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幽香4

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orz1414

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気がついたときには、一面の向日葵畑だった。



何故ここにたどり着いたかは覚えていない。
車にはねられた。ナイフで刺した。飛び降りた。
全てが正解で、多分どれ一つあってない。

つまり、定義できない。

土の感触なんて、小学生の時以来だ。
倒れていた私は、起き上がると傷が無いようだと感じた。
まるで他人事のようだ。この思考も。

「あら、こんなところに人間なんて。珍しいわね」

瞬間、全ての向日葵がまるで処刑人を指し示すように此方を見た。
花なのに、「見る」とはいかがなものだろうか?

「その格好…どうやら外の人間のようね?名は?」
「…」
「ちょっと、聞いてるの?」

どうやら間をつくってしまったらしい。
しまった、ボケッとしてしまった。

でも、そんなことはどうでもよくて。
驚いた。
彼女が一瞬で私の目の前に現れたから。

ふっ、と彼女の日傘の影に入る。
そして『むにっ』っと私の頬をつねった。

「…○○、だったと思います」
「『だったと思います』って、自分の名前でしょ」

ぱっと手を離して、クスクスと笑い出した。

「まるで他人事のようね」
「…ええ、実際他人事ですから」
「なにすっとぼけてるのよ。ああ、私幽香。妖怪なの」

一瞬何を言われたか分からずに、ハっとした。

「風見幽香。この向日葵畑の主。そして、」

後ろを向いて、数歩離れて、彼女は言った。



「人に恐れられている、多分一番危険な妖怪なの」



日傘から、その綺麗な顔を覗かせて。

「驚かないのね。まぁ、最近は私も大人しいとはいえ、無反応は困るわ」
「ええ。今まで妖怪に本当にあったことが無かったもので」
「そりゃそうよね。外の世界の人間だもん」
「あと貴女に殺されても、何も出来ないから」
「…その「どーでもいい」って返答、やめたら?」

彼女は日傘を畳むと、片手の指を順番に握り締めていった。
『ポン』という音とともに、向日葵が現れた。

「ま、アンタをいじめるかその他の処置をとるかは後で決めるとして
 とりあえず、こっち来たら?」




どうやら彼女の家らしい。
彼女の家は、綺麗だった。
調度品が煌びやかなわけではない、その配置が美しいように思えた。
品がある人…妖怪だっけか。自分にはこんな完成は存在し得ない。

「ようこそ、我が家へ」
「…よく人を招待なさるのですか」
「いいえ、ほぼ0に近いわね。特に人間だと生きて出た奴は…」

そういいながら風見さんは紅茶を出してくれた。

「…まぁ、記憶に残ってないわね」
「そうですか」
「ちったあビビリなさいよ。
 とりあえず人形にしゃべってる気がするけど、アンタに教えてあげるわ」

そう言って彼女は私に必要なことを教えてくれた。
大結界、幻想郷、妖怪、スペルカードルール、神隠しの原理。
新しい固有名詞が、スッと私の頭に入っていった。

「…と、いうわけ」
「すみません、どうやら結構トンデモないことをしているみたいですね」
「そうね、私の機嫌が悪かったらどうなっていたか」
「…」
「大抵外の人間は驚くらしいわね、この世界では」
「…そうですか?」
「貴女は驚かないの?」

彼女はティーカップを置いた。

「ええ…多分私がズレた人間だから」
「言っとくけど、妖怪ってのは恐怖の対象。
 人が人である限り、逃れられぬアヤカシ」
「私は、風見さんの…」
「幽香」
「…幽香さんの話を聞いて、この世界っていいなって思いました」
「何で?外の人間なら、外の方がよくないかしら?」
「…普通なら、ね」

私は彼女のほうを見ないで、カップのそこの液体を弄んでいた。
「脅威が見えるから。妖怪と人の構図が美しいと感じたから」

ああ、そうだ。思い出した。

小学生くらいまでは良かったんだ。
私は社交的で、まだ何も違和感に気がつかないでいた。
でも中学、高校、その他と年を経ていくうちに、

「私は自分の歪さ、自分が外の例外であることに気がついたから」
「外の例外」
「…おかしいんですよ。人として」

自分が人間なのか、疑わしくなった。
周りは私から急速に遠のいていった。

『なんでそんな無駄なことをするの?』
『なんでそんな面白くないことをするの?』

周囲から向けられる視線は、多分冷たかったのだろう。
それすらもわからない。
理解不能。
何もかもが見えて、何も見えない世界。
この、幻想郷とは違う…

「たぶん私は、人間なんかじゃない。劣化種なんだ」
「…そうなんでしょうね、アンタがそう言うなら」

だから、思考を停止した。

私の思考にノイズが混じるんじゃない。
私の思考が、ノイズだったから。

「境界が、見えるんですよ。何重と重ねられた、向こう側の見えない」
「あなたは多分、生きながらにして化け物になってしまったのね」
「ええ、そうだと思います」

そう思ったら、自分の口から鉄のにおいがした。

「ちょっと、○○!!何突然死に掛かってるのよ!!」

急速に意識が遠のいていく。多分思い出したから…なんだろうか。
そこらの因果関係はどうでも良かった。
多分、これは是非の彼岸を越えた単純な事象なんだろうから。
でも、かすれゆく意識の中で思ったのは。

「ええい!面…な!!博霊…ス…永…………」

この人、綺麗だな。




「気がついた?」
目を開けると、なにやら特徴的な…巫女服?を着た少女がいた。
ここは…
「ここは博霊神社。アンタはこの世界で一番の医者に見てもらって助けられた」
ガサゴソとカバンの音をするほうを見ると、銀色の神をした綺麗なお姉さんがいた。
「…久々に焦ったわね」
「あら?珍しいわね」
「まぁ、何とか私も覚えていたから対処できたわ」

そういうと、その人は和室から出て行こうとした。

「あの、」
「お代はいいわ。また何かの縁があればね、○○君」
「どうして私の」
「私はこの神社に用事があってね。
 隠れ家から突然『か、風見幽香が高速で攻めてきました!!』なんて連絡が入ってくるから何事かと思ったら、あなたを抱えているじゃないの」

彼女はふすまを空けると、手を当てておかしそうに笑った。

「そしたら、「医者をすぐに出せ!!」ってかなり切羽詰って言ってきたらしいわ。
 今私がここにいることを伝えたら、
 私が戻るっていう前にこっちにすっ飛んできたのよ。
 幸い道具は持ってたけど、私が手ぶらだったらどうする気だったのかしらね?」

それじゃあね、といって彼女は飛んでいってしまった。
…本当に飛べるんだな、ここの人間。
人間なのだろうか、今の人?
まぁ、いいか。

「さて、○○」

そういうと彼女は話を切り出した。

「あなたは奇跡の人ね」
「奇跡の…人?」
「まぁ、山の上の神社は関係ないとして、色々信じられないわ」
「そう、ですね」
「で、どうするの?」

スキマとかいう妖怪に元に戻させてもよし。
人の里にて暮らすのも、良し。

「まぁ、こっちの暮らしは外よりも文明は遅れてるとかなんとか。
 そんなことを誰かが言ってた気がするわ。
 つまり、暮らしにくいって、ことよね」

私は…




私は…
何をやっていたのだろう。
人間嫌いのはずなのに、珍しく人間なんかに関わっちゃったりして。
でも、そうか。
多分、彼にはどこか、私に似ていると思わせるものがあったのだろう。
ここの世界でも「関わり」はあって。
どこにいっても、逃れられなくて。

「さて…うん?」
また侵入者のようね。
追い出さないと。




「…で?」
「すみません。反対はされたのですが」
「どうやってここまできたの?」
「スペルカードで。基礎原理をみせてもらって、飛ぶくらいは」
「…あんたの外の世界での反応が、何か分かった気がするわ」

「どうか、私を居候させていただけませんか」
「反対されたでしょ猛烈に。ならそれが真理よ」
「でも、他に場所が無いんです。ここが多分最適なんです」
「何に?」
「居場所に。だって」

 化け物、だから。
 
…やられた。てか、こういうときまで無表情!

「こき使われるわよ」
「ええ」
「生きてすごせる保障も無いわよ」
「ええ」
「…本当にわかってるの?」

そういうと彼は、私に手をゆっくりと伸ばそうとした。

「…生意気ね」

でもなんだか悔しかったので、私から先に彼に触れた。
まず頬に、次に手を。
ぎゅっと、握り締めて。
その手を、離した。


きっと、まともじゃない。
でも、意味のあることなんだろう。

うpろだ1385

───────────────────────────────────────────────────────────

「いらっしゃいませー」
「こんにちは、忙しそうですね」
客の気配を感じ、適当に声をかけた
しかし返ってきた声に聞き覚えがあった、振り向くと、そこには彼女が居た


「どうぞ、ゆっくりしてってください」
彼女のためにと、少し見栄を張って購入した紅茶
俺はあまり飲まなかったが彼女の影響もあり、紅茶好きになった
「わざわざ有難う・・・忙しそうなのにごめんなさいね」
「いえいえ、風見さんはお得意さんですから、遠慮せずに」
そう声をかけると、彼女は優しく微笑んで、紅茶を口に含んだ

商品を棚に並べたり運んだりとしながら、横目でこそっと彼女を眺めた
商品を手にとっては興味深そうに眺め、元に戻す
俺は彼女が恐ろしい妖怪には、見えない
側から見ていれば見かけどおりの少女にしか見えない
しかし周りの人間は恐ろしい妖怪だと
「・・・あの・・・あまり見ないでくれるかしら?その・・・恥ずかしいじゃない」
顔を赤くしてそっぽ向いてしまった
「え、あ、す、すいません!」
そんなところも、可愛いと思うし人間くさいと思う

彼女との始めての出会いは、外からやってきた俺のことを見物しに来たときだったか
外の話を聞きたがったのでいろいろと詳しく教えた
彼女はその話を驚きながら、そしてとても楽しそうに、聞いてくれた
もしかしたら俺がまともに話をしたのは、この世界では彼女が一番初めなのかもしれない
俺もそう長く生きているわけではない、話すことはなくなった、けど彼女はまだ、俺の元を訪れてくれる
「風見さんは・・・俺のとこに来て楽しいですか?」
「・・・ええ、楽しいわよ」
彼女はこう言う、最初は外の話しを聞きたくて、そしていつの間にか、ただ話してるだけで楽しくなった、と
俺はこれを聞いてから、変に彼女を意識してしまい、今に至るわけだ

「おっじゃまー、あ、やっぱり貴女ね」
休憩ついでに彼女とお茶をしていると、紅白の巫女さんが現れた
「あ、博麗さん、いらっしゃいませ」
「あら、久しぶりね、どう?こっちの生活には・・・なじんでるみたいね」
店の中を見渡して、そう言った
「ええ、博麗さんや風見さんのおかげでなんとか」
しかし、巫女さんが来るなんて珍しいな
何かあったのだろうか?
「最近里で頻繁に妖怪を見かけるからって事で来たんだけど・・・やっぱり幽香の事だったのね」
風見さんは不機嫌そうに巫女さんをにらむと
「何よ、私がここに居ちゃ悪い?」
どこかトゲのある、というかむっとした様子である
「別に・・・どこの妖怪が何か企んでるのかと思って見に来ただけよ」
実際は違ったけどね、と言うと先ほど出した紅茶を一口
そして、たまには紅茶も悪くないわね、と言っていた

「じゃあ帰るわ、お邪魔したわね」
茶を飲み干して席を立つ
風見さんは終始ご機嫌斜めだったので俺としては居心地の悪い感じだった、博麗さんは気にしてない感じだったが
「里の連中にはちゃんと言っとくから、あの妖怪は恋煩いでそれどころじゃないって」
「え?それってどう―」
俺がどういう意味かと聞き返そうとすると
ガタッ
いすが倒れるかと思うほど勢いよく立ち上がり
「ッ!霊夢・・・今度覚えときなさい」
振り返らず、ひらひらと手を振って帰っていった
そして、なんとなく会話がなくて
「お、お茶入れてきますね!」
「あ、も、もう帰るから・・・その」
それじゃあ、と言って彼女は帰ろうと
「幽香さん!」
びくりと、彼女は身を固め、振り返った
「え、今・・・」
「また、また明日・・・」
彼女は驚いたように、しかし微笑んで
「ええ、また明日、ね」
そういうと彼女は歩き出して、俺はその後姿を、ずっと見送っていた


「毎度思うけど・・・こんな商売でよく生活できるわね」
「商売目的でやってるわけじゃありませんから」
「道楽?そんな余裕」
「幽香さんがきてくれるから・・・ここは年中無休です」
俺はせみの中の小さなテーブルを指差して、そう言った
すると彼女は
「あら、嬉しい事言ってくれるじゃない」
「まぁ、半分は幽香さんと会うためにしてるような店ですから」
「あら、半分なの?」
意地悪そうに、じろりとこちらをにらむ
「まぁ一応、そう言っとかないと」
「・・・私がここに来る理由はね」
彼女は俺に近いづいて、耳元で
「あなたに会うため」
なんて言ってくれちゃったり
真っ赤になった俺をからかう彼女
幸せすぎて、ここにきてよかったと思えるそれは
幻想郷に、風見幽香に、心からの感謝を

うpろだ1481

───────────────────────────────────────────────────────────

ーー某銀行

 神無月の外界ツアー、あのスキマ妖怪も、色々妙なことを考えるものだ。
 しかし、外の世界の花を見るまたとない機会でもあるため、折角だからと参加したのだが・・・・・・

「○○、一体どれだけ待てばいいのかしら?」
「そ、そういわれましても・・・・・・こればかりはどうしようも・・・・・・もうすぐでしょうから、辛抱してくださいよ、幽香さん」
「まったく、面倒な話ね」

 ○○・・・・・・私のペットのようなもので、虐めがいのある外来人だ。
 外の世界に詳しいものの同伴が条件だったため、案内として連れてきている。

「やれやれ、外の世界というのは、どこもこんなに待たされるものなのかしら?」
「多分、植物園はそこまで混んでは居ないと思いますが・・・・・・」
「そう、つまりあなたのせいで、私は無駄な時間を浪費しているというわけね?」
「い、いやその、持ち合わせが無いのはお互い様では・・・・・・」
「何か言った?」
「な・・・・・・なんでもありません」

 外の世界では、幻想郷の通貨は流通していないらしい。そこで、外の世界出身の○○の金を使おうと、
この銀行、というところに来たのだが・・・・・・行方不明扱いだったという○○が金を取り出すには、色々と手続きが必要らしい。
 私は気の長い方だが、花も無いこんな所で、待ち続けるのは嫌になる。
 

『○○様、8番の窓口まで・・・・・・』

「あ、終わったみたいです。いってきますね」
「はいはい、さっさと済ませなさい」

 ようやく、この退屈な空間ともおさらばだ、やっと目当ての植物園というところに行ける。
 なんでも、四季折々、世界各地の花があるという。外の世界でも、花を愛でる心が失われていないのは嬉しいことだ。
 私は○○を急かし、それに応えて○○が、椅子から立つと・・・・・・

『動くな! 金を出せ!』

 覆面をした二人組みの男が、突如店内で大声を上げた。手には何やら、黒い物を持っている。
 確か、拳銃とか言う物だ。以前に半妖の雑貨屋で見かけたことがある、外の世界の弾幕用道具で、高速の単発弾を撃つための道具だったか。

「きゃああー!」 「け、拳銃だ!!」 


「・・・・・・○○、何? あの下品な男達は」
「何って・・・・・・強盗ですよ! まさかこんな時に・・・・・・」
「強盗? あの白黒みたいなものかしらね」
「あれより、よっぽどたちが悪いです・・・・・・」
「まあ良いわ、○○、片付けてきなさい」
「む、無茶な・・・・・・! 相手は拳銃を持ってるんですよ!?」
「その拳銃とやらと私と、どっちが怖いのかしら? ただでさえ時間を食ってるのに、これ以上待たされるのは御免よ」
「~~~・・・・・・わ、わかりましたよ・・・・・・」

 そう言うと○○は、覆面のうち一人へ近づいていく。こうやって、○○を最初にけしかけるのが、最近のマイブームだ。
 大抵あっさりやられて、涙目で助けを求めてくるのだが、その表情が中々良い。
 そんなことを考えていると、○○が覆面の一人に飛び掛った。

「なんだてめえ!? 離せ!」

 上手く武器を持った手を押さえている、だがやはりまだまだだ、もう一人の存在に気が行ってない。
 あっさりもう一人に引き剥がされ、投げ飛ばされる。
 つかみ掛かられていたほうは、何やら叫びながら、手に持っていた物を○○に向けた。
 乾いた音が2,3度響き、○○の体が跳ねる。なるほど、確かに随分な高速弾だ。
 だがまあ、ここまでは予定調和、またいつものように、涙目で助けを求めてくるだろう。


「・・・・・・あら?」

 ○○は動かない。いつもピチュったときは、そろそろ起きてくるのだが・・・・・・

「へっ、馬鹿が、命を無駄にしやがって」

 命を? 何を言っているのだろう? 弾幕勝負で、死ぬことなどまずない。
 そう思い、○○に目を凝らす。その格好は先ほどまでと変わらないが、胸が赤く染まり、床には赤い血が・・・・・・?

「・・・・・・血?」

 何故血が出ている? 弾幕勝負では、服が破れるか、せいぜい擦り傷程度だ。あんな流血はありえない。
 あんなに血が出ては死んでしまう。そんなことになれば、幻想郷のバランスが・・・・・・


 幻想郷。


 そうだ、ここは幻想郷じゃない。ここは・・・・・・

「○○っ!!」

 叫ぶと同時に、二人組みへと駆ける。手にした日傘で、一人目を貫き、
 もう一人を振り向く間も与えず、葬り去る。物言わぬ肉塊になった二人には目もくれず、私は○○に駆け寄った。

「○○! ○○!」
「あ・・・・・・幽・・・香さん・・・・・・」

 抱き起こした手に、ぬるりとした生暖かい感触が広がる。それと引き換えるように、○○の顔からはどんどん血の気が失せていく。
 
「幽・・・香さん・・・・・・すいません・・・・・・最後まで・・・・・情けない・・・格好で・・・・・・」
「○○、しっかりなさい! あなたには、外の案内を命令したわよ!?」
「ごめんなさ・・・・・・も・・・案内・・・・・無理そうで・・・・・・外でくらい・・・・・・幽香さんの・・・・・・役にっ・・・・・・」
「駄目・・・・・・駄目よ・・・・・・許さないわよ、勝手に死ぬなんて・・・・・・」
「ごめん・・・・なさ・・・・・・」
「・・・・・・○○? ○○ー!」

 私はなんて愚かだったんだ、○○は人間なのに、○○は無茶だと言ったのに、ここは幻想郷ではないというのに。
 私が幻想郷の常識を持ち込んだせいで、○○が死んでしまう。何が妖怪最強だ、人間一人、守れやしないじゃないか。
 死にゆく○○に、私は何もしてやることが出来ない。何も・・・・・・

 いや、ある。私の花を操る程度の能力、これをフルに使えば・・・・・・



ーー幻想郷、○○の家

 あの後、私は自分の能力を使い、広範囲の植物の花を、無差別に咲かせた。時期も何もかも無視した開花に、
色ボケしたとは言え、流石にスキマ妖怪も気付き、ワープで様子を見に来たのだ。
 最初は怒り顔だったが、倒れた○○を見ると、すぐに永遠亭の医者を連れてきて、○○を治療してくれた。
 お陰で○○は助かったものの、流石に目立ちすぎたということで、私達の外界旅行は中止、
先に幻想郷へと戻されていた。だがそれでも構わない、○○が生きているだけで充分だ。

「あの、幽香さん・・・・・・」

 看病をしていると、布団の上で療養中の○○が話しかけてくる。
 もう傷は治っているらしいが、体力が落ちているため、念を入れて休ませているのだ。

「何かしら?」
「その、すいません、私のために、折角の外界旅行が・・・・・・」
「そうね。とても残念だわ」
「はい・・・・・・」

 ○○がしゅんとした顔を見せる。相変わらず、虐めがいのある相手だ。

「これはそう簡単には許せることじゃないわね、罰として・・・・・・」
「な、なんでしょう・・・・・・?」
「・・・・・・そうね、私の所有物になってもらうわ」
「しょ、所有物・・・・・・ですか・・・・・・?」
「そう、所有物なんだから、私の傍を許可無く離れては駄目、許可無く死ぬのも駄目、私以外の女と付き合うのも駄目、いいわね?」
「・・・・・・あの、それって・・・・・・もしやプロ」

 そこまで言いかけた○○を、肘鉄で黙らせる。

「~~~~~!!」
「あくまで、所有物宣言よ、わかった?」
「は、はひ・・・・・・」
「よろしい、それじゃあ・・・・・・今日からあなたは私の物よ?」
「ええ・・・・・・幽香さんになら」
「ふふ、じゃあ、私の物という印をつけないとね・・・・・・」

 そう言うと、○○ににじり寄り、馬乗りになって、口付けをする。ひとしきりお互いを味わい、そして


ーー博麗神社 宴会場

「はーい! ここから先は『そこまでよ!』に引っかかるから上映不可よー!」
「えー!」
「何だよー!」
「見せろー!」


 皆が帰ってきて、報告会とお土産の品評会を兼ねた宴会・・・・・・そこで、あろうことか、旅行中のカップルの、
イチャイチャっぷりを発表する映像が放映されていた。それは私と○○も例外ではなく・・・・・・

「いや~しかし、あのゆうかりんが涙目なんて、中々見れるもんじゃないな~」
「献身的な看病も、ポイント高いよね~」
「でもやっぱり、基本攻めみたいね。あの後どうなったことやら」
「おいおい、あんまり下世話な話をするんじゃないぞ」

 ・・・・・・後でこいつら全員虐め倒そう。そう心に誓ったのだった。

新ろだ71

───────────────────────────────────────────────────────────

向日葵畑に珍しく来客があった。
恐ろしい大妖怪がいると専らの評判のそこにやってきたのは、一人の少年。
まだ幼いとも言えるその少年の蛮勇に敬意を評し、風見幽香は彼の前に姿を現した。
「あなたが、風見幽香?」
「ええ」
人間離れした美貌……まあ実際人間ではないが、……に微笑を湛える幽香。
「僕は○○と言います。初めまして」
少年は礼儀正しく初対面の挨拶をしたあと、
「……そして、さようなら」
突然懐から刃物を取りだし斬りかかる。
「ずいぶんなご挨拶ね」
「……なっ!?」
しかし突き出された刃は空を切り、簡単に後ろを取られる。
「それで、用件はなにかしら?」
「……くっ!」
そして振り向くより先に、羽交い締めにされた。
妖怪の腕力は○○が逃げることを許さない。
「女性に刃を向けるなんて、冗談にしてもやりすぎだと思うわ」
「……ぐっ」
ギリギリと、強い力で○○の腕を引く幽香。
「くそっ、冗談でも何でもない! 僕はお前を殺しに来たんだ!」
その言葉を聞いて、幽香はニヤリと口の端を吊り上げる。
「あらあら、それは恐ろしい。危険の芽は早めに摘み取ってしまわないと……」
「…っ!」
……殺される!
ビクリと○○の体が震えた。
「そんなに震えて、怖いのかしら?」
「……こ、怖くなんてない!」
「……へえ」
体の向きをかえ、三白眼で○○を見つめると、幽香はクスクスと笑いだした。
「あなた、面白いわね」
しなやかな指が○○の首に伸ばされる。
「こ、殺すなら殺せ!」
「……ふふ」
片手で○○を押さえつつ、指を首筋に這わせる幽香。
指が首筋をなぞるたびに硬直する○○。
「口調は勇ましいけど、怖がっているのが見え見えよ」
「う、うるさい!」
「……このままさんざんにいたぶってあげようかしら。あなたが死にたくなるまで」
幽香の手が○○の頬に触れた。
固い唾を飲み込む○○。
「……楽しませて貰うわね」
口の端から覗いた赤い舌に戦慄する○○。
幽香の顔が近付いてくる。
離れようにも両頬を押さえ付けられ、身動きすらできない。
……食べられる!
恐怖に思わず目をつぶる○○。
「……ふふ、可愛いわね、あなた」
「……なっ、バカに…むっ!?」
言い返そうと開いた○○の口を、何かがふさぐ。
「む~っ!?」
目を開けるとそこに映ったのは、幽香の瞳。
口をふさいでいたのは、幽香の舌だった。
「……んっ! むぐっ!」
この行為の意味も知らない少年の口内を、幽香はさんざんに蹂躙する。
舌を吸い上げ、歯や頬の裏側まで自らの唾液をまぶし、舐め回す。
粘液が絡み合う音を響かせたかと思えば、舌を引きずり出し、強く吸い上げる。
息もつかせないとは、まさにこのことか。
○○の口回りはべとべとに汚され、顎からも唾液がしたたっている。
……どのくらいそうしていただろう。
口の中どころか、胃の腑まで幽香の唾液に染められ、ようやく○○は解放された。
「……はぁ、……はぁ」
腰が抜けたのか、荒い息とともにへたりこんでしまう○○。
「……何を、したんだ?」
「妖怪の呪いをかけてあげたの」
「……なっ!?」
驚きと恐怖の入り交じった声をあげる○○。
「わたしを退治しないと解けない、呪いをね」
「ううっ……」
「呪いが完全に回りきるまでに、私を倒せるといいわね。また会いましょう」
必死に立ち上がろうとする○○を尻目に、幽香は向日葵畑へと消えていった。
「……ふうっ」
幽香が去ってからしばらく、○○はようやく立ち上がることができた。
気持ちを落ち着けようとして、深く息を吸い目を閉じる。
「……くっ!?」
その瞬間、先程の出来事がフラッシュバックする。
ゾッとする程美しい瞳
何度も擦られた舌の感触。
耳に響く、口の中をねぶり回される音。
……体が熱い、頭がぼーっとしてくる。
……これが、呪いか?
「……くっ」
足が震える。
心臓が早鐘のようにのたうつ。
「……お、おのれ」
恐怖と屈辱に涙目になりながら、○○は叫んだ
「おのれ、風見幽香! 覚えてろーーーーー!」
向日葵畑に響き渡るその叫びが、幽香を愉しませているとも知らずに。
「……ふふ、次はどうやっていじめてあげようかしら」

うpろだ1505

───────────────────────────────────────────────────────────

 月も師走に入り、永遠亭の薬師が走り回っている今日この頃。
 最近の寒さですっかり風邪をひいてしまい、布団の住人になっている俺。

「……あーあ、優しい彼女が看病にでも来てくれないかねー」

 天井を見つめながらぼやく。
 まあ当然彼女とかいないんですがね。
 幻想郷に世間一般的なクリスマスが無いのはありがたい。
 性なる夜とか氏ねばいいのに。

「…………」

 ……自分で言ってて悲しくなってきたな。心なしか体調も悪化した気がする。
 病は気からとはこの事か。……不貞寝しよう。
 とかなんとか考えてたら

――こん、こん。

 控えめなノックの音が聞こえてきた。
 誰だ……?
 声を上げて誰か確認したい所だが、生憎そんな元気は無い。
 仕方なくのそのそと布団から這い出て、玄関へ向かう。
 ……結構しんどいな。この程度できつさを感じるとは、意外と俺の体調はやばいらしい。
 全身が鉛みたいに重く、更に起き上がることで身体の節々が軋むが、かといって居留守するのも悪いしなあ……。

――ガンガンガンガン!

 俺がちんたら玄関に向かっていると、さきほどから一転、凄まじいまでの威力のノックにドアが悲鳴を上げた。
 今にもぶち破らんばかりの勢いだ。短気すぎる。
 はいはい、そんなにしなくても今空けますよ……。
 激しい音に反応して痛み出した頭を意図的に無視しながら鍵を開ける。

――ガチャリ。

「遅いわよ! 一回目で出なさいよね。危うく玄関ごと消し飛ばす所だったわ」
「……幽香か」

 風見さん家の幽香さんでした。
 おお神よ。病床に喘ぐ俺に更なる試練を与えようというのですか……?

「ご足労の所悪いが帰ってくれ……」
「折角遊びに来てやったっていうのにそれはご挨拶じゃない? ……ってどうしたのよ○○。酷い顔じゃない」
「……」

 何の因果で顔あわせていきなり顔が悪いとか言われなきゃいかんのだ。泣くぞ。

「酷い顔で悪かったな……生憎と生まれつきだよ……」
「そう、そんな事どうでもいいから今すぐ私の前でそんな辛気臭い顔は止めなさい。見てて苛々してくるわ」
「病人に酷な事を仰る……」
「病人? ……あの○○がかかる病気って……まさか死の病!? ……そう、ならいっそ最期は私の手で!」

 悲壮な顔で勝手に納得してずずいと俺に詰め寄るシリアルキラー。いやもうほんと勘弁してください。
 それに“あの○○がかかる”って……お前人をなんだと思ってやがる。
 ていうかこんな馬鹿やってる余裕ないんだよ。いよいよ本気で辛いんだ。

「ただの風邪だから……。頼むから静かに休ませてくれ……」
「なんだ風邪……って風邪なら静かに寝てなきゃ駄目じゃない。ほらほら、歩き回ってたら良くなるのも良くならないわよ」
「…………」

 自分が来訪した事が原因なわけだが、そんな事億尾にも出さずに家に上がりこんで俺を布団に寝かしつける幽香。
 そうだな、お前はそういう奴だったよ……。

「で? 体調はどうなのよ。薬は飲んだ? お腹は空いてない?」
「いっぺんに聞くな……頭に響く」
「んもう、めんどくさいわね。で? 答えは?」
「……体調は最悪。薬は飲んでない。腹は減ってる」

 息も絶え絶えに答える。
 こんな事なら先に薬買っとけばよかった……。



 …………。



 ぺちぺちと顔を叩かれた。
 その刺激に目を開ければ、そこにいたのはウェーブのかかった緑髪の女性。 

「……すまん。いつの間にか寝ちまってた」
「気にしなくていいわよ。薬貰ってきたけど、食後に飲むように言われたからちょっと台所借りたわよ」

 薬?
 貰ってきた?
 台所?
 料理?
 誰が?

「……え? ギャグ?」
「何馬鹿な事言ってんのよ。……おかゆ、食べれる? 起こす前に少し冷ましたから熱くはないと思うわ」
「……」

 不安気に蓮華を俺に差し出す幽香。向けられるままに口にしたが、生憎味は分からなかった。
 どうしたんだよお前、という言葉を飲み込みこれがどういう事か理解する。

 ……ああそうか、これは夢なのか。

 夢じゃなかったらあの幽香が甲斐甲斐しく俺の世話なんか焼いてくれる筈がない。
 むしろ嬉々として弱った俺を虐める位はやってくれるだろう。
 そっか夢か。悪い気はしないな。いやはっきり言って嬉しい。

「……幽香」
「どうしたの? やっぱり食べれない? ……すりりんごとかの方が良かったかしら」
「寒い。……一緒に布団入って暖めてくれ」
「んなっ!?」

 夢なら何言っても大丈夫だろ。

「で、出来るわけないでしょ!」
「なんだよケチケチするなよ。最強の妖怪らしく、ドバーっといこうぜどばーっと」
「ちょ、○○、どうしたの?」

 幽香が何か言ってるが知らない。
 喉が、頭が焼けるように痛むが知らない。
 だってこれは夢なんだろ?

――熱が思考を犯す。

「はは、はははははははっ! 楽しいなあおい! ういばっちこーい!」
「きゃっ!?」

 いきなりハイになった俺を不信に思い近づいてきた幽香を思いっきり抱きしめ、布団に無理矢理引きずり込む。
 可愛らしい悲鳴は無視。本来なら即嬲り殺しにされそうな行為だが関係ない。ほらだって夢だし。
 女性らしい柔らかい感触と温かさ、そして向日葵とお日様のいい匂いが俺を包みこみ、母に抱かれた幼き過去を想起させる。
 そしてそこが限界。
 熱暴走でいい感じにイカレた頭と、それに伴いかつてないテンション陥った俺の意識はいよいよ限界を突破し、即座に闇に落ちた。



新ろだ184

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スーパー射命丸ターイム!
射命丸文が幻想郷で噂のカップルに粘着的にそれでいてミーハー的にインタビューしてきました。

・ゆうかりんサイド
・○○サイド
・アリスさんサイド
・オルレアンサイド
・ゆかりんサイド

というわけでインタビューしてきます。








・ゆうかりんサイド
「特集!花を操る向日葵妖怪の結婚生活を密着粘着取材!」

――あややや。どうもどうも。えー、本日はお忙しい中時間を割いていただいてありがとうございます。
あら、私は別にいいのよ?○○と私の話でしょ?
そんなのいくらでもしてあげられるわ。・・・クッキー食べる?
――頂きます。・・・あや、これ美味しいですね。
でしょう?私の旦那の手作りなの。向日葵の種入りクッキー。
いい旦那でしょう?
うふふ、あげないわよ?

――お名前を。
幻想郷最強の妖怪、風見幽香よ。
――ご趣味などを。
大量虐殺とお花の世話と・・・お風呂かしらね?
――弱点とかありませんか?
無いわ。あるとしたら○○が弱点よ。

――ご主人のことは普段何とお呼びで?
「あなた」、かしらね。
○○自身もそう呼ばれるのがイイみたいだからそう呼んでるわ。
外では名前でも呼ぶわ。○○、ってね。

――えーと、普段の生活の様子などを教えて欲しいんですが
ええ、そうね。まず朝からかしら?
朝は彼が起こしてくれるのよ。けっこう早めの時間にね。
やさしく身体をゆすって起こしてくれるの。私の名前を呼びながらね。
それでも起きない「フリ」とかをすると困った顔で固まっちゃうのよ。かわいいでしょう?ね?
寝ぼけた「フリ」で朝から抱きついてやったりすると朝から面白いものが見れるのよ?
でも時々あっちもお目覚めのキスとかしてくるからおあいこよね。
――朝からずいぶんとお熱いんですね。
愛に時間は関係ないのよ。

起きると朝食が用意してあるの。朝は毎日オムレツよ。私がそうさせてるの。
あとは牛乳かしら。あとは私にだけ果物とか。彼は果物苦手なの。
まあ、そんなとこかしら。毎朝そんなものよね。
ちなみにケチャップはデルモンテのじゃないと使わないことにしてるの。カゴメケチャップなんて論外だわ。
で、ね、彼に毎朝作らせてると、やっぱり上達するものよね、彼の料理、とてもおいしいのよ。
今度食べにこない?
――ははは。

食べ終わったら着替えかしら。・・・流石に着替えは旦那には手伝わせてないわ。
でも着替えは○○が用意してくれるの。私が起きる前に。いいでしょう?
貴方が媚びを売るために開口一番に褒めたこの服もあの人のセンスなのよ?
――あややや、本当ですか。
今日の青いのもカワイイわよね?あの人ったらいい趣味してるわ、ねえ?
うふふ。
で、その後は顔を洗ったり歯を磨いたり・・・ここらへんは別にいい?そうね。
お洗濯物を干すのは二人一緒にやるわ。私がカゴから出して、旦那がそれをかけるの。
他愛ないおしゃべりをしながら、ね。
あの人ったらどんな魔法を使ってるのかしら?私を暇にさせないための話をいくつでも持ってるのよ?
――仲むつまじい新婚夫婦、といったカンジですね。
カンジ、じゃなくて「仲むつまじい新婚夫婦」なのよ?
結婚してから200年は経ってるけどね。

お洗濯が終わったら、愛する旦那様の見送りよ。
――ご主人は仕事をなさってるんですか?
そうよ。人里の花屋で働いてると言ってたわ。私に合わせてくれたのかしら?
玄関を出る前に軽くハグして、で、私は手を振るのよ。
私だって「いい奥さん」だもの、旦那のネクタイくらい直すわ。
わざと旦那の背広に糸クズとかつけておいて、わざとらしく取ってあげたりとかね。
――定番の「行って来ますのキス」とかはしないんですか?(ニヤニヤ)
・・・してもいいんだけど、ねぇ?
・・・してると一回じゃ満足できなくなっちゃうじゃない?
もっとあの人が欲しくなるじゃない?
そしたらあの人がお仕事に行けないじゃない。だからできないのよ。
――・・・はあ。

本当は人里まで飛んで送っていってもいいんだけどね、私怖がられてるから行けないのよ。妖怪だし?
――そういえば、これは私どもの調べですけど、結婚なさってからずいぶん人間に対して友好的になりましたね。
別に私はそんなつもりはないんだけどね、○○と一緒にいるとつい上機嫌になっちゃうじゃない?
それだけよ。そういうことよ?
稗田の子も私の評価を見直すって言ってたわね。これいいことなのかしら?
○○が喜んでくれるのなら、これもいいことなのでしょうね。

――で、その後は何をしてらっしゃるのですか?
その後?普通よ普通。妖怪としての普通よ。
えーとね、あんまり言いたくないんだけど、お昼寝・・・とか?
・・・ちょっと!あーもう!だから言いたくなかったのよ!私がお昼寝したいって言ってるんだからいいでしょ!
もう!

――お昼は旦那さんがいらっしゃらないのでお一人でしょうか。
そうね。お昼は自分で作って食べるわ。
私だってけっこう作れるわよ?女の子だもの。
彼に教わった料理がたくさんあるの。お好み焼きだとか、野菜炒めだとか、またオムレツ作ったりとかね。
――・・・ぜんぶ「混ぜて焼くだけ」じゃないですか。本当は苦手なんですか?料理。
何?「向日葵畑の肥料にしてくださいお願いします」?
もう一度言ってごらんなさい?痛くしないであげるから。
――ごめんなさい命だけは。

お昼を過ぎてからは基本的に適当よね。
花の世話をしたり、神社に行ったり、あとは適当な妖精でも見つけて殺してみたり、ね。
あ、お洗濯は取り込むわよ。私が。
ねえ知ってる?男の人のシャツとかを取り込む時とかは注意しないといけないのよ?
少しでも顔に近づけると○○のにおいがふわーってしてきて
もうそのままくらくら、っと。ね?ウフフ。
――あなたも変わりましたねぇ

あとは、時々アリスが遊びに来るわ。
――アリスさん、ですか?
そう。あの人形の子ね。私、昔からの知り合いで仲がいいのよ。あの子の母親とだって面識あるわ。
つまりお友達なの。あの子が本気を出せば実力だって同じくらいだし。一緒に居て楽しいのよ。
あの子が来るときは大抵人形を二、三体はつれてくるわね。名前はわかんないけど・・・
ちょこまか動いてうざったい時もあるけどお花を好いてくれてるの。悪い子じゃないわ。
あと、アリスが来たときは毎回紅茶なんだけど、紅茶は毎回アリスに入れさせるの。
どうしてだと思う?
――どうしてですか?
アリスの方が紅茶を入れるのが上手いからよ。
悔しいけれどそういうところは負けてるのよね。女として。

適当におしゃべりしたり弾幕で遊んだりしてるとあの人が帰ってくるわ。
アリスが来てない時は真っ先に玄関まで行って抱きついてやりたいんだけどそうも行かないわ。
威厳?違うわ・・・カッコつけ、よ。
アリスは旦那とも仲良くしてくれるし、三人でおしゃべりね。
あと来客がある時はあの人がお菓子を作ってくれたりするわね。
――お菓子も作れるんですか。
ええ。あの人、けっこう料理とか好きみたいで。それでけっこう手が広くて。
私の旦那に相応しいわよね?ウフフ。
特においしいのがアレね、クリームビュリュレ?ん?
・・・クリームブルリェ?
クリーム・・・クリームb
――「クリームブリュレ」、ですか?
・・・こほん。
特に洋菓子がおいしいの。
洋菓子よ!わかった?今のところ新聞に載せたら山ごと消すわよ。
洋・菓・子・よ!

適当な時間にアリスが帰ったあとは晩御飯かしら。晩御飯は一緒に作るのよ?
その日によってメニューはまちまちだけど、昨日は茶碗蒸しだったわ。
――洋食かと思っていました。和食ですか。(というか、また卵料理・・・)
和食でも洋食でもなんでもイケるわ。あの人、最近は紅魔館の門番に教えられた外界の料理に凝ってるとも言ってたわ。
で、これがおいしいのよ。ねえ料理が得意な男性って素晴らしいと思わない?ね?
でもそんな男性の中でも一番素晴らしいのは私の旦那だって胸を張って言えるわ。
それに、愛は最高の調味料、って言うじゃない?
ウフフ。

あとはお片付けして、その後は一緒にお風呂に入るわ。
――ほう。お風呂お風呂・・・
・・・何よその「予想が的中したからこんなにニヤニヤしてます」みたいな顔は。咲かすわよ?
もう「お風呂は一緒に入るモノ」っていう構図ができちゃってるから変えられないのよ。
彼にね、バスソルトだのシャンプーだのは全部用意させるの。いい香りがする奴ね。
それでお湯と、あの人の肌の暖かさを感じるひと時。
幸せ、ね。
――・・・
あら、あなたの顔が「正直羨ましくて笑ってられません」っていう微妙な顔に変わったわね。
かわいいわね。
バスタブの中では○○が私を抱きかかえるような形で入るのよ。
私が背中を預ける、とも言えるかしら。
この大妖怪・風見幽香が背中を預けるなんて後にも先にも○○だけよ。
身体を洗う時は私が最初に○○の背中を流してあげるのよ。愛を込めて。
その後私の髪を洗わせたりするわ。女の子の髪を弄らせる、って愛こその行動よね。
ねえ、羨ましいでしょ?顔がどんどん曇ってるわよ?
ウフフ・・・クッキーでも食べなさいな。おいしいわよ?

あとは晩酌をしたり、しなかったり。
あらお酒の話になったら目の色が変わったわね。あなた現金ね。
――いやあ、それほどでも。
でも私、お酒弱いのよ。上等のワインとかを吸血鬼の子に貰ったときとかも一杯頂いてからは覚えてないわ。
お酒を飲んだ次の夜はどことなくあの人が疲れてるように見えるの。だからあんまり飲まない、わね。
そもそも好きじゃないというか・・・
あ、今のも新聞に書くことは許さないわ。書いたら貴方の上司やら部下やらがみんなきれいなお花になるわよ?
・・・にしても、あなたもけっこう聞き出し上手ね。
――勝手に言ってもらえてるので助かってるんですけどね

――さて、その後ですが・・・
ん・・・その後も聞くの?
そうね・・・え?寝巻き?下着にシャツよ。
彼はけっこう子供っぽいのを着てるわ。と言っても私が結婚200周年記念に最近贈ったものだけど。
あの人が気に入ってくれてるから、いいのよ。
その後は・・・ねぇ?
手?繋がないわよ?
その変わりお互いに抱きしめあうの。
冬でも寒くないわよ?あの人の方が少し背が高いから、私が胸に顔をうずめる形になって・・・
よく眠れるの。愛する人の温かさ、いいわよ。

え?そういうことじゃないって・・・あー。
そもそもそんなこと新聞に載せられないでしょう。落ち着きなさいな。
でもね、いい事教えてあげる。あの人ふだんはおとなしいけど、ベッドの上じゃ一変するのよ?
夜にはケダモノになっちゃうの。オスの顔つきになるのよ?
それで私も身を任せて・・・ね?
それにあの人ってけっこう変態的なプレイの方が興奮するのよ?たとえば・・・
こう、胸を寄せてぐりんぐr
――あや、あややややややややや
うふふ。
あなたも早くイイ人を見つけなさい。きっとイイ人が現れるから。
ね?楽しみでしょう?
私は実際に今の生活が楽しいし、とても幸せ。
羨ましい?
でしょう?

――ご協力ありがとうございました。
ええ、お粗末様でした・・・かな?ふふ。
――いい旦那さんを捕まえたんですね。
あら、食虫植物みたいな事言わないでくれる?
私と○○は惹かれあうべくして惹かれあったのよ。
運命かしら?吸血鬼の子の能力かしらね。
でも運命と呼ぶにはちょっと残酷かもしれないわ。
○○のことしか考えられなくなっちゃうなんて、一種の呪いよね。
・・・あら、結構時間経ってるわね。こんな時間・・・
帰っちゃうのかしら?
――はい。後日またご主人にお話をお伺いしようと・・・
あら、そう。いいんじゃない?
取材じゃなくても遊びに来てもいいのよ?今度いらっしゃいな。
私と○○のイチャつきっぷりを見せ付けてあげるわ。
――・・・言ってて恥ずかしくないんですか
・・・ちょっと。

――最後に。
あら?何かしら?
――「ご主人をどう思ってますか?」
あら・・・
ん。
えー・・・
「私、風見幽香は、○○を誰よりも愛しています」
・・・こんなのでいいかしら?いいわよね?
これが本心だもの。何も飾らない、私の本心。
さてこれでお開きね。気をつけて帰りなさいね。
夜は怖いわよ?独り身の女の子には・・・ね。
またいつでもいらっしゃい。待ってるわ。
――はい。ああ、あと、いいですか。
何?
――・・・クッキー、もらっていいですか。
ああ、はい。
どうぞ。
おいしいわよね、コレ。
またね。











・○○サイド
「続・特集!本紙初登場の向日葵妖怪の夫を徹底取材!」

――本日はお忙しい中時間を割いていただき・・・
幽香から聞いています。なんでも、貴方の新聞のおかげで周りが幽香を見る目が変わったとか。
新聞の効果ってすごいですね。大変なお仕事をされてるんですねー。
――あやや、これはどうもどうも。
さて、早速俺にも何か聞いたりしちゃうのかな?
――それでは早速お願いします・・・

――お名前を。
幻想郷最強の妖怪の夫○○です。
――ご趣味は。
料理かな?お菓子作ったりとか
――弱点などあったら教えてください。
・・・性的な意味で?
――もう結構です。

――奥様のことは、なんとお呼びで?
ん・・・「幽香」かな?
でも昔は「ゆうかりん」って呼んでたんだけどね。
まあでもやっぱり「幽香」かな?
――かわいい呼び方ですねぇ、「ゆうかりん」って。
そんなこと言ってると嫁に怒られちゃうよ。
「俺以外の人がそう呼ぶのは許さない」んだって。
――難しい人ですね。
人じゃなくて妖怪です。

――普段の生活の様子などを教えていただければ。
ああ、そうだね。まずは朝からだよね。
幽香より少し早く起きて、起こさないようにそっとベッドから抜ける。
毎晩幽香に抱きつかれてるからね。でも不思議と寝苦しくないんだ。
朝ご飯は毎日オムレツなんだ。幽香から聞いたかな?
カーテンを開けて、ご飯を作ったら幽香を起こす、んだけど・・・
正直、文ちゃんとか他の人って、みんな幽香の事「怖い」って思ってるでしょ?
――はい。
そうでもないんだな、これが。
起こしに行くと子猫みたいな寝顔ですぅすぅ眠ってるんだよ。
自分が言うのも何だけどすごくかわいいの。なんかね。
でもずっと幽香の顔を見てニマニマもしてられないからゆすって起こす。
・・・ゆするだけだよ?何か幽香が変な事言ったかな?んー・・・

いただきますの挨拶は二人一緒だよ。その後は適当に喋りながら食べるね。
幻想郷は広しと言えども、まさか大妖怪風見幽香が楽しそうにオムレツに俺と幽香の名前をケチャップで描いて、
その上二人の名前の間にハートマークを描くのを見れるのなんて俺くらいなんだろうなぁ。
俺もいつのまにか随分すごい人になってしまったのかもしれない。
・・・これを写真に取ったらいろんな意味でスクープになるんじゃないかな?
――あの、隠しカメラの位置についてお話しませんか?
だめです。
なんで?って・・・こんなかわいい幽香は俺が独り占めしたいからね。ごめんね。
幽香は俺のものなんだよ。へへ。
――(似たもの夫婦・・・)

あとは洗濯とかした後、仕事に行きます。人里の。
聞いた?人里の花屋でアルバイトさせてもらってるんだ。
最初は困ったよ。隠してるつもりはないけど幽香の夫だってバレるとすごいオーバーリアクションをとられるからね。
「えぇ!?あの大妖怪風見幽香の・・・旦那ぁぁぁぁぁ!?」ってね。みんなこんなかんじ。幽香って結構有名だよね。
俺も妖怪呼ばわりされたりもするけど、そういうの全部弁解して回るんだよ。
辛い、とは思わないね。
幽香の夫なら当然じゃない?ね。
花屋のご主人と奥さんとがいて、俺はもっぱら雑務ですかね。
意外と花屋って力仕事なんですよー。
――と言っても、「人間にとって」力仕事なんですよね。私達妖怪なんで。
・・・妖怪を相手にするのは骨が折れます色々と。

花屋を選んだのは、単純に幽香が喜んでくれるかな?って理由だったけど
幽香と過ごしたり、花屋で花に触れたりしてる間に、自分の力に気づいたんだ。
自分の能力に、ね。
――あやや、本当ですか?初めて聞きました!
俺も初めて言いました。なんだか言うのも恥ずかしくてねー。
えっとね、それで俺の能力なんだけど、単純な事でね、
「花を元気にする程度の能力」なんだ。
ただ、それだけ。
俺が世話したりすると、なんだかお花が元気になったりする。だけ。
たとえばここに折れて見るからに元気の無い向日葵があったとするじゃない?
そういうのに俺が手をかざすと、なんだかツヤが戻ったり折れた所がふさがったり。
ある時いつか気づいたんだ。ん、いや気づかされたんだっけ?紫さんあたりに。
もしかしたら紫さんに何か弄られたかも。そういう人だから・・・
でもこの能力のすごいところはここからで、ね、単純に考えて、
幽香の能力とすごく相性がいい。トマトのサラダにモッツァレラチーズみたいな。わかりづらい?
やっぱり幽香の夫としてあるべきところに落ち着いたんだろうなって思うよ。
だから最近、幽香性格変わったでしょ?
いいことです。いいこと。
――これはスクープになりますかね?
微妙です。

花屋の奥さんがすごくいい人でね。綺麗だし優しいんだ。
時々俺に煮物とかくれたりするの。いい人なんだ。
でも浮気する気は全く無いんだ。なんでだと思う?
――なんでですか?
俺はそれよりも素晴らしい人の旦那だからね。
浮気のし様が無いってのも罪なモンだよねぇ。
――(やっぱり似たもの夫婦・・・)

――お仕事が終わったら?
そのまま家に帰るね。
でも変える途中に白黒に連れ去られたりいきなり足元にスキマが開いたり
自分の周りだけ音が消えたりするから正直帰るのも大変なんだ。
無事帰れても扉を開けると幽香が飛びついてきたりするしね。
俺も結構苦労してるんです。

――アリスさんとはどんな関係で?
友達です。(キリッ)
まあ友達なんです。嫁の友達ってことは俺も友達って言っていいのよね?
よくうちに遊びに来てくれてるのよ。嫌なんてことは全く無いね。
俺が仕事してる時によく幽香の暇つぶしに付き合ってくれてるみたいだから有難いです。
それにほら、彼女、キレイだからね?
考えてもみなさい、仕事から帰ったら美女が二人待ってるんだぜ?
花だろ?俺、花だろ?

人形で言うとオルレアンちゃんが好きかな。何がって名前の響きがね。
っていうのをいつだかアリスさんの前で言ったらその日以降ずっとオルレアンちゃんをつれてくるようになったね。
そのせいでオルレアンちゃんも俺に懐いてくれたみたいで。
このクッキーをよく食べてちょこんと座ってるよ。
――これですか?
それです。よかったらお一つどうぞ。
――頂きます。

あとはご飯とか、かな?
幽香に夕食は手伝ってもらうんだ。お皿を取ってもらったり、調味料を取ってもらったり。
思いつかない時に献立を決めてもらったりもするな。
――直接料理にはかかわらないんですか?
・・・何か言うと幽香がすぐ飛んできそうだから聞かないでね。
――はい。

――あの、お風呂についてなんですけど・・・
恥ずかしいからパスしちゃダメですか?
――ダメです。
・・・えー、と、お風呂は二人で入ります。
二人で軽く身体を流してから、かな。
俺が入ってから、その間のスペースに幽香が入るみたいな・・・
――他には!何か無いんですか!バスソルトとか!
何この誘導尋問怖いです僕もう寝ていいかしら。
あ、好きな温泉の元は「旅の宿」シリーズです。
・・・何その「はあ空気読めない人を相手にするのは疲れるわー」みたいな顔・・・

――幽香さんはお酒に弱いそうですが。
そうなんです。私の妻はお酒に弱いんです。
少しワインとか飲んだだけでくたーってなっちゃうんですよ。ホント。
俺が飲む時には付き合ってもらうけどなんだか申し訳無い気もするよね?
それに酔うと抱きつき癖が出るんです。幽香。
向かい合って飲んでたはずなのに気づいたら横から抱きつかれてたり。
お姫様だっこをせがまれたり・・・とかね。
――ははあ、カワイイですねえ。
カワイイですよ。

――さて残るは一つになりましたが。
ああ、睡眠ですかね?
――微妙に違うと言ってもかまいませんか?
えー・・・

えっとねえ、じゃあコレだけ言うけど
いつもは強気な幽香だけど、ベッドの上ではおとなしいんだよ?
おとなしいというか可愛らしいというか、見た目どおりの年頃の女の子みたい。
だから俺もちょっとばかり張り切っちゃって・・・
――あややや。

――ご協力ありがとうございます。お疲れ様でした。
はい。お疲れ様でした。色々疲れました。
何か飲む?といってもトマトジュースくらいしかなかった。ごめんね。
これも記事になったりするのかな?
――ええ、明日の新聞をお届けします。待っててくださいね。
なんだか恥ずかしいねコレ。明日は起きなくていいか。
ははは
――最後の質問いいですか?
何でしょう。
――「奥様をどう思ってますか?」
定番の質問ですね。来るとは思ってました。
いつでも答えは変わりませんけどね。
えーと、そうだな、どうしようか、
せっかくだから大声で言ってみようか

幽香ー!!!俺だー!!!!愛してるぞー!!!!!!!!!!!!1

ふう。
以上!
――ありがとうございました。
お粗末!







・アリスさんサイド
「ここで読者のAさん(魔法の森在住・年齢不詳)に感想をお聞きしました!」

――○○さんについての質問があるんですが。
「○○と幽香について」の間違いでしょう?
これ私に答える義務とかあるのかしら。帰ってくれない?

――正直な話をお伺いします。○○さんの事、好きですよね?
・・・
好きだ、って言っても何も変わらないでしょう?
私と幽香が仲がいいってのは知ってるわよね?
もうね、本当の事を言うと、最初に○○を好きになったのは私なのよ。
どことなく気さくで親しみやすい彼に最初に惹かれたのは、私なの。
私も柄にも無くアピールとかしたわ。もちろん告白だって。幽香には悟られないようにね。
幽香を出し抜いて、って言ってもいいわね。
○○を取られるのが怖かったもの。言わなかったわ。
でも○○は私の想いを断ったの。彼なりの言葉で。
そして「幽香が好きなんだ」なんて言い出すんだもの。どうしようかと思ったわ。
私にそんなこと言って何がしたいのかわからなかったもの。
――色々、あったんですね。
まあね。ま、その後よね。幽香と○○が恋仲になったのは。
だからって私は引くこともできずに、「友達」って位置で自分を保っているのよ。
私はこれで満足してるけど・・・私って甘いわよね。
まだ○○が好き。
それでもどっちつかずの位置に甘んじて・・・私ったら、何がしたいのかしら。
でも不思議ね。○○と幽香の笑顔を見てると、本当にこの二人はお似合いだなって感じるの。
似たもの夫婦だなって思ったりしなかった?そう。やっぱり。
私の仲のいい人と、私が好きになった人が幸せなんだからそれでいいじゃないか、って思ったりもするの。
・・・甘いわよね。何言ってるんだか。・・・本当に甘いわ。
○○の良く作ってくれるクリームブリュレ並みに甘いわ。
――あやや、言えましたね。
え?何?




・オルレアンさんサイド
「怪奇!喋る人形の謎!」

――(アリスさんに「せっかくだからオルレアンにも何か聞いてみたら?」って言われたけど)
――(どうすればいいのかしら・・・)
オルレアーン
――あ、ああ、おるれあーん。
オルレアーン




・ゆかりんサイド
「その時!特派員を襲う謎の亀裂!特派員の運命やいかに!」

――今日は取材の予定は無いんですが。
あら、そんなことは百も承知よ。
そんなことより知ってる?○○って利き手は右だけど自分を慰める時は左手使うの。
と言っても幽香が毎晩求めるから慰める機会なんてあんまりないみたいだけどね。
あら、これを「右投げ左打ち」って言うのはどうかしら。左手はバットに、て意味で。
――あのー、そろそろ帰っていいですか。
ダ・メ・よ。きっと幽香も知らないわよねこんな事。
ねえコレスクープにならないかしら?
――なりません。



新ろだ258

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 黄色いじゅうたんが広がる太陽の畑。

 ここは○○の恋人である風見幽香、自慢の向日葵畑だ。

 ○○が顔を出すと、すぐに幽香が笑顔で迎えにくる。

「ごきげんよう○○、今日もいい天気ね」

「やぁ幽香。今日はコレを持ってきたんだ」

 そういって○○は背中に引っ掛けていた麦藁帽子を取り出した。

 以前○○が被っていた麦藁帽子を幽香が「私もおそろいの帽子がほしいわ」と言っていたのでわざわざ仕入れてきたのだ。

「あら…嬉しいわね」

 ○○の前ではいつも笑顔が絶えない幽香だが、今日は一層笑顔に輝きが増した。

 麦藁帽子を受け取ると日傘をパタリと閉じ、帽子を被る。

「どう?○○、似合うかしら?」

 幽香はその場でクルッとターンをする。その拍子にスカートがふわりと風に乗って広がるしぐさがとても可愛らしい。

「うん、似合っていて、とても可愛いよ」

「ふふふ、これってあれかしら?ペアルックね?うん」

 少し頬が赤くなりつつも、太陽の笑顔を○○に向ける乙女がそこにはいた。




 風見幽香、○○の恋人である。

 アルティメットサディスティッククリーチャーだの幻想郷一のジャイアニズムだの呼ばれているが、○○の前ではこんなものである。

 恐ろしきは恋する乙女という奴だろう。

 今では自他ともに認める恋人同士という事になっているが、そこに到るまでの経過には沢山の山あり谷ありがあったが、そんな些細なことは誰も聞きたいとは思わないだろう。

 しかしあえて例をあげるとしたら、宴会の時に○○がぽろりと零した「幽香がすきなんだ」発言に沸き立つ群衆。

 野次馬根性むき出しで幽香に振り返ると真っ赤なりんごがそこにあり、「私も…○○のことが…」なんて。

 それを見たどっかの加齢s(スキマ送りになりました)などは冬でもないのに泡吹いてぶっ倒れ、三日三晩うなされたとかどうとか。

 それほどありえない光景だったらしいが蛇足である。

 今は○○と幽香のウザイほどラブラブな空気が少々向日葵に悪影響がありそうなくらいである。




 さて、そんな砂糖生産工場は一時停止して○○について少し語ろう。

 といっても中二病な能力があるとか、白髪でオッドアイとかいうフザケタ設定はない。

 もちろん名前もごくありふれた名前だ、決して普通の日本人にはありえない様な、難しい漢字の名前など持ってない。

 幻想郷に迷い込んで、そのまま住み着いた普通の外来人。

 外では少々田舎住まいで畑仕事を手伝っていただけの学生。

 しかし趣味の野菜作りが自然と仕事となり、安定した収入、豊かな食生活が望めた。

 外の知識を活用した土いじりで美味しい野菜は里でも評判になり、その経過で幽香と知り合いになった。

 草木を育てれば自然と花も咲く。

 花が咲けば幽香が見にくる事もある。

 会えば自然と会話をする事もあり、そんな交流から収穫された野菜を幽香に譲ってあげる事もある。

 そしてお礼として幽香がお弁当を作ってくるという、他の面々が見たらあごが外れるほど口を開けて仰天する様な場面もあった。

 それはきっと二人が惹かれあうのは当然の結果という事だったのだ。


 いつしか○○が畑仕事をしていると幽香がそれを教わり、たどたどしい手つきなれど手伝うという流れができていた。

「畑仕事をするなら軍手をしないと」

 素手で芋などを持つのは幽香が平気でも、見ている○○が心配なのだ。

「こーりんの所から長靴を貰ってきたよ、多分幽香の足のサイズと同じだと思う」

 最近になって太陽の畑の近くに田んぼの開墾をした、そして幽香も田植えの手伝いを買って出たが、靴が無く遠慮したのだ。

 私も手伝いたいと少し拗ねる幽香のために長靴を購入した。


 そして月日がたち、気が付けば幽香のいでたちは麦藁帽子、日傘の代わりに鍬を持ち、軍手をはめ、長靴を履き、誰から見ても<のうかりん>であった。

 しかし、そこには汗が輝きを放ち、常に太陽の笑顔が浮かんでいた。

 ○○と出会う前の幽香と比較するとかなりの変貌を遂げていたが、愛する○○と寄り添うその姿はむしろ美しくなったと人は言う。



 ただし、一昔前の幽香を知る者は、その異様な光景を見るとひきつけを起こすほど驚愕するらしい。特に虫の王とか。




「今年も豊作ね!」

「うん、この野菜は俺達二人の愛の結晶だからね、きっと今年も最高に美味しい野菜だよ」

「腕を振るって愛情一杯の料理作るわ」

「ありがとう幽香。愛してるよ」

 そして近づく二人の影。

 それを見ていた新聞記者は今日も痙攣しながら砂糖を吐いていた。

 



















------------------------------------------------------

うん、ごめん。リアルのうかりんを書きたかったんだ。

ただそれだけなんだ。

でも幽香はきっと恋したら、とても素直でちょっぴり従順な所があると思ったんだ。

可愛いよね、ゆうかりん。 

>>新ろだ395

───────────────────────────────────────────────────────────

○○は―――気付いてしまった。
彼女を、幽香を愛せない事に。

愛せないというのは、不可能という意味ではない。
愛してはいけないのだ。
ここ最近幽香と親しく、恋人のように一緒にいる。
手を繋いだり寄り添ったり、とだ。
幽香に告白しようかとも思った。
そしてその後の二人の築く家庭をも想像した。
そこには問題があった。
幽香と○○は寿命が違いすぎた。
○○は幽香に人間になってほしいとは特に思っていない。見てみたい気もするが。
自分が妖怪になるならまだしも。
吸血鬼?いや、それだと一緒に日の下に出歩けない。
魔女?いや、普通魔術を極められるのに何年かかるだろうか。
残るは蓬莱の薬…いや、不老不死になりたいわけではない。
だから、このまま想いを告げずにいるのが二人にとっての幸せだと、気付いてしまったのだ。
でも、もし妖怪になる方法があったとしたら…幽香は…



幽香は―――気付いていた。
自分が、○○を愛してしまった事に。

○○が好きだ、言葉に出来ないほど好きだ。
彼になら何を捧げてもいいと思った。
しかし、一つ問題があった。
そう、寿命が違いすぎるのだ。
幽香は○○に妖怪になってほしいとは思っていない。ありのままの今の○○が好きだからだ。
自分が人間になるならまだしも。
最近、というよりも○○に恋心を抱いてから、人間を食べた事は無い。
怖いのだ、人を食す事が。
妖怪から人間になる方法なんてあるのだろうか。少なくとも今までに聞いた事はない。
あの大魔女なら何か知っているかもしれない、今度聞いてみよう。
しかし人間になってしまったら不便な事が色々とあるのではないだろうか。
今まで自分に恨みを持っていた者が、それを機に攻め込んだりしてくるだろうか。
負ける気はしない。しかし、○○を巻き込みたくはない。
やはり人間を愛するなんてダメなのだ、愛してはいけないのだ。自分の心に自制をかけねば。
でも、もし人間になる方法があったとしたら…○○は…


「止めるだろうか…」
「止めるのかしらね…」


幻想郷に、二人の溜め息。好きになった方の負け。お互い負けで引き分け。
二人の歯痒い関係は、もうしばらく続くようだ。

>>新ろだ423

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