俺の後輩がこんなに可愛いわけがない 番外編:黒猫の腕時計

うむ、眠いでおじゃるよ。
この揺れが眠気を誘って心地好いから麻呂になっちまったぜ。
俺・高坂京介は今、都心行きの電車に乗っている。
隣にはティーン雑誌のモデルをやっていたり、学校では陸上部のエース、成績は常にトップクラスと嘘のようで本当の事、それが俺の妹・高坂桐乃が座っている。
勿論、今日もメイクはばっちし決まって洋服も俺には分からんが流行な物を着ているんだろう。
耳にはピアスを着けておりそれは俺がクリスマスイブに無理やり買わされた物で家を出る時に気付いたから
「そのピアス、俺が買ったやつだろ、なかなか似合ってんじゃないか」って言ったら
桐乃が少し照れくさそうに「ありがとう」と言ってくれた。

まあ~この話は良いとしてなぜこんな事になっているかというと時間は逆戻り昨日の夜まで戻る。

日付が変わる1時間前つまり夜の11時になろうとしている。
俺は今、ノートパソコンでネットをしていてこれをしていると時間がたつのが早い。
その時、突然ドアが開き、

―ガチャ

「兄貴、入るよ」

うお!

「お前! ノックしてから入ってこいよ!」
「別に良いじゃん。まさかまたノーパソでエロサイト見てたんじゃないでしょうね」
「見てねぇーよ!」

実は見ていたがさっきキャッシュを消した所だった。
危なかったぜ、危機一髪っだな。
桐乃は風呂あがりなんだろう、シャンプーかリンスの良い香りがして可愛らしい猫柄のパジャマを着ている。

「それより、何の用事だよ」
「あんた、分かってんじゃん。明日、一緒に東京へ行くから」
「はい~? 東京へ? 何しに行くんだよ」
「えへへぇ~、明日ね~同人誌即売会があるんだ」

同人誌即売会?っというと夏コミみたいなやつか?
勘弁してくれ、あんなキツイのはお断りだぜ。
それに明日は……

「明日はムリだ。麻奈美と図書館で勉強だからな」
「地味子と図書館? 何それ、せっかくの休日なのに勉強してどうするのよ」
「あのな~俺はこれでも受験生なんだが」
「今更してもムリじゃない。いっそうの事、留年しちゃいば良いじゃん」
「お前! 恐ろしい事言ってんじゃねよ! そこは悪くて浪人って言えよ!」

浪人も嫌だけど留年はしちゃまずいだろ。
黒猫と1学年下しか違わなくなっちまうじゃんかよ

「はいはい、行かないと地味子にある事ない事言ったあげくに兄貴の事、お兄ちゃんって呼んでもらう事にしてもらうから」

桐乃、その弱点をついてくるのは卑怯ではありませんかね。
でも桐乃の言う事も一理あるんだよな~休日に勉強なんかしたくない。
こんなんで受験大丈夫かよな俺、まあ~明日は桐乃に付き合ってやるか。
後で麻奈美にメールしておかないとな。

「分かったよ、明日行けば良いんだろ。黒猫と沙織も一緒なんだろ?」
「そう、あの2人も一緒で即売会近くの駅で待ち合わせだから。明日は早いからさっさと寝なさいよね、起きてなかったら叩き起こすから」
「叩き起こすのは勘弁してくれ、そこは優しくキスでもして起こしてくれよ」
「な、な、何言ってんの馬鹿じゃない! このシスコン変態バカ兄貴! ……ふぅん、おやすみ兄貴!」

―バタン!

すまん、今のは俺が悪かった。
そんじゃ、さっさと風呂に入って寝るかね。
ちなみに翌朝はちゃんと起きてリビングに居ると桐乃が入って来て俺の顔を見た途端にムスッとした表情を見せた。

そんな訳で今に至るという事だ。


それから目的の駅に着いて先に来ていた、沙織と黒猫に合流して歩く事10分ぐらいで
即売会会場のビルに着き中へ入ったが会場までまだ歩くみたいだ。

やっぱり夏コミみたいに長蛇の列に並ぶのか?
あんなのは二度とごめんだぜ。
隣の黒猫に聞いてみるか。

「今日の行く即売会? 夏コミみたいにまた長蛇の列に並ぶのか?」
「……いいえ、今回は規模が大きくないからそんなに並ばないわ……それに夏コミを経験すれば他は涼しいものだわ」

確かにあれを体験すれば他の順番待ちの列なんか余裕だよな。
今回はビルの中だから暑くはないし陽射しもないから楽だな。
改めて隣を歩く黒猫を見ると同じみの黒色のゴスロリ衣装だ。

「今日もその服なんだな」
「……いけないかしら?」
「いやいや、いけなくはないし、むしろ似合っていると思うぞ」
「……そう、一応お礼は言うわ」
「ただな……」
「……何かしら、言いたい事があるならはっきり言いなさい」
「ほら、いつも学校の制服で会っているじゃんか、そっちの方がお前には似合っていて可愛らしい感じなんだよなと思ったからよ」
「………」

あ、ヤバイ。
黒猫の奴、黙ったままうつむいちゃたぞ、なんか余計な事を言ったか?
なぜだか分からんが―

「悪い、今のはそのーなんて言って良いのかーすまん、謝るよ」

黒猫は小さくコクンと頷いてくれた。



それから会場前まで着て列を見るとそれほど長くなくひとまずはホッとした。
俺たちも列に並び横には沙織が後ろには桐乃と黒猫が早速PSPで言い争いながらプレーしていてまるで夏コミの再現みたいだ。
暫くすると開門して俺たちは入口近くの人に邪魔ならない所に行きここからは個別行動で2時間後に
ここに集合なにかあったら携帯へと話し合ってひとまずは解散となった。

俺も1人で見て回ったり休憩したりを繰り返して間もなく集合時間という所で、

「ちょっと! そこのお兄さ~ん!」
「ん? 俺?」

振り返って見るとそこには眼鏡をかけたメイドのコスプレをした可愛い女の子がニコニコ顔して俺を見ていた。

「新刊、見ていって下さぁ~い」

差し出され同人誌、無視するのも失礼だから受け取り何気に開いたページは……俺が夏コミで醜態をさらした格好そのままが画かれており、
顔を急いで上げメイドの顔を見たらそれは、

「あんた! 夏コミにいたメイドか!」
「うん? あ~あの時お兄さ~ん、久し振りだね」
「「久し振りだね」じねぇー! なんだよこのページは!」

俺はつめよりそのページを目の前のメイドに見せたら
「てへ★」と、メイドは可愛らしいく自分を頭を小さくコツと叩いた。
そのしぐさに呆気にとられているとバチーン! と後頭部に叩かれ、
振り返ると沙織と黒猫がいて桐乃は右手に丸めた同人誌を握っていてそれで俺の頭を叩いみたいだ。

「あんた! また売り子さんにセクハラしてんの!」
「してねーよ!」
「はいはい、言い訳は結構、あんたと来ると本当ろくな事がない」

「じゃー誘うなよ!」と言いたいが言うと何をされるか分かったもんじゃない。
だから俺は、

「ごめんなさい、もう二度としません」
「分かれば良いのよ」

それから俺たちは会場を後にして俺の右手には紙袋にしまわれたメイドの同人誌が握られている。



ビルの外に出て今度の行き先を聞こうとした時に桐乃が、

「私、これからモデル事務所に行かないといけない事になったからここまで」
「さようでござるか、実は拙者もこれから用事があるので今日はここで失礼するでござる、では」
「おう、また今度な」

沙織を見送ると、

「兄貴、はいこれ」

桐乃が差し出したのは同人誌が入ったカバンでそれを受け取る。
さすがに事務所には持って行けないよな、見つかったら面倒な事になるにちがいないし、仕方ないがここは協力するかね。

「……ありがとう……行ってきます」
「おう」

桐乃も駅に向かって歩き出しこの場に残ったのは俺と黒猫の2人だけになった。

「これからどうするよ? どっか行くか?」
「……兄さんに任せるわ」

任されても困るんだが……どうするか、都心周辺は全然詳しくないしよ知っている所といえば……

「秋葉原にでも行くか?」
「……ええ、構わないわ」
「そんじゃ、まずは駅に行って秋葉原方面の電車に乗って移動だな」
「……そうね、行きましょうか」


移動時間、約40分で目的地の秋葉原に到着、改札を出ると休日という事で人が多い。

「今日は休日だから結構、人がいるよな」
「……そうね、でも今日はまだ少ない方よ」
「これで少ないって言われてもなー」

正直よく分からん。
ここに来た事があるのは何回ぐらいだ? 
たぶん片手の指だけでたりるぐらいしか来てないからな。
しかしこの後どうするか?
来たのは良いが目的がない、ひとまずは昼も過ぎた事だし腹ごしらいだな。

「ま、この話は置いておいてまずは腹も減ったし昼飯にでもするか、何か食べたい物はあるか?」
「……特に無いわ、兄さんに任せるわ」

う~ん、任されても何が良いんだ? ファーストフード? ラーメン屋? メイド喫茶?……牛丼店? いやいや最後のはダメだろう。
黒猫は女の子なんだから一緒に行って飯を食う雰囲気じゃないよなって俺は思うけどな。
じゃーここは無難に……

「ファーストフードで良いか?」
「ええ、そこで構わないわ……行きましょうか、兄さん」
「おう、んじゃ行くか」

駅近くのファーストフード店に入り黒猫と同じ物を注文して先に会計を済まし程なくしてトレーにのかったハンバーガーを受け取った。
1階2階は満席状態だたったので3階へこちらはガラガラだったの窓際後ろ端に黒猫と対面する形で座った。



程なくしては食べ終わった俺は外の景色を眺める。

この後、どうすっかな、適当にショップ回りでもするか?
時間潰しには良いが目的も無く歩き回る疲れるよな。
やっぱここに詳しい黒猫に聞いてみた方が良いっかね。
ほんじゃまずは黒猫に―

「兄さん、良いかしら」
「ん、なんだ?」
「見てもらい物があるのだけど……これよ」

差し出した物を受け取り見てみる。
これは……

「これお前が書いた漫画か?」
「……そう、オリジナル物でオープニング部分を書いた物……読んで感想を聞かせて頂戴」
「分かった、今読むからちょっと待ってくれ」

………読み終えたから黒猫の方を見ると出版社へ行った時みたいに緊張した様子がみてとれる。

「正直な感想言って良いか?」
「……い、言って頂戴」
「ビックリだね、これが本当に2歳年下が書いたか作品かって思うぐらい面白いよ。早く続きが読みたいぜ」
「あ、ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ。でも、このぐらいのレベルの人はたくさんいるわ」
「そんなけんそんする事ないだろう、俺はこの作品良いと思うけどな。こんな事しか言えないけどな、それと汚さないうち返すよ」
「ん、……兄さんまた書いたら……読んで感想を……」
「おう、こんな俺で良いならな」
「……その時はお願い……」

大事そうにプラスチックケースに入れてカバンにしまうんだな。
そりゃそうか一生懸命作った作品だもんな。
そうだ忘れないうちに渡しておくか朝出る時にカバンに入れたから出してっと。

「これ受け取ってくれ」
「これは……」

包装された長方形型の物を受け取った黒猫だか怪訝そうな表情している。

「まあーなんだ、高校合格と入学祝いって所だ。開けてみてくれよ」
「………」
「どうした?」
「!! な、なんでもないわ。今、開けるから」

丁寧に包装紙をといていきフタを開けた黒猫は、驚いた表情を見せた。

「……兄さん、これ良い物なんじゃ……ないかしら」

俺が黒猫に送った物は文字盤の所にデフォルメされた黒色仔猫のイラストが描かれたアナログの腕時計である。
時計屋に修理を出した時にたまたま見かけて購入した訳だ。

「どうだろなーまあ、高い物じゃないしお前に似合うと思って買ったんだから良かったら使ってくれよ、な」
「分かったわ……あ、ありがとう兄さん……大事にするから」
「おう」

黒猫は照れ隠しのつもりか横を向き景色を見ながらストローのささった飲み物をチュチュ飲み始めた。
それから黒猫は包装紙を丁寧に包み渡した状態に戻しカバンの中へ入れた。

その後2人してショップを回ったりして最後にゲーセンに行きアーケード版シスカリをやったりとして切りが良い所で秋葉原を後にした。



電車に乗る事1時間弱で自宅近くの最寄り駅に到着。
初めて知ったのだが実は黒猫もここの駅を利用している。
俺とは逆方向の帰り道だがな。
それにしても近いとは知っていたがまさか同じ駅を利用しているとはな、世の中広いようで案外狭いんだな。
改札を出た時には空はすっかり茜色になっていた。

「じゃー、また明日学校でな」
「ええ、そうね」
「気を付けて帰れよ。あ、家まで送って行こうか?」
「いいえ……ここで結構よ」
「そっか、じゃーな」
「兄さん! ……」
「うん? ……どうした」
「……今日は……ありがとう……作品を見てくれて感想の事や……腕時計……大事に使うから……」
「おい!」

いきなり走っていっちまったよ黒猫の奴、照れくさかったのかねーお礼を言ったり言われたりするのが苦手な奴だからな。
それにして残念だったな、夕日が当たって黒猫の顔の表情がいまいち分からなかったのは悔しかったぜ。
でも、腕時計喜んでいたみたいだし良しとするか。

俺は黒猫が見えなくなるまでその場で立って居ると、

「兄貴?」
「ん?」

横を向くと今、改札を出て来たばかりの桐乃がいた。

「何してんの?」
「んー今から帰る所だが」
「そっか、じゃー一緒に帰ろうよ」
「!! おまえどうした! 一緒に帰るって言い出して!」
「帰り道が同じだからじゃん! 誰が好き好んで兄貴と一緒に帰るのよ!」
「はぁ~分かったよ、んじゃ行こうぜ」
「ふん!」

歩き出したの良いが何か無言でいるのも居心地が悪いよ、何か話す事あっかなー。

「……兄貴」
「お、おーなんだ」
「今日はありがとう、そのー即売会に付き合ってくれて、それとごめんね……受験勉強の邪魔してさ」

驚きだね、最近の桐乃はお礼や謝りの言葉を言ってくるからな、10ヶ月前とは大違いだぜ。
俺もその時は桐乃の事が大嫌いだったが、今は割かしそんなんではないんだよな。
どうしちまったんだよな俺は。
でもよ、騒ぎながら一緒にゲームをしたりするのは嫌いじゃないんだな。

「受験勉強の方は気にすんな。今日はリフレッシュ出来たしな、桐乃が言ったとおり休日はこうでなくちゃな」
「そうでしょ~私が言ったとおりじゃん。じゃーさ、家に帰ったらゲームして……今日、買った同人誌読もうよ……ほら行くよ、兄貴」

!! 桐乃の奴、いきなり左手を握って走り出しやがった。

「待った待った! 走るなー速いって!」
「だって! 時間がもったいないじゃん!」

そう言って振り返った桐乃の顔は今まで見た事がない笑顔で不覚にも妹なのに可愛いと思ってしまった。
結局深夜遅くまで桐乃の部屋でゲームをする事になった。



翌朝は寝坊をしたなので起きて早々、麻奈美に遅れるの先に行くよう携帯で知らせてから
顔を洗い急いで朝食を食べ歯を磨いてから制服に着替え家を出た同時に走り出した。

「ハァハァハァー」

ここまで走ってくれば遅刻はしないだろ後は歩きでも大丈夫だな、朝から疲れるぜまったく。
お、前方に黒猫発見。
ん? あいつ左手首をしきりに触っているけど何なんだ?
あ、そっかもしかして腕時計を付けくれているからそれで気になっているか。
早速使ってくれているの嬉しいね、贈ったかいがあったぜ。
これから黒猫に追い付いて、今の行動をちゃかして言ってみたら、無表情で無愛想の奴がどんな顔をするのか楽しみだぜ。
何だかんだ言ってあいつのいろんな表情が見れるのが案外好きなんだよな。

「んじゃ、行くか」

数日後、まさか黒猫から人生相談を受けるとはこの時は夢にも思わなかった。









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最終更新:2009年10月03日 22:22
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