「いえ……俺は……」

単なる冷やかしというのもばつが悪いと思い、思わず返答に困る俺。しかし贔屓目に見ても大学生だろう俺に話しかけてくるとは流石プロだと思う。そこへ後から助け舟がやってきた。

「お待たせしました、京介さん……あら?」
「あ、沙織」

用を済ませてきた沙織が俺の元に歩み寄ってくる。突如として店員さんの目が輝きに満ちた気がした。やばい、これはカモを見つけた目だ、と俺は直感した。

「ははあ、これはこれは。つまり貴方は彼女に捧げる指輪を品定めしてたわけね?ふふっ」
「「――――!!」」

俺(と沙織)の顔が瞬時に赤くなる。今何を弁解しても彼女のペースに引きずりこまれるだけだろう。ここは早々に撤退するに限る。

「す、すみません。また日を改めて来ます!」
「あっ……」
「では、またのご来店をお待ちしております♪…………ちぇっ」

沙織の手を引き寄せて言われなくともスタコラサッサと逃げ出した。最後に舌打ちらしきものが聞こえたのはきっと気のせいだろう。

「ふぅ……とんだヤブヘビだった」

こっちはまだ心の準備が出来てなかったというのに。海千山千のプロというのは怖いものだ、あの場に留まっていたら間違いなく何かしら買わされていたに違いない。

「あ、あの、京介さん……」
「ん?」

沙織がジャケットの裾を掴みながらおずおずと尋ねてくる。

「そ、その……さっき見てたのって……」
「え?ああ……その……」

まいったな、なんと説明してよいものやら。とはいえあんな強引に逃げたんだからちょっとフォローが必要だろう。

「沙織にはどれが似合うのかなって……」
「そ、それって……」

沙織の目が潤みを帯びてくる。だ、だめだこれ以上は気恥ずかしくて言えねえ!

「……ま、まぁそういうことだ」

我ながら急にヘタレてしまったようで情けないが、実際に渡す日までこの気持ちはとっておきたかった。

「京介さん……私、待ってますから。京介さんのくれるものなら、なんでも」

そしてどちらからともなく手を差し出し合い、指を絡めて俺たちは歩き出した。


店を出ると、そろそろ日も没しきろうとしていた。

「さて、そろそろ帰ろうか?」
「……えっと、あの……もう一つだけ、行きたいところがあるんですが」
「ふぅん?どこだって付いて行くけど」

そうして、沙織の先導で(といっても手は繋いだままだが)柵のある公園の脇づたいの丘を登っていくと、やがて目的地が見えてきた。

「港丘公園?」
「はい。ここの夜景を昔両親に見せてもらったことがあって……いつか、恋する人と二人で一緒に見たいと思ってたんです」

奥の展望台に向かうと、確かに素晴らしい夜景が広がっていた。湾岸の港と高速道路の光と、湾岸の流れるような闇のコントラストが例えようもなく美しい。何組か俺らと似たような目的のカップルもちらほら見える。

「綺麗だ……確かに」
「喜んでもらえてよかったです……って、え?」

目の前に広がる光景に恍惚としながら、俺は無意識に沙織を抱き寄せていた。
自然にお互いの瞳が瞳を吸い寄せ、無言のまま俺達はゆっくりと口付けを交わした。

「沙織……俺、もう我慢できないや」
「え……って、きゃあぁっ!?」

唇を離して軽く力の抜けた沙織をお姫様抱っこで担ぎ上げ、丘の下の人目につきにくい木陰に移動する。

「きょ、京介さん……そんな、こんな外でなんて……」
「大丈夫、周りは俺たちみたいなカップルしかいないみたいだし。沙織が嫌ならやめるけど?」
「そ、そんな……んんっ!」

背に木の幹を背負った沙織の胸と股間を優しく撫で上げる。しかし少なくとも実力行使に出ようとする気配は見えない。

「で、でも……声が、漏れちゃいます……あっ、はぁん!」
「沙織が我慢すれば大丈夫だよ。というかここですること自体には異論はないんだ?」
「それは、その……あぁぁっ!?」

シャツの下に片手を滑り込ませ、ブラもずらして乳首をこねる。沙織が乳首が弱いのは経験で知っている。
と同時に再び唇を奪い、舌を絡めて更に情欲を煽る。

「んっ、んんっ……ぷはぁ」
「声が出ちゃうならずっとキスしててもいいんだけど?」
「え!?んぁっ……!」

沙織の返答を聞かずに間髪いれず俺は再び唇を貪る。更には沙織のパンツのベルトを外し、ショーツの中にもう片方の手を滑り込ませる。

「!?んっ、んんんんん……!!」

感じてくれているのを体の震えから十全に感じ取り、そのことがますます俺のリビドーを高めていく。
本来ならもっと愛撫してから本番といきたいところだが、あまりにも沙織が可愛いので少しいじめたくなってきた。
陰核や乳首を弄んでいた指をするりと離し、唇を離して俺は自分のモノを取り出した。もちろんコンドームは忘れない。

「はぁ、はぁ、はぁっ……京介さん……どうして……?」
「どうして、って何だ?」
「そ、それは……お、おっきい……」
「沙織が嫌そうだったからもうやめよっかなと思ったんだけどどうかな?」
「そんな……京介さん、ひどいですわ……」
「ひどいって何が?」
「そ、それは……その……」

もはや完全に発情している沙織を見て、嗜虐的な笑みを浮かべながら俺は宣言した。
「これが欲しいんだろ?欲しくないなら別にいいけど、欲しいならちゃんと欲しいと言わないとやらないぞ」
「え……あ……」
「どうした?早く言いなよ、イかせてくださいってさ」
「ぅ……で、でも……恥ずかしいです……」
「なら別に俺はこれで終わりでも良いんだが?」

全く言いことはないんだが、今の主導権は完全に俺が握っているので全く問題はない。沙織がおねだりしてくるのを待つだけだ。
やがて体の痺れに耐えられなくなった沙織が、涙目で喋り始めた。

「は、はい……わかりました……京介さんの熱くて硬いのを……京介さんのおち○ち○をわたくしの膣内でかき回してくださぁぁい!!」
「……良い子だ。じゃあご褒美をやろうか」

例えようがない征服感に正直俺が先にイってしまいそうになったがぐっとこらえて、自分から後を向いた沙織の腰を左手で掴み、右手でワレメにモノをあてがった。くちゅくちゅと濡れそぼったそこにモノを何度かこすりつけ、十分に濡れたところでじっくりと挿し込んでいく。

「あ……ああああぁっ!!」
「くうぅっ!相変わらず気持ちよすぎる……!」

もはや回りに人がいるかどうかなど気にする余裕もなく、完全に周囲を二人の時間と化し一心不乱に腰を振った。
ずちゅっ、ずちゅっ、とゴム越しにもかかわらず中から蜜が溢れてくるのが感じ取れた。

「こんなに溢れさせちゃうなんて沙織はえっちな子だな……っ!」
「そ、そうです!わたくしは京介さんのことを想うとえっちな汁が溢れちゃうえっちな子なんですっ!あっ、はぁっ、んっ、ああぁっ!」
「俺だって沙織といつだって繋がってたいと思っちゃうスケベ兄貴だよ!……うぅっ!」
「じゃあわたくしたち、あぁっ、一緒じゃ、はぁっ、なきゃ、だめですねっ!
「さ、沙織、イ、イくぞっ!沙織もっ!!」
「は、はいっ!わたしも一緒にっ、京介さんと一緒にイきますっ!」
「くうぅぅっ!!」

沙織の膣中で俺は白い欲望を吐き出す。
相変わらず引き抜くとか考える余裕がないほどの名器だ。コンドーム様様である。

「あああああああああぁぁぁーーーーーっ!!!!!」

力なくくたっと倒れこみそうになる沙織の体を両手で抱え、こっちに向かい合わせる。そうして抱きかかえたままの姿勢で、最後に今一度俺たちは唇を重ねあった。


「も、もう、補導されたらどうするんですか京介さんったら……」
「す、すまん。これでも一応反省はしている」

行為が終わった後、俺たちは沙織が立てるようになるまで少しベンチで休んでいた。
確かに最終的にあそこまで大声でやってたら結果はどうあれ結構危なかったのかもしれない。
周りのカップルから何も言われないのは経験があるのか、『若さゆえの過ちというもの』と片付けてくださっているのか。

「でも、これでまた1つ記念日が増えましたね」
「これも書き加えるの!?」
「いいじゃないですか。『初めて京介さんが激しくしてくれた日』にしてもいいですよ?」
「そういう問題かよ!?ま、まあなんとでもしてくれ」

そうして帰路に着こうとする直前に、沙織が爆弾を投下してきた。

「じゃあ、家に帰ったら今度は京介さんを私が責める番ですね♪ 私えっちな子ですから、京介さんとならまだあと何回かは全然いけますから」
「…………」

いや俺も別にまだいけるけど、沙織は結構根に持つタイプなのかもしれないとちょびっと恐怖した。
今日の夜はまだまだ眠れなさそうだ。





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最終更新:2010年09月08日 08:42
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