私立仁科学園まとめ@ ウィキ

無題(避難所スレ >>563-566)

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無題




その出来事のきっかけは、和太鼓サークル部長である達磨オルドの一言からであった。

ある土曜日の午後、粟手ヒビキは仁科学園中等部での午前授業を終え、制服姿のまま公民館へ参上、ジャージに着替えて和太鼓の練習へと傾れ込む予定……のはずが、彼女を待っていたのは『別の用事』だった。
「柚鈴天神社……ですか?」
仁科学園のジャージを着たヒビキがオルドに問いかける。
「ああ……申し訳ないが、今日はそっちに行ってくれるか?」
「分かりましたけど……どーして私が?」
「神柚くんからの指名なんだ。和太鼓に慣れてて、かつ仁科学園の生徒で……ってね?」
「なるほど……で、要件は?」
「いや、その……僕もよく知らないんだ。まあ、彼女に詳しく聞いてみるのが一番かもね。」
「……うーむ、不安だぁ。」
『不安』と言いつつも、いつもの呑気な表情を浮かべるヒビキ。
しかし、その表情を延々と見せ続ける訳にもいかないため、彼女はジャージ姿のまま荷物を抱えて柚鈴天神社へと向かうのであった。

それから十数分後、ヒビキの姿は柚鈴天神社内にある建物の一室にあった。
用意された座布団の上にちょこんと座るヒビキ、その体は誰が見ても分かるくらい強い緊張感に包まれていた。
理由はいくつかある。
「何故、私は柚鈴天神社の人に呼ばれたのか?」「これから何が始まるのか?」「神聖な場所だから静かにしてなくては」……だが、一番の理由は『目の前に居る先客の女性』の存在感であった。
ヒビキの目の前に居る女性……その姿から察するに仁科学園高等部の制服を着ているのは分かる。
しかし、問題はその『容貌』にあった。
片方の眼(まなこ)を隠すほどに伸びた髪……パンツがチラリと見えているにも関わらず、まるで問題が無いかのようにあぐらをかくその姿……背中には、まるで妖刀破軍を背負うかのように背負われたクラシックギター……そして、何人も近づけさせないかのような雰囲気を醸し出して黙り続ける姿勢……それはまるで、絵に描いたような『不良少女と呼ばれて』であった。
「えぇっと……。」
緊張しっぱなしの雰囲気に耐えきれず、持ち前の明るさで何とか目の前の女性に話しかけようとするヒビキ。
しかし、彼女が動こうとする度に女性の眼は、まるで威嚇するかのようにギョロリと動くため、結局ヒビキは何も出来ないまま、最終的には20分ほど目の前の女性と時間を共にするのであった。

「いやはや……大変遅くなりました。」
突如部屋の扉が開き、二人のもとへと現われる『巫女服姿の女性』。
それに対しヒビキは姿勢を正し、もう一人の女性はヒビキの時と同様に眼を動かすのみであった。
「初めまして、私は仁科学園高等部3年の神柚鈴絵……この神柚神社では巫女として宮司である父のお手伝いをしたりしてますわ。」
自己紹介をする鈴絵。
その言葉を聞き、『ああ、この人が達磨さんの言ってた「神柚くん」さんかぁ……』と思いながら、ヒビキが問いかける。
「……あ、私は中等部1年の粟手ヒビキです!ところで、神柚さん……御用件は何なんでしょうか?和太鼓サークルの達磨さんに何も教えてもらってないもので……。」
「そうね……結論から言うと、粟手さん……あと、天月さん……あなたたちに手伝って欲しいことがあるのよ。」
そう言って、先程から黙り続ける女性 = 天月音菜の方を見る鈴絵。
しかし、音菜は黙り続けていた。

……と言うより、何らかの事情で黙らざるを得ない雰囲気と化していた。

「……。」
「……?」
「……。」
沈黙が続く空間。
そんな時、鈴絵は何かに気付いたのか人差し指で『1』の形を作ると、まるで気を注入するかのように露わとなっている音菜の足の裏へと突き刺すのであった。
ズブリとめり込む鈴絵の指。
その瞬間、音菜の体には決壊したダムから溢れた水の如く痛みと痺れが走り、それに耐えられなくなった彼女は紙面で書き記せないほどの絶叫をあげながら、畳から50cmほど上空へと飛び上がるのだった。
「……くぅううう……神柚さん!何するんですかっ?!」
「やっぱり足が痺れてたのね。あぐらって意外と足に負荷掛かるのよ。」
「あ……それじゃあ、待ってる難しい顔してたのも……。」
「……そうだよ、足が痺れて動けなかったからだよ。粟手……だっけ?お前さんが来たからあぐら止めようと思ったけど、足の痺れが極限まで達して……言っとくが、お前さんが私のパンツ見てたことにコッチは気付いてたからな。」
「……う。」
「でも、別に責めはしねぇよ……コッチが原因の事故なんだし。」
「本当にすみません。天月さんが虎さんマークのパンツはいてたことについては墓場まで持っていきます。」
「……前言撤回。粟手、絶対に許さねえっ!!」
「ぴぃいいいい?!」
「パンツぐらいで喧嘩しないの。私のパンツ見せてあげるから機嫌直して……ほ~ら、水玉模様。」
そう言って、長いスカートを捲し上げる鈴絵。

その光景に対し、対応は様々であった。
「うわぁ?!何やってるんですか、神柚さん?!?!」
ツッコミを入れる音菜。
「えぇっと……お二人のパンツ見せてもらったので、私もお見せした方が良いですよね。私はサメの……。」
そう言って、ジャージのズボンを下ろそうとするヒビキ。
その様子に、期待と鼻息を膨らませながら彼女の股に注目する鈴絵。
「てめぇら……いい加減にしろっ!!!」
再びツッコミを入れる音菜……といった具合である。

「……ところで、神柚さん。今度こそ私たちを呼んだ理由を教えてください。『パンツの見せ合いのため』とか言ったら、いくら先輩でも怒りますよ。」
「さすがに違うわよ。これよ……コレ。」
そう言って、どこからか古い巻物を取り出す鈴絵。
その巻物を広げると、そこには年月の経過により薄まったインクで記号やら直線やらが描かれた……まるでスパイの暗号文のような物が記されていた。
「……なーんですか?」
頭に疑問符を浮かべるヒビキ。
一方の音菜は、何かに気付いたのか口を開く。
「これって……もしかして、和琴とかで使う楽譜か?」
彼女の言葉を聞き、うなずく鈴絵。
「そう……これは柚鈴天神社に伝わる『英雄の詩』という祭事に演奏される曲、それを初代宮司……私の曾お爺様が楽譜として書き起こした物です。」
「へー。」
理解したのかしていないのか分からない表情のまま、とりあえず返事をするヒビキ。
「そして、曾お爺様は楽譜完成後、自分の息子……つまり、お爺様にこう伝えたそうです。『99年後の例大祭になったらこの曲を演奏しなさい。そうすれば、次の99年後まで仁科の地の静寂は守られるだろう』……と。」
「ふーん……99年目の『柚鈴天神社例大祭』、通称『竜神祭』でこれを演奏……うん?」
突然、何かに気付く音菜。
「もしかして、今回私と粟手を呼んだ理由って……?」
「ええ、この曲を99年目……つまり、今年の『龍神祭』で私と演奏して欲しいのです。」
「おおっ、すごい!」
「ちょっ……待てよ!私の専門はギターだし、いくら和楽器の楽譜は読めても和楽器の演奏は無理だぞ!!」
「……と言うと思いましたので、ハイ。」
そう言って、音菜とヒビキに数枚組の楽譜を渡す鈴絵。
そこにはギター用、そして和太鼓用にコンバートされた『英雄の詩』の楽譜が記載されていたのであった。
「随分と用意周到だこと。でも、これは……クラシックよりもエレキの方がやりやすそうだなぁ……うん?どうした、粟手??」
何かに気付き、ヒビキに声をかける音菜。
その目線の先では、ヒビキが楽譜を手にしながら三度緊張の表情を見せる光景が展開されていた。
「うぅっ……和太鼓始めて数ヶ月……初めての人前での演奏……神事で用いられる神聖な曲……胃が痛い……。」
「……ったく、こんなんで大丈夫かよ。」
「まぁ、ゆっくり練習していきましょう。『龍神祭』まではまだ時間あるし。」
「でも……正直言って、不安しかないです。」
「落ち着いて、ヒビキちゃん。不安になることなんて無いわ……もし、不安になったらお姉さんたちが相談に乗ってあげるから。」
「……まあな。乗りかかった船だ、先輩としてサポートしてやるよ。」
「神柚さん……天月さん……。」
「まったく……世話の焼ける後輩だよ。」
「私……絶対に和太鼓パート成功させます!お二人の水玉パンツと虎さんパンツに誓って!!」
「……余計なひと言さえなければ良い娘なんだろうな、コイツ。」
「ところで……ヒビキちゃんのパンツってどうなの?さっき見れなかったし。」
「ええ、ですからサメの……。」
「だ・か・らっ!堂々とストリップを始めるんじゃねぇっ!!」

こうして、不思議な組み合わせの女性バンドは結成され、『龍神祭』へ向けてプロジェクトが進みだすのだった。

                                                                       つづく……?



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