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フランドール2

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orz1414

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――――……お、おせんみこちゃー…。
あかん、長すぎ…。























幻想郷、その中のちょうど子の刻ごろ。


ここは紅魔館、そのはるか下にある部屋。


「つまり、属性魔法とは四大元素の力を借り、その力を放出する事にあります。これがどういうことか解りますか?」
「…う~ん。良く解んない」
そこで僕は吸血鬼『フランドール・スカーレット』様、通称『妹様』の家庭教師的なことをしている。
何でここで家庭教師なんてやってたりするかと言うと、まぁ色々と…。
面倒なのでそれはまた、別の機会にしておくことにするけど。
「そうですね…妹様、妖精は知ってますよね?」
「うん、見たことないけど」
「その妖精の力を借りるようなものです。例えば、水の妖精は水から力を貰い、自分の力としています。
 それと、妖精と似たようなものには精霊があり―――」
「それは前にやったから知ってる」
話が脱線しそうになったところで、妹様が呆れた顔で呆れて答える。
「そうでしたね。簡単に言わせてもらうと、メイリンさんの気がありますよね?それを、火に変えたり水に変えたりしたものです」
「…メイリンって、誰?」
「……」
…ごめんなさいメイリンさん、僕も漢字がわかりません。

~~~門前~~~
「ヘクションッ! う~寒い…。もしかして風邪でも引いちゃったかな?」
~~~門前~~~

「と、いうことなのです。解りましたか?」
「うん、解った。つまり、門番の名前は美鈴!」
―――ドサドサッ!
思わずこけそうになった。だが僕はこけなかったが、代わりに本の山が崩れた。
「ち、違います。僕が解って欲しいのは属性魔法についてでしてね」
「それも解ってる~」
「なら、良いんですけどね…。さて、次は…え~っと」
本当にわかってるのかと疑問に思いながらも、次に教える事について探す。
「今日はもう良いじゃん、いつもの三倍はやってるよ~」
そろそろとは思っていたが、予想通り妹様は駄々をこね始めた。
ちなみになにかにつけて三倍を付けるというのも僕が教えたこと。
……なぜかって? そりゃあもう、ねぇ?
「そうですね、じゃあ今日はここまで」
そう言って本を閉じる。この前無視(というか考え事)をしていたとき、四人に分身して耳元で叫ばれた記憶がある。
「わ~い。じゃあいつもの!」
「はいはい、今出しますから」
そう苦笑しながらケーキを取り出す。言い忘れたが、趣味がお菓子作りなので、ケーキは得意分野である。
……それについて、良くからかわれるが気にはしてない。…つもりですよ?
「早く、早く」
「そんなに急がなくてもケーキはなくなりませんって。…たぶん」
「なんでたぶんなの?」
「まぁ、前例がありますし…」
どこぞの魔法使いやら、神社の巫女やら、はたまた図書館の管理長まで様々な人からケーキ盗難の被害にあっており、
ここ最近はケーキを持ってなくても狙われている気がして………。
それはともかく、初めてケーキを持ってきたとき妹様はえらく喜んだことが記憶にあるので、それ以来、毎回ケーキを焼いて持ってきているというわけだ。
この時間は妹様にとって一番楽しい時間である。…らしい。



<そのころ、一人の黒い魔法使いが某神社に激突した。>



一通り用意が終わり、後は食べるだけとなった。
「はい、どうぞ食べてください」
「いただきまーす!」
僕が言った瞬間にもう食べ始めている。もちろんだが、マナーはしっかりと。
その横で僕は紅茶をのんびりと飲む。時折、ケーキを口に運びながら。……そういえばここに来てから和食食べてないな。
「あ、そうだ。少し聞きたいことがあるの」
「なんです?」
妹様から質問なんて珍しい。僕は紅茶を飲みながら次の言葉を待った。
妹様は小首を傾げて、
「なんで蛍すぐ死んでしまうん?」
『なんでほたるすぐしんでしまうん?』(エコー)
「妹様ぁ!? なぜそのお言葉をぉぉぉぉ!?もしやあの白兎か!?」
あの野郎、見つけて焼き兎にしてそこらへんの天狗にくれてやろうか……。
「違う違う、兎なんて来れないし」
「……そうでしたね…」
冷静に考えてみたらここにあの白兎が来れるわけは無かった。来たら死ぬ、絶対。
「…それで、なぜそのような事を?」
「この前、蛍と遊んで、それですぐ壊れちゃったから」
妹様は感情が天と地を行ったり来たりした僕の姿を気にも留めず、ケーキを食べながら話す。
にしても……悲惨な蛍だ。
「…妹様、恐らくそれとこれとでは話が違います。実際蛍は寿命は短いですが」
「ふーん、そうなんだ」
とりあえずは理解してくれたようだ。
たぶん、違う意味で。



<そのころ、神社に衝突した黒い魔法使いとその神社の巫女が言い争っていた。>



ケーキも食べ終わり、やっとこさ本の山を直したところで扉が開いた。
「○○、お嬢様が呼んでるわ」
「あ、はい。解りました」
出てきたのはメイド長、咲夜さん。妙に事務的なのは気のせいか。
「それじゃあ、妹様。また明日。あまり夜更かしはしないでくださいね」
「…うん」
僕はケーキの箱等を持って出て行く。
その時に見た妹様の顔がやけに淋しそうだった気がした。



<そのころ、ついに切れた巫女が黒い魔法使いをぶっ飛ばそうと、弾幕戦になった。>



「それにしても、あなたも良くやってるわね。妹様から生き残るだけでなく、さらにずっといるんだもの」
お嬢様のいる部屋に向かう道中、咲夜さんが突然聞いてきた。
「そうですか? 結構楽しんでやっていますけど」
「それがすごいのよ。弾幕すらも全っっ然に出来ない人間が、弾幕好きの妹様と一緒にいるなんてね」
「所詮僕は弾幕も全然出来ない人間ですよ・・・」
「でもまあ役には立ってるわよ、妹様の遊び相手。……どこまで生き延びるかしらね」
「目標は半月くらいですかね」
皮肉交じりに言ってきたので、こちらも負けじと冗談交じりに言った。
それっきり二人は黙って歩いていった。



<そのころ、黒い魔法使いが本気(マジ)になった。>



「遅かったわね、待ちくたびれたわ」
お嬢様の部屋に入ってきて最初に僕に投げかけられたのは、明らか様に不機嫌剥き出しのレミリアお嬢様の言葉だった。
ちなみに『遅かった』とは10分以上時間が掛かったことを指す。ついでだが、ここから妹様の部屋までは約20分。
「すいません、ちょっと色々ありまして」
「まぁいいわ、早く来なさい」
ここまではお約束といってよいほどの変わらない挨拶。
僕は妹様の家庭教師兼、お嬢様の飲み物兼、恐らく妖怪メイド用非常食となっている。
本人曰く、「なかなかの味だから」だそうだが、僕が舐めてみても鉄の味しかしなかった。
とりあえず僕は言われたとおりにお嬢様の近くの椅子に座って、向き合う。
「出来れば貧血を起こさない程度にしていただけると…。まだやることがあるので」
「多分ね」
ぶっきらぼうに言ったと同時に血を吸われ始めた。
多分気のせいだとは思われるが、咲夜さんが鬼神の顔つきでこちらを睨んでいるように見えた。
気のせいだ、絶対気のせいだ、咲夜さんから出ているどす黒い炎も絶対気のせいだ。
「もう良いわ、ご馳走様」
少しした後、お嬢様が首から顔を離した。吸われた部分をガーゼで押さえながら後ろを確認する。
「やっぱり、服に血がついてます?」
「ええ、それはもう」
と、咲夜さん。どのくらい、と言わないのが咲夜さんらしい(とはメイドから聞いた話)。
「うーん…。仕事は着替えてからにします」
苦笑しながらも、立ち上がろうとするが、気付いたらまた座っていた。
「着替えなくても良いじゃない、別に」
「そう言うわけにもいきませんよ。前に服に血がついたまま図書館へ行ったら小悪魔が気絶してしまって」
その上その責任として図書館の管理長、もといパチュリー様にケーキを要求された事については黙っておく。
「ふぅん、大変ね」
「まあ、これも仕事ですから」
その後雑談か雑談で無いかの境界線ギリギリでのんびり話していた。
「…さて、それではそろそろ仕事に戻らさせていただきます」
だいぶ頭に血が戻ったため、立ち上がって一礼する。
そして、歩いて出て行こうとしたとき、
「○○」
お嬢様の声で止められた。その声に振り返って答える。
「なんです?」
「…パチェから聞いたわ、なかなか美味しいらしいわね。今度、私にも頂戴」
まったく、あの引きこもりの病弱喘息持ち知識人は…。思わず苦笑して、答える。
「はい。解りました」
またひとつ、苦労が増えた。
気がした。



<そのころ、縁側で倒れる神社の巫女と黒い魔法使いががっちりと固い握手をした。>



「おまたせようこそ皆さん~。今から奇跡が始まる~♪っとぉ」
月から来た兎が受信した曲をうろ覚えながらも軽やかに歌い、僕は目的地、ヴワル魔法図書館の前で止まる。
作戦目的:妹様に教える本探し
・勝利条件:教える本の獲得、及び魔法図書館からの無事生還
・敗北条件:パチュリー様による無理難題、又は魔法図書館からの脱出不可能、又は…以下省略
などなど、挙げたら限が無いほどの敗北条件の数だが、この戦いでの僕の勝率はおよそ八割五分と意外と好成績。
今回も勝利を挙げて、さらに勝率を上げようと意気込んで……っと、本来の目的を忘れるところだった。
そう考えながらも図書館の中に入っていく。



<そのころ、お茶を飲んでいた黒い魔法使いがある提案を出した>



「え~っと、今まで探してきた本棚は…」
もちろん小声呟きながらで進んでいく。
「あったあった…。え~っと、これとこれはもうやったから…」
本のタイトルを見ながら新しく教える本を探す。

――コツ、コツ、コツ、コツ

「!」
拙い、誰かこちらに向かっている。規則正しい足音から見ると小悪魔だろうとは推測できるが、
たとえ小悪魔だろうと見つかってはいけないのがここの掟。
…いや、自分で作ったんですけどね?
それはともかく、ここは物陰が皆無に等しいため、ほぼ必ず見つかってしまうのである。
こんな状況じゃ………し、死ぬ…。
(スネーク、ダンボールを使うんだ)
ダンボール!?っていうかあんた誰!?
(敵の背後に立って□ボタンを押すと首を絞められる。そのまま連打すると倒す事も出来るぞ)
首絞めるの!?っていうか□ボタンってなに!?
(来るかぁ? スネーク!!)
人変わった!?そもそもスネークって誰よ!
「なにしてるんですか?」
その声でやっと我に返った。が、目の前には小悪魔。
覚悟を、決めるか…?

「え? い、いや妹様の勉強のための本を…」
「あ、そうだったんですか。それでここに」
素直に喋りましたー、ははは。
さすがは小悪魔、とりあえず理解はしてくれたようだ。
「それでは~」
そう言って去っていく小悪魔の手には……ティーセット&お菓子。
……拙い。小悪魔のことだろう、しっかりきっかり僕のことをパチュリー様に伝えるだろう。
そうなっては一巻の終わりである。僕は急いで目にとまった本『魔力の調節…(以下良く読めない』を持って急いで出口に辿り着きドアを――
「あ、あれ? 開かない!?」
ドアが押しても引いても叩いても全然開かないのである。
「勝手に持って行っちゃダメじゃない」
後ろから声がと思って振り向けば、そこには…パチュリー様。
「へ? 持っていって良いのでは…?」
そうなのである、妹様の勉強のためとして本の無断貸出を特別に許可してもらった…はずなのだ。
しかし、この引きこもりの病弱喘息持ちの(以下略)はしっかり対策を用意していた。
「えーっと、……この本によれば今日は『持ってかないday』だったわね?」
「あ……」

――説明しよう! 持ってかないdayとは、流石に無断貸出を毎日というわけにはいかず、
仕方なく一週間に一日断ってから持っていくというなんともはたm(グシャギャア)………とても良いものなのよ?
ちなみに、この持ってかないdayの時に無断貸出(未遂も含む)をした場合は一つ私のいうことを聞く事になってるわ――
(一部、お見苦しい解説がありましたことをお詫びします)

そういえば…今日は持ってかないdayだった……。
「無断貸出…未遂ね。これは」
ああ、無理か。現状況で言い訳なんか通用しないって奥さん。
「さて、何をしてもらおうかしら…」
嗚呼恐い。多分閻魔の裁判より恐いって、これ。何? あのとっても嬉しそうな顔…。
と、思いついたのかこちらの前に掌を見せて。
「ケーキ」
ああ、ケーキですか。前回は小悪魔事件だったけど今回は持ってかないdayによるケーキ要求ですか。
「…しかし、そんなに食べ過ぎるとf」
『日符―――』
「ごめんなさい、何も言ってません」
あー、また苦労が増えた。
今回は絶対。



<そのころ、黒い魔法使いと紅白の巫女が提案の計画を決定した>



ここは、紅魔館の大きな食堂&厨房。
行く途中に紅魔館唯一の窓を見てみると、もうすでに日が昇り始めていた。
しかしメイド達の朝は早いため、もうすでに厨房は戦場となっていた。
そこの窓際(窓が無いため多分ではあるが)に座りゆったり紅茶を啜る僕。
なぜか習慣になっていたため、メイド達から窓際お菓子職人とか呼ばれる始末。
「あー、…拙い」
「え? 不味いですか?」
「い、いや紅茶の事じゃ無くてね…」
その答えに安心したのか、僕に紅茶を持ってきてくれたメイドは少し喜んだように見えた。
「何で皆ケーキがそんなに好きなのかな…」
そう言って紅茶を啜る。
「日替わり定職持ってきましたー」
「ああ、どうも」
まだ湯気が立っている朝食(洋食)を口の中にいれる。
「………拙い」
「え? 不味いですか?」
「いや、パンの事じゃ無くてね…」
その答えに安心したのか、僕に朝食を持ってきてくれたメイドは少し喜んだように見えた。
パンを口の中に入れて、紅茶を啜る。
「……寝れないじゃん」
これは二人(もとい魔女と吸血鬼)の意図的犯罪だろうか?



<そのころ、黒い魔法使いと紅白の巫女は朝食(こっちは和食)を食べていた>



朝食の時間も終わり、食堂の窓際(窓が無いため多分)のところで今日の計画について考えていた。
「えーっと、朝から昼にかけてで二人分か一人分。それで昼から夜にかけてもう一人分…だと足りるんだがなぁ」
言い忘れたが、厨房が開いてる時間は大体巳の刻から巳の4刻あたりまで。
それと昼を挟んで午の刻から鳥の2刻あたりまでである。その後は色々とあるため厨房に入る時間すら無くなってしまうので無し。
作るのは三人分、この調子だとできる事には出来るのだが。
「絶対に何かが邪魔をする…」
邪魔が入ったらもう終わりともいって良いくらいである。そうなったら、お嬢様か妹様かあの引きこもりで病弱で喘息(以下略)に何かされるな…。
お嬢様は、…え~っと、死活問題。妹様は死活問題。あの引きこもりで病弱(以下略)は、……死活問題。
「絶対に失敗できない…」
あー、まだ死にたくない~。
「死にたくなかったらやるしかないんだよなあ…」
そう呟きながらも厨房へと向かう。



<そのころ、門番が二人の人間に倒された。>




「あー、眠くなってきたな…」
眠い頭をなんとか起こしながらもスポンジを違う場所に置く。

―――ドガァァァン

「あーあ、やられたなメイリンさん。と、言う事は…」
また最悪のタイミングで来たな…。おもわずため息が出る。
「お邪魔するぜー」
「来たか、黒くて早く動くの」
「その言い方は誤解されるぜ」
「厨房に黒いのは天敵……」
近くにあった文々。新聞を取り出す。
「おいおい、いつの間にそんなものを用意したんだ?」
「………ハァ」
なんか面倒になって来たので新聞紙を机に置く。
「お? どうした?」
「悪いけど、黒くて素早くカサカサ動いて一匹いたら百匹いると思われる奴にかまってる時間が無いんだ」
「なんか色々足されてるな」
「ん、そりゃ当然」
訳の解らなさそうな会話をしながらも手は休まずに動かす。
「で、なんで時間が無いんだ?」
「……死活問題だから」
「…死活問題?」
「今日中に三個分作らないと三人のうち誰かに殺される」
「おー、そりゃ大変だな。だが私には関係無い…うぉっ!」
近くのクリームに手を出した黒い奴に手裏剣の形にした新聞紙を投げつける。
「そこらへんはちゃんと守るんだな」
「当たり前だっての。それに、僕が死んだらそのつまみ食いしたいケーキが食べられなくなるぞ?」
「あー、それは勘弁して欲しいな」
「解ったならさっさとどっか行ってくれ。そんなに食べたきゃ作ってやるから」
「……言ったな?」
「だが今日は無理だ」
「よーし了解した、今日は帰るぜ。それじゃあな」
どうせ図書館行くんだろうに、そう思いながらも手は休めなかった。



<そのころ、紅白の巫女は黒い魔法使いと別れてとある店に向かっていた>



「あー、やっぱり居たか。黒いの」
ケーキを持って図書館へ行ってみたら、案の定黒いのが居た。ついでにパチュリー様。
「お邪魔してるぜ」
「ここは僕の家じゃない」
「私の家よ」
「図書室です」
そこまで話して、黒いのの目線がケーキに注がれた。
「お? ケーキじゃないか」
「私のよ、それ」
「でも食べる気だろ。魔理沙」
なんて言いながらもケーキを机に置く。すでに紅茶は小悪魔が持ってきていた。
「当たり前だぜ」
「当たり前なのか?」
「持ってかないでー」
「持っていくぜ」
「どこに?」
適当に言いながらもケーキを切り分ける。
「魔理沙の家でしょ?」
「すぐ腐るな、それじゃあ」
言いつつ皿に乗っける。
「おいおい、人の家を何だと思ってるんだ?」
「物置」
「っていうか本返しなさいよ」
「そりゃないぜ」
そして皿を二人に渡す。
「さて、まだやることがあるので…」
そう言ってそそくさとドアを開けて―

―――バン!!  ゴスッ

「痛っ~~~~~~~…」
「あ、ケーキだ~!」
この声、つまり妹様。その余りありまくる力によって開かれたドアにより頭部激突。
さらにそのまま横に吹き飛ばされ本だなにまた頭をぶつける。
「ん、そうだぜ。私のケーキだ」
「私のよ」
「食べていい?」
「勿論です」
「じゃあ私も食べていいな」
「ダメ」
「それより、さっきドアを開いたとき変な音がしなかった?」
そ、それは僕の頭蓋骨が攻撃された音です…。
「あー、それはあいつのことだろ?」
そう言って黒いのがいまだに頭を押さえている僕を指差した(と思われる)。
「へ? あー、○○だ!」
そう言ったあとに、首にもの凄~い衝撃が走った。まあ、首に抱きついたのだろうと思われる。
やけに冷たいのは妹様、もとい吸血鬼だからだと。
「○○、懐かれてるわね」
「ああ、羨ましいぜ」
「…妹様」
「なに?」
「魔理沙もして欲しいそうですよ?」
「え~? この技は○○にしかやらないもん」
…チッ。というか技ですか、妹様。
「それはともかく、放してくれないと動けないんですが」
「駄目」
「いやしかし、そうすると動k「駄目」
「…わk「駄目」
何を言っても駄目そうなので、仕方なく妹様を背負って机付近まで歩く。
「それじゃあ妹様、仕事があるので…」
「ヤダ」
完璧膨れっ面で拒否してくる妹様。
「っていうか今の時間は使えないわよ?」
なんで知ってんだこいつは。やはり意図的犯罪と見えるよ父さん。
(□ボタンで…)帰れ。貴様は父さんでもなんでもない。
(海に沈めてやる!!)
「それ以外でも仕事はあるんです。暇じゃないので…」(無視)
「ヤダ」
「まあ、少しはサボっても良いんじゃないのか?」
「絶対に、咲夜さんに殺されます」
「咲夜には私から言っておくわ。それに、妹様の面倒を見るっていう仕事がすぐ近くにあるじゃない」
いや、僕は家庭教師だよ。
「そうそう!私の言う事が聞けないの!?」
「いえ、そういうわけでは…」
「ええい!このレーヴァテインが目に入らぬかぁ!!」
とか言いながらレーヴァテインを目の前まで持ってくる妹様。あとちょっとで刺さります。
「…解りました。でも、あと少ししたら仕事に戻りますよ?」
「なんで?」
「お嬢様のケーキを作らなければいけませんので…それと妹様のも」
「う~ん…、わかった」
「…私もケーキぐらい作れたほうが良いのか?」
「……さあ?」
「とりあえず、あとちょっとで目に刺さるレーヴァテインなんとかしてください」
ちなみに妹様はまだ抱きついたまま。



<そのころ、紅魔館の門番がひもじい思いをしながらコッペパンを食べていた>



図書館から逃れて、やっとお嬢様のができたころ。
「どう、調子は?」
「あ、咲夜さん。…丁度良かった」
厨房でなぜか咲夜さんが出来あがったケーキ眺めていた。
っていうかこの人本当に忙しいのか?
「なに?」
「お嬢様のケーキって…血、入れるんですよね?」
「それは勿論」
「じゃあ誰のを…?」
「決まってるじゃない」
「………僕?」
「モチのロン」
どっから仕入れてきたんだその古いギャグは…。
それはともかく、また僕ですか…。
「大丈夫よ、大体2リットル前後だから」
「死にます! 僕死んでしまいますって!」
「冗談よ、大体コップ一杯…より少ないわね」
この人の冗談は、絶っ対に冗談に聞こえない…。
「さて、ではさっそく」
「え?今ですか?」
「ええ。あ、大丈夫よ。早く終わるように手首をズバッと切るだけだから」
「やっぱり殺す気ですね咲夜さん! なんですかその自信ありげな顔!」
「大丈夫、死んだらそこらの妖怪の餌にするから」
「一番酷い処理のしかたじゃないですか!!」
「食物連鎖は大切よ?」
「単に処理が面倒なだけでしょ!」
「冗談よ。面白いからからかっただけ」
「ほ、本当ですね…」
お、鬼だ…。この人実際にやったとしか言いようがナイヨ!
「まあ冗談はさておき。さっさと取ったほうがあなたも楽でしょ?」
「そうですけど…」
「じゃあ腕出して」
最近、人間不信気味です。人間少ないけど。



<そのころ、黒い魔法使いがケーキ作りに奮闘していた>



――――翌日

「あー、三時間だけでも寝れたからいいや、もう」
あのあと血が出過ぎて貧血起こしそうになるわ、妹様の時には眠気が酷いわで大変だった。
今でも生きてるのが凄いなあと、思う。
いつも通り食堂では窓際(窓が無いの)で普通に紅茶を飲みながらのんびりしていた。
…しかし、最近はかなりハードワークだな…。
まあ、咲夜さんの方が頑張ってるはずなんだけどね。
「日替わり定職もってきましたー」
「ああ、どーも」
なんか最近やけに仕事が増えた気がしないでもない…。
あー、ケーキが出てきたからか…。なんて思いながらも食べ物(やっぱり洋食)を口に運ぶ。
そうだな、簡単に訳すと…
「………辛いな」
「え、辛かったですか?おかしいですねぇ…」
「ん?ああ、読み方が違う」
前にもこんな展開があったな…。



<そのころ、知識人はケーキに関する本を読み漁っていた>



「えーっと、妹様のケーキは作ったし…やることが、無い?」
最近になってひまになるなんて初めてだ。
さて、何をしようか?外には…死ぬだけだし、かといって中…でもいいか。
「あら、暇なのね?」
その声は、咲夜さん。…嫌な予感が。
「…まあ」
「なら良かったわ。まあ、暇じゃなくても関係無いか」
「? なんですか?」
「今にわかるわ」
「どうい」
うことですか。と言おうとしたのだが、突如地面が抜けて下に落ちた。
ええええぇえぇぇぇー!?落とし穴!?
(雷電、良いものを手に入れたぞ)
雷電って誰!?っていうか今の状況と関係無いし!
(敵のハリアーだ)
無視して進行したよ!!

―――ドサッ

「イタタタタ……」
痛む尻を押さえて辺りを見渡すと、人間? いやいや妖怪が一人。九尾の狐が一人、二尾の猫が一人。
二つの謎のものがフヨフヨ浮いている人間…? 謎のものが一つで結構大きいのがフヨフヨ浮いている剣士らしき人間・・?
いつの間に僕はこんな異世界に移ったんだろう…?
「あの~、どちらさんですか…?」
「それはともかく」
「ともかくではありませんよ幽々子様。この人明らか様に混乱してるじゃないですか」
「紫様も事情を話してから連れてくれば良かったんですよ」
「あら、あのメイドに話したつもりだったけど?」
あのメイドとは咲夜さんのことだろう、たぶん。
「とりあえず、事情を…」
「私は面倒だから。藍~、してあげて」

――――ドスッ!「うぐっ」

「さて、話は長くなるが…」
ああ、日常茶飯事なんだな、これ。



<そのころ、メイド長はしてやったりと思っていた>



「…はぁ、となると皆さんはケーキが食べたくて呼び寄せたと?」
大体の事情を聞き、自己紹介も終わったところで状況整理のために聞いた。
「そー」
「紫がうるさくって…」
「幽々子様もうるさかったですよ?」
「わーい、ケーキだ~」
「でも、僕じゃなくても良いのでは…?」
「霊夢から聞いたのよ~。紅魔館で食べたあなたのケーキは美味しいって」
「ついでに私も呼ばれたわけ」
「なぜか私も呼ばれました…」
「そういうこと!」
「すまんな、忙しいだろうに」
「いえ、丁度暇な頃だったので。…でもケーキ作りのために必要な機材等は……?」
それを聞きながら日本茶を啜る。ああ、洋食以外のものを口にしたのは久しぶりだ。
「そこらへんに関しては大丈夫だ」
「なら、大丈夫ですね」
そう言って立ちあがる。
「えっと、台所は…?」
「ああ、こっちだ。案内する」
そのまま藍さんの後ろについて行って歩いていく。
その途中、
「本当なら私が作るのだが…、洋菓子はさっぱりでな。妖夢も無理らしい」
「いえ、心配せずに。……にしても」
「ん?」
「…何で、皆ケーキが好きなんでしょう?」
この言葉に少し藍さんは悩んで答えた。
「ふむ…。良くは解らないが。まあ、美味しい物は皆好きになるだろう?」
そのあと、「私もな」と付け加えた。
「そういう、ものなんでしょうかね」
そんなことを話していたら目的地に到着した。
「ここだ、じゃあよろしく頼む」
「あ、…全員一人前ですよね?」
「………時間が無いなら一人前で良い、…と思うぞ」
……大食い野郎がいるようですぜ、兄貴。
(雷電いいm)帰れ。



<そのころ、黒い魔法使いはケーキを焦がしてしまった>



「できました。あ、すみません運ぶの手伝っていただける方…」
「それなら私が手伝おう」
「あ、私も手伝います」
こうして従者三人で台所に向かった。
「良く食べる人が居るらしいので、ちょっと多めに作りました」
「……それでも足りないと思います」
「まあ、あの人だからな」
「?」
そう良いながらも台所につくと。
「えっと、一、二、三、四、五、六個。…ですね」
「丁度だ、一人二個で」
「あまり傾けると落ちますから、気をつけてください」
それを持って居間? にもどる。
「お待たせしました~。ケーキです」
「わ~い!」
「これがケーキ、ねえ?」
「美味しそうね」
待っていた組がそれぞれ感想を漏らす。
全員の机に並び終えた後。
「このケーキ、欲しい人~?」
「は~い!」「はい」
一人は、わかる。うん、育ち盛りだろう。
もう一人は…えー、幽々子さん!?
「じゃ、じゃあ二等分しますね」
喧嘩を防ぐために(もし起こったら大人気無いとは思うが念のため)二等分で回避。
「それじゃあ、食べて良いですよ」
「「「「「いただきます」」」」」
「ふむ、これは美味しいな」
「確かに、霊夢の言葉は嘘じゃなかったわね」
「すごく美味しいです…」
「美味しい~!」
「ほらほら橙、口にクリームが…」
「おかわり」
「おかわりなんてありませんよ幽々子様」
「…………」
なるほど、確かに藍さんの言葉に嘘偽り無し。
「…今度私も洋菓子も作ってみるか………」
「あ、レシピ教えます?」
「本当か? なら、よろしく頼むが…」
「出来れば…私も、幽々子様が大満足しているので…」
「いいですよ。じゃあ、今度取りに来てください。門番の人には僕の名前を言って用件を言えば大丈夫ですし」
「すみません、○○さん」
「手ぶらじゃなんだ、何かついでに持ってこよう」
「そんな気を使わなくても大丈夫ですよ」
「ねえ、あれもう無いの?」
「……さっき追加してあげた気がするんですけど…」
「幽々子様にその言葉は無意味です…」
そんな話しに花を咲かせながらケーキを口にする。

外を見たらもう日が沈み始めていた。
「さて…、そろそろ御暇させて頂きます。仕事がありますし」
「あら、そう…」
「どうも、ありがとうございました」
「紫様、帰りはどうします?」
「ん~?歩いて帰れば~?」

――――ズガンッ!!

藍さんの蹴りが紫さんの右わき腹をジャストミート!そのまま遠くに吹っ飛んだー!
「すまんな、帰りは私が送ろう」
そういえば、弾幕ができない事を伝えてなかったと今気付く。
「よろしくおねがいします」
…………絶対主従関係逆だって。



<そのころ、吹っ飛んだスキマ妖怪は青白いオーラを漂わせていた>



「えーっと、…今日はここまでにしておきましょう」
さすがに、今日は色々とあったため疲れてしまった…。
「はーい!」
「それじゃ、いつものを…」
そう言って箱を取り出そうとして、妹様に止められた。
「あ、あのね。…ケーキ、焼いてみたんだけど」
「ケーキ、ですか」
あの妹様が…ねえ。そう思ったが絶対に口にはださない。
「それで、食べ…よ?」
「いいですよ?それじゃあ、紅茶用意しますね」
まあどんな味かは食べてからのお楽しみだな…。

見た感じはいたって普通…だが、味が問題である。
「んじゃ、食べますね」
「うん」
と、口の中にいれてみる。
「…美味しいです」
「ほんと!?」
ケーキの味は美味しい、見た目も普通。言う事はないが…。
「あ~、凄いですねぇ。妹様」
「うん」
あまり喜ばない妹様が変である



<そのころ、スk「藍~~~?覚悟は良いかしら?」「す、すみませんあれは反射的に…ギャーーー!!」>



全部食べ終わって、一息ついた頃。
「さて、ちょっと厨房を見てみましょうか?」
そう言って歩き出す僕。
「あっ!ダメ!!」
それを腕をつかんで阻止する妹様。
良くあるシーンだが、実は行く側より引く側のほうが力が強いため、感動的には全然見えないのである。
さらに、身長差もあることでよりいっそう感動的な場面じゃなくなっている。一種のコメディ?
「気になっただけですから、見るだけです!」
「それがダメなの!」
「なぜですか?」
「え~っと…」
理由を聞かれたためか一気に失速する妹様。
「理由が無いなら、ダメですね~」
「む~…」
膨れっ面になっても一向に引く力は弱めない妹様。そろそろ腕がちぎれるくらいの強さですよ。
「正直に言ってください。そうすれば怒りませんから」
「…本当?」
「ええ、本当です」
「………………」
やっと力を抜いてくれた…。腕が痛いよ…。
「じゃあ、行きましょうか」
「…うん」
どういう状況になっているんだか…。



<そのころ、黒い魔法使いは黒焦げになっていた>



「う、うわぁ……凄いですね、別の意味で」
もう辺り一面天井や壁まで所狭しと様々なものが散乱していて、さらに焦げ色までついているおまけつき。
はっきり言って戦場より酷い状況である。
その中で、灰になった物体があった。
「これ…が本当に焼いた妹様の、ですね?」
「…うん。なかなか焼けなくて、それでレーヴァテインでやってみたの」
おいおい…、まあ、それは灰になってしかたが無い、…か。
「妹様。もしかして、一人で全部作ろうとしましたか?」
「うん」
「妹様、ケーキはそう簡単に出来るものではありません。一日二日じゃまともなのさえ出来ないのです。
 昔、僕だってそうでした」
そこで一旦話しを区切る。
そして俯いている妹様の頭をなでながら、
「最初は一人ではなく誰か経験者とやるべきです。そして、後に一人で出来るようになっていくのです。
 妹様はちょっと焦りすぎましたね。さて、次教える事ですが…」
「……なんでそんな話になるの?」
「まあ話しは最後まで聞いてください。次の日から、ケーキを焼きましょう」
「え?」
「妹様は上手にケーキを焼きたいのでしょう?だったら実戦あるのみです。
 大丈夫、僕も一緒にやりますから」
「…うん!」
やれやれ、やっと元気になったな。
「さてと…とりあえずはですね妹様」
「何?」
「ここ、片付けましょう」
まだこれからが始まり。



<そのころ、知識人が本の山に埋もれた>



―――翌日

「あー、疲れた…。最近朝起きたら疲れたしか言ってない気がする…」
あのあと、掃除を咲夜さん達にも手伝ってもらい、なんとか日の出までには終わった。
いつも通り窓際(窓無い)でゆったりと紅茶を飲む。
そういえば、レシピ用意しておかないと…。
「日替わり定食もってきましたー」
「ん、ども」
やっぱりいつも通りの日替わり定食(やはり洋食)を厨房からのざわつきを少々聞きながら食べる。
なんだろう?なにかやってないところが…
「あ……



~~~~一旦CMで~す!~~~~

○○「さーて、この次に出てくる言葉を
   予想して当ててみよう!」
妹様「ヒントは、前夜の掃除で
   なにかやってないところ!」
咲夜「前に同じタイプのが出ているわ。
   問題は、何かだけど」
妹様「さあ、なにか解るかな~!?」




○○「……なんだろ、これ」
妹様「さあ…?」


~~~~CM終わりま~す~~~~



なんだろう?なにかやってないところが…

「あ………………
      ……天井」
「え、甘かったですか?おかしいですねえ…」
「い、いや字が違うから…」
「?」

答えは、天井(あまい)でした。



<そのとき、永遠亭の皆さんが口をそろえて『解るか!!!』と言った>



「○○さん、なんか変な二人組が来てますけど…」
「あ、はい。今行きます」
自分で書きとめたレシピを持って門前へと走る。

「すみません、遅れました」
「いや、別に良いさ」
やっぱりと思ったが変な二人組み、もとい藍さんと妖夢さんが居た。
「はい、これがレシピです」
そう言って持っていたレシピ(二冊)を二人に渡す。
「ふむ…思ったよりも簡単そうだな」
「これなら、なんとか…」
「それは基本の基本ですから、そこから発展させていくんです。自分流に」
「そうか…いや、すまんな。手土産といってはなんだが…これをやろう」
「これは、ペンダント…に写真入れですか?」
貰ったものはペンダントの先に写真入れがあるものだった。
「一応マヨヒガの物だからな幸せになるらしい」
「ありがとうございます」
「私からも、…リボンですけど」
おずおずと妖夢さんが出したものは、リボンである。
「あ、これ使えそうですね。ありがたく貰っておきます」
「それでは、また」
「それでは」
「では」
変わった手土産を貰って館の中へと帰っていく。



<そのころ、知識人がいいもの(敵のハリアーではない)を見つけた>



「パチュリー様からの呼び出し、ってなんでしょうね妹様?」
「知らない」
何故か僕と妹様はあの引きこもり(以下略)に呼び出されたのである。
何か悪い事でもしたのだろうか?
「入って」
奥からあのh(以下略)の声がする。
二人とも小首を傾げながらも奥へと進む。

「二人とも、カード占いって知ってるわよね」
「ええ」
「うん」
「そう、ならいいわ」
カード占いをするために二人を?
……でも、自分でやりゃいいのに。
「言い忘れたけど、このカードには魔力が入ってるから、結構当たるわよ」
なんですかその、細木○子先生のような言い方は。
「やり方は簡単、一枚捲るだけ。本人の手でね」
だから呼んだのか…。
「んじゃ、この中から適当で言いから一枚捲って」
そういって広がった8枚のカード。
「これ!」
「それじゃ、これ…」
「二人とも同時にひっくり返して」
「「せーの」」
とひっくり返してみたものは、僕がスペードのJ、妹様がなぜか途中まで破けたハートのQ。
「……………」
「なんだろう?これ。破けてる…」
「なんでしょうね?」
「………解らないわ、私にも」
まったくもってチンプンカンプンである。
「まあ、とりあえずいいわ。こっちで考えておくから」
「はぁ、そうですか」
「それじゃ、行こ!」
「うわちょっと、引っ張らないでください!」

――――ガチャ!

「……………まさか」
まさか、この図書館に落とし穴があったなんて…。
「パ、パパパパチュリー様!なんですかこれ!」
「落とし穴」
「そんな事解ってますよ!」
「まったく……」



<そのころ、九尾の狐は奴の言っていた事が本当だと知った>



厨房
「では、ケーキ作りをはじめたいと思います」
「はーい!」
さて昨日約束していたケーキ作りになった。
問題は妹様が変な行動をしないことである。
これから、苦難のケーキ作りが始まる。

「じゃあ、この秤がここまでいったら持ってきてください」
「うん!」
大丈夫かなあ、と思いつつも気にしないように心がける。
「うわ、っとととと」
まあ、大丈夫か。
(スネーク!スネェェェェェ)うるさい。
「うわっ!」

――――ドパァッ

「あ~…」
妹様が転んでボウルの中のものをこぼしてしまった。
「大丈夫ですか?妹様」
「あ、でもあれが…」
「それはものがあればいつでも出来ます。ですが、妹様は一人だけですから」
「…うん!」



「素早くかき混ぜるんですよ」
「うん解った!うりゃーーーー!」
「か、かき混ぜすぎです!」


「まだ~?」
「まだです、じっくり待つ必要があるんですよ」
「あ~もう、ならばレーヴァテインで!」
「それはダメです!絶っっ対!!」


「あ、このクリーム美味しい!」
「美味しいのはわかりますが、そのまま食べないでください」
「全部食べちゃった…」
「早っ!!」


「ふぅ、やっと出来ましたね」
「やった~!」
「さてと、『片付けてから』!!食べますよ?」
「え~。……わかった」



―――そして

「どうでした?初めてのケーキ作りは」
「う~ん、…難しい」
「最初は誰だってそうですよ。今から上達させればいいんです」
「うん」
なにかと上達した部分はあったかな?
「さて、帰りましょうか」
出口に向かって歩く。と、
「ウハァッ!い、妹様?」
突然後ろから追い抜かれ、そのまま腕を掴まれ紅魔館出入り口へ。
そしてそのままドアを突き破り一気に上へ。
減速したと思ったら、何時の間にか紅魔館の屋上に立っていた。
「…妹様?なぜここに」
「……○○と一緒に空を見たかったから」
気のせいか顔が赤いように見える。
ふと、面白い事が頭に浮かんだので実行に移す。
「妹様…、少し目を瞑っていてくれますか?」
「ん? こう?」
そういって目を瞑る妹様に手を伸ばして…。

「はい、いいですよ」
「なにしたの?」
「それはですね。…ちょっと、ね」
「え~、教えてよ」
可笑しくなったので、少し笑った後答える。
「髪の毛にリボンをつけただけですよ」
「リボン?」
「そうです。青色の、リボンです」
「…ねえ、○○」
「なんですか?」
「ずっと、ずっと一緒だよ?」
……その言葉に僕は少し言葉を考える。
「…もちろんです、ずっと一緒ですよ。その青いリボンに誓います」
「やった!」
思いっきり赤い顔に喜びの表情を入れてこちらに抱き着いてくる妹様。
「うわっと。い、妹様。お、落ちます!」
「むー」
何が悪かったのか、妹様がいきなり膨れっ面になった。
「その妹様っていうの、なんか嫌」
なんか嫌と言われてもねえ…。
「じゃあ…フラン様で、すか?」
「うん!」
これからいm、じゃないフラン様の傍に居る事が幸福なんだろう。
なんだかその無邪気な笑顔を見ていると吸血鬼には見えない。
たぶん、それが僕をそう思わせていると思う。


「…ねえ」
「なんですか?お嬢様」
「私の出番、全然無かったわね」
「まあ、仕方ないのでは?」
「なんでよ~!」

End?


~~~あとがき~~~
はい、どうも。あけましておめでとございます。
こんかいはゆったりまったりしたペースで書いてきました。

…裏のは想像力豊かな人ではないと、きついかも…しれません。



<まだまだ、ここがやっと折り返し地点>
 注意事項
  ・シリアスです。たぶん。
  ・全然甘くないと思います。やっぱりシリアス?
 *とっても重要。
  ・フランがフランじゃないかもしれません。
  ・自分が書きたいから書かせていただきました。それがイチャスレじゃないかなぁと思う。
  ・これが無くても、前回のでもお話になります。


それでも見たいなら、どうぞ!!!







―――――やめときな、気がふれるぜ?










あれから30年。
今も平穏な幻想郷の中の紅魔館である。
巫女や魔法使い、そしてメイドは独自の方法で30年前と姿変わらず生き続けている。
一人だけ、ひょんな事から紅魔館に仲間入りした男を除いて。



「あー、あれは向こうです」
「どうも」
彼は普通のメイド達とは違い、変わった役職を持っている。
「○○~」
彼女、吸血鬼『フランドール・スカーレット』の家庭教師に遠く近くない役職。
「なんですか?」
「またケーキ焼いてみたの。自分だけじゃ解らないから味見して!」
「はいはい、解りましたよ」
趣味はお菓子作りであり、そのケーキはもはや幻想郷で知らぬものは少ないと言われるくらい有名である。
「これ!」
だが、もともと辺鄙な場所にあるためになかなか食べられないとでも有名である。
「今回はチョコですか」
それよりも自分からケーキはあまり作れる機会が無くなってきたのである。
「ふむ」
第一に、忙しさが増した事。
「どう?美味しい?」
第二に、ほかにケーキを作る人が増えた事。
「不味いわけはありませんよ」
第三に、
「それじゃあ美味しくないみたい…」
「いやいや、美味しいですよ」
年老いすぎた事。
「う~ん、それじゃあわからない…」
まだまだ生きられるものの、幻想郷から見たらあきらかに非力である。
「そうですね、あともうちょっとかき混ぜたほうがいいでしょうか」
それでも彼は生きる。
「そう?」
「あとは力をもう少し抜く事。フラン様は力が有り余ってますから」
「あー、それ酷い!」
「これでも誉めているつもりですが?」
彼女との約束を守るため。



―――――私の出番はまだ…?



紅魔館 フランドールの部屋

そこでフランドールは一人トランプで遊んでいた。
○○が居ないためやることが無いのだ。
「タ、タワー……もう少し」
昔教えてもらった遊び、後少しで完成のところ。
「あ、と一組…。あっ」
後少しのところで崩れてしまった。
「あ~。…よし、もう一回!」
そう意気込んで床に落ちたカードを拾おうとして。
「ジャックが全部一まとめになってる、凄い…」
と、拾おうとして机にあったナイフを落としてしまった。
「!」

――ストッ

素早くてを引っ込めたため、手には当たらなかったが、その代わりに、
「刺さっちゃった…」
四枚のジャックにナイフが突き刺さった。
「…まあ、いっか」
さてもう一度とやろうとしたとき、

――バン!!

「フ、フランドール様!!」
「なに?急に!?」

これは、突然平和な幻想郷に起こった悲劇的な、運命的な物語。

「○、○さんがお倒れになりました!!」



―――――だから、私の出番は…?



――ドガァンッ!!
「○○!?」
フランドールが本気で開けたドアが半壊すると同時に、フランドールが部屋に入ってきた。
部屋の中にはレミリア、咲夜、美鈴、パチュリーと医師永琳がいた。
「静かにして、今診察中よ」
即座に永琳に窘められ、黙って近くの椅子に座る。
「それで、突然倒れたのね?」
「は、はい。突然、前触れも無しに…」
「……フランドールとメイド達は少し席を外して…」
「な、なんで!?」
「…いいから」
何かしら納得がいかない表情をするが、素直に外に出る。



――――やっと出番が…何も喋ってないけど。



――ガチャ

壊れていない半分のドアを空け、レミリア、咲夜(以下略)が出てきた。
その顔は相変わらず普通のままである。
「お姉様! ○○は、大丈夫なの?」
「…大丈夫よ」
「そう…」
答えを聞いて安堵の声を出すフランドール。
「それでは、また来ます」
「ええ」
そう言って永琳は去っていった。
「…フラン」
「……なに?」
「○○とは、しばらく面会禁止よ」
「どうして!?」
「…そう言われたからよ」
「……………そう」
何かが、納得いかなかった。



――――っていうかなんで門番がいるのよ。



―数週間後

「…まだ、治らないのかしら」
(普段見てきた○○なら、少しすればすぐ元気になったはずなのに…)
「気分転換に散歩でもしよ…」
そう言って立ちあがり館内を散歩する。
と、○○の部屋の中から声がした。
「このままだと、持たないわ」
(これは…永琳の声)
「…そう、なるわね」
(お姉様!?)
「しかたが、ないのかしら」
(これは、パチュリー)
そこから先はまったくフランドールには聞こえなかった。
(しかたがない?持たない?)
三人の声が頭の中でグルグルと回って交差する。
戻りながらも考えていた。
(そうなる…?)
ふと、曲がり角の先から聞こえてきた声が耳に入った。
「○○さん…大丈夫かしら…?」
「大丈夫…でしょ?」
「でも、あのお嬢様とパチュリー様が何もしないのよ?なにかが変だと思わない?」
また頭の中のグルグルが一つ増えた。



――――咲夜に出番ないわね…。



―数日後

あれから数日、フランドールは部屋からも出ずに考えていた。
(…持たない、そうなる、仕方が無い…、お姉様とパチュリーが何もしない…?)
しかし考えても考えても全然答えは出ずに、時間だけがすぎていった。
…と、ある日。
(お姉様とパチュリーが何もしない…から持たない、だからそうなる…それは仕方が、無い?…まさか)
軽い考えだったが、今のフランドールにそれを軽く余裕は無い。
(何もしないから、死ぬ?…何もしないからそうなるのは仕方が無い?)
想像はどんどん膨らんでいく。
(そんな事、あるわけ…ない。…けど、もしかしたら)
一つの考えが生まれる。
(わざとお姉様とパチュリーは何もしていない?…なんで?)
ここまで考えが出て、フランドールが立つ。
(確かめない、と)



(いい?パチェ。フランは、一つ考えを見出すと思うの。…そうしたら)
本を片手に読みながら、レミリアに言われたことを思い出す。
(そこまで、する必要があるのかしら…)
「今日は、何かあるわね…」
(…なんとかなればいいけど……)



―――――え?私、悪役?



(……!この強い魔力は、妹様ね…)
「パチュリー…」
「なんですか?妹様」
(………もしも本当だったら、絶対に許さない…)
「…なんで、○○を助けないの?」
(…はぁ)
「それはですね、妹様」
「………」
「これ以上、あなたが強くなっては困るわけからですよ」
(!?)
「それとこれと…関係、ないじゃない!!」
(…やっぱり、前より強くなってる)
「あります。○○が生きていると妹様が、精神面で強くなりすぎるのです。そうなると、困るわけですよ」
「パチュリー、あなた、正気?」
(今日は、喘息の調子は、悪くは無いわね…)
「そうだったら?」
(パチュリーは、何か間違っている、直さなきゃ!)
「…元に戻す」
(…来るっ!)



―――――なんで妹様と戦う必要があるのよ…



(接近させては、ダメね…)
「『水符』ベリーインレイク!!」
「『禁忌』レーヴァテイン!!」
(水!?)
「くっ!」
(ベリーインレイクをレーヴァテインで弾いた!?)
「まだまだ!」
(避けるので精一杯だけど…)
(…昔なら、これで終わってたはず)
「っ!しまった!」
(体制が崩れたっ!)
(今ね…)
「ま、拙いかも…」
(水が、一つに固まった…?)
(流石に、殺すのはダメね…レミィが怒るわ)
(でも、負けられないっ!!)
「『禁忌』フォーオブアカインド!!」
(二枚の札を一度に!?でもっ!)
(絶対に、○○を助けるために!!)

―――ドパァァァーーーン!!!

「!?」
(だ、誰も居ない!?)
「っ!」
(首筋に、レーヴァテインが…)
「終わりだよ、パチュリー。…目を覚まして」
「…私の負けです、妹様。……真相はレミィが知ってます。私はその通りに動いただけ」
「…そう」
(お姉様…)

「…ふぅ」
(まさか、天敵でもある水に、分身の三人をぶつけて相殺するとはね…。それに、スペルカードを二枚重ねで…。
 レミィの言う通りかもね。)
「………○○」



―――――もしかして、私の出番終わり?



―――ドガッ!!
「お姉様!」
「…フラン」
「どうして、なんで?」
「…咲夜、少し抜けててくれるかしら?」
「はい」
そういうと咲夜は音もせずに、消えた。
「なんで、○○を助けないの?」
「あなたも、パチェから聞いたでしょ?」
「だからって!なんで、…なんで、見捨てるのよ!」
「私の、地位が危ういのよ」
「ッ!!」

―――パンッ

「見損なったわ!お姉様!!」
「…………」
「もういい、自分で、助けを求める!!」



「………」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、ただ…本気で殴られるとは思わなかったわ」
「本気で殴られていたら外に吹っ飛んでいますよ」
「………あの子も、強くなったわね」
「泣いて、いましたが?」
「…当たり前の行動、ね」



―――――…恐かったわ。 …さいで。


「し、師匠!未確認飛行物体がこちらに向かっています!」
「人をUFOみたいに扱わないほうがいいわよ?ウドンゲ」
「し、しかし…」
「大丈夫よ、素直にここまで通してあげなさいな」
その発言に小首を傾げながらも玄関へと向かう。
「結構、早かったわね…」

「…ここが、永遠亭?」
「そうよ?」
「…あなた、永琳の場所知ってる?」
「ええ、そして連れて来いと言われたわ」
「…そう」



―――――私の出番って、ここだけですか?師匠。 当たり前よ。



「御連れしました」
「ありがとう、ウドンゲ。ちょっと、席を外してくれるかしら?」
「…はい。」
「さて、何のようかしら?フランドールさん」
「○○を、治して」
「もし断ったら?」
「ここを、壊す」
永琳は少々慌てたような風に、
「あらあら、それじゃあここは壊れるわね」
「! …あなた、永遠亭を捨ててまで○○を殺したいの!?」
その言葉を聞いて永琳はフランドールを睨みつけて。
「……できれば、どちらも助けたいわよ」
「どういう、こと?」
「あなたにはわかるはずも無いわ。…助けたいと思っているのに、助けられない気持ちを。
 …ここに来たって事は二人は嘘をついたわね。たぶん、あなたが危険だから○○を殺すという嘘を」
「…じゃあ、お姉様やパチュリーが言っていた事は…」
「嘘よ。……原因不明で、手段が一つも無いわ」
「う、…そ」
その場にフランドールはへたり込んだ。
「嘘よ…」
「あなたは、そうやって現実から逃げるの? ○○が治らないっていうのが嘘で実は本当は治るって言う、幻想に
 縋りついてずっと逃げつづけるの? ……………できることなら、私だってしたいわよ」
最初は強気な発言も、喋るにつれて少しずつ声の強さが下がってきた。
「…永、琳?」
「○○には、世話になったわ。とてもね。……この幻想郷では、世話にならなかった数のほうが少ないわ。
 出来る事ならば、…治したいわよ。……でもっ! 全然、わからないのよ…何も!」
そこで初めて泣いている事に気付いた。
「………」
「発病から何もかも、どんな薬も効きやしない!片っ端からやることはやったわ!
 …勿論、蓬莱の薬だって作ろうと考えたわ。でも、○○が辞退したのよ…『人間で生きたい』ってね」
「…永琳」
「フランドールさん。この状況であなたは何をする?……私には、何もわからない…。…天才が聞いて呆れるわね」
「私は………、最後まで、死ぬまで○○の傍にいる!!」
「…なら、急ぎなさい。もうすぐ日が、昇ってしまうわ」
「わかった!」

―――バタン!

「ふぅ………」

―――バタン!

「ど、どうしたの?」
「もう、日が昇っちゃった…」



―――――泣いたけど、これでいいのかしら?



「よう、起きたか」
目を開けてみると目の前には変わった鎌を持った…たぶん、死神。
「そう、あたいは死神だよ。お前さん、…皆に愛されているな」
喋ろうとしたが、体が動かない。
「やめておいたほうがいいよ、これ以上動くと、寿命がよりいっそう縮む」
そ、それって…どういう?
「お前さんの寿命は、あと何もせずにいれば一ヶ月。一日中話せばその日でお終いだ」
……………
「黙って一ヶ月過ごすか。一日言いたい事喋って死ぬか。どっちだ?」
今、決めるんですか?
「ああ、一ヶ月を選べばなにもできなくなる。喋れるを選べば一日で死ぬ」
……決まってます。一日だけ、喋れるだけでも。
「やっぱりな、お前さんはそっちを選ぶと思ったよ。
 それじゃあお前さんの寿命が次の日に代わる丁度になる…」
………死神がこんなこんなことして良いのですか?
「まあ、閻魔様が許した事は良いんじゃないのか?」
―そういうと、死神は消えていった。



―――――出て、よかったのか?



―――ガチャ
「咲夜さん」
僕の言葉に大変驚いたようだ。まあ、今まで寝てたんだし、当たり前か。
「何?」
「お嬢様と、パチュリー様と、フラン様を、…ここに呼んでください」
「…わかったわ」
さて、この一日でどこまでやれるか…?


「○○!」
「良かった…目がさめて……」
入ってきたと同時に飛んできたお嬢様とパチュリー様。
「……そうでも、ありません。僕の寿命は、次の日になったら途絶えてしまうらしいのです」
「だ、誰がそんな事を…?」
「死神、です」
「あのサボり魔が、ねぇ」
どうやら咲夜さんには面識があるようだ。
「…フラン様、は?」
「まだ、帰って来てないわ」
「……まさか、まだ永遠亭に…!?」
「…日の入りからいれても、そうなると少しの時間しか取れないわ…」
「…………少しの時間でも、話せるなら良しとします」


―――そして、残り数十分となった。
「咲夜さん。あと、何分ですか?」
「…あと、三十分よ」
それだけあれば、十二分か…。
「フラン様、この30年間、色々ありましたね」
「…そうだね」
「僕が風邪で倒れたときなんて、酷かったですし」
「あはは、あれは…ね」
「レミリアお嬢様…もともと、あなたが僕を見つけて助けてくれなければ、僕はそこらで野たれ死んでたでしょう」
「…そうね」
「その後も、色々と面倒を見ていただいたきましたね」
「まあ、大変だったわ」
「そうでした?…それより、パチュリー様。ぼろくそ良いながらも色々と支えてくれましたね」
「………ええ」
「咲夜さん、あなたはとても、とても良い人でした…」
「当然、よ」
「あと、何分ですか?」
「もう、数十分しかないわ」
「フラン様、僕からの…最後の約束です」
「…なに?」
「一つ、…ケーキ作りは止めても止めなくてもあなたの自由です。あなたの生き方ですから。
 二つ、…あまり、落ち込まないでください。僕が来る前の生活に戻るだけですから。
 最後、…占いの通りに、絶対にならないでください! 絶望をして、諦めるほど無意味な事は無いのです!」
「……占い?」
「…スペードのJと破れたハートのQ」
「ああ、随分昔の。…でもいまだに意味がわからないんだけど」
「わからなくてもいいです。只、占いの通りにならないでください…。
 …あと、何分ですか?」
「あと、五分とちょっとかしら?」
「…そうですか」
…一旦口を止めて少し周りを見る。
「フラン様!」
「な、なに?」
「…僕は、あなたに出会えて本当に、…幸せでした」
「…私もよ、あなたに出会えて色々と成長したから」
「お嬢様」
「なに?」
「パチュリー様」
「ん?」
「咲夜さん」
「?」
「そして、フラン様」
「………」
「この、紅魔館来れて、生活できて、本当に、本当に良かった!!」
そう喋った後に、意識が途切れた。



「…○○は死んだわ」
「……そうね」
「とても、楽しかったわ」
「…………」
なんだろう、この胸の中に開いた喪失感は。
とても、とても胸が痛い…。
「…妹様。○○が持っていたものです」
「……これは…」
ペンダント型の写真入れである。何度かその名かを見せてと迫った記憶が戻ってきた。
思いきって開けてみると、その中には…

一度だけの写真、○○に抱きついたときに撮られた写真だった。

「……まさか、ずっと持っていたなんて」
「フラン…」
「大丈夫よ、お姉様。…思い出があるなら、心の穴は埋められる」

「占い、はずれたわね」
「それで、良かったんじゃないですか?」
「ええ」



―――――その後、○○の葬式があり、その葬式に参加した人妖は数え切れないほどの数だった。そして、一段落した後。


咲夜は花束を持って○○の墓へと向かっていた。
と、一人○○の墓の前で立っていた。
「…あら? あれは……妹様?」
「…咲夜。○○は、満足だったのかな?」
「ええ、そうでしょう」
「………なら、大丈夫」
そう言ってフランドールは館内へと戻っていった。
それを確認した後、咲夜は墓の前に花束を置いて。
「……あれから色々あったものね…。そういえば、あなたは『自分が死んでも元の生活に戻る』って言ってたわね…。
 だけど、お嬢様も、パチュリー様も、妹様も、もちろん私も、あなたが来て色々変わったわ。…それに、この墓が
 あること自体で、昔の生活には戻らないわよ。……できれば、もう少し一緒に生活したかったわね。
 …でも、あなたの死は全然無駄じゃなかったわ。…それに、あなたの味を継ぐ人もいることだしね」
と、一陣の南風が吹いた。
「…もう、夏ね。……あなたが来たときも丁度この時期だったかしら?」
「咲夜ー」
「お嬢様が呼んでるわ。…また来るわね」
そう言った後メイド長は音もなく消えた。




一つ残された墓の真ん中の花束に  二枚のカードがあった
  一つは  ハートのJ もう一枚は  ハートのQ
 二枚は  寄り添うように   飾ってあった


春過ぎて
 悲しみに心
  乗せながら
 
 思いは消えずに
    また笑い合う









~~~裏あとがき~~~
ノリに乗せて書くとこんな事になりました。
やっぱ、シリアスっぽくなってしまうのが僕の悪いところで、もしかしたら良いところかも・・・、しれませんね。
あ、トランプの占いですが。スペードは死、ハートは心と考えるとわかりやすいと思います。

さて、んなことはどうでもよくて、せっかくここまで読んでくれたんです。作成中に思いついた改造シーン、どーぞ。


改造、1
「…あと、何分ですか?」
「あと、五分ちょっとかしら?」

「そうですか……そrぐふっ!」
「えぇぇぇ!?」
「あ!ずれてた!」
「咲夜ぁぁ!!」


改造、2
「フラン様!」
「な、なに?」
「…その七色の羽で、どうやって飛んでるんですか…?」
「…へ?」
「もう一度言います、その七色のhぐはぁっ」
「あ、死んだ」
「……結局、何が聞きたかったのかしらね?」
「さぁ…?」


改造、3
「こっちの…になって一ヶ月いきるか、…になって一日生きるか。どっちだ?」
すみません、良く聞き取れませんでした。
「だから、こっちのキビ―!と鳴くキビ団子になって一ヶ月いきるか、ケヒケヒいう霊夢になって一日生きるか。どっちだ?」
「きゅ、究極の選択…!!」


以上、改造終わり。

最後くらいは笑って終わらせようと、ね?

>>371
改訂>>387

───────────────────────────────────────────────────────────

――――死んだといって、終わりではない。

――――新しい人生の道が開けるのだ。

――――それとも違う、道がある。

――――これは、そういうお話…。
















…あれ? 僕は死んだはず。…たぶん。
なのに、何で目の前に人が? …って、
「よう」
あの死神だった。
「どうも」
「変わったな」
「へ? 変わった?」
そう言われて自分の体を見てみると、どうにも懐かしい。
「…昔の頃のじゃないですか。どうしてこの姿に?」
「様々な人の一番印象深い時の体になるんだ。お前さんを見てた人は、その頃が一番印象深く残ったんだろう」
ははぁ、納得。
「さて、面倒だからな。説明は簡単にさせてもらおう」
良く見たら、その死神の後ろの後ろには三途の川。ああ、あれを渡る説明か。
「ポッケの金出せや」
「………簡単過ぎます」
なんですかそのワルの人のような言い方は。
…咲夜さんの言葉は本当でした。あ、でもサボり魔とは違うのか?
でもまぁ従わないと渡れなさそうなので渡さなきゃいけないらしいけど。
「……ポッケ、ですか?」
「ああ。たしか…、何かと人数が、関係してたんだけど…。あー…、忘れた」
この野郎、覚えとけ。…と言いそうになったが、何とか心にとどめておく。
…ここで紅魔館(お嬢様、あの引きこもり等)から培った事を使うとは……。
「…っていうか、ポッケに一枚も入ってないんですけど…」
ひっくり返してもスッカラカン、何も無し。
「思い出した、たしか…感謝された人数だっけな。ってことはお前さん、全然感謝されてないって事だ」
「……マジッすか」
ちょっと待て、妹様からも感謝されてないって…もしや、厄介物?
30年間やってきたこと全部、御節介? …正直凹む。
「……おい、お前さん」
「なんですかぁ?」
(たぶん)泣きながら死神のほうを向くと、死神が上のほうを向いていた。
「あ、薄くなった。次のターンで落ちてくるぞ」
「ほへ? 上ですか?」
上を向いていたので見てみると…。
「えぇぇぇぇ!? なんですかこのサンタクロースの袋より大きい袋は!! 
 猫耳が無い猫型ロボットも、毎回名前を□ボタンと間違えるロボットも真っ青ですよ!?」
唐突に思う。ドアを開けたら別世界とか、小さいプロペラで空を飛ぶとか、ここじゃあ普通だよ。
(□ボタンで敵をn)こら貴様、死んでも出てくんのか。
(来るかぁ?s)はいはい、あんたら元気だね。
「まあ、死にはしないと思うけどさ」
「これ以上死んで、何になるんですか?」
なんて話してたそのとき、

――――ジャラララララララ!!!

「おー、お前さんその中全部金だったのか! …この数だと、早くて楽だな」
「…なぜみずふうせん?」
あー小銭ってこんなに痛かったんだ、ハハハ。
とりあえず、足元に落ちた小銭を喜び勇んで拾い集めている死神改めサボり魔は無視して、適当に小銭を見る。
「あれ…? これだけ妙に紅いな…」
見つけたのは周りよりも格段に紅い小銭だった。
「……妹様」
唐突に見て思い出した、懐かしい人の名前。
そういえば、元気にしているだろうか? ケーキ作りは止めたのかな? 占いは…?
「まあ集めるのは後にして…。お前さん、さっさと三途の川渡るよ」
「あ、はい」
僕は妹様を思い出させる紅い小銭に名残を残して三途の川へと向かった。


「ここが三途の川だ」
「…質問、いいですか?」
「ああ、いいぞ」
「なんで…、なんでこんなに幅が狭いんですか!!」
僕が想像していたのはね、長くてね、カッパさんが『へのかっぱ~♪』とか歌いながら、
ギコギコ漕いでいってね、そのまま南の島に行ってしまうような川を期待してたわけですよ。
「いや、お前さんが持ってた金の量がな、半端なくてな…」
「だからって、三センチは無いんじゃないんですか!?」
三センチ。メダカだって窮屈に感じられる幅ですよ。
っていうか船、岸に乗り上げてんじゃん。
「これだったら誰だって飛んで渡れますって…」
「あー、でも。船使わないと、水龍に食われるぞ?」
「食われたらどうなるんですか?」
「えっとな、まず口の中で唾液と混ざり合わさって噛み砕かれるだろ。次に喉に…」
「いいです、何かと面倒になりました。船使用して渡ります」
何かとエグイことになりそうだったので止めておく。
…この死神、実は運ぶのが面倒だったからここまで短くしたんじゃないのか?
「チッ。ばれたか」
この野郎、心の中読んだ挙句、自白しやがった。


「あいつ…、絶対死神じゃないって」
なんて一人ぶつぶつ言いながらも、閻魔が居るところへと向かう。
『歩く事数十分』、まだ着かない。
「…結構長いな」
『歩く事一時間』、まだ着かない。
「ちょ、ちょい待ち! 終わりは!? 先が、全然見えないんですけど!」
しかし、歩くことには慣れてしまった(妹様の部屋とお嬢様の部屋を行ったり来たりしていた)ために、このぐらいはへっちゃらなのである。
「…お嬢様、か。ああ、懐かしいな」
…我侭言いながらも、しっかり面倒は見てくれていたお嬢様。
と、いかんいかん。歩かないと終わらないのではないか。
『歩く事数時間』、まだ着かない。
「死神が、第一関門だったとは…」
これは試練ですか?何のための試練ですか?これくらいしないと裁きを受けられないのですか?
「いい、もう! 歩いて野郎じゃねえか!」
何かと吹っ切れたので歩きつづける事にした。
『歩く事数十時間』
「や、やっとついた…」
歩く事数十時間、やっと裁きの間の目の前まで来た。
…これじゃあ裁きうけられる人も少ないだろうに。
「次の方ー」
まあとりあえず入ろう。
「失礼します…」
「えーっと、あなたは○○さんですね」
目の前にいた閻魔は、ちょっと変わった格好をした人(?)だった。
…まあ、閻魔だし、しかたないのかな?
「あなたは?」
「私は、四季映姫・ヤマザナドゥです。決して、断じて山田などと言う部分は一切ありません!」
「はぁ…」
この人、なんか名前で苦労してるんだなぁ…。あ、そう言えばメイリン(未だに漢字が書けない)さんもそうだった。
と、また昔を思い出してしまった…。
「まぁそれはともかく、ヤマザナドゥさん」
「映姫です。下のは役職」
「ええと、映姫さん。一つ、いいですか?」
「どうぞ」
「あの廊下長すぎません?」
僕は奥底にある爆発寸前の堪忍袋をなんとか止めて映姫さんに問い詰める。
ああ、このやり方咲夜さんに似てるな…。
…はぁ、何でこう思い出してしまうんだろう。
「廊下ですか? あれは、前の人の裁きが終わったら自動的にドアがすぐ来るようになってますが…」
「なにぃぃぃぃ!? そんなん知らんですよ!」
「看板、見なかったんですか?」
看板?…そういえば、そんなものを見たような気がしないでもない…。
「…あー、見てない…」
「はぁ、自業自得ですね。…それは兎も角、これからあなたの裁判を始めますよ」
ああ、やっと来たか。…それにしても数十時間に渡って裁判やりやがって…。
「まず、あなたは――――」


<そのころ、図書館に強盗が押し入った>


白玉楼、ここはいつも通り平和。
「妖夢~?」
その中に抜けまくった声が響く。
「なんですか? 幽々子様」
一方こちらは真っ直ぐ過ぎる声。
「お墓参り行ってきたのかしら?」
「ええ、行ってきましたが…。それが?」
最近、○○と言う人が亡くなった。
○○には御世話に鳴り捲ったので妖夢はお墓参りに行ってきたのだ。
ちなみに、幽々子は『お墓参りに行っちゃうと成仏しちゃうから』という理由で行っていない。
「それだけ、よ」
「それだけですかぁ?」
「それより妖夢、なんで泣いていたのかしら?」
良く見ると妖夢に泣いた後に出来る筋が。
それを見た幽々子は『うちの妖夢に何をしたのかしら?』と、内心青筋を立てていたのだ。
「いえ、ちょっと倉庫を整理していまして…。久々に、思い出してしまって…」
それを聞いて幽々子は内心ホッとした。勿論顔には出さない。
「って、元々幽々子様が『衣替えの大掃除』って、言い出した事じゃないんですか」
「そうだったわね。じゃあ、引き続き庭も頼むわ」
そんな事も命じながら、そう言えば昔に、酷使し過ぎじゃないのかと言われたことがあった事を思い出した。
そのときは反省したが、今はと聞かれると、答えはノーである。
(久しぶりに、仕事を減らしてあげようかしら…)
単なる気まぐれにしか過ぎないことを考えていたとき、

――――ドンドンドン!

「あ、はい! 今行きます」
突然門のドアが叩かれて、妖夢が出迎えに行った。
(この時期に、珍しいわね…)
ドアを叩いた時点で紫はまず無い。必ずスキマを通して勝手に入ってくるからだ。
それ以前に、亡霊は飛んではいるのが普通なのだ。門なんて飾りとさえ考えていた。
(まあ、誰でも良いわね)
そう思い、お茶を飲もうとして、
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
妖夢の大声に噴いてしまった。


「で? なんであなたがここにいるのかしら?」
『西行寺家奥義、禁じられた青筋』を立てながらも幽々子は、その元凶を作った人物に話しかけた。

説明しよう!西行寺家奥義禁じられた青筋とは!
西行寺家だけにつたわる、普段は表に出さない性格の人が出す切れますよサインなのだ!
そして、切れてますか? と聞くと絶対に、切れてないですよ。と答えるから、切れてないといわれても安心しちゃ駄目だ!
それとは別に、『西行寺家秘奥義、永久の青筋』があるから注意しよう!


「そうですよ、何でこんなところにいるんですか? ○○さん」
そう、ここに来たのは間違い無く、○○だったのだ。
「いや、話すと長いんですけど…」

~~~説明中~~~

その間、別の場面をお楽しみください。

「ズズズズズズ…。はぁ、暑いわね…」

……関係ありません。

~~~説明終わり~~~

「と、言う事でしてね…」
「つまり、閻魔がまだ決められないから、とりあえずここに送ったということ?」
『禁じられた青筋』も無くなった幽々子がまとめた。
「……そう言う事だそうです」
「まぁともかく…。久しぶりね、○○」
「ええ、お久しぶりです。…って、そんなに昔じゃないですよ?」
「まあ無礼講よ」
「使い方間違ってません?」
そんなかみ合ってるのかかみ合ってないのか解らない会話をしている二人。
「あ、私。紅魔館の皆さんに伝えてきます!」
そう行って駆け出していこうとした所を、○○に止められた。
「なんですか? まさか、呼びに行かないでくださいとか言いませんよね?」
「そんな事は無いですが…。一つだけ、普通に伝えちゃ面白くないので…。Jが来たと、咲夜さんに」
「はぁ、解りました」
妖夢はその変に回りくどい伝え方に小首を傾げながらも紅魔館へと向かった。
ちなみに、今は夜。


<そのころ、黒い魔法使いはある店でお茶を飲んでいた>


紅魔館、ここもいつも通り平和である。只、一人居なくなった事を除いては。
「あー、…おなか減った」
そこの門番、えと……ちゅ、中国は…
「中国じゃありません!紅美鈴です!」
ああ、そうそう。くれないb
「違います!ホンメイリンです!」
あー、はいはい。そのホンメイリンは非常にひもじい思いをしていた。
「っていうか、パン一つじゃ死にます…」
なんて泣きながら門の前に立っていた。
と、
「ん? 誰かの気配が…。今のところ仕掛けてくる気配は無いけど」
そうは言いながらも戦闘の準備をする。門番も大変なのだ。
「あの~」
「早っ!!」
目の前には何時の間にか妖夢が。
「咲夜さんに伝えてください。Jが、来たと」
「は、はぁ…」
何かしら疑問を残しながらもホンメイリンは下っ端に見張っているように命じて、館の中に入る。


「咲夜さん~?」
「何サボってるの? 美鈴」
そう言って出てきたのは、メイド姿の咲夜だった。
「いや、サボってなんかいません。伝言を頼まれまして…」
「伝言?」
「ええ、剣を二本持った人間が『Jが来た』…って言ってましたけど…」
「!!」
その言葉に咲夜は驚愕の表情を隠さなかった。
「あなた、解らないの?」
「全然」
「はぁ…、だからあなたは中国なのよ…」
「いや、それとこれとd「って、こんなところでのんびりしてる場合じゃないわ!」
そう言うと咲夜は音も無く消えた。
「あー…いいです、私の名前は中国で…うぅ」
出入り口で体育座りで泣いている中国。
と、

――――…キィィィィィィン!

中国の隣を何かが掠めていった。続けて三本。
「な、なに!?」
なんて言った瞬間。目の前に大量のナイフが。
「…去り際は酷すぎませんか咲夜さん!!」
こうして中国はウニになりましたとさ。


<そのころ、○○は幽霊でも足が痛くなることを思い出した>


――――キィィィィィン!!
幻想郷を走る筋四本、彼女たちを止めるものは、無い。
「○○…!」
○○がまだ居た。それだけでフランドールは胸踊るものがあった。そして、すぐさま会いに行きたいという気持ちだけで飛び出したのだ。
「フランが本気で飛んだのみたこと無いわね…」
こちらはレミリア。彼女も○○に会いに行きたいと思っていたが、流石にそこは紅魔館の主としてあるまじき行為と考え、
フランドールが暴れないように、という面目で○○に会いに行っているのである。
以下パチュリー、咲夜、ほとんど同意。


霊界への結界を抜け、長い長い階段を地面擦れ擦れで進み(そのせいで階段が壊れた)、そして白玉楼の壁を、

――――ズドガンッ!!
「○○!」
ぶっ壊して入ってきたのはフランドール。後ろにレミリア、パチュリー、咲夜の順。
そして入ったフランドールが見たものは、
「…二百由旬の中で良くここがピンポイントで当たったわね…」
驚きが隠しきれていない幽々子と、
「まぁ、良いんじゃないんですか?」
紛れも無い、大切な大切な○○だった。
「○○っ!」
そしてそれを見た、フランドールは飛びついた。
が、

――――スカッ

抱きしめようとした手は、無常にも空を切っただけだった。
「あれ?」「え?」「?」「………」「???」
左から、フランドール、○○、レミリア、パチュリー、咲夜の順である。
「…? どゆこと?」
何とか地面への衝突を免れたフランドールが尋ねる。
「そこの亡霊、答えなさい」
「う~ん、なんて言えば良いのかしら……。あれよ、普通幽霊って触れないじゃない?」
吸血鬼二人に問い詰められ、悩みながらも幽々子は答えた。
「でも、あんたは触れられるじゃない?」
すかさず咲夜。
「あ、ほんとだ」
その言葉をフランドールが実証する。
「それは、私が長く生きたからね」
「……つまり、亡霊として長く生きられたから触れられると?」
パチュリーがやっと口を開いた。
「ええ、そういうこと」
「なんだあ…」
その言葉にフランドールが項垂れた。
「…そういえば、なんで○○はここに居るわけ?」
「あ、それはですね。えn「どうやら、人数はそろったようですね」
何時の間に現れたのか、映姫が喋り始める。
「では、これから。○○の裁判を、改めて開始します!」


<こっから、ですよ?…たぶん>


裁判台が無いのが残念ですが…、まあそう贅沢は言えませんね。
「まず、○○。あなたはそう、人に優しすぎる。あなたがしてきたことは、一方は優しい事かもしれませんが、
 片一方にはその真逆の感情を持ったのかもしれません。現に、あなたが生きてきた中でそれが何回もあります」
「…そうですか」
「そしてもう一つ、人を悲しませすぎる。あなたが死んだとき、何人もの人妖が悲しみました。それ以外にも、そういう事は沢山あります。
 この二つから言えるのは……、あなたはもう少し、違う方向で他人のことを考える。これがあなたに出来る善行です」
「はい」
素直に受けましたか。この人の事です、ちゃんと守るでしょう。
「まだまだ罪はありますが…、大体このぐらいにしておきましょう。…さて、あなたの判決ですが…」
「○○…」
「あなたが犯した罪は、質は良くないものの、数が多いです! よってあなたは――――
 ―――――地獄行、k…」
「…?」
な、なんですかこの悪寒は…。隣からビシバシ伝わってきますよ? 恐る恐る隣をチラッと見てみると…。
ナイフを持って今にも切りかかってきそうなメイドに、何の符を使うか迷っている魔女、槍を持って今にも投げてきそうな勢いの吸血鬼(姉)。
そして、全員を宥めながらも片手には紅い、とても長い刀を持っている吸血鬼(妹)。
無茶です。生きていられません。駄目、死にます。おじいちゃんがおじいちゃんが。
………ハッ! 取り乱してはいけません、私は閻魔なのです、この程度の殺気、なんとかせねば…。
「あなたは、地獄行きです!!」
『!!』
うわ、殺気が強くなりました。っていうか吸血鬼の姉のほうが飛んで来そうで恐いんですけど。あ、魔女が何を使うか決めたようです。…結局全部ですね。
でも駄目です、負けてはいられません。
「……と、言いたいところなんですが…」
『…?』
「あなたが地獄に行くと、より一層悲しむ人が増えるでしょう、泣く人が出てくるでしょう。
 それにあなたは、約束したはずです。ずっと一緒だと。約束を破る事は罪な事です!
 よって、あなたは―――――




 ――――――冥界に、永久追放とします!!」
殺気が、やっと、収まりまし、た。こ、恐かった…です。
「つ、つまり?」
「解りませんか? 霊界に、永久に追放するんですよ」
最初はきょとんとしていた彼女達も、次第に笑みに変わってきてます。いい事をしました。
「閻魔も変わった事するわねぇ…」
悪かったですね。
「ふぅ…危うく殺すところだったわ」
この吸血鬼、さらっと恐ろしいこと言ってきますよ。
「…………」
お願いですからなんか喋ってください。その笑みは恐すぎます。
「やった! ○○、ずっと一緒だよ!」
「はい」
やっぱり、素直が一番です。
と、喜んでいる彼女達を置いて、こちらに歩いてきましたよ。
「…本当に、良かったんですか? これで」
「本当は悪いですよ? でも、大切な人を悲しませるのは、一番罪な事です」
「……人情が入る裁判、ですか…」
「勘違いしているようですけど、人の心が入って始めて裁判なんですよ。私の場合」
「そりゃどうも。今度、お礼でもします」
「…それ、じゃあ。あの…ケーキ、焼いてくれませんか?」
「何年かかるかわかりませんよ?」
「それでも、大丈夫ですよ。それじゃあ、私は仕事があるので」
「ええ」
そう言って振り向いて歩き始める。
…これで良いのです、最後に私事が入ってしまいましたが。




「ずっと一緒だよ! ○○!」
いや、それは無理です妹様。
「そうなると、ここに住む事になりますが…」
「う~ん……じゃあ、毎日来る!」
やっぱり妹様だ、懐かしい。
「それなら大丈夫ですか…」
「もちろん」
「私達も来るわよ」
「…まあ、ここでしか会えないしね」
この三人も、あんまり変わってない。
「ええ、ありがとうございます」
「あー、お取り込み悪いんだけど…」
幽々子さんが突然話しかけてきた。
「なんですか?」
「この壁の修理、頼むわね? それと、妖夢はどこかしら?」
「……あ」
『永久の青筋』が…。



「皆さん、遅いですねぇ…」






――――生きなくても、一緒にはなれる。



End





~~~あそ(び)がき~~~



おはようございます、こんにちわ、こんばんわ、名乗るのが面倒な人です。
めどいからA氏でいいか(何
さて、今回はフランの続編として書いてみました。今回はシリアスが少なめに作られたかと思うのは自分だけかな…?
っていうか、えーきんが格好良くなってしまったかも。いや、普通でした。えーきん、かっこ良いと思いません?

それはともかく。実は、フランのお話は続きがいっぱいあるんです。空白の30年間、これが使えるんですよ、はい。
とりあえず今考えているのは、○○が風邪を引いたとき…です。それ以外はあんまり…。

30年間の出来事とか、書きたい人は、ど~ぞ書いちゃってください、どんなのが来ても自分は嬉しいです。(限度ってものがありますが)
他作品にちょっぴりだす。これもどうぞ、やってください。自分は嬉しいのです。

 イチャスレに  
    著作権無し  
      これがいい 

思いついただけですよ、はい。


今回はハッピーエンドだから改造は無しです(ぇ






さて、次はフランを少しお休みして…っと(ボソッ

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