私立仁科学園まとめ@ ウィキ

もにょもにょしてほしい

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もにょもにょしてほしい




 「先輩!もにょもにょもにょ!」

 くまのぬいぐるみを胸元に抱きしめて、後鬼閑花は愛すべき先輩にボディアタック!羽交い締めする格好で背後からくまの両腕を操り、
先輩の二の腕をホールドオン!誰もいない学園内の和室にて、昼間っからの激甘ハニータイムが乱れ咲く。但し、閑花からの一方通行
ですけどお構い無し。閑花と先輩のサンドウィッチ状態になったくまのぬいぐるみは両手を互いに上下に素早く動かして、自分の体に
先輩の匂いを擦り付けているように見えた。

 困惑した先輩は手を振り払って、閑花とぬいぐるみから遠ざかろうと試みる。寸の隙を伺い、きらきらと瞳輝かせる閑花の油断を待つが、
先輩が嫌がるそぶりを見せれば見せるほどに、閑花のリミッターは軋みつつ崩壊への道を歩んでいた。
 くるりと回り、遠心力を利用して閑花から、くまのぬいぐるみから一歩離れる。ぴょんと両足揃えて跳躍し二歩遠ざかる。
 呆気にとられた閑花の顔を見て三歩距離を置く。

 「先輩ーっ!女の子に擦り寄られるってどうですか?」
 「うっ……」
 「無抵抗の先輩も真っ白な新雪を踏みにじるような気がして胸がきゅんきゅんしますっ」

 ラグビー顔負け、アメフト野郎も逃げ出すほどのタックルで閑花はくまのぬいぐるみと共に先輩を押し倒した。
 畳に仰向けに転がる先輩は両腕を力無く曲げて、軽く握った拳を胸の上に置いた。少女マンガならば背景に花咲くコマだ。
 くまのぬいぐるみの顔が先輩の腹のあたりに埋まり、スクールベストの上から先輩の羞恥心をくすぐる。くまの耳と耳の隙間から
閑花の笑った目が見え隠れしていた。

 「言っときますけどー。この子が先輩を離さないだけですからね!」
 「どんな電波だよ!うにゅ……」
 「閑花ちゃんは知りません!くまちんが先輩を欲しがってるんです!ね!くまちん!」

 先輩はやたらと腕を絡ませてくる閑花を無抵抗で受け入れざるえなかった。子犬系女子は無邪気だけに悪意がなく困る。

 「そういえば、学園に『カップルウォッチャー』なる者が現れるそうですね!閑花ちゃんたちのようなラブラブカップルを
  こっそり拝見して、影ながらに二人の幸多かれと願う恋の戦士!」

 悪戯っ子の声をした閑花の何気ない台詞に先輩は目を丸くした。

 「確か……。二年の近森ととろ先輩!だっけ!ととろ先輩がよじれるぐらいの特濃チーズであむあむしちゃいましょう!」
 「例えがわからなすぎる!」

 くまちんの口から蕩けるチーズがたらりと零れる、閑花のまだあどけなさ残る膝小僧に垂れた……かのように見えた。
ウソとは言えども、驚いて閑花の手元が動きをやめた理由の説明に相応しいぐらいだ。すかさず先輩はくまちんを奪い取りため息ついた。

 「閑花ちゃん!わたしの名前をだすなぁ!」
 「ととろ先輩!ちょっとした揺さぶりです!先崎先輩のツッコミは完璧過ぎるから、閑花ちゃんがどんなツッコミでも対応できる
  ようにと変化球を求めるサインですよ!大リーグツッコミでも何でもきやがれ!」
 「迷惑だよ!」

 閑花は白い歯を見せて人差し指を淡い唇に添えた。
 ととろは確かに閑花の先輩だった。間違っては無い。

 「しかし……ねえ!わたしが舞台を提供して閑花ちゃんが先崎くんへとアタックして作戦実行する」
 「そして、それをととろ先輩がウォッチングする。ととろ先輩悶絶!先崎先輩喜ぶ!わたし嬉しい!皆得!」
 「どうで?このギブアンドテイク!」
 「先輩!完璧です!リハーサルOK!」

 近森ととろはくまちんを抱えて後輩の輝く姿に眼福眼福とにやけていた。

 「ま。先崎先輩のツッコミほどではないかもしれませんね!」

 ととろはシャフト角でジト目をしていた閑花の頭をくまちんで小突いた。


    おしまい。





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