15話後編
戦いの舞台は、駐車場から奥の方の空き地に移された。
これから開発される予定でもあるのだろう。丸太や鉄筋などの建設資材が置かれ、これから取り壊される予定であろうブロック塀や、
物置に使われていたのか、小さな小屋がある。
そこでシンは怒涛のような連続攻撃を繰り出す。
拳、突き、蹴り。青い装甲に包まれた鋭い一撃が、次々と襲い掛かる。
すさまじい攻撃の嵐に反撃すらできない、ように思われた。
これだけ攻撃しても、目立ったダメージを与えられない。全ての攻撃は巧みな体裁きと鉄壁の防御に阻まれ、ボディには一発も
届いていない。
むしろ、消耗しているのはシンのほうだった。疲れが出てきて、攻撃の切れがわずかに鈍る。
その隙を逃さず、ザクファントムは一気に動き出した。
右の拳をかわし、肩口から体当たりを仕掛ける。インパルスがわずかに後ろに下がった瞬間、その腹部に拳をたたきこんだ。
これから開発される予定でもあるのだろう。丸太や鉄筋などの建設資材が置かれ、これから取り壊される予定であろうブロック塀や、
物置に使われていたのか、小さな小屋がある。
そこでシンは怒涛のような連続攻撃を繰り出す。
拳、突き、蹴り。青い装甲に包まれた鋭い一撃が、次々と襲い掛かる。
すさまじい攻撃の嵐に反撃すらできない、ように思われた。
これだけ攻撃しても、目立ったダメージを与えられない。全ての攻撃は巧みな体裁きと鉄壁の防御に阻まれ、ボディには一発も
届いていない。
むしろ、消耗しているのはシンのほうだった。疲れが出てきて、攻撃の切れがわずかに鈍る。
その隙を逃さず、ザクファントムは一気に動き出した。
右の拳をかわし、肩口から体当たりを仕掛ける。インパルスがわずかに後ろに下がった瞬間、その腹部に拳をたたきこんだ。
「うわあっ!」
腹部に強烈なアッパーを受けたシンは宙を舞い、地面に転がる。
地面に手をつき、何とか起き上がろうとするが、相手はそれを許さない。右肩のシールド、そしてスパイクをぶつける強烈なタックルが
立ち上がりかけたインパルスを再び吹き飛ばす。
仰向けに倒されたまま首だけを起こし、ザクファントムの様子を伺う。
こちらがひどくダメージを受け、呼吸も激しくなっているのとは対照的に、向こうは息一つ乱していない。
さらに、もう一度タックルを仕掛けようというのか、右肩のスパイクをこちらに向けている。立ち上がりかけた瞬間は非常に無防備だ。
ダメージを受けた身で、同じ攻撃を受けたらひとたまりもない。
腹部に強烈なアッパーを受けたシンは宙を舞い、地面に転がる。
地面に手をつき、何とか起き上がろうとするが、相手はそれを許さない。右肩のシールド、そしてスパイクをぶつける強烈なタックルが
立ち上がりかけたインパルスを再び吹き飛ばす。
仰向けに倒されたまま首だけを起こし、ザクファントムの様子を伺う。
こちらがひどくダメージを受け、呼吸も激しくなっているのとは対照的に、向こうは息一つ乱していない。
さらに、もう一度タックルを仕掛けようというのか、右肩のスパイクをこちらに向けている。立ち上がりかけた瞬間は非常に無防備だ。
ダメージを受けた身で、同じ攻撃を受けたらひとたまりもない。
シンは倒れたまま、地面を転がる。その勢いで起き上がろうというのだ。
もちろん、サトーがその隙を見逃すはずはない。再度、タックルを仕掛けてくる。
止めようのない、すさまじい突進。
もちろん、サトーがその隙を見逃すはずはない。再度、タックルを仕掛けてくる。
止めようのない、すさまじい突進。
だが、いきなり体勢が崩れる。何かに脚をとられたかのように前のめりに倒れかけるが、胸部で爆発。反動でわずかにのけぞる。
ケルベロスによる銃撃だった。
ベルトの力を込めなくとも、光弾を撃つことはできる。充填に多少時間がかかるために連射はできず、とどめを刺すほどの威力もないが。
緑に変わっていたインパルスは、サトーが怯んだ隙に後方に回転。銃撃でけん制しながら立ち上がった。
そのままケルベロスを横に構え、さらに引き金を引く。
ケルベロスによる銃撃だった。
ベルトの力を込めなくとも、光弾を撃つことはできる。充填に多少時間がかかるために連射はできず、とどめを刺すほどの威力もないが。
緑に変わっていたインパルスは、サトーが怯んだ隙に後方に回転。銃撃でけん制しながら立ち上がった。
そのままケルベロスを横に構え、さらに引き金を引く。
光弾は次々にザクファントムのボディに吸い込まれていく。しかし――
「効かない!?」
胸部に何発も直撃しているはずだが、よろめきもしない。ダメージすら与えられていない。
驚きに、一瞬動きが止まってしまう。
そこを狙ってザクファントムが突進してくる。とっさにかわすが、避け切れずにダメージを受け、吹き飛ばされてしまう。
「効かない!?」
胸部に何発も直撃しているはずだが、よろめきもしない。ダメージすら与えられていない。
驚きに、一瞬動きが止まってしまう。
そこを狙ってザクファントムが突進してくる。とっさにかわすが、避け切れずにダメージを受け、吹き飛ばされてしまう。
地面を転がりながらも、ケルベロスを離さない。
空いた右腕で自らの身体を支え、片膝を立てるようにして起き上がる。
強い。けど、これなら!
しゃがみこんだまま、左腕にベルトの力を集中させる。莫大なエネルギーが左腕を通して、ケルベロスに流れ込む。
それを見たサトーは、右肩の盾をインパルスに向けた。
シンは構わずに、引き金を絞る。
あんな盾で、受けきれるものかっ!
「これなら、どうだぁ!」
エネルギーの奔流が、サトーめがけてまっすぐに突き進む。
だが、その前に盾が立ちふさがる。ケルベロスと相対するように構えられた盾が、エネルギーの奔流を受け止める。
ザクの盾は、ザムザザーのリフレクターのようにエネルギーをはねかえすことはできない。それでも意識を集中させることで、かなりの防御力を持たせることは可能だ。
空いた右腕で自らの身体を支え、片膝を立てるようにして起き上がる。
強い。けど、これなら!
しゃがみこんだまま、左腕にベルトの力を集中させる。莫大なエネルギーが左腕を通して、ケルベロスに流れ込む。
それを見たサトーは、右肩の盾をインパルスに向けた。
シンは構わずに、引き金を絞る。
あんな盾で、受けきれるものかっ!
「これなら、どうだぁ!」
エネルギーの奔流が、サトーめがけてまっすぐに突き進む。
だが、その前に盾が立ちふさがる。ケルベロスと相対するように構えられた盾が、エネルギーの奔流を受け止める。
ザクの盾は、ザムザザーのリフレクターのようにエネルギーをはねかえすことはできない。それでも意識を集中させることで、かなりの防御力を持たせることは可能だ。
エネルギーの勢いで、サトーの身体は後方へと押し流されてしまった。ザクファントムの足元、土の上に残る、押し出された跡が勢いのすさまじさを物語っている。
シールドもかなりのダメージを受けていた。スパイクはもげ、奔流を受け止めた中心部は大きくへこみ、形状も変化してしまっている。
しかし、肝心のサトーはほぼ無傷だった。もはや用を為さなくなった盾を排除し、投げ捨てる。
「ふん、面白いマネをする。……だが!」
地面に転がる盾の惨状を見たサトーは憎々しげに呟いた。
胸を突き出すような仕草をし、気合を入れる。
すると、ザクファントムの背中が変化した。巨大な長方形の箱を二つ横につなげたような形状から、右側に細長い筒を下げた、
左右非対称の形状となる。
シールドもかなりのダメージを受けていた。スパイクはもげ、奔流を受け止めた中心部は大きくへこみ、形状も変化してしまっている。
しかし、肝心のサトーはほぼ無傷だった。もはや用を為さなくなった盾を排除し、投げ捨てる。
「ふん、面白いマネをする。……だが!」
地面に転がる盾の惨状を見たサトーは憎々しげに呟いた。
胸を突き出すような仕草をし、気合を入れる。
すると、ザクファントムの背中が変化した。巨大な長方形の箱を二つ横につなげたような形状から、右側に細長い筒を下げた、
左右非対称の形状となる。
「変わった!?」
シンは驚愕しつつも、ケルベロスを向ける。
今度こそ、倒してやる!
しかし、その前にザクファントムの長大な狙撃砲、オルトロスから放たれたエネルギーの光条がインパルスに襲い掛かった。
引き金を引くよりも早く、光条が左肩をかすめる。直撃こそしていないものの、激しい熱が肩を焼く。左腕の感覚が麻痺したシンは、
ケルベロスを取り落としてしまう。
残された右腕を伸ばしてケルベロスを掴もうとするものの、再び光条が放たれ、ケルベロスを弾き飛ばす。
丸腰となったインパルスを、オルトロスがその名のとおり、猟犬のごとく襲い掛かる。
シンは驚愕しつつも、ケルベロスを向ける。
今度こそ、倒してやる!
しかし、その前にザクファントムの長大な狙撃砲、オルトロスから放たれたエネルギーの光条がインパルスに襲い掛かった。
引き金を引くよりも早く、光条が左肩をかすめる。直撃こそしていないものの、激しい熱が肩を焼く。左腕の感覚が麻痺したシンは、
ケルベロスを取り落としてしまう。
残された右腕を伸ばしてケルベロスを掴もうとするものの、再び光条が放たれ、ケルベロスを弾き飛ばす。
丸腰となったインパルスを、オルトロスがその名のとおり、猟犬のごとく襲い掛かる。
何とか光条をかわしていたシンだったが、背中が何かに当たる。ブロック塀だ。
「くっ!」
追い込まれてしまった。横に飛ぶこともできるであろうが、このような荒れた地形ではいつまでも避けきれるものでもない。
ザクファントムの構えるオルトロスの銃口に、光が集まっていく。
それを見て、シンは意を決した。
銃口を向けられているにも構わず、仁王立ちとなる。
眩い閃光が辺りを照らし、光条が放たれる。
インパルスの胸部に、オルトロスのエネルギーが直撃する。
だが、シンは姿勢を崩さぬままにそれを耐え切る。衝撃に半歩後ずさるが、強度の高い、赤い外殻は多少焦げついただけで
ダメージは見られない。
直撃の寸前で赤へと変わり、凌いだのだ。
オルトロスに耐え抜いた赤いインパルスは右腕を腰の前に掲げる。彼の手の中に両刃の剣、エクスカリバーがもたらされる
それをすぐさま分離させた。すでに左腕の感覚も戻っている。二本の剣を両手に握り、ザクファントムのもとに突進する。
「くっ!」
追い込まれてしまった。横に飛ぶこともできるであろうが、このような荒れた地形ではいつまでも避けきれるものでもない。
ザクファントムの構えるオルトロスの銃口に、光が集まっていく。
それを見て、シンは意を決した。
銃口を向けられているにも構わず、仁王立ちとなる。
眩い閃光が辺りを照らし、光条が放たれる。
インパルスの胸部に、オルトロスのエネルギーが直撃する。
だが、シンは姿勢を崩さぬままにそれを耐え切る。衝撃に半歩後ずさるが、強度の高い、赤い外殻は多少焦げついただけで
ダメージは見られない。
直撃の寸前で赤へと変わり、凌いだのだ。
オルトロスに耐え抜いた赤いインパルスは右腕を腰の前に掲げる。彼の手の中に両刃の剣、エクスカリバーがもたらされる
それをすぐさま分離させた。すでに左腕の感覚も戻っている。二本の剣を両手に握り、ザクファントムのもとに突進する。
オルトロスは長砲身ゆえに取り回しが悪く、連射もきかない。チャージの途中で間合いを詰め、エクスカリバーをなぎ払い、振り下ろす。
サトーはさすがの反応で刃をかわすが、オルトロスが弾き飛ばされる。
シンはそこでエクスカリバーを連結させ、ベルトの力を流し込む。相手が武器を失った隙に、とどめを刺そうというのだ。
右腕を通して、刃にベルトのエネルギーが伝わる。
「うおおぉぉっ!」
両刃の剣の重い一撃が、ザクファントムを切り裂かんと大上段に振り下ろされる。
サトーはさすがの反応で刃をかわすが、オルトロスが弾き飛ばされる。
シンはそこでエクスカリバーを連結させ、ベルトの力を流し込む。相手が武器を失った隙に、とどめを刺そうというのだ。
右腕を通して、刃にベルトのエネルギーが伝わる。
「うおおぉぉっ!」
両刃の剣の重い一撃が、ザクファントムを切り裂かんと大上段に振り下ろされる。
それでも、倒すことはできなかった。
避けることがかなわぬと悟ったサトーはそこで左の肩口からインパルスに体当たりを仕掛けてきた。
思いもかけないとっさの、最適な反撃。
結局、インパルスの斬撃は不発に終わる。左の盾、下部を切り裂いただけだ。
避けることがかなわぬと悟ったサトーはそこで左の肩口からインパルスに体当たりを仕掛けてきた。
思いもかけないとっさの、最適な反撃。
結局、インパルスの斬撃は不発に終わる。左の盾、下部を切り裂いただけだ。
「ふん。こうでなくては面白くない」
うそぶいたサトーは再度、胸を張るようにして気合を込める。
すると、さらなる変化が起こる。オルトロスを下げた左右非対称の背中が、肩口に二本の筒がついたような小さなものとなり、右腕には巨大な戦斧、ファルクスが握られる。
「な……また!?」
これで計三形態。インパルスの戦う姿と同じだけ変化したことになる。
基本形態、砲戦形態、白兵戦形態。それらは全て、インパルスの戦闘形態、青、緑、赤に対応したものだった。
うそぶいたサトーは再度、胸を張るようにして気合を込める。
すると、さらなる変化が起こる。オルトロスを下げた左右非対称の背中が、肩口に二本の筒がついたような小さなものとなり、右腕には巨大な戦斧、ファルクスが握られる。
「な……また!?」
これで計三形態。インパルスの戦う姿と同じだけ変化したことになる。
基本形態、砲戦形態、白兵戦形態。それらは全て、インパルスの戦闘形態、青、緑、赤に対応したものだった。
サトーはゆっくりと歩み寄りながら、戦斧を両腕で回転させ、振り回す。ゆっくりと二、三回転してスピードに乗ったファルクスは土煙を舞い上げ、更なる加速をしていく。
そして間合いに入ったところで、一気に解放させた。
対してシンも、両刃の剣を振り下ろす。
金属を金属がぶつかる、甲高い音が鳴り響き、二つの武器が交差する。
重量に回転の勢いを上乗せされた横薙ぎの攻撃は、振り下ろされたエクスカリバーをいとも簡単に弾き飛ばし、インパルスの体表を切り裂く。
インパルスの胸部上方が真一文字に切り裂かれる。シンは激痛に襲われるが、エクスカリバーが勢いを削いでいなければ、これで終わっていたかもしれない。それほどの攻撃だった。
そして間合いに入ったところで、一気に解放させた。
対してシンも、両刃の剣を振り下ろす。
金属を金属がぶつかる、甲高い音が鳴り響き、二つの武器が交差する。
重量に回転の勢いを上乗せされた横薙ぎの攻撃は、振り下ろされたエクスカリバーをいとも簡単に弾き飛ばし、インパルスの体表を切り裂く。
インパルスの胸部上方が真一文字に切り裂かれる。シンは激痛に襲われるが、エクスカリバーが勢いを削いでいなければ、これで終わっていたかもしれない。それほどの攻撃だった。
命は助かったものの、これでインパルスはまたも武器を失ってしまった。エクスカリバーを取りに行く余裕などない。
それでも戦意を失うことなく、シンは果敢にザクファントムに殴りかかる。
しかし、サトーはファルクスを振り回し、シンを徐々に追い詰めていく。
それでも戦意を失うことなく、シンは果敢にザクファントムに殴りかかる。
しかし、サトーはファルクスを振り回し、シンを徐々に追い詰めていく。
左のパンチは容易く止められ、逆に戦斧の柄で腹部を突かれる。
つんのめり、無防備にさらけ出された背中に戦斧の刃が襲い掛かる。
激痛に身を反らす。そこへ追い討ち。重い斬撃が袈裟切りに振り下ろされる。
とっさにかわすが、右肩の装甲が完全に切り飛ばされる。
いまだかつてない激痛が襲う。あまりの痛みにシンは右肩を抑え、叫びを上げた。
そしてサトーは、とどめとばかりにファルクスを振り上げる。
つんのめり、無防備にさらけ出された背中に戦斧の刃が襲い掛かる。
激痛に身を反らす。そこへ追い討ち。重い斬撃が袈裟切りに振り下ろされる。
とっさにかわすが、右肩の装甲が完全に切り飛ばされる。
いまだかつてない激痛が襲う。あまりの痛みにシンは右肩を抑え、叫びを上げた。
そしてサトーは、とどめとばかりにファルクスを振り上げる。
シンは痛みに耐えつつも、青へと変化する。
向こうが俺と同じように変わるんなら、弱点だって同じはずだ!
その考えに全てをかけての変化だった。経験上、赤は力はあっても動きが鈍かった。ならば、それと対応するような形態の
今のザクファントムも同様のはずだ。
果たして、その考えは正しかった。
脳天に振り下ろされるはずだった重い一撃を、ギリギリでかわすことに成功したのだ。
サトーはさらにファルクスを振り回すが、青へと変化したインパルスはそれを見切り、避けることができた。
ファルクスは重量級の武器であるがゆえ、振り回すと大きな隙が生じる。俊敏さに優れた青のインパルスなら、
そこにつけこむことができるのだ。
振り下ろされた一撃を後方にステップしてかわし、跳躍して頭部にとび蹴りを喰らわせる。
その衝撃でサトーはファルクスから手を離した。
向こうが俺と同じように変わるんなら、弱点だって同じはずだ!
その考えに全てをかけての変化だった。経験上、赤は力はあっても動きが鈍かった。ならば、それと対応するような形態の
今のザクファントムも同様のはずだ。
果たして、その考えは正しかった。
脳天に振り下ろされるはずだった重い一撃を、ギリギリでかわすことに成功したのだ。
サトーはさらにファルクスを振り回すが、青へと変化したインパルスはそれを見切り、避けることができた。
ファルクスは重量級の武器であるがゆえ、振り回すと大きな隙が生じる。俊敏さに優れた青のインパルスなら、
そこにつけこむことができるのだ。
振り下ろされた一撃を後方にステップしてかわし、跳躍して頭部にとび蹴りを喰らわせる。
その衝撃でサトーはファルクスから手を離した。
シンは二歩、三歩と後ずさりし、右足に力を溜める。
先ほどからベルトの力を連続で流し込んでいるせいか、集束が悪い。それでも、全力を右足に込める。
そして、相手の様子を伺う。
サトーはやはり自らの身体を変化させていた。長方形の箱を二つつなげたような、最初の形態。これが、青のインパルスに対応した
形態なのだろう。
そして、残されたスパイクとシールドをこちらに向けてくる。向こうは向こうで、必殺のショルダータックルを
真っ向から仕掛けてくるつもりのようだ。
このまま飛び込めば、先ほどまでのようにやられてしまうかもしれない。
しかし、別の方策を練ることもできない。
シンの体力はもはや限界だった。この激闘だけでなく、今までに蓄積した疲労とダメージが彼の体力を徹底的に奪っていた。
もはや、全てをぶつける以外に手はなかった。
右足にエネルギーが溜まる。
シンは顔を上げ、強く地面を蹴って駆け出す。助走をつけて、一気に跳躍。
「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
すさまじいエネルギーを迸らせ、右足から飛び込んでいく。
先ほどからベルトの力を連続で流し込んでいるせいか、集束が悪い。それでも、全力を右足に込める。
そして、相手の様子を伺う。
サトーはやはり自らの身体を変化させていた。長方形の箱を二つつなげたような、最初の形態。これが、青のインパルスに対応した
形態なのだろう。
そして、残されたスパイクとシールドをこちらに向けてくる。向こうは向こうで、必殺のショルダータックルを
真っ向から仕掛けてくるつもりのようだ。
このまま飛び込めば、先ほどまでのようにやられてしまうかもしれない。
しかし、別の方策を練ることもできない。
シンの体力はもはや限界だった。この激闘だけでなく、今までに蓄積した疲労とダメージが彼の体力を徹底的に奪っていた。
もはや、全てをぶつける以外に手はなかった。
右足にエネルギーが溜まる。
シンは顔を上げ、強く地面を蹴って駆け出す。助走をつけて、一気に跳躍。
「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
すさまじいエネルギーを迸らせ、右足から飛び込んでいく。
インパルスが跳躍したのを見たサトーは、背中に意識を集中させた。
背負った二つの箱のようなもの、その一部が展開し、蜂のようなものが飛び出す。
ファイアビー。この形態のザクが持つ、一種の生体ミサイルだ。
それらは全て、インパルスの右足めがけて突っ込んでいく。
背負った二つの箱のようなもの、その一部が展開し、蜂のようなものが飛び出す。
ファイアビー。この形態のザクが持つ、一種の生体ミサイルだ。
それらは全て、インパルスの右足めがけて突っ込んでいく。
エネルギーとミサイルのぶつかりあい。すさまじい閃光と爆風が辺りを包み込む。これで、完全に威力が相殺された。
インパルスはバランスを崩し、墜落する。
その瞬間に、サトーは強く地面を蹴って駆け出した。スパイクつきの盾を掲げ、全身のエネルギーを込めた必殺のショルダータックル。
それは見事、インパルスに炸裂した。
墜落途中では、防御することすらできない。何メートルも宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられる。
インパルスはバランスを崩し、墜落する。
その瞬間に、サトーは強く地面を蹴って駆け出した。スパイクつきの盾を掲げ、全身のエネルギーを込めた必殺のショルダータックル。
それは見事、インパルスに炸裂した。
墜落途中では、防御することすらできない。何メートルも宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられる。
地面に投げ出されたインパルスは灰色に変わり、ピクリとも動かない。
「ふん、この程度か」
馬鹿にするように、冷たく言い放つ。
そうは言っても、これだけダメージを与えた上、ショルダータックルも完璧に決まったのだ。立ち上がれるなどとは、到底思っていない。
「ふん、この程度か」
馬鹿にするように、冷たく言い放つ。
そうは言っても、これだけダメージを与えた上、ショルダータックルも完璧に決まったのだ。立ち上がれるなどとは、到底思っていない。
しかし、インパルスの右手がかすかに動いた。
それはもがくように砂を掴み、自らの方に引き寄せる。そして、地面に手をつく。
「まさか……」
サトーの目の前で、ひどく緩慢な動きで、よろめきながらもインパルスは再び立ち上がった。
自らの、二本の足で。
右腕は垂れ下がり、折れているのか左腕は動かない。足はとうに限界を超しているのだろう。震えが止まらず、おぼつかない。
そして頭もうなだれており、もはや敵も見えていない。
それでも、確かに立ち上がったのだ。
それはもがくように砂を掴み、自らの方に引き寄せる。そして、地面に手をつく。
「まさか……」
サトーの目の前で、ひどく緩慢な動きで、よろめきながらもインパルスは再び立ち上がった。
自らの、二本の足で。
右腕は垂れ下がり、折れているのか左腕は動かない。足はとうに限界を超しているのだろう。震えが止まらず、おぼつかない。
そして頭もうなだれており、もはや敵も見えていない。
それでも、確かに立ち上がったのだ。
「しぶとい奴だ。今度こそ、甦らないようにしてやろう」
呆れた口調で言いつつも、サトーは内心舌を巻いてしていた。
こんな状態になりながらも、戦いを捨ててはいない。これは戦士、いや、戦鬼か。
だが、いいかげんこちらも限界がちかい。そして、手加減をするのも戦士として最大の侮辱だ。
だから、最大の技で葬る。
左肩にエネルギーを集める。右足を引き、力を込める。
インパルスは避けようともしない。いや、できないのだ。すでに、立っているだけで限界なのだろう。
エネルギーが集束し、強く地面を蹴る。
呆れた口調で言いつつも、サトーは内心舌を巻いてしていた。
こんな状態になりながらも、戦いを捨ててはいない。これは戦士、いや、戦鬼か。
だが、いいかげんこちらも限界がちかい。そして、手加減をするのも戦士として最大の侮辱だ。
だから、最大の技で葬る。
左肩にエネルギーを集める。右足を引き、力を込める。
インパルスは避けようともしない。いや、できないのだ。すでに、立っているだけで限界なのだろう。
エネルギーが集束し、強く地面を蹴る。
その瞬間、右手を握り締めたシンは残された全てのエネルギーの集中させ、拳を振り上げる。
「うおおぉぉぉっ」
捨て身の、カウンター。
これが今のシンが取れる、最後の攻撃だった。
それが、ショルダータックルと衝突する。
「うおおぉぉぉっ」
捨て身の、カウンター。
これが今のシンが取れる、最後の攻撃だった。
それが、ショルダータックルと衝突する。
インパルスは吹き飛ばされ、今度はブロック塀を突き破り、小さなコンクリート製の小屋をも破壊した。
灰燼が収まったとき、そこにあるのは瓦礫の山だけだった。
その隙間からわずかに、土気色の手が覗いている。
今度こそ、立ち上がることはないようだ。
「終わったか」
サトーは呟き、瓦礫の山に背を向けた。
灰燼が収まったとき、そこにあるのは瓦礫の山だけだった。
その隙間からわずかに、土気色の手が覗いている。
今度こそ、立ち上がることはないようだ。
「終わったか」
サトーは呟き、瓦礫の山に背を向けた。
ルナマリアはいつものように、マユの病室にいた。
立ち上がり、そっと髪をなでる。
たとえ目が覚めなくても、髪は女の命だ。手入れを欠かさず、艶やかな美しい髪を保っている。
やわらかい感触を感じながらも、この少女はずっと目覚めることがない。
ふと、ため息が漏れてしまう。
立ち上がり、そっと髪をなでる。
たとえ目が覚めなくても、髪は女の命だ。手入れを欠かさず、艶やかな美しい髪を保っている。
やわらかい感触を感じながらも、この少女はずっと目覚めることがない。
ふと、ため息が漏れてしまう。
すると、ベッドに横たわる少女の口から、苦しげな声が漏れた。
「う……ぅん」
見ると、目に涙も溢れさせている。
いつものことだった。この少女は、一日に何回もこうしてうなされる。
彼女はベッドの脇の丸イスに座り、少女の手を握る。
こうすると、少女は少しは安心するのか、穏やかな表情になる。
しかし、このときはいつもと少し様子が違った。
手がかすかに握り返される。これは今までになかった反応だ。
「マユちゃん!?」
驚きに目を見開くルナマリアの目の前で、少女は静かに、目を覚ました。
かすかに開いたまぶたの奥、きれいなすみれ色の瞳が、ルナマリアを見つめ返す。
「う……ぅん」
見ると、目に涙も溢れさせている。
いつものことだった。この少女は、一日に何回もこうしてうなされる。
彼女はベッドの脇の丸イスに座り、少女の手を握る。
こうすると、少女は少しは安心するのか、穏やかな表情になる。
しかし、このときはいつもと少し様子が違った。
手がかすかに握り返される。これは今までになかった反応だ。
「マユちゃん!?」
驚きに目を見開くルナマリアの目の前で、少女は静かに、目を覚ました。
かすかに開いたまぶたの奥、きれいなすみれ色の瞳が、ルナマリアを見つめ返す。
起きた、起きてくれた!
泣き笑いの表情となっているルナマリアに、マユは小さな声で訊いた。
「お兄……ちゃん、は?」
二週間ぶりに見る少女の瞳は、不安に揺れていた。
泣き笑いの表情となっているルナマリアに、マユは小さな声で訊いた。
「お兄……ちゃん、は?」
二週間ぶりに見る少女の瞳は、不安に揺れていた。