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フランドール1

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■フランドール1


フランへ
「君が証明した495年の孤独を、僕という小さな乱数で埋めてみせる。」

1スレ目 >>166

───────────────────────────────────────────────────────────

俺はどうしてこんな場所に来てしまったんだろう。
紅に染まる館、
人はもちろん、妖怪ですら近づかない魔の館に。
よく分からないけれど凄いような凄くないような門番と
全知の魔女と時を止める従者と
紅の盟主のいるこの館、
そして…
今が昼なのか夜なのかも分からない、空までもが真に紅く見える。
だが、俺はどうしてもここで誰かに会わなければいけない気がした。
門をくぐることすらできずに殺され、食べられるかもしれない。
けれど、それでも行かなければいけない、それが俺の運命だと感じた。

「ここは人間の来る場所ではない、命が惜しければいますぐ帰れ!」
有無を言わさぬ気迫ある声に俺の歩みが止まる。
あれはここの門番、確か名前は…
「中国?」
「だーーー、何で初対面の人間の男にまでそんないわれをされなければいけないんだぁぁぁぁ(泣
 殺す、殺すわよ、普通の人間に遠慮はないんだからね!」
「あああ、ごめんなさい、悪口を言うつもりだったんじゃなくて、どうしてか分からないけど
 頭に思い浮かんで、それで、えっと、俺は会わなきゃいけない人がいて、だから、えっと、
 それが誰かも分からないんだけど、とにかく死にたくないぃぃ」
自分でもわけの分からない命乞い、けれど門番の殺気が突然消えた。
急にやる気をなくしたように、頭をかきながら言う。
「あーーー、もしかしてあんたあれかぁ、そっか、もうそんな時期ねぇ」
門番は振り返ると、紅魔館の扉を開けた。
「え、どうして…?」
「私、役立たずらしいしぃ…深く考えないで通りなさい…強く生きるのよ」
妙な同情口調で励まされた。
俺に霊感はないが、扉の奥から感じるこの重い感覚は、きっとこの館に満ちている魔、なのだろう。
けれど俺は行かなければいけない、その思いだけに突き動かされ俺は門をくぐった。

突然、目の前にナイフが現れた。
俺はただただ野生の感でナイフをよけるとその勢いで廊下に尻餅をついてしまった。
「普通の人間か、無様ね。ここへ何しに来たの? 自ら食べられに来たのかしら」
突然目の前に現れたメイド服の女性が俺ののど元にナイフをつきたてている。
この女性が時を止めるという従者なのだ、俺はそう直感したが、だからといって何もできない。
「答えなさい、何をしに来たの? 答えによっては…」
「俺を、殺すのか?」
「いいえ、殺しても食べずに捨てるのよ。お嬢様に得体の知れないものは出せないもの」
どうやら殺されるのは確定らしい。
「俺は、会いに来たんだ」
「誰に?」
「…分からない」
「“得体の知れない”言い訳ね」
冷たく無機質な死の宣告。
けれど従者のナイフは廊下の奥からの声に止められた。
「ナイフを収めてあげて」
「パチュリー様、どうして止めるのですか?」
「咲夜は初めて会うのね、でもいいの、その人は紅魔館の大切なお客様よ」
「パチュリー様がそういうのでしたら。…無礼をお許しください、お客様」
従者はナイフを収めると俺に形だけの礼をした、どうやらまだ納得はしていないらしい。
俺だって、どうなってるのかわからない。
俺は歓迎されているのか? しかし門番の態度も従者の態度もおかしい。
「咲夜、奥の部屋にこの人を通してあげて」
「奥の部屋ですか? ですがお嬢様は今紅白と一緒に外で…」
「いいえ咲夜、彼が用があるのはその先の部屋、
 きっと、待ってるはずだから」
待っているはずだから。そう聞いて俺の心臓が跳ねた。
誰が? 分からない、けれど会いたい、待たせてはいけない。
俺は初めて訪れたはずの館の奥へ迷うことなく歩き始めた。
そして一番奥の扉に手を掛ける。
「あ、その部屋は…」
「だからあれでいいのよ咲夜、彼はあれでいいの。
 それよりも、そうね、今回はひょっとするとお茶の準備が必要かも」
「は、はい。分かりました」



彼女は椅子に座ってつまらなさそうに髪をいじっていた。
顔を横に向けたまま視線だけこちらを向ける。
暗く輝く瞳に射抜かれて俺はすべてを理解した。
一瞬の後に、俺と彼女の距離がなくなり、俺は首をつかんで持ち上げられ
壁と天井の角に強く押し付けられた。
「人間が、私に、壊されに来たのね!」
小さな体にありえない力。俺は壁にめり込んでいく。
全身が悲鳴を上げるが、けれど僕は満ち足りた気持ちで笑顔を浮かべ、
楽しそうで寂しげな彼女の瞳をまっすぐ見つめて、言った。
「フラン、僕は“また”君に会いに来たんだ」
「え…」
彼女、フランドール・スカーレットは突然指の力を緩めた。
俺はそのまま床に落とされる。
立ち上がろうとするがうまくできない、どうやら足の骨が折れたらしい。
半身だけ起こした俺は床に舞い降りてきた小さなフランの顔を真正面から見る形になった。
「どうして…結局また、壊されるのよ。あなた、死にたがりの狂人なのかしら」
「そりゃ、できれば死にたくはないけど…でもフランのために壊れられるなら、
 僕は何度壊れてもいい」
「なにそれ? あなた人間でしょ? 命乞いしなさいよ、壊れたくないって抵抗してみなさいよ!」
フランは理解しがたいものを見た人間のように、おびえた表情をした。
俺はそんな彼女を抱き寄せた。
何の抵抗もなくあっさりと俺の胸に崩れ落ちてくるフラン。
「俺、お前のこと愛してるから、お前の望みが俺の望みだよ」
フランは少しの間、どうしていいか分からずにまったく動こうとしなかった。
俺が腕に力を込めると、フランは一度体をこわばらせてから、ゆっくり力を抜いた。
おずおずと小さい両手を俺の背中に回してぎゅっと握った。
ほんのひと時の安らぎが俺には永遠だった。
「愛…、望み…、幸せ? …違う、チガウ、遊びたい、壊したい…
 あぁ、そっか、壊していいんだった…壊す、コワス、コワレロ、人間がぁぁぁ!」


男だったものはいくつかの塊になって散らばっていた。
フランドールは表情の読めない瞳で汚れた部屋を見ていた。
「少し、物足りない…」
彼女はそうつぶやくとその場に座り込んだ。
「フラン様、お茶が入りました。…あら、まぁこんなに汚して…」
咲夜は、だから言わんこっちゃない、といた表情でティーセットをテーブルに置き
紅に染まったフランの体を拭いてあげようとした。
「フラン様、お顔をこちらへ向けてください。フラン様?」
フランドールの顔を染めた紅は濡れて滲んで筋ができていた。
「咲夜、いらない、あっち行ってて」
「…はい」


紅魔館、別室レミリアの部屋。
外から帰ってきたレミリアにお茶を出しながら、
咲夜は今日の出来事をレミリアに尋ねていた。
「そう、あの男が来たのね。うん、私も会いたかったかな」
「あの男はいったい何者なのですか? ただの人間にしか見えませんでしたが」
「そうね、彼はただの人間よ、ほんの少し運命を弄られた…ね」
レミリアの瞳に灯りが揺らめいた。
「昔ね、もう数百年も前、ある男が少女に恋をした。身分違いの恋。
 人間の吸血鬼への一方的な恋だわ。でも、吸血鬼の少女にとって、自分以外の生き物は
 遊んで壊すものでしかなかった。だから彼は壊されることにした、一度っきりなんて嫌、
 何度でも彼女のために…ね。彼の魂は何度生まれ変わっても彼女を愛し壊される運命を
 自ら望んだのよ」
咲夜は言葉を詰まらせた。壮大でばかげた話だ。
それで、壊されるだけで振り向いてもらえなかったらそれで男は満足なのだろうか。
「フラン、どんな様子だった?  
 …そう、フランももしかしたらまんざらじゃないのかもしれないわね
 最初の頃は、一瞬で壊されて、それだけだったもの、言葉を交わすことすらなかったんだから」
レミリアは楽しそうにフフと笑った。
「それならば、もしそうであるなら、何度でも壊されて会いにくるのではなくて、
 決して壊れずに一緒にいる方法もあったでしょうに、どうして彼は…」
そこまで言って、咲夜は自分が馬鹿なことを言っていることに気がついた。
「咲夜、壊れないオモチャ、ではフランにとって何の価値もないのよ? わかるでしょう。
 それとも、そうね、咲夜は私のために永遠を誓ってくれるのかしら?」
レミリアはいたずらっ子のような口調で咲夜に問いただした。
咲夜は笑顔で答えた。
「いいえ、お嬢様、私は一生死ぬ人間です。それまではずっと、お嬢様のそばにお仕えしますから」


end

1スレ目 >>195

───────────────────────────────────────────────────────────

強い憎しみは、深い愛に似ている。
―――かつて、そんな言葉を聞いた。




「っは…はぁ…はぁ…。このっ、贋作師…!!」
「おや、もうお終いですかな妹君?それでは、続きはまた次回のお楽しみということで…」

僕は肩で息をするフランドールへ慇懃無礼に一礼し、退出しようと背を向けた。
無機質な足音が一つ二つ。一瞬の静寂。その刹那、背に殺気が迫る。
振り向き、左手で弄んでいた機械―――本来ならば、音楽を再生する程度の能力しか持たないはずのコンピュータ―――の操作盤を一撫で。
それだけでその片手に収まる程度の機械から、膨大な魔力が流れ出した。
     スターボウブレイク         ロード      スペルコンパイル  マナリンク   ラン
「偽弾、『星弓崩落』、ファイル呼び出し。呪文編纂、魔力接続、実行」

相殺し極彩と散る、夥しい数の弾幕。まぶしさに眼を狭め…その眼前に、『彼女』はいた。

―――眼くらましか!

手にはすでに紅い剣、禁忌の術によって形作られた『レーヴァティン』を携えている。
受けることなど敵うはずも無く。

「これで…終わりよ!!」

絶対の自信が込められた一閃を、しかし僕は逆に前へ…つまり彼女の後ろ側へ突っ込むことによって辛くもかわした。
…どこぞの巫女や魔法使いにも、同じことをされているだろうに。慢心がそれを忘れさせていたのか。

思わず僕は含み笑いをしながら呪文を詠唱し―――それを聞きつけたか、彼女は顔をその剣よりも紅く紅潮させ―――振り返ると同時に、最後のスペルを宣言、発動した。

   レーヴァティン
「『焔もて害為す剣の魔杖』―――!!」

今度こそ。煙も出なくなった彼女を尻目に、僕は地下室から退出した。

「それでは、ごきげんよう」
「っ…!!今度会ったら…今度こそコナゴナにしてやるっ…!!」



***



「…終わったのね」
「おや司書さん。奇遇で」

階段を上がりきるなり僕を出迎えたのは…今や顔なじみとなった魔女、パチュリー・ノーレッジ。
図書館からはあまり出歩かない彼女と、その外で会うのは珍しかった。

「…左腕。見せて」
「いやぁ、流石にごまかせませんか。はっはっは」
「いいから早く。人間の身で妹様の禁呪を複製するなんて…フィードバックだけで塩の柱になっても、おかしくないのよ」

彼女の声に苛立ちが滲む。観念し、左の袖を捲り上げた。
…二の腕が火傷、いや炭化している。フランドールのレーヴァティンに掠ったためだ。
それがために、最後のスペルは素の詠唱に頼らざるを得なかったわけで。

「…はい、これで一週間もすれば治るわ」
「一週間ですか。その間、妹君が暴れださないことを祈るとしましょう」

当然のように言う僕に、パチュリーさんは眉を顰めると、

「…あなた、いつまでここに通うつもりなの?」
「いつまででも。この命尽きるまで」

即答。予想通りの答えに、紫の魔女は大きくため息を吐いた。

「妹様に、愛だの恋だのが通じるとでも思ってるわけ?」

―――まぁ、見透かされているとは思ったが。

「通じるまで、通うまでですよ。幸い、貴女という優秀な薬師もいることですしね」
「…言っておくけど。その電算魔術の理論を諳んじれるようになったら、後は知らないわよ」

こっそり色目を使ってみたが、返ってくるのはいつもながらの冷ややかな視線だった。残念。

「かつて、お嬢様にも入れあげた貴族がいたけど―――最後には千本針の山に串刺し。あなたは、『そして誰もいなくなった』というくらい粉々かしら?」

幻想郷流のブラックジョーク。しかし僕には、もはや心地よかった。

「いずれは、そうなるでしょうね」
「あなたねぇ―――、」

動ぜず、素で返す僕に彼女は声を荒げる。が、僕はそれを遮り、

「しかし、最近はこうも思うのですよ。
 フランドールさまの想いを独占できるのならば―――それが憎悪であっても構わない、と」

一瞬、パチュリーさんは呆けたように目を見開き…やがて心底呆れたため息を吐いた。
ややあって、一言。

「お似合いよ、あなた達…」

多くの呆れと、微かな祝福。それは…根拠はないが、僕の自惚れでは無いように思えた。



***



「やっと、来たわね…この一週間、地下で過ごした495年よりも長く感じたわ…。
 もし今日来なかったら、幻想郷中を破壊してでも探し出そうと思ってたんだから―――」
「それほど待ち焦がれていただけるとは光栄ですな、悪魔の妹君」

言葉はそれだけ。フランドールは、今度こそ僕を粉と砕かんと、目に見えるほどの魔力を伴った詠唱を始める。
こちらは詠唱の必要などない。コンピュータの演算による高速詠唱は、人間のそれを遥かに凌ぐ―――妖怪の圧唱、化仏権化の神言さえも。
…或る意味では、この技術も人の矩を超えた『禁忌』と言えるかもしれない。

―――お似合いよ、あなた達。

ふと。パチュリーの台詞が頭を過ぎり、思わず苦笑がこぼれる。
それが気に障ったか、フランドールはますます怒りを濃くした。

「逃がさない。その苛つく笑みを…粉々にしてあげるんだから!!」

…逃げる?僕が?
そんなことは、あり得ない。絶対に。

命を、落とすことになったとしても。


「逃げませんよ。
                おもい
 弾に砕けて散るまで―――貴女の憎悪、受けきってみせます」

1スレ目 >>348

───────────────────────────────────────────────────────────

紅魔館の地下に続く階段を降りる。既に決心はしてあるから思い残すことは無いだろう。
……一応わかるように言っておくか。俺は紅魔館の雑用として働いている人間だ。
ことの始まりは数ヶ月前。式典の際にあの人を見てしまったのが始まりだった。
我らが主、レミリア様の横に並んで座る少女。あの時は彼女のことはぜんぜん知らなかった。
肩まである柔らかそうな金の髪、不思議な形の翼(?)。その姿につい心が奪われてしまった。
…そのあとにめったに無い粗相をしてメイド長に殺されかけたが。
そして、後々に情報を集め、ようやく彼女のことを知る事が出来た。
フランドール=スカーレット。……レミリア様の実妹と言われ、納得と後悔が頭の中で生まれた。
その後の情報が、なぜかあのときの姿とかけ離れていたのがわからなかったが。
曰く、「情緒不安定、…ぶっちゃけキ印?」
曰く、「あまりに危険なのでレミリア様でさえてこずっている。」
曰く、「たまに暴れてはパチュリー様に止められている。」
さすがに姉であるレミリア様に聞くのは身分をわきまえていないと思い、次点のパチュリー様に聞くことに。
すると、望んでいた以上の答えが返ってきた。
俺が見たときの彼女はパチュリー様特製の薬で腑抜けにした状態だったこと、
普段は紅魔館の地下牢にて過ごしてるということ、そして、彼女に食事を渡したメイドは帰ってこないということ。
ついでに、俺が彼女に一目ぼれしたことを言ってみると、突然倒れた。
あわてて介抱し、話を出来る状態まで持ち直させると、ずばり言われた。
「えっと、自分の命を顧みない馬鹿の頭を作り変える方法は…」
本気だよ、本気でページめくってるよこの魔女。
そんなことをやってるパチュリー様を説得し、ようやくここにたどり着けた。
すなわち、地下牢への扉。……ああ、なんてでかいんだろうか。
おまけに扉全体に呪文が、真ん中当たりにでっかく魔方陣が書かれている。ここまでするか普通。
とにかく。パチュリー様に教えてもらったとおりに結界を解除し、牢の中に入った。
大きな扉の奥にはまた扉。……確か、こっちが本来の扉で、さっきのが封印強化のための扉か。
そこをくぐると……まず最初に警告が来たのは嗅覚。明らかな異臭がする。動物の腐った臭いだ。
そして視覚。隅のほうに何かの塊が見える。……あのボロキレは紅魔館のメイド服に似ている。
「あれ?今日はいつもと違う」
声。まだ幼さの残る声が響く。……ああ、これが彼女の声か。
「まだおやつの時間じゃないよ。それとも、あなたは『おもちゃ』?」
上を見上げれば、彼女がいた。あの時とは違い、その顔に無邪気な笑いを浮かべて。
「いいえ、フランドール様。私はあなたに用がありましてこちらに現れたので」
「じゃあねぇ、何して遊ぶ?」
俺の話など聞いてないらしく、勝手におもちゃとして認定されたようだ。

「私が決めるわ。そうねぇ……『弾幕ごっこ』!」
つまりは、『問答無用で殺される』。

「いやあの、私の話を聞いっ!?」
既に『遊び』が始まったらしく、魔力弾の雨が降ってくる。
「あははははは!ほらほらちゃんと避けてねーっ!」
何とか弾幕を避ける俺に向かって笑いながら声援を送る。
……いっつも弾幕言語で語ってくれたメイド長に今は感謝すべきかな…?
ともあれ、しばらくは雨がやむことは無かった。
「すごいすごーい!いつものおもちゃだったらもう壊れてたのに、がんばってるー!」
そりゃ某グルーオン第2形態並みの弾幕やられりゃ壊れます。そう心でつぶやき、体の状態を確認する。
かなりグレイズしていたので服装は所々破れている。体の痛みは……少々。
今のような奴を長時間やられればきついだろう。
「よーし!次行くよ!禁弾…」
「お待ちくださいフランドール様!!」
ひたりと動きが止まる。……そういえば本来の目的を忘れてた。
「なあに?」
「……私はおもちゃではありません。あなたに用があるのですよ、フランドール様。」
ようやく話を聞いてくれそうな(遊びをさえぎられて不機嫌だが)彼女にさっきの続きを喋りだした。
「私はここの下働きの者。どうか私の話をお聞きください。」
とりあえず彼女を好きになったまでの経緯を話す。そして、こう言い放った。
「あまりにも馬鹿馬鹿しいとはお思いでしょうが、私はフランドール様を……愛したいのです。」
彼女は黙って聞いていた。
「それを伝えにこちらに……」
「……嘘。」
鋭い声が俺の頭に刺さる。
「……はい?」
「それは嘘。真っ赤な嘘。ここに来ればみんな恐怖でそういう。そういって、すぐに逃げようとする。」
声からにじみ出る感情が彼女の全身に染み渡っていく。……彼女は、怒っている。
「口だけの忠誠。言葉だけの愛情。でも心の奥底ではみんな私を怖がってる、嫌っている。……そんなのもう見飽きたわ!!」
怒りは魔力に変わり、魔力は弾に変わる。幾千幾万の弾が俺に襲い掛かる。
「私を愛する。そんなの嘘。私が好きだ。そんなの嘘。私の世界は嘘ばっかり!誰からも愛されない!」
俺はあわてて避けるが、もう避ける隙間も無いほどに弾が埋め尽くしていた。
「誰も私を愛さない!誰も私に気づかない!もうそんなのはいや!」
……ああ、これは……俺の冷静な部分が告げた。


「誰でもいいの!私の全てを見て!!私を愛してよぉ!!」


悲しみの雨。怒りの雨。届かない声。ただ自分の声だけが空ろに響く。これは彼女の『495年間』。
「あなたも私を嫌っているんでしょう!だからあなたなんか壊れちゃえ!」
壊れろ……か。
俺はもうとっくに壊れてる。
壊れてるから何も感じなかった。……それを呼び起こしたのは貴女。
壊れてるから他人を気にしなかった。……それを目覚めさせてくれたのは貴女。
壊れてるから……
「……っ!!?」
彼女は驚いている。当たり前だ。俺がもう弾を避けることをやめたからだ。

壊れているから、痛みも感じない。

俺はもともと外の世界で育ってきた。そこは…地獄だった。
その世界にいたせいで、俺は壊れた。感情を消した人形が、その世界で求められたから。
それでも何とか残った感情を振り絞り、この幻想郷へとたどり着いたのだ。
紅魔館で拾われ、レミリア様に食われるはずがいつの間にか仕えることに。
その時のことを「まったく感情が無いんじゃあ血がまずくなるわ。」とおっしゃっていた。
それからだんだん感情も回復はしていたが、最後の一つが欠けていた。
それを、彼女…フランドールが呼び起こしてくれたのである。
「……なんで?何で避けないの?」
もう左腕が吹き飛び、無くなっていた。
「あなた壊れてるのよ!?なんで泣き叫ばないの!?」
腹からは内臓も出てるだろう。
それでも、俺は彼女のところへ向かった。
「なんで!なんで!なんで心が壊れないの!?もう体が壊れてるじゃない!!」
彼女の前に立つ頃にはもう原形をとどめていなかった。
指が落ちたり、折れている手のひらを彼女の頬に当てる。
「っひ!?」

――俺が。
「それは…」

――お前を。
「貴女が……」

――愛してやる。
「好きだから……です……」

「……あ……ああ…」
「どうです?壊れない人間もいるんで…す……」
よ。と言い切る前に体が倒れた。……まあ、当たり前だろ。
いやぁ、ひさしぶりに無理をしたな。こりゃ死ぬだろうな。体中ボロボロ。直せそうも無い、か。
と考えてるときに、なぜか彼女の叫び声が聞こえた。そこで意識が消える。


やれやれ。まさかこんな馬鹿をやるとは。真っ黒い意識の中、そんなことを考えていた。
パチュリー様の言ったとおりになったな。「自分の命を顧みない馬鹿」…か。
………あれ?
今、俺って死んでるのか?生きてるのか?
そう考えた瞬間、光が見えた。
映っているのは紅魔館の天井。そして……
「ああ、そう言えばこれがあったな。…まったく、こんな愚か者に使わなくても…」
五つの結晶体で結ばれた魔法陣。……『賢者の石』だ。
全てを生み出す存在なら、人体練成も可能だろう。
「あなたが愚か者なら、今術をかけている私も、かける様に頼んだ妹様も愚か者ということになるわね。」
術者の愚痴が聞こえたが、首が動かせない。……声からして足元あたりだろう。
「ここは紅魔館の医務室よ。あなたが意識を失ってすぐに妹様が飛んできたのよ。パチュリー助けて、って。」
「って、いたんですねパチュリー様。」
「……どこかの大妖精じゃないんだから。気づきなさいよ。」
…大妖精か。それは失礼と苦笑いする。
「ところで今は何やってるんですか?」
「『自分の命を顧みない馬鹿を直す方法』を探しているのよ。」
「勘弁してください。こんな自分が気に入ってるんですから。」

ドドドドドドドド……

「パチュリーっ!」
「……やっぱりフランドール様か…」
どかどか足音をさせるから誰かと思えば……
「……………っ!!よかったぁーっ!」
「え、ちょっとフランドール様抱きつかくぁwせdrftgyふじこlp;@:」
フランドールの抱きつきによって脳天へ直接電撃をぶち込んだかのような激痛が全身を襲う。
「妹様。彼はまだ回復していませんよ。まだついさっきのことですから。」
「あzsxdcfvgbhん……って、ついさっき!?」
だから全身が動かなかったのか。
「あ、ごめん。でもほんとによかったぁ。」
すぐに離れてくれたが、まだ全身が痛む。
「それにしても、あんな妹様を見たのは初めてですよ。初めて『この人間は壊したくない』って言ってましたからね。何がそうさせたんですか?」
「う。」
地味な一撃に悶えるフランドール。……多分わかってるな、パチュリー様。
「………た………から……」
「何でしょうか?もっとはっきりおっしゃってください。」
「初めて…本当に好きだって……言ってくれた…から…」
既に顔は真っ赤っか。こっちまで紅いのが移るくらいだ。……そりゃな。
「あれだけ食らって、それでも立っていて、好きだって言ったんでしょう。あなたも気障な真似をするわね。」
「ぐっ」
あれが気障か?普通の人間は命懸けてもできないって。
「………」
「パチュリーの意地悪…」
俺達が黙ってしまったので、つまらなそうに腰を上げた(気配が移動した)。
「まあ、二人で語りなさいな。それと妹様。彼は絶対安静ですからね。」
何を想像したんですかパチュリー様。
「あー。その……」
「…なに?」
「まだ、返事聞いてませんが……」
「……ぁうっ。」
この後もあー、うー、とうなり続け、しばし考え込む。
……パチュリー様との会話で半分わかってはいるが……っ!?
唇に感触。目の前にはフランドール。
「……これが、答えっ。」

そう言って、俺の愛する少女は恥ずかしそうに笑っていた………



    ***    ***    ***

はい、プロポーズスレ初めてのM(仮名)です。
ああどうしても痛い表現になってしまったなぁ……

場の雰囲気を和ませるため、NG(というか小ネタ)でも読んでください。

NG-1
……ここまでするか普通。
パチュリー様に教えてもらった解呪の呪文を唱えるべく、大きく息を吸い込んだ。
「マァァァァァァァァルコム、ィエェェェェェェェックス!!!」
当然「ィエェェェックス」の時に腕でクロスするのを忘れずに。……なにやってんだあの魔女は。
って言うか、この呪文恥ずかしすぎるぞ。

NG-2
……「え、ちょっとフランドール様抱きつかくぁwせdrftgyふじこlp;@:…ぐふっ」
あまりにも強烈なフランブリーカーを食らい、一撃で昇天してしまう。

ざんねん!わたしのぼうけんは ここでおわってしまった!

1スレ目 >>549

───────────────────────────────────────────────────────────

寂しがりやのお嬢様



 「…………というわけで、向こうの世界ではインターネットを通して世界中の人々とリアルタイムで情報交換が可能になっているわけです」
 「ふ~ん。すごいんだね、そのいんたーねっとって。もの凄い魔法使いが作り出した式なのよ、きっと」
 「まあ、そんなようなものです。式と違って電気で動きますけど」
 考えてみれば、式もコンピュータも片方は勅命たる言霊、もう片方はプログラムが必要なわけだから、どちらも似たようなものかも。
 ここは紅魔館の地下。その最も下の階にある小さな子供部屋だ。
 そこに至るまでに施された、呆れるほどに厳重な物理的、魔術的な封印の数々。
 俺は何度も分厚い鉄製の扉を開き、何度も転送用の魔法陣を起動させて次のフロアへと降りなければならなかった。
 明らかな、露骨なまでの、下にいるものを決して外に出したくないという強い意志。
 その全ての妄念をくぐりぬけた果ての部屋に、俺はいる。
 これまで眼にしてきた数々のセキュリティからすれば、笑ってしまいたくなるくらいに小さな部屋だ。
 いや、牢獄か。
 緋色の壁紙が張られた部屋はあちこちにクッションやぬいぐるみが散らかった、いかにも年頃の女の子のいる部屋といった感じだ。
 テーブルには椅子が二つだけ。
 その上に乗せられているのは銀の砂糖入れと綺麗な装飾の入ったティーカップが二つ。中の紅茶はとっくに冷めている。
 隅の本棚には、少しだけしか本が入っていない。そのどれもが古びたグリモアだ。
 俺の後ろには小さな黒板がある。
 ここ幻想郷には、ホワイトボードなんて便利なものはない。
 ここまで持ってくるのにひどく難儀した覚えがある。
 俺はちょうど黒板を背に、チョークを手に持った姿勢だ。
 そして俺の視線の先。
 壁と同じ緋色のカーペットの上にぺたんとお尻をついて座り込んでいるのは、一人の風変わりないでたちのお嬢様だ。
 「ねえ、まだ勉強するの。もう飽きちゃった。つまんな~い」
 スカートからのぞく細い両脚をばたばたさせて駄々をこねているのは、フランドール・スカーレット。
 ここ紅魔館の主ことレミリア・スカーレットの妹君だ。
 ある日ふと幻想郷に迷い込んでしまった俺は、いろいろあって紅魔館に勤めることとなった。
 湖のほとりの林にある自宅から毎日ここに通っている。
 最初のころは門番の手伝い(もっぱら園芸だった)や司書の真似事(もっぱらスペルカードで不法侵入者を撃退していた)だったのだが、
ひょんなことからこうして家庭教師へと転職することになった。
 「フランにも、少し外の知識が必要かもね。あなたを専属の家庭教師に任命するわ。しっかりやりなさい」
 というレミリアお嬢様の一言でだ。
 最初はヤバ気な発狂した妹様の相手ということで完全武装で赴いたのだったが、幸いにもそれは杞憂で終わってくれた。
 もっとも、俺如きのスペルカードでお嬢様に対抗などできるわけがないのだが。
 普段殆ど目にすることのない自分以外の存在。それも幻想郷では珍しい男だ。
 しかも、外の全く知らない知識を持っている。幸いお嬢様は俺に打ち解けてくれた。
 教師というよりは、友達のように思っているようだけれど。
 「そうですね。それでは、今日の授業はおしまいです」
 咲夜さんからいただいた懐中時計に目をやれば、ちょうどいい時間だ。
 お嬢様は少々むら気なところや飽きっぽいところがあるけれども、ときに異様ともいえる飲み込みの早さや深い洞察力をかいま見せることがある。
 一種のサヴァンのような感じだろうか。
 「やった! ねえ、お話聞かせて。この前の続き。早く早くぅ」
 俺が授業の終わりを告げると、とたんにお嬢様はノートを放り投げてこっちに擦り寄ってくる。
 「はいはい。分かっていますとも」
 俺は苦笑しながらチョークをしまってクッションに腰を下ろした。
 「どこまで話しましたっけ」
 「私がハートの女王のクロケー場まで行ったところ。そこでクロケーをしようとしたんだけれど、全然うまくいかないの」
 「そう、そうでしたね。では――――『フランドールは、すっかり困ってしまいました。槌がフラミンゴ、ボールがハリネズミ、アーチが
トランプの兵隊のクロケーなんて見たこともありません』」
 「本当。今まで一回も見たことないもん」
 「『フランドールは最初はあれこれ努力してやってみようとしましたが、だんだんと腹が立ってきました。「なによ、こんなのってやってられないわ。
女王はどこ。今すぐこんなバカげた遊びは終わらせてあげるわ」とえらい剣幕です』」
 「当然よ。そんなトランプの女王なんか一瞬で燃やしてあげるわ」
 お嬢様は目を輝かせて、俺の話す内容の一つ一つに聞き入り、言葉を返す。
 授業が終わった後の、俺たちの密やかな楽しみ。それがこのお話の時間だった。
 何回かお嬢様の部屋を訪れているうちに、おれはあることに気づいた。
 本棚はあるのに、そこに置かれている本の種類があまりにも寂しいものなのだ。
 どれもこれも魔法関連のものばかり。
 年頃の女の子が読むような小説もなければ、童話も物語もない。
 これじゃまるで、動物のような飼い殺しじゃないか。
 「お嬢様。一つ物語をして差し上げましょう」
 「え? ものがたりってなに?」
 ときたものだ。なんという無知。
 この世全てを破壊できるほどの力を持ちながらも、お嬢様は物語の一つも知らないとは。
 ためしに一つ『赤ずきんちゃん』を話してみたらこれが大好評。
 もっともっととせがまれて、気が付くとすっかり夜になっていた。
 俺がお嬢様の逆鱗に触れて消し炭にされたんじゃないかと、小悪魔がわざわざ覗きに来たくらいだった。
 俺は本物の作家じゃないから、物語のストックは少ない。
 こんなことなら向こうにいるときにもっと本を読んでおくべきだったと後悔しても、後の祭りだ。
 それでもお嬢様のリクエストに答えるべく編み出したのは、自分でお話を作ることだった。
 主人公を目の前のお嬢様にして、不思議の国のアリスとコラボレーションをしてみたのだ。
 ある日白兎に誘われ、子供部屋から不思議の国へと迷い込んでしまうお嬢様。
 おなじみの帽子屋、チェシャ猫、トランプの兵隊などの面々と、あるときは友達になり、あるときは撃破する自分の姿を、意外にもお嬢様は
とてつもなく気に入ってくれた。
 考えてみれば、本物の不思議の国のアリスもこんな感じで生まれたんだったな。
 お話は続く。
 「『いきなりフランドールに張り飛ばされたハートの女王は怒って叫びました。「ヤッチマイナー!」と。
 すると「なめんなコラァッ!」「死にさらせやテメェッ!」などと叫びつつ、ドスやピストルを振り回したトランプの兵隊がフランドールに襲い掛かります。
 そこでフランドールはレーヴァテインを振り回して、当たるを幸い片っ端からなぎ払い…………』」
 「あははははッ! そうそう、そうこなくっちゃっ♪」
 大うけしているよ。こんな脈絡のない、シナリオも起承転結も破綻した、当てずっぽうの行き当たりばったりの思いつきなのに。
 それなのにお嬢様は手を叩いて笑い、物語の中の自分の活劇に目を輝かせて続きをせがんでくれる。
 一度だけ、この少し上の広いフロアでお嬢様のスペルカードの発現を見たことがある。
 禁忌「レーヴァテイン」。
 灼熱の国ムスペルヘイムの王スルトが持つとされる、火炎でできた剣。
 世界すら焼き滅ぼし灰燼に帰せしめる魔剣の名を知らしめすにふさわしい、それは圧倒的な破壊を振りまく光景だった。
 燃え盛る炎を手に、お嬢様はひどく嬉しそうに笑っていた。
 どこか病んだ、禍つを感じさせる狂おしい笑顔で。
 でも、俺の目の前にいるお嬢様は、物語に夢中になって聞き入っているただの女の子だ。
 どちらが本物のお嬢様なのだろうか。
 俺はそんなことを思いながら、自作の『不思議の国のフランドロール』の続きをリアルタイムで考えていた。



 「あーくそ、風邪引くなんて久しぶりだな」
 紅魔館が見える湖のほとりにある小屋が、俺の今住んでいる家だ。
 窓から差し込む日の光は、今日もいい天気であることを俺に教えてくれる。
 普段ならば快晴の空の下ボートを出して、気持ちよく紅魔館に向かっているのに、今日はベッドから出ることができない。
 数年ぶりに風邪を引いてしまったのだ。
 さっき、紅魔館にはレミリアお嬢様からもらった使い魔を飛ばして休みの連絡を入れておいた。
 「養生して早く治しなさい。フランにも風邪だと教えておくわ」
 そう帰ってきた使い魔はレミリアお嬢様の声で言った。
 「お嬢様………どうしているだろうな」
 不意にお嬢様の顔が脳裏に浮かんだ。
 「――――えーと、ここでいったん終了です。続きはまた今度ということで」
 突発的に思いついたネタだけで危なっかしく続いている俺の物語。当然ネタに詰まれば話も続かない。
 俺がギブアップすると、まだ物足りないお嬢様はソファにふんぞり返って駄々をこねる。
 「だめだめだめ! 今がその今度。もっとお話してっ!」
 小さな子そのものの姿に、俺はなぜか逆らえず(逆らったら命がないが)、もともと少ない創作力を搾り出して話の続きを作り出していこうとするのだった。
 次第におぼつかないながらも、話がよたよたと続きだすと、再びお嬢様は息をするのも忘れたように俺の話に聞き入っていく。
 「いつも楽しみにしてくれたのに、悪いことをしちゃったな」
 今日はさすがに紅魔館には行けない。
 けれども話はクライマックス。不思議の国を壊滅させたフランドールが、仕置人の妖忌師範代に果し合いを申し込まれるのだ。
 一振りの刀の鋼は万物を破壊する力に耐えることが出来るのか?
 一介の武人の剣技は、悪魔の妹を斬ることが出来るのか?
 出来る。
 出来るのだ。
 見よ。異形と化すまでに鍛え込まれた両腕。
 見よ。陽光の如く光を放つ妖怪の作りし刀剣。
 次回「幻想郷無比無残真剣試合」。
 …………とこんな感じだ。
 どうしてこうお嬢様は活劇……というよりはスプラッターがお好きなんでしょうな。
 「寝るか。早く治してまた続きを話さないとな」
 熱で曖昧となった頭では、難しいことは考えられない。
 薬も飲んだし、とりあえずはもう少し眠ろうと俺がベッドの中にもぐりこもうとしたそのとき、
 凄まじい爆音がした。
 小さなこの家が揺らいで、窓ガラスがびりびりと震えるくらいの大音響だ。
 「なっ! なんだ!?」
 眠気も頭痛も一瞬で吹っ飛び、俺はベッドの上で飛び上がった。
 慌ててベッドから降り、スリッパをつっかけて窓から外を見る。
 音からして向こうの紅魔館の方からだ。
 そこで俺が窓の向こうに見たものは。
 「火事! 紅魔館が燃えてるよおい!」
 文字通り、紅魔館の屋根が火を噴いて燃え上がっていた。
 遠目でよく分からないが、どうやら屋根に大穴があいているらしい。
 「また隕石でも落ちたのか?」
 この前の隕石はお嬢様が爆破したって聞いたけど、今度は直撃したのか。
 唖然として俺が見ていると、急に上空が黒雲で覆われた。
 間髪入れずに、どしゃ降りの大雨が狙ったように紅魔館の周りにだけ降り注ぎ、たちまちのうちに火を消していく。
 さすがパチュリーさん。五行+日月を用いた精霊魔法の使い手だな。局地的に天候まで操作できるなんてすごいじゃないか。
 けれども、異変はそれで終わらなかった。
 再び爆音。今度は何と湖が爆発するなり二つに割れた。
 まさにモーゼの十戒。ハリウッドもびっくりだ。
 あまりのエネルギーの炸裂に、水しぶきが上がるというよりはもはや霧になって吹き飛ばされていく。
 ようやく分かった。
 衝撃波で湖面を真っ二つに割るほどの勢いで、何かがこっちに向かってきているのだ。
 見る間にその何かは湖を横断して、今度は林の木々を片っ端からなぎ倒しながら勢いを全く止めない。
 ヤバい。逃げなきゃこの家ごと粉砕される。そう頭では直感しても、体が動く暇もなく。
 それは俺の家の前で突然止まった。
 「あれ…………?」
 今までの爆音付きの大破壊がうそのように、それは唐突に静かになった。
 と同時に、
 「死んじゃやだ――――――ッ!!」
 「ぐああっ!?」
 ドアが、立て付けの悪いドアがマッチ棒ほどの大きさに一瞬で粉々になるなり、何かが大声を出して突進してきた。
 かわすことなんてできるわけがなく、ものの見事に俺はそれにぶつかってひっくり返る。
 「お、おおお嬢様!?」
 「死んじゃだめ死んじゃだめ死んだらだめったらだめ! そんなこと許さない私が許さない絶対に絶対に死んだら許さないんだから!!」
 ようやく突進してきたものの正体が分かった。
 フランドールお嬢様だ。
 いつも手に持っている魔杖らしきものも持たずに、ひたすら仰向けに倒れた俺に抱きついてぐりぐりと頭を押し付けている。
 見事にプロレス技が決まっている。さすがはヴァンパイアの馬鹿力だ。
 背骨がバルサみたいに折れそうだぜ。
 「ちょ………お、お嬢様…………手……離さないと死にます……マジで………」
 床をバンバン手で叩いてギブアップと宣言するが、レフェリーのいないここでは無意味だ。
 お嬢様は半ば錯乱したような感じで「死んじゃヤダ」と繰り返している。
 何だか分からないけど、このままだと窒息して本当に死ぬ。
 「だい――ダイジョブです! 死にません! 死んだり………しませんから…………手を離して……下さい!」
 とにかくお嬢様を安心させて正気に戻ってもらおうと、俺は酸欠で気が遠くなりながらも必死でお嬢様に呼びかけた。
 最初は反応がなかったけれども、やがて、
 「ほ……ほんとう………? 死んだりしない?」
 「は、はい。死んだりなんかしませんとも。もちろん」
 ふっと絡められた腕の力が弱まり、暴れていた小さな体が静かになる。
 胸に押し付けられていた顔が上げられて、お嬢様と目が合った。
 「まだ、お話は終わっていませんから。完結するまで俺は絶対に死んだりしませんよ」
 呆けたような、安心したような顔が不意に愛しく見えて、俺は気が付いたら笑っていた。
 「よかった…………」
 お嬢様も、つられたのかかすかに笑ってくれた。
 のろのろと、倒れたままの俺の上から身を起こす。
 マウントポジションに移行したな。
 殴られたら一方的にボコボコにされそうで、少々生理的に怖い姿勢だよな、これ。
 「でも、どうして俺が死ぬだなんて思ったんですか?」
 俺がさっきから不思議に思っていたことを聞くと、お嬢様は少し顔を赤くした。
 「だって…………人間ってすぐに死んじゃうらしいから。病気でも怪我でも簡単に壊れちゃうから。咲夜にあなたが風邪を引いているってきいたから
…………その…………心配になって……飛んできちゃった」
 紅魔館の屋根をぶち抜いてですか。
 あれほどの封印を全て突破して、紅魔館を破壊し、湖を二つに割って林の木々をなぎ倒すとは。
 本当に化け物じみた力の持ち主だ。まさに破壊神フランドール(レベル94)。
 これじゃドラゴンボー○の世界だな。
 ふと、俺は気が付いた。
 「お嬢様……泣いておられるのですか」
 お嬢様の目の縁に、光るものを見たような気がしたからだ。
 そんなに、自分のことを心配してくれたんだろうか。
 よく見れば、お嬢様の服はあちこち破れたり焦げたりしている。
 封印にはじかれてやられたのか、それとも外に出るのを止めようとしてレミリアお嬢様たちといざこざがあったのか。
 「う、うるさいわね。泣いてなんかいないわよ!」
 俺の上で馬乗りになったまま、お嬢様はぷいと横を向いてしまった。
 でも、頬は前よりもさらに赤くなっていて、照れているのはどこから見ても一目瞭然だったのだけど。



 「いや、実際体調は悪いんですよ。まだ残念ですけど熱がありますし、咳だって止まってくれないんです」
 とりあえず粉みじんになったドアの事はなるべく考えないようにしながら、俺は再びベッドの上に横になった。
 「そうなんだ。じゃあ、看病してあげるね」
 さらっと笑顔でとんでもないことを言い放つお嬢様。
 ちょっと待って。この何百年も幽閉されて、生きた人間を見るのさえも最近だったお嬢様が俺の看病ですって?
 気持ちは嬉しいけど、それは原子炉の調整を幼児に任せるのと同じくらいに不安だ。
 炉心がメルトダウンしてチェルノブイリの二の舞になるのと同様に、俺の体が家ごとドアの二の舞になるに決まっている。
 棺桶の蓋を閉めての葬儀になるに違いない。
 「ちょっと待ってて。すぐに戻るから」
 残念だが、看病してもらう嬉しさと自分の命を天秤にかければ命の方が重い。
 どうすれば丁重にお断りできるだろうかと俺が考えあぐねていると、お嬢様は何をするまでもなくいきなり出て行ってしまった。
 再び爆音と巻き起こるソニックブーム。飛び立つだけであれだ。窓から一抱えもありそうな大木が宙に舞っているのが見えた。
 なにをするつもりだろう。死刑執行のときを待つ囚人の心で俺がいると、数分ほどしてお嬢様は戻ってきた。
 見えたのではなく、家の前で地面が爆発する音がしたから分かったのだが。こりゃそのうち地形が変わるな。
 「ほら、連れてきたよ」
 お嬢様が得意満面の表情で引きずってきたものを見て、俺の心臓は飛び上がった。
 「さ、ささささ咲夜さん!? 死んでる!?」
 「失礼ね、壊してなんかいないわ」
 お嬢様は、無造作に片手で咲夜さんを床に引きずって持ってきたのだった。
 「私……病気になんてかかったことがないから、看病したくても分かんなくて…………咲夜なら分かるんじゃないかと思って無理やり連れてきたんだけど
………ダメかな?」
 恥ずかしそうに顔を赤らめてもじもじするお嬢様は大変に可愛らしくてよろしいのだけれども、引きずられてきた咲夜さんのほうは全然よろしくない。
 「いえ、いえいえ全然あはは。すごく、嬉しいですよ」
 自分でも引きつっていると分かる顔で、だるさも頭痛もまた忘れて俺は咲夜さんのほうに駆け寄った。
 お嬢様と一悶着あったことは想像に難くない。
 メイド服はあちこち焦げてボロボロ、おまえに音速を超えるスピードで振り回されたせいでその破け具合に拍車がかかっている。
 スカートはまだ無事だけれど、上着なんてないに等しい。
 はっきり言って、これは目の毒だ。
 引きずられてきても何の反応もなく、完全に気を失っている。
 「咲夜さん? お~い咲夜さん。大丈夫ですか?」
 肩に手をやって何度か揺すぶっていると、虚ろだった目に光が戻ってきた。
 「ここは…………私、死んだんですね」
 「いいえ死んでいません。人を死神扱いしないで下さい」
 普段の瀟洒な様はどこへやら。寝ぼけたような反応に俺は突っ込みを入れる。
 「ここは俺の家です。お嬢様がここまで連れてきたんですよ」
 「そうでした………。お嬢様が館から出るって聞かなくて………。止めようとしても全員やられてしまって…………」
 凄いことになってそうだな、向こうは。重傷者が出てなければいいけど。
 「ほら、咲夜。さっさと起きて。一緒に看病しましょう」
 看病という意味が本気で分かっていないらしく、まるでイベントのような物言いをするお嬢様。
 けれども、その言葉でようやく咲夜さんは正気を取り戻したようだ。のろのろと床から身を起こす。
 「かしこまりました…………。紅魔館に戻って準備を整えてまいります」
 むちゃくちゃなお嬢様の命令にもきっちり応えようとする咲夜さんに、俺は尊敬の念に近いものさえ覚えた。
 向かい合う形になった俺の額に、咲夜さんの白い手が当てられる。ひんやりとした感触がこっちに伝わってきた。
 「熱は下がりつつあるようですね。具合はどうですか」
 「まだ頭痛と体がだるいです。あと咳も少し」
 「今年の風邪は咳が長引くそうです。でも、そんなに重い風邪でなくてほっとしました」
 俺の容態を聞いて、かすかに咲夜さんは微笑んだ。すっかりいつものメイド長に戻っている。
 「大丈夫ですか? 怪我とかしていません?」
 「なんとか。ところでおじやとオートミールとどちらを作りましょうか」
 「あ~。じゃあおじやの方でよろしく」
 「はい。それではすぐに戻りますので、少々お待ちください」
 危なげなく立ち上がってドアの方に向かう咲夜さんに、俺は呼びかけた。
 「そうだ、咲夜さん」
 「はい、なんでしょう」
 振り返った咲夜さんに、俺は笑って言った。
 「その格好もいいけど、ちゃんと着替えてきてくださいね。目のやり場に困りますから」
 失言だった。
 俺の頬をコンマ以下数ミリかすめて、ナイフが一本飛んできて壁に刺さったのは言うまでもない。
 「咲夜に色目なんか使うからよ。バーカ」
 ついでにお嬢様にまでデコピンされた。この二人、少しは病人をいたわれ。



 瞬く間に咲夜さんは戻ってきた。両手に食材とか調理器具とかを色々抱え、服もちゃんと着替えてあった。さすがは時を操るメイドだ。
 今は台所でお嬢様と一緒に食事を作ってくれている。
 「ちょっと咲夜、味付けってもっと必要かな」
 「いいえ。病人食は薄味が基本ですから、そのくらいで十分ですよ。あ、リンゴは私がむきますから、フランドール様は火加減を見てください」
 「分かったわ。それじゃあ、そっちはまかせるわ」
 たいしたものだ。あの情緒不安定なお嬢様とちゃんとコミュニケーションが取れているよ。
 しかも、「自分が看病するの」と主張するお嬢様に協力するという形は崩していないし。
 お嬢様一人だったら、今頃台所そのものがないだろう。
 「力が付くと思ったから」とか言いながら邪竜アジ・ダカーハでも捕まえてきて丸焼きにしかねない。
 「できたよ。ほら、食べて食べて」
 やがて、いい匂いと共に鍋と皿が乗ったお盆をお嬢様が運んできた。後ろにはちゃんと咲夜さんも控えてくれている。
 おじやはニラと卵の典型的な奴だ。
 枕もとのテーブルに置いた鍋から、お嬢様は蓮華でひとさじすくうなり、
 「はい、あ~んして」
 「熱すぎて無理です。俺猫舌ですから火傷しちゃいますよ」
 「もう、しかたがないなあ。じゃあ」
 と息を数回ふうふうと吹きかけてから、やっぱりお嬢様は俺の方に蓮華を差し出す。
 「はい。あ~ん」
 「…………しなくちゃダメですか」
 咲夜さんの目もあって非常にとてもとにかく恥ずかしいんですけど、これ。
 「ええ。お嬢様の行為をむげになさるおつもりですか」
 とすました顔で言い放つ咲夜さん。
 そして、にこにこしながら待っているお嬢様。
 ええい、と俺は意を決して差し出された蓮華ごと、一気に口にほおばった。
 「…………ん」
 「どう? ねえどう? おいしい? おいしいでしょ」
 身を乗り出して聞いてくるお嬢様に、俺は笑顔で答える。
 「ええ、とってもおいしいですよ」
 嘘偽りなくおいしい。咲夜さんの料理の腕があってこそだろうけど、お嬢様がわざわざ作ってくれたものだ。おいしくないはずがない。
 俺の言葉に、お嬢様の顔がぱっと花が咲いたようにさらに明るくなった。
 躁鬱気質のお嬢様が見せる躁の状態のような異様なものではなくて、本当に自然な見ていてこっちも微笑みたくなるような表情だった。
 「やったっ! ありがとう咲夜。咲夜のおかげだよ」
 「いいえ。私はただ手助けして差し上げたに過ぎませんから」
 と従者の模範とも言うべき咲夜さんのコメント。
 「ほら、リンゴもあるからもっと食べて。早くよくなるには食べなきゃだめよ」
 そう言いつつ、蓮華とリンゴをいっぺんにこっちに差し出してくるお嬢様は、今まで一度も見たことがないような顔で笑ってくれていた。



 ドア代わりに入り口にたらしたシーツをくぐるなり、咲夜さんは目を丸くした。
 「あら、すっかり安心されていますね」
 「はは………いつの間にかね。お疲れになられたようです」
 ベッドで苦笑する俺の横では、お嬢様が床にひざを付いたまま、ベッドの上に上半身を乗せて眠ってしまっていた。
 きっかり二時間前のことだ。
 「咲夜さん。すみませんが二時間ほど俺とお嬢様に時間をいただけますか」
 食べ終わって片づけを済ませた咲夜さんに、俺はそう言った。
 「よろしいですけど…………授業をなさるつもりですか? なにも病気のときくらいは休まれては…………」
 思ったとおり、いささか怪訝そうな顔をする咲夜さんだった。
 「いえ。ちょっと、ね」
 とお嬢様の方に目配せすると、すぐに分かったみたいだった。
 「そうよ。咲夜には教えてあげない。二人だけの秘密のことよ」
 ますます分からない、といった感じで咲夜さんは俺とお嬢様の顔を交互に見比べていたが、やがてふっと笑った。
 もしかすると、お嬢様の待ちきれない様子から何か察したのかもしれない。
 「承知いたしました。ごゆっくり」
 主の言うことに速やかに従い、余計な詮索はしない。まさにメイドの鑑だ。
 咲夜さんが笑いながらいなくなると、ようやく俺たちは顔を見合わせた。
 「さて、それでは続きをお話しするといたしましょうか。お嬢様」
 「うん。ずっと楽しみにしてたよ」
 胸元に反り返ってぴったりとくっついたお嬢様に、俺は昨日の続きをおもむろに話し始めたのだった。
 そして今。
 咲夜さんが帰ってくる前に、お嬢様は疲れたのかうつらうつらしているうちに寝てしまった。
 可愛らしい寝息がかすかに聞こえる。
 「でも、安心いたしました」
 咲夜さんがベッドの俺に近づくと、頬を緩めてそんなことを言う。
 「フランドール様もあなたのことをよいお友達だと思われているようですね」
 「一応、家庭教師なんですけど。でも、好意を持っていただけているなら嬉しいです」
 俺はそっとお嬢様の頭に手をやって、もつれた金色の髪を撫でてみた。
 お嬢様は幸い目を覚まさないで、かわりに気持ちよさそうに息を付く。
 「私も、嬉しく思っているんですよ」
 「咲夜さんが、ですか?」
 「ええ。いけません?」
 咲夜さんはわざとらしく首をかしげる。
 「いけなくなんかありませんけど……少し意外でしたよ。咲夜さんはレミリアお嬢様一筋かと思っていましたから」
 「あら、それは心外です。私は確かにお嬢様に忠誠を誓っていますけど、紅魔館全体のことも考えているメイド長なんですよ」
 それもそうでした。ついこの人はレミリアお嬢様とセットで考えてしまいがちだけれど、実際は主に代わって紅魔館を運営している人だったな。
 「ずっと地下に幽閉されて、けれどもその不安定なお心に耐えられないくらいの力をお持ちになられて、ある意味フランドール様は不憫な方でした」
 咲夜さんの視線が、俺の横で安心しきって眠っているお嬢様に向けられた。
 「けれども、あなたという人が現れて、フランドール様も変わられたと思います。あなたが友人となってくださったから、ここまでお慕いしているのでしょう。
それはとてもよいことです。フランドール様にも、私たち紅魔館の者たち一同にとっても」
 「俺はそんなに大層なことをしていませんよ。ただ、お嬢様に必要だったものを差し上げているだけです」
 「必要なもの?」
 「はい。でも、それがどんなものかは、お嬢様との秘密ですけどね」
 咲夜さんは不思議そうな顔をしたけれども、俺は秘密と言うだけに留めた。
 お嬢様に必要なものは封印でも幽閉でも束縛でもなんでもない。
 それは、誰もが耳にし、目にし、いつか必ず心に刻む幼いころの物語。
 それは、普通の女の子が普通に欲しがっているものだけだったのだ。
 咲夜さんはしばらく黙っていたけれども、いきなり俺に尋ねた。
 「あなたは、元の世界に帰りたいとは思わないのですか」
 「いいえ。全く」
 俺は即座に首を横に振る。
 「お嬢様に必要なものが差し出せるのは、いまのところ俺だけでしょうから。もし俺がいなくなったりしたら、幻想郷が遠からず崩壊しますよ」
 「そ、それは困ります。……何か危険を感じましたら、遠慮なく私に報告してくださいね。全力で排除いたしますから」
 頼もしいことを咲夜さんは大真面目に言ってくれる。ちょうどよかった。最近「そーなのかー」が口癖の人喰い妖怪に付きまとわれているからな。
 「それにね…………」
 俺は横に目をやる。
 話に夢中で聞き入りながらも、やがて今日の大暴れがさすがに疲れたのかすっかりお休みしてしまった我らのお嬢様がいる。
 「お嬢様は……俺にとって大事な人ですから」
 何気なく口にしてから、我ながら何を言っているんだと驚いた。俺はいつから、お嬢様をそこまで慕っていたんだろうか。
 でも、すごく恥ずかしいことを平気で口にしてしまった気がする。
 「すみません今のは忘れてくださいお願いしますこのとおり」
 「い・い・え。重大発言です」
 さらりと笑顔で否定してくれる瀟洒だけれども恐るべき咲夜さん。
 「いけませんよ。従者が主人に片思いだなんて。レミリアお嬢様に知れたら千本の針の山です」
 「忠告感謝いたします。そして以後気をつけます」
 俺がその笑いながらもシャレにならない本気が混じっている言葉に怖くなって頭を下げていると、もぞもぞとお嬢様が動いた。
 だらんとしていた手が俺の腕をむんずとつかむ。
 「お嬢様?」
 「ん~…………つかまえた~…………も~はなさないんだから」
 あ、寝言だ。目を閉じたまま、お嬢様は俺の名前をぶつぶつと呟いている。
 俺が顔を近づけると、さらに寝言は続いていた。
 「だいじょ~ぶ……世界のひとがぜんぶ敵でも……あなたを守ってあげるから…………」
 お嬢様、どんなアクション映画みたいな夢を見ているんですか。
 「だって…………わたしはね…………」
 けれども、もう一言が
 「…………だいすきだよ……ずっと…………」
 耳に入ってきて、俺は固まった。
 寝言とはいえ、あまりにもストレートな告白。
 これは、本当に夢とはいえ俺に向かって告白してくれたんだろうか。
 心臓が止まるほどに驚いて、しばらく押し寄せる自分の感情が分からなかった。
 でも、ゆっくりと。
 ゆっくりとだけれども、心の奥底に暖かいものが広がっていく。
 ああ、自分は嬉しいんだ。
 本当に嬉しいんだ。
 たまらなく嬉しいんだ、とようやく気が付いていた。
 顔を上げて、咲夜さんの方を見る。
 「今の、聞きました?」
 「ええ。それはもちろん」
 「――――レミリアお嬢様には、ぜひ秘密ということで」
 「もう、意気地がないですね。たとえ反対されてもお嬢様のお気持ちに応える覚悟はないんですか?」
 「それは、そのもう少しスペルカードの技術を磨いてからということで」
 やれやれ、とわざとらしくため息をついて、咲夜さんは俺に背を向けた。
 「仕事がありますので紅魔館に戻ります。フランドール様がお目覚めになりましたら、使い魔をよこしてください」
 「あ、あの…………」
 何か言おうとする間もなく、咲夜さんは出て行ってしまった。
 どこか、嬉しそうな気配は隠せないまま。
 表面上はちょっとクールだけれどもやっぱりいい人だよな、咲夜さんって。
 部屋に残されたのは、俺とお嬢様の二人だけ。
 「お嬢様…………」
 俺は静かに、目を覚まさないように細心の注意を払ってお嬢様の手を取った。
 軽くて細い、透き通るほどに白い女の子の手だった。
 「俺のために泣いてくださったこと、忘れはいたしません」
 そして、そっと。
 「俺もお慕いしております……ずっと…………」
 その手の甲に、口付けた。
 誰も知らない。
 お嬢様も知らない。
 秘めやかな、密やかな、けれども揺らぐことのない。
 これは、俺がお嬢様に捧げる、変わることのない臣従の誓い。
 たとえ、どのようなことがあろうとも。
 たとえ、何人が敵に回ろうとも。
 俺は、あなたにお仕えいたします。
 この命を、全て捧げて。
 願わくば、この愛しき方と永遠に共に歩むことを、天が自分に許さんことを。
 
〈完〉

1スレ目 >>677

───────────────────────────────────────────────────────────

フランドールと言う名の悪魔が迫ってくる。
一緒に戦っていたメイドたちはすでに周りで倒れている。
…この分じゃ墓穴がいくつ必要になるのやら…
僕自身の体力ももう限界に近い。
…だが、ここで負けるわけにはいかない。
妹様は…外に出すわけにはいかないんだ!

僕は人間界出身で幻想郷に迷い込んでしまい、彷徨っていたところを紅魔館の門番、美鈴に介抱され、中に連れてかれた
ここのメイド長である咲夜さんに何が出来るかと聞かれ、一応槍術が出来ると答えたら最初は門番に任命された。
だが、黒白の魔法使いを撃退したことでいきなりの大出世をし、妹様外出阻止係に任命された。
妹様外出阻止係とは、この紅魔館の図書館に住むパチュリーさんの体調が思わしくないときに、ここの主人、レミリア様の妹であるフランドール様の外出を阻止する係である。
パチュリーさんの体調が良い時は、外に雨を降らすことにより外出を阻止できるのだが、パチュリーさんは病弱なのでしばしば床に伏せっていることがあるのだ。
そんな時にフランドール様に外出をされたら止められないのでこの係が存在するのである。

僕がこの係に就任してから過去二回ほど出動要請があり、いずれも数人の死者を出したが何とか食い止めていた。
…しかし、今回ばかりはヤバイ…
生き残っているのが僕一人なのである…

「アナタもしつこいわねぇ…いい加減壊れてよぅ!」
「残、念、ながら…僕は、まだ死ぬ気は、無いですよ、っと」

展開されている弾幕をすんでのところで避けながら、言葉を返す。
周りを見るとすでに肉片と化したメイドたちが横たわっている。
…まだ、ああなりたくは無いな…

「もう怒ったー!禁忌"レーヴァテイン"!」
「うげっ!勘弁してくださいよ…」

妹様がレーヴァテインを振り回しながら迫ってくる。
僕は自分の槍で何とか受け止めながら後退していった。
そして部屋の隅に追い詰められてしまった。

「フフフ…さあ、無に帰ろう♪」
「可愛く言うセリフじゃないですよ…」

しかし僕もここで終わるわけにはいかないので反撃に出る。

「行きますよ…"スターダストスロー"!」
「うわわ…すごいすごい!さすが魔理沙を倒しただけあるね!」

今度は僕が押し始めた。
…てか、フランドール様って最近僕との戦いをむしろ楽しんでいるような…?

「逃がしませんよ、フランドール様!悪いですが外に出すわけには…」
「うーん…やっぱ外に出るのやめよっかな?」
「…はい?」

ちょっと待て、じゃあ僕は何の為に戦っているんだよ…

「だって、外に出るよりもアナタと戦ってたほうが面白いもん!」
「え…」
「アナタが来てからすごく楽しいんだよ!まさか弾幕を張らずに私に勝つなんて思っても見なかった!」

確かに僕は弾幕を張るのは性に合わないから肉弾戦で挑んでいる

「…まぁ、僕と戦うことによりフランドール様が外に出るのをやめると言うのならいくらでも戦いますが…」
「ホント!?やったぁ!じゃあ早くかかって来てよ!」
「…仕方ないですねぇ…行きますよ!"ランサー"!"ネピュラスソーサー"!"百花繚乱"!」
「うわぁ!よーしこっちも負けないよ!禁忌"フォーオブアカインド"!」

……

「ふぅ…今日も僕の勝ちですね」
「あーん、"青龍"を出すなんてずるいよー」
「一応僕の決め技なんですから…妹様、よく僕の出す技の名前を覚えていらっしゃいますね」
「後確か"ブラッドサッカー"でしょ、"デスブランディング"に"パイルバンカー"、でも私が一番好きなのは"ルナッティックダンク"かな」
「うーん…敵の情報を知ることはいいことですからね…やっぱり対策のために覚えたんですか?」
「違うよ!私はアナタが好きだ…から」
「…はい?」
「…うう、言っちゃった…」

妹様の顔が真っ赤になっている。
…というか、僕の顔も熱い…多分傍から見れば真っ赤なんだろう。

「ねぇ…返事は?」
「…まぁ、いいんじゃないですか?僕は貴女に一生付き合うつもりですよ。少なくとも、この命が尽きるまでは」
「ホント!?」
「ええ、ホントです。さて、明日から忙しくなりますね。」
「え…なんで?」
「フッ…毎日あなたの相手をしなければいけませんからね!」
「そっか!負けないよ!」

-チラシの裏-

主人公の技名の元ネタ…わかる人少ないだろうな…
書いてたときのBGM
「Pain The Universe/下村陽子」、「Song of Mana ~Ending Theme~/Annika Dave」、「Ark/Sound Horizon」
「U.N.オーエンは彼女なのか?/ZUN」、「drizzly rain/myu」、「NOTICE/HIGH and MIGHTY COLOR」
-ここまでチラシの裏-

と言うわけで(どういうわけだ)フラン×自分です。
ここまでこのヘタレ文章を読んでいただきありがとうございました。

2スレ目 >>20

───────────────────────────────────────────────────────────

>>20後日談

最近妹様に必殺技を読まれかけている…
うーん…新しい技でも開発してみないとダメかな?

「行きますよフラン様!無双三段!」
「ふふーんだ!もう私にその技は通用しないよーだ!」

ありゃ、やっぱり避けられたか…
…よし、あの技を出そうか!

「まだまだぁ!ランサー!」
「甘いよー!その技も読みきって…」
「引っかかりましたね!乱れ雪月花!」
「へ?うわぁ!」

よし!決まった!
乱れ雪月花はもともとは大剣用の技だけど自己流で槍用にアレンジしたんだ!

「ふ、ふえーん…また負けたぁ…」
「ふぅ…何とか新技が決まったおかげで勝てましたね…」
「フェイントを使うなんてずるいよ~」
「いや、こちらの技はもうほぼ妹様に読みきられてしまいましたからね…フェイントを使っての新技を使うのが一番だったんです」
「でも!もう覚えちゃったもんね~♪次からはもう引っかからないよ!」
「おっとっと…ではまた新しい技を作らないとですね…」
「うーん…ねぇ○○、もう新技作るのやめてもらえない?」
「え!?でもそれじゃあ僕が勝てなく…」
「私だってたまには勝ちたいの~。いい、これからは新技を作るのは禁止!破ったら夜中に○○の部屋に忍び込んで…」
「いや妹様それだけは勘弁願います。」

フランドールが夜中に忍び込んで何をするのか?
それはご想像にお任せします…

2スレ目 >>62

───────────────────────────────────────────────────────────

以前にフランは書いているけど…なんか気に入らないのでもう一回別のストーリーで書いて見ました。

僕にはある趣味がある。
それは夜に近所にある屋敷「紅魔館」の屋根に昇り、星を見ることである。
自分の家よりここのほうが星が良く見えるからである。
ちなみに・・・無断でやっているのでいつ見つかってもおかしくないのだが・・・
今まで2年間、この行為を続けてきたが未だに見つかったことは無い。
・・・普通、気付かれるものなんだがな・・・

「ふぅ、今日もバレずに昇れたか・・・」
「さて、望遠鏡を出してと・・・」
「うん、今日もオリオン座が綺麗だ・・・」

ときに僕は人間、ミスはある。
んで、物の見事に今日はミスりましたよ・・・

「・・・ふぅ・・・(ズルッ)んお!?」

屋根の上で足を滑らせてそのまま下へと滑り降りていく。
やば…落ちたらただじゃすまないぞ・・・
って、ん?進路上に天窓が・・・
やべ・・・天窓の中に落ちる・・・

ガッシャーンッ

僕の体は天窓を突き抜けて紅魔館の中に入ってしまった。
そして僕が入ったところは・・・
殺伐とした広い部屋だった。

「ぐあっ…痛ぁ・・・尾?骨割るところだった…」

床に強かに打ちつけてしまった尻を擦りつつ僕は立ち上がって周りを見渡した。
…とにかく、早くこの館から出ることを考えないと・・・
とりあえず窓を探して・・・ってこの部屋の窓ってあれ(自分が落ちた天窓)しかないのか・・・
じゃあ出口を探さないと・・・この扉だな・・・鍵がかかってる・・・
マズイ・・・閉じ込められた!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

半刻ほどが過ぎただろうか・・・
僕は依然、部屋の出口を探していたが・・・どうも二つあった扉の両方が鍵がかかっている・・・
僕が抜け出せそうな窓など無いし・・・どうしようか・・・

「マジかよ・・・館の中で遭難なんてシャレになんねぇ・・・(ぐぅぅぅ~)・・・餓死の方が早いかな・・・」

時間だけが刻々と過ぎていく・・・
そろそろ夜が明けたのかな?と思ったその時だった。

「(ガチャ)もぉ~、さっきからうるさいなぁ、メイドが掃除してるの?」
「ん?」
「あれ、知らない人がいる・・・」

紅魔館の住人かな?どっちにしたってこれで外に出れそうかな・・・

「すみません、ちょっと偶然とミスが重なってあそこからここに入っちゃったんですけど・・・出口はどこか教えていただけないでしょうか?」
「ふぇ?あんなところから入ったの?どうして?」

喋る口調や外見から推測すると・・・小さな女の子かな?暗くて見えないけど・・・

「いや、ここの屋根に昇って星を観察してたんですけど・・・ちょっと滑っちゃって・・・」
「へぇ~。じゃあねぇ、私と遊んでくれたら出口を教えてあげる」
「はぁ・・・」

この子と遊べばいいのかな?ってか紅魔館にこんな小さい子が居たんだなぁ・・・知らなかったよ・・・

「いいですよ。何して遊びましょうか?」
「えーとねぇ・・・弾幕ごっこ!」
「だ、弾幕ごっこ?」
「決ーめたっ。じゃあ私が攻撃するから避けてね」
「いや、ちょっと待って」
「もんどうむよ~う。禁忌『クランベリートラップ』!」
「うわわっ」

げぇっ!何だこの弾幕は!
僕は必死で避けるが・・・いかんせん避けきれずに被弾してしまう。

「痛ッ!…ぐぅ!…はぶっ!・・・ふごっ!・・・がはぁっ!(クリーンヒット)」

・・・小さな女の子だと思って甘く見てた僕が馬鹿でした・・・
そしてそのまま倒れ伏す。

「えぇーっ!?もうおしまいなの?つまんなーい!」
「うう・・・」

体が動かない・・・死ぬかもなこりゃ・・・

「もういいや!お姉さまに習ったあれをやってから壊しちゃおっ!」

すると彼女は僕に近づいてきて・・・覆いかぶさるといきなり首筋に噛み付いてきた。

「ッ!?ぐあっ!」

そして僕の血を吸い始めたのである

「ちゅるっ、ずちゅっ、ごくん」
「うぐっ、ううっ、ああ・・・」
「ふぅ・・・あなたの血って美味しいね」
「・・・まさか君は・・・吸血鬼・・・」
「え?そうだよ」
「・・・アホみたいに強いと思ったよ・・・」
「えへへ・・・じゃああなたを壊してあげるね」

そういうと彼女は一枚のスペルカードを取り出し宣言した。

「禁忌『フォーオブアカインド』!」

すると彼女は四人に分身した。
そして・・・

「四人で血を吸ってあげるね」
「耐え切れるのかな?」
「え~?耐えられるわけないじゃん」
「まぁ・・・あなたの血は美味しいから・・・」
「「「「全部無くなるまで吸ってあげるね!」」」」

多分僕はその時、生まれて初めて死を覚悟した。
そこから先は・・・生き地獄だった・・・
二人に首筋に噛みつかれて、もう二人は腕に噛み付いていた。
ゴクリという音が耳に聞こえる度に意識が遠のくのを感じた。
このまま吸われ続ければ、いずれ人間の血液が抜けたときの致死量、2000mlに到達して死ぬはずだった・・・


が・・・もう半刻は吸われ続けているのに死なないのである。
何故?もうとっくの昔に致死量に達しているはずなのに?それどころか体中の血を吸われていてもおかしくなかったのに…

「うっぷ・・・もうおなかいっぱいだよぉ」
「私も・・・」
「私はもうこの血飲むの飽きたぁ」
「おかしいなぁ、何で普通の人間なのにこんなに血が出てくるの?」
「・・・僕自身、何でだろう?って考えているんだが・・・」
「うーん・・・まあいっか!」
「そーだね、うん。」
「細かいことは気にしない!」
「そうそう!」
「・・・いいのかよ、それで・・・」
「「「「いいの!」」」」
「そうかい・・・」
「あ、スペルが切れるね」
「うん、じゃあまたね」
「バイバイ~」
「まったね~」

すると彼女は一人になった。

「でさぁ、私いいこと考え付いちゃった」
「何?」
「これからずっと私の食べ物になって!」
「ハァ!?」
「だってあなたの血って美味しいし、それに無制限なんだもん」
「いや、ちょっと待ってくださいよ!じゃあ僕の存在価値って食べ物レベルになるんですか!?」
「いやだって言うの?なら咲夜に言いつけちゃうよ」
「咲夜・・・?」
「ここのメイド長だよ。怖いんだから」
「・・・こんな館のメイド長・・・いろんな意味で怖いな・・・」
「咲夜にこま切れにされて食料庫にいくのと私と一緒に暮らすのとどっちがいい?」
「・・・こっちにしておこうか・・・」
「やった!じゃああなたの寝場所は・・・私と同じベッドでいいか!」
「えっ!?いやそれは・・・」
「この部屋にはこれしかないんだから仕方ないじゃない!それとも何?咲夜に言いつけて・・・」
「同じ布団で寝ますか・・・」

あれ?そういえば名前を聞いてなかったような・・・

「そういえば名前はなんていうんです?」
「私?フランドールって言うの。フランって呼んで!」
「そうですか。僕は○○、呼び捨てでかまいません」
「じゃあ○○、一緒に寝よっ!」
「分かりましたよ・・・フラン」


妹様の吸血ネタってないなぁと思って製作してみました。
~~~チラシの裏~~~
え?主人公の血は何で減らないかって?
それはゆあきんに訊けば分かるさ!
~~~ここまでチラシの裏~~~

>>204

───────────────────────────────────────────────────────────

>>204の後日談(というか続き?)

「早くベッドに入って来てよー」
「…まぢで添い寝ですか…」
「ほらほらぁー早くしないと咲夜に言いつけちゃうよぉ」
「・・・失礼します」

僕がベッドに入るとフランはいきなり抱きついてきた。

「フ、フラン!?」
「えへへ~、あったかい・・・」
「いや、あったかいといわれても・・・」
「一緒の布団で寝るんだからこれぐらいいいじゃない」
「よくないよ…うう…」
「むー、そういう事言う○○にはおしおきっ(かぷっ)」
「ってまた吸うの?」
「(噛み付いたまま)ん~?ひはうほ~」
「・・・物を言うときは口の中のものを無くしてから喋ろうな・・・」
「(放して)違うよ~、今はおなかいっぱいだもん」
「じゃあ、何をするのさ?」
「ん、こういうこと~(かぷっ)」
「…ん?牙を立ててないな・・・甘噛み?」
「~♪(ぺろぺろぴちゅぴちゅ)」
「ちょっ、舐めてっ、ひゃはっ!やめてくれっ!くすぐったい!」
「ん?はめはほ~♪」
「今のは・・・『ダメだよ』?っていや待て、あひゃっ!、ひゃははははは!、勘弁してー!」
「ぷはぁっ。えへへ、どう?おしおきされて懲りた?」
「懲りたよ・・・もう、好きにしてくれ・・・」

で、フランに抱きつかれたまま寝られて、結局○○はその日は一睡も出来なかった。



スマン・・・正直やりすぎた・・・

>>221

───────────────────────────────────────────────────────────

「むう…(ぷく~)」
「どうしたんだよフラン、ふくれっ面して」

「…人イナイ」
「は?」

「人イナイ人イナイ人イナアァァーーーイ!!!」(ドンガラガッシャン)
「う、うわっ、こらフラン! 人がいないからって暴れるな!
 ここが壊れたらそれこそどうすりゃいいんだよ!!」
「(ぴたっ)うぅぅーーーー!!!」

「…はあ。…大丈夫だよ、またすぐにぎやかになるさ。
 たまにはこんな日もある。…な?」
「うん…」

「(後ろから抱きついて)…○○ぅ…」
「ん?」
「(頭を○○の肩に乗せつつ)○○は…いなくなんないよね?
 私のこと…一人にしないよね?」
「……ばぁ~か」(頭をくしゃくしゃとなでて)
「あうっ…」(少し身をよじるがされるがまま)
「当たり前だろ? そんなの…」
「ん…」
「ずっと…一緒だよ。俺も…みんなも」(くしゃくしゃからなでなでに)
「うん…」(気持ちよさそうに目を閉じ)

そんな避難所の一日。

>>296
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